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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136670
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20220913BHJP
   G01J 11/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G08G1/01 C
G01J11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036387
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】391019681
【氏名又は名称】株式会社コムテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 睦己
(72)【発明者】
【氏名】飯田 浩康
【テーマコード(参考)】
2G065
5H181
【Fターム(参考)】
2G065AA12
2G065AB09
2G065AB16
2G065BA02
2G065BC08
2G065BC14
2G065BC22
2G065BC33
2G065BD06
2G065CA11
2G065DA20
5H181AA01
5H181CC01
5H181CC03
5H181DD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両外の発信機から遮蔽物等の影響により不完全な発信信号が届く場合にも、発信信号の受信を適切に検知可能な車載用の電子機器を提供する。
【解決手段】車両に搭載される電子機器は、車両外の発信機から発信される特定信号を受信するように構成される受信部と、受信部による受信信号に基づき、受信部が特定信号を受信したかを判定するように構成される判定部とを備える。特定信号は、時間軸上に特定規則で配列されるパルス信号の列を含む。判定部は、受信信号が、時間軸上の配列について特定規則に少なくとも部分的に対応する第一の規則性を示す複数のパルス信号を含むときに、及び、受信信号が、時間軸上の配列について第一の規則性とは異なる第二の規則性であって特定規則に部分的に対応する第二の規則性を示す複数のパルス信号を含むときに、特定信号を受信したと判定する(S250)。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電子機器であって、
車両外の発信機から発信される特定信号を受信するように構成される受信部と、
前記受信部による受信信号に基づき、前記受信部が前記特定信号を受信したかを判定するように構成される判定部と、
を備え、
前記特定信号は、時間軸上に特定規則で配列されるパルス信号の列を含み、
前記判定部は、前記受信信号が複数の条件のいずれかを満足するときに、前記特定信号を受信したと判定し、
前記複数の条件のうちの第一の条件は、前記受信信号が、前記時間軸上の配列について前記特定規則に少なくとも部分的に対応する第一の規則性を示す複数のパルス信号を含むことであり、
前記複数の条件のうちの第二の条件は、前記受信信号が、前記時間軸上の配列について前記第一の規則性とは異なる第二の規則性であって前記特定規則に部分的に対応する第二の規則性を示す複数のパルス信号を含むことである電子機器。
【請求項2】
前記第二の条件は、前記第二の規則性として、仮に前記受信部が前記特定信号に含まれる前記パルス信号の列のうちの一部のパルス信号が欠けた不完全なパルス信号の列を受信したときに、前記受信信号が有する不完全なパルス信号の列の規則性を用いて定義される条件である請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記第一の条件は、前記第一の規則性として、仮に前記受信部が前記特定信号に含まれる前記パルス信号の列をパルス信号の欠けなく受信したときに、前記受信信号が有する前記パルス信号の列の規則性を用いて定義される条件である請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記特定信号には、前記時間軸上で第一の特定時間間隔離れて位置するパルス信号のペアである第一のペアの二つ以上と、第二の特定時間間隔離れて位置するパルス信号のペアである第二のペアの一つ以上とが含まれ、
前記第二の特定時間間隔は、前記第一の特定時間間隔とは異なる時間間隔であり、
前記第一の条件は、前記受信信号が前記第一のペアを二つ以上含むことであり、
前記第二の条件は、前記受信信号が前記第一のペアの一つ以上と前記第二のペアの一つ以上とを含むことである請求項1記載の電子機器。
【請求項5】
前記特定信号は、特定時間間隔で並ぶ周期的なパルス信号の列であり、
前記第一の条件は、前記受信信号が前記特定時間間隔で周期的に並ぶ二つより多い所定数以上のパルス信号を含むことであり、
前記第二の条件は、前記受信信号が時間順に第一、第二、及び第三のパルス信号を含み、前記第一のパルス信号と前記第二のパルス信号との間の時間間隔が第一の間隔であり、前記第二のパルス信号と前記第三のパルス信号との間の時間間隔が第二の間隔であることであり、
前記第一の間隔は、前記特定時間間隔であり、
前記第二の間隔は、前記特定時間間隔の二倍以上の整数倍である請求項1記載の電子機器。
【請求項6】
前記複数の条件は、第三の条件を更に含み、
前記第三の条件は、前記受信信号が時間順に第一、第二、第三、及び第四のパルス信号を含み、前記第一のパルス信号及び前記第二のパルス信号が前記特定時間間隔離れて並ぶパルス信号の第一のペアであり、前記第三のパルス信号及び前記第四のパルス信号が前記特定時間間隔離れて並ぶパルス信号の第二のペアであり、前記第二のパルス信号と前記第三のパルス信号との間の時間間隔が、前記特定時間間隔より長い所定許容時間以下であることである請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記特定信号は、特定時間間隔で並ぶ周期的なパルス信号の列であり、
