(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136733
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電池モジュール及び電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/213 20210101AFI20220913BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20220913BHJP
H01M 50/559 20210101ALI20220913BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20220913BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20220913BHJP
【FI】
H01M50/213
H01M50/107
H01M50/559
H01M50/566
H01M50/593
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036487
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 知則
【テーマコード(参考)】
5H011
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA05
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD06
5H011DD13
5H011KK01
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5H043KA06D
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5H043KA45
5H043LA02F
5H043LA21F
5H043LA22F
5H043LA23F
5H043LA35F
(57)【要約】
【課題】複数の円筒形電池を同じ方向を向く平行姿勢で配置しながら、同一面に配置された封口体とカシメ凸条にリード板を確実に溶接する。
【解決手段】電池モジュールは、複数の円筒形電池1を互いに平行な姿勢で電池ホルダ2に収納してリード板3で接続している。円筒形電池1は、第1の端面1Aの外周縁部にカシメ凸条15を備えている。電池ホルダ2は、第1の端面1Aと対向する表面プレート部22に封口体12を表出させる第1の電極窓25とカシメ凸条15を表出させる第2の電極窓26とを開口し、第2の電極窓26を湾曲形状のスリットとしている。リード板3は、第1の電極窓25で封口体12に溶接される第1の接続片31と、第2の電極窓26でカシメ凸条15に溶接される第2の接続片32とを備え、第2の接続片32は、カシメ凸条15に沿う形状に湾曲された帯状で、少なくともカシメ凸条を部分的に被覆する領域に部分的に溶接されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方を開口した有底筒状の外装缶を有する複数の円筒形電池と、
複数の前記円筒形電池を互いに平行な姿勢で収納してなる電池ホルダと、
前記円筒形電池に接続されて複数の前記円筒形電池を電気接続してなるリード板と、
を備える電池モジュールであって、
前記円筒形電池は、前記外装缶の開口部をカシメ加工して封口体で閉塞し、前記封口体で閉塞された端面を第1の端面として、前記第1の端面の外周縁部にカシメ加工によってカシメ凸条を設けており、
前記電池ホルダは、前記複数の円筒形電池を前記第1の端面が同一面に並ぶように保持すると共に、前記第1の端面との対向面に表面プレート部を備えており、
前記表面プレート部には、
前記円筒形電池の前記封口体を部分的に表出させる第1の電極窓と、
前記カシメ凸条を部分的に表出させる第2の電極窓とを開口させると共に、
前記第2の電極窓を前記カシメ凸条に沿う湾曲形状のスリットとしており、
前記リード板は、
前記第1の電極窓に配置されて前記封口体に溶接される第1の接続片と、
前記第2の電極窓に配置されて前記カシメ凸条に溶接される第2の接続片と
を備え、
前記第2の接続片は、前記カシメ凸条に沿う形状に湾曲された帯状であって、少なくとも前記カシメ凸条を被覆する領域において部分的に前記カシメ凸条に溶接されてなる電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記カシメ凸条は、所定の横幅(D)を有するリング状であって平面状の接続領域を備えており、
前記第2の接続片は、前記接続領域に沿う円弧状であって、前記接続領域に溶接されてなる電池モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の電池モジュールであって、
前記第2の接続片が、前記カシメ凸条に対して部分的に溶接される溶接領域を有しており、前記溶接領域が、その横幅(a)を前記接続領域の横幅(D)以下であって、前記溶接領域の縦幅(b)を前記第2の接続片の全長(L)の1/4以下とする電池モジュール。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電池モジュールであって、
前記円筒形電池は、前記外装缶と前記封口体との間に絶縁材を配置して互いに絶縁すると共に、前記第1端面の平面視において、前記絶縁材を前記カシメ凸条の内側に表出させてリング状の絶縁領域を設けており、
前記絶縁領域の横幅(S)を前記カシメ凸条の前記接続領域の横幅(D)の0.8~1.5倍とする電池モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の電池モジュールであって、
前記第2の接続片は、横幅(W)が前記カシメ凸条の前記接続領域の横幅(D)の1~3倍であって、円弧状の外側縁の曲率半径(R1)が前記接続領域の外周縁の曲率半径(r1)よりも大きく、円弧状の内側縁の曲率半径(R2)が前記接続領域の内周縁の曲率半径(r2)よりも小さく、かつ前記絶縁領域の内周縁の曲率半径(r3)よりも大きく、円弧状の前記第2の接続片に対する中心角(α)が135度~180度である電池モジュール。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電池モジュールであって、
前記電池ホルダは、前記第2の電極窓の内周側の開口縁が前記カシメ凸条の内周縁よりも内側であって前記絶縁領域の内周縁よりも外側に配置されると共に、前記第2の電極窓の外周側の開口縁が前記カシメ凸条の外周縁よりも外側に配置されており、前記第2の電極窓の開口幅(K)が前記第2の接続片の横幅(W)の1~2倍である電池モジュール。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の電池モジュールであって、
