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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136626
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】多層管
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20220913BHJP
   B32B 5/20 20060101ALI20220913BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220913BHJP
   F16L 11/06 20060101ALI20220913BHJP
   A62C 3/16 20060101ALN20220913BHJP
【FI】
B32B1/08 B
B32B5/20
B32B27/30 101
F16L11/06
A62C3/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036330
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 誉大
(72)【発明者】
【氏名】中野 一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 卓弥
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111CB04
3H111DA11
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK15C
4F100BA03
4F100CA01B
4F100CA01C
4F100CA05A
4F100CA05B
4F100CA05C
4F100DA11A
4F100EH17
4F100EH20
4F100EJ02B
4F100EJ02C
4F100GB07
4F100JA02B
4F100JA02C
4F100JJ02B
4F100JJ02C
4F100JJ07
(57)【要約】
【課題】優れた成形性を有し、かつ、優れた耐火性能及び熱変形抑制性能を有する多層管を提供する。
【解決手段】多層管10は、内層1と、内層1の外側に配置された中間層2と、中間層2の外側に配置された外層3とを備え、中間層2及び外層3の少なくともいずれかは(A)ポリ塩化ビニル系樹脂及び(B)熱膨張性材料を含み、(B)熱膨張性材料を180℃に熱した際のガス発生量が50mL/g以下、かつガス発生量曲線における最大ガス発生温度が210℃以上であり、最大ガス発生温度でのガス発生量が70mL/g以上であり、(B)熱膨張性材料を含む層の25℃雰囲気下での熱伝導率が0.200W/m・K以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、
前記内層の外側に配置された中間層と、
前記中間層の外側に配置された外層とを備え、
前記中間層及び前記外層の少なくともいずれかは(A)ポリ塩化ビニル系樹脂及び(B)熱膨張性材料を含み、
前記(B)熱膨張性材料を180℃に熱した際のガス発生量が50mL/g以下、かつガス発生量曲線における最大ガス発生温度が210℃以上であり、最大ガス発生温度でのガス発生量が70mL/g以上であり、
前記(B)熱膨張性材料を含む層の25℃雰囲気下での熱伝導率が0.200W/m・K以下である、多層管。
【請求項2】
前記(B)熱膨張性材料の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、6質量部以上18質量部以下である、請求項1に記載の多層管。
【請求項3】
前記(B)熱膨張性材料を含む層の膨張高さ倍率が、500℃で3分間加熱した際に8倍以上である、請求項1又は2に記載の多層管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層管に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁及び床等の区画体には、貫通孔を設けて区画貫通部を形成し、配管等を貫通させることがある。また、建築物には、通常、火災時に炎や煙が急激に広がることを防ぐために、防火区画が設置されている。防火区画においては、原則として、所定の耐火性能を有する管材以外は、区画貫通部を貫通させて設置することはできない。
管材に要求される耐火性能の具体的な機能としては、火の熱により管材が膨張して配管自体を閉塞させ、管材を通じた火の燃え移りを防止する機能が求められている。このような機能を有する管材としては、熱膨張性黒鉛を含有する樹脂管(耐火管)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。熱膨張性黒鉛を含有する樹脂管としては、熱膨張性黒鉛を配合した層からなる単層管、及び熱膨張性黒鉛を配合した層を備える多層管が用いられている。
【0003】
