(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136853
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220913BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20220913BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20220913BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/30 102
G01B11/06 H
E04B1/76 400G
E04B1/76 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036657
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 将次郎
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健資
(72)【発明者】
【氏名】中島 正人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】北野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】染谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】海邊 輝
(72)【発明者】
【氏名】友行 英二
【テーマコード(参考)】
2E001
2F065
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA14
2E001GA06
2E001HD03
2E001QA02
2F065AA04
2F065AA30
2F065AA50
2F065BB17
2F065CC14
2F065CC31
2F065FF04
2F065FF44
2F065JJ26
2F065QQ06
2F065QQ08
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065SS01
2F065TT03
(57)【要約】
【課題】より高精度に被覆部材の施工位置を検出することができる情報処理装置を得る。
【解決手段】情報処理装置10は、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられた後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる座標情報を取得する取得部11Aと、座標情報により導出された表面の粗さの度合いを示す表面粗さ度が第1閾値以上である領域を被覆領域として検出する検出部11Bと、検出部11Bによって検出された被覆領域の位置を表示部15により表示する制御を行う制御部11Cと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられた後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる座標情報を取得する取得部と、
前記座標情報により導出された表面の粗さの度合いを示す表面粗さ度が第1閾値以上である領域を前記被覆領域として検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記被覆領域の位置を表示部により表示する制御を行う制御部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられる前後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる反射強度情報及び色情報の何れか一方の物理量を取得する取得部と、
前記被覆部材が設けられる前後の前記物理量の変化量が第1閾値以上である領域を前記被覆領域として検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記被覆領域の位置を表示部により表示する制御を行う制御部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記被覆領域を含む領域における前記被覆部材が設けられる前後の前記点群データに含まれる座標情報を取得し、
前記検出部は、前記前後の点群データに含まれる座標情報を用いて、前記被覆領域における前記被覆部材の厚さを更に検出し、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記被覆部材の厚さが、第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域と、で異なる状態で前記表示部により表示する制御を行う、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2閾値未満の厚さの領域については、当該第2閾値との差分を前記表示部により表示する制御を行う、
請求項3に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設業での3次元スキャナ(以下、「3Dスキャナ」ともいう。)による3次元撮影は、土木分野と同様に、屋外から建物の躯体及び外装や、設備類を対象として行われている。また、当該3次元撮影は、半屋外(目隠し壁で隠れた屋上、ドライエリア、ピロティ等)や屋内においても、建物の躯体及び内装や、設備類を対象に行われている。
【0003】
この3Dスキャナによる3次元撮影によって取得した点群データは、パーソナルコンピュータ等により、現地及び現況の確認を行うといった活用が行われている。
【0004】
ところで、一般住宅や集合住宅において、一例として
図16に示す、断熱工事である現場発泡ウレタン吹き付け工事の品質管理が良質な住居環境を確保するための重要な要素となっている。この現場発泡ウレタンに関して対象とされている品質管理には、発泡ウレタンによる被覆位置の管理、及び被覆された発泡ウレタンの厚さの管理が含まれる。これらの被覆位置及び厚さの管理のために、従来、一例として
図17に示すウレタン厚さ計測器を用いた検査、及び検査後の品質記録に関する書面の作成等といった多くの工数が生じている。なお、この問題は、発泡ウレタンによる被覆に限らず、建築で用いられる他の被覆部材についても共通の問題である。
【0005】
この問題を解決するために適用することのできる、上述した3Dスキャナによって得られる点群データを利用する技術として、特許文献1には、対象部位に施工した被覆材の三次元形状を計測する方法が開示されている。
【0006】
