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  • 特開-埋設物掘削方法および装置 図1
  • 特開-埋設物掘削方法および装置 図2
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  • 特開-埋設物掘削方法および装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136946
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】埋設物掘削方法および装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20220913BHJP
   E02F 3/84 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F3/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021072908
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 篤史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 克己
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003AC09
2D003BA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB07
(57)【要約】
【課題】道路改良工事や工場敷地内での土木工事において、埋設物を損傷させることなく工事を進めるには大掛かりな掘削システムや機械類が必要で、都市部における土木工事や工場敷地内の土木作業においては、非効率な面があった。一方で、事故を回避するため、重機を用いない手作業のみでは、効率が極めて悪く、埋設物など既設設備を損傷させず安全に作業できる領域は限られるなど不都合が多かった。
【解決手段】これらの問題を解消すべく、作業現場の空間に3次元座標を設定し、空間内に3つまたは4つの目標点を設置し、それらの3次元座標を読み込んだのち、これらの目標点との距離を計測することにより、作業機械の作業点位置を当該座標上で逐次認識しながら土木建設工事を行う作業方法と装置を手段とし、安全かつ効率的に工事を行う技術を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削等を行う土木建設工事において、空間の3次元座標軸を設定したのち、空間上の3つまたは4つの目標物にて各点の3次元座標を定め、土木建設機械の作業点に配設したセンサーと目標点に設置したセンサーにより作業点と目標点の相互の距離を計測することにより作業点の座標位置を特定しつつ土木建設作業を行う工事方法、およびその測定システム装置。
【請求項2】
土木建設機械の作業部位が稼動可能な稼動許容範囲と稼動してはいけない作業禁止範囲をあらかじめ3次元座標上に定め、指定された稼動許容範囲において作業を行う請求項1に記載の工事方法。
【請求項3】
3次元座標を定める目標物が土木建設機械の稼動位置により死角になり作業点との距離が測定できない場合に備え、代替えとなる補完可能な目標物を複数点配置し、その位置を作業の開始前ないし開始後に計測することにより位置座標を入力し、必要に応じ計測目標を替えて作業点の位置が測定できるよう補完することにより土木建設作業が円滑に行えるようにすることを特徴とする請求項1に記載の工事方法。
【請求項4】
土木建設機械の作業部位が稼動可能な稼動許容範囲と稼動してはいけない作業禁止範囲をあらかじめ3次元座標上に定め、指定された稼動許容範囲において作業を行うに際し、埋設物や地上障害物の位置を既3次元座標に認識させるとともに当該埋設物や地上障害物から一定距離を有する空間領域を作業禁止範囲に設定し、土木建設機械の作業部位が作業禁止範囲に侵入しないよう制御する請求項2に記載の工事方法。
【請求項5】
埋設物までの深さを試掘で計測しその位置を特定するに際し、地表面上の異なる少なくとも2地点において、埋設物の鉛直線上方地上面ないしはその上方に目標点を定めることを特徴とする請求項1に記載の工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下埋設物を損傷させることなく埋設物周辺を安全に効率よく掘削することが出来る土木建設工事の作業方法ならびに装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路改良工事や工場敷地内での土木工事では、地下に水道配管、ガス配管、電気ケーブルやそれらの付帯設備が埋設されていることが多く、これらを損傷させることなく工事を進める必要がある。しかしながらこれら埋設物は位置の把握がなされた後も工事の進捗とともに、正確な位置が把握しにくくなり、時に破損させたり、大きな事故災害を引き起こす危険を伴っている。