前記円筒形電池の前記第1端面の平面視において、前記円筒形電池に対する前記第2の接続片の相対位置に応じて、前記第2の接続片を前記カシメ凸条に溶接する溶接領域の位置を変化させてなる電池モジュール。
【請求項8】
複数の円筒形電池と、
複数の前記円筒形電池を互いに平行な姿勢で収納してなる電池ホルダと、
前記円筒形電池に接続されて複数の前記円筒形電池を電気接続してなるリード板と、
を備える電池モジュールの製造方法であって、
有底円筒状の外装缶の開口部をカシメ加工して封口体で閉塞し、前記封口体で閉塞された端面を第1の端面として、前記第1の端面の外周縁部にカシメ加工によってカシメ凸条を設けてなる円筒形電池を準備する工程と、
前記円筒形電池の前記第1の端面に対向して配置される表面プレート部に、前記円筒形電池の前記封口体を表出させる第1の電極窓と、前記カシメ凸条を表出させる第2の電極窓であって前記カシメ凸条に沿う湾曲形状のスリットとを開口して設けてなる電池ホルダを準備する工程と、
前記第1の電極窓に配置されて前記封口体に溶接される第1の接続片と、前記カシメ凸条に沿う形状に湾曲された帯状であって、前記第2の電極窓に配置されて前記カシメ凸条に溶接される第2の接続片を備えるリード板を準備する工程と、
複数の前記円筒形電池を前記電池ホルダの定位置に配置して、複数の前記円筒形電池を前記第1の端面が同一面に並ぶように保持し、前記円筒形電池の前記封口体を前記第1の電極窓から表出させて、前記カシメ凸条を第2の電極窓から表出させる工程と、
前記リード板を前記電池ホルダの定位置に配置して、前記第1の接続片を前記第1の電極窓に配置し、前記第2の接続片を前記第2の電極窓に配置する工程と、
前記第1の電極窓に配置された前記第1の接続片を前記封口体に溶接し、前記第2の電極窓に配置された前記第2の接続片を前記カシメ凸条に溶接する工程とを含み、
前記リード板溶接工程において、前記円筒形電池に対する前記第2の接続片の相対位置に応じて、前記第2の接続片を前記カシメ凸条に溶接する溶接領域の位置を変化させる電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載する電池モジュールの製造方法であって、
前記第2の接続片を前記カシメ凸条に溶接する工程が、
前記リード板が配置された前記円筒形電池と前記第2の接続片を前記第一の端面側からカメラで撮影する撮影工程と、
撮影された画像から前記円筒形電池の中心位置と、円弧状の前記第2の接続片に対する中心位置とを演算する演算工程と、
前記演算工程で検出された前記円筒形電池の中心位置に対する前記第2の接続片の中心位置の相対位置から前記第2の接続片を前記カシメ凸条に溶接する溶接領域を特定する判定工程と、
前記判定工程で判定された溶接領域において、前記第2の接続片を前記カシメ凸条に溶接する第2の接続片溶着工程と
を含む電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載する電池モジュールの製造方法であって、
前記判定工程において、以下の条件に基づいて前記第2の接続片の溶接領域を特定する電池モジュールの製造方法。
前記円筒形電池の前記第1の端面の平面視において、前記円筒形電池の中心を原点とするXY平面であって、前記第2の接続片の一端がY軸上の正方向に位置し、前記第2の接続片の他端がX軸の正方向を超えてY軸の負方向まで延長される中心角(α)となるように配置される状態において、
前記円筒形電池の中心を第1の中心(O1)、円弧状の前記第2の接続片に対する中心を第2の中心(O2)として、前記第1の中心(O1)に対する前記第2の中心(O2)の相対位置における前記溶接領域が、X軸の正方向を始線とする動径で示す角(θ)の範囲に特定される。
(1)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に一致する場合、前記溶接領域は、前記第2の接続片上の任意の位置とする。
(2)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してX軸の負方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の55度≦θ≦90度の範囲内とする。
(3)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してX軸の正方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の55度≦θ≦85度の範囲とする。
(4)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してY軸の正方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の-35度≦θ≦35度の範囲とする。
(5)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してY軸の負方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の-35度≦θ≦35度の範囲とする。
(6)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してX軸の正方向でY軸の正方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の-65度≦θ≦-20度の範囲とする。
(7)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してX軸の負方向でY軸の正方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の25度≦θ≦70度の範囲とする。
(8)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してX軸の負方向でY軸の負方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の-70度≦θ≦-25度の範囲とする。
(9)前記第2の中心(O2)が前記第1の中心(O1)に対してX軸の正方向でY軸の負方向に位置する場合、前記溶接領域は前記第2の接続片上の20度≦θ≦65度の範囲とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒形電池を金属製のリード板で接続してなる電池モジュールに関し、とくに複数の円筒形電池を第1の端面が同じ方向を向くように互いに平行な姿勢で並べて配置し、第1の端面側において複数の円筒形電池をリード板で接続してなる電池モジュールとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端部の電極端子にリード板を溶接して、複数の円筒形電池を直列や並列に接続している電池モジュールは開発されている。この電池モジュールは、電動クリーナーや電動工具などの携帯型の電動機器用の電源として、あるいは据え置き型の蓄電用途でサーバーのバックアップ用電源や家庭用、事業所用、工場用の電源装置として、さらにはアシスト自転車の駆動用電力源や電動スクータ、電動カート、あるいはハイブリッド車や電気自動車などの車両の駆動用電源等に用いられている。
