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  • 特開-静電誘導発電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136935
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】静電誘導発電機
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/12 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
H02N1/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036782
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】399004555
【氏名又は名称】エクボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敏樹
(57)【要約】
【課題】従来装置の発電機構に電荷キャリアとして用いる可動部品の摩耗による故障、左記可動部の表面汚染・変質などによる出力低下の問題を解決し、長寿命化、低コスト、可搬性、小型化、軽量化、自由な構造設計が可能になる静電誘導発電機を提供する。
【解決手段】電荷のキャリアとして流体を利用することを最も主要な特徴とし、針電極が流体に電荷を与えた後、電荷回収領域にて電荷回収用電極により流体から電荷を回収し、出力電極に電荷を蓄積し、高電圧を得ることを可能にするものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷キャリアとして流体を採用し、流体に電荷を与える手段として針電極を備えた構成であり、前記電荷を回収する手段として導電性スポンジもしくは導電性メッシュを備えた構成の静電誘導発電機。
【請求項2】
電荷キャリアである流体の流路中に、互いに電気的絶縁された2つの電極と、電線を介して接続された2つの針電極を備え、前記針電極は、前記電極に対向し、流体に電荷を与えるために放電する機能を有し、正および負の電荷を回収する手段として、前記電極内部空間に導電性メッシュを備えた構成の静電誘導発電機。
【請求項3】
前記請求項2の静電誘導発電機をカスケード連結し、電気的には直列接続し、出力電圧を昇圧させることを可能とする静電誘導発電機。
【請求項4】
電荷キャリアとして流体を密閉経路内で循環させる構造であり、前記流体に電荷を与える手段として針電極を備えた構成であり、前記電荷を回収する手段として導電性スポンジもしくは導電性メッシュを備えた構成で正および負の高電位を得ることを可能とする静電誘導発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを利用した静電誘導式の高電圧発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電誘導式発電機は、理科の教材として静電気力と高電圧現象を演示するために使われることが多い。また大きな電位差が得られることから、実用上でもX線管の電源、医療、食品の殺菌、核物理学研究など様々な用途に用いられてきた。代表的な発明として、ウィムズハースト起電機、ディロッド起電機、ヴァンデグラフ起電機などがある。これらの原理に基づいた装置が非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に記載されている。
【0003】
これらの装置は100年近くの歴史があるが、円板の回転、ベルト駆動などを伴う誘導電荷集電の機構はほとんど進歩しておらず、寿命・品質・性能の点で根本的に改善されたものが現れていない。
また、特許文献1~3には、携帯型電子機器等に用いられる、動くソリッド型静電荷運搬体を用いた様々な静電発電機も提案されている。しかし、これらの特許文献は電荷集電の機構について教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5703627号公報
【特許文献2】特許第6411898号公報
【特許文献3】特許第6609015号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Horacio Mungia Agular:”The Wimshurst machine as an electric circuit”Lat.Am.J.Phys.Educ.Vol.8,No.1,March 2014
【非特許文献2】A.D.ムーア:”静電気の話-基礎から応用まで-”,高野文彦訳、河出書房新社(現代の科学49),1972年
【非特許文献3】J.W.Boag:The design of the electric field in a Van de Graaff generator,The Institution of Electrical Engineers,Vol.100,Issue 5,1953,P.63-82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような現状において、従来の静電誘導式発電機には発電機構に電荷キャリアとして用いる可動部が存在するために部品の摩耗による故障、左記可動部の表面汚染・変質などによる出力低下の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、電荷のキャリアを流体とすることによってかかる出力低下の問題点を解決することができることを見いだした。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
本発明は、上記課題を解決するため、電荷のキャリアとして流体を利用することを最も主要な特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]電荷キャリアとして流体を採用し、流体に電荷を与える手段として針電極を備えた構成であり、前記電荷を回収する手段として導電性スポンジもしくは導電性メッシュを備えた構成の静電誘導発電機。
