(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136774
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】金属製カップ
(51)【国際特許分類】
B65D 21/02 20060101AFI20220913BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B65D21/02 410
B65D1/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036551
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 元彦
【テーマコード(参考)】
3E006
3E033
【Fターム(参考)】
3E006AA01
3E006BA08
3E006CA05
3E006FA02
3E033AA08
3E033BA09
3E033BB01
3E033DA10
3E033DD01
3E033EA04
3E033EA05
3E033EA06
3E033EA07
3E033FA01
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】スタックしても取り外しやすい金属製カップを提供すること。
【解決手段】本発明の金属製カップは、アルミニウム合金からなり、底部と、底部から開口部に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部と、を備え、胴部に、周方向に形成された突起部が高さ方向に間隔をあけて複数設けられており、これら突起部は、半径方向内方又は外方の同じ方向に向けて突出している、あるいは、胴部に、高さ方向に連続して形成された突起部が周方向に間隔をあけて複数設けられており、これら突起部は、半径方向内方又は外方の同じ方向に向けて突出している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金からなり、底部と、前記底部から開口部に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部と、を備え、前記胴部に、周方向に形成された突起部が高さ方向に間隔をあけて複数設けられており、これら突起部は、半径方向内方又は外方の同じ方向に向けて突出していることを特徴とする金属製カップ。
【請求項2】
アルミニウム合金からなり、底部と、前記底部から開口部に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部と、を備え、前記胴部に、高さ方向に連続して形成された突起部が周方向に間隔をあけて複数設けられており、これら突起部は、半径方向内方又は外方の同じ方向に向けて突出していることを特徴とする金属製カップ。
【請求項3】
前記胴部の開口部には、エッジ部を含む端部を折り返して形成されたカール部が形成されており、前記突起部のうちの一つは、前記カール部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属製カップ。
【請求項4】
前記胴部の前記カール部以外の部分に形成された前記突起部は、前記胴部の周方向に沿って形成されているとともに、前記突起部には、該突起部の一部が凹んで、又は該突起部が存在しない領域からなる空気流通部が形成されている請求項3に記載の金属製カップ。
【請求項5】
前記カール部は、半径方向内方に突出する前記突起部を構成しており、
これら金属製カップをスタックした際に上側の前記金属製カップの前記カール部に対向する下側の前記金属製カップの前記胴部の周方向の一部に、半径方向内方に突出する空気流通用突出部が形成されており、前記空気流通用突出部の高さは、前記金属製カップをスタックした際に形成される上側の前記金属製カップの内面と下側の前記金属製カップの外面との間に形成される隙間の半径方向の寸法より小さいことを特徴とする請求項3又は4のいずれか一項に記載の金属製カップ。
【請求項6】
前記胴部の外面における隣り合う前記突起部の間に印刷が施されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の金属製カップ。
【請求項7】
前記印刷は、立体印刷からなり、前記立体印刷の半径方向の高さは、前記突起部の高さよりも低く形成されていることを特徴とする請求項6に記載の金属製カップ。
【請求項8】
前記胴部の前記カール部以外の部分に形成された半径方向外方に突出する前記突起部は、前記胴部の前記カール部以外の部分の外面に施された立体印刷からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金等からなる金属製カップに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の飲料用カップには陶器製、ガラス製、金属製、紙製、プラスチック製等がある。このうち、金属製、紙製、プラスチック製のカップは、陶器製やガラス製と比べて、軽量でスタックしても嵩張りにくいので、持ち運びに優れている。
