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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136715
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】絶縁ゲート型半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220913BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220913BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220913BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220913BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 653A
H01L29/78 652D
H01L29/78 652F
H01L29/78 652M
H01L29/78 652L
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L21/28 301B
H01L29/58 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036457
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】辻 崇
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104AA04
4M104AA10
4M104BB01
4M104BB21
4M104BB25
4M104BB26
4M104BB28
4M104BB34
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD34
4M104DD37
4M104DD43
4M104DD84
4M104EE03
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF03
4M104FF16
4M104FF17
(57)【要約】
【課題】オン抵抗の増大を抑制しつつ、短絡耐量を向上させることができる絶縁ゲート型半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型のドリフト層1上に設けられた第1導電型の電流拡散層(2a,2b,3a~3d)と、電流拡散層(2a,2b,3a~3d)に設けられた第2導電型の埋込層(4a~4e,6a~6c)と、電流拡散層(2a,2b,3a~3d)上に設けられた第2導電型の注入制御領域8a~8cと、注入制御領域8a~8cの内部に設けられた第2導電型の高濃度領域5a~5cと、注入制御領域8a~8cの上部に設けられた第1導電型の担体供給領域10a~10dと、トレンチ11a,11b内の絶縁ゲート構造(12,13a,13b)を備え、電流拡散層(2a,2b,3a~3d)の上部の不純物濃度が4×1016cm-3~6×1016cm-3であり、上部の不純物濃度に対する注入制御領域の不純物濃度の比が0.5~2である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上面に設けられた第1導電型の電流拡散層と、
前記電流拡散層の内部に設けられた第2導電型の埋込層と、
前記電流拡散層及び前記埋込層の上面に設けられた第2導電型の注入制御領域と、
前記注入制御領域の内部に設けられた、前記注入制御領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の高濃度領域と、
前記注入制御領域の上部に選択的に設けられた第1導電型の担体供給領域と、
前記注入制御領域を貫通し、前記電流拡散層に達するトレンチと、
前記トレンチの内側に設けられた絶縁ゲート構造と、
を備え、
前記電流拡散層の少なくとも前記注入制御領域に接する部分の不純物濃度が、4×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下であり、且つ、前記部分の不純物濃度に対する前記注入制御領域の不純物濃度の比が、0.5以上、且つ2以下であることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項2】
前記部分の不純物濃度が、4×1016cm-3以上、且つ5×1016cm-3以下であり、且つ、前記不純物濃度の比が、0.5以上、1以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項3】
前記部分の不純物濃度が、5×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下であり、且つ、前記不純物濃度の比が、1.2以上、且つ2以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項4】
前記電流拡散層が、
前記ドリフト層の上面に設けられた下側電流拡散領域と、
前記下側電流拡散領域の上面に設けられ、前記下側電流拡散領域よりも低不純物濃度の上側電流拡散領域と、
を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項5】
前記埋込層が、
前記下側電流拡散領域の内部に設けられた下側埋込領域と、
前記上側電流拡散領域の内部、且つ前記下側埋込領域の一部の上面に設けられ、前記トレンチから離間する上側埋込領域と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項6】
前記下側埋込領域の一部の下面に設けられ、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の部分電流拡散層を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項7】
