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特開2022-136904化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136904
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
F28D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036731
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】平田 一弘
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蓄放熱における化学蓄熱材の膨張状態を利用するとともに、装置内のデッドスペースを無くし、蓄放熱効率の高い化学蓄熱装置を提供する。
【解決手段】蓄放熱反応により膨張収縮する化学蓄熱材と、化学蓄熱材を充填する充填部11とを有し、化学蓄熱材は充填部11の空間内で膨張することが可能であり、充填部11の容積は化学蓄熱材の膨張後の体積より小さいという化学蓄熱装置及び化学蓄熱材の配置方法を提供する。また、化学蓄熱材の膨張によって容器内部の容積が変化する化学蓄熱材の収容容器を提供する。これによれば、膨張後の化学蓄熱材が、充填部11の容積を適度に満たし、装置内のデッドスペースを無くして省スペース化が可能となる。また、化学蓄熱材が適度に膨張することで化学蓄熱材の表面積が増加し、蓄放熱に係る反応効率が向上する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄放熱反応により膨張収縮する化学蓄熱材と、
前記化学蓄熱材を充填する充填部と、を有し、
前記化学蓄熱材は、充填部の空間内で膨張することが可能であり、
前記充填部の容積は、前記化学蓄熱材の膨張後の体積より小さいことを特徴とする、化学蓄熱装置。
【請求項2】
前記充填部の容積は、前記化学蓄熱材の膨張率に基づいて設定されることを特徴とする、請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項3】
前記充填部には、前記化学蓄熱材を収容する収容容器を配置し、
前記化学蓄熱材を収容する収容部と、前記収容部を形成する本体部と、を備え、
前記本体部には、反応媒体が流通する手段が設けられ、
前記収容部は、前記化学蓄熱材が膨張収縮する体積に合わせて容積が変化することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化学蓄熱装置。
【請求項4】
前記化学蓄熱材の膨張後、前記化学蓄熱材と、前記化学蓄熱材と熱交換を行う熱交換部との間に反応媒体が流通する流路が形成されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の化学蓄熱装置。
【請求項5】
蓄放熱反応により膨張収縮する化学蓄熱材を収容する化学蓄熱材の収容容器であって、
前記化学蓄熱材を収容する収容部と、前記収容部を形成する本体部と、を備え、
前記本体部には、反応媒体が流通する手段が設けられ、
前記収容部は、前記化学蓄熱材が膨張収縮する体積に合わせて容積が変化することを特徴とする、化学蓄熱材の収容容器。
【請求項6】
蓄放熱反応により膨張収縮する化学蓄熱材と、
前記化学蓄熱材を充填する充填部とを有する化学蓄熱装置における化学蓄熱材の配置方法であって、
前記化学蓄熱材は、前記充填部の空間内で膨張することが可能であり、
前記充填部の容積が、前記化学蓄熱材の膨張後の体積より小さいことを特徴とする、化学蓄熱材の配置方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学反応を利用した蓄熱及び放熱を行い、常温での熱エネルギー保管を可能とする化学蓄熱は、エンジンなどの駆動機関のほか、工場や燃焼処理を行う設備(ごみ焼却施設等)など、稼働に際して熱の発生を伴う熱源からの排熱(廃熱)を有効活用する観点から研究開発が進められている。
【0003】
化学蓄熱を行うための化学蓄熱装置は、一般に固体の化学蓄熱材を用い、この化学蓄熱材に熱を加えて生成気体を分離する際の吸熱反応による熱を蓄熱する一方、化学蓄熱材に反応気体を供給して発熱反応を起こすことで、装置外部への放熱が可能となるように構成されている。
【0004】
ここで、化学蓄熱において広く用いられている化学蓄熱材には、蓄放熱において膨張するものがあることが知られている。そのため、化学蓄熱材の膨張に対応するための構造を備える化学蓄熱装置に係る技術が求められている。
例えば、特許文献1には、酸化カルシウム粉体の成形体からなる蓄熱成形体と、蓄熱成形体の外面を覆う蓄熱材拘束カバーと、蓄熱材拘束カバーで覆われた蓄熱成形体を収容する容器と、を備える化学蓄熱装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-120430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される化学蓄熱装置は、蓄放熱に伴う化学蓄熱材の膨張を拘束カバーで抑えるものである。しかし、酸化カルシウム等の化学蓄熱材は、蓄放熱による膨張により体積が増加することで、反応に関与する表面積が増加し、蓄放熱に係る反応効率を高めることができる。このため、特許文献1に記載されるように、化学蓄熱材の膨張を過度に抑え込むことは、反応効率の面から好ましくない。
【0007】
一方、その他の化学蓄熱装置としては、化学蓄熱装置を設計する際に、化学蓄熱材が蓄放熱に伴い膨張することを考慮し、化学蓄熱材が充填される充填スペースを過大に確保することが行われている。