[2]電荷キャリアである流体の流路中に、互いに電気的絶縁された2つの電極と、電線を介して接続された2つの針電極を備え、前記針電極は、前記電極に対向し、流体に電荷を与えるために放電する機能を有し、正および負の電荷を回収する手段として、前記電極内部空間に導電性メッシュを備えた構成の静電誘導発電機。
[3]前記[2]の静電誘導発電機をカスケード連結し、電気的には直列接続し、出力電圧を昇圧させることを可能とする静電誘導発電機。
[4]電荷キャリアとして流体を密閉経路内で循環させる構造であり、前記流体に電荷を与える手段として針電極を備えた構成であり、前記電荷を回収する手段として導電性スポンジもしくは導電性メッシュを備えた構成で正および負の高電位を得ることを可能とする静電誘導発電機。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電荷キャリアとして流体を採用することにより、発電機構に可動部分を備えていないため、長寿命化、低コスト、可搬性、小型化、軽量化、自由な構造設計が可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1実施態様(実施例1)を示した説明図である。
図2】本発明の別の実施態様(実施例2)を示した説明図である。
図3】本発明のさらに別の実施態様(実施例3)を示した説明図である。
図4】本発明のさらに別の実施態様(実施例4)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、発電機構の長寿命化・高性能化という目的を最小の部品点数で実現した。
【0012】
本発明の静電誘導発電機において使用される流体は液体であっても、気体であってもよく、化学的に安定で、電気的絶縁性が良好なものであれば特に限定されない。液体の流体としては、種々の絶縁油を用いることができる。絶縁油として、鉱油、アルキルベンゼン、ポリブテン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルアルカン、シリコーン油等が例示される。気体の流体としては、空気、あるいはヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性気体が例示され、いずれも好適に使用することができる。
【0013】
本発明の静電誘導発電機において使用される導電性スポンジとは、例えば、フッ素ゴム、ポリエチレン、シリコーンゴム、ポリウレタン等に銀、銅、ニッケル、黒鉛等の微粒子により導電性を付与したスポンジであり、特に限定されない。市販品を使用することができる。
【0014】
本発明の静電誘導発電機において使用される導電性メッシュとは、例えば、ポリエステルモノフィラメントで織ったメッシュに銀、銅、ニッケル、黒鉛等の微粒子により導電性を付与したものであり、特に限定されない。市販品を使用することができる。
【0015】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、本発明装置の1実施例の断面図である。ポンプ101は、流体102を流向103の方向へ送るものである。高電圧電源104は直流高電圧を発生させる装置であり、針電極105に高電圧を供給する。導体107は、針電極105に対向する電極である。導体107と針電極105の間隙に生ずる電界により針電極105は放電を起こし、流体102に電荷を与える。針電極105が流体102に電荷を与えるためには、暗流もしくはコロナ放電が起こる電界が必要であり、その条件を上回る電圧を高電圧電源104は供給する。ちなみに、高電圧電源104の出力電圧は直流であり、接地106に対する極性は正・負のいずれでもよい。
【0017】
針電極105から電荷を与えられた流体は絶縁パイプ8を流れてゆき、導体112内部に侵入する。絶縁パイプ108の上端には通気性のある導電性スポンジ110が備えてある。導電性スポンジ110は電線111を介して導体112に導通している。導体112の内部空間は導体に囲まれているため、外部の電界が遮られ、導電性スポンジ110は電荷を持たない状態でバランスしている。ここで、流体102が導電性スポンジ112を通過するときに、電荷は流体102から導電性スポンジ110へ移り、前記電荷は電線111を介して導体112の外表面へ蓄積される。
【0018】
導電性スポンジ110を通過した流体102は絶縁パイプ109と108の間隙を経由して下降し、出口113から排出される。
【0019】
流体102がポンプ101の動力によって流れている間、上記電荷の移動は継続し、導体112の表面の電荷密度は上昇してゆく。最終的に導体112の表面の電界強度が火花電圧に達するまで、電圧は上昇し続ける。
【0020】
ここで、ポンプ101について付記する。ポンプ101は流体102の流れを生み出す手段であり、流体が液体の場合は、液体用のポンプを用いる。流体102が気体の場合はポンプ101には、気体用のポンプ、ガスタービン、送風機などを用いてもよい。
【0021】
つぎに、流体102について付記する。流体102は、化学的に安定で、電気的絶縁性が良好なものが好ましく、液体であれば絶縁油が該当し、気体であれば、空気、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどが有用である。
【実施例0022】
図2の実施例は、負および正の高電位が同時に得られるタイプの静電誘導発電機の構造を示す断面図である。まず、入口201から流体202を流入させる。流入させるための手段は、前記実施例1のポンプ101と同様であるため、図から省いている。高電圧電源203は直流高電圧を発生させる装置であり、針電極206に高電圧を供給する。導体207は、針電極206に対向する電極であり接地電位となっている。導体207と針電極206の間隙に生ずる電界により放電を起こし、針電極206は流体202に電荷を与える。針電極206が流体202に電荷を与えるためには、少なくとも暗流もしくはコロナ放電が起こる電界が必要であり、その条件を上回る電圧を高電圧電源203は供給する。ちなみに、高電圧電源203の出力電圧は直流であり、接地204に対する極性は正・負のいずれでもよく、図2では高電圧電源の出力電圧は、負の極性の場合を示している。