前記下側埋込領域の他の一部が、前記トレンチの底面に接することを特徴とする請求項5又は6に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項8】
前記下側電流拡散領域の下面の深さが、前記下側埋込領域の下面の深さよりも深いことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項9】
前記高濃度領域は、前記トレンチに接することを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項10】
前記高濃度領域の不純物濃度が、2×1017cm-3以上、且つ7×1017cm-3以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項11】
前記部分は、前記上側電流拡散領域であることを特徴とする請求項4に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート型の絶縁ゲート型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチゲート型のMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)は、プレーナゲート型に対してセルピッチの縮小によるオン抵抗の低減が期待できる。しかし、炭化珪素(SiC)等のワイドバンドギャップ半導体を材料とするトレンチゲート型のMOSFETでは、トレンチ底部に位置するゲート絶縁膜に高電圧が印加され易く、ゲート絶縁膜が破壊される懸念がある。そこで、トレンチ底部の電界強度を緩和するために、トレンチ底部にp型埋込領域を設けると共に、隣接するトレンチの中央にp型埋込領域を設けた構造が検討されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/002766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の半導体装置では、オン抵抗を低減すると飽和電流が大きくなり、短絡電流遮断時の安全動作領域(SCSOA)が短くなり、短絡耐量が低下する。即ち、オン抵抗の低減と短絡耐量の向上とはトレードオフの関係にあり、オン抵抗の増大を抑制しつつ、短絡耐量を向上させることは困難である。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、オン抵抗の増大を抑制しつつ、短絡耐量を向上させることができるトレンチゲート型の絶縁ゲート型半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、(a)第1導電型のドリフト層と、(b)ドリフト層の上面に設けられた第1導電型の電流拡散層と、(c)電流拡散層の内部に設けられた第2導電型の埋込層と、(d)電流拡散層及び埋込層の上面に設けられた第2導電型の注入制御領域と、(e)注入制御領域の内部に設けられた、注入制御領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の高濃度領域と、(f)注入制御領域の上部に選択的に設けられた第1導電型の担体供給領域と、注入制御領域を貫通し、電流拡散層に達するトレンチと、(g)トレンチの内側に設けられた絶縁ゲート構造とを備え、電流拡散層の少なくとも注入制御領域に接する部分の不純物濃度が、4×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下であり、且つ、部分の不純物濃度に対する注入制御領域の不純物濃度の比が、0.5以上、且つ2以下である絶縁ゲート型半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オン抵抗の増大を抑制しつつ、短絡耐量を向上させることができるトレンチゲート型の絶縁ゲート型半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置を示す要部断面図である。
図2図1のA-A方向から見た水平方向の断面図である。
図3図1のB-B方向から見た水平方向の断面図である。
図4】上側電流拡散領域のドナー面密度と、飽和電流及びオン電圧との関係を示すグラフである。
図5】上側電流拡散領域のドナー面密度と、短絡保護遅れ時間の従来比及びオン電圧との関係を示すグラフである。
図6】上側電流拡散領域の不純物濃度に対するベース領域の不純物濃度の比と、オン抵抗の上昇率との関係を示すグラフである。
図7】上側電流拡散領域の不純物濃度に対するベース領域の不純物濃度の比と、短絡保護遅れ時間との関係を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図8に引き続く工程断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図9に引き続く工程断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図10に引き続く工程断面図である。
図12】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図11に引き続く工程断面図である。
図13】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図12に引き続く工程断面図である。
図14】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図13に引き続く工程断面図である。
図15】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図14に引き続く工程断面図である。
図16】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明するための図15に引き続く工程断面図である。