この場合、化学蓄熱材の膨張による反応効率の向上は可能となるが、大きなデッドスペースが生じ、化学蓄熱装置全体の大きさが必要以上に大きく成らざるを得ないという問題がある。
また、化学蓄熱装置内にそのようなデッドスペースが存在すると、化学蓄熱材が熱交換部と接触する部分が制限される。このため、蓄放熱に係る反応効率が低下し、化学蓄熱装置を活用する設備全体における熱エネルギー利用効率をも低下させてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、蓄放熱における化学蓄熱材の膨張状態を利用するとともに、装置内のデッドスペースを無くし、蓄放熱効率の高い化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題について鋭意検討した結果、化学蓄熱装置における蓄熱材充填スペースを膨張後の蓄熱材の体積よりも小さい容積とすること、あるいは、化学蓄熱材の膨張収縮に応じて容積が変化する容器構造とすることで、化学蓄熱材の膨張を抑制することなく、デッドスペースを無くして省スペース化した上で、蓄放熱効率の高い化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法を提供することができることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法である。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の化学蓄熱装置は、蓄放熱反応により膨張収縮する化学蓄熱材と、化学蓄熱材を充填する充填部と、を有し、化学蓄熱材は、充填部の空間内で膨張することが可能であり、充填部の容積は、化学蓄熱材の膨張後の体積より小さいことを特徴とする。
【0011】
この化学蓄熱装置によれば、膨張後の化学蓄熱材が、化学蓄熱材の充填されている充填部の容積を適度に満たすことができる。これにより、装置内のデッドスペースを無くし、化学蓄熱装置全体の省スペース化を実現することができる。
また、化学蓄熱材が適度に膨張することで、化学蓄熱材の表面積を増加させ、蓄放熱に係る反応効率を高めることが可能となる。
更に、化学蓄熱材と、化学蓄熱材と熱交換を行う熱交換部との接触において、化学蓄熱材の膨張状態を利用することで、熱交換部は膨張前に化学蓄熱材が接していた箇所以外の部分においても化学蓄熱材と接触することになる。これにより、化学蓄熱材と熱交換部との接触面積が増加することになり、結果として蓄熱効率や放熱効率が上がり、化学蓄熱装置全体の性能を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、充填部の容積は、化学蓄熱材の膨張率に基づいて設定されることを特徴とする。
この化学蓄熱装置によれば、膨張後の化学蓄熱材が、充填部の容積を最適に満たすことができる。これにより、装置内のデッドスペースを極小にし、更なる化学蓄熱装置全体の省スペース化を実現することができる。
また、化学蓄熱材の膨張が、充填部内で過度に抑え込まれることがないため、化学蓄熱材の膨張による表面積増加の効果を最大限に生かし、蓄放熱に係る反応効率を更に高めることが可能となる。
【0013】
また、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、充填部には、化学蓄熱材を収容する収容容器を配置し、化学蓄熱材を収容する収容部と、収容部を形成する本体部と、を備え、本体部には、反応媒体が流通する手段が設けられ、収容部は、化学蓄熱材が膨張収縮する体積に合わせて容積が変化することを特徴とする。
この化学蓄熱装置によれば、化学蓄熱材を化学蓄熱装置内の充填部に直接充填するのではなく、化学蓄熱材を収容した容器を充填部に配置することで、化学蓄熱装置全体の省スペース化や、化学蓄熱装置の蓄放熱効率を向上させる効果に加えて、化学蓄熱装置への蓄熱材の充填や、化学蓄熱装置からの使用済みの化学蓄熱材の取り出しを容易に行うことが可能となる。
また、化学蓄熱材は蓄放熱を繰り返すことにより微粉化することがある。本発明の化学蓄熱装置においては、化学蓄熱材が微粉化することで体積が収縮した場合、化学蓄熱材を収容した容器内部(収容部)の容積が小さくなることで容器全体の容積が収縮する。したがって、容器の容積が収縮した程度を、化学蓄熱材の劣化状況を判断する指標として利用することも可能となる。
【0014】
更に、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、化学蓄熱材の膨張後、化学蓄熱材と、化学蓄熱材と熱交換を行う熱交換部との間に反応媒体が流通する流路が形成されることを特徴とする。
この化学蓄熱装置によれば、化学蓄熱材が膨張した後も充填部に反応媒体が流通する流路が存在することにより、反応媒体が化学蓄熱材に対して容易に移動(供給あるいは放出)することができる。また、この流路の存在により、充填部の内部に反応媒体を迅速に拡散することができ、局所的な発熱反応が抑制される。
これにより、化学蓄熱材における蓄熱効率や放熱効率が上がり、化学蓄熱装置全体の性能を向上させることができる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の化学蓄熱材の収容容器は、蓄放熱反応により膨張収縮する化学蓄熱材を収容する化学蓄熱材の収容容器であって、化学蓄熱材を収容する収容部と、収容部を形成する本体部と、を備え、本体部には、反応媒体が流通する手段が設けられ、収容部は、化学蓄熱材が膨張収縮する体積に合わせて容積が変化することを特徴とする。
