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  • 特開-ハロゲン除去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136747
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ハロゲン除去方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 15/00 20060101AFI20220913BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20220913BHJP
   C22B 3/12 20060101ALI20220913BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20220913BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C22B15/00 105
C22B3/08
C22B3/12
C22B3/44 101Z
C02F1/58 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036510
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】306039131
【氏名又は名称】DOWAメタルマイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇央
(72)【発明者】
【氏名】服部 和人
(72)【発明者】
【氏名】森本 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D038
4K001
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB39
4D038BB13
4D038BB15
4K001AA09
4K001BA16
4K001DB03
4K001DB08
4K001DB23
4K001JA01
(57)【要約】
【課題】銅イオンを用いてハロゲンを除去する方法において、銅を効率的に再利用することにより、コストを低減できる技術を提供する。
【解決手段】塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を含むハロゲン含有溶液に、銅イオンを含む銅イオン溶液を添加し、塩化銅(I)または臭化銅(I)の少なくとも一方を含むハロゲン化銅を分離除去する、ハロゲン除去工程と、ハロゲン除去工程で分離除去されたハロゲン化銅に、アルカリ溶液を添加し、アルカリ溶液に塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を浸出させ、酸化銅(I)を含むハロゲン浸出残渣を得る、ハロゲン浸出工程と、ハロゲン浸出工程で得られたハロゲン浸出残渣に、硫酸を添加し、銅イオンを浸出させ、銅イオンを含む銅浸出液を得る、銅浸出工程と、を有する、ハロゲン除去方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を含むハロゲン含有溶液に、銅イオンを含む銅イオン溶液を添加し、塩化銅(I)または臭化銅(I)の少なくとも一方を含むハロゲン化銅を分離除去する、ハロゲン除去工程と、
前記ハロゲン除去工程で分離除去された前記ハロゲン化銅に、アルカリ溶液を添加し、前記アルカリ溶液に塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を浸出させ、酸化銅(I)を含むハロゲン浸出残渣を得る、ハロゲン浸出工程と、
前記ハロゲン浸出工程で得られた前記ハロゲン浸出残渣に、硫酸を添加し、銅イオンを浸出させ、銅イオンを含む銅浸出液を得る、銅浸出工程と、
を有する、ハロゲン除去方法。
【請求項2】
前記銅浸出工程で得られた前記銅浸出液を用いて、前記ハロゲン除去工程を繰り返し行う、請求項1に記載のハロゲン除去方法。
【請求項3】
前記ハロゲン含有溶液のハロゲン濃度は、0g/L超100g/L以下である、請求項1または請求項2に記載のハロゲン除去方法。
【請求項4】
前記ハロゲン除去工程では、前記ハロゲン含有溶液のハロゲン含有量に対して、1当量以上2当量以下の銅イオンを含む銅イオン溶液を添加する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項5】
前記ハロゲン除去工程では、2価の銅イオンを含む銅イオン溶液と、還元剤とを添加し、前記2価の銅イオンを1価に還元する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項6】
前記ハロゲン除去工程は、pHが3以下の酸性条件下で行う、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項7】
前記ハロゲン除去工程は、酸化還元電位が0mV以上150mV以下の条件下で行う、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項8】
前記ハロゲン浸出工程は、pHが7以上のアルカリ性条件下で行う、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項9】
前記ハロゲン浸出工程における液温は、40度以上60度以下とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項10】
前記ハロゲン浸出工程の反応時間は、120分以上とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項11】