図17】本発明の実施形態の変形例に係る絶縁ゲート型半導体装置を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0010】
本明細書において、「担体供給領域」とは、MIS型電界効果トランジスタ(MISFET)やMIS型静電誘導トランジスタ(MISSIT)のソース領域、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域、MIS制御静電誘導サイリスタ(MIS制御SIサイリスタ)のアノード領域等の主電流となる多数キャリア(多数担体)を供給する半導体領域を意味する。「担体受領領域」とは、MISFETやMISSITのドレイン領域、IGBTのコレクタ領域、MIS制御SIサイリスタのカソード領域等の主電流となる多数キャリアを受領する半導体領域を意味する。IGBT、MIS制御SIサイリスタ等のバイポーラ型の動作をする半導体装置においては、担体受領領域から多数キャリアの反対導電型のキャリア(担体)が注入される。
【0011】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0012】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。またnやpに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じnとnとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0013】
(実施形態)
<絶縁ゲート型半導体装置の構造>
本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の一例として、図1に示すように、MISFETを説明する。図1では2つのトレンチMOS構造(単位セル)を示すが、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、図1に示した構造を周期的に配列してマルチチャネル構造として、大電流を流す電力用半導体装置(パワーデバイス)を構成している。
【0014】
本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、図1に示すように、第1導電型(n型)の担体輸送層(1,2a,2b,3a,3b)と、担体輸送層(1,2a,2b,3a,3b)の上に設けられた第2導電型(p型)の注入制御領域(ベース領域)8a~8cを備える。
【0015】
担体輸送層(1,2a,2b,3a~3d)は、炭化ケイ素(SiC)等のシリコンよりも禁制帯幅が広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)材料で構成されている。担体輸送層(1,2a,2b,3a,3b)は、n型のドリフト層1と、ドリフト層1の上面に設けられたn型の電流拡散層(CSL)(2a,2b,3a~3d)を有する。
【0016】
ドリフト層1は、主電流をなす多数キャリアがドリフト電界で走行する領域である。ドリフト層1は、例えばSiCのエピタキシャル成長層で構成されている。ドリフト層1の不純物濃度は、例えば1×1015cm-3以上、且つ3×1016cm-3以下程度である。
【0017】
電流拡散層(2a,2b,3a~3d)は、ベース領域8a~8cから注入された多数キャリアが拡散で移動する領域である。電流拡散層(2a,2b,3a~3d)は、n型の下側電流拡散領域2a,2bと、下側電流拡散領域2a,2bの上面側に設けられたn型の上側電流拡散領域3a~3dを備える。
【0018】
下側電流拡散領域2a,2bは、例えばSiCのエピタキシャル成長層で構成されている。下側電流拡散領域2a,2bの不純物濃度は、ドリフト層1の不純物濃度よりも高い。下側電流拡散領域2a,2bの不純物濃度は、例えば7×1016cm-3以上、且つ1.5×1017cm-3以下程度である。好ましくは、例えば8×1016cm-3以上、且つ1.2×1017cm-3以下程度である。下側電流拡散領域2a,2bの厚さは、例えば0.3μm~0.5μm程度である。
【0019】
上側電流拡散領域3a~3dは、例えばSiCのエピタキシャル成長層で構成されている。上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度は、ドリフト層1の不純物濃度よりも高く、下側電流拡散領域2a,2bの不純物濃度よりも低い。上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度は、例えば4×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下程度である。上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度は、例えば4×1016cm-3以上、且つ5×1016cm-3以下程度であることが好ましく、或いは、5×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下程度であることが好ましい。
【0020】
上側電流拡散領域3a~3dの厚さは、例えば0.3μm~0.5μm程度である。上側電流拡散領域3a~3dの厚さは、下側電流拡散領域2a,2bの厚さと同一でもよく、下側電流拡散領域2a,2bの厚さより薄くてもよく、下側電流拡散領域2a,2bの厚さより厚くてもよい。
【0021】
電流拡散層(2a,2b,3a~3d)の内部には、p型の埋込層(4a~4e,6a~6c)が設けられている。埋込層(4a~4e,6a~6c)は、p型の下側埋込領域4a~4eと、p型の下側埋込領域4a~4eの上面側に設けられたp型の上側埋込領域6a~6cを備える。
【0022】
