(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136690
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】枚葉紙集積機構
(51)【国際特許分類】
B65H 31/00 20060101AFI20220913BHJP
B65H 29/52 20060101ALI20220913BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B65H31/00 A
B65H29/52
B65H29/58 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036415
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保田 正志
(72)【発明者】
【氏名】中原 慎介
【テーマコード(参考)】
3F053
3F054
3F101
【Fターム(参考)】
3F053EA05
3F053EC06
3F053LA06
3F053LB01
3F053LB07
3F054AA01
3F054AA06
3F054AC04
3F054BA04
3F054BB12
3F054BB23
3F054BB26
3F054BG15
3F054BJ06
3F054BJ09
3F054DA11
3F101FA04
3F101FB12
3F101FC05
3F101FC11
3F101FD08
3F101FE01
3F101LA06
3F101LB01
3F101LB07
(57)【要約】
【課題】静電気により帯電しやすいシートであってもきれいに揃えて集積することができ、印刷面へのキズも付きにくい枚葉紙集積機構を提供する。
【解決手段】枚葉紙集積機構1であって、上面が印刷面10aとなった印刷済みの枚葉紙10を搬送する、下流側が低くなる様に傾斜した搬送部12と、搬送部から搬出される枚葉紙を集積するカセット部13を有し、カセット部は、搬送路よりも下方に位置し、下流側が上流側よりも高い傾斜平面である底面部16と、底面部の上流側端部から上方に立設された支持壁15を有し、支持壁の上部側に枚葉紙の静電気による貼り付きを防止する張出部14が設けられ、枚葉紙の下流側エッジが底面部に当接すると、底面部の傾斜に沿って下流側エッジが支持壁側に誘導されることで枚葉紙の上下が反転され、下流側エッジが支持壁で受け止められて印刷面が下方になった態様で底面部に集積される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉印刷装置の下流側に配置される枚葉紙集積機構であって、上面が印刷面となった印刷済みの枚葉紙を搬送する搬送部と、該搬送部から搬出される枚葉紙を集積するカセット部を有し、
該カセット部は、前記搬送路よりも下方に位置し、下流側が上流側よりも高い傾斜平面である底面部と、該底面部の上流側端部から上方に立設された支持壁を有し、
前記支持壁の上部側に、帯電しにくい材質であって、枚葉紙の静電気による貼り付きを防止する張出部が設けられ、
前記搬送部から斜め下方に放出された枚葉紙の下流側エッジが前記底面部に当接すると、前記底面部の傾斜に沿って下流側エッジが前記支持壁側に誘導されることで枚葉紙の上下が反転され、下流側エッジが前記支持壁で受け止められて印刷面が下方になった態様で底面部に集積され、以降の枚葉紙の下流側エッジは先行する枚葉紙の非印刷面に当接し、同様にその傾斜に沿って下流側エッジが前記支持壁側に誘導されることで上下が反転され、下流側エッジが前記支持壁で受け止められて印刷面が下方になった態様で順次集積されることを特徴とする枚葉紙集積機構。
【請求項2】
前記底面部の水平面に対する角度は10°以上60°以下であることを特徴とする請求項1に記載の枚葉紙集積機構。
【請求項3】
前記張出部の高さが調節可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の枚葉紙集積機構。
【請求項4】
前記支持壁は鉛直方向に立設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の枚葉紙集積機構。
【請求項5】