この計測方法は、前記被覆材を施工する前の前記対象部位の表面の三次元形状を含む施工前形状を取得する工程と、前記対象部位に前記被覆材を施工する工程と、を備えている。また、この計測方法は、前記被覆材を施工中または施工後の前記被覆材の表面の三次元形状を含む施工形状を取得する工程を備えている。そして、この計測方法は、前記施工前形状と施工形状の位置合わせを行う工程と、前記施工前形状と前記施工形状から、前記被覆材の表面および前記被覆材と前記対象部位との接触面からなる領域形状を算出する工程と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を被覆部材の位置を検出するために適用した場合、被覆部材の施工前後の点群データによる位置座標の点毎の差分に基づいて検出することになる。このため、この技術では、被覆部材の施工前後における3Dスキャナによる3次元撮影の位置がずれてしまった場合、当該ずれの量に応じて被覆部材の位置の検出精度が低下する場合がある、という問題点があった。
【0009】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、より高精度に被覆部材の施工位置を検出することができる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置は、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられた後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる座標情報を取得する取得部と、前記座標情報により導出された表面の粗さの度合いを示す表面粗さ度が第1閾値以上である領域を前記被覆領域として検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記被覆領域の位置を表示部により表示する制御を行う制御部と、を備えている。
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられた後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる座標情報を取得し、当該座標情報により導出された表面の粗さの度合いを示す表面粗さ度が第1閾値以上である領域を被覆領域として検出し、検出した被覆領域の位置を表示することで、より高精度に被覆部材の施工位置を検出することができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置は、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられる前後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる反射強度情報及び色情報の何れか一方の物理量を取得する取得部と、前記被覆部材が設けられる前後の前記物理量の変化量が第1閾値以上である領域を前記被覆領域として検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記被覆領域の位置を表示部により表示する制御を行う制御部と、を備えている。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられる前後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる反射強度情報及び色情報の何れか一方の物理量を取得し、被覆部材が設けられる前後の上記物理量の変化量が第1閾値以上である領域を被覆領域として検出し、検出した被覆領域の位置を表示することで、より高精度に被覆部材の施工位置を検出することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置であって、前記取得部が、前記被覆領域を含む領域における前記被覆部材が設けられる前後の前記点群データに含まれる座標情報を取得し、前記検出部が、前記前後の点群データに含まれる座標情報を用いて、前記被覆領域における前記被覆部材の厚さを更に検出し、前記制御部が、前記検出部によって検出された前記被覆部材の厚さが、第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域と、で異なる状態で前記表示部により表示する制御を行うものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、被覆領域を含む領域における被覆部材が設けられる前後の点群データに含まれる座標情報を用いて、被覆領域における被覆部材の厚さを更に検出し、検出した被覆部材の厚さが、第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域と、で異なる状態で表示することで、被覆部材の厚さを容易に把握することができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項3に記載の情報処理装置であって、前記制御部が、前記第2閾値未満の厚さの領域については、当該第2閾値との差分を前記表示部により表示する制御を行うものである。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、上記第2閾値未満の厚さの領域については、当該第2閾値との差分を表示することで、被覆部材の厚さを、より容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、より高精度に被覆部材の施工位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る3Dスキャナの構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係るスキャン情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る被覆情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の説明に供する図であり、左図は被覆部材の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図であり、右図は非被覆状態における壁面の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の説明に供する図であり、左図は被覆部材の表面状態及び法線方向の状態の一例を示す側面図であり、右図は非被覆状態における壁面の表面状態及び法線方向の状態の一例を示す側面図である。
【
図8】実施形態に係る3Dスキャナによる3次元撮影の状態の一例を示す側面図である。
【
図9】第1実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係る第1提示画面の一例を示す正面図である。
【
図11】実施形態に係る第2提示画面の一例を示す正面図である。
【
