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  • 特開-ハニカム構造体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136830
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20220913BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20220913BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20220913BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20220913BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B01J35/04 301J
B01J32/00 ZAB
B01J35/04 301F
B01J37/00 A
C04B37/00 Z
C04B41/88 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036626
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 佑人
【テーマコード(参考)】
4G026
4G169
【Fターム(参考)】
4G026BA01
4G026BA14
4G026BB01
4G026BB14
4G026BC01
4G026BD14
4G026BE04
4G026BF04
4G026BF05
4G026BF52
4G026BH13
4G169AA01
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169ED03
4G169EE03
4G169FA01
4G169FB71
4G169FC05
(57)【要約】
【課題】接合ズレを抑えることができるハニカム構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によるハニカム構造体の製造方法は、スリット形成前のハニカム構造体1を準備し、外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を残して、スリット12を形成する第1工程、第1工程の後に、スリット12に接合材13を充填する第2工程、及び第2工程の後に、第1工程で残した外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を除去し、分割するスリット12を備えたハニカム構造体1を得る第3工程を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するセラミックス製のハニカム構造体であって、前記ハニカム構造体の軸方向に直交する断面において、前記ハニカム構造体を分割するスリットを備えた前記ハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であり、
スリット形成前の前記ハニカム構造体を準備し、前記外周壁又は前記隔壁の少なくとも一部を残して、前記スリットを形成する第1工程、
前記第1工程の後に、前記スリットに接合材を充填する第2工程、及び
前記第2工程の後に、前記第1工程で残した前記外周壁又は前記隔壁の少なくとも一部を除去し、前記分割するスリットを備えた前記ハニカム構造体を得る第3工程
を含む、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記外周壁の少なくとも一部が残される、
請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第3工程の後に、前記外周壁又は隔壁の少なくとも一部を除去した部分に前記接合材を充填する第4工程
をさらに含む、
請求項1又は請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記ハニカム構造体が、前記外周壁の外面上に設けられた一対の電極層を有する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能するハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の電動化が進むことで低温化してしまう排気ガス温度を上昇させることが求められている。例えば下記の特許文献1等に示されているように、触媒担体としてハニカム構造体を用い、通電によりハニカム構造体を自己発熱させる電気加熱式触媒担体(EHC)が提案されている。
【0003】
ハニカム構造体は、排気ガスによる熱衝撃に耐えることが求められる。例えば下記の特許文献2に示されているように、外周壁を分割するようにハニカム構造体にスリットを設け、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることが行われている。スリットは、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面において、ハニカム構造体を分割するように設けられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-103684号公報
【特許文献2】特許第6126434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているようなハニカム構造体を分割するスリットを有するハニカム構造体は、従来、ハニカム構造体を、一旦、二分割して、それらを接合材で貼り合わせて作製していた。この方法では、ハニカム構造体を、一旦、二分割して、それらを接合材で貼り合わせるので、接合ズレによる形状悪化が生じることがある。接合ズレによる形状悪化は、キャニング性の低下又はハニカム構造体の強度の低下の原因になる虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、接合ズレを抑えることができるハニカム構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するセラミックス製のハニカム構造体であって、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面において、ハニカム構造体を分割するスリットを備えたハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であり、スリット形成前のハニカム構造体を準備し、外周壁又は隔壁の少なくとも一部を残して、スリットを形成する第1工程、第1工程の後に、スリットに接合材を充填する第2工程、及び第2工程の後に、第1工程で残した外周壁又は隔壁の少なくとも一部を除去し、分割するスリットを備えたハニカム構造体を得る第3工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、外周壁又は隔壁の少なくとも一部を残してスリットを形成し、スリットに接合材を充填した後に、残した外周壁又は隔壁の少なくとも一部を除去するので、接合ズレを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態によるハニカム構造体の製造方法によって製造されるハニカム構造体を示す斜視図である。