【0003】
このような電池モジュールに使用される円筒形電池として、有底円筒状の外装缶の開口部をカシメ加工して封口体で閉塞して、封口体を正極、外装缶を負極とする二次電池が多用されている。また近年、電池モジュールのエネルギー密度の向上が謳われており、円筒形電池の結合の手段として、缶底へのリード板の接続から、封口体側の外周縁部にカシメ加工によって設けたカシメ凸条にリード板を接続して、必要体積を低減し、体積エネルギー密度の向上を図ることが進められている。従来、円筒形電池の封口体側のカシメ凸条にリード板を接続する手段としてワイヤーボンディングが用いられてきた。
【0004】
ワイヤーボンディングは、線径が通常φ500μm程度であり、線径によって電流容量が決まることから、1セルから取り出せる電流値に制限ができるため使われ方に制約があった(特許文献1参照)。ワイヤーボンディングに代わってリード板を用いて接続することで電流値の制限をなくすことができるが、各構成部品の公差ばらつき等により、幅の狭いカシメ凸条に対してリード板を正確かつ確実に溶接することが難しいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
本発明は、以上の問題点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一つは、複数の円筒形電池を正極が同じ方向を向く平行姿勢で配置しながら、同一面に配置された封口体とカシメ凸条にリード板を確実に溶接できる電池モジュールとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明のある態様にかかる電池モジュールは、一方を開口した有底筒状の外装缶を有する複数の円筒形電池と、複数の円筒形電池を互いに平行な姿勢で収納してなる電池ホルダと、円筒形電池に接続されて複数の円筒形電池を電気接続してなるリード板とを備えている。円筒形電池は、外装缶の開口部をカシメ加工して封口体で閉塞し、封口体で閉塞された端面を第1の端面として、第1の端面の外周縁部にカシメ加工によってカシメ凸条を設けている。電池ホルダは、複数の円筒形電池を第1の端面が同一面に並ぶように保持すると共に、第1の端面との対向面に表面プレート部を備えており、表面プレート部には円筒形電池の封口体を部分的に表出させる第1の電極窓とカシメ凸条を部分的に表出させる第2の電極窓とを開口させると共に、第2の電極窓はカシメ凸条に沿う湾曲形状のスリットとしている。リード板は、第1の電極窓に配置されて封口体に溶接される第1の接続片と、第2の電極窓に配置されてカシメ凸条に溶接される第2の接続片とを備えている。第2の接続片は、カシメ凸条に沿う形状に湾曲された帯状であって、少なくともカシメ凸条を部分的に被覆する領域において部分的にカシメ凸条に溶接されている。
【0008】
上記構成によると、外装缶の開口部をカシメ加工して封口体で閉塞してなる複数の円筒形電池を第1の端面が同じ方向を向く平行姿勢で配置しながら、同一面に配置された封口体とカシメ凸条にリード板を確実に溶接できる特徴がある。それは、以上の電池モジュールが、円筒形電池の第1の端面と対向する表面プレート部に円筒形電池の封口体を表出させる第1の電極窓と、カシメ凸条を表出させる湾曲形状でスリット状の第2の電極窓とを開口して設けており、リード板の第1の接続片を第1の電極窓に配置して封口体に溶接し、第2の接続片を第2の電極窓に配置してカシメ凸条に溶接しているからである。とくに、リード板の第2の接続片は、カシメ凸条に沿う湾曲形状であって、少なくともカシメ凸条を被覆する領域において部分的にカシメ凸条に溶接するので、カシメ凸条に対して第2の接続片を確実に溶接してリード板を接続できる。
【0009】
本発明の他の態様にかかる電池モジュールは、カシメ凸条が、所定の横幅(D)を有するリング状であって平面状の接続領域を備えており、第2の接続片が、接続領域に沿う円弧状であって、接続領域に溶接されている。
【0010】
上記構成によると、カシメ凸条に、所定の横幅(D)を有するリング状であって平面状の接続領域を設けて、第2の接続片を接続領域に沿う円弧状として接続領域に溶接するので、接続領域に対して第2の接続片をより適確に溶接できる特長がある。
【0011】
本発明の他の態様にかかる電池モジュールは、第2の接続片が、カシメ凸条に対して部分的に溶接される溶接領域を有しており、溶接領域が、その横幅(a)を接続領域の横幅(D)以下であって、溶接領域の縦幅(b)を第2の接続片の全長(L)の1/4以下としている。
【0012】
上記構成によると、第2の接続片の溶接領域を特定の範囲とすることで、カシメ凸条の接続領域に対して第2の接続片をより正確に溶接できる。ここで、第2の接続片の全長(L)とは、第2の接続片の幅方向の中心を通る中心線の長さを示している。
【0013】
なお、
図6Aは円筒形電池1の第1の端面の平面図を、
図6Bは第2の接続片32の平面図をそれぞれ示しており、溶接領域35をクロスハッチングで表示している。図に示す溶接例では、溶接領域35の横幅(a)を接続領域の横幅(D)と等しくし、溶接領域の縦幅(b)を第2の接続片の全長の1/4以下であって、接続領域の横幅(D)の1.5倍としている。ただ、溶接領域の縦幅(b)は、接続領域の横幅(D)の0.8倍~3倍とすることもできる。溶接領域の縦幅(b)を、接続領域の横幅(D)よりも大きくして超音波溶接する場合は、溶接用の超音波ホーンを溶接領域に対して位置をずらしながら複数回当てても良い。
【0014】
本発明の他の態様にかかる電池モジュールは、円筒形電池が、外装缶と封口体との間に絶縁材を備えて互いに絶縁されると共に、第1端面の平面視において、絶縁材をカシメ凸条の内側に表出させてリング状の絶縁領域を設けており、絶縁領域の横幅(S)をカシメ凸条の接続領域の横幅(D)の0.8~1.5倍としている。
【0015】
上記構成によると、カシメ凸条の内側に設けられた絶縁領域により、カシメ凸条に配置される第2の接続片が封口体の中心方向に位置ずれしても、第2の接続片が封口体に直接接触するのを有効に防止でき、カシメ凸条と封口体が第2の接続片を介してショートする事態を回避できる。
【0016】
本発明の他の態様にかかる電池モジュールは、第2の接続片の横幅(W)がカシメ凸条の接続領域の横幅(D)の1~3倍であって、円弧状の外側縁の曲率半径(R1)が接続領域の外周縁の曲率半径(r1)よりも大きく、円弧状の内側縁の曲率半径(R2)が接続領域の内周縁の曲率半径(r2)よりも小さく、かつ絶縁領域の内周縁の曲率半径(r3)よりも大きく、円弧状の第2の接続片に対する中心角(α)を135度~180度としている。
【0017】