【0003】
土木建設機械を用いる場合、埋設物の正確な位置把握が出来ていないと、埋設物を損傷させる危険があるため、相当の安全距離を保って重機械の使用をひかえる必要が生じる。その為、埋設物近傍の広い範囲を手作業で行ったり、ガス配管や電気ケーブルなど2次災害を発生させる恐れのある場合は遠隔操作の土木建設機械を用い掘削作業が行われたりしている。
【0004】
また一方で、地中レーダーとGPSを搭載した基地局車両が、埋設物を探査して正確な位置を把握した後、油圧シャベル等の作業機械に必要なデーターが通信され、油圧シャベル等の位置やバケットの刃先位置を検出装置に搭載して掘削する方法やシステム(特開2003-56010)などが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長大なパイプラインの補修修理や広範囲の掘削作業を伴う大型工事には基地局車両や作業機械を複数用いた大掛かりな作業方法や掘削システムが効率的であるが、都市部における土木工事や工場敷地内の土木作業においては、高々2,3台を用いる程度の作業量であることが多く、大きなシステムはかえって非効率となる。さらに大掛かりなシステムは設備の投資が大規模になり、多くの事業者にとって固定費負担が極めて大きい。
【0006】
また、重機を用いない手作業のみでは、小さな掘削範囲であっても効率が極めて悪く、埋設物など既設設備を損傷させず安全に作業できる領域は可能な限り土木建設機械を活用する必要がある。既存の一般的な土木建設機械を改良したり、追加搭載可能な機動性の優れた装置を用い、工事作業を進めることが肝要である。しかしながら、GPSや地中レーダー、基地局など大規模なシステムを用いない効率的な作業方法やシステム装置は提案されていない。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に関して、地下埋設物等を損傷させることなく埋設物周辺を安全に効率よく掘削することが出来、機動性の良い土木建設作業ならびに装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解決するため、
掘削等を行う土木建設工事において、空間の3次元座標軸を設定したのち、空間上の3つまたは4つの目標物にて各点の3次元座標を定め、土木建設機械の作業点に配設したセンサーと目標点に設置したセンサーにより作業点と目標点の相互の距離を計測することにより作業点の座標位置を特定しつつ土木建設作業を行う工事方法、およびその測定システム装置、
土木建設機械の作業部位が稼動可能な稼動許容範囲と稼動してはいけない作業禁止範囲をあらかじめ3次元座標上に定め、指定された稼動許容範囲において作業を行う前記記載の工事方法、
3次元座標を定める目標物が土木建設機械の稼動位置により死角になり作業点からの距離が測定できない場合に備え、代替えとなる補完可能な目標物を複数点配置し、その位置を作業の開始前ないし開始後に計測することにより位置座標を入力し、必要に応じ計測目標を替えて作業点の位置が測定できるよう補完することにより土木建設作業が円滑に行えるようにすることを特徴とする前々段に記載の工事方法、
土木建設機械の作業部位が稼動可能な稼動許容範囲と稼動してはいけない作業禁止範囲をあらかじめ3次元座標上に定め、指定された稼動許容範囲において作業を行うに際し、埋設物や地上障害物の位置を定めた3次元座標に認識させるとともに当該埋設物や地上障害物から一定距離を有する空間領域を作業禁止範囲に設定し、土木建設機械の作業部位が作業禁止範囲に侵入しないよう制御する前々段に記載の工事方法、
埋設物までの深さを試掘で計測しその位置を特定するに際し、地表面上の異なる少なくとも2地点において、埋設物の鉛直線上方地上面ないしはその上方に目標点を定めることを特徴とする第一段落に記載の工事方法、