この化学蓄熱材の収容容器によれば、化学蓄熱装置への蓄熱材の充填や、化学蓄熱装置からの使用済みの化学蓄熱材の取り出しを容易に行うことが可能となる。
また、化学蓄熱材の膨張に伴って容器内部(収容部)の容積を変化させることにより、容器内で化学蓄熱材が膨張した場合であっても、容器が変形、破損することがない。このため、化学蓄熱材の膨張状態を容易かつ確実に利用することができ、蓄放熱に係る反応効率について、より一層の向上が可能となる。
更に、膨張により体積が増加した化学蓄熱材が容器の中で抑圧されることで粉状化し、使用寿命を縮めてしまうことを防ぐこともできる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の化学蓄熱材の配置方法は、蓄放熱反応により膨張収縮する化学蓄熱材と、化学蓄熱材を充填する充填部とを有する化学蓄熱装置における化学蓄熱材の配置方法であって、化学蓄熱材は、充填部の空間内で膨張することが可能であり、充填部の容積が、化学蓄熱材の膨張後の体積より小さいことを特徴とする。
【0017】
この化学蓄熱材の配置方法によれば、膨張後の化学蓄熱材が、化学蓄熱材の充填されている充填部の容積を適度に満たすことにより、装置内のデッドスペースを無くし、化学蓄熱装置全体の省スペース化を実現することができる。
また、化学蓄熱材が適度に膨張することで、化学蓄熱材の表面積を増加させ、蓄放熱に係る反応効率を高めることが可能となる。
更に、化学蓄熱材と、化学蓄熱材と熱交換を行う熱交換部との接触において、化学蓄熱材の膨張状態を利用することで、膨張前に化学蓄熱材が接していた箇所以外の部分とも接触させることができるようになる。これにより、化学蓄熱材と熱交換部との接触面積が増加することになり、結果として蓄熱効率や放熱効率が上がり、化学蓄熱装置全体の性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄放熱における化学蓄熱材の膨張状態を利用するとともに、装置内のデッドスペースを無くし、蓄放熱効率の高い化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施態様における化学蓄熱装置全体の概略説明図である。
図2】本発明の第一の実施態様における化学蓄熱装置に係る充填部と、充填部に充填された化学蓄熱材の状態を表す概略説明図である。
図3】本発明の第一の実施態様における化学蓄熱装置に係る充填部と、充填部に充填された化学蓄熱材の状態について、別態様を表す概略説明図である。
図4】本発明の第二の実施態様における化学蓄熱装置の概略説明図である。
図5】本発明の化学蓄熱材の収容容器に係る化学蓄熱材の膨張に伴う容積の変化を表す概略説明図である。
図6】本発明の化学蓄熱材の収容容器の構造における一態様を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法は、エンジンなどの駆動機関のほか、工場や燃焼処理を行う設備(ごみ焼却施設等)など、稼働に際して熱の発生を伴う熱源からの排熱(廃熱)を化学蓄熱材に貯蔵する一方、熱を必要とする際には蓄熱生成物から放熱して熱を利用することに関するものである。なお、本発明の化学蓄熱装置は、所定の位置に固定した状態で熱供給源として利用するものとしてもよく、輸送が可能な装置とし、熱を必要とする熱需要地に輸送して利用するものとしてもよい。
【0021】
また、本発明における化学蓄熱とは、蓄熱時には、化学蓄熱材を加熱して蓄熱生成物と生成気体に分離し、放熱時には、蓄熱生成物と反応気体を反応させて化学蓄熱材を生成するものである。ここで、蓄熱時に発生する生成気体と、放熱時に供給する反応気体は同一種類の物質とすることが好ましい。そして、生成気体を凝縮し反応液として回収する液化工程と、液化工程で得られた反応液を蒸発させて反応気体として利用する気化工程により、化学蓄熱に係る反応が進行し、化学蓄熱材の蓄熱・放熱が可能となる。なお、以下、生成気体と反応気体を「反応媒体」と称することがある。
【0022】
本発明における化学蓄熱に係る一般的な反応としては、例えば、下記式(1)のような反応が例示される。
【数1】
固体である化学蓄熱材ABに熱Qを加えると、固体である蓄熱生成物Aと気体である反応媒体Bを生成し、このときの吸熱反応により蓄熱を行うことができる。この反応は可逆的な平衡反応であり、放熱時には、蓄熱生成物Aと反応媒体Bが反応する。なお、式中の「(s)」は、固体状態を表し、式中の「(g)」は、気体状態であることを表す。
【0023】
ここで、放熱時に蓄熱生成物Aと反応媒体Bが反応した結果として、化学蓄熱材ABが膨張することがある。これにより、化学蓄熱材ABの表面積が増加し、反応媒体Bとの接触面積が増加することで、蓄熱に係る吸熱反応をより効率的に進行させることが可能となる。
しかし、従来の化学蓄熱装置では、化学蓄熱材ABの膨張による装置の損傷を鑑み、化学蓄熱材ABの膨張を強制的に抑制することや、化学蓄熱材ABを収容するスペースを過大に設けることが行われており、化学蓄熱材ABの膨張状態を十分に活用することができていなかった。
【0024】
一方、本発明における化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法では、化学蓄熱材ABの膨張状態を考慮し、化学蓄熱材ABを充填する充填部や化学蓄熱材ABを収容する収容容器の容積を設定するものである。これにより、化学蓄熱材ABの膨張状態を十分に活用し、かつ装置内のデッドスペースを無くし、化学蓄熱装置全体の省スペース化を実現することができる。