上記構成によれば、第2の電極窓から表出するカシメ凸条の接続領域に対して積層状態で配置される第2の接続片を広く設計することで溶接可能領域を広くしながら、円筒形電池に対して第2の接続片の相対位置がずれる状態においても、溶接領域を確保することができる。
【0018】
本発明の他の態様にかかる電池モジュールは、電池ホルダが、第2の電極窓の内周側の開口縁をカシメ凸条の内周縁よりも内側であって絶縁領域の内周縁よりも外側に配置すると共に、第2の電極窓の外周側の開口縁をカシメ凸条の外周縁よりも外側に配置しており、第2の電極窓の開口幅(K)を第2の接続片の横幅(W)の1~2倍としている。
【0019】
上記構成によれば、電池ホルダに設ける第2の電極窓の内周縁と外周縁の位置を規定することで、第2の電極窓に配置される第2の接続片をカシメ凸条に溶接可能な位置に配置しながら、第2の接続片が封口体に接触する弊害を回避できる。
【0020】
本発明の他の態様にかかる電池モジュールは、円筒形電池の第1端面の平面視において、円筒形電池に対する第2の接続片の相対位置に応じて、第2の接続片をカシメ凸条に溶接する溶接領域の位置を変化させている。
【0021】
上記構成により、寸法誤差等によりカシメ凸条に対して第2の接続片の位置がずれる場合においても、第2の接続片を確実にカシメ凸条に溶接して接続できる。
【0022】
本発明のある態様にかかる電池モジュールの製造方法は、一方を開口した有底筒状の外装缶を有する複数の円筒形電池と、複数の円筒形電池を互いに平行な姿勢で収納してなる電池ホルダと、円筒形電池に接続されて複数の円筒形電池を電気接続してなるリード板とを備える電池モジュールの製造方法であって、外装缶の開口部をカシメ加工して封口体で閉塞し、封口体で閉塞された端面を第1の端面として、第1の端面の外周縁部にカシメ加工によってカシメ凸条を設けてなる円筒形電池を準備する工程と、円筒形電池の第1の端面に対向して配置される表面プレート部に、円筒形電池の封口体を表出させる第1の電極窓と、カシメ凸条を表出させる第2の電極窓であってカシメ凸条に沿う湾曲形状のスリットとを開口して設けてなる電池ホルダを準備する工程と、第1の電極窓に配置されて封口体に溶接される第1の接続片と、カシメ凸条に沿う形状に湾曲された帯状であって、第2の電極窓に配置されてカシメ凸条に溶接される第2の接続片を備えるリード板を準備する工程と、複数の円筒形電池を電池ホルダの定位置に配置して、複数の円筒形電池を第1の端面が同一面に並ぶように保持し、円筒形電池の封口体を第1の電極窓から表出させて、カシメ凸条を第2の電極窓から表出させる工程と、リード板を電池ホルダの定位置に配置して、第1の接続片を第1の電極窓に配置し、第2の接続片を第2の電極窓に配置する工程と、第1の電極窓に配置された第1の接続片を封口体に溶接し、第2の電極窓に配置された第2の接続片をカシメ凸条に溶接する工程とを含み、リード板溶接工程において、円筒形電池に対する第2の接続片の相対位置に応じて、第2の接続片をカシメ凸条に溶接する溶接領域の位置を変化させる。
【0023】
上記方法によると、複数の円筒形電池を第1の端面が同じ方向を向く平行姿勢で配置しながら、同一面に配置された封口体とカシメ凸条にリード板を確実に溶接できる。とくに、カシメ凸条に対して第2の接続片が位置ずれ状態で配置されても、溶接領域の位置を変化させることで良好な溶接を実現して確実に接続できる。
【0024】
本発明のある態様にかかる電池モジュールの製造方法は、第2の接続片をカシメ凸条に溶接する工程が、撮影工程と演算工程と判定工程と第2の接続片溶着工程とを含んでいる。撮影工程は、リード板が配置された円筒形電池と第2の接続片を第一の端面側からカメラで撮影する。演算工程は、撮影された画像から円筒形電池の中心位置と、円弧状の第2の接続片に対する中心位置とを演算する。判定工程は、演算工程で検出された円筒形電池の中心位置に対する第2の接続片の中心位置の相対位置から第2の接続片をカシメ凸条に溶接する溶接領域を特定する。第2の接続片溶着工程は、判定工程で判定された溶接領域において、第2の接続片をカシメ凸条に溶接する。
【0025】
本発明のある態様にかかる電池モジュールの製造方法は、判定工程において、以下の条件に基づいて第2の接続片の溶接領域を特定する。
円筒形電池の第1の端面の平面視において、円筒形電池の中心を原点とするXY平面であって、第2の接続片の一端がY軸上の正方向に位置し、第2の接続片の他端がX軸の正方向を超えてY軸の負方向まで延長される中心角(α)となるように配置される状態において、
円筒形電池の中心を第1の中心(O1)、円弧状の第2の接続片に対する中心を第2の中心(O2)として、第1の中心(O1)に対する第2の中心(O2)の相対位置における溶接領域が、X軸の正方向を始線とする動径で示す角(θ)の範囲に特定される。
(1)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に一致する場合、溶接領域は、第2の接続片上の任意の位置とする。
(2)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の負方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の55度≦θ≦90度の範囲内とする。
(3)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の正方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の55度≦θ≦85度の範囲とする。
(4)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してY軸の正方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の-35度≦θ≦35度の範囲とする。
(5)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してY軸の負方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の-35度≦θ≦35度の範囲とする。
(6)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の正方向でY軸の正方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の-65度≦θ≦-20度の範囲とする。
(7)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の負方向でY軸の正方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の25度≦θ≦70度の範囲とする。
(8)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の負方向でY軸の負方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の-70度≦θ≦-25度の範囲とする。