図12】第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の他の例の説明に供する図であり、左図は被覆部材の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図であり、右図は非被覆状態における壁面の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図である。
【
図13】第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の他の例の説明に供する図であり、左図は被覆部材の表面の厚み方向のばらつきの状態の一例を示す側面図であり、右図は非被覆状態における壁面の厚み方向のばらつきの状態の一例を示す側面図である。
【
図14】第2実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】第2実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】従来技術の説明に供する図であり、現場発泡ウレタン吹き付け工事の様子の一例を示す図である。
【
図17】従来技術の説明に供する図であり、ウレタン厚さ計測器を用いた検査の様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
【0022】
まず、
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の構成を説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理システム90のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、
図2は、実施形態に係る3Dスキャナ50の構成の一例を示す斜視図である。更に、
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理システム90は、情報処理装置10及び3Dスキャナ50を含んで構成されている。なお、情報処理装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の汎用又は専用の情報処理装置が挙げられる。
【0024】
本実施形態に係る情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0025】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、情報処理プログラム13Aが記憶されている。情報処理プログラム13Aは、情報処理プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの情報処理プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、情報処理プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、情報処理プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0026】
また、記憶部13には、スキャン情報データベース13B及び被覆情報データベース13Cが記憶される。なお、スキャン情報データベース13B及び被覆情報データベース13Cについては、詳細を後述する。
【0027】
一方、
図1に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52及び記憶部58を含んで構成されている。なお、図示は省略するが、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52により3次元撮影を行う際に当該スキャナ本体52による撮影方向を変化させるためのモータや、当該モータ、スキャナ本体52等の各部の作動を制御する制御部等も含まれている。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、3脚とされた脚部60の上部にスキャナ本体52が設けられており、スキャナ本体52は、脚部60の上部において、上述したモータの駆動により撮影方向が変更可能とされている。なお、脚部60は3脚には限らないことは言うまでもない。
【0029】
本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52からレーザ光を射出し、対象物に反射して返ってくるまでの時間から距離を算出する一方、スキャナ本体52の移動方向からレーザ光の射出角度を算出する。そして、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、これらの算出値を用いて3次元位置を特定する、所謂タイムオブフライト方式のものとされている。但し、3Dスキャナ50による3次元位置の特定方式は、これに限るものではない。例えば、スキャナ本体52から複数に変調させたレーザ光を射出し、対象物から戻ってきた拡散反射成分の位相差により対象物との距離を求め、当該距離とレーザ光の射出角度から3次元位置を特定する、所謂フェイズシフト方式のものを適用する形態としてもよい。
【0030】
また、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、点群データとして、各点の3次元位置の座標を示す座標情報の他、対応する点のレーザ光の反射強度を示す反射強度情報、及び対応する点の色を示す色情報が取得される。そして、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、取得した座標情報、反射強度情報、及び色情報が点群データにおける点毎に関連付けられて記憶部58に記憶される。
【0031】
なお、本実施形態に係る情報処理システム90では、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を有線通信によって情報処理装置10に送信する形態とされているが、これに限るものではない。例えば、無線通信によって、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に送信する形態としてもよい。また、記憶部58を3Dスキャナ50から着脱可能な可搬型の記憶媒体としておき、当該記憶媒体を介して、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に転送する形態としてもよい。更に、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に直接送信する形態には限らず、例えば、クラウドサーバを経由して情報処理装置10に送信する形態としてもよい。
【0032】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、取得部11A、検出部11B、及び制御部11Cを含む。情報処理装置10のCPU11が情報処理プログラム13Aを実行することで、取得部11A、検出部11B、及び制御部11Cとして機能する。