樹脂管は、通常、屋内又は屋外にて積み重ねられて保管される。気温の上昇等により保管温度が高くなると、保管している樹脂管自体の温度も上昇する。熱膨張性黒鉛を含む従来の樹脂管では、熱膨張性黒鉛が蓄熱材として作用し、樹脂管の温度がより一層上昇しやすい。このため、熱膨張性黒鉛を含む従来の樹脂管では、保管温度が高くなると、積み重ねられた樹脂管の重みも加味することによって、樹脂管に熱変形が生じることがある。樹脂管の開口端が変形すると、継手と接着することが困難となったり、接着できたとしても水漏れが生じたりすることがある。そこで、熱膨張性黒鉛以外の熱膨張性材料を用いた場合、成形時に発泡が生じて成形性が低下してしまったり、火災時に発泡した場合に燃焼残渣が脱落しやすくなり必要な耐火性能が得られなかったりするなどの問題が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-74689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような事情に鑑み、本発明は、優れた成形性を有し、かつ、優れた耐火性能及び熱変形抑制性能を有する多層管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリ塩化ビニル系樹脂、及び熱膨張性黒鉛以外の一定条件を満たす熱膨張性材料を同じ層に有する多層構造とすることで、優れた成形性を有し、耐火性能のみならず、熱変形抑制にも優れた多層管とすることが可能であることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]内層と、前記内層の外側に配置された中間層と、前記中間層の外側に配置された外層とを備え、前記中間層及び前記外層の少なくともいずれかは(A)ポリ塩化ビニル系樹脂及び(B)熱膨張性材料を含み、前記(B)熱膨張性材料を180℃に熱した際のガス発生量が50mL/g以下、かつガス発生量曲線における最大ガス発生温度が210℃以上であり、最大ガス発生温度でのガス発生量が70mL/g以上であり、前記(B)熱膨張性材料を含む層の25℃雰囲気下での熱伝導率が0.200W/m・K以下である、多層管。
[2]前記(B)熱膨張性材料の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、6質量部以上18質量部以下である、[1]に記載の多層管。
[3]前記(B)熱膨張性材料を含む層の膨張高さ倍率が、500℃で3分間加熱した際に8倍以上である、[1]又は[2]に記載の多層管。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた成形性を有し、かつ、優れた耐火性能及び熱変形抑制性能を有する多層管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る多層管の模式的断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る多層管の製造装置の一例を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る多層管の製造装置の一例を示す正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る多層管の製造装置に使用する金型と多層管外面成形用チューブの一例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[多層管]
本発明の実施形態に係る多層管10は、図1に示すように、内層1、中間層2及び外層3を備える。内層1は多層管10の最内層を構成し、外層3は多層管10の最外層を構成する。図1に示す多層管10は、内層1、中間層2及び外層3がこの順に多層管の内側から積層された多層構造を有する。なお、多層管10の構成は三層に限られず、例えば、中間層2が複数層であってもよい。
【0011】
本発明の実施形態に係る多層管10を構成する中間層2及び外層3の少なくともいずれかは、(A)塩化ビニル系樹脂及び(B)熱膨張性材料を含む。中間層2及び外層3の少なくともいずれかに、(A)塩化ビニル系樹脂及び(B)熱膨張性材料を含むことで、優れた成形性を有し、かつ、優れた耐火性能及び熱変形抑制性能を有する多層管10とすることができる。上記観点から、(A)塩化ビニル系樹脂及び(B)熱膨張性材料は、中間層2及び外層3の両方に含まれていることが好ましく、特に、中間層2に含まれていることがより好ましい。
【0012】
本発明の実施形態に係る多層管10は、(B)熱膨張性材料を含む層の25℃雰囲気下での熱伝導率が0.200W/m・K以下である。(B)熱膨張性材料を含む層の25℃雰囲気下での熱伝導率が0.200W/m・Kを超えると、熱が伝わりやすくなることで蓄熱性が上昇し、保管時における十分な熱変形抑制性能が発揮できなくなる。(B)熱膨張性材料を含む層の25℃雰囲気下での熱伝導率は、蓄熱性を低下させ、保管時における十分な熱変形抑制性能を発揮する観点から、0.195W/m・K以下であることが好ましく、0.190W/m・K以下であることがより好ましく、0.185W/m・K以下であることがさらに好ましい。
【0013】
内層1の厚さは、0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、0.6mm以上2.0mm以下であることがさらに好ましい。
中間層2の厚さは、0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、0.6mm以上2.0mm以下であることがさらに好ましい。
外層3の厚さは、0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、0.6mm以上2.0mm以下であることがさらに好ましい。
多層管10の厚さは、0.6mm以上9.0mm以下であることが好ましく、1.2mm以上7.5mm以下であることがより好ましく、1.8mm以上6.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