(9)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の正方向でY軸の負方向に位置する場合、溶接領域は第2の接続片上の20度≦θ≦65度の範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池モジュールの斜視図である。
【
図2】
図1に示す電池モジュールの電池ユニットの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す電池モジュールの電池ユニットの平面図である。
【
図4】
図3に示す電池ユニットのIV-IV線拡大断面斜視図である。
【
図5】
図3に示す電池ユニットのV-V線拡大断面図である。
【
図6A】
図6Aは円筒形電池の第1の端面の拡大平面図である。
【
図7】第2の接続片をカシメ凸条に溶接する装置を示す概略構成図である。
【
図8】判定工程において溶接位置を特定する概念を示す平面図である。
【
図9】判定工程において溶接位置を特定する概念を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0028】
本発明の電池モジュールは、電動クリーナーや電動工具などの携帯型の電動機器用の電源として、あるいは据え置き型の蓄電用途でサーバーのバックアップ用電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源などの家庭用、事業所用、工場用の電源装置として、さらにはアシスト自転車の駆動用電力源や電動スクータ、電動カート、あるいはハイブリッド車や電気自動車などの車両の駆動用電源など種々の用途に利用できる。以下、本発明の一実施形態として、電動機器用の電源として用いる電池モジュールについて説明する。
【0029】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る電池モジュール100を
図1ないし
図5に示す。
図1は電池モジュールの概略斜視図を、
図2及び
図3は
図1の電池モジュールの電池ユニットの分解斜視図及び平面図を、
図4は
図3に示す電池ユニットのIV-IV線拡大断面斜視図を、
図5は
図3示す電池ユニットのIV-IV線拡大断面図をそれぞれ示している。これらの図に示す電池モジュール100は、複数の円筒形電池1と、複数の円筒形電池1を互いに平行な姿勢で収納してなる電池ホルダ2と、円筒形電池1に接続されて複数の円筒形電池1を電気接続してなるリード板3とを備えている。
図1に示す電池モジュール100は、複数の円筒形電池1が収納された電池ホルダ2の定位置に配置されるリード板3を介して複数の円筒形電池1を接続して電池ユニット10を構成し、この電池ユニット10を外装ケース9に収納している。
【0030】
(円筒形電池1)
円筒形電池1は、好ましくはリチウムイオン電池などの非水系電解液電池を使用する。リチウムイオン電池は重量と容量に対する容量が大きいので、円筒形電池1をリチウムイオン電池とする電池モジュール100は、小型軽量化して充放電容量を大きくできる。ただし、本発明は円筒形電池を非水系電解液電池には特定せず、充電できるすべての電池、例えばニッケル水素電池やニッカド電池なども使用できる。
【0031】
円筒形電池1は、
図5に示すように、金属製で有底円筒状の外装缶11に正負の電極板13A、13Bをセパレータ13Cを介して積層してなる渦巻き電極体13を収納して電解液を充填し、外装缶11の開口部をカシメ加工して封口体12で閉塞している。封口体12は絶縁材14を介して外装缶11に絶縁して気密に固定される。円筒形電池1は、封口体12で閉塞された端面を第1の端面1Aとして、第1の端面1Aの外周縁部にカシメ加工によってカシメ凸条15を設けている。リチウムイオン電池の円筒形電池1は、封口体12を正極とし、外装缶11のカシメ凸条15を負極としている。円筒形電池1は、直径を18mm、全長を65mmとする通称「18650」と呼ばれるリチウムイオン電池、あるいはこの寸法に近い、またはこれより大きいリチウムイオン電池が使用できる。
【0032】
カシメ凸条15は、リード板3との接続を良好にするために、平面状の接続領域15Aを設けている。接続領域15Aは、所定の横幅(D)を有するリング状であって、カシメ加工された外周縁部を除く内側領域に設けられている。このように、カシメ凸条15の表面に所定の幅を有する平面状の接続領域15Aを備えることで、後述するリード板3の第2の接続片32を面接触状態で配置しながら溶着できる。
【0033】
さらに、
図5の円筒形電池1は、外装缶11の上端開口部と封口体12との間に絶縁材14としてガスケットを介在させており、このガスケットを介して封口体12と外装缶11とを絶縁している。
図5及び
図6Aに示す円筒形電池1は、第1の端面1Aの平面視において、カシメ加工されたカシメ凸条15と封口体12との間に配置された絶縁材14を、カシメ凸条15の内側まで延長して表出させてリング状の絶縁領域16を設けている。このように、カシメ凸条15の内側に絶縁領域16を設けることで、カシメ凸条15と封口体12との接触による短絡を有効に防止できる特徴がある。この絶縁領域16は、その横幅(S)を、例えば、カシメ凸条15の接続領域15Aの横幅(D)の0.8~1.5倍とすることができる。
【0034】
図5に示す円筒形電池1は、封口体12と外装缶11との間に介在されるガスケットを表出させることで絶縁領域16を形成しているが、円筒形電池1は、第1の端面1Aの平面視において、カシメ凸条15の内側にガスケットとは別の材料、例えば、樹脂材料等を配置して封口体12とカシメ凸条15とを絶縁することも、カシメ凸条15の内側において封口体12の表面に絶縁塗料を塗布して封口体12とカシメ凸条15とを絶縁することもできる。
【0035】
さらに、円筒形電池は、図示しないが、封口体として、封口板にキャップを連結して凸部電極としたものを採用することもできる。この封口体においては、キャップの中央部分を正極としてリード板に接続される。
【0036】
以上の円筒形電池1は、第1の端面1Aに配置される封口体12とカシメ凸条15を正負の電極としてリード板3に接続されるので、外装缶11の底部側であって、第1の端面を除く領域を絶縁チューブ等で被覆して絶縁することもできる。
【0037】
(電池ホルダ2)
電池ホルダ2は、絶縁材料であるプラスチック等の熱可塑性樹脂によって形成されている。電池ホルダ2は、
図4に示すように、円筒形電池1を挿通して保持する保持部21の両端に、表面プレート部22、23を一体的に成形して連結している。この電池ホルダ2は、一対の表面プレート部22、23の対向する内側に保持部21を設けて電池収納部としている。
図2と