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施態様について詳細に説明する。尚、実施態様に記載する化学蓄熱装置及び化学蓄熱材の収容容器については、本発明に係る化学蓄熱装置及び化学蓄熱材の収容容器を説明するために例示したに過ぎず、同様の効果を奏する限り、これらに限定されるものではない。また、本発明に係る化学蓄熱材の配置方法に係る説明については、本発明に係る化学蓄熱装置及び化学蓄熱材の収容容器の構成及び操作の説明により置き換えるものとする。なお、本発明の化学蓄熱材の収容容器については、以下、単に「収容容器」とも呼ぶ。
【0026】
〔第一の実施態様〕
[化学蓄熱装置]
図1は、本発明の第一の実施態様における化学蓄熱装置の構造を示す概略説明図である。
図1に示すように、本発明の第一の実施態様における化学蓄熱装置100Aは、化学蓄熱材13を内部に保持し、化学蓄熱材13を蓄放熱反応させる化学蓄熱反応器1と、化学蓄熱材13から発生する反応媒体4を貯留する凝縮器2と、化学蓄熱反応器1と凝縮器2との間で相互に反応媒体4を流通させる連通管3と、を備えている。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0027】
(化学蓄熱材)
化学蓄熱材13とは、加熱時に蓄熱生成物と生成媒体に分離され、また、この逆の反応により熱を放出する化学物質である。また、本実施態様における化学蓄熱材13は、蓄放熱反応により膨張収縮するものを対象とする。
例えば、本実施態様で用いられる化学蓄熱材13については、蓄熱生成物と生成媒体の組み合わせとして、酸化カルシウム(CaO)と水蒸気(HO)、塩化カルシウム(CaCl)と水蒸気(HO)、臭化カルシウム(CaBr)と水蒸気(HO)、ヨウ化カルシウム(CaI)と水蒸気(HO)、酸化マグネシウム(MgO)と水蒸気(HO)、塩化マグネシウム(MgCl)と水蒸気(HO)、塩化亜鉛(ZnCl)と水蒸気(HO)、塩化ストロンチウム(SrCl)とアンモニア(NH)、臭化ストロンチウム(SrBr)とアンモニア(NH)、酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)、酸化マグネシウム(MgO)と二酸化炭素等(CO)等が挙げられる。
【0028】
化学蓄熱材13の構造及び形状については、特に限定するものではなく、例えば、粉体状、粒状、顆粒状、ペレット状、フレーク状などが挙げられる。また、粉体を成型して得られる成型体、又は化学蓄熱材13を多孔質体に担持させたものであってもよい。使用前の表面積を大きくし、反応性を高め、かつ蓄放熱反応による膨張収縮による体積変動が顕著であるという観点からは、化学蓄熱材13は粉体状であることが好ましい。
【0029】
(反応媒体)
反応媒体4とは、上述したように、蓄熱時に加熱された化学蓄熱材13から分離した流体(生成気体)、及び、放熱時に化学蓄熱材13へ供給される流体(反応気体)を総称するものであり、その性状は同一のものとすることが好ましい。
なお、放熱時に調達が容易であるという観点から、本実施態様における反応媒体4としては、水蒸気を利用することが好ましい。
【0030】
化学蓄熱材13から分離した流体を凝縮器2に貯蔵した後、反応媒体4として用いるものであってもよい。この場合、分離した流体を反応媒体4として用いることができるため、別途反応媒体4を装置外部から供給する必要がなく、装置全体を省エネルギー化することができる。
また、化学蓄熱材13から分離した流体は、化学蓄熱反応器1外部の大気に開放し、放熱時に化学蓄熱材13へ供給される流体として再利用しないものとしても良い。この場合、反応媒体4を装置内で循環させる必要がないため、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0031】
(化学蓄熱反応器)
本実施態様の化学蓄熱反応器1は、化学蓄熱材13を加熱し、化学蓄熱材13から反応媒体4(生成気体)を分離させて、蓄熱反応を進行させ、また、化学蓄熱材13へ反応媒体4(反応気体)を供給し、放熱反応を進行させるためのものである。
図1に示すとおり、本実施態様の化学蓄熱反応器1は、密閉可能な構造物からなり、化学蓄熱材13を充填する充填部11と、充填部11の内部に設けられ、化学蓄熱材13の加熱又は化学蓄熱材13から放熱された熱を伝達する熱交換部12と、熱交換部12に熱を伝え、化学蓄熱材13を加熱する熱源である熱交換配管14と、化学蓄熱材13に対し、反応媒体4の移動流路となる媒体流路15を備えている。
【0032】
本実施態様の化学蓄熱反応器1は、化学蓄熱材13による蓄放熱を行うことができればどのような大きさでも良い。例えば、工場の設備の一画として配置されるような比較的大規模なものでも良いし、自動車に設置されるような比較的小規模なものでも良い。また、化学蓄熱反応器1は、化学蓄熱装置100Aから取り外し、熱源が必要な場所に運搬し使用することもできる。この場合、熱源の確保が難しい場所で、蓄熱された化学蓄熱材13に反応媒体4を添加し、放熱反応させることで有効な熱源として利用することが可能となる。
【0033】
(充填部)
図2は、本発明の第一の実施態様の化学蓄熱装置における充填部11の構造を示す概略説明図である。なお、図2Aは、使用前の化学蓄熱材を配置した初期状態における充填部を示し、図2Bは、化学蓄熱材の膨張後における充填部を示すものである。
充填部11は、化学蓄熱反応器1内に化学蓄熱材13を充填するためのものである。
本実施態様の充填部11は、外壁を有し、化学蓄熱反応器1内に区画された空間を形成するものであり、図2に示すように、内部に充填された化学蓄熱材13と外部との熱の伝達を行うための熱交換部12と、蓄熱時に化学蓄熱材13から発生する反応媒体4を化学蓄熱反応器1外へ放出し、また、放熱時に化学蓄熱材13と反応する反応媒体4を化学蓄熱材13へ供給するための媒体流路15とを備えている。