多層管10における熱膨張性材料を含む層の膨張高さ倍率が、500℃で3分間加熱した際に8倍以上であることが好ましく、9倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましい。熱膨張性材料を含む層の膨張高さ倍率が、上記下限値以上であることで、火災時に火の熱によって管材が十分に膨張し、管を閉塞させることで必要な耐火性能が得られる。
熱膨張性材料が中間層2及び外層3の両方に含まれている場合には、中間層2及び外層3の両方の層の膨張高さ倍率が共に上記範囲内であることが好ましく、少なくとも中間層2の膨張高さ倍率が上記範囲内であることがより好ましい。
なお、膨張高さ倍率とは、500℃まで加熱して膨張させた際の倍率であり、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0015】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、(1)ポリ塩化ビニル単独重合体;(2)塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;(3)塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、必要に応じて上記塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
【0016】
上記(2)塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類などが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記(3)塩化ビニルをグラフト共重合する共重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合するものであれば、特に限定されず、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の物性低下が起こり、大きくなると溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、400~1,600が好ましく、500~1,500がより好ましく、600~1,400がさらに好ましい。
なお、上記平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K 6720-2:1999「プラスチック-塩化ビニルホモポリマー及びコポリマー(PVC)-第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0019】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法を採用することができ、例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
【0020】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法は、特に限定されず、従来公知の塩素化方法を採用することができ、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
【0021】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、添加剤等を配合する際に、同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に上記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。上記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋、水架橋性材料を使用した方法等が挙げられる。
【0022】
(熱膨張性材料)
本明細書において、熱膨張性材料は熱膨張性黒鉛以外のものであり、熱膨張性材料としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等の熱分解型発泡剤、及び、プロパン、ペンタン、ヘキサン、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素、窒素等の物理型発泡剤などが挙げられる。また、熱膨張性材料としては、熱膨張性マイクロカプセル・マイクロビーズやイントメッセント系難燃剤等も挙げられる。なお、熱膨張性材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
熱膨張性材料は、180℃に熱した際のガス発生量が50mL/g以下である。熱膨張性材料を180℃に熱した際のガス発生量が50mL/gを超えると、成形中に発泡してしまうことがあり、成形性が低下する。熱膨張性材料を180℃に熱した際のガス発生量は、成形中には発泡せず、十分な成形性が得る観点から、40mL/g以下であることが好ましく、30mL/g以下であることがより好ましく、20mL/g以下であることがさらに好ましい。
熱膨張性材料は、ガス発生量曲線における最大ガス発生温度が210℃以上であり、最大ガス発生温度での際のガス発生量が70mL/g以上℃である。ガス発生量曲線における最大ガス発生温度が210℃未満であると、成形中に発泡してしまうことがあり、成形性が低下する。ガス発生量曲線における最大ガス発生温度は、十分な成形性が得る観点から、220℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましい。熱膨張性材料のガス発生量曲線におけるのガス発生量が70mL/g未満であると、火災時に発泡せずに、管を閉塞させることができなくなり、十分な耐火性能が得られない。熱膨張性材料のガス発生量曲線における最大ガス発生温度でのガス発生量は、火災時に発泡し、管を閉塞させることで、十分な耐火性能を発揮する観点から、75mL/g以上であることが好ましく、80mL/g以上であることがより好ましく、85mL/g以上であることがさらに好ましい。
