(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136751
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】濁水前処理設備
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
C02F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036518
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有
(57)【要約】 (修正有)
【課題】工事濁水などの処理をコストや人員をかけることなく簡便に行うことが可能な濁水前処理設備を提供する。
【解決手段】濁水前処理設備1は、3つ以上のメインタンク10、20、30と、サブタンク40と、全てのメインタンク10、20、30同士と、一つのメインタンク30とサブタンク40とを連結するタンク間配管110と、全てのタンク間配管に設けられ、タンク間配管の流路の開閉を行うタンク間配管バルブ210、220、230と、全てのメインタンクとサブタンクとの間に、共通の流路を形成する共通配管300と、全てのメインタンク10、20、30とサブタンク40と、共通配管300との間を連結する連絡配管310、320、330、340と、連絡配管310、320、330、340の流路の開閉を行う連絡配管バルブ410、420、430、440とからなる濁水前処理設備。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上のメインタンクと、
サブタンクと、
全てのメインタンク同士と、一つのメインタンクとサブタンクとを連結するタンク間配管と、
全てのタンク間配管に設けられ、タンク間配管の流路の開閉を行うタンク間配管バルブと、
全てのメインタンクとサブタンクとの間に、共通の流路を形成する共通配管と、
全てのメインタンクとサブタンクと、共通配管との間を連結する連絡配管と、
連絡配管の流路の開閉を行う連絡配管バルブと、からなることを特徴とする濁水前処理設備。
【請求項2】
共通配管の長手方向が、水平方向に対して傾いていることを特徴とする請求項1に記載の濁水前処理設備。
【請求項3】
メインタンクとサブタンクがノッチタンクであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の濁水前処理設備。
【請求項4】
3つ以上のメインタンクが同じ内容積を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の濁水前処理設備。
【請求項5】
サブタンクの内容積はメインタンクの内容積より小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の濁水前処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石・土砂を多く含む工事濁水の処理を行う濁水前処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム工事やトンネル工事等で発生する工事濁水は、凝集沈殿方式による濁水処理装置や汚泥脱水装置を含む濁水処理設備により処理されている。この工事濁水は、工事現場において発生する湧き水が土砂と混じり合って発生したり、掘削、ずり運搬、吹付けコンクリート、コンクリート打設、洗浄水等に伴い発生したりする。
【0003】
工事濁水に多くの岩石、土砂が含まれる場合には、上記のような濁水処理設備に濁水を投入する前段において、特許文献1(特開2001―239107号公報)などに示されている沈殿池(沈砂池)で、岩石、土砂などを沈殿させて、上澄みの濁水を濁水処理設備に投入するようにしている。
【特許文献1】特開2001―239107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の沈殿池は、コンクリート製のものであり、このような沈殿池を工事現場の近傍に設けるためには、大きなコストがかかる、という問題があった。また、沈殿池は本工事と並行して施工しなければならず、このような施工を行うことは、多くの時間と人員を要するし、さらに沈澱池の撤去においても、多くの時間と人員が必要となるのみならず、多くの廃棄物が発生する、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明に係る濁水前処理設備は、3つ以上のメインタンクと、サブタンクと、全てのメインタンク同士と、一つのメインタンクとサブタンクとを連結するタンク間配管と、全てのタンク間配管に設けられ、タンク間配管の流路の開閉を行うタンク間配管バルブと、全てのメインタンクとサブタンクとの間に、共通の流路を形成する共通配管と、全てのメインタンクとサブタンクと、共通配管との間を連結する連絡配管と、連絡配管の流路の開閉を行う連絡配管バルブと、からなることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る濁水前処理設備は、共通配管の長手方向が、水平方向に対して傾いていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る濁水前処理設備は、メインタンクとサブタンクがノッチタンクであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る濁水前処理設備は、3つ以上のメインタンクが同じ内容積を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る濁水前処理設備は、サブタンクの内容積はメインタンクの内容積より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る濁水前処理設備は、3つ以上のメインタンクとサブタンクと、これらを連結する配管やバルブなどからなる簡易な構成であるので、このような本発明に係る濁水前処理設備によれば、岩石、土砂が多く含まれる工事濁水などを、濁水処理設備に投入する前段に処理する際、コストや人員をかけることなく、これを簡便に行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る濁水前処理設備は、1つのメインタンクの堆積物等の清掃を実施している際には、他のメインタンクにより被処理水の処理を継続することができるので、高い運用効率で処理を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る濁水前処理設備は、本工事において、初期計画よりも多くの岩石、土砂が含まれる工事濁水が発生したような場合でも、簡単に設置することが可能である。また、本発明に係る濁水前処理設備は、設置面積は広くないため、設置スペースの確保が容易である。また、本発明に係る濁水前処理設備は、基本的にタンクが連結されたシンプルな構成であるため、移動も簡単にできる。