前記支持壁は前記底面部に対して直交する方向に立設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の枚葉紙集積機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉印刷装置に取り付けられる、印刷された枚葉紙を集積する機構に関し、特に枚葉紙が帯電しやすいものであった場合でも、きれいにそろえて集積できる枚葉紙集積機構に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉印刷装置において、枚葉印刷装置の下流側に印刷後の枚葉紙(シート)を集積する枚葉紙集積機構(スタッカー)が設けられるのが一般的である。印刷後のシートはスタッカーに搬送されてシートの端縁部を揃えて積層状態で積み上げられる。
【0003】
シートの材質は、紙以外にもプラスチックなど様々な材質のものが利用され、材質によっては、シート同士の摩擦力が大きくスムーズに搬送ができない場合がある。また装置内での搬送中やシート同士の摩擦などによって静電気を帯び、帯電して互いにくっついてしまいやすいものがある。このような場合、スタッカーに集積するときにシートが搬送されにくくなり、また互いに引っ掛かりやすくなるなどして、傾いてしまったり、途中で止まってしまったりするなどしてきれいに揃えて積み上げられない場合がある。
【0004】
このような状態のシートは静電気のためにさばき性も非常に悪く、バラバラに集積されたシートを整頓するのは非常に手間がかかるため作業性が非常に悪い。さらにシート同士の摩擦が強くなってこすれも強いため、こすれによる印刷面のキズの発生も懸念される。
【0005】
シートを揃えて集積する方法として、例えば特許文献1、特許文献2に開示されているように、スタッカーに向かう搬送路から急角度にシートを落下させるようにして、その勢いでシートを揃える機構の採用も考えられる。しかしこの機構では、シート間の摩擦力による影響を小さくするときには有効であるが、静電気によるくっつきに対しては効果が十分とは言えなかった。
【0006】
また、新たなシートをシートの印刷面に重ねて集積する態様であるため、摩擦や引っ掛かりによる印刷面のキズにも対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-079603号公報
【特許文献2】特開2016-216200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、摩擦により帯電しやすいシートであってもきれいに揃えて集積することができ、印刷面へのキズも付きにくい枚葉紙集積機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
枚葉印刷装置の下流側に配置される枚葉紙集積機構であって、上面が印刷面となった印刷済みの枚葉紙を搬送する搬送部と、該搬送部から搬出される枚葉紙を集積するカセット部を有し、
該カセット部は、前記搬送路よりも下方に位置し、下流側が上流側よりも高い傾斜平面である底面部と、該底面部の上流側端部から上方に立設された支持壁を有し、
前記支持壁の上部側に、帯電しにくい材質であって、枚葉紙の静電気による貼り付きを防止する張出部が設けられ、
前記搬送部から斜め下方に放出された枚葉紙の下流側エッジが前記底面部に当接すると、前記底面部の傾斜に沿って下流側エッジが前記支持壁側に誘導されることで枚葉紙の上下が反転され、下流側エッジが前記支持壁で受け止められて印刷面が下方になった態様で底面部に集積され、以降の枚葉紙の下流側エッジは先行する枚葉紙の非印刷面に当接し、同様にその傾斜に沿って下流側エッジが前記支持壁側に誘導されることで上下が反転され、下流側エッジが前記支持壁で受け止められて印刷面が下方になった態様で順次集積されることを特徴とする枚葉紙集積機構である。
【0010】
なお下流側とは枚葉紙が搬送部で搬送されて行く先の方向を、上流側とはその反対の、枚葉紙が供給される枚葉印刷装置の方向を意味する。
【0011】
上記枚葉紙集積機構において、前記底面部の水平面に対する角度は10°以上60°以下であって良い。
【0012】
上記枚葉紙集積機構において、前記張出部の高さが調節可能であって良い。
【0013】
上記枚葉紙集積機構において、前記支持壁は鉛直方向に立設されていて良い。
【0014】
