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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136661
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036375
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 侑右
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK17
4C160KK39
4C160MM33
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】電極部からエネルギーが付与される領域を目的部位に集中させることのできる医療デバイスを提供する。
【解決手段】拡張体21と、長尺なシャフト部20と、拡張体21に沿って設けられる電極部22と、を備え、拡張体21は、拡張体21の拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間51bを画成する凹部51を有し、凹部51は、径方向の最も内側に位置する底部51aと、底部51aの基端から径方向外側の基端側頂部52aに向かって延びる基端側起立部52と、底部51aの先端から径方向外側の先端側頂部53aに向かってに延びる先端側起立部53と、を有し、基端側起立部52と先端側起立部53の一方には、電極部22が設けられ、電極部22は、互いに隣接する一対の電極要素22a、22bからなり、一対の電極要素22a、22b間に通電される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡縮可能な拡張体と、
前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、
前記拡張体に沿って設けられる電極部と、
を備え、
前記拡張体は、前記拡張体の拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部を有し、
前記凹部は、径方向の最も内側に位置する底部と、底部の基端から径方向外側の基端側頂部に向かって延びる基端側起立部と、底部の先端から径方向外側の先端側頂部に向かってに延びる先端側起立部と、を有し、
前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方には、前記電極部が設けられ、
前記電極部は、互いに隣接する一対の電極要素からなり、該一対の電極要素間に通電される医療デバイス。
【請求項2】
前記一対の電極要素は、前記拡張体の前記底部から前記基端側頂部または前記先端側頂部に向かう方向に沿って隣接する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記一対の電極要素は、前記拡張体の前記底部から前記基端側頂部または前記先端側頂部に向かう方向と交わる方向に沿って隣接する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記一対の電極要素は、一方の前記電極要素が他方の前記電極要素を取り囲むように隣接する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
径方向に拡縮可能な拡張体と、
前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、
前記拡張体に沿って設けられる電極部と、
を備え、
前記拡張体は、前記拡張体の拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部を有し、
前記凹部は、径方向の最も内側に位置する底部と、底部の基端から径方向外側の基端側頂部に向かって延びる基端側起立部と、底部の先端から径方向外側の先端側頂部に向かって延びる先端側起立部と、を有し、
前記電極部は、一対の電極要素からなり、該一対の電極要素間に通電され、
前記一対の電極要素のうち一方の前記電極要素は、前記底部側の端部が他方の前記電極要素より前記底部寄りに位置し、かつ、他方の前記電極要素より生体組織に接触する面積が大きい医療デバイス。
【請求項6】
一方の前記電極要素と他方の前記電極要素は、前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方に設けられると共に、前記拡張体の前記底部から前記基端側頂部または前記先端側頂部に向かう方向に沿って隣接する請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