前記第一の条件は、前記受信信号が前記特定時間間隔で周期的に並ぶ二つより多い所定数以上のパルス信号を含むことであり、
前記第二の条件は、前記受信信号が時間順に第一、第二、第三、及び第四のパルス信号を含み、前記第一のパルス信号及び前記第二のパルス信号が前記特定時間間隔離れて並ぶパルス信号の第一のペアであり、前記第三のパルス信号及び前記第四のパルス信号が前記特定時間間隔離れて並ぶパルス信号の第二のペアであり、前記第二のパルス信号と前記第三のパルス信号との間の時間間隔が、前記特定時間間隔より長い所定許容時間以下であることである請求項1記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を走行する車両の速度を車両外から計測する車両速度計測装置が知られている(例えば特許文献1参照)。車両速度計測装置は、例えば、速度違反を取り締まる目的で路肩に設置される。光パルス信号を車両に向けて発射し、反射光を受信して、車両の走行速度を計測するレーザ式の車両速度計測装置もまた知られている。
【0003】
車両速度計測装置からの信号を受信したときに、車両速度計測装置の存在をユーザに知らせる電子機器もまた知られている(例えば特許文献2参照)。この電子機器は、車載機として、例えば四輪自動車等の車両に搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-7572号公報
【特許文献2】特開2020-112357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両速度計測装置からの信号は、完全な信号として、車載機に届かずに、遮蔽物の影響を受けて部分的に欠けた不完全な信号として、車載機に届く場合も多い。遮蔽物の例には、車載機を搭載する車両の前方で走行する別の車両が含まれる。
【0006】
従って、受信信号が完全な状態であることを前提に受信信号が車両速度計測装置からの信号であるか否かを判定する手法では、車両速度計測装置の存在を早期にユーザに知らせることができない可能性がある。
【0007】
そこで、本開示の一側面によれば、車両外の発信機からの発信信号を受信する車載用の電子機器において、遮蔽物等の影響により不完全な発信信号が受信部に届く場合にも、発信機からの発信信号の受信を適切に検知可能な技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面によれば、車両に搭載される電子機器が提供される。電子機器は、車両外の発信機から発信される特定信号を受信するように構成される受信部と、受信部による受信信号に基づき、受信部が特定信号を受信したかを判定するように構成される判定部とを備える。
【0009】
特定信号は、時間軸上に特定規則で配列されるパルス信号の列を含む。判定部は、受信信号が複数の条件のいずれかを満足するときに、特定信号を受信したと判定するように構成される。
【0010】
複数の条件のうちの第一の条件は、受信信号が、時間軸上の配列について特定規則に少なくとも部分的に対応する第一の規則性を示す複数のパルス信号を含むことである。複数の条件のうちの第二の条件は、受信信号が、時間軸上の配列について第一の規則性とは異なる第二の規則性であって特定規則に部分的に対応する第二の規則性を示す複数のパルス信号を含むことである。
【0011】
この電子機器によれば、発信機からの特定信号が遮蔽物により不完全な信号として受信部に届く場合にも、不完全な信号に含まれる上記特定規則に部分的に対応する規則性に基づき、特定信号の受信を適切に検知可能である。この電子機器によれば、発信機からの特定信号ではないノイズ等の別信号の受信が、特定信号の受信として誤判定されることも抑制可能である。
【0012】
本開示の一側面によれば、上記第二の条件は、第二の規則性として、仮に受信部が特定信号に含まれるパルス信号の列のうちの一部のパルス信号が欠けた不完全なパルス信号の列を受信したときに、受信信号が有する不完全なパルス信号の列の規則性を用いて定義され得る。
【0013】
本開示の一側面によれば、上記第一の条件は、第一の規則性として、仮に受信部が特定信号に含まれるパルス信号の列をパルス信号の欠けなく受信したときに、受信信号が有するパルス信号の列の規則性を用いて定義され得る。
【0014】
このように定義された第一の条件及び第二の条件に従って発信機からの発信信号の受信の有無を判定することによれば、電子機器は、遮蔽物による信号欠けの影響を抑えて、発信機からの発信信号の受信を適切に検知可能である。
【0015】
本開示の一側面によれば、特定信号には、時間軸上で第一の特定時間間隔離れて位置するパルス信号のペアである第一のペアの二つ以上と、第二の特定時間間隔離れて位置するパルス信号のペアである第二のペアの一つ以上とが含まれ得る。第二の特定時間間隔は、第一の特定時間間隔とは異なる時間間隔であり得る。
【0016】
このケースにおいて、上記第一の条件は、受信信号が第一のペアを二つ以上含むことであってもよい。上記第二の条件は、受信信号が第一のペアの一つ以上と第二のペアの一つ以上とを含むことであってもよい。
【0017】
本開示の一側面によれば、特定信号は、特定時間間隔で並ぶ周期的なパルス信号の列であってもよい。周期的なパルス信号の列は、上記第二の特定時間間隔が第一の特定時間間隔の二倍以上の整数倍であるとき、上記第一のペアの二つ以上と、第二のペアの一つ以上とを含み得る。
【0018】
本開示の一側面によれば、特定信号が特定時間間隔で並ぶ周期的なパルス信号の列であるケースにおいて、第一の条件は、受信信号が特定時間間隔で周期的に並ぶ二つより多い所定数以上のパルス信号を含むことであってもよい。
【0019】