【0034】
本実施態様の充填部11は、内部に充填する化学蓄熱材13の膨張に係る特性を鑑み、充填部11の容積を設定するものである。より具体的には、充填部11の容積が化学蓄熱材13の膨張後の体積よりも小さくなるように設定する。これにより、充填部11内で化学蓄熱材13が膨張した場合に、化学蓄熱材13が充填部11内を適度に満たすようになる。すなわち、充填部11内におけるデッドスペースを無くし、化学蓄熱装置100全体の省スペース化を実現することができる。
【0035】
充填部11の容積の設定に係る具体的な手段については特に限定されない。例えば、蓄放熱反応に伴う化学蓄熱材13の膨張率をあらかじめ直接測定あるいは推計し、この膨張率に基づき、充填部11の容積を設定すること等が挙げられる。
また、充填部11が設定した容積を満たすための具体的な手段については特に限定されない。例えば、化学蓄熱装置100の設計時に、設定した容積を反映するように充填部11の設計を行うものであってもよく、充填部11の容積を可変とする手段を設け、設定した容積を満たすようにするものとしてもよい。
なお、充填部11の容積を可変とする手段としては、充填部11を構成する外壁を移動可能とすることや、充填部11内に容積可変となる容器を配置することなどが挙げられる。充填部11内に配置する容器については、後述する。
【0036】
(熱交換部)
熱交換部12は、化学蓄熱材13を加熱することで反応媒体4と分離させ、放熱反応による熱を回収するためのものである。
本実施態様の熱交換部12は、充填部11内に充填された化学蓄熱材13と外部との熱の伝達を行うことができれば、どのような形状のものでもよく、例えば、充填部11の内部に蛇行して設置された熱交換チューブや、二重円筒型からなる化学蓄熱反応器1の内筒部などにより構成される。また、図2に示すように充填部11の外壁と熱交換部12とを一体的に形成するものしてもよい。
【0037】
また、本実施態様の熱交換部12には、熱交換配管14を介し、熱媒体を導入する。ここで、熱媒体としては、化学蓄熱材13への熱供給及び化学蓄熱材13からの熱回収ができるものであればよく、気体や液体等の流体や、固体であってもよい。熱の伝達の効率に優れるという観点から、流体を使用することが好ましい。
また、熱媒体の温度としては、化学蓄熱材13への熱供給ができるものであればよく、特に限定されない。
【0038】
(媒体流路)
媒体流路15は、化学蓄熱材13を加熱することで分離した反応媒体4を充填部11の外に放出する流路であり、また、化学蓄熱材13を放熱反応させるために、充填部11内部に反応媒体4を送り込む流路でもある。
媒体流路15を設けることにより、化学蓄熱材13が膨張した後も充填部11に反応媒体4が流通する流路が存在することで、反応媒体4が化学蓄熱材13に対して容易に移動(供給あるいは放出)することができる。これにより、化学蓄熱材13における蓄熱効率や放熱効率が上がり、化学蓄熱装置100全体の性能を向上させることができる。
また、化学蓄熱材13が膨張した後も、充填部11に反応媒体4が流通する流路が存在することにより、充填部11の内部に反応媒体4を迅速に拡散することができる。これにより、局所的な発熱反応が抑制されるため、化学蓄熱材13における熱の発生を均質化させ、かつ熱の発生量を安定した状態で維持することが容易となる。
【0039】
媒体流路15は、化学蓄熱材13と熱交換部12との間に配置され、充填部11内部からの反応媒体4の放出、及び、充填部11外部から化学蓄熱材13への反応媒体4の供給を行うことができれば、どのような形状でも良い。
媒体流路15としては、例えば、図2に示すように、充填部11の外壁の一部を、化学蓄熱材13が漏出しない程度の隙間を有する材で形成することが挙げられる。このような材としては、金網等のメッシュ素材を用いることや、セラミック等の耐熱性を有する多孔質材料を用いることなどが挙げられる。この場合、比較的安価かつ加工容易な金網等のメッシュ素材を用いることが好ましい。また、金網等のメッシュ素材は、柔軟に変形することから取り付けや取り外しが容易であるため、充填部11に化学蓄熱材13を充填することや、充填部11から化学蓄熱材13を抜き出すことが容易となる。
【0040】
また、媒体流路15は、図2に示すように、充填部11の外壁に設けるものに限定されるものではない。
図3は、本発明の第一の実施態様の化学蓄熱装置における充填部11の別態様に係る構造を示す概略説明図である。なお、図3Aは、使用前の化学蓄熱材を配置した初期状態における充填部を示し、図3Bは、化学蓄熱材の膨張後における充填部を示すものである。
図3に示すように、媒体流路15として、化学蓄熱材13の流入を制限する一方、反応媒体4の流通を可能とする筒体を充填部11内に設けることが挙げられる。より具体的には、媒体流路15として、化学蓄熱材13の大きさ以下の直径を有する複数の孔が開いた金属の筒体を配置し、筒体内部に反応媒体4を流通させ、充填部11内部からの反応媒体4の放出、及び、充填部11外部から蓄熱材13への反応媒体4の供給を行うものとしてもよい。この場合、媒体流路15としての筒体が金属で作られていることにより、熱交換部12の一部として機能するため、熱交換効率の高い化学蓄熱装置100を実現することができる。また、別の例としては、媒体流路15として、セラミックなどの多孔質材料からなる筒体を配置することが挙げられる。この場合、媒体流路15内に化学蓄熱材13が流入することをより確実に制限することが容易となる。
【0041】
(化学蓄熱材の体積の変化)