これらを特徴とする作業方法と装置を提供することを手段とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明法はあらかじめ3次元座標系に位置が設定された目標点と作業点の距離を計測することにより、作業点の3次元座標を求めるものである。一般的に任意に移動する作業点の3次元座標を得るには4つの目標点との距離を計測すれば座標が確定できる。3つの目標点との距離を求めただけでは同条件となる点が3つの目標点がなす平面の両側に存在するため作業点の正しい座標が確定できない。しかしながら、3つの作業点がなす平面のどちら側に作業点が位置するかを実際の作業現場で指示することが出来れば、4つの目標点を用いずとも3つの目標点でも作業点の確定が行える。多くの場合、目標点は地上面上方に設置し、土木建設機械が有する作業点は地上面近傍かそれより低い位置で稼働することとなるため、条件指示は容易である。また作業途中で作業点が前記平面の反対側に移動する場合が生じても、常時または定期的に計測される作業点の位置を逐次追跡するロジックを加味すれば3つの目標点でも作業点の3次元座標確定は容易に行うことが出来る。
【0010】
作業点と目標点の距離測定は作業点に距離計を設ける場合と目標点に距離計を設ける場合のいずれもが考えられるが、作業点に距離計を設けた方が距離計の数が少なくて済む。ただし、作業点は逐次移動するため、計測時間がずれるため計測結果の時間補正などの処理が必要となる。一方で、目標点に計測器を設けた場合は少なくとも3基、または4基が必要であり、死角になる場合に必要となる補完の目標点を考慮すると計測器の数が多くなる欠点を有する。いずれに設置することが良いかは、作業する場の状況と作業内容により判断する必要がある。
【0011】
埋設物が存在する限られた範囲を掘削する場合、掘削物は既存の図面や記録により大方の位置が把握される場合が一般的である。時に、何が存在するかわからない場合があるがその際は埋設物探知機等で概略の位置を把握することが必要となる。埋設物の大方の位置が把握されると、その情報に基づいて試掘を行い埋設物の正確な位置を把握する方法がとられる。その上で、埋設物の種類によって損傷させた場合の損失程度や損傷に伴う事故等の危険度が異なるため、埋設物の種類に応じた掘削作業が計画される。
【0012】
埋設物は、配管やケーブルなど掘削範囲を超えて設置されている場合が多く、直線状に存在する場合が大半である。複雑に配設されている場合や複雑形状の埋設物があれば対象埋設物を直線的な部分に分解し認識することとなる。
【0013】
埋設物の存在が確定できる地点、直線形状であれば2点を試掘により確定しその垂直上方の地表面からの距離を測定すれば、3次元座標軸上の座標を確定するデーターが得られる。複雑な配設状況の埋設物や複雑な形状の埋設物は直線部に分解し、これらの組み合わせとして座標を確定すればよい。
【0014】
試掘によって得られた2点の鉛直線上方に、空間上に設ける目標点のうちの2点を定めると作業が簡素化される。3次元座標軸とその原点は任意に設定できるが、試掘位置2点の内いずれか一方の地表面を原点とし、1軸目は鉛直線、2軸目は埋設物の最も長い直線方向の鉛直直行面への投影線、3軸目はそれぞれに直角に交差する直線を用いれば簡便である。
【0015】
本発明で用いる空間上の目標点には試掘位置2点の鉛直上方空間上の視認しやすい点を定めることが好ましい。さらにこれらと異なる地点の視認しやすい位置に3点目および4点目の目標点を設置して、定めた3軸に基づく3次元座標を計測してインプットすれば、作業空間における3次元空間が座標として設定できる。この際、目標点を4点とする場合は、すべてが同一平面上に位置しないよう配慮することが重要である。
【0016】
この設定された座標空間に、埋設物の位置を埋設物の形状に合わせ入力すれば埋設物の当該空間上の座標が設定できる。必要に応じ地表面の高さ情報や掘削範囲の情報も入力すれば、自動掘削する際には有効に活用可能となる。複数の埋設物がある場合や空間上に障害物が存在する場合には、これらについても空間上の座標を入力すると稼動範囲から除外することが出来る。なお、目標点は掘削作業範囲の外側に設置すると作業中に目標の置き換えが不要になる場合が多く、作業を進めるうえで効率的である。
【0017】
作業点となる建設機械の当該位置または目標物に設置する計測器としてのセンサーは、相互の距離を逐次あるいは定期的に測定するものであるので、レーザー距離計など高精度なものが好ましい。特に作業点の土木建設機械に設置する場合は3Dスキャナーなどがこのセンサーに適し活用が可能である。
【0018】
以下、センサーとしての距離計は作業点の土木建設機械に設置し、目標点は4点設ける場合について説明する。
【0019】
座標軸を設定し、目標点である4点の3次元座標を確定するに際し、作業場所近傍に建設機械のセンサーを移動し静止させれば、距離計として条件造りを行うことが出来、またその座標条件をリンクするパーソナルコンピュータに設定することが出来る。
【0020】