第二の条件は、受信信号が時間順に第一、第二、及び第三のパルス信号を含み、第一のパルス信号と第二のパルス信号との間の時間間隔が第一の間隔であり、第二のパルス信号と第三のパルス信号との間の時間間隔が第二の間隔であることであってもよい。第一の間隔は、特定時間間隔であり、第二の間隔は、特定時間間隔の二倍以上の整数倍であり得る。
【0020】
第二の条件によれば、一部のパルス信号が欠けた不完全な特定信号が受信部により受信され、それにより受信信号においてパルス信号の周期性が失われているときにも、発信機からの特定信号の受信を適切に検知可能である。
【0021】
本開示の一側面によれば、複数の条件は、第三の条件を更に含んでもよい。第三の条件は、受信信号が時間順に第一、第二、第三、及び第四のパルス信号を含み、第一のパルス信号及び第二のパルス信号が特定時間間隔離れて並ぶパルス信号の第一のペアであり、第三のパルス信号及び第四のパルス信号が特定時間間隔離れて並ぶパルス信号の第二のペアであり、第二のパルス信号と第三のパルス信号との間の時間間隔が、特定時間間隔より長い所定許容時間以下であることであり得る。
【0022】
この第三の条件によれば、第二の条件と同様に、パルス信号の欠けによって周期性が失われているときにも、発信機からの特定信号の受信を適切に検知可能である。第三の条件が所定許容時間に関する条件を含むことによれば、特定信号ではない受信信号に関して、当該受信信号を発信機からの特定信号であると誤検知してしまう可能性を抑制することができる。第二の条件として、上記第三の条件と同じ条件が定義されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電子機器及び速度違反自動取締装置の構成を表すブロック図である。
図2】電子機器及び速度違反自動取締装置と車両との関係を説明する図である。
図3】電子機器におけるレーザ受信部の構成を表すブロック図である。
図4】電子機器の制御部によって実現される機能を表す機能ブロック図である。
図5】制御部が実行する計測処理を表すフローチャートである。
図6】制御部が実行する判定処理を表すフローチャートである。
図7図7Aは、欠けのない完全な信号の特徴を説明する図であり、図7B,7C,7Dは、不完全な信号に関する受信判定手法を説明する図である。
図8】制御部が実行する警報処理を表すフローチャートである。
図9図9Aは、変形例における速度違反自動取締装置からの発信信号を説明する図であり、図9Bは、変形例における受信判定手法を説明する図である。
図10図10Aは、第二実施形態における電子機器の制御部によって実現される機能を表す機能ブロック図であり、図10Bは、評価処理部における評価手法を説明する図である。
図11】第二実施形態において制御部が実行する評価処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[第一実施形態]
図1に示す本実施形態の電子機器10は、速度違反自動取締装置(以下、「オービス」という。)50からの発信信号を検知したときに、オービス50の存在をユーザに知らせるように構成される。
【0025】
この電子機器10は、図2に示すように、四輪自動車等の車両1に搭載される。例えば電子機器10は、車室内において、車両1の外に設置されたオービス50からの発信信号を受信可能な位置に配置される。例えば電子機器10は、ルームミラー近くにおいて、フロントガラスに対向する位置に配置される。
【0026】
オービス50は、移動式又は固定式である。移動式のオービス50は、例えば路肩に一時的に設置されて、道路を走行する車両1,5の速度違反を取り締まるために利用される。
【0027】
既存装置として、ループコイルやマイクロ波を使用するオービスが知られているが、ここで説明するオービス50は、レーザ式のオービスである。図1に示すように、オービス50は、レーザ送受信部51と、速度計測部53とを備える。
【0028】
レーザ送受信部51は、レーザ光信号を発射するとともに、レーザ光信号が車両1,5に当たって反射した反射光信号を受信するように構成される。レーザ送受信部51から発射されるレーザ光信号は、オービス50からの発信信号に対応する。以下では、このレーザ光信号のことを、オービス信号ともいう。
【0029】
レーザ送受信部51は、オービス信号として、特定時間間隔Tsの周期的なパルス光信号を発射する。すなわち、オービス信号は、特定時間間隔Tsで並ぶ周期的なパルス光信号の列である。特定時間間隔Ts、すなわちパルス光信号の周期Tsは、例えば80ミリ秒である。
【0030】
速度計測部53は、レーザ送受信部51によりパルス光信号が発射されてから車両1,5で反射された反射光信号を受信するまでの時間差から特定される車両1,5の位置の変化に基づいて、車両1,5の速度を計測する。
【0031】
オービス信号を受信する電子機器10は、図1に示すように、レーザ受信部11と、表示部13と、音出力部15と、制御部17とを備える。
【0032】
レーザ受信部11は、オービス信号を受信可能に構成される。表示部13は、制御部17に制御されて、車室内のユーザに向けて各種情報を表示するように構成される。表示部13は、例えば液晶ディスプレイとして構成される。音出力部15は、スピーカ(図示せず)を備え、制御部17に制御されて、車室内のユーザに向けて警告音や案内音等を出力するように構成される。
【0033】
制御部17は、プロセッサ171と、メモリ175とを備える。メモリ175は、プロセッサ171による処理実行時に作業領域として使用される揮発性メモリ(RAM)と、電気的にデータ書換可能なフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ(NVRAM)とを備える。不揮発性メモリには、長期に記憶保持すべき、コンピュータプログラムや各種設定データが記憶される。
【0034】
プロセッサ171は、メモリ175が記憶するコンピュータプログラムに従う処理を実行することにより、電子機器10の各部を制御する。以下で説明する制御部17が実行する処理は、プロセッサ171がコンピュータプログラムに従って実行する処理により実現されると理解されてよい。