【0033】
本実施形態に係る取得部11Aは、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられた後の3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた点群データに含まれる座標情報を取得する。
【0034】
また、本実施形態に係る検出部11Bは、上記座標情報により導出された表面の粗さの度合いを示す表面粗さ度が第1閾値以上である領域を被覆領域として検出する。
【0035】
なお、本実施形態では、第1閾値として、上記表面粗さ度が当該値以上である場合に、被覆部材が存在すると見なすことのできる値として、予め実験やコンピュータ・シミュレーション等によって得られた値を適用している。但し、この形態に限るものではない。例えば、情報処理システム90に要求される被覆部材の検出精度、3次元撮影時における撮影対象領域と3Dスキャナ50との距離等に応じて、第1閾値を予めユーザに設定させる形態としてもよい。
【0036】
そして、本実施形態に係る制御部11Cは、検出部11Bによって検出された被覆領域の位置を表示部15により表示する制御を行う。特に、本実施形態に係る制御部11Cは、被覆領域の位置を他の部材の領域と区別して表示部15により表示する制御を行う。
【0037】
また、本実施形態に係る取得部11Aは、上記被覆領域を含む領域における被覆部材が設けられる前後の点群データに含まれる座標情報を取得する。また、本実施形態に係る検出部11Bは、当該前後の点群データに含まれる座標情報を用いて、被覆領域における被覆部材の厚さを更に検出する。そして、本実施形態に係る制御部11Cは、検出部11Bによって検出された被覆部材の厚さが、第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域と、で異なる状態で表示部15により表示する制御を行う。特に、本実施形態に係る制御部11Cは、第2閾値未満の厚さの領域については、当該第2閾値との差分を表示部15により表示する制御を行う。
【0038】
なお、本実施形態では、第2閾値として、検出部11Bで検出された被覆部材の厚さが当該値未満である場合に、当該被覆部材に要求される断熱効果が得られないと見なせる値として、予め実験やコンピュータ・シミュレーション等により得られた値を適用している。但し、この形態に限るものではない。例えば、情報処理システム90に要求される被覆部材の厚さの重要度、3次元撮影時における撮影対象領域と3Dスキャナ50との距離等に応じて、第2閾値を予めユーザに設定させる形態としてもよい。
【0039】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bについて説明する。
図4は、実施形態に係るスキャン情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0040】
図4に示すように、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、日時、座標、反射強度、及び色の各情報が関連付けられて記憶される。
【0041】
上記日時は、3Dスキャナ50によって3次元撮影が行われた日時を示す情報である。また、上記座標は、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた各点の位置の座標を示す、上述した座標情報であり、上記反射強度は、対応する点における、上述した反射強度情報であり、上記色は、対応する点における、上述した色情報である。即ち、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた座標情報、反射強度情報、及び色情報の点群データが撮影した日時毎に登録されるものである。
【0042】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る被覆情報データベース13Cについて説明する。
図5は、実施形態に係る被覆情報データベース13Cの構成の一例を示す模式図である。
【0043】
図5に示すように、本実施形態に係る被覆情報データベース13Cは、座標、被覆属性、及び推定厚さの各情報が関連付けられて記憶される。
【0044】
上記座標は、スキャン情報データベース13Bの座標と同一の情報であり、上記被覆属性は、対応する座標が示す点の位置に被覆部材が存在していると推定されるか否かを示す情報である。そして、上記推定厚さは、対応する座標が示す点の位置に被覆部材が存在していると推定される場合における、当該被覆部材の厚さの推定値を示す情報である。なお、
図5に示すように、本実施形態では、上記被覆属性として、被覆部材が存在すると推定される場合は「有」を示す情報を適用し、被覆部材が存在すると推定されない場合は「無」を示す情報を適用しているが、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0045】
次に、
図6及び
図7を参照して、本実施形態に係る表面粗さ度の導出方法について説明する。
図6は、第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の説明に供する図であり、左図は被覆部材84の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図であり、右図は非被覆状態における壁面の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図である。また、
図7は、第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の説明に供する図であり、左図は被覆部材84の表面状態及び法線方向の状態の一例を示す側面図であり、右図は非被覆状態における壁面の表面状態及び法線方向の状態の一例を示す側面図である。
【0046】
一例として
図6に示すように、まず、点群データによって表される、表面粗さ度の導出対象とする領域(3次元撮影の対象とされた領域であり、以下、「撮影対象領域」という。)82を、予め定められた第1サイズのボクセル82Aで分割する。なお、後述するように、ボクセル82Aは、被覆部材が施工されているか否かを判定する単位を示すものである一方、CPU11による処理速度等を考慮すると、一辺が100mm~1000mmとするのが好ましく、本実施形態では、一辺が500mmの正方形をボクセル82Aとして適用する。以下では、ここでの分割で得られたボクセル82Aを「初期ボクセル82A」という。
【0047】
次いで、初期ボクセル82Aの各々毎に、点群データの座標情報を用いて、最小二乗法により各初期ボクセル82Aの全体的な面(以下、「初期ボクセル面」という。)を推定する。そして、一例として