従来技術では掘削バケットの爪先先端にセンサーを設けるなどの提案が見られるが、バケットそのものは作業に供され土砂などに接触し最も衝撃や摩耗しやすい部分であるため、距離を測定する計測器はアーム先端近くとなるバケットの回転支点付近に設置するのが好ましい。この設置点とバケットの最も離れた点までの距離を認識し、作業禁止範囲までの距離にこの長さを加えて、仮想禁止領域とすれば、作業点の動きを把握するだけで作業禁止範囲への機械作動部の侵入が抑制でき、センサーも保護できる。
【0021】
バケットの回転支点付近は機械の構造上支点の軸が一定の長さを有する場合があり、必要に応じセンサーを2基など複数設け、死角を補完し合うなどの工夫が必要な場合も考えられる。複数センサーを用いる場合はそれぞれの計測値を補正し基準とする一点からの情報に置き換えることが必要である。またパワーショベルではなく破砕機に本発明を適用する場合は、破砕機先端駆動部の同様な回転支点にセンサーを設置すれば問題ない。
【0022】
埋設物が点のごとく小さなものであればそれを囲む球体形状範囲、埋設物が直線状に配置されている場合はその中心軸を囲む円筒範囲、複雑な構造であればその外径から一定距離を定め、掘削作業禁止範囲と定めればよい。埋設物が水道配管などであれば配管径を考慮してその外側に、高圧電線ケーブルであればケーブル径や保護管の外径を考慮するなどして、埋設物の重要性や危険性に則して保護すべき保有距離を確保し作業禁止範囲を定めることが有効である。
【0023】
前述のごとく、作業点と目標点の距離測定にはレーザー距離計などの測定装置が有効である。特に近年3Dスキャナーと称する距離と角度から目標物の位置を正確に計測するセンサーが提供されており、上記測定システム装置に適用し活用すると周囲の様々な障害物を3次元座標上にインプットする際に簡便であり有効である。
【0024】
掘削バケットの回転支点に土木建設機械の作業点として上述のセンサーを配設し、バケット爪先までの長さと埋設物から保護すべき距離を足し合わせた長さに土木建設機械の作業点が入らないよう制御すれば、効率的に掘削作業を実行できる。
【0025】
本発明法を用いれば、特開2019-207189号や特開2003-56010号に提案される、土木建設機械に配設が必要なGPS装置や位置検出装置、基地局の設置は不要である。本発明法は上記のごとく定めた3次元座標の中を、土木建設機械および目標点に設置されたセンサーにより常時または定期的に位置検出を行いつつ、作業点の3次元位置を把握して工事を推進する方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明を実施するための最良の形態の一つを示す実施例である。
図2】本発明を実施する際、主要埋設物の上方に定めた目標点の位置を示す図である。
図3】本発明を実施する際、4つの目標点を定めた位置を示す図である。
図4】本発明法実施例において作業点と目標点の距離を計測する際の位置関係を示す図である。
図5】本実施例において作業点と埋設物の距離を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
既存の設備、機器を活用し、本発明を安易に実現させるには、一般的なパワーショベルまたは目標点にレーザー距離計を設置し、そのデーターを処理すべくパーソナルコンピュータとデーターリンクさせ、3次元座標を設定した後、目標点、作動点の計測管理を行って、作業点となるパワーショベルのアーム先端部付近の3次元座標を把握することで可能である。
【実施例0028】
既設工場内の一辺8m、もう一辺が7mの長方形の地面を基礎工事のために基準点以下1.0m掘削する場合にて説明する。当該作業範囲の地中には約0.5mの深さに50Aの水道配管が直線状に埋設されている。
【0029】
図Xに示すように掘削範囲から外側にそれぞれ1m離れた地点AおよびCにて試掘を行い50A配管上部まで50cmおよび60cmの深さがあることを確認した。A点に基準杭を設けその鉛直上方α=2.0mの位置をB点とした。AB間の鉛直度は基準軸となるために正確に測定し、基準杭を設置する必要がある。さらにC点の鉛直上方上でB点と水平面同高さを水準器等を用い測定しD点と定めた。
【0030】
レーザー距離計とデーターリンクし位置計算を行うパーソナルコンピュータ上では、任意に3次元直交軸XYZを定めることが出来るが、判り易くするために鉛直線に設定したABをZ軸、Z軸に直交する平面へのACの既平面投影線をX軸、それぞれに直交する軸をY軸として座標軸を設定した。この場合原点はAである。BD間の距離を正確に計測しβ=10.0mであったため、A、B(0,0,α)、D(β,0,α)の座標はそれそれA(0,0,0)、B(0,0,2.0)、Dは(10.0,0,2.0)となる。
【0031】