【0035】
続いて、レーザ受信部11の詳細を説明する。図3に示すように、レーザ受信部11は、受光部110と、増幅器113と、コンパレータ115とを備える。受光部110は、入力光を電気信号に変換して受信信号として出力するように構成される。受光部110から出力される受信信号は、増幅器113により増幅された後、コンパレータ115に入力される。
【0036】
コンパレータ115は、受信信号を予め設定された閾値と比較し、閾値以上の受信信号を、ハイ信号「1」として出力し、閾値未満の受信信号をロウ信号「0」として出力するように構成される。制御部17には、このようにコンパレータ115により二値化された受信信号が入力される。閾値は、想定されるノイズの信号レベルを考慮して設定される。例えば閾値は、ノイズの信号レベルの約2倍に設定される。
【0037】
受光部110が、パルス光信号の欠けのない完全なオービス信号を受信しているとき、レーザ受信部11から制御部17には、受信信号として、周期的にハイ信号に切り替わる信号、換言すれば周期的なパルス信号の列が入力される。具体的には、オービス信号に含まれるパルス光信号の周期Tsに対応した特定時間間隔Ts(例えば80ミリ秒)のパルス信号の列が、制御部17に入力される。
【0038】
制御部17は、メモリ175が記憶するコンピュータプログラムに従う処理の実行により、図4に示すように、計測処理部17Aと、判定処理部17Bと、警報処理部17Cとして機能する。
【0039】
計測処理部17Aは、レーザ受信部11から入力される受信信号に基づき、パルス信号の入力間隔を、信号間隔Tmとして計測する。ここでいうパルス信号は、ハイ信号「1」として入力される受信信号に対応する。信号間隔Tmは、時間軸上において並ぶ二つのパルス信号間、換言すれば、他のパルス信号が介在しない状態で互いに隣接する二つのパルス信号間の時間間隔である。計測処理部17Aは更に、計測した信号間隔Tmを、時系列データとして記録するように動作する。時系列データは、メモリ175に一時記憶される。
【0040】
判定処理部17Bは、時系列データを参照して、受信した複数のパルス信号の時間軸上の配列に、オービス信号におけるパルス光信号の配列に対応する規則性があるか否かを判断する。判定処理部17Bは、この規則性の有無によりレーザ受信部11でオービス信号が受信されたかを判定する。
【0041】
警報処理部17Cは、判定処理部17Bによってオービス信号が受信されたと判定された場合に、表示部13を制御して、オービス50の存在を知らせる警告メッセージを表示部13に表示させると共に、オービス50の存在を知らせる警告音を、音出力部15に出力させる。この表示及び音出力に基づいて、ユーザは、車両前方のオービス50の存在を知ることができる。
【0042】
但し、オービス信号は、上述の通り、レーザ光信号であるため、その指向性が強く、オービス50から遠く離れた位置では、オービス50と電子機器10との間に位置する遮蔽物の影響により、不完全なオービス信号が電子機器10に届きやすい。
【0043】
例えば、図2に示すように電子機器10を搭載する車両1とは別の車両5が、オービス50と電子機器10との間に位置すると、車両5が遮蔽物となって、一時的に電子機器10にパルス光信号が届かなくなる。
【0044】
従って、オービス50から離れた位置でオービス50の存在を早期にユーザに知らせるためには、不完全なオービス信号をレーザ受信部11が受信している状況でも、オービス信号を高感度に検知できることが望ましい。
【0045】
この高感度な検知のために、計測処理部17Aは、少なくとも過去所定回分又は所定時間分の信号間隔Tmを上述の通り時系列データとして一時記憶する。判定処理部17Bは、時系列データから特定されるパルス信号の時間軸上の配列に基づいて、オービス信号の受信の有無を判定する。
【0046】
続いて、制御部17が、計測処理部17Aとして機能するために実行する計測処理、判定処理部17Bとして機能するために実行する判定処理、及び、警報処理部17Cとして機能するために実行する警報処理の詳細を、図5図8を用いて説明する。計測処理、判定処理、及び警報処理は、制御部17により並列実行される。
【0047】
制御部17は、電子機器10の起動直後から図5に示す計測処理を開始する。計測処理を開始すると、制御部17は、レーザ受信部11からの受信信号として、パルス信号を受信したかを判定する(S110)。
【0048】
制御部17は、レーザ受信部11から入力される受信信号がハイ信号に切り替わると、パルス信号を受信したと判定することができる。あるいは、制御部17は、オービス信号のパルス幅に対応する時間幅のハイ信号がレーザ受信部11から入力されると、パルス信号を受信したと判定することができる。
【0049】
制御部17は、パルス信号を受信したと判定すると(S110でYes)、上記信号間隔Tmの計測及び記録のために、パルス信号を受信した時点からの経過時間の計測を開始する(S120)。
【0050】
その後、制御部17は、電子機器10のシャットダウンにより終了条件が満足されるか(S130)、新たなパルス信号を受信したと判定するまで(S140)、経過時間の計測を継続する。制御部17は、S140において、S110と同様の手法で、パルス信号の受信の有無を判定することができる。
【0051】
制御部17は、新たなパルス信号を受信したと判定すると(S140でYes)、その判定時までの経過時間を、信号間隔Tmとして記録する(S150)。すなわち、制御部17は、メモリ175に時系列データとして信号間隔Tmを追加記録する。ここで記録される信号間隔Tmは、前回受信したパルス信号と今回受信したパルス信号との間の時間間隔である。
【0052】
その後、制御部17は、S120に移行し、新たに受信したパルス信号の受信時点からの経過時間の計測を開始する。制御部17は、更に次のパルス信号を受信したと判定した場合には(S140でYes)、計測された経過時間を信号間隔Tmとして追加記録する(S150)。