図7に示すように、推定した初期ボクセル面の各々毎に、当該初期ボクセル面の全体的な法線方向84Aを推定する。以下、初期ボクセル82Aの各々毎の法線方向84Aを、「初期ボクセル法線方向84A」という。
【0048】
次いで、
図6に示すように、初期ボクセル82Aの各々を、予め定められた第2サイズのボクセル(以下、「再分割ボクセル」という。)82Bで分割する。そして、再分割ボクセル82Bの各々毎に、初期ボクセル面と同様に、各再分割ボクセル82Bの面(以下、「再分割ボクセル面」という。)を推定し、一例として
図7に示すように、推定した再分割ボクセル面の各々毎に、当該再分割ボクセル面の法線方向84Bを推定する。以下、再分割ボクセル82Bの各々毎の法線方向84Bを、「再分割ボクセル法線方向84B」という。なお、被覆部材による施工前の非被覆面の性状、被覆部材としてウレタンを用いた場合の当該被覆部材の施工後の表面の性状、及び3Dスキャナ50による3次元撮影時の一般的な解像度等を考慮すると、上記第2サイズは、一辺が10mm~100mmが好ましい。本実施形態では、一辺が50mmの正方形を上記第2サイズとして適用する。
【0049】
次いで、再分割ボクセル82Bの再分割ボクセル法線方向84Bの各々を用いて、初期ボクセル82Aの各々の代表的な再分割ボクセル法線方向(以下、「代表法線方向」という。)を統計的に導出する。なお、本実施形態では、当該統計的な代表法線方向として、対応する初期ボクセル82Aに含まれる再分割ボクセル法線方向84Bの標準偏差値を適用しているが、これに限るものではない。例えば、当該再分割ボクセル法線方向84Bの分散値、平均値、最大値、最小値、及び中央値の何れかを、上記統計的な代表法線方向として適用する形態としてもよい。
【0050】
最後に、以上の処理によって得られた初期ボクセル法線方向84A及び代表法線方向を用いて、初期ボクセル82Aの各々毎に、初期ボクセル法線方向84Aと代表法線方向との差分を表面粗さ度として導出する。
【0051】
以上の処理によって得られる表面粗さ度は、
図7からも明らかなように、被覆部材84が施工されている初期ボクセル82Aの表面については、被覆部材84が施工されていない表面に比較して、相対的に大きな値となる。従って、この表面粗さ度を用いることで、被覆部材84の施工の有無を高精度に推定することができる。
【0052】
次に、
図8~
図11を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の作用を説明する。
図8は、実施形態に係る3Dスキャナ50による3次元撮影の状態の一例を示す側面図である。また、
図9は、第1実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
一例として
図8に示すように、3次元撮影を行う撮影者は、対象とする建物(以下、「対象建物」という。)80の内部における、被覆部材84が施工される前の撮影対象領域82の3次元撮影が可能な位置に3Dスキャナ50を設置して3次元撮影を実施する。なお、錯綜を回避するために、以下では、3Dスキャナ50による1回のみの3次元撮影で撮影対象領域82を網羅できる場合について説明するが、これに限るものではない。3Dスキャナ50による1回のみの3次元撮影では撮影対象領域82を網羅できない場合は、複数回に分けて3次元撮影を実施し、各3次元撮影で得られた点群データを合成する形態としてもよい。
【0054】
この3次元撮影によって、撮影対象領域82における、上述した座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報が得られ、一時的に記憶部58に記憶される。
【0055】
その後、撮影者は、3Dスキャナ50に記憶された座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報を情報処理装置10に送信する操作を行う。
【0056】
上記各情報が3Dスキャナ50から受信されると、情報処理装置10では、受信した各情報が、その時点の日時を示す日時情報と共にスキャン情報データベース13Bに登録される。この情報の登録により、一例として
図4に示されるスキャン情報データベース13Bにおける1回目の情報(被覆部材84が施工される前の情報であり、以下、「施工前情報」という。)が登録される。
【0057】
一方、撮影者は、被覆部材84が施工された後に、被覆部材84が施工される前と同様に、撮影対象領域82の3次元撮影を行った後、当該3次元撮影によって得られた座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報を情報処理装置10に送信する操作を行う。
【0058】
これに応じて、情報処理装置10では、被覆部材84が施工される前と同様に、受信した各情報が、その時点の日時を示す日時情報と共にスキャン情報データベース13Bに登録される。この情報の登録により、一例として
図4に示されるスキャン情報データベース13Bにおける2回目の情報(被覆部材84が施工された後の情報であり、以下、「施工後情報」という。)が登録され、スキャン情報データベース13Bが最終的に構築されることになる。
【0059】
この状態において、情報処理装置10のユーザは、情報処理プログラム13Aの実行を開始する指示入力を、入力部14を介して行う。この指示入力に応じて、情報処理装置10のCPU11が当該情報処理プログラム13Aを実行することにより、
図9に示す情報処理が実行される。
【0060】
図9のステップ100で、CPU11は、スキャン情報データベース13Bから全ての情報(以下、「スキャン情報」という。)を読み出す。
【0061】
ステップ102で、CPU11は、何れか1つの初期ボクセル82A(以下、「処理対象ボクセル」という。)を対象として、読み出したスキャン情報の施工後情報における座標情報を用いて、上述した方法によって表面粗さ度を導出する。なお、本実施形態では、上記表面粗さ度の導出の際に、壁と当該壁に隣接する壁との境界領域、壁と当該壁に隣接する天井との境界領域、及び壁と当該壁に隣接する床面との境界領域の各入隅の領域を除外するものとしているが、これに限るものではない。例えば、これらの入隅に加えて、各種出隅についても、上記表面粗さ度の導出の際に除外する形態としてもよい。
【0062】
ステップ104で、CPU11は、導出した表面粗さ度が上述した第1閾値TH1以上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ106に移行する。
【0063】
ステップ106で、CPU11は、処理対象ボクセルに含まれる全ての点に対応する被覆属性として「有」を示す情報を、対応する座標情報と共に被覆情報データベース13Cに記憶する。
【0064】