【0023】
流体202が針電極206近傍を通過する際に、針電極206は流体202に負の電荷を与える。導体メッシュ208は通気性を有し導体スリーブ209の内壁に内接し電気的に導通している。導体メッシュ208の周囲空間は導体に囲まれているため、外部の電界が遮られ、導体メッシュ208は電荷を持たない状態でバランスしている。ここで、流体202が、導体メッシュ208に到達したとき、前記流体が持っている電荷は導体メッシュ208に奪われ、前記電荷は導体スリーブ209の外表面に蓄積し、導体スリーブ209は負の電位が上昇する。
【0024】
前記過程によって、導体スリーブ209の電位が上昇すると、導体スリーブ209と導体スリーブ213の間の電位差も大きくなる。針電極210は、電線215を介し、導体スリーブ213内の針電極214に導通している。導体スリーブ209と213との間の電位差が一定値を超えると、針電極210と214にて放電が始まる。針電極210は負極の導体スリーブに対向しているため、正の電荷を放出し、電荷は流体に運ばれて導体メッシュ212に回収され、導体スリーブ213の外表面に蓄積し、導体スリーブ213は正の電位が上昇する。このようにして導体スリーブ209と導体スリーブ213の電位差は増大してゆき、その電荷はコンデンサ211にも蓄積される。出力電圧は、出力端子216と217から取り出すことができる。
【実施例0025】
図3の実施例は、実施例2の装置を1ユニットとして、2台のユニットをカスケード接続したような構造となっている。電気回路的には電線315を介して2つのユニットの出力を直列接続したものである。このようにして複数単位の装置を連結することにより出力電圧を昇圧することが可能となる。
【実施例0026】
図4の実施例は、密閉型の静電誘導発電機の構造を示す断面図である。主要な外観は、黒い太線で示した絶縁物402と、二重線で示した導体404、導体408で成り立っている。隔壁407は上下の空間を仕切るためのものであり、前記隔壁407から伸びるバイパス管406、411を備えている。絶縁被覆電線412は隔壁407を貫通しており、前記絶縁被覆電線412の両端には針電極401、409を備えている。導体メッシュ405は通気性のある導体素材であり、導体404に対し内接し電気的に導通している。同様に、導体メッシュ410は、導体408に対し内接し電気的に導通している。
【0027】
説明を簡略化させるため、流体の流れを継続させるためのポンプもしくは送風機は、図から省略している。実際の装置において、ポンプもしくは送風機は、図中のA→B→C→D→E→F→Aの経路中の任意の部分に設置することが可能である。
【0028】
本実施例の装置は、発電が継続するために最初に導体404と導体408にそれぞれ逆極性の初期電位差を与えておく必要がある。必要な電位差は、針電極401および409の先端からの放電を可能とする電位差である。
【0029】
針電極401の対向電極は導体404であり、図4の例では導体404の極性が負電位なので、針電極401から正の電荷が放出され、針電極401近傍を通過する流体に前記正電荷を与える。正電荷を受け取った流体は、Cを経由してDに至り、導体メッシュ410に至る。導体メッシュ410は、流体から電荷を奪い、前記電荷は導体408外表面に蓄積され、導体408の電位は上昇する。導体メッシュ410に電荷を渡した流体は、電気的に中性に戻り、Eを経由して針電極409に至る。
【0030】
針電極409の対向電極は導体408であり、図4の例では導体408の極性が正電位なので、針電極408から負の電荷が放出され、針電極409近傍を通過する流体に前記負電荷を与える。負電荷を受け取った流体は、Fを経由してAに至り、導体メッシュ405に至る。導体メッシュ405は、流体から電荷を奪い、前記電荷は導体404外表面に蓄積され、導体404の電位は上昇する。導体メッシュ405に電荷を渡した流体は、電気的に中性に戻り、Bを経由して針電極401に至る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
流体を電荷キャリアとして用いることを特徴とする本発明は、発電機構に可動部分を不要とする静電誘導発電機の開発に適用できる。また、流体を電荷キャリアとして用いることは、他の電気機器・装置にも応用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
101 ポンプ
102 流体
103 流向
104 高電圧電源
105 針電極
106 接地
107 導体
108 絶縁パイプ
109 絶縁パイプ
110 導電性スポンジ
111 電線
112 導体
113 出口
201 入口
202 流体
203 高電圧電源
204 接地
205 絶縁パイプ
206 針電極
207 導体
208 導体メッシュ
209 導体スリーブ
210 針電極
211 コンデンサ
212 導体メッシュ
213 導体スリーブ
214 針電極
215 電線
216 出力端子
217 出力端子
218 出口
301 入口
302 流体
303 高電圧電源
304 接地
305 絶縁パイプ
306 針電極
307 導体
308 導体メッシュ
309 導体スリーブ
310 針電極
311 コンデンサ
312 導体メッシュ
313 導体スリーブ
314 針電極
315 電線
316 出力端子
317 電線
318 コンデンサ
319 電線
320 出力端子
321 出口
401 針電極
402 絶縁物
403 流体
404 導体
405 導体メッシュ
406 バイパス管
407 隔壁
408 導体
409 針電極
410 導体メッシュ
411 バイパス管
412 絶縁被覆電線
図1
図2
図3
図4