【0053】
制御部17は、終了条件が満足されると(S130でYes)、計測処理を終了する。このようにして、メモリ175には、少なくとも過去所定回分又は所定時間分のパルス信号の時間間隔である信号間隔Tmが時系列データとして記録される。
【0054】
この計測処理と並列に、制御部17は、図6に示す判定処理を繰返し実行する。判定処理において、制御部17は、計測処理部17Aがパルス信号を受信したと判定するまで待機する(S210)。
【0055】
制御部17は、計測処理部17Aがパルス信号を受信したと判定すると(S210でYes)、受信された最新のパルス信号と前回のパルス信号との間の時間間隔として計測された信号間隔Tmに関して、信号間隔Tmがオービス信号におけるパルス光信号の周期である特定時間間隔Tsであるかを判断する(S220)。
【0056】
S220における判断は、計測誤差を加味して行われ得る。信号間隔Tmの計測誤差がεであるとき、制御部17は、信号間隔Tmが、周期Tsを中心とした時間範囲Ts-ε≦Tm≦Ts+εにあるときに、信号間隔Tmが特定時間間隔Tsであると判断し、それ以外の場合には、特定時間間隔Tsではないと判断することができる。
【0057】
信号間隔Tmが特定時間間隔Tsであると判断すると(S220でYes)、制御部17は、更に、前回計測された信号間隔Tmもまた特定時間間隔Tsであったかを判断することにより、信号間隔Tmの周期性の有無を判断する(S230)。
【0058】
S230では、図7Aに示すように、過去三回のパルス信号である第一、第二、及び第三のパルス信号が、特定時間間隔Tsで周期的に発生しているとき、肯定判断される。第一のパルス信号は、前々回に受信したパルス信号であり、第二のパルス信号は、前回受信したパルス信号であり、第三のパルス信号は、今回受信した最新のパルス信号である。
【0059】
別例として、制御部17は、前回だけでなく前々回に計測された信号間隔Tmも特定時間間隔Tsであるか否かを判断することにより、信号間隔の周期性の有無を判断してもよい。この場合には、受信した過去四回のパルス信号である第一、第二、第三、及び第四のパルス信号が、特定時間間隔Tsで周期的に入力されているとき、肯定判断される。第一のパルス信号は、3つ前に受信したパルス信号であり、第二のパルス信号は、前々回(すなわち2つ前に)受信したパルス信号であり、第三のパルス信号は、前回受信したパルス信号であり、第四のパルス信号は、今回受信したパルス信号である。
【0060】
制御部17は、信号間隔Tmに周期性があると判断すると(S230でYes)、オービス信号が受信されたと判定する(S250)。その後、判定処理を一旦終了する。
一方、制御部17は、周期性がないと判定すると(S230でNo)、今回のパルス信号の受信時点を基準とした過去の所定期間に、信号間隔Tmとして特定時間間隔Tsが計測された記録があるかを、メモリ175が記憶する時系列データに基づいて判断する(S240)。所定期間は、今回のパルス信号の受信時を終端とする過去の所定時間Tw(以下、許容時間Twと表現する)であり得る。
【0061】
制御部17は、時系列データとしてメモリ175に記録される信号間隔Tmを、新しい記録から古い記録に向けて順に加算した時の加算値が許容時間Twを超えない範囲で、信号間隔Tmが特定時間間隔Tsである記録を探索することにより、過去の所定期間に、信号間隔Tmとして特定時間間隔Tsが計測された記録があるかを判断することができる。
【0062】
S240では、時系列データによれば、許容時間Tw内に次の条件を満足する第一、第二、第三、及び第四のパルス信号が発生しているとき、肯定判断される。すなわち、図7Bに示すように、第一のパルス信号及び第二のパルス信号が特定時間間隔Ts離れて並ぶパルス信号の第一のペアであり、第三のパルス信号及び第四のパルス信号が特定時間間隔Ts離れて並ぶパルス信号の第二のペアである第一、第二、第三、及び第四のパルス信号が許容時間Tw内に発生しているとき、肯定判断される。図7B-7Dにおいて、破線で示されるパルス信号は、受信信号に存在しない、欠けたパルス信号である。
【0063】
許容時間Twは、第二のパルス信号と第三のパルス信号との時間間隔が特定時間間隔Tsの1倍より長くなる特定時間間隔Tsの三倍より十分長い時間に定められる。例えば、許容時間Twは、数秒~10秒程度に定められる。許容時間Twは、他の車両5等の遮蔽物により、パルス光信号が電子機器10で受信できなくなる時間の統計量に基づいて設計者により定められ得る。
【0064】
制御部17は、S240において、過去の所定期間に信号間隔Tmとして特定時間間隔Tsが計測された記録があると判断すると(S240でYes)、オービス信号が受信されたと判定する(S250)。
【0065】
一方、制御部17は、S240において記録がないと判断すると(S240でNo)、オービス信号は受信されていないと判定する(S280)。その後、判定処理を一旦終了する。
【0066】
この他、制御部17は、今回計測された信号間隔Tmが特定時間間隔Tsではないと判断すると(S220でNo)、この信号間隔Tmが、特定時間間隔Tsの整数倍に対応する時間間隔N*Tsであるか否かを判断する(S260)。Nは整数である。
【0067】
S260において、制御部17は、予め定められた整数倍の範囲で、信号間隔Tmが特定時間間隔Tsの整数倍であるか否かを判断する。判断は、S220での判断と同様に計測誤差を考慮してなされ得る。整数倍の範囲は、二倍以上に定められ得る。整数倍の範囲は、二倍以上の所定倍(例えば三倍又は四倍)以下に定められ得る。
【0068】
信号間隔Tmが、特定時間間隔Tsの整数倍に対応する間隔N*Tsであると判断すると(S260でYes)、制御部17は、前回計測された信号間隔Tmが特定時間間隔Tsであったかを判断する(S270)。
【0069】