次に、図2に基づき、蓄放熱反応に伴い、本実施態様の充填部11内部において生じる化学蓄熱材13の体積変動について説明する。
図2Aは、充填部11の内部空間に、使用前の化学蓄熱材13Aを配置した初期状態において、化学蓄熱材13の体積が占める割合を表したものである。
使用前の化学蓄熱材13Aは、充填部11の底に配置されているが、使用前の化学蓄熱材13Aの図面上部には、未利用の空間(空隙)が残されている。
【0042】
その後、化学蓄熱装置100を稼働させ、蓄放熱反応を繰り返すことで、化学蓄熱材13Aの体積が膨張する。
図2Bは、膨張後の化学蓄熱材13Bが、充填部11の内部空間を満たしていることを表したものである。ここで、充填部11の容積は、膨張後の化学蓄熱材13Bの体積より小さくなるよう設定されている。そのため、図2Aにおける化学蓄熱材13の図面上部に存在していた空隙は消滅し、膨張後の化学蓄熱材13Bは充填部11の天井部分に接している。一方で、充填部11の容積は、膨張後の化学蓄熱材13の体積を鑑みて設定される。このため、充填部11内に過度なスペースを設けることなく、充填部11の破損を回避することが容易となる。
これにより、本実施態様の化学蓄熱装置100は、装置内のデッドスペースを無くし、化学蓄熱装置100全体の省スペース化を実現することができる。
また、化学蓄熱材13は、充填部11の空間内で適度に膨張することができる。これにより、化学蓄熱材13の表面積を増加させ、蓄放熱に係る反応効率を高めることが可能となる。
更に、図2Bに示すように、化学蓄熱材13と熱交換部12の接触において、熱交換部12は膨張前に化学蓄熱材13が接していた箇所以外の部分においても化学蓄熱材13と接触することになる。これにより、化学蓄熱材13と熱交換部12との接触面積が増加することで蓄放熱効率が上がり、化学蓄熱装置100全体の性能を向上させることができる。
【0043】
〔第二の実施態様〕
図4は、本発明の第二の実施態様における化学蓄熱装置100Bの構造を示す概略説明図である。なお、図4は、化学蓄熱装置100Bにおける充填部16に係る拡大概略図であり、その他の構成については第一の実施態様における化学蓄熱装置100Aと同様であるため、説明及び図示を省略する。
【0044】
第一の実施態様の化学蓄熱装置100Aにおける充填部11では、充填部11の内部空間に化学蓄熱材13を直接充填していたが、第二の実施態様の化学蓄熱装置100Bにおける充填部16では、化学蓄熱材13が収容された収容容器5を充填部16の内部空間に設置するように変更したものである。
本実施態様の充填部16及び収容容器5によれば、充填部16への化学蓄熱材13の充填、又は充填部16からの使用済みの化学蓄熱材13の取り出しを容易に行うことが可能となる。
【0045】
(充填部)
本実施態様の充填部16は、化学蓄熱材13を収容容器5に収容したものを配置する内部空間を有し、収容容器5を配置することで、化学蓄熱材13の充填を行うものである。
また、充填部16の内部空間の容積は、図4Bに示すように、膨張後の化学蓄熱材13Bによる、収容容器5における内部空間(後述する収容部55に相当)の容積増加に伴い、収容容器5の外壁(後述する本体部50に相当)の複数箇所で、熱交換部14と接するような大きさに設計されている。
また、図4においては、充填部16として、二つの内部空間を備えるように図示されているが、充填部16により形成される内部空間の数はこれに限られず、化学蓄熱装置100B全体の規模に併せ、一つあるいは三つ以上の内部空間を備えるものであってもよい。
【0046】
(媒体流路)
本実施態様の媒体流路17は、充填部16の内壁に設けられた熱交換部14が凹凸形状をなすことにより、凹部を通じて反応媒体4が充填部16に対して移動(供給あるいは放出)するように構成されている。
図4では、媒体流路17は、充填部16の内部空間の天井部分に設けられているが、これに限られず、充填部16の底部分や側壁部分に設けられていてもよく、充填部16内の複数箇所に設けられるものとしてもよい。特に、充填部16内の複数箇所に媒体流路17を設けた場合、反応媒体4をより一層効率よく充填部16に対して移動(供給あるいは放出)させることができる。
【0047】
[化学蓄熱材の収容容器]
次に、化学蓄熱材を収容する収容容器について説明する。ここで、本実施態様における
本実施態様の収容容器5は、化学蓄熱材13を内部に収容し、充填部11の内部に配置するためのものである。
また、本実施態様における収容容器5に係る構成は、本発明における化学蓄熱材の収容容器として独立したものとすることができる。この化学蓄熱材の収容容器は、既設の化学蓄熱装置に適用することができる。これにより、既設の化学蓄熱装置に対して大掛かりな更新を伴うことなく、本発明の化学蓄熱装置を容易に提供することが可能となる。
【0048】
図5は、本実施態様における化学蓄熱材の収容容器において、化学蓄熱材を収容した状態の構造を示す概略説明図である。なお、図5Aは、収容容器5の内部に、使用前の化学蓄熱材13Aを配置した初期状態を表している。また、図5Bは、膨張後の化学蓄熱材13Bにより、収容容器5の内部容積が変化している様子が表されている。
【0049】
図5に示すように、収容容器5は、化学蓄熱材13を収容する収容部55と、収容容器5の外殻に相当し、収容部55を形成する本体部50と、を備えている。
【0050】
本実施態様における収容部55は、本体部50によって収容容器5の外部と隔てられ、化学蓄熱材13を収容する空間を指しており、収容した化学蓄熱材13が膨張収縮する体積に合わせて容積が変化するものである。なお、図5には、収容部55は破線で囲われた領域として示している。
【0051】
