(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136833
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】マスカラ塗布具
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20220913BHJP
A46B 3/18 20060101ALI20220913BHJP
A46B 9/02 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
A46B3/18
A46B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036630
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】319015452
【氏名又は名称】株式会社フェアリードロップス
(74)【代理人】
【識別番号】100081455
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100170966
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 正紀
(72)【発明者】
【氏名】安田 彩
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA14
3B202BA16
3B202EA01
3B202EF05
3B202EG14
(57)【要約】
【課題】瞼の鼻側の端部付近の粘膜内に存在する根元部分から容易にマスカラ液を塗布することができるマスカラ塗布具を提供する。
【解決手段】手指により保持する保持部11と、保持部11から1軸方向に延びる軸部12と、軸部12の先端に設けられた塗布部13と、を備え、塗布部13は、軸部12の先端から延びて弧状に湾曲した芯部14と、湾曲した芯部14全体に略全周囲に突出するように配設された多数のブラシ毛15と、を有するマスカラ塗布具10であり、芯部14の先端が軸部12の延長上に一致するように配置されるとともに、芯部14の先端側の略全周囲に突出した多数のブラシ毛15の毛先からなる立体形状が芯部14の先端に向けて先細りとなる錘形状を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が手指により保持する保持部と、該保持部から1軸方向に延びる軸部と、該軸部の先端に設けられた塗布部と、を備え、前記塗布部は、前記軸部の先端から延びて弧状に湾曲した芯部と、湾曲した前記芯部全体に略全周囲に突出するように配設された多数のブラシ毛と、を有するマスカラ塗布具であって、
前記芯部の先端が前記軸部の延長上に一致するように配置されるとともに、前記芯部の先端側の略全周囲に突出した多数の前記ブラシ毛の毛先からなる立体形状が前記芯部の先端に向けて先細りとなる錘形状を有することを特徴とするマスカラ塗布具。
【請求項2】
前記塗布部が、前記ブラシ毛を芯材間に配置して捻られた捻りブラシからなり、前記錘形状が、前記芯材を複数回転以上捻られた区間に配設された前記ブラシ毛により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマスカラ塗布具。
【請求項3】
先端側を除く前記軸部に配設された多数の前記ブラシ毛の毛先からなる立体形状が、前記芯部の長手方向に沿って凸部と凹部とを繰り返す波形の輪郭を有し、複数の前記凸部における頂部を結ぶ仮想曲線が前記芯部の湾曲形状と同じに形成されていることをと特徴とする請求項1又は2に記載のマスカラ塗布具。
【請求項4】
前記波形の前記凸部と前記凹部との高低差が3.9mm以下であることをと特徴とする請求項3に記載のマスカラ塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスカラ塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々の形状の塗布部を備えたマスカラ塗布具が提案されている。