前記銅浸出工程では、さらに酸化剤を添加する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項12】
前記銅浸出工程は、pHが1以上2以下の酸性条件下で行う、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【請求項13】
前記銅浸出工程は、ORPが300mV以上400mV以下の条件下で行う、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のハロゲン除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化物イオンや臭化物イオン等を含むハロゲン含有溶液からハロゲンを除去する方法として、銅イオンを用いる方法が知られている。例えば、特許文献1には、塩化物イオンを含む溶液中に、1価の銅イオンを添加し、形成された難溶性の塩を分離除去する塩素の除去方法が開示されている。また、特許文献2には、塩化物イオンを含む溶液中に、2価の銅イオンを存在させ、形成された析出物を分離除去する塩素の除去方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-47776号公報
【特許文献2】特開2010-202457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2には、銅イオンを用いて、塩素を除去する方法が開示されている。銅は有価金属であり、産業上、効率的な使用が求められている。したがって、銅イオンを用いてハロゲンを除去する場合、銅を再利用することが好ましい。また、新規に投入する銅量を低減する観点から、各工程からロスされる銅量は小さいほどよい。
【0005】
本発明の一実施形態は、銅イオンを用いてハロゲンを除去する方法において、銅を効率的に再利用することにより、コストを低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、
塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を含むハロゲン含有溶液に、銅イオンを含む銅イオン溶液を添加し、塩化銅(I)または臭化銅(I)の少なくとも一方を含むハロゲン化銅を分離除去する、ハロゲン除去工程と、
前記ハロゲン除去工程で分離除去された前記ハロゲン化銅に、アルカリ溶液を添加し、前記アルカリ溶液に塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を浸出させ、酸化銅(I)を含むハロゲン浸出残渣を得る、ハロゲン浸出工程と、
前記ハロゲン浸出工程で得られた前記ハロゲン浸出残渣に、硫酸を添加し、銅イオンを浸出させ、銅イオンを含む銅浸出液を得る、銅浸出工程と、
を有する、ハロゲン除去方法である。
【0007】
本発明の第2の態様は、
前記銅浸出工程で得られた前記銅浸出液を用いて、前記ハロゲン除去工程を繰り返し行う、上記第1の態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0008】
本発明の第3の態様は、
前記ハロゲン含有溶液のハロゲン濃度は、0g/L超100g/L以下である、上記第1または第2の態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0009】
本発明の第4の態様は、
前記ハロゲン除去工程では、前記ハロゲン含有溶液のハロゲン含有量に対して、1当量以上2当量以下の銅イオンを含む銅イオン溶液を添加する、上記第1から第3のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0010】
本発明の第5の態様は、
前記ハロゲン除去工程では、2価の銅イオンを含む銅イオン溶液と、還元剤とを添加し、前記2価の銅イオンを1価に還元する、上記第1から第4のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0011】
本発明の第6の態様は、
前記ハロゲン除去工程は、pHが3以下の酸性条件下で行う、上記第1から第5のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0012】
本発明の第7の態様は、
前記ハロゲン除去工程は、酸化還元電位が0mV以上150mV以下の条件下で行う、上記第1から第6のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0013】
本発明の第8の態様は、
前記ハロゲン浸出工程は、pHが7以上のアルカリ性条件下で行う、上記第1から第7のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0014】
本発明の第9の態様は、
前記ハロゲン浸出工程における液温は、40度以上60度以下とする、上記第1から第8のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0015】
本発明の第10の態様は、
前記ハロゲン浸出工程の反応時間は、120分以上とする、上記第1から第9のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0016】
本発明の第11の態様は、
前記銅浸出工程では、さらに酸化剤を添加する、上記第1から第10のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0017】
本発明の第12の態様は、
前記銅浸出工程は、pHが1以上2以下の酸性条件下で行う、上記第1から第11のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【0018】
本発明の第13の態様は、