図2図1のハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造方法によって製造されるハニカム構造体1を示す斜視図である。図1に示すハニカム構造体1は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁10と、外周壁10の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル11aを区画形成する隔壁11とを有している。柱状とは、セル11aの延伸方向(ハニカム構造体1の軸方向)に厚みを有する立体形状と理解できる。ハニカム構造体1の軸方向長さとハニカム構造体1の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状には、ハニカム構造体1の軸方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)も含まれていてよい。
【0012】
ハニカム構造体1の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の他の形状とすることができる。また、ハニカム構造体1の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0013】
セル11aの延伸方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体1に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点からは、四角形が特に好ましい。
【0014】
セル11aを区画形成する隔壁11の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.15~0.25mmであることがより好ましい。隔壁11の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体1の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁11の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体1を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁11の厚みは、セル11aの延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル11aの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁11を通過する部分の長さとして定義される。
【0015】
ハニカム構造体1は、セル11aの流路方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造体1を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁10部分を除くハニカム構造体1の一つの底面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0016】
ハニカム構造体1の外周壁10を設けることは、ハニカム構造体1の構造強度を確保し、また、セル11aを流れる流体が外周壁10から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁10の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁10を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁11との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁10の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁10の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁10の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁10の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0017】
ハニカム構造体1は、セラミックス製であり、導電性を有することが好ましい。ハニカム構造体1は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、電気抵抗率については特に制限はないが、0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmがより好ましい。本発明において、ハニカム構造体1の電気抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0018】
ハニカム構造体1の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造体1の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。ハニカム構造体1の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体1が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。ハニカム構造体1の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体1が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0019】
ハニカム構造体1が、珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合ハニカム構造体1に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造体1に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造体1に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。
【0020】
隔壁11は多孔質としてもよい。多孔質とする場合、隔壁11の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0021】
ハニカム構造体1の隔壁11の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0022】
ハニカム構造体1は、ハニカム構造体1の軸方向に直交する断面において、ハニカム構造体1を分割するスリット12を備えている。スリット12は、ハニカム構造体1の径方向又は幅方向に係るハニカム構造体1の一端から他端まで直線状に延在されている。また、スリット12は、ハニカム構造体1の一方の端面から他方の端面までハニカム構造体1の軸方向に直線状に延在されている。
【0023】
スリット12には、接合材13が充填されている。接合材13は、スリット12の空間の少なくとも一部に充填されていることが好ましい。接合材13は、スリット12の空間の50%以上に充填されていることが好ましく、スリット12の空間の全部に充填されていることがより好ましい。図1に示す態様では、接合材13は、スリット12の空間の全部に充填されており、ハニカム構造体1の両方の端面と一体の平面を形成し、ハニカム構造体1の外周壁10と一体の曲面を形成している。しかしながら、接合材13は、ハニカム構造体1の端面よりも軸方向の内側の位置まで充填されていてもよく、ハニカム構造体1の外周壁10よりも径方向又は幅方向の内側の位置まで充填されていてもよい。