特許文献1にはテーパ状の金属カップ(金属製カップ)が開示されている。この金属製カップは、アルミニウム製で、プラスチックカップより硬く、耐久性があり、また、リサイクル性に優れていると記載されている。
【0003】
また、この金属製カップを製造する方法として、金属板を抜き及び絞り加工してカップを形成し、そのカップに絞りしごき加工を施すことにより円筒状の垂直壁プリフォームを形成し(DI工程)、その開口端部を丸めてカール部を形成した後、段階的絞り処理により、カール部から底部に向けて、連続的に小さくなる直径及び異なる高さの垂直壁区画を有する垂直絞りカップを形成し、その後、テーパ状の輪郭を有するダイを用いて、垂直壁区画の各々を拡げることにより、各垂直壁区画をテーパ状側壁としたテーパ状カップを形成し、最後に、カップの底に、ドーム部を形成する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の金属製カップを複数スタックすると、上側の金属製カップの外面と下側の金属製カップの内面とが面接触することから、上側の金属製カップを下側の金属製カップから引き抜こうとすると、両金属性カップの間の空間が負圧になり抜けにくくなる。特に、スタックした後に、これら金属製カップの温度が下がるとこれらの密着性が高まりさらに外れにくくなる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、スタックしても取り外しやすい金属製カップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属製カップは、アルミニウム合金からなり、底部と、前記底部から開口部に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部と、を備え、前記胴部に、周方向に形成された突起部が高さ方向に間隔をあけて複数設けられており、これら突起部は、半径方向内方又は外方の同じ方向に向けて突出している。
【0008】
本発明では、胴部に、周方向に形成された突起部が高さ方向に間隔をあけて複数設けられており、これらが半径方向内方又は外方の同じ方向に突出しているので、これら突起部が形成された金属製カップをスタックした際に、複数の突起部が相手側の金属製カップに接触する。具体的には、複数の突起部が半径方向内方に突出している場合には、金属製カップが重ねられた下側の金属製カップの複数の突起部が上側の金属製カップの外面や底部に接触する。一方、複数の突起部が半径方向外方に突出している場合は、金属製カップが重ねられた上側の金属製カップの複数の突起部が下側の金属製カップの胴部の内面に接触する。つまり、上側の金属製カップ又は下側の金属製カップのいずれかが相手側の金属製カップの複数の突起部の二点以上で支持されるので、上側の金属製カップの外面と下側の金属製カップの内面とが面接触することがない。このため、上側の金属製カップを下側の金属製カップから取り外しやすくできる。
なお、周方向に形成された突起部としては、周方向に連続して形成された突起部及び周方向に断続して形成された突起部のいずれもを含む。この連続して形成された突起部とは、胴部の周方向に1周連続して形成された環状の突起部、又は全周のうちの一か所のみ途切れている一つの突起部を意味し、断続して形成された突起部とは、胴部の周方向に突起が2個以上形成されているものを意味する。
【0009】
本発明の金属製カップは、アルミニウム合金からなり、底部と、前記底部から開口部に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部と、を備え、前記胴部に、高さ方向に連続して形成された突起部が周方向に間隔をあけて複数設けられており、これら突起部は、半径方向内方又は外方の同じ方向に向けて突出している。
【0010】
本発明では、胴部に、高さ方向に連続して形成された突起部が周方向に間隔をあけて複数設けられており、これらが半径方向内方又は外方の同じ方向に突出しているので、これら突起部が形成された金属製カップをスタックした際に、複数の突起部が相手側の金属製カップに接触する。つまり、上側の金属製カップ又は下側の金属製カップのいずれかが相手側の金属製カップの複数の突起部で支持されるので、上側の金属製カップの外面と下側の金属製カップの内面とが面接触することがない。このため、上側の金属製カップを下側の金属製カップから取り外しやすくできる。また、複数の突起部が周方向に間隔をあけて設けられているので、これら突起部が相手側の金属製カップに接触した場合でも、突起部間の空気の流通が妨げられることがないので、両金属製カップの間の空間が負圧になることを抑制でき、上側の金属製カップを下側の金属製カップから取り外しやすくできる。