前記銅浸出工程は、ORPが300mV以上400mV以下の条件下で行う、上記第1から第12のいずれか1つの態様に記載のハロゲン除去方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、銅イオンを用いてハロゲンを除去する方法において、銅を効率的に再利用することにより、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態のハロゲン除去方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<発明者の得た知見>
まず、発明者が得た知見について説明する。
【0022】
特許文献2では、塩素の除去方法により得られた塩化銅塩に、アルカリ溶液を加え、該アルカリ溶液から得られた再生銅残渣を用いて塩素イオン除去を繰り返し行う方法が提案されている。しかしながら、非鉄金属の製錬排水に対して上記方法を適用したところ、上記方法では銅の再生率が低いため、充分なハロゲン除去率が得られず、大量の再生銅残渣を用いる必要があることがわかった。つまり、銅を効率的に再利用するシステムを提案できていないことがわかった。
【0023】
発明者は、上述の問題に対して鋭意検討を行った。その結果、酸化銅(I)を含むハロゲン浸出残渣に、硫酸を添加し、銅イオンを浸出させ、銅イオンを含む銅浸出液を得ることで、銅を効率的に再利用できることを見出した。上記方法によれば、ハロゲン浸出残渣をそのままハロゲン除去に用いる場合と比べて、高いハロゲン除去率が得られるため、コストの低減が可能となる。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
<本発明の第1実施形態>
まず、本実施形態のハロゲン除去方法について説明する。図1は、本実施形態のハロゲン除去方法の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態のハロゲン除去方法は、例えば、ハロゲン除去工程S101と、ハロゲン浸出工程S102と、銅浸出工程S103と、を有している。
【0026】
(ハロゲン除去工程S101)
ハロゲン除去工程S101は、例えば、塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を含むハロゲン含有溶液10に、銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加することで、塩化銅(I)または臭化銅(I)の少なくとも一方を含むハロゲン化銅30を形成し、ハロゲン化銅30を分離除去する工程である。ハロゲン含有溶液10としては、非鉄金属の製錬排水が例示される。ハロゲン化銅30を固液分離することにより、ハロゲン含有溶液10よりもハロゲン濃度の低い、脱ハロゲン後溶液40を得ることができる。
【0027】
ハロゲン含有溶液10は、臭化物イオンを含むことが好ましい。臭化物イオンは、塩化物イオンよりも反応性が高いため、臭化銅(I)として分離除去しやすい。したがって、本発明は、特に臭化物イオンの除去に対して、効果的に適用可能である。
【0028】
ハロゲン含有溶液10のハロゲン濃度は、例えば、0g/L超100g/L以下であり、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度は、例えば、0g/L以上1g/L以下である。なお、本明細書において、ハロゲン濃度とは、溶液中に含まれる総ハロゲン化物イオンの濃度を意味する。ハロゲン含有溶液10のハロゲン濃度が100g/Lを超えると、銅イオン溶液20を添加した際に、錯体が形成され、ハロゲンを除去できない可能性がある。なお、ハロゲン含有溶液10のハロゲン濃度が1g/L超の場合、ハロゲンを除去するために使用する銅量が多くなるため、銅の効率的な再利用の必要性が高くなる。したがって、本発明は、ハロゲン含有溶液10のハロゲン濃度が1g/L超の高濃度であるような場合に、効果的に適用可能である。もちろん、本発明は、ハロゲン含有溶液10のハロゲン濃度が0g/L超1g/L以下の低濃度であるような場合にも適用可能である。
【0029】
ハロゲン除去工程S101では、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して、1当量以上2当量以下の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加することが好ましい。なお、本明細書において、ハロゲン含有量とは、溶液中に含まれる総ハロゲン化物イオンのモル量を意味する。銅イオン溶液20に含まれる銅イオンが、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して1当量未満では、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度が充分に低くならない可能性がある。これに対し、銅イオン溶液20に含まれる銅イオンを、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して1当量以上とすることで、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度を充分に低くできる。一方、銅イオン溶液20に含まれる銅イオンが、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して2当量を超えると、使用する銅量が過剰となる可能性がある。これに対し、銅イオン溶液20に含まれる銅イオンを、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して2当量以下とすることで、使用する銅量を適切に制御できる。
【0030】