なお、ここでいうガス発生量曲線とは、化学発泡剤の温度-分解ガス発生挙動を示したもので、公知の方法にて測定することができる。例えば、化学発泡剤を試験管の中に入れ、その試験管をオイルバスにいれ、一定速度にて昇温させて、ガス発生量を測定し、最大ガス発生量を示す温度を決めることができる。このとき、温度を横軸に、ガス発生量を縦軸にプロットすることで、ガス発生量曲線が得られる。また、最大ガス発生温度とは、ガス発生量曲線において最大ガス発生量を示す温度である。
【0024】
多層管10に含まれる熱膨張性材料の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、6質量部以上18質量部以下であることが好ましく、7質量部以上17質量部以下であることがより好ましく、8質量部以上16質量部以下であることがさらに好ましい。多層管10に含まれる熱膨張性材料の含有量が、上記下限値以上であることで、火災時とうにおける多層管10の熱膨張性が十分となる。また、多層管10に含まれる熱膨張性材料の含有量が、上記上限値以下であることで、多層管10の強度が十分となる。
【0025】
(添加剤)
本発明の多層管には、その物性を損なわない範囲内で、無機充填材、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマー、難燃剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0026】
無機充填剤は、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。無機充填剤としては、具体的には、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、及び脱水汚泥等からなる群より選択される一種以上を挙げることができる。
【0027】
滑剤は、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミドからなる群より選択される一種以上を使用することができる。また、外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0028】
加工助剤は、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。加工助剤としては、例えば、重量平均分子量10万~200万のアルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などを挙げることができる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。加工助剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
衝撃改質剤は、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。衝撃改質剤としては、例えば、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、及びアクリルゴム等からなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0030】
耐熱向上剤は、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。耐熱向上剤としては、例えば、α-メチルスチレン系、N-フェニルマレイミド系樹脂等を使用することができる。
【0031】
酸化防止剤は、特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。
【0032】
光安定剤は、特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤は、特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0034】
顔料は、特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料等が挙げられる。顔料は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0035】
可塑剤は、特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジー2―エチルヘキシルフタレート、及びジー2―エチルヘキシルアジペートが挙げられる。可塑剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0036】
熱可塑性エラストマーは、特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなるが挙げられる。熱可塑性エラストマーは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0037】
