(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136657
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】架装用自走台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20220913BHJP
A47B 31/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B62B3/00 Z
A47B31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036369
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】500573761
【氏名又は名称】サクラ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】天野 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴大
(72)【発明者】
【氏名】野澤 彰文
(72)【発明者】
【氏名】長江 浩
(72)【発明者】
【氏名】西原 和宏
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA11
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050HH07
(57)【要約】
【課題】 自走車輌の基台部とも言うべき架装用自走台車を汎用的なものとし、作業車輌全体を構成するにあたり、コスト低減を達成し得る新規な架装用自走台車の開発を技術課題とした。
【解決手段】 本発明の架装用自走台車1は、フレーム2と、このフレーム2の前後方向の一方の端部寄りに設けられる左右一対で且つ独立的に電動駆動される駆動輪3と、フレーム2に対し、駆動輪3と反対の端部寄りに設けられる左右一対の自在キャスタを適用した従動輪4と、駆動電源たるバッテリー5と、必要な補器類とを具えて成り、フレーム2は、上面のデッキ枠面20aによって、目的の作業を行うための作業機材100を載置する平面を確保するものであり、且つこのデッキ枠面20aは、駆動輪3の上端より下方に位置することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
このフレームの前後方向の一方の端部寄りに設けられる左右一対で且つ独立的に電動駆動される駆動輪と、
前記フレームに対し、駆動輪と反対の端部寄りに設けられる左右一対の自在キャスタを適用した従動輪と、
駆動電源たるバッテリーと、
必要な補器類と
を具えた架装用自走台車であって、
前記フレームは、上面をデッキ枠面とし、このデッキ枠面によって、目的の作業を行うための作業機材を載置する平面を確保するものであり、且つこのデッキ枠面は、駆動輪上端より下方に位置するように構成されることを特徴とする架装用自走台車。
【請求項2】
前記バッテリーは、駆動輪と反対側のフレーム端部に着脱自在に搭載されることを特徴とする請求項1記載の架装用自走台車。
【請求項3】
前記架装用自走台車は、バッテリーを取り付けた状態で前後方向の重心位置が、フレームの長手方向の中間部位であることを特徴とする請求項1または2記載の架装用自走台車。
【請求項4】
前記フレームの長手方向の中間部位側面には、作業機材を固定するための固定用ブラケットが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の架装用自走台車。
【請求項5】
前記固定用ブラケットは、板状であって、デッキ枠面より上方に突出するように形成され、且つ固定用の取付用孔を具えていることを特徴とする請求項4記載の架装用自走台車。
【請求項6】
前記左右一対の従動輪は、浮き上がり防止用の可動構造を具えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の架装用自走台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療施設、宿泊施設、オフィス等の屋内において薬剤噴霧(消毒)、配膳(下膳)、運搬(搬入)などの各種作業を省力化するのに適した作業台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば病院を始めとする医療施設などでは、感染症対策として院内の消毒など防疫作業や、入院患者への食事提供にあたっての配膳(下膳)作業などにおいて自動化・省力化が要求されている。
このような自動化・省力化を実現するための最も基本的な対応機材として各種の作業機材を搭載して自走ないしはアシスト走行する台車が挙げられる(例えば特許文献1、2参照)。