下側埋込領域4a~4eは、下側電流拡散領域2a,2bの上部に選択的に設けられている。下側埋込領域4b,4dの上面は、トレンチ11a,11bの底面に接して設けられている。下側埋込領域4a,4c,4eは、隣り合うトレンチ11a,11bの中央の位置で、下側電流拡散領域2a,2bの上部を挟んで互いに離間している。下側電流拡散領域2a,2bは、下側埋込領域4a~4eに挟まれた領域である接合型電界効果トランジスタ(JFET)領域を構成している。下側埋込領域4b,4dは、トレンチ11a,11bの底面に位置するゲート絶縁膜12に印加される電界を緩和し、ゲート絶縁膜12を保護する機能を有する。下側埋込領域4a~4eの不純物濃度は、例えば5×1017cm-3以上、且つ2×1019cm-3以下程度である。下側埋込領域4a~4eの厚さは、例えば0.3μm~0.5μm程度である。
【0023】
下側埋込領域4a,4c,4eの下面側には、下側埋込領域4a~4eに接してn型の部分電流拡散層(部分CSL)7a~7cが設けられている。部分電流拡散層7a~7cは、逆バイアスの印加時に絶縁破壊電界を超えた際に、下側埋込領域4a,4c,4eに電界を集中させ、アバランシェ降伏を起こし易くし、ゲート絶縁膜12を保護する機能を有する。なお、部分電流拡散層7a~7cは必ずしも設けられていなくてよい。
【0024】
上側埋込領域6a~6cは、上側電流拡散領域3a~3dの内部に、下側埋込領域4a,4c,4eの上面に接するように選択的に設けられている。上側埋込領域6a~6cの両側の側面は、トレンチ11a,11bから離間し、上側電流拡散領域3a~3dに接している。上側埋込領域6a~6cは、下側埋込領域4a~4eに挟まれた領域であるJFET領域を構成している。
【0025】
上側埋込領域6a~6cの不純物濃度は、例えば5×1017cm-3以上、且つ2×1019cm-3以下程度である。上側埋込領域6a~6cの不純物濃度は、下側埋込領域4a~4eの不純物濃度と同等であってもよく、下側埋込領域4a~4eの不純物濃度と異なっていてもよい。上側埋込領域6a~6cの厚さは、例えば0.3μm~0.5μm程度である。図1では、上側埋込領域6a~6cの幅が下側埋込領域4a~4eの幅と同一である場合を例示しているが、上側埋込領域6a~6cの幅が下側埋込領域4a~4eの幅と異なっていてもよい。
【0026】
上側電流拡散領域3a~3d及び上側埋込領域6a~6cの上面には、ベース領域8a~8cが設けられている。つまり、ベース領域8a~8cの下面は、上側電流拡散領域3a~3d及び上側埋込領域6a~6cの上面に接している。ベース領域8a~8cは、主電流となる多数キャリアの上側電流拡散領域3a~3dへの注入量を制御する。ベース領域8a~8cは、例えばSiCのエピタキシャル成長層で構成されている。ベース領域8a~8cの不純物濃度は、下側埋込領域4a~4e及び上側埋込領域6a~6cの不純物濃度よりも低い。ベース領域8a~8cの不純物濃度は、例えば2×1016cm-3以上、且つ1.2×1017cm-3以下程度である。ベース領域8a~8cの不純物のピーク濃度は、例えば2×1016cm-3以上、且つ5×1016cm-3以下程度であり、また6×1016cm-3以上、且つ1.2×1017cm-3以下程度である。
【0027】
ベース領域8a~8cには、ベース領域8a~8cの深さ方向の中央部に一様にp型の高濃度領域5a~5cが設けられている。高濃度領域5a~5cは、ベース領域8a~8cにp型不純物をイオン注入して形成された領域であり、ベース領域8a~8cよりも不純物濃度が高いp型の領域である。高濃度領域5a~5cは、上側電流拡散領域3a~3dや、後述するベースコンタクト領域9a~9c,ソース領域10a~10dには接していない。また、高濃度領域5a~5cの不純物濃度は、例えば2×1017cm-3以上、且つ7×1017cm-3以下程度である。高濃度領域の不純物濃度は、例えば3×1017cm-3以上、且つ5×1017cm-3以下程度である。
【0028】
ベース領域8a~8cの不純物濃度及び上側埋込領域6a~6cの不純物濃度は、例えば上側埋込領域6a~6cの不純物濃度に対するベース領域8a~8cの不純物濃度の比が0.5以上、且つ2以下程度となるように設定される。ベース領域8a~8cの不純物濃度及び上側埋込領域6a~6cの不純物濃度は、例えば上側埋込領域6a~6cの不純物濃度に対するベース領域8a~8cの不純物濃度の比が0.5以上、且つ1以下程度となるように設定されることが好ましく、或いは、1.2以上、且つ2以下程度となるように設定されることが好ましい。
【0029】
ベース領域8a~8cの上部には、n型の担体供給領域(ソース領域)10a~10dが選択的に設けられている。ソース領域10a~10dの不純物濃度は、ドリフト層1の不純物濃度よりも高い。ソース領域10a~10dの不純物濃度は、例えば1×1018cm-3以上、且つ1×1021cm-3以下程度である。
【0030】
ベース領域8a~8cの上部には、p型のベースコンタクト領域9a~9cが選択的に設けられている。ベースコンタクト領域9a~9cの両側の側面は、ソース領域10a~10dに接している。ベースコンタクト領域9a~9cの不純物濃度は、ベース領域8a~8cの不純物濃度よりも高い。ベースコンタクト領域9a~9cの不純物濃度は、例えば1×1020cm-3以上、且つ5×1020cm-3以下程度である。
【0031】
ソース領域10a~10d、ベース領域8a~8c、高濃度領域5a~5c及び上側電流拡散領域3a~3dを貫通し、下側埋込領域4b,4dの上面に到達するようにトレンチ11a,11bが設けられている。トレンチ11a,11bの側面は、ソース領域10a~10d、ベース領域8a~8c、高濃度領域5a~5c及び上側電流拡散領域3a~3dに接している。トレンチ11a,11bの底面は、下側埋込領域4b,4dの上面に接している。
【0032】
トレンチ11a,11bの底面は、下側埋込領域4b,4dの上面と同じ深さに位置してもよく、下側埋込領域4b,4dの内部に位置してもよい。例えば、トレンチ11a,11bの深さは1μm以上、且つ2μm以下程度、幅は0.3μm以上、且つ1μm以下程度、間隔は1μm以上、且つ5μm以下程度である。
【0033】