例えば下記特許文献1では、長手方向に対して曲面からなる少なくとも2つ以上の凸部が、軸部材を軸として対称に配置されたブラシ形状を有する化粧料塗布具が提案されていた。この化粧料塗布具では、ブラシ毛が円弧若しくは楕円弧または放物線等の曲面を有していた。
【0003】
また下記特許文献2では、弧状に形成された芯部材に、円弧または楕円弧または放物線等の曲面からなる凸部を2つ以上設けるようにブラシ毛を配設した化粧料塗布具が提案されていた。この化粧料塗布具では、弧状に形成された芯部材にブラシ毛を配設することで、カーブした瞼に生えている睫毛に塗布部を当接させ易くして、煩雑な塗布作業を少なくしたり、睫毛全体に平均的に塗布できるようにしたりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-334094号公報
【特許文献2】特開2009-82554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマスカラ塗布具は睫毛の途中位置から先端側にマスカラ液を容易に塗布できるようにブラシ形状が設けられていた。そのため瞼の睫毛に存在する成人毛や産毛など、どんな成長過程の睫毛にも十分に対応できるものではなかった。また人間の睫毛は瞼の粘膜の中から生え出しているが、睫毛の生え際からマスカラ液を塗布することは難しく、手間を要していた。特に 上下の瞼における鼻側の端部付近の短い睫毛や、その睫毛の粘膜内に存在する根元部分からマスカラ液を塗布することが顕著に手間を要していた。
【0006】
そこで本発明では、瞼の鼻側の端部付近の粘膜内に存在する根元部分から容易にマスカラ液を塗布することができるマスカラ塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のマスカラ塗布具は、使用者が手指により保持する保持部と、保持部から1軸方向に延びる軸部と、軸部の先端に設けられた塗布部と、を備え、塗布部は、軸部の先端から延びて弧状に湾曲した芯部と、湾曲した芯部全体に略全周囲に突出するように配設された多数のブラシ毛と、を有するマスカラ塗布具であり、芯部の先端が軸部の延長上に一致するように配置されるとともに、芯部の先端側の略全周囲に突出した多数のブラシ毛の毛先からなる立体形状が芯部の先端に向けて先細りとなる錘形状を有することを特徴としている。
【0008】
本発明のマスカラ塗布具では、塗布部がブラシ毛を芯材間に配置して捻られた捻りブラシからなり、錘形状が、芯材を複数回転以上捻られた区間に配設されたブラシ毛により形成されているのがよい。
【0009】
本発明のマスカラ塗布具では、前端側を除く軸部に配設された多数のブラシ毛の毛先からなる立体形状が、芯部の長手方向に沿って凸部と凹部とを繰り返す波形の輪郭を有し、複数の凸部の頂部を結ぶ仮想曲線が芯部の湾曲形状と同じに形成されているのがよい。
その場合、凸部と凹部との高低差が3.9mm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマスカラ塗布具によれば、芯部の先端が軸部の延長上に一致するように配置されているので、使用者が保持部を保持して塗布部を上下の瞼の縁に近接させる際、塗布部の先端の位置を使用者が把握しやすいとともに、使用者が保持部を保持した状態で、軸周りに角度がずれていても、塗布部の先端の位置が変化しない。そのため塗布部の先端を上下の瞼の鼻側の端部近傍に接近させ易い。
【0011】
しかも芯部の先端側の略全周囲に突出した多数のブラシ毛の毛先からなる立体形状が、芯部の先端に向けて先細りとなる錘形状を有するので、先端付近のブラシ毛が芯部の先端側程短くなって毛先が一定勾配で傾斜している。そのため塗布部の先端側を瞼の鼻側の端部近傍に接近させたとき、塗布部の先端側のブラシ毛の毛先を端部近傍の瞼の縁に沿って配置させ易い。
従って、瞼の鼻側の端部付近における粘膜内に並んで存在する睫毛の根元部分から容易にマスカラ液を塗布することができるマスカラ塗布具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るマスカラ塗布具を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るマスカラ塗布具の塗布部の先端側を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