一方の前記電極要素は、前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方に設けられ、他方の前記電極要素は、前記基端側起立部と前記先端側起立部の他方に設けられる請求項5に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織にエネルギーを付与する医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療デバイスとして、生体内で拡縮する拡張体に電極部が配置され、電極部からの高周波電流により生体組織を焼灼するアブレーションによる治療を行うものが知られている。アブレーションによる治療の一つとして、心房中隔に対するシャント治療が知られている。シャント治療は、心不全患者に対し、上昇した心房圧の逃げ道となるシャント(穿刺孔)を心房中隔に形成し、心不全症状の緩和を可能にする。シャント治療では、経静脈アプローチで心房中隔にアクセスし、所望のサイズの穿刺孔を形成する。このような医療デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019-85841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療デバイスにおいて、拡張体は、拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部を有している。特許文献1の医療デバイスは、凹部の底部に電極部が設けられている。生体組織にエネルギーを付与する際には、周方向に隣接する電極部との間に電圧が印加される。この場合に、電圧の印加時間が長くなると、電極部の直下から組織障害範囲が広がるため、周辺組織に影響を及ぼす可能性がある。また、電極部の間隔が離れているため、電流の一部がリークする可能性もある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電極部からエネルギーが付与される領域を目的部位に集中させることのできる医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、径方向に拡縮可能な拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体に沿って設けられる電極部と、を備え、前記拡張体は、前記拡張体の拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部を有し、前記凹部は、径方向の最も内側に位置する底部と、底部の基端から径方向外側の基端側頂部に向かって延びる基端側起立部と、底部の先端から径方向外側の先端側頂部に向かってに延びる先端側起立部と、を有し、前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方には、前記電極部が設けられ、前記電極部は、互いに隣接する一対の電極要素からなり、該一対の電極要素間に通電される。
【0007】
また、上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、径方向に拡縮可能な拡張体と、前記拡張体の基端が固定された基端固定部を含む先端部を有する長尺なシャフト部と、前記拡張体に沿って設けられる電極部と、を備え、前記拡張体は、前記拡張体の拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部を有し、前記凹部は、径方向の最も内側に位置する底部と、底部の基端から径方向外側の基端側頂部に向かって延びる基端側起立部と、底部の先端から径方向外側の先端側頂部に向かって延びる先端側起立部と、を有し、前記電極部は、一対の電極要素からなり、該一対の電極要素間に通電され、前記一対の電極要素のうち一方の前記電極要素は、前記底部側の端部が他方の前記電極要素より前記底部寄りに位置し、かつ、他方の前記電極要素より生体組織に接触する面積が大きい。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した医療デバイスは、生体組織においてエネルギーが付与される領域を電極部の直下に集中させることができる。このため、目的部位以外の周辺組織に高周波電流の影響を及ぼさないようにすることができる。また、電極要素間の距離が近いので、電流のリークも抑制できる。
【0009】
前記一対の電極要素は、前記拡張体の前記底部から前記基端側頂部または前記先端側頂部に向かう方向に沿って隣接するようにしてもよい。これにより、電極要素同士が隣り合う拡張体の幅方向に沿って、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0010】