図4に示す保持部21は、円筒形電池1の外周面に沿う筒状、ないし部分的に開口部を設けた筒状としている。一対の表面プレート部22、23は、保持部21の両端に位置して、互いに平行な姿勢で設けられている。表面プレート部22、23は、保持部21に対して直交する板状に成形されている。電池ホルダ2は、
図1と
図2に示すように、各保持部21に挿入される複数の円筒形電池1を多段多列に配置して、定位置に保持している。
【0038】
図2と
図4に示す電池ホルダ2は、保持部21を軸方向の中間で2分割しており、分割された保持部21の端部をそれぞれ表面プレート部22、23に一体的に成形して一対のホルダーユニット2A、2Bを形成している。この電池ホルダ2は、複数の円筒形電池1を第1の端面1Aが同一面に並ぶように保持する。したがって、円筒形電池1の第1の端面1Aが配置されるホルダーユニット2Aは、表面プレート部22に、第1の端面1Aに配置された正負の電極である封口体12とカシメ凸条15とを表出させる電極窓を設けている。これに対し、円筒形電池1の缶底側が配置されるホルダーユニット2Bは、表面プレート部23に開口部を設けることなく、保持部21の一端を表面プレート部23で閉塞している。各ホルダーユニット2A、2Bの保持部21に円筒形電池1を収納した状態で、一対のホルダーユニット2A、2Bを連結させることで、円筒形電池1を定位置に保持する電池収納部を形成している。一対のホルダーユニット2A、2Bは、互いに連結して固定される。分割されたホルダーユニットは、例えば、超音波溶着や接着、係止構造、止ネジ等の連結具を介して連結することができる。以上の電池ホルダ2は、保持部21の半分と表面プレート部22、23とを一体的に成形してホルダーユニット2A、2Bとしているが、電池モジュール100は、電池ホルダを以上の構造に特定しない。電池ホルダは、複数の電池を所定の位置に保持できる他の全ての構造とすることができる。
【0039】
ホルダーユニット2Aは、第1の端面1Aとの対向面に配置される表面プレート部22に、円筒形電池1の封口体12を表出させる第1の電極窓25とカシメ凸条15を表出させる第2の電極窓26とを開口して設けている。第1の電極窓25は、封口体12の中央部と対向する位置に開口された円形の貫通孔としている。第1の電極窓25は、封口体12の中央部分を表出させる大きさを有しており、この部分において、後述するリード板3の第1の接続片31を溶着するようにしている。さらに、第1の電極窓25は、大きく開口することにより、円筒形電池1の封口体12から排出されるガスを速やかに円筒形電池1の外部に排出できる特長も実現している。ただ、第1の電極窓25は、必ずしも大きな円形状に開口する必要はなく、多角形状とすることも、第1の接続片のみを配置できる大きさに開口することもできる。
【0040】
第2の電極窓26は、第1の端面1Aに形成されたカシメ凸条15に沿う湾曲形状のスリット状としている。スリット状の第2の電極窓26は、
図3に示すように、平面視において、円筒形電池1の外周部の約半分の領域に沿う湾曲形状に形成されている。第2の電極窓26は、
図5に示すように、内周側の開口縁26aがカシメ凸条15の内周縁よりも内側であって絶縁領域16の内周縁よりも外側に配置されると共に、第2の電極窓26の外周側の開口縁26bがカシメ凸条15の外周縁よりも外側に配置されている。さらに、図に示す第2の電極窓26は、帯状に延びる第2の接続片32の外形に沿うスリット状としており、第2の接続片32を第2の電極窓26の内面に沿って挿入することで、第2の接続片32を位置決めできる構造としている。第2の電極窓26の開口幅(K)は、ここに案内される第2の接続片32の横幅(W)の1~2倍とすることができる。
【0041】
さらに、
図4に示す表面プレート部22は、リード板3を定位置に配置するためのボス24を設けている。ボス24は、表面プレート部23の表面から突出する姿勢で形成されている。リード板3は、ボス24に案内される位置決め孔34を開口しており、この位置決め孔34にボス24が案内されてリード板3が表面プレート部23の定位置に配置される。
【0042】
(リード板3)
リード板3は、表面プレート部22の定位置に配置され、複数の円筒形電池1の正負の電極に接続されて、複数の円筒形電池1を所定の配列で接続する。リード板3は薄い金属板で、各円筒形電池1の第1の端面1Aに設けた封口体12とカシメ凸条15に接続される。図に示すリード板3は、第1の電極窓25に配置されて封口体12に溶接される第1の接続片31と、第2の電極窓26に配置されてカシメ凸条15に溶接される第2の接続片32とを備えている。図に示すリード板3は、表面プレート部22の表面に配置される本体部30を備えており、この本体部30の片側に突出して複数の第1の接続片31を一体的に設けると共に、本体部30の反対側に突出して複数の第2の接続片32を一体的に設けている。図に示す本体部30は、複数列に配置された円筒形電池1の延在方向に沿って延長されると共に、第2の電極窓26の開口縁に沿うアーチ形状としている。リード板3は、弾性変形できるアルミニウム、ニッケル、銅、あるいはこれ等の合金からなる金属板で製造される。
また、リード板3は、例えば、ポリカーボネート製の0.2mm厚程度のシートに最初から本体部30、第1の接続片31及び第2の接続片32を貼り付け一体化したものを利用することができる。なお、シートはアラミド紙などが好ましい。
【0043】
第1の接続片31は、本体部30から延びるアーム部の先端に接続部を備えており、この接続部が封口体12の中央部に溶接されて接続される。封口体12に接続される第1の接続片31は、例えば、スポット溶接して接続される。リード板3は、
図4に示すように、本体部30に連結された第1の接続片31を介して封口体12に接続される。
【0044】
第2の接続片32は、
図3と
図4に示すように、カシメ凸条15に沿う形状に湾曲された帯状としている。
図6Bに示す第2の接続片32は、
図6Aに示すカシメ凸条15の接続領域15Aに沿う円弧状としている。円弧状に形成される第2の接続片32は、円弧状の外側縁の曲率半径(R1)が接続領域15Aの外周縁の曲率半径(r1)よりも大きく、円弧状の内側縁の曲率半径(R2)が接続領域15Aの内周縁の曲率半径(r2)よりも小さく、かつ絶縁領域16の内周縁の曲率半径(r3)よりも大きく形成される。これにより第2の接続片32は、その横幅(W)をカシメ凸条15の接続領域15Aに対して広くできる。第2の接続片32の横幅(W)は、カシメ凸条15の接続領域15Aの横幅(D)の1~3倍とすることができる。さらに、
図6Bに示す第2の接続片32は、円弧状の第2の接続片32に対する中心角(α)を135度~180度であって、好ましくは145度~170度としている。第2の接続片32の中心角(α)を以上の範囲とすることで、いずれの方向への位置ずれに対しても溶接領域35を確保できる特長がある。
【0045】
第2の接続片32は、少なくともカシメ凸条15を被覆する領域において部分的にカシメ凸条15に溶接される。第2の接続片32は、カシメ凸条15に対して部分的に溶接されるように溶接領域35を設けることができ、