ところで、このような台車は、その作業目的に応じて種々の作業機材を搭載するものであり、それぞれフレーム構成等も含めて専用設計する手法が広く採られている。このような手法は当然ながら、特殊用途であるほど生産台数も限られ、装置全体としてのコストダウンを図るには一定の限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-231917号公報
【特許文献2】特開2020-113134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、上述したような自走車輌の基台部とも言うべき架装用自走台車を汎用的なものとし、作業車輌全体を構成するにあたってのコスト低減を達成し得る新規な架装用自走台車の開発を技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の架装用自走台車は、
フレームと、
このフレームの前後方向の一方の端部寄りに設けられる左右一対で且つ独立的に電動駆動される駆動輪と、
前記フレームに対し、駆動輪と反対の端部寄りに設けられる左右一対の自在キャスタを適用した従動輪と、
駆動電源たるバッテリーと、
必要な補器類と
を具えた架装用自走台車であって、
前記フレームは、上面をデッキ枠面とし、このデッキ枠面によって、目的の作業を行うための作業機材を載置する平面を確保するものであり、且つこのデッキ枠面は、駆動輪上端より下方に位置するように構成されることを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の架装用自走台車は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記バッテリーは、駆動輪と反対側のフレーム端部に着脱自在に搭載されることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項3記載の架装用自走台車は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記架装用自走台車は、バッテリーを取り付けた状態で前後方向の重心位置が、フレームの長手方向の中間部位であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載の架装用自走台車は、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記フレームの長手方向の中間部位側面には、作業機材を固定するための固定用ブラケットが設けられていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載の架装用自走台車は、前記請求項4記載の要件に加え、
前記固定用ブラケットは、板状であって、デッキ枠面より上方に突出するように形成され、且つ固定用の取付用孔を具えていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項6記載の架装用自走台車は、前記請求項1から5のいずれか1項記載の要件に加え、
前記左右一対の従動輪は、浮き上がり防止用の可動構造を具えていることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、作業機材を載置するためのデッキ枠面が平面を確保するように構成されるため、フレーム自体の上部が構成し易く、更にはフレームに載せる作業機材の載置面(底面)も設計し易く、シンプルな構成が採り得る。
またデッキ枠面が、駆動輪上端より下方に位置するように構成され、デッキ枠面の高さが低く抑えられるため、作業機材を載せた状態の作業車輌でも、全体の車高や重心位置を低い高さに抑えることができる。このため作業車輌(架装用自走台車)の走行安定性も向上させることができる。もちろん、作業機材を載置するためのデッキ枠面の高さが低いことにより、作業機材そのものをフレーム上に載せ易いことも効果の一つとして挙げられる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、バッテリーが、駆動輪と反対側のフレーム端部に設けられるため、バッテリーを搭載したときの架装用自走台車において前後の重量バランスが取り易く、より安定した走行が行い得る。すなわち駆動輪は、モータユニットを一体的に具えると重く、バッテリーも重い。このため重いバッテリーを駆動輪と反対側に設けることにより、バッテリーを搭載したときの架装用自走台車において前後の重量バランスの偏りを軽減、もしくはほぼなくすことができる。逆に言えば、重い駆動輪側にバッテリーを装着してしまうと、駆動輪側が従動輪側に比べ重くなってしまい、前後の重量バランスで考えると好ましくない。