難燃剤は、特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、臭素系化合物、トリアジン環含有化合物、亜鉛化合物、リン系化合物、ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、及び酸化アンチモン等が挙げられる。難燃剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
上述した添加剤をポリ塩化ビニル系樹脂に混合する方法としては、公知の方法を広く採用することが可能である。具体的には、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0039】
<多層管の使用用途>
以上にしてなる本発明の多層管10は、優れた成形性を有し、高い熱膨張性を有しつつも、保管中の熱変形を抑制し、建築物の排水管、ダクト及び電線管等の配管として好適に使用可能である。また、本発明の多層管10は、配管本体の構成材料として好適に使用可能であるだけでなく、配管の継手の構成材料としても、好適に使用可能である。
【0040】
<多層管の製造方法>
図2は、本発明の一実施形態に係る多層管10を製造するために用いられる製造装置20を模式的に示す平面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る多層管10を製造するために用いられる製造装置20の模式的に示す正面図である。
多層管10を製造するための製造装置20は、図2,3に示すように、内外層押出機11と、中間層押出機12と、金型13と、冷却水槽15と、引取機16と、切断機17とを備える。内外層押出機11及び中間層押出機12には、金型13が接続されている。金型13には、冷却水槽15が接続されている。冷却水槽15には、引取機16が接続されている。引取機16には、切断機17が接続されている。
【0041】
本発明の多層管の製造方法は、まず、内層の材料及び外層の材料を、ホッパーを利用して内外層押出機11へ投入し、内外層押出機11内で内層の材料及び外層の材料を溶融混練し、金型13に押し出す。また、中間層の材料を、ホッパーを利用して中間層押出機12へ投入し、中間層押出機12内で中間層の材料を溶融混練し、金型13に押し出す。
【0042】
次いで、金型13において、内層の材料及び外層の材料を溶融混練したもの、及び、中間層の材料を溶融混練したものを加熱し、3層構造を有する未硬化の多層管を成型する。
金型13での加熱温度は、内層、中間層及び外層の材料の流動性を向上させつつ、熱膨張性材料を発泡させない観点から、160℃以上200℃以下であることが好ましく、170℃以上195℃以下であることがより好ましく、180℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。
金型13での加熱時間は、内層、中間層及び外層の材料が金型13に存在する時間であり、内層、中間層及び外層の材料の流動性を向上させる観点から、3分以上10分以下であることが好ましく、4分以上9分以下であることがより好ましく、5分以上8分以下であることがさらに好ましい。
【0043】
次いで、金型13の出口から、3層構造を有する未硬化の多層管が押し出され、冷却水槽15へ送られる。
冷却水槽15には、未硬化の多層管を所定寸法に成形するための管外面成形用チューブ14が取り付けられており、未硬化の多層管の外面を、管外面成形用チューブ14と接触した状態で冷却する。図4は、製造装置における金型13及び管外面成形用チューブ14を拡大して示す断面図である。図4に示すように、内外層押出機11により溶融混練された内層の材料21及び外層の材料23と、中間層押出機12により溶融混練された中間層の材料22とを、中間層の断面形状の外周縁の形状が真円となるように設計された金型13に注入し、未硬化の多層管10´を成形する。未硬化の多層管10´は、未硬化の内層31及び未硬化の外層33と、中間層の材料22により形成される未硬化の中間層32とを備える。中間層の材料22は、未硬化の多層管10´を金型13より吐出されると発泡し、未硬化の中間層32が形成される。未硬化の多層管10´を管外面成形用チューブ14内に挿入し、未硬化の多層管10´は所定寸法に型成形されながら冷却水槽15内で冷却される。
冷却水槽15での冷却温度は、未硬化の多層管10´を十分に硬化させる観点から、14℃以上26℃以下であることが好ましく、16℃以上24℃以下であることがより好ましく、18℃以上22℃以下であることがさらに好ましい。
冷却水槽15での冷却時間は、未硬化の多層管10´が冷却水槽15に存在する時間であり、内層の材料及び外層の材料を十分に硬化させる観点から、4分以上16分以下であることが好ましく、6分以上14分以下であることがより好ましく、8分以上12分以下であることがさらに好ましい。
【0044】
次いで、引取機16を用いて、冷却水槽15で冷却された多層管10を引き取り、また、切断機17を用いて、引取機16から送られてきた多層管10を所定の長さに切断する。このようにして、所定の長さを有する多層管10を得る。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0046】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
(1)中間層の材料の作製
以下の配合組成を有する材料を混合した。
・ポリ塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-1000R」、平均重合度1,000):100質量部
・光安定剤(日東化成社製「TVS#8832」):2.0質量部
・加工助剤(三菱ケミカル社製「P710」):1.0質量部