本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、トレンチ11a,11bの内側に設けられた絶縁ゲート構造(12,13a),(12,13b)を有する。絶縁ゲート構造(12,13a),(12,13b)は、トレンチ11a,11bの側壁に位置するベース領域8a~8cの表面ポテンシャルを制御する。絶縁ゲート構造(12,13a),(12,13b)は、トレンチ11a,11bの底面及び側面に設けられたゲート絶縁膜12と、トレンチ11a,11bの内側にゲート絶縁膜12を介して設けられたゲート電極13a,13bとを備える。
【0034】
ゲート絶縁膜12としては、例えばシリコン酸化膜(SiO膜)の他、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、ストロンチウム酸化物膜(SrO膜)、シリコン窒化物膜(Si膜)、アルミニウム酸化物膜(Al膜)、マグネシウム酸化物膜(MgO膜)、イットリウム酸化物膜(Y膜)、ハフニウム酸化物膜(HfO膜)、ジルコニウム酸化物膜(ZrO膜)、タンタル酸化物膜(Ta膜)、ビスマス酸化物膜(Bi膜)のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。
【0035】
ゲート電極13a,13bの材料としては、例えばボロン(B)等のp型不純物又はリン(P)等のn型不純物を高濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)や高融点金属等が使用可能である。なお、図1では、ゲート電極13a,13bの上面がソース領域10a~10dの上面と面一である場合を例示するが、これに限定されない。例えば、ゲート電極13a,13bの上部が、ゲート絶縁膜12を介してソース領域10a~10dの上面まで延在していてもよい。
【0036】
図2は、図1のA-A方向から見た水平方向の断面図(平面レイアウト)に対応する。図2のC-C方向から見た垂直方向の断面図が図1に対応する。図2に示すように、下側埋込領域4a~4mは、平面パターン上、格子状をなす。下側埋込領域4a~4eは、図3の縦方向に互いに平行に延伸する複数のストライプ部を構成している。下側埋込領域4f~4mは、下側埋込領域4a~4eが延伸する方向と直交する方向(図2の横方向)に延伸し、下側埋込領域4a~4eと接続する接続部を構成している。下側埋込領域4a~4mに周囲を囲まれるように下側電流拡散領域2a~2fが設けられている。
【0037】
図3は、図1のB-B方向から見た水平方向の断面図(平面レイアウト)に対応する。図3のD-D方向から見た垂直方向の断面図が図1に対応する。図3に示すように、トレンチ11a,11bは、平面パターン上、図3の縦方向に互いに平行に延伸するストライプ状をなす。トレンチ11a,11bの内側にはゲート絶縁膜12を介してゲート電極13a,13bが設けられている。トレンチ11a,11bの間には上側電流拡散領域3a~3d及び上側埋込領域6a~6cが設けられている。上側電流拡散領域3a~3d及び上側埋込領域6a~6cは、図3の縦方向に互いに平行に延伸するストライプ状をなす。なお、トレンチ11a,11bの平面パターンはストライプ状に限定されず、六角形等の多角形としてもよい。
【0038】
図1に示したゲート電極13a,13b上には層間絶縁膜14が配置されている。層間絶縁膜14としては、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜(SiO膜)が採用可能である。また、層間絶縁膜14としては、燐を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、硼素を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、硼素及び燐を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)、シリコン窒化物膜(Si膜)等でもよく、これらの積層膜としてもよい。
【0039】
ソース領域10a~10d及びベースコンタクト領域9a~9c上には、ソース領域10a~10d及びベースコンタクト領域9a~9cに接して第1主電極(ソース電極)(15~18)が設けられている。ソース電極(15~18)は、例えば、ベースコンタクト領域9a~9cの上面に接して設けられたソースコンタクト層15と、ソースコンタクト層15の上面及び側面に接し、層間絶縁膜14を覆うように設けられたバリアメタル層16,17と、バリアメタル層17に接して設けられた金属層18で構成されている。
【0040】
ソースコンタクト層15の材料としては、例えばニッケルシリサイド(NiSi)等が使用可能である。バリアメタル層16,17の材料としては、例えばチタン(Ti)や窒化チタン(TiN)等が使用可能である。金属層18の材料としては、例えばアルミニウム(Al)又はAl-Si系合金が使用可能である。
【0041】
ドリフト層1の下面には、n型の担体受領領域(ドレイン領域)11が設けられている。ドレイン領域11は、例えばSiC基板で構成されている。ドレイン領域11の不純物濃度は、ドリフト層1の不純物濃度よりも高い。ドレイン領域11の不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、且つ1×1020cm-3以下程度である。
【0042】
ドレイン領域11の下面には、第2主電極(ドレイン電極)(19~22)が配置されている。ドレイン電極(19~22)は、例えばドレイン領域11の下面側から順に、第1金属層19、第2金属層20、第3金属層21、第4金属層22が積層された構造で構成されている。第1金属層19は、例えばチタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)等の金属のシリサイドあるいは炭化層からなる。第2金属層20は、例えばアルミニウム(Al)膜や、チタン(Ti)膜からなる。第3金属層21は、例えばニッケル(Ni)膜や、Niを主成分とする合金(Ni-p)からなる。第4金属層22は、例えば金(Au)からなる。
【0043】