本実施態様における本体部50は、図5に示すように、化学蓄熱材13を保持する器部51と、器部51と向かい合うように嵌合する蓋部52と、蓋部52と器部51が嵌合する部分である嵌合部53とを備えている。なお、本体部50は、図5に示す例に限らず、収容容器5の内外を隔てることで収容部55を形成することができればよく、具体的な形状や構造については特に限定されない。
また、本体部50は、反応媒体4が流通する手段が設けられる。反応媒体4が流通する手段については、収容部55の化学蓄熱材13と収容容器5外との間で反応媒体4の移動が可能となるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、図5に示すように、蓄熱時に収容部55から収容容器5外部に反応媒体4を放出し、放熱時に収容容器5外部から収容部55に反応媒体4を供給するための媒体出入口54を備えることが挙げられる。
【0052】
本実施態様における本体部50は、器部51及び/又は蓋部52が、化学蓄熱材13が膨張収縮する体積に合わせてスライドすることで、収容部55の容積を変化させるものである。
本体部50は、化学蓄熱材13の体積変動に伴って、収容部55の容積を変化させるため、収容部55内で化学蓄熱材13が膨張した場合であっても、収容容器5が変形、破損することがない。また、膨張により体積が増加した化学蓄熱材13が容器の中で抑圧されることで粉状化し、使用寿命を縮めてしまうことを防ぐこともできる。
更に、化学蓄熱材13は蓄放熱を繰り返すことにより微粉化することがある。一方、本実施態様における収容容器5では、化学蓄熱材13が微粉化することで体積が収縮した場合、収容部55の容積が小さくなることで収容容器5全体の容積が縮小する。したがって、収容容器5の容積が縮小する程度を、化学蓄熱材13の劣化状況を判断する指標として利用することも可能となる。
【0053】
本体部50の大きさや形状は、化学蓄熱材13を収容する収容部55を形成し、充填部16の内部に配置することができればよく、どのような大きさや形状でも構わない。
また、本体部50の材質は、放熱時の化学蓄熱材13の発する熱や、蓄熱時の熱交換部12からの熱に耐えることができればよく、どのような材質でも構わない。
例えば、本体部50の材質としては、鉄や鋼等の金属が挙げられる。この場合、耐熱性が高く、熱伝導率も良好な上、加工も容易であるため、耐熱・耐久性及び熱伝導率の高い収容容器5を安価に製造することができる。また、本体部50の材質としては、セラミックが挙げられる。この場合、高い耐熱・耐久性及び高い熱伝導率を備え、金属と比較して軽量な収容容器5を製造することができる。
【0054】
以下、本体部50の各構成について説明する。
(器部)
器部51は、本体部50の一部を構成するものであり、化学蓄熱材13を保持するためのものである。また、器部51は、熱交換部12と接することで、化学蓄熱材13と熱交換部12との間の熱伝達を行うことができる。
器部51は、嵌合部53により後述する蓋部52とは向かい合うように嵌合することで、収容部55を形成する。ここで、図5では、器部51の開口部外周が蓋部52の開口部内周に収まるように嵌合している様子が示されているが、これに限らず、器部51開口部内周に蓋部52の開口部外周が嵌合していてもよい。
また、器部51の材質は、後述する蓋部52と同一であってもよいし、別々であってもよい。
【0055】
(蓋部)
蓋部52は、本体部50の一部を構成するものであり、器部51と向かい合うように嵌合することで、本体部50の内部に収容部55を形成するためのものである。また、蓋部52は、熱交換部12と接することで、化学蓄熱材13と熱交換部12との間の熱伝達を行うことができる。
蓋部52は、器部51と向かい合うように、嵌合部53により嵌合している。これにより、器部51内の化学蓄熱材13が、収容容器5外に漏出することを抑制している。
【0056】
(嵌合部)
嵌合部53は、器部51と蓋部52をスライド可能に嵌合するためのものである。
嵌合部53は、器部51又は/及び蓋部52が、化学蓄熱材13を本体部50外に漏出することなく、化学蓄熱材13の体積に併せて自在にスライドすることができればよく、どのような形状や機構であってもよい。
図6は、本実施態様における収容容器5に係る構造の一例を示す概略説明図である。
例えば、図6Aに示すように、本体部50は、嵌合部53としてそれぞれ蓋部52の開口部内周に設けられたレール状の突起と、器部51開口部外周の対応する箇所に設けられた棒状の突起を備え、蓋部52のレール状の突起の溝に、器部51の棒状の突起が挿入されることで、器部51と蓋部52が嵌合することとしてもよい。この場合、レール状及び棒状の突起について、器部51及び蓋部52を製造する際に一体成型とすることで、強度を確保しつつ容易に量産することができる。
また、嵌合部53は、図6Aに示すような構造体を設けるものに限定されない。例えば、嵌合部53として接する器部51と蓋部52の壁面間の距離を略ゼロ距離とし、それぞれの壁面表面に対し摺動性を高める表面処理を行うことなどが挙げられる。これにより、構造体を設けることなく、器部51と蓋部52を嵌合させ、かつスライド可能とすることができる。
【0057】
(媒体出入口)
媒体出入口54は、収容容器5において反応媒体4を流通する手段である。より具体的には、収容部55の化学蓄熱材13から蓄熱時に放出される反応媒体4を収容容器5外へ放出するための流路である。また、放熱時に、収容容器5内の収容部55に収容された化学蓄熱材13へ反応媒体4を供給するための流路としても機能するものである。
【0058】
媒体出入口54は、収容部55の化学蓄熱材13に対して反応媒体4の放出又は供給を行うことができればよく、どのような構造であってもよい。