またバッテリーをフレームに対し着脱自在とするため、充電する際には、バッテリーだけをフレームから取り外して、屋内等に運搬すれば済むため、充電が容易に行える。すなわち、現在、一般的な仕様となっている電気自動車のように、架装用自走台車全体を充電設備の設置場所に移動させる必要がなく、極めて充電作業が行い易いものである。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、架装用自走台車はバッテリーを装着した状態で、前後方向の重心位置が、フレームの長手方向の中間部位となるため、より一層、前後方向の重心を安定化させることができ、更なる走行安定性の向上に寄与する。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、フレームには、作業機材を固定するための固定用ブラケットが設けられるため、作業機材をフレームに確実に且つ強固に取り付けることができる。
また固定用ブラケットは、フレームの長手方向の中間部位に設けられるため、重い作業機材を搭載した場合でも、当該固定用ブラケットによって、フレーム長手方向中間部が下方に大きく撓むことを防止することができる。
【0015】
また請求項5記載の発明によれば、固定用ブラケットには、作業機材を固定するための取付用孔が設けられるため、作業機材をフレームに取り付ける際、これを利用してボルト・ナットで固定することができ、取付作業が極めて効率的に行い得る。
【0016】
また請求項6記載の発明によれば、左右一対の従動輪は、浮き上がり防止用の可動構造を具えるため、例えば部分的な突起や凹凸がある場所でも架装用自走台車は、左右の従動輪を接地させ、安定した走行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の架装用自走台車に、例えば消毒用の液剤散布ユニットを搭載して消毒作業を行う様子、具体的には壁面に設けられた手摺りを消毒する様子を示す斜視図である。
【
図2】本発明の架装用自走台車の分解斜視図である。
【
図3】架装用自走台車のフレームを示す斜視図である。
【
図4】架装用自走台車の平面図(a)、並びに側面図(b)である。
【
図5】架装用自走台車に、例えば配膳作業(または下膳作業)を行うための配膳ラックを搭載した様子を示す正面図(a)、並びに側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の架装用自走台車1の形態は、以下の実施例に示すとおりであるが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0019】
本発明の架装用自走台車1は、消毒や配膳あるいは運搬など目的の作業に応じて、ベースとなる基台部(後述するフレーム2)は共通して使用しながら、作業に応じて作業機材100を載せ替えられるようにした自走式の台車である。
すなわち、本発明の架装用自走台車1は、目的の作業しか行わない専用台車(車輌)ではなく、色々な作業に対応できるようにした汎用台車であることが前提となる。これにより架装用自走台車1の汎用性を向上させ、架装用自走台車1と作業機材100を含めた作業車輌101としてのトータルでのコスト低減を達成できるようにしたものである。もちろん自走式であることから、自動化・省力化も達成することができる。
ここで作業車輌101とは、上述したように架装用自走台車1に、目的の作業を行う作業機材100を搭載した車輌を称するものである。
【0020】
架装用自走台車1は、一例として
図1・
図2・
図4に示すように、台車としての骨格部材を形成するフレーム2と、このフレーム2の前後方向(長手方向)の一方の端部寄りに設けられる左右一対で且つ独立的に電動駆動される駆動輪3と、前記フレーム2に対し、駆動輪3と反対側の端部寄りに設けられる左右一対の自在キャスタを適用した従動輪4と、駆動電源たるバッテリー5と、必要な補器類とを具えて成るものである。
ここで上記「(必要な)補器類」には、例えば架装用自走台車1の走行を制御するコントローラ6が挙げられる。ただし、この補器類に、前記作業機材100は含まれないものである。
【0021】
そして、前記フレーム2は、上面をデッキ枠面20aとし、このデッキ枠面20aによって、前記作業機材100を載置する平面を確保するものであり、且つこのデッキ枠面20aは、一例として
図4(b)に示すように、駆動輪3の上端より下方に位置するように構成される。
ここでデッキ枠面20aによって平面状の載置面が確保されるため、フレーム2自体の上部が構成し易く、更にはフレーム2に載せる作業機材100の載置面(底面)も設計し易く、シンプルな構成が採り得る。
またデッキ枠面20aが、駆動輪3の上端より下方に位置するように構成されることから、作業機材100を載せた状態の作業車輌101でも、全体の車高や重心位置を低い高さに抑えることができ、作業車輌101(架装用自走台車1)の走行安定性も向上させることができる。もちろん、デッキ枠面20aの高さが低いことにより、作業機材100そのものをフレーム2上に載せ易いことも効果の一つとして挙げられる。
以下、架装用自走台車1を構成する各構成部材(フレーム2、駆動輪3、従動輪4、バッテリー5、コントローラ6)について説明する。