銅イオン溶液20に含まれる銅イオンは、1価であっても2価であってもよい。1価の銅イオン源として代表的なCuOは、2価の銅イオン源として利用できるCuSO等に比べて高価であるため、コストを削減する観点からは、2価の銅イオンを用いることが好ましい。
【0031】
銅イオン溶液20に2価の銅イオンが含まれる場合、さらに還元剤21を添加することが好ましい。これにより、銅イオンが2価から1価に還元されるため、塩化銅(I)または臭化銅(I)の少なくとも一方を含むハロゲン化銅30が形成されやすくなる。還元剤21としては、例えば、亜鉛紛、アルミニウム紛、鉄粉等を用いることができる。
【0032】
ハロゲン除去工程S101は、pHが3以下の酸性条件下で行うことが好ましい。pHが3を超えると、ハロゲン化銅30が形成され難くなる可能性がある。これに対し、pHを3以下とすることで、ハロゲン化銅30が形成されやすくなる。pHの調整には、例えば、硫酸や苛性ソーダを用いることができる。なお、ハロゲン除去工程S101におけるpHの下限値は、特に限定されないが、例えば、1以上である。
【0033】
ハロゲン除去工程S101は、酸化還元電位(ORP)が0mV以上150mV以下(Ag/AgCl電極)の条件下で行うことが好ましい。つまり、ORPが0mV以上150mV以下となるように、還元剤21を添加することが好ましい。ORPが0mV未満では、銅イオンがメタルまで還元されてしまう可能性がある。これに対し、ORPを0mV以上とすることで、銅イオンがメタルまで還元されることを抑制できる。一方、ORPが150mVを超えると、銅イオンが2価から1価に還元される反応が進み難く、ハロゲン化銅30が形成され難くなる可能性がある。また、形成されたハロゲン化銅30が再溶解してしまう可能性がある。これに対し、ORPを150mV以下とすることで、銅イオンが2価から1価に還元される反応を進みやすくし、ハロゲン化銅30が形成されやすくなる。また、形成されたハロゲン化銅30が再溶解してしまう可能性を低減できる。
【0034】
ハロゲン除去工程S101における液温は、特に限定されないが、例えば、20度以上40度以下である。
【0035】
ハロゲン除去工程S101の反応時間は、10分以上30分以下とすることが好ましい。反応時間が10分未満では、ハロゲン化銅30が充分に形成されず、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度が充分に低くならない可能性がある。これに対し、反応時間を10分以上とすることで、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度を充分に低くできる。一方、反応時間が30分を超えると、形成されたハロゲン化銅30が再溶解してしまう可能性がある。これに対し、反応時間を30分以下とすることで、形成されたハロゲン化銅30が再溶解してしまう可能性を低減できる。
【0036】
(ハロゲン浸出工程S102)
ハロゲン浸出工程S102は、例えば、ハロゲン除去工程S101で分離除去されたハロゲン化銅30に、アルカリ溶液50を添加し、アルカリ溶液50に塩化物イオンまたは臭化物イオンの少なくとも一方を浸出させ、酸化銅(I)を含むハロゲン浸出残渣60を得る工程である。アルカリ溶液50に用いるアルカリ源としては、例えば、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、苛性ソーダ(NaOH)等を用いることができる。なお、本工程の固液分離の際に得られるハロゲン浸出液61は、必要に応じて公知の方法によりリサイクルしてもよいし、廃棄してもよい。
【0037】
ハロゲン浸出工程S102は、pHが7以上のアルカリ性条件下で行うことが好ましい。つまり、pHが7以上となるように、ハロゲン化銅30にアルカリ溶液50を添加することが好ましい。pHが7未満の条件では、ハロゲン化物イオンを浸出させ難い可能性がある。これに対し、pHを7以上とすることで、ハロゲン化物イオンを浸出させやすくなる。なお、pHの上限は、特に限定されないが、例えば、コストを低減する観点からは10以下とすることが好ましい。
【0038】
ハロゲン浸出工程S102における液温は、40度以上60度以下とすることが好ましい。液温が40度未満では、ハロゲン化物イオンを浸出させ難い可能性がある。これに対し、液温を40度以上とすることで、ハロゲン化物イオンを浸出させやすくなる。一方、液温が60度を超えると、加温にかかるコストが増大する問題がある。これに対し、液温を60度以下とすることで、加温にかかるコストを低減できる。
【0039】
ハロゲン浸出工程S102の反応時間は、120分以上とすることが好ましい。反応時間が120分未満では、ハロゲン化物イオンが充分に浸出されない可能性がある。これに対し、反応時間を120分以上とすることで、ハロゲン化物イオンを充分に浸出させることができる。なお、反応時間の上限は特に限定されないが、例えば、コストを低減する観点からは240分以下とすることが好ましい。
【0040】
ハロゲン浸出工程S102では、パルプ濃度が50g/L以上400g/L以下となるように、ハロゲン化銅30を、例えば、純水でリパルプすることが好ましい。パルプ濃度が50g/L未満または400g/Lを超える条件では、ハロゲン化物イオンが充分に浸出されない可能性がある。これに対し、パルプ濃度を50g/L以上400g/L以下とすることで、ハロゲン化物イオンを充分に浸出させることができる。
【0041】
(銅浸出工程S103)