【0011】
本発明の金属製カップの好ましい態様としては、前記胴部の開口部には、エッジ部を含む端部を折り返して形成されたカール部が形成されており、前記突起部のうちの一つは、前記カール部によって構成されているとよい。
上記態様では、カール部が突起部を兼ねる構成であるので、金属製カップをスタックした際に、カール部と胴部のカール部以外の部分に形成された突起部とが相手側の金属製カップに接触する。具体的には、カール部が半径方向内方に突出している場合には、金属製カップが重ねられた下側の金属製カップのカール部が上側の金属製カップの外面に接触するとともに、下側の金属製カップの胴部のカール部以外の部分に形成された突起部に上側の金属製カップの底部又は胴部の外面が接触する。一方、カール部が半径方向外方に突出している場合は、金属製カップが重ねられた上側の金属製カップのカール部が下側の金属製カップの胴部の内面に接触するとともに、上側の金属製カップの胴部のカール部以外の部分に形成された突起部が下側の金属製カップの胴部の内面に接触する。つまり、上記態様では、カール部が突起部を兼ねているので、胴部のカール部以外の部分に一か所以上突起部が形成されていれば、スタックされた金属製カップを二点以上で支持できる。このため、金属製カップの製造をより簡易にでき、製造コストを低減できる。
【0012】
本発明の金属製カップの好ましい態様としては、前記胴部の前記カール部以外の部分に形成された前記突起部は、前記胴部の周方向に沿って形成され、該突起部には、該突起部の一部が凹んで、又は該突起部が存在しない領域からなる空気流通部が形成されているとよい。
上記態様では、突起部に空気流通部が形成されているので、これらが形成された金属製カップをスタックした際に、下側の金属製カップ内の空気は空気流通部を介してカップ外に排出される。このため、両金属製カップの間の空間が負圧になることを抑制でき、上側の金属製カップを下側の金属製カップから取り外しやすくできる。
【0013】
本発明の金属製カップの好ましい態様としては、前記カール部は、半径方向内方に突出する前記突起部を構成しており、これら金属製カップをスタックした際に上側の前記金属製カップの前記カール部に対向する下側の前記金属製カップの前記胴部の周方向の一部に、半径方向内方に突出する空気流通用突出部が形成されており、前記空気流通用突出部の高さは、前記金属製カップをスタックした際に形成される上側の前記金属製カップの内面と下側の前記金属製カップの外面との間に形成される隙間の半径方向の寸法より小さいとよい。
上記態様では、金属製カップをスタックした際に、上側の金属製カップの胴部における空気流通用突出部が形成されていない部分においては、下側の金属製カップのカール部が接触するとともに、空気流通用突出部が形成されている部分は、下側の金属製カップのカール部に対向する位置に配置され、カール部との間に隙間が形成される。このため、カール部が半径方向外方に突出している場合でも、下側の金属製カップ内の空気をカップ外に排出できる。つまり、上記態様では、両金属製カップの間の空間が負圧になることをより抑制でき、上側の金属製カップを下側の金属製カップから取り外しやすくできる。
【0014】
本発明の金属製カップの好ましい態様としては、前記胴部の外面における隣り合う前記突起部の間に印刷が施されているとよい。
上記態様では、胴部の周方向に形成された突起部が間隔をあけて複数形成されており、これらが形成された金属製カップをスタックした際に、上側の金属製カップの突起部の間の領域が下側の金属製カップの内面に接触することを防止できる。この下側の金属製カップの内面に接触することがない領域に印刷が施されているので、スタック時に印刷が剥がれることを抑制できる。
【0015】
本発明の金属製カップの好ましい態様としては、前記印刷は、立体印刷からなり、前記立体印刷の半径方向の高さは、前記突起部の高さよりも低く形成されているとよい。
上記態様では、隣り合う突起部に形成される印刷を立体印刷により形成できるので、金属製カップの美観を向上できる他、金属製カップを手に持った際に滑りにくくできる。また、印刷が立体印刷からなる場合でも、その高さが突起部の高さより低いので、金属製カップのスタック時に立体印刷が剥がれることを抑制できる。
【0016】
本発明の金属製カップの別の態様としては、前記胴部の前記カール部以外の部分に形成された半径方向外方に突出する前記突起部は、前記胴部の前記カール部以外の部分の外面に施された立体印刷からなることとしてもよい。
上記態様では、半径方向外方に突出する突起部を立体印刷により形成できるので、金属製カップを加工しビードを形成して突起部を形成するのに比べて容易に突起部を形成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スタックしても取り外しやすい金属製カップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態の金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図2】