制御部17は、前回計測された信号間隔Tmが特定時間間隔Tsであったと判断すると(S270でYes)、オービス信号が受信されたと判定する(S250)。S270では、前回の信号間隔Tmが特定時間間隔Tsであり、今回の信号間隔Tmが、特定時間間隔Tsの2倍の間隔2Tsである場合(図7C参照)や、特定時間間隔Tsの3倍以上のN倍の間隔N*Tsである場合(図7D参照)に、肯定判断される。
【0070】
制御部17は、S270で否定判断すると、オービス信号は受信されていないと判定する(S280)。その後、判定処理を一旦終了する。
【0071】
この他、制御部17は、上記判定処理と並列に、図8に示す警報処理を繰返し実行し、判定処理において、オービス信号が受信されたと判定された場合には(S310でYes)、オービス信号の受信が継続している期間、オービス50の存在を知らせる警告メッセージを表示部13に表示させると共に、オービス50の存在を知らせる警告音を、音出力部15に出力させる(S320)。
【0072】
制御部17は、オービス信号が受信されていないと判定された場合には(S310でNo)、警告メッセージ及び警告音の出力を行わずに、それまで警告メッセージ及び警告音の出力が行われていた場合には、警告メッセージ及び警告音の出力を止める(S330)ように、動作する。
【0073】
以上に説明した本実施形態の電子機器10によれば、制御部17は、パルス光信号の欠けた不完全なオービス信号が受信されることも想定し、複数の条件でオービス信号の受信判定を行う。
【0074】
制御部17は、第一の条件として、受信信号が特定時間間隔Tsで周期的に並ぶ所定数以上のパルス信号、具体的には三つ以上のパルス信号又は四つ以上のパルス信号を含むことを条件に(S220でYes,S230でYes)、オービス信号を受信したと判定する。第一の条件は、受信信号が時間軸上で特定時間間隔Ts離れて並ぶパルス信号のペアを連続して二つ以上含むことに対応する。
【0075】
制御部17は、第二の条件として、受信信号が第一、第二、及び第三のパルス信号を含み、第一のパルス信号と第二のパルス信号との間の信号間隔Tmが特定時間間隔Tsであり、第二のパルス信号と第三のパルス信号との間の信号間隔Tmが特定時間間隔Tsの二倍以上であり所定倍以下の整数倍であることを条件に(S260でYes,S270でYes)、オービス信号を受信したと判定する。第二の条件は、受信信号が時間軸上で特定時間間隔Ts離れて位置するパルス信号の第一のペアの一つと、特定時間間隔Tsの整数倍離れて位置するパルス信号のペアである第二のペアの一つと、を含むことに対応する。
【0076】
制御部17は、第三の条件として、受信信号が第一、第二、第三、及び第四のパルス信号を含み、第一のパルス信号及び第二のパルス信号が特定時間間隔Ts離れて並ぶパルス信号の第一のペアであり、第三のパルス信号及び第四のパルス信号が特定時間間隔Ts離れて並ぶパルス信号の第二のペアであり、第一のペアと第二のペアとの間の時間間隔が許容時間Tw以下であるとき、オービス信号を受信したと判定する。
【0077】
許容時間Twは、第二の条件に基づく受信判定との差別化のために、第二のパルス信号と第三のパルス信号との間の時間間隔として、特定時間間隔Tsの二倍、又は、第二の条件における整数倍の範囲より長い時間間隔が許容されるように定められる。第三の条件は、時間軸上で特定時間間隔Ts離れて位置するパルス信号のペアを二つ以上含むことに対応する。
【0078】
このように、本実施形態では、オービス信号として不完全な信号が届くことを想定して、パルス光信号の欠けのない完全なオービス信号に含まれる時間軸上のパルス信号列の規則性である第一の規則性(具体的には周期性)を受信信号が有することに基づいた第一の条件に基づく受信判定の他、パルス光信号の欠けた不完全なオービス信号に含まれる第一の規則性に部分的に対応する時間軸上のパルス信号列の規則性である第二の規則性(具体的には準周期性)を、受信信号が有することに基づいた第二の条件に基づく受信判定、及び、第一の規則性に部分的に対応し、第二の規則性とは異なる時間軸上のパルス信号列の規則性である第三の規則性を、受信信号が有することに基づいた第三の条件に基づく受信判定を行う。例えば、第一の規則性に部分的に対応する規則性を有することは、第一の規則性を有するための必要条件に対応し得る。
【0079】
従って、本実施形態によれば、オービス信号が遮蔽物により不完全な信号としてレーザ受信部11に届く場合にも、電子機器10は、オービス信号の受信を高感度に検知することができる。しかも、電子機器10は、高感度な検知を、ノイズ等の非オービス信号の受信を、オービス信号の受信として誤検知するのを抑制しながら高精度に行うことができる。
【0080】
以上には、オービス信号が周期Tsのパルス光信号の列であることを前提に、オービス信号の受信判定手法を説明した。しかしながら、オービス信号は、この例に限定されない。
【0081】
例えば、オービス50は、図9Aに示すように、第一の時間間隔Ts1離れた二つのパルス光信号である第一のパルス信号及び第二のパルス信号の組が、特定時間間隔(Ts1+Ts2)で周期的に発生するオービス信号を発信するように構成され得る。第一の時間間隔Ts1は、第一のパルス信号と第二のパルス信号との間の時間間隔であり、第二の時間間隔Ts2は、第二のパルス信号と後続の第一のパルス信号との間の時間間隔である。
【0082】
この場合、電子機器10の制御部17は、変形例として、次のような複数の条件に従ってオービス信号の受信判定を行うように構成されてもよい。
【0083】
変形例における制御部17は、図9Aに示すように、信号間隔Tmとして、第一の時間間隔Ts1及び第二の時間間隔Ts2が交互に繰返し計測されることが所定回続いたことを条件に(第一の条件)、オービス信号を受信したと判定することができる。
【0084】