本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の動作時には、ドレイン電極(19~22)に正電圧を印加し、ゲート電極13a,13bに閾値以上の正電圧を印加することにより、ベース領域8a~8cや高濃度領域5a~5cのトレンチ11a,11bに接する部分に反転チャネルが形成され、オン状態となり、多数キャリア(電子)で構成される主電流が流れる。一方、ゲート電極13a,13bに印加される電圧が閾値未満の場合、高濃度領域5a~5cを含むベース領域8a~8cに反転チャネルが形成されず、オフ状態となり、主電流が流れない。
【0044】
図4は、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の上側電流拡散領域3a~3dのドナー面密度を変化させた場合の、上側電流拡散領域3a~3dのn型不純物の面密度(ドナー面密度)と、飽和電流Id,sat及びオン電圧Vonとの関係についてのシミュレーション結果を示す。図4に示すように、上側電流拡散領域3a~3dのドナー面密度を2×1012cm-2以上、即ち上側電流拡散領域3a~3dの厚さが0.5μmの場合に不純物濃度を4×1016cm-3以上とすることにより、オン電圧Vonの増大を抑制しつつ、飽和電流Id,satを低減することができ、短絡耐量を向上させることができる。
【0045】
図5は、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の上側電流拡散領域3a~3dのドナー面密度を変化させた場合の、上側電流拡散領域3a~3dのドナー面密度と、短絡保護遅れ時間tscの従来比及びオン電圧Vonとの関係についてのシミュレーション結果を示す。短絡保護遅れ時間tscの従来比は、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を1×1017cm-3とした場合の短絡保護遅れ時間tscに対する比である。上側電流拡散領域3a~3dのドナー面密度を2×1012cm-2以上、即ち上側電流拡散領域3a~3dの厚さが0.5μmの場合に不純物濃度を4×1016cm-3以上とすることにより、オン電圧Vonの増大を抑制しつつ、短絡保護遅れ時間tscを増大させることができ、短絡耐量を向上させるとができる。このとき、短絡耐量を向上させるには、ドナー面密度を3×1012cm-2以下、即ち上側電流拡散領域3a~3dの厚さが0.5μmの場合に不純物濃度を6×1016cm-3以下とすることが好ましい。
【0046】
図6は、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度と、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度に対するベース領域8a~8cの不純物濃度の比(以下、単に「濃度比」ともいう。)をそれぞれ変化させた場合の、濃度比とオン抵抗の上昇率ΔRonAとの関係についてのシミュレーション結果を示す。図6に示すように、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を4×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下とし、且つ濃度比を0.5以上、1.0以下とすることにより、オン抵抗の上昇率ΔRonAを5%以下に抑制することができる。また、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を5×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下とし、濃度比を0.5以上、且つ2以下とすることにより、オン抵抗の上昇率ΔRonAを5%以下に抑制することができる。オン抵抗が増加すると、オン電圧Vonの上限規格オーバーとなる素子が発生し良品率が低下するが、オン抵抗の上昇率ΔRonAを5%以下に抑制できれば、ウェハー薄化あるいはドリフト層1の低抵抗化によりオン抵抗RonAの増加分を吸収し、良品率を高いまま保つことが可能となる。
【0047】
図7は、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度と、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度に対するベース領域8a~8cの不純物濃度の比(濃度比)をそれぞれ変化させた場合の、濃度比と短絡保護遅れ時間tscとの関係についてのシミュレーション結果を示す。図7に示すように、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を4×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下とし、且つ、濃度比を1.2以上、且つ2以下とすることにより、短絡保護遅れ時間tscを5μs以上に増大させることができる。また、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を4×1016cm-3以上、且つ5×1016cm-3以下とし、且つ、濃度比を0.5以上、且つ2以下とすることにより、短絡保護遅れ時間tscを5μs以上に増大させることができる。短絡保護遅れ時間tscを5μs以上に増大できれば、外部に短絡保護回路を追加することなく、素子単体のみでの短絡保護が可能となる。
【0048】
よって、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置によれば、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を4×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下とし、且つ、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度に対するベース領域8a~8cの不純物濃度の比(濃度比)を0.5以上、且つ2以下とすることにより、低オン抵抗の上昇率ΔRonAを抑制しつつ、短絡保護遅れ時間tscを増大することができる。即ち、オン抵抗の増大を抑制しつつ、短絡耐量を向上させることができる。