銅浸出工程S103は、例えば、ハロゲン浸出工程S102で得られたハロゲン浸出残渣60に、硫酸70を添加し、銅イオンを浸出させ、銅イオンを含む銅浸出液80を得る工程である。ハロゲン浸出工程S102で得られたハロゲン浸出残渣60には、酸化銅(I)以外の銅の化合物が多く存在しており、ハロゲンを除去するための銅イオン源として適さない可能性がある。つまり、ハロゲン浸出残渣60をそのまま再利用しても、銅を効率的に再利用できない可能性がある。本実施形態では、銅浸出工程S103を行うことにより、ハロゲン浸出残渣60に含まれる、酸化銅(I)以外の銅の化合物も銅イオン源として再利用できるようになるため、銅の効率的な再利用が可能となる。なお、本工程の固液分離の際に得られる銅浸出残渣81は、必要に応じて公知の方法により廃棄してもよい。
【0042】
銅浸出工程S103では、さらに酸化剤71を添加することが好ましい。これにより、硫酸70中に銅イオンを浸出させやすくすることができる。酸化剤71としては、例えば、酸素を含むガスを用いることができる。酸化剤71として酸素を含むガスを用いる場合、1kgのハロゲン浸出残渣60当たり、酸素量が5L/min以上20L/min以下となるように酸素を含むガスを吹き込むことが好ましい。酸素量が5L/min未満では、銅イオンの浸出に時間がかかり過ぎる可能性がある。これに対し、酸素量を5L/min以上とすることで、速やかに銅イオンを浸出させることができる。一方、酸素量が20L/minを超えると、反応に寄与しない酸素が増加するため、コストが高くなる問題がある。これに対し、酸素量を20L/min以下とすることで、酸素を効率的に使用し、コストを低減できる。
【0043】
銅浸出工程S103は、pHが1以上2以下の酸性条件下で行うことが好ましい。つまり、pHが1以上2以下となるように、硫酸70を添加することが好ましい。pHが1未満では、硫酸70のコストが高くなる問題がある。これに対し、pHを1以上とすることで、硫酸70のコストを低減できる。一方、pHが2を超えると、銅イオンを浸出させる反応が進み難くなる可能性がある。これに対し、pHを2以下とすることで、銅イオンを浸出させる反応を進みやすくすることができる。
【0044】
銅浸出工程S103は、ORPが300mV以上400mV以下(Ag/AgCl電極)の条件下で行うことが好ましい。つまり、ORPが300mV以上400mV以下となるように、酸化剤71を添加することが好ましい。ORPが300mV未満では、銅イオンを浸出させる反応が進み難くなる可能性がある。これに対し、ORPを300mV以上とすることで、銅イオンを浸出させる反応を進みやすくすることができる。一方、ORPが400mVを超えると、ORPを上げるまでの時間がかかり、酸化剤71の添加量が増加するため、コストが高くなる問題がある。これに対し、ORPを400mV以下とすることで、酸化剤71の添加量を低減し、コストを低減できる。
【0045】
銅浸出工程S103における液温は、70度以下とすることが好ましい。液温が70度を超えると、硫酸70の希釈熱と反応熱で液温がさらに上昇し、溶液が沸騰してしまう可能性がある。これに対し、液温を70度以下とすることで、溶液が沸騰するリスクを低減できる。液温の下限値は、特に限定されないが、例えば、20度以上である。
【0046】
銅浸出工程S103の反応時間は、60分以上120分以下とすることが好ましい。反応時間が60分未満では、銅イオンが充分に浸出されない可能性がある。これに対し、反応時間を60分以上とすることで、銅イオンを充分に浸出させることができる。一方、反応時間が120分を超えると、銅イオンを浸出させる反応が平衡する可能性があるため、コストを削減する観点からは、反応時間を120分以下とすることが好ましい。
【0047】
銅浸出工程S103で得られた銅浸出液80を用いて、ハロゲン除去工程S101を繰り返し行ってもよい。この場合、銅浸出液80を、ハロゲンを除去するための銅イオン源(例えば、銅イオン溶液20)として用いることができる。銅浸出液80には、酸化銅(I)以外の銅の化合物由来の銅イオンも含まれているため、銅を効率的に再利用することが可能となる。なお、ハロゲン除去工程S101を繰り返し行う際、必要に応じて、銅浸出液80以外の銅イオン源を追加してもよい。
【0048】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0049】
例えば、ハロゲン除去工程S101により得られた脱ハロゲン後溶液40には、ハロゲンの除去に使用されなかった銅イオンが残っている場合があるため、鉄によるセメンテーション法を用いて、脱ハロゲン後溶液40から金属銅を回収してもよい。回収した金属銅は、ハロゲン除去のための銅イオン源として再利用してもよい。
【実施例0050】
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【0051】
(実施例1)
実施例1は、ハロゲン除去工程S101の具体例を示す実施例である。まず、以下のように、ハロゲン含有溶液10として、非鉄金属の製錬排水を準備し、試料1~15とした。
【0052】
試料1~15について、ICP発光分光分析装置により、塩素濃度と臭素濃度とを測定した。試料1~6は、塩素濃度が2069mg/L、臭素濃度が6817mg/Lであった。試料7~11は、塩素濃度が839mg/L、臭素濃度が2407mg/Lであった。試料12は、塩素濃度が1700mg/L、臭素濃度が2000mg/Lであった。試料13~15は、塩素濃度が940mg/L、臭素濃度が1800mg/Lであった。なお、本実施例においては、ICP発光分光分析装置により測定した、塩素濃度を塩化物イオン濃度と見なし、臭素濃度を臭化物イオン濃度と見なしてもよい。
【0053】
試料1には、試料1のハロゲン含有量に対して0.5当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。銅イオン源としてはCuSOを用いた。還元剤21としては鉄粉を用いた。pHは1~2の間、ORPは0~100mVの間に調整し、液温30度で30分間撹拌した。その後、ハロゲン化銅30を分離除去し、脱ハロゲン後溶液40について、ICP発光分光分析装置により、塩素濃度と臭素濃度とを測定した。