掘削作業を行う際に、作業点Lからの距離を測定する目標点4点にA,Cを用いるとそれらが地表面に存在するがために認識しづらい場合が多々生じるため、Cに替えてD点を、Aに替わりE点を図3のごとく目標点として杭を用い設置した。さらに4点目の目標点としてF点をBDとEFが交差する方向に杭を用いて設置した。パワーショベルのアーム先端付近、バケットの回転支点位置Lには距離計として3Dスキャナーを設置した。
【0032】
E点、F点のXYZ座標を設定するに際し、Lに設置した距離計を用いて目標点の座標が確定できる。具体的には、図4のようにをAC間の図面手前方向位置にレーザー距離計を持っていき甲点とし静止させたうえでA、B、D点までの各距離を測定した。この結果から、この位置におけるLの座標が求められる。Z軸は鉛直上方が正、X軸はC点方向が正となるようにα、βの正負を定めたが、Y軸はLのY座標を正とする方向で正負を与えればよい。同位置の甲点よりE点とF点までの距離を測定する。Lの位置を数メートルずらした乙点、丙点でもA、B、D点までの距離を計測することによりLの甲、乙、丙点それぞれでの座標が確定でき、座標が明確となった甲、乙、丙3点からの距離が得られることからE点F点の目標点としての座標も確定できる。必要に応じ目標点を追加する際、その座標を得るには、これと同様の作業を繰り返せばよい。
【0033】
座標軸および目標点の座標決定後は、Lを自由に動かすに際し、都度B、D、E、Fの4点までの距離を逐次測定することにより、その時点でのLのXYZ座標が求められる。Lの座標測定結果は、計測器の誤差、演算処理制度、振動、測定タイミングのずれ等により数学的な一点に定まらない場合が多い。各条件を勘案した上で、数mmないし数十mmの範囲内の数値は同一点と評価するロジック等を用いて作業点Lの座標を定める必要がある。
【0034】
埋設水道配管はA点より0.5m下方、C点より0.6m下方に配管上端が測定されており、配管半径25mmを加えた深さ地点を水道配管中心線が通っており、水道配管中心の通るXYZ座標が特定できる。ちなみに本実施例ではC点はD点下方1.95mであり、AC方向に地盤は勾配を持っていた。
【0035】
作業開始にあたって、掘削範囲の4隅G、H、I、J点も計測し座標を設定すると作業範囲が座標上に特定でき、自動で運転操作する場合等にも活用できる。またA点を基準とした水平面からの高低が把握でき、掘削作業の把握や掘削残土の計算等に有用である。
【0036】
バケット形状は図5の寸法を有するため、Lから最も遠いKまでの距離80cmと水道管を保護すべき安全距離、すなわち水道管中心から20cmの合計100cmより内側を作業禁止範囲としてLが水道配管に近づかないように制御することとした。今回は手動運転で掘削作業を行ったため、Lが作業禁止範囲の外側近接部100mmに侵入すると警報がなり、それを越して作業禁止範囲に侵入すると運転が停止するよう作業条件を設定した。
【0037】
掘削作業範囲をA地点以下1.0mと設定し、地表面の凹凸にかかわらずG、H、I、J点の下方一定の深さまで稼動許容範囲として掘削を進めるが、指定されたB、D、E、Fが死角となって計測できない場合が生じる。この際、作業の進行に合わせ補完する副次的な目標点を1ないし4点、場合によってはそれ以上設置して座標を読み込めば、初期に設定した目標点までの距離が計測できない場合にこれらの必要な点までの距離を読み込むことにより、Lの座標が認識できる。今回は4点設け実施したが、3Dスキャナーをもちいたこともあり作業の中断を要せず、安全に効率的に作業を実施することが出来た。
【0038】
本実施例では手動運転で作業したが、パワーショベルを自動運転化することも可能であり、いずれの場合でも効率的な掘削作業が提供される。また、今回は一機のみで作業したが、複数の土木建設機械を同一作業領域で稼働させる際には機械同士の接触防止にも、相互の位置を測定しつつ作業を進めることで有効に活用できる。なお、今回レーザー距離計として3Dスキャナーを活用したが、3Dスキャナーにより作業場所周辺の地盤、構造物、個別に調査測定して入力する埋設物等の位置情報を3次元座標化し、保護すべき構造物、埋設物等にそれぞれ適切な保有安全距離を設定したうえで作業禁止範囲と稼動許容範囲を設定し、掘削作業を進めることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
市街地での道路掘削作業、既設工場敷地内での改良土木作業等に広く適用可能である。
【符号の説明】
1 3次元座標原点
2 3次元座標X軸
3 3次元座標Y軸
4 3次元座標Z軸
5 埋設配管
6 掘削範囲
7 作業点
8 目標点
9 目標杭
10 パワーショベルアーム
11 パワーショベルバケット
12 バケット支点
13 バケット支点からの最遠点
14 作業禁止範囲
図1
図2
図3
図4
図5