図1は本実施形態のマスカラ塗布具を示す側面図であり、
図2はマスカラ塗布具の塗布部の先端側を示す部分拡大図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のマスカラ塗布具10は、使用者が手指により保持する保持部11と、保持部11から軸線L方向に直線的に延びる軸部12と、軸部12の先端に設けられた塗布部13と、を備えている。
【0015】
塗布部13は、軸部12の先端から円弧、楕円弧、放物線等の弧状に湾曲して延びる芯部14と、芯部14から略直交方向に突出するように、芯部14に沿って配設された多数のブラシ毛15と、を有している。
【0016】
芯部14は、成人の上下の瞼の粘膜の形状に略対応した湾曲形状を有し、その湾曲部分の幅が成人の上下の瞼の粘膜の幅と同等に形成されている。
この塗布部13では、芯部14の先端が軸部12の延長上、好ましくは軸L上に一致するように配置されている。
【0017】
本実施形態の塗布部13は、金属細線等からなり先端で連結した一対の芯材14a,14a間に多数のブラシ毛15が連続して配置されて捻られることで形成された捩りブラシからなる。
この塗布部13では、芯部14の湾曲部分の全体に連続するようにブラシ毛15が配置され、各ブラシ毛15が芯部14に対して略直交方向両側に放射状に突出している。芯材14a,14aが捩られることで、多数のブラシ毛15がらせん状に略全周に突出して配置されている。そのため芯部14の周囲の略全周囲に配設された多数のブラシ毛15の毛先が立体形状を有している。
【0018】
多数のブラシ毛15の毛先からなる立体形状は、概略で芯部14を中心とした回転体形状を有する。
実施形態では、芯部14の先端側の略全周囲において 一対の芯材14a,14aを複数回転以上捻られた区間に配設された多数のブラシ毛15の毛先からなる立体形状が、芯部14の先端に向けて先細りとなる錘形状を有している。錘形状としては、円錐形状であっても、多角錘形状であってもよいが、本実施形態では角錐形状の所謂ピラミッド状に形成されている。
【0019】
芯部14の先端側の全周囲に角錐形状を形成するには、例えば、ろくろを使って仕上げる陶芸の一輪挿しのようにすることで形成することができる。
【0020】
先端側を除く芯部14の周囲の立体形状では、芯部14の長手方向に沿って3~5個の略同形状の凸部16及び凹部17が繰り返して設けられていて、波側の側周囲から見た輪郭形状が波形を有している。各凸部16の輪郭が円弧、楕円弧、放物線等の凸曲線に形成されて、隣接する凸部16間の凹部17も円弧、楕円弧、放物線等の凸曲線に形成されている。
【0021】
本実施形態で使用するブラシ毛15としては、ストレート状のナイロン毛を用いることができる。
従来よりコーム型の構造は存在するが、本実施形態では、コーム型ではなく芯材14にこのようなナイロン毛を付けることで、マスカラ液18をたくさん抱き込んで保持し易くでき、それをくまなく産毛のような柔らかくて細い、生まれたての睫毛にまで塗布することができるようにしている。また、粘膜構造に特に適したマスカラ塗布具であるため、コーム型よりも粘膜部分への肌当たりが優しく、傷つけ難くできるからである。
【0022】
本実施形態の立体形状の輪郭の芯部14からの距離、即ち、芯部14から直交方向に突出した多数のブラシ毛15の突出長さは、0.1mm~4mmとするのがよい。芯部14からのブラシ毛の突出長さが過剰に長いと、マスカラ液18を塗布する際、塗布部13を睫毛の根元に接近させ難くなる。一方、過剰に短いと、マスカラ液18を抱き込む含力が弱まり塗布に手間を要する。このため、適度な長さが必要である。
【0023】
また本実施形態では、立体形状の輪郭の凹部17と凸部16とが交互に繰り返される波形の高低差、詳細には各凸部16における芯部14から最も離間した距離、即ち芯部14から直交方向に最大に突出したブラシ毛15の長さと、各凹部17における芯部14から最も接近した距離、即ち芯部14から直交方向に最小に突出したブラシ毛15の長さと、の最大幅を3.9mm以下としている。
【0024】