【0054】
試料2には、試料2のハロゲン含有量に対して0.6当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0055】
試料3には、試料3のハロゲン含有量に対して0.7当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0056】
試料4には、試料4のハロゲン含有量に対して0.8当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0057】
試料5には、試料5のハロゲン含有量に対して1.0当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0058】
試料6には、試料6のハロゲン含有量に対して1.2当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0059】
試料7には、試料7のハロゲン含有量に対して1.8当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。pHは1.8、ORPは69.6mVに調整し、液温30度で5分間撹拌した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0060】
試料8には、試料8のハロゲン含有量に対して1.8当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。pHは2.0、ORPは71.1mVに調整した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0061】
試料9には、試料9のハロゲン含有量に対して1.8当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。pHは3.1、ORPは73.9mVに調整した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0062】
試料10には、試料10のハロゲン含有量に対して1.8当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。pHは4.1、ORPは99.7mVに調整した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0063】
試料11には、試料11のハロゲン含有量に対して1.8当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。pHは5.0、ORPは61.6mVに調整した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0064】
試料12には、試料12のハロゲン含有量に対して1.0当量の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した。銅イオン源としては、後述の実施例4の試料31-3と同様の条件により得られた銅浸出液80を用いた。pHは1.3、ORPは89.9mVに調整し、液温30度で20分間撹拌した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0065】
試料13には、試料13のハロゲン含有量に対して1.2当量の銅を含むハロゲン浸出残渣60をそのまま添加し、還元剤21は用いなかった。pHは4.0、ORPは180.9mVに調整し、液温30度で20分間撹拌した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0066】
試料14には、試料14のハロゲン含有量に対して2.4当量の銅を含むハロゲン浸出残渣60をそのまま添加し、還元剤21は用いなかった。pHは4.7、ORPは181.1mVに調整し、液温30度で20分間撹拌した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0067】
試料15には、試料15のハロゲン含有量に対して3.5当量の銅を含むハロゲン浸出残渣60をそのまま添加し、還元剤21は用いなかった。pHは4.8、ORPは177.0mVに調整し、液温30度で20分間撹拌した。それ以外は試料1と同様の操作を行った。
【0068】
試料1~15について、ハロゲン含有溶液10の塩素濃度および臭素濃度と、脱ハロゲン後溶液40の塩素濃度および臭素濃度から、塩素除去率および臭素除去率を算出した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
1当量以上の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した試料5、6は、1当量未満の銅イオンを含む銅イオン溶液20を添加した試料1~4よりも、塩素除去率および臭素除去率が高かった。これにより、銅イオン溶液20に含まれる銅イオンを、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して1当量以上とすることで、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度を充分に低くできることを確認した。
【0071】
pHを3以下とした試料7~9は、pHを3超とした試料10、11よりも、塩素除去率および臭素除去率が高かった。これにより、pHを3以下とすることで、ハロゲン化銅30が形成されやすくなり、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度を充分に低くできることを確認した。
【0072】