【0049】
また、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を4×1016cm-3以上、且つ5×1016cm-3以下であり、且つ、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度に対するベース領域8a~8cの不純物濃度の比(濃度比)を、0.5以上、1以下とすることにより、低オン抵抗の上昇率ΔRonAを5%以下に抑制しつつ、短絡保護遅れ時間tscを5μs以上に増大することができる。
【0050】
また、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度を5×1016cm-3以上、且つ6×1016cm-3以下程度とし、且つ、上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度に対するベース領域8a~8cの不純物濃度の比(濃度比)を1.2以上、且つ2以下とすることにより、低オン抵抗の上昇率ΔRonAを5%以下に抑制しつつ、短絡保護遅れ時間tscを5μs以上に増大することができる。
【0051】
<絶縁ゲート型半導体装置の製造方法>
次に、図8図16を参照しながら、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を説明する。ここでは、図1に示した絶縁ゲート型半導体装置の断面に着目して説明する。なお、以下に述べる絶縁ゲート型半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0052】
まず、窒素(N)等のn型不純物を高濃度に添加したn型のSiC基板を用意し、SiC基板をドレイン領域11として用いる。次に、SiC基板上にn型のドリフト層1をエピタキシャル成長させる。次に、図8に示すように、ドリフト層1の上面にn型の下側電流拡散領域2をエピタキシャル成長させる。この結果、図8に示すように、ドレイン領域11、ドリフト層1及び下側電流拡散領域2の積層構造が形成される。
【0053】
次に、下側電流拡散領域2の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて窒素(N)等のn型不純物イオンを注入する。フォトレジスト膜を除去した後、下側電流拡散領域2の上面に新たにフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いてアルミニウム(Al)等のp型不純物イオンを注入する。フォトレジスト膜を除去した後、熱処理を行うことにより、n型不純物イオン及びp型不純物イオンを活性化させる。この結果、図9に示すように、下側電流拡散領域2の下部にn型の部分電流拡散層7a~7cが選択的に形成される。また、下側電流拡散領域2の上部にp型の下側埋込領域4a~4eが選択的に形成される。なお、部分電流拡散層7a~7c及び下側埋込領域4a~4eを形成する熱処理は一括ではなく、個別に行ってもよい。
【0054】
次に、図10に示すように、下側電流拡散領域2a,2b及び下側埋込領域4a~4eの上面にn型の上側電流拡散領域3をエピタキシャル成長させる。上側電流拡散領域3の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、Al等のp型不純物イオンを注入する。フォトレジスト膜を除去した後、熱処理を行うことにより、p型不純物イオンを活性化させる。この結果、図11に示すように、上側電流拡散領域3の内部にp型の上側埋込領域6a~6cが選択的に形成される。
【0055】
次に、上側電流拡散領域3及び上側埋込領域6a~6cの上面に、p型のベース領域8をエピタキシャル成長させる。そして、ベース領域8の全面にアルミニウム(Al)等のp型不純物イオンを注入することにより、ベース領域8の深さ方向の中央部分に高濃度領域5を形成する。ここまでの状態が図12に示されている。ベース領域8の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、窒素(N)等のn型不純物イオンを注入する。フォトレジスト膜を除去した後、ベース領域8の上面に新たにフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、Al等のp型不純物イオンを注入する。フォトレジスト膜を除去した後、熱処理を行うことにより、n型不純物イオン及びp型不純物イオンを活性化させる。この結果、図13に示すように、ベース領域8の上部にn型のソース領域10x,10y及びp型のベースコンタクト領域9a~9cが選択的に形成される。なお、ソース領域10x,10y及びベースコンタクト領域9a~9cを形成する熱処理は一括ではなく、個別に行ってもよい。
【0056】
次に、ソース領域10x,10y及びベースコンタクト領域9a~9cの上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術でフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をエッチング用マスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングにより、ソース領域10x,10y、ベース領域8、高濃度領域5及び上側電流拡散領域3の一部を深さ方向に除去する。その後、フォトレジスト膜を除去する。なお、エッチング用マスクとして、フォトレジスト膜の代わりに酸化膜をパターニングして用いてもよい。この結果、図14に示すように、下側埋込領域4b,4dに到達するトレンチ11a,11bが選択的に形成される。
【0057】