波形の高低差が最大幅が過剰に大きいと、各凸部16の立体形状における曲率が大きくなる結果、瞼の縁に近接させられる領域が狭くなり、マスカラ液18を睫毛の根元部分に塗布できる範囲が狭くなる。
一方、波形の高低差が過剰に小さいと、マスカラ液18を塗布する際に塗布部13にマスカラ液18を蓄える量が少なくなり、図示しない容器内に収容されたマスカラ液18に頻繁に接触させなければならず、塗布操作に手間を要する。
【0025】
さらに塗布部13を構成する多数本のブラシ毛15の立体形状の輪郭は凹部17と凸部16とが交互に繰り返される波形を有するが、複数の凸部16における芯部14周りの同一位相における各凸部16の頂部を結ぶ仮想曲線Cが、芯部14の湾曲形状と同じ形状に略平行となるように形成されている。
【0026】
以上のような本実施形態のマスカラ塗布具10によれば、芯部14の先端が軸部12の延長上に一致するように配置されているので、使用者が保持部11を保持して塗布部13を上下の瞼の縁に近接させる際、塗布部13の先端の位置を使用者が把握しやすいとともに、使用者が保持部11を保持した状態で、軸周りに角度がずれていても、塗布部13の先端の位置が変化しない。そのため塗布部13の先端を上下の瞼の鼻側の端部近傍に接近させ易い。
【0027】
また芯部14の先端側の略全周囲に配設された多数のブラシ毛15の毛先からなる立体形状が、芯部14の先端に向けて先細りとなる錘形状を有するので、先端付近のブラシ毛15が芯部14の先端側程短くなって毛先が一定勾配で傾斜している。そのため塗布部13の先端側を上下の瞼の鼻側の端部近傍に接近させたとき、塗布部13の先端側のブラシ毛15の毛先を端部近傍の瞼の縁に沿って配置させ易い。
従って、上下の瞼の鼻側の端部付近における粘膜内に並んで存在する睫毛の根元部分から容易にマスカラ液18を塗布することができる。
【0028】
また本実施形態のマスカラ塗布具10においては、人間の瞼の粘膜は平均2mm程度であるが、この粘膜の形状に沿わせているので、本当の根元の根元部分の睫毛の生え際からマスカラ液18を塗布できる。本実施形態では、瞼の粘膜の形状に沿った弓を描いており、その粘膜の厚みにフィットするようにブラシ毛15を設けていて、さらにブラシ毛15に凸凹形状を付けてマスカラ液18を含みやすくしている。しかも先端先細りの所謂ピラミッド型にすることにより、従来届かなかった目頭の産毛部分に直接届くように構造している。つまり最大限に瞼の粘膜に適した構成にしているため、粘膜から生え出ている睫毛の生え際から塗布することが可能である。
【0029】
また本実施形態のマスカラ塗布具10では、塗布部13がブラシ毛15を一対の芯材14a,14a間に配置して捻られた捻りブラシからなり、錘形状が、一対の芯材14a,14aを複数回転以上捻られた区間に配設されたブラシ毛15により形成されている。そのため塗布部13の錘形状の先端部分において、十分な量のブラシ毛15を芯材14a,14a周囲の全方向に突出させることができる。これにより塗布時における軸周りの角度が多少ずれたとしても、上下の瞼における鼻側の端部付近の粘膜内に存在する睫毛の根元部分により容易にマスカラ液18を塗布することができる。
【0030】
さらに本実施形態のマスカラ塗布具10では、塗布部13に配設された多数のブラシ毛15の毛先からなる立体形状の輪郭が、芯部14の長手方向に沿って凹凸を繰り返す波形を有しているので、塗布部13の立体形状をストレートの円柱形状に形成する場合に比べて、マスカラ液18を塗布部13に蓄え易くできる。しかも複数の凸部16の頂部を結ぶ仮想曲線Cが芯部14の湾曲形状と同等に設けられているため、塗布部13のより広い範囲を瞼の縁に存在するより多くの睫毛に接触させて纏めて塗布し易くでき、睫毛への塗布操作の手間を省き易い。
【0031】
特に波形の凹部17と凸部16との最大幅を3.9mm以下にすれば、塗布部13のより広い範囲を瞼の縁の粘膜内に存在するより多くの睫毛の根元部分に接触させ易く、粘膜内のより多くの睫毛の根元部分に纏めてマスカラ液18を塗布し易くでき、塗布操作の手間を一層省くことができる。
【符号の説明】
【0032】
10 マスカラ塗布具
11 保持部
12 軸部
13 塗布部
14 芯部
15 ブラシ毛
16 凸部
17 凹部
L 軸線
C 仮想曲線