銅イオン源として銅浸出液80を用いた試料12は、銅イオン源としてCuSOを用いた試料5と比べて、塩素除去率および臭素除去率が同程度であった。これにより、銅イオン源として銅浸出液80を用いた場合でも、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度を充分に低くできることを確認した。また、銅を効率的に再利用できることを確認した。
【0073】
銅イオン源としてハロゲン浸出残渣60をそのまま用いた試料13~15は、銅イオン源としてCuSOを用いた試料5や、銅イオン源として銅浸出液80を用いた試料12と比べて、塩素除去率および臭素除去率が低かった。これにより、銅イオン源としてハロゲン浸出残渣60をそのまま用いた場合では、脱ハロゲン後溶液40のハロゲン濃度を充分に低くできない可能性があることを確認した。
【0074】
(実施例2)
実施例2は、ハロゲン浸出工程S102の具体例を示す実施例である。まず、ハロゲン化銅30として、試薬の臭化銅(I)を準備し、試料16~25とした。
【0075】
試料16には、アルカリ源としてNaOHを用いて、アルカリ溶液50を添加した。pHは9、パルプ濃度は200g/Lに調整し、液温40度で120分間撹拌した。その後、ハロゲン浸出残渣60を固液分離し、残った溶液の臭素濃度を、ICP発光分光分析装置により測定した。
【0076】
試料17には、アルカリ源としてCaOを用いて、アルカリ溶液50を添加した。pHは8に調整した。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0077】
試料18には、アルカリ源としてCaOを用いて、アルカリ溶液50を添加した。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0078】
試料19には、アルカリ源としてCaOを用いて、アルカリ溶液50を添加した。pHは10に調整した。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0079】
試料20は、液温を30度に調整した。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0080】
試料21は、液温を60度に調整した。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0081】
試料22は、反応時間を240分にした。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0082】
試料23は、反応時間を60分にした。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0083】
試料24は、パルプ濃度を50g/Lに調整した。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0084】
試料25は、パルプ濃度を400g/Lに調整した。それ以外は、試料16と同様の操作を行った。
【0085】
試料16~25について、残った溶液の臭素濃度から、臭素除去率を算出した。その結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
アルカリ源としてNaOHを用いた試料16と、CaOを用いた試料18とは、同程度の臭素除去率であった。
【0088】
pHを8に調整した試料17と、pHを9に調整した試料18と、pHを10に調整した試料19とは、同程度の臭素除去率であった。
【0089】
液温を40度以上に調整した、試料16、21は、液温を40度未満に調整した試料20よりも、臭素除去率が高かった。これにより、液温を40度以上とすることで、ハロゲン化物イオンを浸出させやすくなることを確認した。
【0090】
反応時間を120分とした試料16と、反応時間を240分とした試料22とは、反応時間を60分とした試料23よりも、臭素除去率が高かった。これにより、反応時間を120分以上とすることで、ハロゲン化物イオンを浸出させやすくなることを確認した。
【0091】
パルプ濃度の200g/Lに調整した試料16と、パルプ濃度の50g/Lに調整した試料24と、パルプ濃度の400g/Lに調整した試料25とは、同程度の臭素除去率であった。
【0092】
また、試料16~25において得られたハロゲン浸出残渣60を、XRD、ICP発光分光分析装置およびイオンクロマトグラフにより分析したところ、酸化銅(I)を含んでいることを確認した。以上より、ハロゲン化銅30に、アルカリ溶液50を添加し、アルカリ溶液50にハロゲン化物イオンを浸出させることで、酸化銅(I)を含むハロゲン浸出残渣60を得られることを確認した。
【0093】
(実施例3)
実施例3は、銅浸出工程S103の具体例を示す実施例である。まず、実施例1の試料5と同様の条件で得られたハロゲン化銅30に対して、実施例2の試料18と同様の条件の操作を行い、得られたハロゲン浸出残渣60を準備し、試料26~30とした。
【0094】
試料26には、硫酸70を添加し、1kgのハロゲン浸出残渣60当たり、酸素量が13.3L/minとなるように酸化剤71としての酸素を吹き込んだ。pHは2、ORPは200mVに調整し、液温45.4度で45分間撹拌した。その後、得られた銅浸出液80の銅濃度を、ICP発光分光分析装置により測定した。なお、本実施例においては、ICP発光分光分析装置により測定した、銅濃度を銅イオン濃度と見なしてもよい。
【0095】
試料27は、ORPを250mVに調整し、液温39.6度で75分間撹拌した。それ以外は試料26と同様の操作を行った。
【0096】
試料28は、ORPを300mVに調整し、液温39度で80分間撹拌した。それ以外は試料26と同様の操作を行った。
【0097】
試料29は、ORPを348.6mVに調整し、液温47.1度で110分間撹拌した。それ以外は試料26と同様の操作を行った。