図6に示すように、溶接領域35の横幅(a)を接続領域15Aの横幅(D)以下であって、溶接領域35の縦幅(b)を第2の接続片32の全長(L)の1/4以下としている。ここで、第2の接続片32の全長(L)は、
図6Bに示すように、第2の接続片32の幅方向の中心を通る中心線の長さを示している。このように、第2の接続片の溶接領域35を特定の範囲とすることで、カシメ凸条15の接続領域15Aに対して第2の接続片32をより正確に溶接できる。
【0046】
第2の接続片32は、超音波溶着してカシメ凸条15に接続される。超音波溶着は、第2の接続片32の表面に超音波ホーンを押圧し、第2の接続片32をカシメ凸条15に押圧する状態で第2の接続片32を超音波振動させて、第2の接続片32をカシメ凸条15に接続する。超音波溶着は、カシメ凸条15の表面と平行な方向に第2の接続片32を超音波振動させて第2の接続片32をカシメ凸条15に接続する。超音波溶着は、境界面で金属を分子結合して第2の接続片32をカシメ凸条15に接続するので、異種金属を安定して接続できる。したがって、アルミニウム製のリード板3を鉄製の外装缶11のカシメ凸条15に確実に安定して固定できる。長くて変形しやすい第2の接続片32は、溶接領域35をカシメ凸条15に超音波溶着する工程で柔軟に変形するので、より小さい超音波振動エネルギーで確実に接続できる特徴がある。
【0047】
図3の電池ユニット10は、複数のリード板3を円筒形電池1の第1の端面1A側に配置しており、多段多列に配列された複数の円筒形電池1を多並列多直列に接続している。図に示す電池ユニット10は、互いに平行な姿勢であって、第1の端面が同一面に位置するように配列された複数の円筒形電池1を第1の端面1A側において直列と並列に接続している。図に示す電池ユニット10は、12本の円筒形電池1を4列3段に配列して、4並列3直列に接続している。
【0048】
1枚のリード板3は、それぞれ4つずつの第1の接続片31と第2の接続片32を備えており、4つの第1の接続片31を隣接する4本の円筒形電池1の封口体12に接続して、これらの4本の円筒形電池1を並列に接続し、4つの第2の接続片32を並列接続された4本の円筒形電池1に隣接する4本の円筒形電池1のカシメ凸条15に接続して、これらの4本の円筒形電池1を並列に接続すると共に、並列接続された4本ずつの円筒形電池1を直列に接続している。すなわち、リード板3は、各段に配置された複数の円筒形電池1を互いに並列に接続すると共に、隣り合う段に配置された複数の円筒形電池1同士を直列に接続している。このようにして1段に並べた4本の円筒形電池1を互いに並列に接続しながら、互いに隣接する2段の円筒形電池1を直列に接続している。
【0049】
さらに、複数段に配置されて直列に接続される円筒形電池1は、図において最も前方の段に配置される円筒形電池1に出力リード板3Aを接続し、最も後方の段に配置される円筒形電池1に出力リード板3Bを接続している。一方の出力リード板3Aは、封口板12に接続される4つの第1の接続片31を備えており、互いに直列に接続される複数段の円筒形電池1のうち前方側に配置された4本の円筒形電池1にそれぞれ第1の接続片31を接続して、これらの4本の円筒形電池1を互いに並列に接続している。
図1の出力リード板3Aは、第1の接続片31と反対側の端部を直角に折曲して折曲端子部3aを設けており、この折曲端子部3aを電池ホルダ2の側面に配置している。また、他方の出力リード板3Bは、カシメ凸条15に接続される4つの第2の接続片32を備えており、互いに直列に接続される複数段の円筒形電池1のうち後方側に配置された4本の円筒形電池1にそれぞれ第2の接続片32を接続して、これらの4本の円筒形電池1を並列に接続している。出力リード板3Bは、第2の接続片32と反対側の端部を直角に折曲して折曲端子部3bを設けており、この折曲端子部3bを電池ホルダ2の側面に配置している。
【0050】
さらに、電池モジュールは、図示しないが、複数の電池ユニット10を縦方向(
図3において上下方向)に並べると共に、電池ホルダ2の側面に配置された出力リード板3A、3Bの折曲端子部3a、3bを直接にあるいはバスバー等で接続して、複数の電池ユニット10を直列に接続して出力電圧を高くすることも、複数の電池ユニット9を横方向(
図3において左右方向)に並べると共に、電池ホルダ2の側面に配置された出力リード板3A、3Bの折曲端子部3a、3bをバスバー等で接続して複数の電池ユニット10を並列に接続することもできる。
【0051】
ここで、円筒形電池1は、電池ホルダ2の保持部21に挿入された状態で定位置に配置されるが、電池の寸法差や電池ホルダ2の寸法差により電池ホルダ2の定位置に対して円筒形電池1の位置がずれることがある。また、湾曲形状のスリットである第2の電極窓26に配置される第2の接続片32についても、正確な位置がずれることがある。特に、第2の接続片32は、湾曲された金属板で構成されるため、電池ホルダの湾曲窓に配置された状態においても円筒形電池1に対して位置ずれすることがある。このように位置ずれして配置される第2の接続片32を確実に円筒形電池1のカシメ凸条15に溶着するために、図に示す電池モジュール100は、円筒形電池1に対して第2の接続片32が位置ずれすると、溶接領域35をずらすことによって第2の接続片32をカシメ凸条15に確実に溶着できるようにしている。
【0052】
以上の電池モジュールは、以下の工程で製造される。
(1)円筒形電池準備工程
この工程では、円筒形電池として、有底円筒状の外装缶の開口部をカシメ加工して封口体で閉塞し、封口体で閉塞された第1の端面の外周縁部にカシメ加工によってカシメ凸条を設けてなる円筒形電池を準備する。
(2)電池ホルダ準備工程
この工程では、円筒形電池の第1の端面に対向して配置される表面プレート部に、円筒形電池の封口体を部分的に表出させる第1の電極窓と、カシメ凸条を部分的に表出させる第2の電極窓であってカシメ凸条に沿う湾曲形状のスリットを開口してなる電池ホルダを準備する。
(3)リード板準備工程
この工程では、リード板3として、第1の電極窓25に配置されて封口体12に溶接される第1の接続片31と、カシメ凸条15に沿う形状に湾曲された帯状であって、第2の電極窓26に配置されてカシメ凸条15に溶接される第2の接続片32を備えるリード板3を準備する。リード板3は、接続する円筒形電池1の接続状態に合わせて複数の第1の接続片と第2の接続片とを所定の配列で配置したものを準備する。
(4)円筒形電池配置工程
複数の円筒形電池を電池ホルダの定位置に配置して、複数の円筒形電池を第1の端面が同一面に並ぶように保持し、円筒形電池1の封口体12を第1の電極窓25から表出させて、カシメ凸条15を第2の電極窓26から表出させる。
(5)リード板配置工程
リード板3を電池ホルダ2の定位置に配置して、第1の接続片31を第1の電極窓25に配置し、第2の接続片32を第2の電極窓26に配置する。
(6)リード板溶接工程
