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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136905
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】除菌液
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/06 20060101AFI20220913BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220913BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A01N59/06 Z
A01P3/00
A01N33/12 101
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036732
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】513231775
【氏名又は名称】フィーネ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178179
【弁理士】
【氏名又は名称】桐生 美津恵
(72)【発明者】
【氏名】今平 博康
(72)【発明者】
【氏名】苅部 進
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB18
4H011BC06
4H011DA13
4H011DD05
(57)【要約】
【課題】低温下や有機物汚染環境下でも高い除菌効果を発揮することができ、かつ、乾燥下でも固形化や白色化するのを防ぐことができる除菌液を提供する。
【解決手段】水酸化カルシウムと、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA-4Na)と、塩化ベンザルコニウムと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化カルシウムと、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA-4Na)と、塩化ベンザルコニウムと、を含むことを特徴とする除菌液。
【請求項2】
前記除菌液における前記水酸化カルシウムの濃度は飽和濃度であることを特徴とする請求項1に記載の除菌液。
【請求項3】
前記除菌液における前記塩化ベンザルコニウムの含有量は0.03~0.05重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の除菌液。
【請求項4】
前記除菌液における前記エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムと前記水酸化カルシウムとのモル比が1:1であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の除菌液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌液に関し、より詳細には、温度等の環境に影響されずに除菌効果を保持可能な除菌液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安全性が高く、食品用、医療用等に広く使用されている除菌剤として、水酸化カルシウムや塩化ベンザルコニウムがあるが(例えば、特許文献1、2参照)、これらにはいくつかの問題点がある。
【0003】
例えば、ノズルから水酸化カルシウム水溶液を噴霧した場合、以下の反応式に示すように、当該ノズルの先端に残った液や先端から滴り落ちる水滴が大気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなり、ノズルの先端や乾燥部に析出して固形化し、ノズルを詰まらせたり白色の粉が発生するという問題があった。
Ca(OH)+CO→CaCO+HO↑
【0004】
また、塩化ベンザルコニウムについては、冬期の低温下や有機物汚染環境下において、除菌効果が著しく減衰するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-067161号公報
【特許文献2】特開2019-099546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低温下や有機物汚染環境下でも高い除菌効果を発揮することができ、かつ、乾燥下でも固形化や白色化するのを防ぐことができる除菌液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の除菌液は、
水酸化カルシウムと、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA-4Na)と、塩化ベンザルコニウムと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、水酸化カルシウムにより除菌液の液性をアルカリ性とすることで、低温下や有機物汚染環境下であっても塩化ベンザルコニウムの除菌効果を保持することができる。また、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムが液中のカルシウムイオンとキレート結合することで、水酸化カルシウムが大気中や水中に存在する二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成するのを阻止することができ、固形化や白色化を防止することができる。また、塩化ベンザルコニウムと水酸化カルシウムとの相乗効果により、高い除菌効果を発揮することができる。
【0009】
上記発明において、前記除菌液における前記水酸化カルシウムの濃度は飽和濃度であることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、除菌液を強アルカリ性とすることができ、除菌効果を高めることできる。
【0011】
上記発明において、前記除菌液における前記塩化ベンザルコニウムの含有量は0.03~0.05重量%であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、除菌効果と安全性を高めることできる。