ステップ108で、CPU11は、スキャン情報における施工前情報及び施工後情報の各々における座標情報を用いて、処理対象ボクセルに含まれる点の各々における被覆部材84の厚さの推定値を、当該点の奥行き方向の座標値の差分を算出することで導出する。
【0065】
ステップ110で、CPU11は、導出した被覆部材84の厚さの推定値を、対応する点の座標情報に関連付けて被覆情報データベース13Cに記憶し、その後にステップ114に移行する。
【0066】
一方、ステップ104において否定判定となった場合はステップ112に移行する。ステップ112で、CPU11は、処理対象ボクセルに含まれる全ての点に対応する被覆属性として「無」を示す情報を、対応する座標情報と共に被覆情報データベース13Cに記憶し、その後にステップ114に移行する。
【0067】
ステップ114で、CPU11は、ステップ102~ステップ112の処理が全ての初期ボクセル82Aについて終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ102に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ116に移行する。なお、ステップ102~ステップ114の処理を繰り返し実行する際に、CPU11は、それまでに処理対象としなかった初期ボクセル82Aを処理対象ボクセルとする。以上の処理により、一例として
図5に示される被覆情報データベース13Cが構築されることになる。
【0068】
ステップ116で、CPU11は、被覆情報データベース13Cから全ての情報(以下、「被覆情報」という。)を読み出す。
【0069】
ステップ118で、CPU11は、読み出した被覆情報に含まれる被覆属性に「有」を示す情報があるか否かを判定し、肯定判定となった場合は、撮影対象領域82の少なくとも一部に被覆部材84が施工されていると見なしてステップ120に移行する。
【0070】
ステップ120で、CPU11は、予め定められた構成とされた第1提示画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ122で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0071】
図10には、本実施形態に係る第1提示画面の一例が示されている。
図10に示すように、本実施形態に係る第1提示画面では、撮影対象領域82を示す画像15Aが表示される。なお、画像15Aは、読み出したスキャン情報における座標情報と、読み出した被覆情報における被覆部材84の推定厚さを示す情報とを用いて、当該推定厚さが上述した第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域とで、異なる濃度となるように表示される。また、画像15Aは、上記推定厚さと、上記第2閾値との差分が大きい点ほど濃度が高くなるように表示される。このため、情報処理装置10のユーザは、第1提示画面を参照することにより、撮影対象領域82に被覆部材84が施工されていることのみならず、推定される被覆部材84の厚さの分布状況も視覚的かつ直感的に把握することができる。なお、第1提示画面の画面構成は
図10に示すものに限らず、例えば、被覆部材84の推定厚さを文字で表示する形態としてもよい。
【0072】
一例として
図10に示す第1提示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示内容を把握した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ122が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0073】
一方、ステップ118において否定判定となった場合、CPU11は、撮影対象領域82に被覆部材84は施工されていないと見なしてステップ124に移行する。
【0074】
ステップ124で、CPU11は、予め定められた構成とされた第2提示画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ126で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0075】
図11には、本実施形態に係る第2提示画面の一例が示されている。
図11に示すように、本実施形態に係る第2提示画面では、被覆部材84による施工が行われていない旨を示すメッセージが表示される。一例として
図11に示す第2提示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示内容を把握した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ126が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられた後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる座標情報を取得する取得部11Aと、座標情報により導出された表面の粗さの度合いを示す表面粗さ度が第1閾値以上である領域を被覆領域として検出する検出部11Bと、検出部11Bによって検出された被覆領域の位置を表示部15により表示する制御を行う制御部11Cと、を備えている。従って、被覆部材の施工前後の点群データによる位置座標の点毎の差分に基づいて被覆領域を検出する場合に比較して、より高精度に被覆部材の施工位置を検出することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、被覆領域を含む領域における被覆部材が設けられる前後の点群データに含まれる座標情報を取得し、当該前後の点群データに含まれる座標情報を用いて、被覆領域における被覆部材の厚さを更に検出し、検出した被覆部材の厚さが、第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域と、で異なる状態で表示部15により表示する制御を行う。従って、被覆部材の厚さを容易に把握することができる。
【0078】
更に、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、上記第2閾値未満の厚さの領域については当該第2閾値との差分を視認可能に表示している。従って、被覆部材の厚さを、より容易に把握することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、表面粗さ度を、点群データにおける点群の法線方向を用いて推定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、一例として
図12に示すように、撮影対象領域82を初期ボクセル82Aに分割し、一例として
図13に示すように、各初期ボクセル82Aの各々毎に、点群データにおける点群の厚さ方向のバラツキを用いて表面粗さ度を推定する形態としてもよい。なお、