前記一対の電極要素は、前記拡張体の前記底部から前記基端側頂部または前記先端側頂部に向かう方向と交わる方向に沿って隣接するようにしてもよい。これにより、電極要素同士が隣り合う拡張体の長さ方向に沿って、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0011】
前記一対の電極要素は、一方の前記電極要素が他方の前記電極要素を取り囲むように隣接するようにしてもよい。これにより、内側の電極要素の直下の領域について、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0012】
上記のように構成した医療デバイスは、生体組織においてエネルギーが付与される領域を電極部の直下に集中させつつ、底部から離れるほど電界密度を高くすることができるので、径方向に沿って厚みが変化する生体組織を均一に焼灼することができる。
【0013】
一方の前記電極要素と他方の前記電極要素は、前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方に設けられると共に、前記拡張体の前記底部から前記基端側頂部または前記先端側頂部に向かう方向に沿って隣接するようにしてもよい。これにより、電極要素間の距離が近いので、電流のリークを抑制できると共に、電極要素同士が隣り合う拡張体の幅方向に沿って、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0014】
一方の前記電極要素は、前記基端側起立部と前記先端側起立部の一方に設けられ、他方の前記電極要素は、前記基端側起立部と前記先端側起立部の他方に設けられるようにしてもよい。これにより、対向する電極要素間の生体組織を十分に焼灼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る医療デバイスの全体構成を表した正面図である。
図2】拡張体付近の拡大斜視図である。
図3】拡張体の凹部付近の展開図である。
図4】拡張体を心房中隔に配置した状態を、医療デバイスは正面図で、生体組織は断面図で、それぞれ模式的に示す説明図である。
図5】医療デバイスを用いた処置のフローチャートである。
図6図5のS2の状態を表した図であって、(a)は心房中隔を断面で表したバルーン付近の拡大図、(b)は穿刺孔の形状を表す心房中隔の断面図である。
図7図5のS3の状態を表した図であって、(a)は心房中隔を断面で表し、収納シース内を透視状に表した拡張体付近の拡大図、(b)は穿刺孔に収納シースが挿通された状態の心房中隔の断面図である。
図8図5のS4の状態を表した図であって、心房中隔を断面で表した拡張体付近の拡大図である。
図9図5のS4の状態を表した図であって、穿刺孔を拡張体で拡張させた状態の心房中隔の断面図である。
図10図5のS5の状態を表した図であって、心房中隔を断面で表した拡張体付近の拡大図である。
図11】拡張体における電極部の配置を表した拡大図である。
図12】第1変形例に係る拡張体における電極部の配置を表した拡大図である。
図13】第2変形例に係る拡張体における電極部の配置を表した拡大図である。
図14】第3変形例に係る電極部を有する拡張体の凹部付近の展開図である。
図15】第3変形例に係る電極部を有する拡張体が、把持した生体組織に通電している状態を表す拡大断面図である。
図16】第4変形例に係る電極部を有する拡張体が、把持した生体組織に通電している状態を表す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、医療デバイス10の生体内腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0017】
以下の実施形態における医療デバイスは、患者の心臓Hの心房中隔HAに形成された穿刺孔Hhを拡張し、さらに拡張した穿刺孔Hhをその大きさに維持する維持処置を行うことができるように構成されている。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の医療デバイス10は、長尺なシャフト部20と、シャフト部20の先端部に設けられる拡張体21と、シャフト部20の基端部に設けられる手元操作部23とを有している。拡張体21には、前述の維持処置を行うためのエネルギー伝達要素である電極部22が設けられる。
【0019】
シャフト部20は、拡張体21の基端が固定される基端固定部31と、拡張体21の先端が固定される先端固定部33とを含む先端部30を有している。シャフト部20の先端部30は、基端固定部31から拡張体21内を延びるシャフト延長部32を有している。シャフト部20は、最外周部に設けられる収納シース25を有している。拡張体21は、収納シース25に対して軸方向に進退移動可能である。収納シース25は、シャフト部20の先端側に移動した状態で、その内部に拡張体21を収納することができる。拡張体21を収納した状態から、収納シース25を基端側に移動させることで、拡張体21を露出させることができる。