図1に示す金属製カップをスタックした状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図4】
図3に示す金属製カップをスタックした状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態の金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図6】
図5に示す金属製カップをスタックした状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態の金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図8】
図7に示す金属製カップをスタックした状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の第5実施形態の金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図10】本発明の第6実施形態の金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図11】本発明の第7実施形態の金属製カップの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図である。
【
図12】
図11に示す金属製カップをスタックした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る金属製カップの各実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
[第1実施形態]
本実施形態の金属製カップ100は、
図1に示すように、アルミニウム合金からなる金属板をプレス成形により有底筒状に形成したものであり、底部11の直径より開口部15の直径が大きく、全体として底部11から開口部15に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部12を有し、胴部12の開口部15には、エッジ部を含む端部を半径方向外方に折り返して形成されたカール部14が形成されている。この金属製カップ1の半径方向の中心を缶軸Cとする。
【0021】
底部11は、円板状に形成され、金属製カップ100の底面を形成している。なお、この底面11の形状は、これに限らず、例えば、凹状に湾曲したドーム部、その外周縁に連続し、缶軸方向下方に向かうにしたがって漸次拡径する内側テーパ壁部、内側テーパ壁部の外周縁に連続し、金属製カップをテーブル等に置いたときに接地部となるリム部、リム部の外周端から胴部の最下端につながるテーパ状の立ち上がり部を連続させた形状であってもよい。
【0022】
胴部12は、底部11の外周端から開口部15に向かって漸次直径が大きくなるテーパ状に形成されている。また、本実施形態では、カール部14を含む胴部12に、周方向に連続して形成された突起部が高さ方向に間隔をあけて複数設けられており、これら突起部は、半径方向内方に向けて突出している。具体的には、胴部12の外周面(胴部12のカール部14以外の部分の外周面)には、半径方向内方に向けて突出する突起部13が形成されている。この突起部13は、胴部12の高さ方向の中腹部より下側に配置されている。また、カール部14は、半径方向内方及び外方のいずれにも突出する形状とされ、その半径方向内方に突出する部分が突起部141として機能する。つまり、本実施形態では、突起部のうちの一つは、カール部14によって構成されている。
【0023】
これらの諸寸法は必ずしも限定されるものではないが、例えば、胴部12の板厚が0.20mm以上0.40mm以下、カール部14の外径D1が60mm以上100mm以下、カール部14の内径D2が52mm以上98mm以下、底部11の直径D3が50mm以上80mm以下、突起部13の深さ0.5mm以上2.0mm以下、全体の高さH1が80mm以上180mm以下、底部11から突起部13の高さ方向の中央部(最深部)までの高さH2が20mm以上30mm以下とされている。また、突起部14の半径方向内方の深さは、0.5mm以上2.0mm以下とされている。
【0024】
次に、この金属製カップ100の製造方法について簡単に説明する。この金属製カップ100は、金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、筒体形成工程後に、外径の異なる複数のパンチを外径の小さい順に用いながら、筒体に開口部側からパンチを押し込んで、筒体の胴部を、底部側より開口部側に向けて徐々に拡径してテーパ状のテーパ状中間筒体を形成する拡径工程と、胴部のカール部以外の部分に突起部を形成する突起部形成工程と、突起部が形成されたテーパ状中間筒体の開口端部にカール部を形成するカール工程と、を有する工程を経て製造される。