【0013】
さらに、本発明に係る濁水前処理設備は、ほとんどの部材が再利用可能であり、撤去の際に発生する廃棄物が非常に少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1を側面から見た図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1において第1メインタンク10の清掃を行っている際の運用例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1において第2メインタンク20の清掃を行っている際の運用例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1において第3メインタンク30の清掃を行っている際の運用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1の斜視図である。また、
図2は本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1を側面から見た図である。
【0016】
本発明に係る濁水前処理設備1は、工事濁水などに多くの岩石、土砂が含まれる場合に、濁水処理設備に前記濁水を投入する前段における処理を行うものであり、その目的は濁水中の岩石、土砂を沈殿させることにある。
【0017】
本発明に係る濁水前処理設備1において、上記のような沈殿を促すタンクが、メインタンクと称するタンクである。このようなメインタンクは、濁水前処理設備1の運用効率を鑑みると3つ以上であることが好ましい。以下、本実施形態では、第1メインタンク10、第2メインタンク20、第3メインタンク30の3つのメインタンクで構成された濁水前処理設備1について説明する。
【0018】
第1メインタンク10、第2メインタンク20、第3メインタンク30は同一規格で、同じ内容積を有するものであることが好ましい。これらのメインタンクの他に、本発明に係る濁水前処理設備1は、サブタンク40を有している。サブタンク40は、メインタンクの内容積より小さいものであることが好ましいが、必ずしもそうでなくともよい。要は、それぞれのタンクの最上端が面一であれば、どのようなものを用いることもできる。従って、サブタンク40には、メインタンクと内容積を含め同一規格のものを用いてもよい。また、サブタンク40としてメインタンクと同一規格のものを用いる場合、盛土などを底に配し、メインタンクの内容積より実質的に小さくすることも好ましい態様である。第1メインタンク10、第2メインタンク20、第3メインタンク30、サブタンク40のいずれにもノッチタンクを好適に用いることができる。
【0019】
第1メインタンク10と第2メインタンク20とは第1タンク間配管110とで連結され、第2メインタンク20と第3メインタンク30とは第2タンク間配管120とで連結され、第3メインタンク30とサブタンク40とは第3タンク間配管130とで連結されている。
【0020】
また、第1タンク間配管110には当該配管内の流路の開閉を行う第1タンク間配管バルブ210が設けられ、第2タンク間配管120には当該配管内の流路の開閉を行う第2タンク間配管バルブ220が設けられ、第3タンク間配管130には当該配管内の流路の開閉を行う第3タンク間配管バルブ230が設けられている。
【0021】
本発明に係る濁水前処理設備1は、上記のような各メインタンク10、20、30と、サブタンク40との間に、共通の流路を形成する共通配管300を有している。共通配管300が形成する流路は、上記のような各タンク間配管が形成する流路とは異なるものである。図示するように、共通配管300の長手方向は、水平方向に対して傾いている。この傾きは、第1メインタンク10からサブタンク40にかけて、下降するような傾きであることが好ましい。共通配管300が、このような傾きを有することで、共通配管300内の流路が岩石・土砂等で閉塞してしまうことを回避できる。
【0022】
第1メインタンク10と共通配管300との間は第1連絡配管310とで連結されており、第2メインタンク20と共通配管300との間は第2連絡配管320とで連結されており、第3メインタンク30と共通配管300との間は第3連絡配管330とで連結されており、サブタンク40と共通配管300との間はサブタンク連絡配管340とで連結されている。
【0023】
また、第1連絡配管310には当該配管内の流路の開閉を行う第1連絡配管バルブ410が設けられ、第2連絡配管320には当該配管内の流路の開閉を行う第2連絡配管バルブ420が設けられ、第3連絡配管330には当該配管内の流路の開閉を行う第3連絡配管バルブ430が設けられ、サブタンク連絡配管340には当該配管内の流路の開閉を行うサブタンク連絡配管バルブ440が設けられている。
【0024】
サブタンク40内には、水中ポンプ500を設けておき、この水中ポンプ500を駆動することで、取水配管510を介して、不図示の濁水処理設備の原水槽に対して、本発明に係る濁水前処理設備1で処理を行った濁水を圧送する。
【0025】
次に、以上のように構成される本発明に係る濁水前処理設備1の運用形態について説明する。本発明に係る濁水前処理設備1には、被処理水導入配管5を用いていずれかのメインタンクに、被処理水を投入する。ここで、本発明に係る濁水前処理設備1では、3つあるメインタンクのうち2つを被処理水の処理に用いて、その間に、残った1つのメインタンクに沈殿し堆積した岩石・土砂等の清掃を行う運用が想定されている。