第1の電極窓25に配置された第1の接続片31を封口体12に溶接し、第2の電極窓26に配置された第2の接続片32をカシメ凸条15に溶接する。さらに、この工程では、円筒形電池1に対する第2の接続片32の相対位置に応じて、第2の接続片32をカシメ凸条15に溶接する溶接領域の位置を変化させる。
【0053】
さらに、第2の接続片32をカシメ凸条15に溶接するリード板溶接工程では、以下に示す工程で、第2の接続片32をカシメ凸条15の接続領域15Aに正確に溶着する。
(a)撮影工程 、
図7に示すように、リード板3が配置された円筒形電池1と第2の接続片32を第1の端面1A側からカメラ41で撮影する。カメラ41は、円筒形電池1中心軸方向に離して配置しており、円筒形電池1の封口体12と定位置にセットされた第2の接続片32とを撮影できるようにしている。カメラ41は、円筒形電池1の封口体12と第2の接続片32の画像を検出する。このようなカメラ41として、種々のセンサー等に使用されているカメラ、例えば、CCDカメラ等が使用できる。カメラ41で撮影されたリング状画像のデータは、制御回路の演算回路に入力される。
(b)演算工程
カメラ41で撮影された画像を演算回路で演算処理して、円筒形電池1の中心位置と、円弧状の第2の接続片32に対する中心位置とを検出する。
(c)判定工程
この工程では、判定回路43が、演算回路42で検出された円筒形電池1の中心位置に対する第2の接続片32の中心位置の相対位置に基づいて、第2の接続片32をカシメ凸条15に溶接する溶接領域を特定する。
【0054】
判定回路は、円筒形電池1と第2の接続片32の相対位置に対する最適な溶接位置をテーブルまたは関数として記憶しており、これらに基づいての最適な溶接位置を判定すると共に、判定された溶接位置において第2の接続片32をカシメ凸条15に溶着する。
判定回路は、例えば、
図8及び
図9に示す条件に基づいて、溶接領域を特定する。
【0055】
図8及び
図9は、円筒形電池1の第1の端面1Aの平面視において、円筒形電池1の中心を原点とするXY平面であって、第2の接続片32の一端がY軸上の正方向に位置し、第2の接続片32の他端がX軸の正方向を超えてY軸の負方向まで延長される中心角(α)となるように配置される状態において検証した結果である。円筒形電池の中心を第1の中心(O1)、円弧状の第2の接続片32に対する中心を第2の中心(O2)として、第1の中心(O1)に対する第2の中心(O2)の相対位置における溶接領域35が、X軸の正方向を始線とする動径で示す以下の角(θ)の範囲に特定される。
(1)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に一致する場合、溶接領域35は、第2の接続片32上の任意の位置とする。
(2)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の負方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の55度≦θ≦90度の範囲内とする。
(3)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の正方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の55度≦θ≦85度の範囲とする。
(4)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してY軸の正方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の-35度≦θ≦35度の範囲とする。
(5)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してY軸の負方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の-35度≦θ≦35度の範囲とする。
(6)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の正方向でY軸の正方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の-65度≦θ≦-20度の範囲とする。
(7)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の負方向でY軸の正方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の25度≦θ≦70度の範囲とする。
(8)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の負方向でY軸の負方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の-70度≦θ≦-25度の範囲とする。
(9)第2の中心(O2)が第1の中心(O1)に対してX軸の正方向でY軸の負方向に位置する場合、溶接領域35は第2の接続片32上の20度≦θ≦65度の範囲とする。
【0056】
(d)第2の接続片溶着工程
この工程では、判定工程で判定された溶接領域35において、第2の接続片32をカシメ凸条15に溶接する。
図7は、判定回路43の判定に基づいて制御部44が超音波溶着機を駆動する状態を示している。制御部44は、移動機構46を制御して超音波ホーン45を溶接位置まで移動させる。超音波ホーン45の先端を溶接位置まで配置した状態で、制御部44から出力部47に駆動信号を出力して超音波溶着する。
以上の工程により、第2の接続片32をカシメ凸条15に対して最適な位置で溶接して確実に接続する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は複数の円筒形電池を金属製のリード板で接続してなる電池モジュールであって、とくに、円筒形電池の第1の端面が同じ方向を向くように互いに平行な姿勢で並べて配置し、第1の端面側において複数の円筒形電池をリード板で接続してなる電池モジュールとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0058】
100…電池モジュール
1…円筒形電池
1A…第1の端面
2…電池ホルダ
2A、2B…ホルダーユニット
3…リード板
3A、3B…出力リード板
3a、3b…折曲端子部
9…外装ケース
10…電池ユニット
11…外装缶
12…封口体
13…電極体
13A…電極板
13B…電極板
13C…セパレータ
14…絶縁材
15…カシメ凸条
15A…接続領域
16…絶縁領域
21…保持部
22…表面プレート部
23…表面プレート部
24…ボス
25…第1の電極窓
26…第2の電極窓
26a、26b…開口縁
30…本体部
31…第1の接続片
32…第2の接続片
34…位置決め孔
35…溶接領域
41…カメラ
42…演算回路
43…判定回路
44…制御部
45…超音波ホーン
46…移動機構
47…出力部