上記枚葉紙集積機構において、前記支持壁は前記底面部に対して直交する方向に立設されていて良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の枚葉紙集積機構によれば、複雑な機構を要することなく、静電気を帯びやすい枚葉紙であっても、きれいにそろった態様で集積でき、かつ、印刷面にキズが入るおそれのない枚葉紙集積機構が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の枚葉紙集積機構の一形態の概略側面図である。
【
図2】本発明の枚葉紙集積機構の一形態で枚葉紙を集積する態様の概略側面図である。
【
図3】本発明の枚葉紙集積機構の別形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0018】
図1は、本発明の枚葉紙集積機構の一形態の概略側面図である。枚葉紙集積機構1は、枚葉印刷装置の下流側に配置される。印刷装置の搬送装置11から搬出された印刷済みの枚葉紙(シート)10が搬送部12に送られる。このときシート10の上面側が印刷面10aである。搬送部12は、搬送ローラや搬送ベルトなどのシート状物の搬送に適した公知の搬送機構をいずれも好適に適用できる。シート10は紙以外でもシート状物であれば特に限定はなく、プラスチックシート、合成紙、紙とプラスチックのラミネートシートなど種々のものが適用される。
【0019】
シート10は斜面状の搬送部12を通過して、その下流側の端部から放出され、自然に下方に垂れ下がりつつ、下方に配置されたカセット部13の底面部16に向かって落下する。底面部16にシート10の下流側の端縁(以下、先端ともいう)が当接すると、底面
部16は、下流側が高く、上流側が低くなるような角度θだけ傾いた斜面となっているため、シート10の先端は底面部の傾斜に沿って上流側へと流れてゆき、底面部16の斜面に沿って上流側に滑り落ちてゆく。なおここで下流側、上流側というのは、前述の様に、枚葉紙が搬送部で搬送されて行く先の方向が下流側、その反対の、枚葉紙が供給される枚葉印刷装置の方向が上流側である。
【0020】
底面部16の角度θは、シート10の材質等に合わせて適宜設定できるが、小さすぎると斜面とした効果が得られず、また大きくしすぎるとシート10が滑り落ちるときの勢いが強くなりすぎ、シート10が折れるなどするおそれがあることから、適度なコシを有するシートであれば、例えば10°以上、60°以下程度とするのが好ましい。
【0021】
底面部16の上流側の端部には、支持壁15がこの例では鉛直方向に立設されているため、シート10の先端は支持壁15に当接して止まる。その結果、シート10は印刷装置から搬送されてきたときと上下が反転され、印刷面10aが下側、非印刷面10bが上側となるように底面部16に集積される。
【0022】
なおシート10がもともと若干下向きにカールしているような場合、搬送部12から落下したときに先端が底面部16と支持壁15の接続している角部の近傍に当接する場合があるが、それでも特に差し支えない。またシート10が落下したとき、底面部などに当接するのはその先端の部分のみであり、それ以外の部分は底面部16に倒れる様にして集積され、強くこすられることはないので、印刷面10aにキズが付くことはない。
【0023】
カセット部13が配置される流れ方向の位置としては、特に限定するものではないが、適用されるシート10が搬送部12から落下する際の先端が自然に当接する位置が、底面部16と支持壁15の接続している角部となるようにすると、シート10が底面部16の斜面に沿って上流側に滑り落ちてゆく距離を短くでき、印刷面10aにキズが付くおそれをより少なくできるため、より好ましい。
【0024】
支持壁15の上部には帯電しにくく、静電気を帯びにくい材質からなる張出部14が設けられている。シート10が特に静電気を帯びやすいものである場合や、コシが弱くたわみ易い場合などに、落下の途中で支持壁15に引き寄せられて貼りついてしまうおそれがあるが、張出部14があることでこれを防ぐことができ、スムーズに落下させることができる。張出部14は、特に限定するものではないが、例えばアースを接続した導電性の金属部材などが適用できる。また静電気を除去する除電部材などであっても良い。また、張出部14の高さ、すなわち支持壁15からの膨出量は、使用されるシート10のコシに応じて調整できるようにしておくと好ましい。