【0026】
以下、運用例を示す図で、「閉」とするバルブを×印によって模式的に示す。
図3は本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1において第1メインタンク10の清掃を行っている際の運用例を示す図である。この場合、例えば被処理水導入配管5により第2メインタンク20に対して、被処理水が投入される。
【0027】
第1タンク間配管バルブ210、第1連絡配管バルブ410、第2連絡配管バルブ420、第3連絡配管バルブ430、サブタンク連絡配管バルブ440の各バルブは閉じられ、配管内の流路が遮断される。その他のバルブは開かれる。
【0028】
以上のような状態で、第2メインタンク20に被処理水が投入されると、被処理水は第2メインタンク20から第2タンク間配管120を介して第3メインタンク30に流れ、さらに、第3メインタンク30から第3タンク間配管130を介してサブタンク40に流れ込む。このような被処理水の流れが形成されることで、被処理水における岩石・土砂等からなる沈殿物は、主として第2メインタンク20に堆積する。サブタンク40に流れ込んだ被処理水は、サブタンク40内の水中ポンプ500により不図示の濁水処理設備へと圧送される。
【0029】
以上のような運用の際には、第1メインタンク10は被処理水の処理には関与しないので、岩石・土砂等などを除去する清掃作業を行うことができる。
【0030】
図4は本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1において第2メインタンク20の清掃を行っている際の運用例を示す図である。この場合、例えば被処理水導入配管5により第1メインタンク10に対して、被処理水が投入される。
【0031】
第1タンク間配管バルブ210、第2タンク間配管バルブ220、第2連絡配管バルブ420、サブタンク連絡配管バルブ440の各バルブは閉じられ、配管内の流路が遮断される。その他のバルブは開かれる。なお、共通配管300内で矢印に示されている流路は確保されていることに留意されたい。
【0032】
以上のような状態で、第1メインタンク10に被処理水が投入されると、被処理水は第1メインタンク10から共通配管300を介して第3メインタンク30に流れ、さらに、第3メインタンク30から第3タンク間配管130を介してサブタンク40に流れ込む。このような被処理水の流れが形成されることで、被処理水における岩石・土砂等からなる沈殿物は、主として第1メインタンク10に堆積する。サブタンク40に流れ込んだ被処理水は、サブタンク40内の水中ポンプ500により不図示の濁水処理設備へと圧送される。
【0033】
以上のような運用の際には、第2メインタンク20は被処理水の処理には関与しないので、岩石・土砂等などを除去する清掃作業を行うことができる。
【0034】
図5は本発明の実施形態に係る濁水前処理設備1において第3メインタンク30の清掃を行っている際の運用例を示す図である。
【0035】
第2タンク間配管バルブ220、第3タンク間配管バルブ230、第1連絡配管バルブ410、第3連絡配管バルブ430の各バルブは閉じられ、配管内の流路が遮断される。その他のバルブは開かれる。なお、共通配管300内で矢印に示されている流路は確保されていることに留意されたい。
【0036】
以上のような状態で、第1メインタンク10に被処理水が投入されると、被処理水は第1メインタンク10から第2タンク間配管120を介して第2メインタンク20に流れ、さらに、第2メインタンク20から共通配管300を介してサブタンク40に流れ込む。このような被処理水の流れが形成されることで、被処理水における岩石・土砂等からなる沈殿物は、主として第1メインタンク10に堆積する。サブタンク40に流れ込んだ被処理水は、サブタンク40内の水中ポンプ500により不図示の濁水処理設備へと圧送される。
【0037】
以上のような運用の際には、第3メインタンク30は被処理水の処理には関与しないので、岩石・土砂等などを除去する清掃作業を行うことができる。
【0038】
以上、本発明に係る濁水前処理設備1は、3つ以上のメインタンクとサブタンクと、これらを連結する配管やバルブなどからなる簡易な構成であるので、このような本発明に係る濁水前処理設備1によれば、岩石、土砂が多く含まれる工事濁水などを、濁水処理設備に投入する前段に処理する際、コストや人員をかけることなく、これを簡便に行うことが可能となる。
【0039】
また、本発明に係る濁水前処理設備1は、1つのメインタンクの堆積物等の清掃を実施している際には、他のメインタンクにより被処理水の処理を継続することができるので、高い運用効率で処理を行うことができる。
【0040】
また、本発明に係る濁水前処理設備1は、本工事において、初期計画よりも多くの岩石、土砂が含まれる工事濁水が発生したような場合でも、簡単に設置することが可能である。また、本発明に係る濁水前処理設備1は、設置面積は広くないため、設置スペースの確保が容易である。また、本発明に係る濁水前処理設備1は、基本的にタンクが連結されたシンプルな構成であるため、移動も簡単にできる。
【0041】
さらに、本発明に係る濁水前処理設備1は、ほとんどの部材が再利用可能であり、撤去の際に発生する廃棄物が非常に少なくなる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・濁水前処理設備
5・・・被処理水導入配管
10・・・第1メインタンク
20・・・第2メインタンク
30・・・第3メインタンク
40・・・サブタンク
110・・・第1タンク間配管
120・・・第2タンク間配管
130・・・第3タンク間配管
210・・・第1タンク間配管バルブ
220・・・第2タンク間配管バルブ
230・・・第3タンク間配管バルブ
300・・・共通配管
310・・・第1連絡配管
320・・・第2連絡配管
330・・・第3連絡配管
340・・・サブタンク連絡配管
410・・・第1連絡配管バルブ
420・・・第2連絡配管バルブ
430・・・第3連絡配管バルブ
440・・・サブタンク連絡配管バルブ
500・・・水中ポンプ
510・・・取水配管
L・・・水位