【0020】
シャフト部20は、牽引シャフト26を有している。牽引シャフト26は、シャフト部20の基端からシャフト延長部32に渡って設けられており、先端部が先端部材35に固定されている。
【0021】
牽引シャフト26の先端部が固定されている先端部材35は、拡張体21には固定されていなくてよい。これにより、先端部材35は、拡張体21を圧縮方向に牽引することが可能である。また、拡張体21を収納シース25に収納する際、先端部材35を拡張体21から先端側に離すことによって、拡張体21の延伸方向への移動が容易になり、収納性を向上させることができる。
【0022】
手元操作部23は、術者が把持する筐体40と、術者が回転操作可能な操作ダイヤル41と、操作ダイヤル41の回転に連動して動作する変換機構42とを有している。牽引シャフト26は、手元操作部23の内部において、変換機構42に保持されている。変換機構42は、操作ダイヤル41の回転に伴い、保持する牽引シャフト26を軸方向に沿って進退移動させることができる。変換機構42としては、例えばラックピニオン機構を用いることができる。
【0023】
拡張体21についてより詳細に説明する。図2および図3に示すように、拡張体21は、周方向に複数の線材部50を有している。本実施形態において線材部50は、周方向に4本が設けられている。線材部50は、それぞれ径方向に拡縮可能である。線材部50の基端部は、基端固定部31から先端側に延出している。線材部50の先端部は、先端固定部33の基端部から基端側に延出している。線材部50は、軸方向の両端部から中央部に向かって、径方向に大きくなるように傾斜している。また、線材部50は、軸方向中央部に、拡張体21の径方向内側に窪んだ凹部51を有する。凹部51の径方向において最も内側の部分は底部51aである。凹部51により、拡張体21の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間51bが画成される。
【0024】
凹部51は、底部51aの基端から径方向外側に延びる基端側起立部52と、底部51aの先端から径方向外側に延びる先端側起立部53とを有している。基端側起立部52は、底部51aから拡張体21の径方向外側に位置する基端側頂部52aまで延びている。先端側起立部53は、底部51aから拡張体21の径方向外側に位置する先端側頂部53aまで延びている。基端側起立部52または先端側起立部53には、受容空間51bに面するように電極部22が配置される。先端側起立部53は、底部51aの近傍から二股に分かれて径方向外側に延びる外縁部55と、2本の外縁部55の間に配置される背当て部56とを有している。
【0025】
電極部22は、拡張体21の底部51aから基端側頂部52aに向かう方向に沿って隣接する一対の電極要素22a、22bで構成されている。電極要素22aと電極要素22bは、それぞれ絶縁性被覆材で被覆された導線58、58により外部装置であるエネルギー供給装置12に接続される。導線58、58は、シャフト部20および手元操作部23を介して外部に導出され、エネルギー供給装置12に接続される。エネルギー供給装置12から導線58を介して電極要素22a、22b間に高周波電圧が印加され、これらの間にエネルギーが付与される。
【0026】
拡張体21を形成する線材部50は、例えば、円筒から切り出した平板形状を有する。拡張体21を形成する線材は、厚み50~500μm、幅0.3~2.0mmとすることができる。ただし、この範囲外の寸法を有していてもよい。また、線材部50はその他にも円形の断面形状や、それ以外の断面形状を有していてもよい。
【0027】
線材部50は、金属材料で形成することができる。この金属材料としては、例えば、チタン系(Ti-Ni、Ti-Pd、Ti-Nb-Sn等)の合金、銅系の合金、ステンレス鋼、βチタン鋼、Co-Cr合金を用いることができる。なお、ニッケルチタン合金等のバネ性を有する合金等を用いるとよりよい。ただし、線材部50の材料はこれらに限られず、その他の材料で形成してもよい。
【0028】
シャフト部20は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリイミド、PEEK、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。
【0029】
牽引シャフト26は、例えば、ニッケル-チタン合金、銅-亜鉛合金等の超弾性合金、ステンレス鋼等の金属材料、比較的剛性の高い樹脂材料などの長尺状の線材で形成することができる。
【0030】