制御部17は、図9Bに示すように、信号間隔Tmとして、第一の時間間隔Ts1及び第二の時間間隔Ts2が順に計測された後、第一の時間間隔Ts1が計測され、その後、特定時間間隔(Ts1+Ts2)の整数倍の信号間隔Td=N*(Ts1+Ts2)から第一の時間間隔Ts1を減算した信号間隔Tm=Td-Ts1が計測され、更にその後、第一の時間間隔Ts1及び第二の時間間隔Ts2が順に計測されたことを条件に、オービス信号を受信したと判定することができる。
【0085】
制御部17は、第三の条件として、図9Bに示すように、第一の時間間隔Ts1及び第二の時間間隔Ts2が順に計測された後、所定時間Tw以内に、再度、第一の時間間隔Ts1及び第二の時間間隔Ts2が順に計測されたことを条件に、オービス信号を受信したと判定することができる。
【0086】
こうした変形例における制御部17の構成によれば、パルス光信号の組が周期的であるオービス信号がオービス50から飛来するケースにおいても、パルス光信号の欠落の影響を抑えて、高精度及び高感度に、オービス信号の受信の有無を判定することができる。
【0087】
[第二実施形態]
続いて第二実施形態の電子機器10の構成を説明する。第二実施形態の電子機器10では、制御部17が実行する処理の内容が第一実施形態とは異なる。その他の点で、第二実施形態の電子機器10は、第一実施形態と同様に構成される。オービス50もまた、第一実施形態と同様に構成される。従って、以下では、第二実施形態において制御部17が実行する処理の内容を選択的に説明し、その他の説明を、対応する構成に第一実施形態と同一符号を付して省略する。
【0088】
制御部17は、コンピュータプログラムに従う処理の実行により、図10Aに示すように、警報処理部17C、サンプリング部17E、及び、評価処理部17Fとして機能する。
【0089】
サンプリング部17Eは、レーザ受信部11から入力される受信信号を特定のサンプリング周期でサンプリングし、そのサンプリング値をメモリ175内のバッファに格納するように構成される。サンプリング時の受信信号がハイ信号であるとき、受信信号のサンプリング値として値1がバッファに格納され、サンプリング時の受信信号がロウ信号であるとき、受信信号のサンプリング値として値0がバッファに格納される。
【0090】
サンプリング周期毎のサンプリング値の格納により、バッファには、受信信号のサンプリング値がディジタルデータ列として記憶される。すなわち、バッファには、サンプリング周期毎の受信信号のサンプリング値に対応する値0又は値1のディジタルデータが時系列に配列されて構成されるディジタルデータ列が記憶される。以下、ディジタルデータ列に含まれるディジタルデータ(換言すればサンプリング値)の数のことをデータ数と表現する。
【0091】
データ数がMであるとき、バッファには、最新のサンプリング値から過去M個分のサンプリング値を含むディジタルデータ列が記憶される。サンプリング部17Eの動作により、最新のサンプリング値がバッファに書き込まれると、最も古いサンプリング値は、ディジタルデータ列から排除される。
【0092】
評価処理部17Fは、図10Bに示すように、予めメモリ175に記録された参照信号のディジタルデータ列と、バッファが記憶する受信信号のディジタルデータ列とを、比較することにより、受信信号の参照信号に対する類似度の評価値を算出する。評価処理部17Fは更に、評価値が予め設定された基準値を超えているか否かに応じて、レーザ受信部11がオービス信号を受信したか否かを判定する。
【0093】
参照信号は、受信信号と同様にディジタルデータ列としてメモリ175に格納される。参照信号のディジタルデータ列は、レーザ受信部11がノイズや遮蔽物の影響を受けていない理想的な形状のオービス信号を仮に受信したときに制御部17に入力される受信信号の形状を表現したディジタルデータ列であり、この受信信号が仮に入力されたときにサンプリング部17Eがバッファに格納する受信信号のディジタルデータ列に対応する。
【0094】
すなわち、参照信号のディジタルデータ列は、仮に受信信号が理想的な形状であるときの受信信号のサンプリング値がM個配列された構成とされる。参照信号は、ノイズや遮蔽物の影響を受けておらず、パルス信号の欠けのない受信信号のモデルに対応する。
【0095】
参照信号のディジタルデータ列は、電子機器10の製造段階で用意され、メモリ175に格納される。メモリ175内の参照信号のディジタルデータ列は、例えばファームウェアのアップデートの形態で、更新され得る。
【0096】
評価処理部17Fは、サンプリング周期毎に、バッファが記憶する受信信号のディジタルデータ列を構成する各サンプリング値を、参照信号のディジタルデータ列に含まれる対応するサンプリング値と比較する。
【0097】
比較対象のサンプリング値は、配列順位が同一のサンプリング値である。すなわち、受信信号のディジタルデータ列における先頭からm番目のサンプリング値と、参照信号のディジタルデータ列における先頭からm番目のサンプリング値とが比較され、これらの値が一致しているかどうかが判断される。
【0098】
評価処理部17Fは、この比較に基づいて、受信信号の参照信号に対する類似度の評価値として、受信信号のディジタルデータ列における先頭(m=1)から末尾(m=M)までのサンプリング値のうち、参照信号の対応するサンプリング値と一致したサンプリング値の数Zを評価値として算出する。すべてのサンプリング値が一致した場合の評価値はMである。評価値は、一致率Z/Mとして算出されてもよい。
【0099】
別例として、評価処理部17Fは、受信信号のディジタルデータ列におけるm番目のサンプリング値X[m]と、参照信号のディジタルデータ列におけるm番目のサンプリング値Y[m]と、の積X[m]・Y[m]についての、m=1からm=Mまでの和Σ(X[m]・Y[m])を評価値として算出してもよい。この場合には、X[m]=1且つY[m]=1であるときのみ積X[m]・Y[m]=1となるため、受信信号のパルス信号部分(換言すればハイ信号部分)と、参照信号のパルス信号部分との一致度を、評価値として算出することができる。
【0100】