【0022】
まずフレーム2は、上述したように架装用自走台車1の骨格を成すものであり、一例として
図1~
図4に示すように、上記デッキ枠20の他、サイドビーム21、クロスビーム22、駆動輪サポート23を具えて成り、これらはいずれも金属製の部材で形成されている。
このうちサイドビーム21は、フレーム2の左右両サイドを構成する枠部材であり、例えば矩形筒状断面を有する金属製の角パイプ材で形成される。
また、このサイドビーム21の前後方向(長手方向)の中間部位には、外側面に固定用ブラケット24が取り付けられ、これを利用して作業機材100(アダプタフレーム103)が安定して載置・固定される。
【0023】
固定用ブラケット24も金属製の素材で形成され、このものの下部がデッキ枠20の外側面に溶接等で接合され、上部がデッキ枠面20aの上方に突出するように設けられる。また、固定用ブラケット24には、前後方向に幾らか離れて二カ所の固定用の取付用孔24hが形成されている。この取付用孔24hは、後述する作業機材100におけるアダプタフレーム103との取り付けを図るために、固定用ボルトを通すための孔である。
【0024】
またクロスビーム22は、前記サイドビーム21に対しほぼ直交状態に取り付けられる枠部材であり、本実施例では、五つのクロスビーム22が、フレーム2の前後方向において適宜の距離を隔てて溶接などで接合される。ここで五つのクロスビーム22を区別して示すには、前方の駆動輪3側から22a、22b、22c、22d、22eと符号を付して区別する。また、最も前方側のクロスビーム22aは、サイドビーム21の前端部近傍に設けられ、その次のクロスビーム22bは、このクロスビーム22aに寄った位置に設けられている。
【0025】
一方、最も後方側のクロスビーム22eは、サイドビーム21の後端部において上向きに突出する板状部材で形成され、この板状の平面を利用して前記バッテリー5を安定的に保持するようにしている。また、その手前側のクロスビーム22dは、このクロスビーム22eに寄った位置に設けられている。
【0026】
また、真ん中のクロスビーム22cは、サイドビーム21のほぼ中央部(前後方向のほぼ中央部)に設けられる。そしてクロスビーム22c~その前側のクロスビーム22bとの間隔(クロスビーム22c~その後側のクロスビーム22dとの間隔)が、クロスビーム22a~22bとの間隔(クロスビーム22d~22eとの間隔)よりも大きくなるように構成されている。なお、クロスビーム22a~22dも、例えば金属製の角パイプ材で形成される。
【0027】
また、フレーム2の前後方向中央部、すなわちクロスビーム22cが設けられる部位は、バッテリー5をフレーム2に装着した状態で、架装用自走台車1の重心位置となるように構成される。
因みに、最も後方側の板状のクロスビーム22eは、バッテリー5の取り付けに寄与するだけでなく、後述する緊急停止ボタン25を取り付けるためのスイッチブラケット26を固定するベース部材となるものである。
【0028】
次に、駆動輪サポート23について説明する。
駆動輪サポート23は、フレーム2に溶接等で接合され、駆動輪3の取り付けや駆動を支援する作用を担うものである。
駆動輪サポート23は、駆動輪3の固定を図る取付ブラケット23aと、駆動輪3の駆動制御部材や制御補助部材を固定するための補機パネル23bとを具えて成り、以下、これらについて説明する。
取付ブラケット23aは、フレーム2の前端部から下方に突出するように設けられる。また、この取付ブラケット23aには、部材の前後方向中央部において下部に開放する切欠きが形成され、この切欠きに駆動輪3の軸部を収めながら、この軸部にナットを螺合させることにより、駆動輪3をフレーム2に取り付ける構成を採る(
図2参照)。
なお取付ブラケット23aの前縁及び後縁は、補強のために適宜、折り返し状に形成される。また本実施例では、平面から視てクロスビーム22a~クロスビーム22bの間に取付ブラケット23aが設けられる。
【0029】
補機パネル23bは、フレーム2の下方から、クロスビーム22aとクロスビーム22bとの間を塞ぐように溶接などで取り付けられて成り、この補機パネル23bを利用して、駆動輪駆動時においてモータユニット31に給電するための制御機器や、緊急停止ボタン25とモータユニット31との電気的接続を図る制御機器、あるいはコントローラ6による制御指令を駆動輪3の回転指令に変換伝達するための制御機器などが一パッケージ状態で取り付けられる。
【0030】
またフレーム2には、従動輪4の取り付けを支援する従動輪サポート27が溶接等によって取り付けられる。
ここで本実施例では、例えば架装用自走台車1が部分的な突起や凹凸がある場所を走行する場合でも、常に左右の従動輪4が接地し得るように、従動輪4の浮き上がりを防止する可動構造40を具えるものである。すなわち、架装用自走台車1は、可動構造40によって左右の従動輪4が上下動できるように構成されている。