先端部材35は、例えば、ニッケル-チタン合金、銅-亜鉛合金等の超弾性合金、ステンレス鋼等の金属材料、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料またはこれらの混合物、あるいは2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成することができる。
【0031】
医療デバイス10を使用した処置方法について説明する。本実施形態の処置方法は、心不全(左心不全)に罹患した患者に対して行われる。より具体的には、図4に示すように、心臓Hの左心室の心筋が肥大化してスティッフネス(硬さ)が増すことで、左心房HLaの血圧が高まる慢性心不全に罹患した患者に対して行われる処置の方法である。
【0032】
図5に示すように、まず、心房中隔HAに穿刺孔Hhが作成される(S1)。術者は、穿刺孔Hhの形成に際し、ガイディングシースおよびダイレータが組み合わされたイントロデューサ210を心房中隔HA付近まで送達する。イントロデューサ210は、例えば、下大静脈Ivを介して右心房HRaに送達することができる。また、イントロデューサの送達は、ガイドワイヤ11を使用して行うことができる。術者は、ダイレータにガイドワイヤ11を挿通し、ガイドワイヤ11に沿わせて、イントロデューサを送達させることができる。なお、生体に対するイントロデューサの挿入、ガイドワイヤ11の挿入等は、血管導入用のイントロデューサを用いるなど、公知の方法で行うことができる。
【0033】
術者は、右心房HRa側から左心房HLa側に向かって、穿刺デバイス(図示しない)を貫通させ、穿刺孔Hhを形成する。穿刺デバイスは、ダイレータに挿通させて心房中隔HAまで送達する。
【0034】
次に、術者は、予め挿入されたガイドワイヤ11に沿って、バルーンカテーテル100を心房中隔HA付近に送達する。図6に示すように、バルーンカテーテル100は、シャフト部101の先端部にバルーン102を有している。バルーン102を心房中隔HAに配置したら、図6(a)に示すように径方向に拡張させ、穿刺孔Hhを押し広げる(S2)。この際、穿刺孔Hhは、中隔組織の繊維の影響により、繊維に沿う方向については拡張したバルーン102の最大径と同等まで拡張するが、それ以外の方向には拡張しにくいため、図6(b)に示すように細長い形状となる。
【0035】
次に、医療デバイス10を心房中隔HA付近に送達し、拡張体21を穿刺孔Hhの位置に配置する(S3)。医療デバイス10の送達時には、ガイドワイヤは用いられないが、拍動下で安定的に操作するためにガイドワイヤを用いてもよい。このとき、医療デバイス10の先端部は、心房中隔HAを貫通して、左心房HLaに達するようにする。また、図7(a)に示すように、医療デバイス10の挿入の際、拡張体21は、収納シース25に収納された状態となっている。図7(b)に示すように、穿刺孔Hhがバルーン102により押し広げられていることで、収納シース25を穿刺孔Hhに挿通させることができる。
【0036】
次に、図8に示すように、収納シース25を基端側に移動させることにより、拡張体21を露出させる。これにより、拡張体21は拡径し、凹部51は心房中隔HAの穿刺孔Hhに配置されて、受容空間51bに穿刺孔Hhを取り囲む生体組織を受容する(S4)。図9に示すように、拡張体21が拡張することにより、穿刺孔Hhは、周方向に沿ってほぼ均等な径を有するように拡張される。拡張体21は、穿刺孔Hhの形状を変化させるが、最大径は拡張しない。このため、穿刺孔Hhの最大径は、S2においてバルーン102で拡張された穿刺孔Hhにおける長軸方向の径と同等である。
【0037】
術者は、受容空間51bが生体組織を受容した状態で操作部23を操作し、牽引シャフト26を基端側に移動させる。これにより、図10に示すように、拡張体21は先端部材35によって圧縮方向に牽引されることで軸方向に圧縮され、心房中隔HAは基端側起立部52と先端側起立部53によって把持され、電極部22が生体組織に押し付けられる(S5)。
【0038】
穿刺孔Hhを拡張させたら、術者は、血行動態の確認を行う(S6)。術者は、図4に示すように、下大静脈Iv経由で右心房HRaに対し、血行動態確認用デバイス220を送達する。血行動態確認用デバイス220としては、例えば、公知のエコーカテーテルを使用することができる。術者は、血行動態確認用デバイス220で取得されたエコー画像を、ディスプレイ等の表示装置に表示させ、その表示結果に基づいて穿刺孔Hhを通る血液量を確認することができる。
【0039】
次に、術者は、穿刺孔Hhの大きさを維持するために維持処置を行う(S7)。維持処置では、電極部22を通して穿刺孔Hhの縁部に高周波エネルギーを付与することにより、穿刺孔Hhの縁部を高周波エネルギーによって焼灼(加熱焼灼)する。高周波エネルギーは、電極部22を構成する一対の電極要素22a、22b間に電圧を印加することで付与される。
【0040】