次に、熱酸化法又は化学気相成長(CVD)法等により、トレンチ11a,11bの底面及び側面とソース領域10a~10d及びベースコンタクト領域9a~9cの上面にゲート絶縁膜12を形成する。更に、ドーパントガスを用いたCVD法等により、トレンチ11a,11bを埋めるように、Al等のp型不純物を高濃度で添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)を堆積する。その後、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングによりドープドポリシリコン層の一部を選択的に除去する。この結果、図15に示すように、ドープドポリシリコン層からなるゲート電極13a,13bのパターンが形成され、絶縁ゲート構造(12,13a),(12,13b)が形成される。
【0058】
次に、CVD法等により、絶縁ゲート構造(12,13a),(12,13b)の上面に層間絶縁膜14を堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、層間絶縁膜14およびゲート絶縁膜12の一部を選択的に除去する。その後、スパッタリング法等により全面にNi膜を堆積した後、熱処理することで、ソース領域10a~10d及びベースコンタクト領域9a~9c表面のSiCをNi膜と反応させる。さらに未反応のNi膜を除去することで、層間絶縁膜14が除去された部分に選択的に、NiSiからなるソースコンタクト層15を形成する。更に、スパッタリング法、フォトリソグラフィ技術及びRIE等を用いて、層間絶縁膜14上にバリアメタル層16,17及びソース電極18を形成する。
【0059】
更に、化学的機械研磨(CMP)等により、ドレイン領域11の厚さを調整する。その後、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域11の下面にドレイン電極(19~22)を形成する。このようにして、図1に示した実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置が完成する。
【0060】
(変形例)
本発明の実施形態の変形例に係る絶縁ゲート型半導体装置は、図17に示すように、下側電流拡散領域2a,2bの下面の深さが、下側埋込領域4a~4eの下面の深さと一致している点が、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と異なる。本発明の実施形態の変形例に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の構成は、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0061】
本発明の実施形態の変形例に係る絶縁ゲート型半導体装置によれば、下側電流拡散領域2a,2bの下面の深さが、下側埋込領域4a~4eの下面の深さと一致している場合でも、実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と同様の効果を奏する。
【0062】
本発明の実施形態の変形例に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造時には、n型のドリフト層1の上部にイオン注入及び熱処理によりn型の部分電流拡散層7a~7cを形成した後に、下側電流拡散領域2a,2bを構成するエピタキシャル成長層を形成すればよい。
【0063】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0064】
例えば、本発明の実施形態では、図1に示すように、電流拡散層(2a,2b,3a~3d)を構成する下側電流拡散領域2a,2bと上側電流拡散領域3a~3dとが個別のエピタキシャル成長層で構成された場合を例示したが、電流拡散層が単一のエピタキシャル成長層で構成されていてもよい。この場合、電流拡散層の少なくともベース領域8a~8cに接する部分(上部)の不純物濃度を、上述した上側電流拡散領域3a~3dの不純物濃度とすればよい。また、電流拡散層を単一のエピタキシャル成長層で形成した後、高加速度で多段イオン注入を行うことにより、p型の下側埋込領域4a~4e及びp型の下側埋込領域4a~4eを形成すればよい。さらには、電流拡散層(2a,2b,3a~3d)をすべてイオン注入法により形成してもよい。
【0065】
また、本発明の実施形態では、図1に示すように、トレンチ11a,11b内に絶縁ゲート構造(12,13a),(12,13b)を有するMISFETを例示したが、これに限定されず、トレンチ内に絶縁ゲート構造を有するIGBT等の種々の絶縁ゲート構造を有する絶縁ゲート型半導体装置に適用可能である。トレンチゲート型IGBTとしては、図1に示したMISFETのn型のソース領域10a~10dをエミッタ領域とし、ドリフト層1の下面側に担体受領領域としてp型のコレクタ領域を設けた構造とすればよい。
【0066】
また、本発明の実施形態では、SiCを用いた絶縁ゲート型半導体装置を例示した。しかし、SiCの他にも、Siよりも拡散係数の小さい窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド又は窒化アルミニウム(AlN)等のシリコンよりも禁制帯幅が広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)材料を用いた種々の絶縁ゲート型半導体装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…ドリフト層
2,2a~2f…下側電流拡散領域
3,3a~3d…上側電流拡散領域
4a~4m…下側埋込領域
5a,5b,5c…高濃度領域
6a~6c…上側埋込領域
7a~7c…部分電流拡散層
8,8a~8c…注入制御領域(ベース領域)
9a~9c…ベースコンタクト領域
10a~10d,10x,10y…担体供給領域(ソース領域)
11…担体受領領域(ドレイン領域)
11a,11b…トレンチ
12…ゲート絶縁膜
13a,13b…ゲート電極
14…層間絶縁膜
15…ソースコンタクト層
16,17…バリアメタル層
18~22…金属層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17