なお、金属製カップ100の製造方法は上記方法に限らず、適宜変更可能である。
【0025】
このような方法により製造された金属製カップ100をスタックすると、
図2に示す状態となる。
図2では、金属製カップ100を3つ重ねた状態を断面にして示している。この金属製カップ100は、胴部12のカール部14以外の部分に形成された突起部13が半径方向内方に突出しているとともに、カール部14が半径方向内方に突出してもう1つの突起部141として機能していることから、金属製カップ100が重ねられた下側の金属製カップ100のカール部14の突起部141が上側の金属製カップ100の外面(胴部12の外面)に接触するとともに、下側の金属製カップ100の胴部12のカール部14以外の部分に形成された突起部13に上側の金属製カップ100の底部11の外面が接触する。つまり、本実施形態では、金属製カップ100がスタックされた場合に、2つの突起部13,141でのみ他の金属製カップ100と接触することとなるので、各金属製カップ100が面接触することがない。
【0026】
本実施形態では、カール部14を含む胴部12に、周方向に連続して形成された突起部141,13が高さ方向に間隔をあけて設けられており、これらが半径方向内方に突出しているので、これらが形成された金属製カップ100をスタックした際に、複数の突起部141,13が相手側の金属製カップ100に接触する。具体的には、金属製カップ100が重ねられた下側の金属製カップ100の突起部141が上側の金属製カップ100の胴部12の外面に接触するとともに、突起部13が上側の金属製カップ100の底部11に接触する。つまり、上側の金属製カップ100が下側の金属製カップ100の突起部141,13の二点で支持されるので、上側の金属製カップ100の外面と下側の金属製カップ100の内面とが面接触することがない。このため、上側の金属製カップ100を下側の金属製カップ100から取り外しやすくできる。
また、カール部14が突起部141を兼ねているので、胴部12のカール部14以外の部分に一か所以上突起部13が形成されていれば、スタックされた金属製カップ100を二点以上で支持できる。このため、金属製カップ100の製造をより簡易にでき、製造コストを低減できる。
【0027】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ又は略同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る金属製カップ100Aの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図であり、
図4は、
図3に示す金属製カップ100Aをスタックした状態を示す断面図である。
本実施形態の金属製カップ100Aは、カール部14Aが半径方向内方にのみ突出する形状である点、及び、突起部13Aが形成される位置が異なる点で上記第1実施形態と異なる。
【0028】
本実施形態の金属製カップ100Aの突起部13Aは、
図3及び
図4に示すように、第1実施形態に比べて胴部12の開口部15側に配置されている。具体的には、底部11から突起部13Aの中央までの高さH3は40mm以上90mm以下に設定されている。
また、カール部14Aは、エッジ部を含む端部を半径方向内方に巻き込んでなる。このカール部14Aは、半径方向内方にのみ突出する形状であり、この突出部分が突起部141Aとして機能する。例えば、カール部14Aの外径D5が60mm以上100mm以下、カール部14Aの内径D6が52mm以上98mm以下とされている。
【0029】
このような金属製カップ100Aをスタックすると、
図4に示す状態となる。具体的には、
図4では、金属製カップ100Aを3つ重ねた状態を断面にして示している。この金属製カップ100Aは、胴部12に形成された突起部13Aが半径方向内方に突出しているとともに、カール部14Aが半径方向内方に突出してもう1つの突起部141Aとして機能していることから、金属製カップ100が重ねられた下側の金属製カップ100Aのカール部14Aの突起部141A及び突起部13Aが上側の金属製カップ100Aの外面(胴部12の外面)に接触する。つまり、本実施形態においても、金属製カップ100Aがスタックされた場合に、2つの突起部13A,141Aが他の金属製カップ100Aと接触することとなるので、各金属製カップ100Aが面接触することがない。