図11に示すように、一対の電極要素22a、22bは、互いに隣接するように配置されているので、これらの間に高周波電流が通電されることにより、生体組織においてエネルギーが付与される領域を電極部22の直下に集中させることができる。このため、目的部位である穿刺孔Hh以外の周辺組織に高周波電流の影響を及ぼさないようにすることができる。また、電極要素22a、22b間の距離が近いので、電流のリークも抑制できる。一対の電極要素22a、22bは、線材部50の長さ方向に沿って隣接しているので、電極要素22a、22b同士が隣接する図中一点鎖線で示す領域Aに対し、大きなエネルギーが付与される。このため、特に線材部50の幅方向に沿って十分な焼灼を実施することができる。
【0041】
電極部22を通して穿刺孔Hhの縁部付近の生体組織が焼灼されると、縁部付近には生体組織が変性した変性部が形成される。変性部における生体組織は弾性を失った状態となるため、穿刺孔Hhは拡張体21により押し広げられた際の形状を維持できる。
【0042】
維持処置後に術者は、再度血行動態を確認し(S8)、穿刺孔Hhを通る血液量が所望の量となっている場合、拡張体21を縮径させ、収納シース25に収納した上で、穿刺孔Hhから抜去する。さらに、医療デバイス10全体を生体外に抜去し、処置を終了する。
【0043】
次に、変形例に係る電極部について説明する。第1変形例の電極部60は、図12に示すように、拡張体21の底部51aから基端側頂部52aに向かう方向と交わる方向、本例では直交する方向に沿って隣接するように、電極要素60aと電極要素60bとが配置される。この場合、電極要素60a、60b同士が隣接する図中一点鎖線で示す領域Bに対し、大きなエネルギーが付与される。このため、特に線材部50の長さ方向に沿って十分な焼灼をすることができる。
【0044】
第2変形例の電極部61は、図13に示すように、一方の電極要素61aが他方の電極要素61bを取り囲むように隣接して配置される。この場合、電極要素61a、61b同士が隣接する図中一点鎖線で示す領域に対し、大きなエネルギーが付与される。このため、特に内側の電極要素61bの周辺部について、十分な焼灼をすることができる。
【0045】
図11図13の各電極要素の配置は、生体組織の状態などに合わせて任意に選択できる。また、一つの拡張体21において、それぞれの線材部50で電極要素の配置が異なっていてもよい。
【0046】
第3変形例の電極部62は、図14に示すように、電極要素62a、62bが、拡張体21の底部51aから基端側頂部52aに向かう方向に沿って隣接するように配置される。また、一対の電極要素62a、62bのうち、底部51a側に位置する一方の電極要素62aは、基端側頂部52a側に位置する他方の電極要素62bより生体組織に接触する面積が大きい。
【0047】
図15に示すように、生体組織に接触した電極部62は、電極要素62aと電極要素62bとの間で通電がなされ、生体組織にエネルギーが付与される。この際、破線で示す電界の密度は、面積の大きい底部51a側の電極要素61aが接触する部分において低く、面積の小さい基端側頂部52a側の電極要素61bが接触する部分において高い。心房中隔HAの生体組織は、穿刺孔Hhから離れるほど厚くなるため、電極要素62a、62bの面積を異ならせて穿刺孔Hhから離れた側の電界密度を高くすることにより、厚みが変化する生体組織を均一に焼灼することができる。
【0048】
第4変形例の電極部63は、図16に示すように、一方の電極要素63aが基端側起立部52に、他方の電極要素63bが先端側起立部53に、それぞれ配置される。一方の電極要素63aは、他方の電極要素63bより底部51a側の端部がより底部寄りに位置し、かつ、他方の電極要素63bより生体組織に接触する面積が大きい。この場合、電極要素63aと電極要素63bとの間で通電した際には、より底部51a側まで延びている一方の電極要素63a側で電界密度が低く、他方の電極要素63b側で電界密度が高い。他方の電極要素63bは、穿刺孔Hhからより離れた側に配置されているので、生体組織の厚みが大きくなる穿刺孔Hhから離れた側の電界密度を高くすることができる。これにより、厚みが変化する生体組織を均一に焼灼することができる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る医療デバイス10は、径方向に拡縮可能な拡張体21と、拡張体21の基端が固定された基端固定部31を含む先端部30を有する長尺なシャフト部20と、拡張体21に沿って設けられる電極部22と、を備え、拡張体21は、拡張体21の拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間51bを画成する凹部51を有し、凹部51は、径方向の最も内側に位置する底部51aと、底部51aの基端から径方向外側の基端側頂部52aに向かって延びる基端側起立部52と、底部51aの先端から径方向外側の先端側頂部53aに向かってに延びる先端側起立部53と、を有し、基端側起立部52と先端側起立部53の一方には、電極部22が設けられ、電極部22は、互いに隣接する一対の電極要素22a、22bからなり、一対の電極要素22a、22b間に通電される。このように構成した医療デバイス10は、生体組織においてエネルギーが付与される領域を電極部22の直下に集中させることができる。このため、目的部位以外の周辺組織に高周波電流の影響を及ぼさないようにすることができる。また、電極要素22a、22b間の距離が近いので、電流のリークも抑制できる。