【0024】
接合材13は、ハニカム構造体1の主成分が炭化珪素、又は金属珪素-炭化珪素複合材である場合、炭化珪素を20質量%以上含有することが好ましく、20~70質量%含有することが更に好ましい。これにより、接合材13の熱膨張係数を、ハニカム構造体1の熱膨張係数に近い値にすることができ、ハニカム構造体1の耐熱衝撃性を向上させることができる。接合材13は、シリカ、アルミナ等を30質量%以上含有するものであってもよい。
【0025】
図示はしないが、セル11aの流路方向に帯状に延びる一対の電極層がハニカム構造体1の外周壁10の外面上に設けられ、それらの電極層上に電極端子を設けることができる。これら電極端子及び電極層を通してハニカム構造体1に電圧を印加して、ハニカム構造体1を発熱させることができる。
【0026】
電極層に電気を流しやすくする観点から、電極層の電気抵抗率は、ハニカム構造体1の電気抵抗率の1/200以上、1/10以下であることが好ましい。
【0027】
電極層の材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。
【0028】
電極層を有するハニカム構造体1の製造方法としては、まず、ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極層形成原料を塗布し、乾燥させて、ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、外周壁の外面上において、セルの流路方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極層を形成して、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を作製する。次に、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極層を有するハニカム焼成体を作製する。これにより、電極層を有するハニカム構造体1が得られる。
【0029】
次に、図2は、図1のハニカム構造体1を製造するためのハニカム構造体1の製造方法を示す説明図である。図1のハニカム構造体1は、図2の(a)に示す第1工程、(b)に示す第2工程、(c)に示す第3工程、及び(d)に示す第4工程を経て製造することができる。
【0030】
図2の(a)に示すように、第1工程では、スリット形成前のハニカム構造体1を準備し、外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を残して、スリット12を形成する。スリット12は、例えば、外周壁10又は隔壁11を切削することで形成することができる。このとき、ハニカム構造体1のスリット12を挟む両側が外周壁10又は隔壁11によりつながるように、外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を残すことが好ましい。換言すると、径方向若しくは幅方向又は軸方向に関してスリット12の両側に外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部が残されていることが好ましい。これは、第1工程においてスリット12を形成した後にハニカム構造体1の崩れが発生することを抑えるためである。図2の(a)に示すように、外周壁10の少なくとも一部を残すことがより好ましい。より具体的には、スリット12を形成する位置における外周壁10のすべてを残す(ハニカム構造体1の径方向又は幅方向の両側の位置において軸方向全域にわたって外周壁10を残す)ことがより好ましい。これは、比較的強度が高い外周壁10をすべて残すことで第1工程後にハニカム構造体1の崩れが発生することを抑えるためである。また、図2の(a)に示すように、スリット12を形成する位置における隔壁11のすべてを除去することが好ましい。後段の第3工程の作業量を減らすためである。しかしながら、図2の(a)に示す態様とは異なり、外周壁10に代えて隔壁11を残してもよい。隔壁11の一部を残す場合、スリット12を形成する位置における外周壁10のすべてが除去されてもよいし、同位置における外周壁10の少なくとも一部がさらに残されてもよい。外周壁10又は隔壁11の一部を残す位置は、径方向若しくは幅方向の一部のみ、又は軸方向の一部のみであってもよい。
【0031】
図2の(b)に示す第2工程は、第1工程の後に行われる。第2工程では、第1工程で形成されたスリット12に接合材13を充填する。接合材13は、例えばシリンジ等の治具を用いて圧入によりスリット12に充填することができる。
【0032】
図2の(c)に示す第3工程は、第2工程の後に行われる。第3工程では、第1工程で残した外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を除去し、ハニカム構造体1を分割するスリット12を備えたハニカム構造体1を得る。図2の(c)では、第1工程で残した外周壁10を除去し、ハニカム構造体1の軸方向に延びる溝14が形成される態様を示している。スリット12により分割されるハニカム構造体1の部分は、第1~3工程を通して外周壁10若しくは隔壁11の一部又は接合材13により接合されている。これにより、第1工程で外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を残さない場合と比較して、接合ズレを抑えることができる。
【0033】
第3工程は、第2工程で充填された接合材13が乾燥されて固化された後に行われることが好ましい。接合材13は、スリット12に接合材13を充填した後にハニカム構造体1を所定時間放置することにより乾燥されてもよいし、例えば乾燥炉等の設備を用いて乾燥されてもよい。
【0034】
図2の(d)に示す第4工程は、第3工程の後に行われる。第4工程では、第3工程で外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を除去した部分に接合材13を充填する。図2の(d)では、ハニカム構造体1の外周壁10と一体の曲面を形成するように、ハニカム構造体1の軸方向に延びる溝14に接合材13が充填される態様を示している。この第4工程は必須ではなく、第3工程にてハニカム構造体1の製造が完了されてもよい。
【0035】
本実施の形態のようなハニカム構造体1の製造方法では、外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を残してスリット12を形成し、スリット12に接合材13を充填した後に、残した外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を除去するので、接合ズレを抑えることができる。これにより、ハニカム構造体1の形状悪化を抑制でき、キャニング性の低下又はハニカム構造体1の強度の低下を回避できる。
【0036】
また、第1工程では、外周壁10の少なくとも一部が残されるので、より確実に接合ズレを抑えることができる。
【0037】
また、第3工程の後に、外周壁10又は隔壁11の少なくとも一部を除去した部分に接合材13を充填するので、スリット12の全体に接合材13を充填することができ、ハニカム構造体1の強度を向上できる。
【符号の説明】
【0038】
1 :ハニカム構造体
10 :外周壁
11 :隔壁
11a :セル
12 :スリット
13 :接合材
図1
図2