このため従動輪サポート27は、一例として
図2に示すように、前記クロスビーム22dのほぼ中央から下方に伸びるように短寸の角パイプ材を設け、この角パイプ材の前後両側に、更に板材を下方に突出状態に溶接して成るものである。そして、当該板材に形成したピボット孔28に、従動輪4を間接的に保持した従動輪アーム41を、傾倒自在に取り付けることによって、前記可動構造40を構成している。なお、可動構造40や従動輪アーム41については後述する。
【0031】
また、上述したように板状のクロスビーム22eの上部には、ここから後方側に突出するようにスイッチブラケット26が設けられ、このスイッチブラケット26の上部に緊急停止ボタン25が設けられる。
この緊急停止ボタン25は、例えば走行中に架装用自走台車1が大きく傾いた場合などに、作業者が当該ボタンを押すことで、バッテリー5からの給電を遮断し、架装用自走台車1の走行を緊急停止させるものである。
【0032】
更に板状のクロスビーム22eの下部では、一例として
図4に示すように、ここから後方に突出するバッテリーサポート29が設けられる。
このバッテリーサポート29は、バッテリー5をフレーム2に装着する際の収容部となる部位であり、この収容部たるバッテリーサポート29は、板状のクロスビーム22eから後方側に張り出すブラケットによって保持・固定されている。
なお、バッテリー5の収納部を形成するバッテリーサポート29の底部には、例えば
図4(a)に示すように、給電ピン51が上向きに突出状態に設けられており、バッテリー5をフレーム2に装着した際には、バッテリー5が当該給電ピン51と接続されるようになっており、これによりバッテリー5から駆動輪3(モータユニット31)への給電が行える構成となっている。
【0033】
また収容部たるバッテリーサポート29に収めたバッテリー5の保持を、より確実に行うために本実施例では、一例として
図1・
図2に示すように、板状のクロスビーム22eにバッテリー保持バンド52が設けられるものであり、これはいわゆるゴムバンドの両端にフック金具を設けた保持部材である。そして、このバッテリー保持バンド52によって、フレーム2に収容したバッテリー5の上部を取り囲むように張設するものである。また、このため装着状態のバッテリー5は、クロスビーム22e側に押さえ付けられ、確実に且つ強固に保持される構造となっている。
もちろんバッテリー保持バンド52は、一端側がクロスビーム22eに対し取り外しできるように構成されており、バッテリー5の着脱操作がスムーズに行えるように考慮されている。なお、バッテリー5の具体的な着脱操作は、電動自転車や電動バイクなどと同様に、装着時には上方から嵌め込むように収容するとともに、取り外し時には、装着状態のバッテリー5を上方に引き上げるようにして取り外す操作となる。
【0034】
次に、駆動輪3について説明する。
駆動輪3は、このものの回転を担うモータユニット31を具え、このモータユニット31と一体でフレーム2に取り付けられる。なお、モータユニット31には、駆動輪3の回転軸となる軸部も含まれる。
また、このモータユニット31は、左右の駆動輪3に対し、別々に設けられており、例えば左右の駆動輪3を互いに逆方向に回転させることができるように構成されている。これにより、駆動輪3自体をその場で(左右の駆動輪3を中心として)架装用自走台車1を転回させることができ、狭い場所や通路で架装用自走台車1を使用する場合でも、小さな回転半径で架装用自走台車1を転回させることができ、架装用自走台車1の使い勝手をより向上させ得るものである。
【0035】
次に、可動構造40について説明する。
可動構造40は、上述したように例えば架装用自走台車1が部分的な突起がある場所などを走行した場合、左右の従動輪4がともに接地し得るようにし、従動輪4の浮き上がりを防止する構造である。すなわち、可動構造40によって架装用自走台車1は、左右の従動輪4が上下動できる構造となっている。
可動構造40は、一例として
図2に示すように、従動輪アーム41と、ピボット42と、バランサスプリング43と、従動輪取付プレート44とを具えて成り、以下これらについて説明する。
【0036】
従動輪アーム41は、本実施例では角パイプ材で形成され、クロスビーム22dの下方において、このものとほぼ平行になるように設けられる(
図1参照)。
また、この従動輪アーム41は、前記従動輪サポート27の前後に設けられた板材に対し、ボルト・ナットを適用したピボット42によって傾倒自在に接続される。これにより左右方向に設けられる従動輪アーム41が、ピボット42を中心として、その両端を上下に揺動させ得るように構成される。
更に、上記
図1・
図4(b)に示すように、フレーム2のサイドビーム21と、従動輪アーム41との間には、上下一対の保持体43aを介してバランサスプリング43が設けられ、更に従動輪アーム41の下方には従動輪取付プレート44が設けられ、この従動輪取付プレート44に対して従動輪4たる自在キャスタが取り付けられる。