【0013】
上記発明において、前記除菌液における前記エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムと前記水酸化カルシウムとのモル比が1:1であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムが液中のカルシウムイオンを全て取り込んで効率的にキレート結合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る除菌液は、水酸化カルシウムと、EDTA-4Na(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム)と、塩化ベンザルコニウムと、を混合したものである。
【0017】
当該除菌液における水酸化カルシウムの濃度は飽和濃度である。除菌液中の水酸化カルシウムの濃度を高めることで、当該除菌液の液性を強アルカリ性とし、除菌効果を高めることできる。水酸化カルシウムの飽和水溶液は、温度25℃において、水酸化カルシウム濃度が0.17質量%であり、pHは12.4である。
【0018】
また、当該除菌液における塩化ベンザルコニウムの含有量は0.03~0.05重量%である。これにより、医薬部外品規格を満たし、安全性と除菌効果を保つことができる。
【0019】
EDTA-4Naはキレート剤である。アルカリ性の水酸化カルシウム水溶液中のカルシウムイオンをキレートする場合には、アルカリ性と相性の良いEDTA-4Naを用いるのが好ましい。EDTA-4Naとカルシウムイオンとは1:1のモル比で結合するため、水酸化カルシウム水溶液中のカルシウムイオンをキレートするのに必要なEDTA-4Naの量は、水酸化カルシウムのモル量と同モル量となる。
【0020】
除菌液中のEDTA-4Naと水酸化カルシウムとのモル比が1:1となるように混合することで、EDTA-4Naが除菌液中のカルシウムイオンを全て取り込んで効率的にキレート結合することができる。これにより、除菌液中にカルシウムイオンが存在しなくなるため、噴射ノズルの先端等に付着した除菌液が固化したり白色化するのを防ぐことができる。
【実施例0021】
以下、1トンの除菌液を生成する場合の各成分の量を示す。
(1)水(水道水又は精製水:純水):1000L=1000kg
(2)水酸化カルシウム飽和水溶液:25℃において水の重量の0.0174%=1.74kg
(3)EDTA-4Na:水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに換算した試算値から量を計算する。
EDTA-4Naのキレート価は268mgCaCO/gであるため、水酸化カルシウムを炭酸カルシウムの量に換算すると、
1.74kg(キレートする量)÷74.1(水酸化カルシウムの分子量)×100.1(炭酸カルシウムの分子量)=2.35kg
水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに換算した上記値をキレート価で割ると、
2.35kg÷0.268=8.77kg
よって、EDTA-4Naの量は8.77kgとなる。。
(4)塩化ベンザルコニウム:100%溶液 500g
【0022】
以上説明したように、水酸化カルシウムと、EDTA-4Naと、塩化ベンザルコニウムと、を混合して除菌液を生成することで、水酸化カルシウムにより除菌液の液性がアルカリ性となるため、低温下や有機物汚染環境下であっても塩化ベンザルコニウムの除菌効果を保持することができる。また、EDTA-4Naが液中のカルシウムイオンとキレート結合することで、水酸化カルシウムが大気中や水中に存在する二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成するのを阻止することができ、固形化や白色化を防止することができる。また、塩化ベンザルコニウムと水酸化カルシウムとの相乗効果により、高い除菌効果を発揮することができる。
【0023】
また、塩化ベンザルコニウムは医薬部外品認可品であり、水酸化カルシウム及びEDTA-4Naは医薬部外品添加物認可品であるため、本発明に係る除菌液を医薬部外品として市場に流通させることができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
以下、1トンの除菌液を生成する場合の各成分の量を示す。
(1)水(水道水又は精製水:純水):1000L=1000kg
(2)水酸化カルシウム飽和水溶液:25℃において水の重量の0.174%=1.74kg
(3)EDTA-4Na:水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに換算した試算値から量を計算する。
EDTA-4Naのキレート価は268mgCaCO3/gであるため、水酸化カルシウムを炭酸カルシウムの量に換算すると、
1.74kg(キレートする量)÷74.1(水酸化カルシウムの分子量)×100.1(炭酸カルシウムの分子量)=2.35kg
水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに換算した上記値をキレート価で割ると、
2.35kg÷0.268=8.77kg
よって、EDTA-4Naの量は8.77kgとなる。
(4)塩化ベンザルコニウム:100%溶液 500g
【手続補正書】
【提出日】2022-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化カルシウムと、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA-4Na)と、塩化ベンザルコニウムと、を含み、前記エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムと前記水酸化カルシウムとのモル比が1:1であることを特徴とする除菌液。
【請求項2】
前記除菌液における前記水酸化カルシウムの濃度は飽和濃度であることを特徴とする請求項1に記載の除菌液。
【請求項3】
前記除菌液における前記塩化ベンザルコニウムの含有量は0.03~0.05重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の除菌液。