図12は、第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の他の例の説明に供する図であり、左図は被覆部材の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図であり、右図は非被覆状態における壁面の表面状態及びボクセル分割状態の一例を示す斜視図である。また、
図13は、第1実施形態に係る表面粗さ度の導出方法の他の例の説明に供する図であり、左図は被覆部材の表面の厚み方向のばらつきの状態の一例を示す側面図であり、右図は非被覆状態における壁面の厚み方向のばらつきの状態の一例を示す側面図である。
【0080】
また、本実施形態では、表面粗さ度を、初期ボクセル82Aの各々毎に導出する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、初期ボクセル82Aを適用することなく、撮影対象領域82の全域について表面粗さ度を導出する形態としてもよい。
【0081】
[第2実施形態]
【0082】
本実施形態に係る情報処理システム90は、第1実施形態に係る情報処理システム90に比較して、情報処理プログラムが情報処理プログラム13Aとは異なる処理を実行する情報処理プログラム13D(図示省略。)とされている点が相違している。また、本実施形態に係る情報処理システム90は、第1実施形態に係る情報処理システム90に比較して、情報処理装置10の機能的な構成が相違している。
【0083】
そこで、まず、
図14を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成について説明する。
図14に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、取得部11D、検出部11E、及び制御部11Fを含む。情報処理装置10のCPU11が情報処理プログラム13Dを実行することで、取得部11D、検出部11E、及び制御部11Fとして機能する。
【0084】
本実施形態に係る取得部11Dは、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられる前後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる反射強度情報及び色情報の何れか一方の物理量を取得する。なお、本実施形態では、上記物理量として反射強度情報を適用する場合について説明する。
【0085】
また、本実施形態に係る検出部11Eは、被覆部材が設けられる前後の上記物理量の変化量が第1閾値以上である領域を被覆領域として検出する。
【0086】
なお、本実施形態では、第1閾値として、上記変化量が当該値以上である場合に、被覆部材が存在すると見なすことのできる値として、予め実験やコンピュータ・シミュレーション等によって得られた値を適用している。但し、この形態に限るものではない。例えば、情報処理システム90に要求される被覆部材の検出精度、3次元撮影時における撮影対象領域と3Dスキャナ50との距離等に応じて、第1閾値を予めユーザに設定させる形態としてもよい。
【0087】
そして、本実施形態に係る制御部11Fは、検出部11Eによって検出された被覆領域の位置を表示部15により表示する制御を行う。特に、本実施形態に係る制御部11Fは、被覆領域の位置を他の部材の領域と区別して表示部15により表示する制御を行う。
【0088】
また、本実施形態に係る取得部11Dは、上記被覆領域を含む領域における被覆部材が設けられる前後の点群データに含まれる座標情報を取得する。また、本実施形態に係る検出部11Eは、当該前後の点群データに含まれる座標情報を用いて、被覆領域における被覆部材の厚さを更に検出する。そして、本実施形態に係る制御部11Fは、検出部11Eによって検出された被覆部材の厚さが、第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域と、で異なる状態で表示部15により表示する制御を行う。特に、本実施形態に係る制御部11Fは、第2閾値未満の厚さの領域については、当該第2閾値との差分を表示部15により表示する制御を行う。
【0089】
なお、本実施形態では、第2閾値として、検出部11Eで検出された被覆部材の厚さが当該値未満である場合に当該被覆部材に要求される断熱効果が得られないと見なされる値として、予め実験やコンピュータ・シミュレーション等により得られた値を適用している。但し、この形態に限るものではない。例えば、情報処理システム90に要求される被覆部材の厚さの重要度、3次元撮影時における撮影対象領域と3Dスキャナ50との距離等に応じて、第2閾値を予めユーザに設定させる形態としてもよい。
【0090】
本実施形態に係るスキャン情報データベース13B及び被覆情報データベース13Cの構成は、第1実施形態に記載のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0091】
次に、
図15を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の作用を説明する。
図15は、第2実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。なお、スキャン情報データベース13Bが構築されるまでの流れは第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0092】
スキャン情報データベース13Bが構築された後、情報処理装置10のユーザは、情報処理プログラム13Dの実行を開始する指示入力を、入力部14を介して行う。この指示入力に応じて、情報処理装置10のCPU11が当該情報処理プログラム13Dを実行することにより、
図15に示す情報処理が実行される。
【0093】
図15のステップ200で、CPU11は、スキャン情報データベース13Bから全ての情報(以下、「スキャン情報」という。)を読み出す。
【0094】
ステップ202で、CPU11は、読み出したスキャン情報に含まれる何れか1つの点(以下、「処理対象点」という。)を対象として、処理対象点の施工前情報及び施工後情報の各反射強度情報が示す反射強度の差分を算出する。
【0095】
ステップ204で、CPU11は、算出した差分が上述した第1閾値TH1以上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ206に移行する。
【0096】
ステップ206で、CPU11は、処理対象点に対応する被覆属性として「有」を示す情報を、対応する座標情報と共に被覆情報データベース13Cに記憶する。
【0097】
ステップ208で、CPU11は、スキャン情報における施工前情報及び施工後情報の各々における座標情報を用いて、処理対象点における被覆部材84の厚さの推定値を、当該点の奥行き方向の座標値の差分を算出することで導出する。
【0098】