このようにフレーム2と従動輪アーム41との間にバランサスプリング43を介在させることによって、例えば部分的な突起や凹凸がある場所などを走行する場合でも、従動輪アーム41が従動輪4を伴って左右方向に揺動自在に構成され、これにより架装用自走台車1は、常に従動輪4を接地させた安定走行が行い得る。つまり可動構造40によって、左右の従動輪4の接地高さを異ならせることができるのである。
【0037】
次に、コントローラ6について説明する。
コントローラ6は、架装用自走台車1の走行(自走)状態を制御するものであって、例えば
図2に示すように、作業中、作業者(操縦者)が手に持つ、概ねボックス状のコントロールユニット61と、このコントロールユニット61から上方に突出するように設けられ、種々の方向に傾倒させ得るように構成されたマニュアルスティック62とを具えて成り、作業者が倒したマニュアルスティック62の方向に、架装用自走台車1が進むように(前進・後退・転回を行うように)構成されている。
なお、上記
図2では、有線タイプのコントロールユニット61を図示したが、無線タイプ(いわゆるラジコン)のコントロールユニット61を適用することも可能である。
また上記補機パネル23bに取り付けられた制御機器も、当該コントローラ6に包含されるものである。
【0038】
因みに、架装用自走台車1を走行させるには、このようなマニュアル操縦だけでなく、完全自走も可能である。
具体的には、例えば
図1に示すように、予め走行路側に磁気や光などを利用したガイドマーカ63を設置しておくとともに、フレーム2の下面に、このガイドマーカ63を検知するルートセンサ64を設けておき、架装用自走台車1が自らルートを検知しながら、決まった経路を無人で自動走行する形態が採り得る。
このような完全自走の場合には、フレーム2の周囲、具体的には進行方向前方、左右両側、後方などに人感センサやカメラ等を併設しておき、架装用自走台車1が人や障害物に接近した場合(人や障害物から接近してくることも想定される)には、これを人感センサやカメラ等で感知して、素早く架装用自走台車1の走行を停止できるような制御形態を採っておくことが好ましい。
【0039】
次に、作業機材100をフレーム2上に固定するためのアダプタフレーム103について説明する。
作業機材100の一構成部材であるアダプタフレーム103は、フレーム2をより汎用的に使用するためのアダプタ部材である。すなわち上記作業機材100は、目的の作業に応じて搭載する実作業機器の大きさや形状等、仕様が種々相違するため、各種の作業機材100をフレーム2に安定的に搭載・固定するには、例えば
図2に示すように、作業機材100における上記相違を吸収するようなアダプタフレーム103を、フレーム2と作業機材100との間に設けるものである。このため作業機材100をフレーム2に搭載するには、まずフレーム2上にアダプタフレーム103を取り付け、このアダプタフレーム103上に、目的の作業に応じた作業機材100を搭載・固定する態様となる。これによりアダプタフレーム103の上面は、目的の作業を行う作業機材100に応じて種々異なる仕様(形態)に形成されるものの、各種異なる作業においてフレーム2そのものは共通して使用することができる。
なお、アダプタフレーム103を「フレーム」と称したものの、このものは必ずしも枠状または格子状に形成される必要はなく、例えば一枚の偏平な板部材で形成されても構わないし(上面に適宜の凹凸を設け、作業機材100を安定して載置することが好ましい)、枠状フレームの上面のみ適宜の凹凸を有した板部材で覆うようにしても構わない。
また、このアダプタフレーム103には、例えば路面状況等によって走行中に発生し得る振動を吸収し得るようなクッション素材を具えることが可能である。
【0040】
更にアダプタフレーム103をフレーム2に固定するにあたっては、主に上記固定用ブラケット24(取付用孔24h)を利用して側部の固定が図られる。また、このため各種のアダプタフレーム103において固定用ブラケット24との取付仕様は共通化させることができる。また、アダプタフレーム103をフレーム2に固定する際、前後方向の位置決めを図るには、例えば上記
図2に示すように、クロスビーム22(
図2ではクロスビーム22aとクロスビーム22d)に係止するような板材(位置決め体103a)をアダプタフレーム103から下垂状に設けることによって実現することができる。
もちろん、上述したアダプタフレーム103は、必ずしも必須の構成部材ではなく、フレーム2上に、直に作業機材100を設けることも可能である。
【0041】
次に、作業機材100について説明する。
作業機材100は、目的に応じた実作業を行う機材であり、その形状により必要に応じて、上記アダプタフレーム103の上部に搭載される。具体的には、例えば
図1に示すような液剤散布ユニット104や、