このため、本実施形態でも上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0030】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ又は略同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る金属製カップ100Bの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図であり、
図6は、
図5に示す金属製カップ100Bをスタックした状態を示す断面図である。
本実施形態の金属製カップ100Bは、カール部14Bが半径方向外方にのみ突出する形状である点、及び、突起部16,17の数及び突出方向が異なる点で上記第1実施形態と異なる。
【0031】
本実施形態の金属製カップ100Bのカール部14Bは、エッジ部を含む端部を半径方向外に巻き込んでなる。このカール部14Bは、半径方向外方にのみ突出する形状とされているものの、上記各実施形態とは異なり突起部としては機能しない。例えば、カール部14Bの外径D7が60mm以上100mm以下、カール部14Bの内径D8が52mm以上98mm以下とされている。
【0032】
また、本実施形態の金属製カップ100の胴部12には、2つの突起部16,17が形成されている。これら突起部16,17は、
図5及び
図6に示すように、半径方向外方に突出して周方向に延びるビードからなり、胴部12を縦方向に三分割するように胴部12の周方向に連続して形成されている。例えば、底部11から突起部16の中央部までの高さH4が40mm以上140mm以下、底部11から突起部17の中央部までの高さH5が20mm以上70mm以下、突起部16,17の半径方向の高さが0.2mm以上2.0mm以下とされている。
【0033】
また、突起部16,17は、胴部12の周方向に沿って形成されているとともに、突起部16,17が存在しない領域からなる空気流通部161,171が形成されている。
空気流通部161,171のそれぞれは、胴部12の外周面と同じ高さ(つまり、突出してもいなければ凹んでもいない)とされており、突起部16,17の一部を缶軸C方向に切り欠いたように形成されることで、金属製カップ100Bがスタックされた際に、各突起部16,17より下方の空間にたまる空気を上方に流出させるために設けられており、
図5に示す例では、各突起部16,17に1つずつ形成されている。
なお、本実施形態では、空気流通部161,171は、各突起部16,17に1つずつ形成されることとしたが、これに限らず、複数ずつ形成されていてもよいし、いずれか一方に形成されていてもかまわない。
【0034】
このような金属製カップ100Bをスタックすると、
図6に示す状態となる。具体的には、
図6では、金属製カップ100Bを3つ重ねた状態を断面にして示している。この金属製カップ100Bは、胴部12に形成された2つの突起部16,17が半径方向内方に突出していることから、金属製カップ100Bが重ねられた上側の金属製カップ100Bの突起部16,17が下側の金属製カップ100Bの内面(胴部12の内面)に接触する。つまり、本実施形態においても、金属製カップ100Bがスタックされた場合に、2つの突起部16,17でのみ他の金属製カップ100Bと接触することとなるので、各金属製カップ100Bが面接触することがない。このため、本実施形態でも上記第1及び第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0035】
また、突起部16,17に空気流通部161,171が形成されているので、これらが形成された金属製カップ100Bをスタックした際に、下側の金属製カップ100B内の空気は空気流通部161,171を介してカップ100B外に排出される。このため、両金属製カップ100Bの間の空間が負圧になることを抑制でき、上側の金属製カップ100Bを下側の金属製カップ100Bから取り外しやすくできる。
【0036】
なお、上記第3実施形態では、2つの突起部16,17は、半径方向外方に突出する形状としたが、これに限らず、第1及び第2実施形態と同様に半径方向内方に突出する形状であってもよい。この場合、下側の金属製カップの半径方向内方に突出する2つの突起部が上側の金属製カップの胴部の外面に接触することとなる。また、これら半径方向内方に突出する2つの突起部のそれぞれに空気流通部を形成してもよく、この空気流通部の形状は、胴部12と同じ高さであればよい。
【0037】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、第3実施形態と同じ又は略同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
図7は、本発明の第4実施形態に係る金属製カップ100Cの缶軸を中心に半分を縦断面とした正面図であり、
図8は、
図7に示す金属製カップ100Cをスタックした状態を示す断面図である。