例えば、図6Bには、蓋部52の上面を、化学蓄熱材13が漏出しない程度の粗さの金属メッシュとしたものが示されている。この場合、加工し易いメッシュで媒体出入口54を構成しているため、製造が容易である。また、蓋部52上面の媒体出入口54を金属で構成することで、化学蓄熱材13の膨張により、蓋部52が熱交換部12と接触したときに、化学蓄熱材13と熱交換部12との間における熱の伝達が良好となる。
【0059】
また、図6Bでは、蓋部52の上面に媒体出入口54を設けているが、蓋部52の側面、器部51の底面、側面、あるいは、本体部50全体に媒体出入口54を設けるものとしてもよい。この場合、本体部50の一部にのみに媒体出入口54を設けた場合と比較して、より多くの反応媒体4について、収容部55に収容された化学蓄熱材13に対する供給、又は化学蓄熱材13から収容容器5外部への放出を行うことができる。
【0060】
また、図6Cに示すように、媒体出入口54の別の態様としては、蓋部52の上面に、化学蓄熱材13が漏出しない程度の大きさの孔を複数開けることで、媒体出入口54としたものが挙げられる。この場合、加工が比較的容易であり、強度を確保することができるため、反応媒体4を自在に収容容器5内外に移動させつつ、収容容器5の耐久性を維持することができる。
【0061】
(収容容器の容積の変化)
ここで、図4によって、本実施態様の化学蓄熱装置100Bにおける充填部16内に配置される収容容器5における収容部55の容積変動について説明する。
図4Aは、化学蓄熱反応器1内に二つの内部空間を形成する充填部16に対し、使用前の化学蓄熱材13Aを収容した収容容器5が配置されている様子を示している。
ここで、蓄熱時には、充填部16の内壁と一体的に設けられた熱交換部14により収容容器5が加熱され、蓄熱反応が進行する。これにより、収容部55に収容された化学蓄熱材13から反応媒体4が分離し、媒体出入口54から充填部16側に反応媒体4が放出される。
そして、放出された反応媒体4は、媒体流路17を通じて充填部16の外部に排出される。
また、放熱時には、反応媒体4が媒体流路17を介して充填部16の内部に供給され、媒体出入口54から収容容器5における収容部55に収容された化学蓄熱材13に供給されることで、放熱反応が進行する。これにより、化学蓄熱材13が発する熱は、収容容器5における本体部50を通じて熱交換部14に伝えられ、熱源(熱エネルギー)として利用される。
【0062】
図4Bは、膨張後の化学蓄熱材13Bにより収容部55の容積が増加した収容容器5が配置されている様子を示している。
ここで、蓄放熱を繰り返すことによる化学蓄熱材13Bの膨張に伴って、蓋部52が上方向にスライドすることで、収容部55の容積が増加するとともに、蓋部52が充填部16の天井面に達する。
これにより、蓋部52と器部51の両方が熱交換部14に接することになるため、化学蓄熱材13と熱交換部14との熱伝達効率が飛躍的に向上する。
また、蓋部52が充填部16の天井面を形成する熱交換部14の凸部に接した状態であっても、熱交換部14の凹部が媒体流路17となり、反応媒体4の流路になるため、熱伝達効率を高めつつ、充填部16に対する反応媒体4の移動(供給あるいは放出)を効率よく行うことができる。
【0063】
なお、上述した実施態様は化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法の一例を示すものである。本発明に係る化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法を変形してもよい。
【0064】
例えば、本実施態様における化学蓄熱材の収容容器は、本体部を構成する器部と蓋部が上下方向にスライドするものを示したが、これに限定されない。他の例としては、例えば、器部と蓋部とが左右方向にスライドする構造が挙げられる。この場合、化学蓄熱材の膨張によって収容部に収容した化学蓄熱材の高さは変えることなく、横方向に収容部の容積を拡張することが可能となる。このため、収容容器の上下方向が常に熱交換部と接した状態とすることができるため、蓄放熱反応における熱伝達の効率を高めることが可能となる。
【0065】
また、他の例としては、本実施態様における化学蓄熱材の収容容器の本体部が、蛇腹構造を備え、蓋部と器部が一体となっている構造とすることが挙げられる。このとき、収容部に収容した化学蓄熱材の体積変化に合わせて、本体部の蛇腹構造が伸縮することで、収容部の容積を変化させることが可能となる。これにより、本体部を複数の部品に分けて製造する必要が無く、複数の部品を組み合わせるための設計・製造に係るコストを抑えることができる。また、本体部における蓋部と器部を一体化することにより、部品の紛失、破損によるロスが生じないことから、ランニングコストの低減も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る化学蓄熱装置、化学蓄熱材の収容容器及び化学蓄熱材の配置方法は、エンジンなどの駆動機関のほか、工場や燃焼処理を行う設備(ごみ焼却施設等)など、稼働に際して熱の発生を伴う熱源からの排熱(廃熱)を有効利用する手段として好適に利用される。
【符号の説明】
【0067】
100A,100B…化学蓄熱装置、1…化学蓄熱反応器、2…凝縮器、3…連通管、4…反応媒体、5…収容容器、11、16…充填部、12…熱交換部、13,13A,13B…化学蓄熱材、14…熱交換配管、15、17…媒体流路、50…本体部、51…器部、52…蓋部、53…嵌合部、54…媒体出入口、55…収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6