【0098】
試料30には、1kgのハロゲン浸出残渣60当たり、酸素量が12.0L/minとなるように酸化剤71としての空気を吹き込んだ。ORPは328.1mVに調整し、液温35.9度で90分間撹拌した。それ以外は試料26と同様の操作を行った。
【0099】
試料26~30における銅浸出液80の銅濃度から、銅浸出率を算出した。その結果を表3に示す。なお、本実施例においては、ICP発光分光分析装置により測定した銅濃度から算出した銅浸出率は、銅イオン浸出率と見なしてもよい。
【0100】
【表3】
【0101】
ORPを300mV以上に調整した試料28、29は、ORPを300mV未満に調整した試料26、27よりも、銅浸出率が高かった。これにより、ORPを300mV以上とすることで、銅イオンを浸出させる反応を進みやすくすることができることを確認した。
【0102】
酸化剤71として酸素を用いた試料28、29と、酸化剤71として空気を用いた試料30とは、同程度の銅浸出率であった。
【0103】
(実施例4)
実施例4は、ハロゲン除去工程S101とハロゲン浸出工程S102と銅浸出工程S103とを繰り返し行う場合の具体例を示す実施例である。まず、塩素濃度が3500mg/L、臭素濃度が1800mg/Lの製錬排水(ハロゲン含有溶液10)を4905mL準備し、試料31-1とした。
【0104】
試料31-1に、銅イオン源として37.7gのCuOを用いた銅イオン溶液20を添加し、所定時間撹拌した。その後、ハロゲン化銅30を分離除去し、脱ハロゲン後溶液40について塩素濃度と臭素濃度とを測定し、塩素除去率および臭素除去率を算出した。
【0105】
試料31-1から得られた52.73g-dryのハロゲン化銅30を試料31-2とし、400mLの水と471.7gの5%CaO液からなるアルカリ溶液50を添加し、所定時間撹拌した。その後、ハロゲン浸出残渣60を固液分離し、残った溶液の塩素濃度と臭素濃度とを測定し、塩素除去率および臭素除去率を算出した。
【0106】
試料31-2から得られた31.3g-dryのハロゲン浸出残渣60を試料31-3とし、350mLの水と50.0gの75%硫酸70を添加し、酸化剤71として空気を吹き込みながら所定時間攪拌した。その後、得られた銅浸出液80の銅濃度を測定し、銅浸出率を算出した。
【0107】
次に、塩素濃度が3500mg/L、臭素濃度が1800mg/Lの製錬排水(ハロゲン含有溶液10)を3600mL準備し、試料32-1とした。
【0108】
試料32-1に、試料31-3から得られた356mLの銅浸出液80を用いた銅イオン溶液20と、16.53gの鉄粉(還元剤21)とを添加し、所定時間撹拌した。なお、この際、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して、1当量の銅イオンが含まれるように、410mLのCuSO液を追加して添加した。その後、ハロゲン化銅30を分離除去し、脱ハロゲン後溶液40について塩素濃度と臭素濃度とを測定し、塩素除去率および臭素除去率を算出した。
【0109】
試料32-1から得られた37.82g-dryのハロゲン化銅30を試料32-2とし、300mLの水と213.1gの5%CaO液からなるアルカリ溶液50を添加し、所定時間撹拌した。その後、ハロゲン浸出残渣60を固液分離し、残った溶液の塩素濃度と臭素濃度とを測定し、塩素除去率および臭素除去率を算出した。
【0110】
試料32-2から得られた22.3g-dryのハロゲン浸出残渣60を試料32-3とし、250mLの水と35.2gの75%硫酸70を添加し、酸化剤71として空気を吹き込みながら所定時間攪拌した。その後、得られた銅浸出液80の銅濃度を測定し、銅浸出率を算出した。
【0111】
さらに、塩素濃度が3500mg/L、臭素濃度が1800mg/Lの製錬排水(ハロゲン含有溶液10)を2150mL準備し、試料33-1とした。
【0112】
試料33-1に、試料32-3から得られた243mLの銅浸出液80を用いた銅イオン溶液20と、8.42gの鉄粉(還元剤21)とを添加し、所定時間撹拌した。なお、この際、ハロゲン含有溶液10のハロゲン含有量に対して、1当量の銅イオンが含まれるように、250mLのCuSO液を追加して添加した。その後、ハロゲン化銅30を分離除去し、脱ハロゲン後溶液40について塩素濃度と臭素濃度とを測定し、塩素除去率および臭素除去率を算出した。
【0113】
試料33-1から得られた14.43g-dryのハロゲン化銅30を試料33-2とし、200mLの水と141.0gの5%CaO液からなるアルカリ溶液50を添加し、所定時間撹拌した。その後、ハロゲン浸出残渣60を固液分離し、残った溶液の塩素濃度と臭素濃度とを測定し、塩素除去率および臭素除去率を算出した。
【0114】
試料33-2から得られた9.4g-dryのハロゲン浸出残渣60を試料33-3とし、150mLの水と18.1gの75%硫酸70を添加し、酸化剤71として空気を吹き込みながら所定時間攪拌した。その後、得られた銅浸出液80の銅濃度を測定し、銅浸出率を算出した。
【0115】
実施例4の結果を表4に示す。実施例4の結果から、銅浸出液80を用いて、ハロゲン除去工程S101を繰り返し行った場合でも、充分なハロゲン除去率が得られることを確認した。つまり、銅イオンを用いてハロゲンを除去する方法において、銅を効率的に再利用できることを確認した。
【0116】
【表4】
【符号の説明】
【0117】
10 ハロゲン含有溶液
20 銅イオン溶液
21 還元剤
30 ハロゲン化銅
40 脱ハロゲン後溶液
50 アルカリ溶液
60 ハロゲン浸出残渣
61 ハロゲン浸出液
70 硫酸
71 酸化剤
80 銅浸出液
81 銅浸出残渣
S101 ハロゲン除去工程
S102 ハロゲン浸出工程
S103 銅浸出工程
図1