本実施形態の金属製カップ100Cは、胴部12に形成された突起部16と突起部17との間に立体印刷が施されている点で上記第3実施形態と異なる。
【0038】
本実施形態の金属製カップ100Cの胴部12の外面における隣り合う突起部16と突起部17との間には、
図7に示すように、立体印刷が施されることにより形成された立体印刷部21が形成されている。この立体印刷部21は、
図7に示す例では、周方向に連続して形成される帯状であるが、この印刷形状は、適宜変更可能である。また、立体印刷部21の半径方向の高さは、突起部16,17の高さよりも低く形成されている。
【0039】
このような金属製カップ100Cをスタックすると、
図8に示す状態となる。具体的には、
図8では、金属製カップ100Cを3つ重ねた状態を断面にして示している。この金属製カップ100Cは、胴部12に形成された2つの突起部16,17が半径方向内方に突出しており、これら突起部16,17の間に形成された立体印刷部21の半径方向の高さがこれら突起部16、17の高さより小さいことから、金属製カップ100Cが重ねられた上側の金属製カップ100Cの突起部16,17が下側の金属製カップ100Bの内面(胴部12の内面)に接触する。つまり、立体印刷部21は、下側の金属製カップ200Cの内面に接触することがない。
【0040】
本実施形態では、隣り合う突起部16,17に形成される立体印刷部21を立体印刷により形成できるので、金属製カップ100Cの美観を向上できる他、金属製カップ100Cを手に持った際に滑りにくくできる。また、印刷が立体印刷からなる場合でも、その高さが突起部16,17の高さより低いので、金属製カップ100Cのスタック時に立体印刷部21が剥がれることを抑制できる。
【0041】
なお、上記実施形態では、隣り合う突起部16と突起部17との間に立体印刷部21が形成されていることとしたが、これに限らず、これら突起部16,17の間に通常の印刷が施されて形成される印刷部が設けられていてもかまわない。この場合においても、下側の金属製カップ100Cの内面に接触することがない領域に印刷が施されているので、スタック時に印刷が剥がれることを抑制できる。
【0042】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ又は略同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
図9は、本発明の第5実施形態に係る金属製カップ100Dの正面図である。
本実施形態の金属製カップ100Dは、胴部12に形成された複数の突起部21Dの形状、及び各突起部21Dが立体印刷により形成されている点で、上記各実施形態と異なる。
【0043】
本実施形態の複数の突起部21Dは、
図9に示すように、高さ方向に連続して形成された突起部21Dが周方向に間隔をあけて複数(例えば、8個)設けられている。これら突起部21Dは、立体印刷により形成されている。これら突起部21Dの径方向の高さは、例えば30mm以上80mm以下に設定されている。これら突起部21Dが形成された金属カップ100Dをスタックすると、上側の金属製カップ100Dの複数の突起部21Dが下側の金属製カップ100Dの内面に接触する。この点、複数の突起部21Dは、周方向に間隔をあけて複数設けられていることから、これら突起部21Dの間が上述した空気流通部として機能するため、両金属製カップ100Dの間の空間が負圧になることを抑制でき、上側の金属製カップ100Dを下側の金属製カップ100Dから取り外しやすくできる。
【0044】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ又は略同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
図10は、本発明の第6実施形態に係る金属製カップ100Eの正面図である。
本実施形態の金属製カップ100Eは、胴部12に形成された複数の突起部21Eの形状及び各突起部21Eが立体印刷により形成されている点で、上記第1~第4実施形態と異なる。
【0045】
本実施形態の複数の突起部21Eは、
図10に示すように、周方向に断続して形成された平面視楕円形状の突起部21Eが高さ方向に間隔をあけて複数(例えば、10個×3段)設けられている。これら突起部21Eは、立体印刷により形成されている。これら突起部21Eの径方向の高さは、例えば0.3mm以上2.0mm以下に設定されている。これら突起部21Eが形成された金属カップ100Eをスタックすると、上側の金属製カップ100Eの複数の突起部21Eが下側の金属製カップ100Eの内面に接触する。この点、複数の突起部21Eは、周方向に断続して形成され、かつ、高さ方向に間隔をあけて複数設けられているので、これら突起部21Eの間が上述した空気流通部として機能するため、両金属製カップ100Eの間の空間が負圧になることを抑制でき、上側の金属製カップ100Eを下側の金属製カップ100Eから取り外しやすくできる。