【0025】
図2は、本発明の枚葉紙集積機構の一形態で枚葉紙を集積する態様の概略側面図である。1枚目のシート10が集積された後、続いて搬送されるシート10は同様にして搬送部12から放出されて底面部16に落下してくるが、その先端が当接するのは先に集積されていたシート10の非印刷面10bであり、先に集積されていたシート10の印刷面10aにキズがつくことはない。また続いて搬送されるシート10も1枚目のシート10と同様に、先に集積されていたシート10の非印刷面10bに当接するのはその先端の部分のみであり、それ以外の部分は底面部16に倒れる様にして集積され、強くこすられることはないので、シート同士の摩擦による静電気の発生が抑制されるとともに、印刷面10aにキズが付くことがない。以下同様にしてシート10が集積される。集積されたシート10は静電気の発生が抑えられ、先端が支持壁15に当接して揃った状態で集積されるため、後工程等での取り扱いが容易となる。
【0026】
図3は、本発明の枚葉紙集積機構の別形態の概略側面図である。本実施形態では、支持
壁15が底面部16と直交する方向に立設されている。支持壁15をこのような方向に立設すると、集積されたシート10が方形に揃えられて集積されるため、取り扱いが容易になる。
【0027】
以上説明したように、本発明の枚葉紙集積機構によれば、
1)印刷面に重ねないため、印刷面のキズはほぼ防ぐことが可能である。
2)収納時にこれから収納するシートが収納済みシートと接する部分は、基本先端の辺のみと、接する面積が小さいため、摩擦による帯電を少なくできる。
それでも若干帯電して、シートのコシによっては支持壁15にくっついてしまい底面部16にならわないことがある。そこで底面部16側にならうよう、壁にくっつき防止の張出部14を設けることで支持壁15に貼りつくのを防止することが可能である。
またシート10は水平に重ねていくとうまくならわないことがあるため角度θをつけることが好ましい。
【0028】
<実験例>
以下に実験例で本発明をより具体的に検証した。
・シート:1)コシ:90mN(厚さ90μm,PET-G)
2)コシ:65mN(厚さ80μm,PET-G)
3)コシ:25mN(厚さ65μm,PET-G)
の3種類のA4サイズのシートで検証した。
・それぞれのコシの測定は東海精機製ループステフネステスターで測定した(15mm幅、200mm長のサンプルで直径80mmのループを作り、このループを変形させるのに必要な力の最大値でコシを定義)。
・張出部:
支持壁からの高さが20,40,60mmの張出部をつけて支持壁側への貼りつき、もしくは張出部にあたって搬送不良が発生するかを検証した。
・各シート20枚を流して、シートが揃うかを検証した。
・結果を表1に示す。20枚問題なく搬送できた場合は〇、そうでない場合は発生した問題ごとに表記している。
【0029】
【0030】
表1に示す通り、コシの値が異なるシートであっても、張出部の高さを適切に調整することで整頓しながらスムーズに重ねていくことができることがわかった。一方で、張出部がないと支持壁への貼りつきが発生した。
【0031】
・続いてカセットの底面部の角度θに関して試験を行った。結果を表2に示す。20枚問題なく搬送できた場合は〇、そうでない場合は発生した問題ごとに表記している。
【0032】
【0033】
θが0、すなわち傾斜がない場合はうまく整頓ができなかった。逆に角度θが大きくなりすぎると、コシが小さいシートでは重ならずに折れてしまう場合があった。
以上より、本発明はシートのコシが概ね100mN以下、張出部の支持壁からの高さは60mm程度まで、底面部の角度θは60度くらいまでが好ましいことが確認された。
【0034】
(比較検証)
同じシートを使って従来の搬送方法で検証したところ、20枚スムーズに搬送できなかった。この時のシート間の静電圧は4.8kVであった。これに対して本発明を使った場合のシート間静電圧は1.2kVであった。このことから帯電防止にも寄与していることが
わかった。
【符号の説明】
【0035】
1・・・・枚葉紙集積機構
10・・・枚葉紙(シート)
10a・・印刷面
10b・・非印刷面
11・・・搬送装置
12・・・搬送部
13・・・カセット部
14・・・張出部
15・・・支持壁
16・・・底面部