ステップ210で、CPU11は、導出した被覆部材84の厚さの推定値を、対応する点の座標情報に関連付けて被覆情報データベース13Cに記憶し、その後にステップ214に移行する。
【0099】
一方、ステップ204において否定判定となった場合はステップ212に移行し、CPU11は、処理対象点に対応する被覆属性として「無」を示す情報を、対応する座標情報と共に被覆情報データベース13Cに記憶し、その後にステップ214に移行する。
【0100】
ステップ214で、CPU11は、ステップ202~ステップ212の処理がスキャン情報に含まれる全ての点について終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ202に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ216に移行する。なお、ステップ202~ステップ214の処理を繰り返し実行する際に、CPU11は、それまでに処理対象としなかったスキャン情報における点を処理対象点とする。以上の処理により、一例として
図5に示される被覆情報データベース13Cが構築されることになる。
【0101】
ステップ216で、CPU11は、被覆情報データベース13Cから全ての情報(以下、「被覆情報」という。)を読み出す。
【0102】
ステップ218で、CPU11は、読み出した被覆情報に含まれる被覆属性に「有」を示す情報があるか否かを判定し、肯定判定となった場合は、撮影対象領域82の少なくとも一部に被覆部材84が施工されていると見なしてステップ220に移行する。
【0103】
ステップ220で、CPU11は、第1実施形態において例示した第1提示画面(
図10も参照。)を表示するように表示部15を制御し、ステップ222で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0104】
一例として
図10に示す第1提示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示内容を把握した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ222が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0105】
一方、ステップ218において否定判定となった場合、CPU11は、撮影対象領域82に被覆部材84は施工されていないと見なしてステップ224に移行する。
【0106】
ステップ224で、CPU11は、第1実施形態において例示した第2提示画面(
図11も参照。)を表示するように表示部15を制御し、ステップ226で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0107】
一例として
図11に示す第2提示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示内容を把握した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ226が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0108】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、建物における被覆部材が設けられる領域である被覆領域を含む領域に対する、当該被覆部材が設けられる前後の3次元撮影によって得られた点群データに含まれる反射強度情報及び色情報の何れか一方の物理量(本実施形態では、反射強度情報)を取得する取得部11Dと、被覆部材が設けられる前後の上記物理量の変化量が第1閾値以上である領域を被覆領域として検出する検出部11Eと、検出部11Eによって検出された被覆領域の位置を表示部により表示する制御を行う制御部11Fと、を備えている。従って、被覆部材の施工前後の点群データによる位置座標の点毎の差分に基づいて被覆領域を検出する場合に比較して、より高精度に被覆部材の施工位置を検出することができる。
【0109】
また、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、被覆領域を含む領域における被覆部材が設けられる前後の点群データに含まれる座標情報を取得し、当該前後の点群データに含まれる座標情報を用いて、被覆領域における被覆部材の厚さを更に検出し、検出した被覆部材の厚さが、第2閾値以上の領域と、当該第2閾値未満の領域と、で異なる状態で表示部15により表示する制御を行う。従って、被覆部材の厚さを容易に把握することができる。
【0110】
更に、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、上記第2閾値未満の厚さの領域については当該第2閾値との差分を視認可能に表示している。従って、被覆部材の厚さを、より容易に把握することができる。
【0111】
なお、本実施形態では、本発明の物理量として反射強度情報を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、色情報を、本発明の物理量として適用する形態としてもよい。
【0112】
また、上記各実施形態では特に言及しなかったが、被覆部材の位置の推定結果や、被覆部材の厚さの推定結果を、対象建物の平面図、天伏図、展開図等の各種図面や、報告書等に反映させる形態としてもよい。
【0113】
また、上記各実施形態において、例えば、取得部11A、検出部11B、制御部11C、取得部11D、検出部11E、及び制御部11Fの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0114】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0115】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0116】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0117】
10 情報処理装置
11 CPU
11A 取得部
11B 検出部
11C 制御部
11D 取得部
11E 検出部
11F 制御部
12 メモリ
13 記憶部
13A 情報処理プログラム
13B スキャン情報データベース
13C 被覆情報データベース
13D 情報処理プログラム
14 入力部
15 表示部
15A 画像
15E 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
50 3Dスキャナ
52 スキャナ本体
58 記憶部
60 脚部
80 対象建物
82 撮影対象領域
82A 初期ボクセル
82B 再分割ボクセル
84 被覆部材
84A 初期ボクセル法線方向
84B 再分割ボクセル法線方向
90 情報処理システム