【0050】
一対の電極要素22a、22bは、拡張体21の底部51aから基端側頂部52aまたは先端側頂部53aに向かう方向に沿って隣接するようにしてもよい。これにより、電極要素22a、22b同士が隣り合う拡張体21の幅方向に沿って、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0051】
一対の電極要素60a、60bは、拡張体21の底部51aから基端側頂部52aまたは先端側頂部53aに向かう方向と交わる方向に沿って隣接するようにしてもよい。これにより、電極要素60a、60b同士が隣り合う拡張体21の長さ方向に沿って、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0052】
一対の電極要素61a、61bは、一方の電極要素61aが他方の電極要素61bを取り囲むように隣接するようにしてもよい。これにより、内側の電極要素61aの直下の領域について、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態に係る医療デバイス10は、径方向に拡縮可能な拡張体21と、拡張体21の基端が固定された基端固定部31を含む先端部30を有する長尺なシャフト部20と、拡張体21に沿って設けられる電極部62と、を備え、拡張体21は、拡張体21の拡張時に径方向内側に窪み、生体組織を受容可能な受容空間51bを画成する凹部51を有し、凹部51は、径方向の最も内側に位置する底部51aと、底部51aの基端から径方向外側の基端側頂部52aに向かって延びる基端側起立部52と、底部51aの先端から径方向外側の先端側頂部53aに向かって延びる先端側起立部53と、を有し、電極部62は、一対の電極要素62a、62bからなり、一対の電極要素62a、62b間に通電され、一対の電極要素62a、62bのうち一方の電極要素62aは、底部51a側の端部が他方の電極要素62bより底部51a寄りに位置し、かつ、他方の電極要素51bより生体組織に接触する面積が大きい。このように構成した医療デバイス10は、生体組織においてエネルギーが付与される領域を電極部62の直下に集中させつつ、底部51aから離れるほど電界密度を高くすることができるので、径方向に沿って厚みが変化する生体組織を均一に焼灼することができる。
【0054】
一方の電極要素62aと他方の電極要素62bは、基端側起立部52と先端側起立部53の一方に設けられると共に、拡張体21の底部51aから基端側頂部52aまたは先端側頂部53aに向かう方向に沿って隣接するようにしてもよい。これにより、電極要素62a、62b間の距離が近いので、電流のリークを抑制できると共に、電極要素62a、62b同士が隣り合う拡張体21の幅方向に沿って、特に十分なエネルギー付与を行うことができる。
【0055】
一方の電極要素63aは、基端側起立部52aと先端側起立部53aの一方に設けられ、他方の電極要素63bは、基端側起立部52aと先端側起立部53aの他方に設けられるようにしてもよい。これにより、対向する電極要素63a、63b間の生体組織を十分に焼灼することができる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述の実施形態において、第4変形例を除き、電極部22は基端側起立部52に配置されているが、電極部は先端側起立部53に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 医療デバイス
11 ガイドワイヤ
12 エネルギー供給装置
20 シャフト部
21 拡張体
22 電極部
22a 電極要素
22b 電極要素
23 手元操作部
25 収納シース
26 牽引シャフト
30 先端部
31 基端固定部
33 先端固定部
35 先端部材
40 筐体
41 操作ダイヤル
42 変換機構
50 線材部
51 凹部
51a 底部
51b 受容空間
52 基端側起立部
52a 基端側頂部
53 先端側起立部
53a 先端側頂部
55 外縁部
56 背当て部
58 導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16