評価処理部17Fは、評価値が予め定められた基準値以上であるとき、レーザ受信部11によりオービス信号が受信されたと判定し、評価値が予め定められた基準値未満であるとき、オービス信号が受信されていないと判定する。
【0101】
警報処理部17Cは、第一実施形態と同様に、評価処理部17Fによってオービス信号が受信されたと判定された場合に、表示部13を制御して、オービス50の存在を知らせる警告メッセージを表示部13に表示させると共に、オービス50の存在を知らせる警告音を、音出力部15に出力させる。
【0102】
制御部17は、図8に示す警報処理と同様の処理を実行することにより、警報処理部17Cとして機能することができる。制御部17は、一度、評価処理部17Fによってオービス信号が受信されたと判定されると、一定時間、警告メッセージ及び警報音の出力を継続するように動作することができる。また、制御部17は、図11に示す評価処理をサンプリング周期毎に実行することにより、評価処理部17Fとして機能することができる。
【0103】
制御部17は、評価処理を開始すると、受信信号のディジタルデータ列と、参照信号のディジタルデータ列と、を上述のように比較して、評価値を算出する(S410)。その後、制御部17は、評価値が基準値以上であるか否かを判断する(S420)。制御部17は、評価値が基準値以上であると判断すると(S420でYes)、レーザ受信部11によりオービス信号が受信されたと判定する(S430)。制御部17は、評価値が基準値未満であると判断すると(S420でNo)、オービス信号が受信されていないと判定する(S440)。
【0104】
第二実施形態の電子機器10によれば、受信信号の理想的な信号に対する類似度に基づき、オービス信号が受信されたか否かが判定されることから、オービス信号が不完全な信号形状に変化しても、オービス信号の受信判定を高精度且つ高感度に判定可能である。
【0105】
第二実施形態の変形例として、電子機器10には、ノイズや遮蔽物の影響を受けていない理想的な受信信号を表す第一の参照信号と共に、図7B-7Dに示すような、一部のパルス信号が欠けた不完全な受信信号のモデルに対応する第二、第三の参照信号が、ディジタルデータ列としてメモリ175に記憶されてもよい。この場合、制御部17は、受信信号と第一の参照信号との類似度に関する第一の評価値、受信信号と第二の参照信号との類似度に関する第二の評価値、及び、受信信号と第三の参照信号との類似度に関する第三の評価値を算出することができる。
【0106】
制御部17は更に、第一の評価値が予め定められた第一の基準値以上であるという第一の条件、第二の評価値が予め定められた第二の基準値以上であるという第二の条件、第三の評価値が予め定められた第三の基準値以上であるという第三の条件のいずれか一つが満足された場合に、オービス信号が受信されたと判定し、いずれの条件も満足されていない場合に、オービス信号が受信されていないと判定することができる。オービス信号の複雑さに応じて、第四の参照信号を含む四つ以上の参照信号が用意されてもよい。各参照信号は互いに、パルス信号の欠け方の異なる不完全な受信信号のモデルとして定義され得る。
【0107】
電子機器10は、こうした手法でオービス信号が受信されたか否かを高精度且つ高感度に判定可能である。以上に説明した第二実施形態の電子機器10は、次の技術的思想を含む。
【0108】
車両に搭載される電子機器であって、車両外の発信機から発信される特定信号を受信するように構成される受信部と、受信部による受信信号に基づき、受信部が特定信号を受信したかを判定するように構成される判定部と、を備え、判定部は、受信信号と、予め定められた特定信号のモデルに対応する参照信号との類似度を評価し、類似度の評価値が基準値以上であるとき、特定信号を受信したと判定し、類似度の評価値が基準値未満であるとき、特定信号を受信していないと判定する電子機器。
【0109】
この電子機器において、特定信号は、時間軸上に特定規則で配列されるパルス信号の列を含む信号であり得る。受信信号及び参照信号は、二値化されたディジタルデータ列であり得る。類似度の評価値は、受信信号のディジタルデータ列における各ディジタルデータ値と、参照信号のディジタルデータ列における対応するディジタルデータ値と、の比較に基づいて算出され得る。類似度の評価値は、ディジタルデータ値の一致の程度(例えば一致数又は一致率)に基づいて算出され得る。
【0110】
参照信号は、完全な特定信号のモデルに対応する第一の参照信号と、不完全な特定信号のモデルに対応する第二の参照信号と、を含み得る。この場合、判定部は、受信信号と第一の参照信号との類似度を評価し、類似度の評価値が第一の基準値以上であるとき、特定信号を受信したと判定し得る。更に、判定部は、受信信号と第二の参照信号との類似度を評価し、類似度の評価値が第二の基準値以上であるとき、特定信号を受信したと判定し得る。
【0111】
[その他]
以上には、本開示の例示的実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0112】
例えば、電子機器10は、第一実施形態によるオービス信号の受信判定機能及び第二実施形態によるオービス信号の受信判定機能の両者を備えていてもよい。本開示は、周期的なオービス信号に限らず、任意の特徴を有するオービス信号の受信判定に利用することができる。
【0113】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0114】
10…電子機器、11…レーザ受信部、13…表示部、15…音出力部、17…制御部、17A…計測処理部、17B…判定処理部、17C…警報処理部、17E…サンプリング部、17F…評価処理部、50…オービス、51…レーザ送受信部、53…速度計測部、110…受光部、113…増幅器、115…コンパレータ、171…プロセッサ、175…メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11