【0046】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ又は略同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
図11は、本発明の第7実施形態に係る金属製カップ100Fの正面図であり、
図12は、
図11に示す金属製カップ100Fをスタックした状態を示す断面図(
図11のA1-A1線で切断した状態の断面図)であり、
図13は、
図12の要部を拡大して示す断面図である。
本実施形態の金属製カップ100Fは、胴部12に半径方向内方に突出する空気流通用突出部18が形成されている点で、上記各実施形態と異なる。
【0047】
本実施形態の金属製カップ100Fは、第1実施形態の金属製カップ100と略同じ構成であり、胴部12に半径方向内方に突出する空気流通用突出部18を備えている。この空気流通用突出部18は、
図10に示すように、平面視矩形状に形成され、例えば、縦方向の長さが2.0mm以上6.0mm以下、横方向の長さが4mm以上10mm以下とされている。
この空気流通用突出部18は、
図12に示すように、金属製カップ100Fをスタックした際に上側の金属製カップ100Fのカール部14に対向する下側の金属製カップ100Fの胴部の周方向の一部に形成されている。
【0048】
ここで、空気流通用突出部18の半径方向の高さが、上側の金属製カップ100Fの内面と下側の金属製カップ100Fの外面との間に形成される隙間の半径方向の寸法よりも大きいと、この空気流通用突出部18に上側の金属製カップ100Fの内面が接触してしまい、適切に金属製カップ100Fをスタックできない可能性が高い。このため、本実施形態では、
図13に示すように、空気流通用突出部18の高さは、金属製カップ100Fをスタックした際に形成される上側の金属製カップ100Fの内面と下側の金属製カップ100Fの外面との間に形成される隙間の半径方向の寸法より小さく設定されている。これにより、上側の金属製カップ100Fの空気流通用突出部18と下側の金属製カップ100Fの胴部12の外面との間に隙間S2が形成される。
【0049】
本実施形態では、金属製カップ100Fをスタックした際に、上側の金属製カップ100Fの胴部12における空気流通用突出部18が形成されていない部分においては、下側の金属製カップ100Fのカール部14の突起部141が接触するとともに、空気流通用突出部18が形成されている部分は、下側の金属製カップ100Fのカール部14に対向する位置に配置され、かつ、カール部14との間に隙間S1が形成される。また、空気流通用突出部18の半径方向の高さが上記範囲に設定されているので、上側の金属製カップ100Fの空気流通用突出部18と下側の金属製カップ100Fの胴部12の外面との間に隙間S2が形成される。このため、カール部14が半径方向外方に突出している場合でも、下側の金属製カップ100F内の空気をカップ100F外に排出できる。つまり、本実施形態では、両金属製カップ100Fの間の空間が負圧になることをより抑制でき、上側の金属製カップ100Fを下側の金属製カップ100Fから取り外しやすくできる。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変更可能である。
例えば、第3実施形態では、空気流通部161,171は、突起部16,17が存在しない領域からなり、その高さは、胴部12の高さと同じに設定することとしたが、これに限らず、例えば、突起部16,17の一部を凹んだ状態とし、この凹んだ部分を空気流通部としてもよい。
【0051】
上記第4実施形態では、突起部16と突起部17との間に立体印刷部21が形成されていることとしたが、これに限らず、例えば、カール部が突起部として機能する構成であれば、カール部と上側の突起部16との間に立体印刷部が形成されていてもよい。
【0052】
上記第4実施形態では、突起部16と突起部17との間に立体印刷部21が形成されていることとしたが、これに限らず、例えば、カール部が突起部として機能する構成であれば、カール部と上側の突起部16との間に立体印刷部が形成されていてもよい。
【0053】
上記第5及び第6実施形態では、立体印刷により複数の突起部21D,21Eを形成することとしたが、これに限らず、金属製カップの胴部を加工して複数の突起部21D,21Eを形成してもかまわない。
【符号の説明】
【0054】
C 缶軸
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F 金属製カップ
11 底部
12 胴部
13,13A 突起部
14 カール部
141,141A 突起部
15 開口部
16,17 突起部
161,171 空気流通部
18 空気流通用突出部
21 立体印刷部
21D,21E 突起部
S1,S2 隙間