・熱膨張性材料(大塚化学社製「P-3」(180℃ガス発生量:19ml/g、最大ガス発生温度:260℃、最大ガス発生温度でのガス発生量:98ml/g)):8.0質量部
【0048】
<熱膨張性材料のガス発生量>
熱膨張性材料を1.0g入れた試験管を、測定温度に設定したオイルバス中に挿入して5分間加熱し、熱分解して発生するガスをガラス器具で採集し、20℃、1気圧の状態における発生ガスの体積から、ガス発生量を算出した。
【0049】
(2)内層及び外層の材料の作製
以下の配合組成を有する材料を混合した。
・ポリ塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-1000R」、平均重合度1,000):100質量部
・光安定剤(日東化成社製「TVS#8832」):2.0質量部
・加工助剤(三菱ケミカル社製「P710」):1.0質量部
【0050】
(3)試験サンプルの作製
上記(1)で作製した中間層の材料を、180℃の8インチミキシングロール(安田精機製作所製)で3分間ロール混練した。次いで、180℃のプレス機(東邦マシナリー株式会社製)によって20MPaで2分間プレス成形した。このように、厚さ3mmの中間層用の樹脂シートを作製した。
上記(2)で作製した内層及び外層の材料を、180℃の8インチミキシングロール(安田精機製作所製)で3分間ロール混練した。次いで、180℃のプレス機(東邦マシナリー株式会社製)によって20MPaで2分間プレス成形した。このように、厚さ0.3mmの内外層用の樹脂シートを作製した。
次に、作製した内外層用の樹脂シートで中間層用の樹脂シートを挟み込んだ状態で、200℃のプレス機(東邦マシナリー株式会社製)で1分間プレス成形して厚さ3mmの試験サンプルを作製した。
【0051】
[実施例2]
中間層の材料として、熱膨張性材料の配合量を16.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
【0052】
[実施例3]
中間層の材料として、熱膨張性材料を(大塚化学社製「#3245I」(180℃ガス発生量:10mL/g、最大ガス発生温度:240℃、最大ガス発生温度でのガス発生量:262mL/g))に変更した以外は実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
【0053】
[比較例1]
中間層の材料として、熱膨張性材料を熱膨張性黒鉛(数平均径D50:300μm、180℃ガス発生量:5mL/g、最大ガス発生温度:600℃、最大ガス発生温度でのガス発生量:220mL/g)に変更した以外は実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
なお、膨張黒鉛のガス発生量については、常温での比容積(mL/g)と加熱後の比容積の差で評価して膨張率(mL/g)を算出し、その値をガス発生量とした。具体的には、石英ビーカーに膨張黒鉛を1g投入し、加熱した電気炉に1分間入れた後、電気炉から取り出し室温になるまで放冷した。その後、膨張した材料のゆるみ見かけ比重(g/mL)を測定し、下記式により膨張倍率を算出した。
膨張率=1/ゆるみ見かけ比重
【0054】
[比較例2]
中間層の材料として、熱膨張性材料を(永和化成工業社製「ポリスレンEE515」(180℃ガス発生量:90mL/g、最大ガス発生温度:160℃、最大ガス発生温度でのガス発生量:90mL/g))に変更した以外は実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
【0055】
[比較例3]
中間層の材料として、熱膨張性材料を(永和化成工業社製「ポリスレンEE204」(180℃ガス発生量:8mL/g、最大ガス発生温度:245℃、最大ガス発生温度でのガス発生量:18mL/g))に変更した以外は実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
【0056】
(成形性評価)
ロールおよびプレス機での成形後に、気泡の発生有無の確認を行った。
<評価基準>
〇:直径1mm以上の発泡無し
×:直径1mm以上の発泡有
【0057】
(熱伝導率測定)
得られた試験サンプルを、長さ:100±1mm、幅:50±1mm、厚さ:3±0.2mmに切り出し試験片を得た。切り出した試験片を3枚重ねた状態で、25℃雰囲気化において、熱線式熱伝導率測定装置(京都電子工業社製「QTM-500」)を用いて熱伝導率を測定した。
<評価基準>
〇:0.200W/m・K未満
×:0.200W/m・K以上
【0058】
(膨張高さ倍率測定)
得られた試験サンプルを、長さ:30±1mm、幅:30±1mm、厚さ:3±0.2mmに切り出して試験片を得た。試験片を500℃に設定した電気炉に3分間入れて、膨張させた。膨張させたサンプルの厚み方向の長さを測定し、3点測定の平均値を膨張高さ倍率として算出した。
膨張高さ倍率=膨張後試験サンプル厚さ/膨張前試験サンプル厚さ
<評価基準>
〇:8倍以上
×:8倍未満
【0059】
【表1】
【0060】
なお、上記では、シート状の成形体について試験を行ったが、管状の成形体を用いて試験した場合でも同様の結果が得られる。
【符号の説明】
【0061】
1…内層
2…中間層
3…外層
10…多層管
10´…未硬化の多層管
11…内外層押出機
12…中間層押出機
13…金型
14…管外面成形用チューブ
15…冷却水槽
16…引取機
17…切断機
20…製造装置
21…内層の材料
22…中間層の材料
23…外層の材料
31…未硬化の内層
32…未硬化の中間層
33…未硬化の外層
図1
図2
図3
図4