図5に示すような配膳ラック105が挙げられる。
ここで上記
図1では、建物通路(廊下)の壁面に据え付けられた手摺りHを消毒する形態を図示した。このような場合、架装用自走台車1は、壁面に沿って、ほぼ一定の間隙を保ちながら走行することになるため、通路にガイドマーカ63を設置しておくことにより、確実な無人走行、ひいては無人消毒作業が行い得る。
もちろん、消毒作業(薬剤散布)は、このような手摺りHに限定されるものではなく、例えば建物利用者(歩行者)の手が触れるぐらいまでの高さの壁面を主対象として消毒作業を行うことも可能であるし、床面全体を消毒対象とすることも考えられる。因みに、その際の噴霧ノズルNは、消毒対象に応じたものが適宜付け替えられるようにしておくことが好ましい。
また上記
図5は、例えば医療施設や刑務所などにおける食事の配膳車として本架装用自走台車1を適用した形態である。なお、上記
図5では、一台の架装用自走台車1を単独で走行させるような形態を示したが、幾つかのフレーム2を直列状に連ねて、連結走行する形態も採り得る。
因みに、上述したように前記アダプタフレーム103は、作業機材100に包含される概念とする。
【0042】
本発明の架装用自走台車1は、以上述べたような基本構造を有するものであって、以下、この架装用自走台車1を適用した作業の作動態様の一例について説明する。
(1)アダプタフレームの取り付け
実質的な作業を行うにあたっては、例えば上述したようにフレーム2の上部にアダプタフレーム103を固定する。この固定には、一例として
図2に示すように、前記固定用ブラケット24や位置決め体103aを適用すると、スムーズに且つ確実に行うことができる。なお、アダプタフレーム103をフレーム2に固定する作業は、どの作業を行う際にも同じ作業とすることが好ましい。
【0043】
(2)作業機材の搭載
その後、このアダプタフレーム103の上部に、目的の作業を行う作業機材100を搭載し、走行中、移動しないように固定する(取り付ける)。
【0044】
(3)実作業(走行)
このような事前準備が終了したら、架装用自走台車1を走行させて実質的な作業を行う。
ここで架装用自走台車1の走行は、例えば
図2に示すように、マニュアル操縦で行うことが可能である。これは例えば作業者が、ボックス状のコントロールユニット61を保持しながら、マニュアルスティック62をいずれかの方向に傾倒させて、この操作に応じて架装用自走台車1を前進・後退・転回させる形態である。
なお、このようなマニュアル操作による走行は、走行面にガイドマーカ63が設置し難い場合や、作業者が周囲の状況、例えば障害物の出現を確認しながら走行させることが好ましい場合などに適している。
【0045】
(4)実作業(他の走行)
また、架装用自走台車1を走行させるには、例えば
図1に示すように、予め走行面に磁気や光などを利用したガイドマーカ63を設置しておくとともに、フレーム2の下面にこのガイドマーカ63を検知するルートセンサ64を設けておき、架装用自走台車1が決まったルートを無人で走行するような形態も採り得る。
なお、このような完全自走の場合には、制御機器にタイマーを組み込んでおけば、作業車輌101が定時に決まった経路で目的の場所まで自動で赴き、適宜の時間、目的の場所に待機(滞在)した後、定時に決まったルートで自動で戻ってくるような形態が可能となる。因みに、このような形態は、医療施設や刑務所などの食事の配膳・下膳などに特に好適と考えられる。
【0046】
(5)他の作業
架装用自走台車1は、消毒や配膳などに限らず、工場や倉庫等の荷役作業などにも適用することができる。具体的には、例えば作業者自身が発信器などを所持しておき、架装用自走台車1がその信号をキャッチして、作業者と適宜の間隔を開けつつ、間欠的に移動(接近または離反)して行くような形態が採り得る(言わば定間隔間欠自走)。このような形態では、各作業エリアで完成品または半完成品となった製作物を回収しながら、架装用自走台車1に順次載せて行くことができる。あるいは架装用自走台車1に載せて搬送してきた資材等を、作業者が各製造エリアに順次、配って(降ろして)行くことができ、一人の作業者でも効率的に荷役作業を行うことができる。
もちろん、本発明の架装用自走台車1は、小回りが利くため、狭い場所、具体的には幅の狭い廊下等での走行や転回などを余儀なくされる場合にも好適である。
また、本発明の架装用自走台車1は、走行中、従動輪4が上下動し接地するため、例えば部分的な突起や凹凸がある場所を走行する場合でも、作業者は大きな安心感を持って目的の作業に専念することができる。
なお、先の実施例で述べた架装用自走台車1は、駆動輪3を前方側としたが(いわゆる前輪駆動)、駆動輪3を後方側とし(つまり従動輪4を前方側として)作業車輌101を前進させるような形態も可能である(いわゆる後輪駆動)。因みに、後輪駆動とした場合も、バッテリー5は重いため、駆動輪3の反対側の端部に搭載することが好ましい。