(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136959
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220913BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220913BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220913BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20220913BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20220913BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652C
H01L29/78 652S
H01L29/78 652F
H01L29/78 652D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652B
H01L29/78 652M
H01L29/91 D
H01L29/91 B
H01L29/91 F
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169925
(22)【出願日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2021036671
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】大内 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】高島 信也
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB01
4M104BB02
4M104BB03
4M104CC05
4M104FF02
4M104FF04
4M104FF17
4M104FF35
4M104GG02
4M104GG09
4M104GG18
4M104HH15
(57)【要約】
【課題】高濃度のP型領域を形成可能な窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】窒化物半導体層にN型領域を形成する工程と、窒化物半導体層においてN型領域下に位置する領域にアクセプタ元素をイオン注入する工程と、N型領域が形成され、かつアクセプタ元素がイオン注入された窒化物半導体層に熱処理を施してアクセプタ元素を活性化することによって、N型領域下に位置する第1P型領域を形成する工程と、を含む。N型領域を形成する工程では、N型領域におけるドナー元素の濃度が第1P型領域におけるアクセプタ元素の濃度以上の値となるように窒化物半導体層へドナー元素を高濃度にイオン注入する。N型領域下に位置する領域にアクセプタ元素をイオン注入する工程では、第1P型領域におけるアクセプタ元素の濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下となるようにアクセプタ元素をイオン注入する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体層にN型領域を形成する工程と、
前記窒化物半導体層において前記N型領域下に位置する領域にアクセプタ元素をイオン注入する工程と、
前記N型領域が形成され、かつ前記アクセプタ元素がイオン注入された前記窒化物半導体層に熱処理を施して前記アクセプタ元素を活性化することによって、前記N型領域下に位置する第1P型領域を形成する工程と、を含み、
前記N型領域を形成する工程では、
前記N型領域におけるドナー元素の濃度が前記第1P型領域における前記アクセプタ元素の濃度以上の値となるように前記窒化物半導体層へ前記ドナー元素を高濃度にイオン注入し、
前記N型領域下に位置する領域に前記アクセプタ元素をイオン注入する工程では、
前記第1P型領域における前記アクセプタ元素の濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるように前記アクセプタ元素をイオン注入する、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理の最大温度は1300℃以上2000℃以下である、請求項1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記N型領域に両側から挟まれる領域に前記アクセプタ元素をイオン注入する工程、をさらに含み、
前記第1P型領域を形成する工程では、
前記N型領域が形成され、かつ前記N型領域下に位置する領域と前記N型領域に両側から挟まれる領域とに前記アクセプタ元素がイオン注入された前記窒化物半導体層に前記熱処理を施して前記アクセプタ元素を活性化することによって、前記N型領域下に位置する前記第1P型領域と、前記N型領域に両側から挟まれる第2P型領域とを形成し、
前記N型領域を形成する工程では、
前記N型領域における前記ドナー元素の濃度が、前記第1P型領域及び前記第2P型領域の各々における前記アクセプタ元素の濃度以上の値となるように前記窒化物半導体層へ前記ドナー元素を高濃度にイオン注入し、
前記N型領域に両側から挟まれる領域に前記アクセプタ元素をイオン注入する工程では、
前記第2P型領域における前記アクセプタ元素の濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるように前記アクセプタ元素をイオン注入する、請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記N型領域下に位置する領域に前記アクセプタ元素をイオン注入する工程と、前記N型領域に両側から挟まれる領域に前記アクセプタ元素をイオン注入する工程とを、
前記窒化物半導体層の一方の面側に配置されるマスクを用いて同時に行う、請求項3に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記窒化物半導体層の一方の面側から前記N型領域の少なくとも一部を除去して、前記第1P型領域を底面に露出する貫通穴を形成する工程と、
前記貫通穴内に電極を形成して、前記電極を前記第1P型領域に接触させる工程と、をさらに含む請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記貫通穴を形成する工程では、
前記N型領域の一部を除去して前記貫通穴を形成するとともに、前記N型領域の他の一部は前記窒化物半導体層に残しておき、
前記電極を形成する工程は、
前記貫通穴内に前記電極の第1部位を形成して、前記第1部位を前記第1P型領域に接触させる工程と、
前記窒化物半導体層の前記一方の面上に前記電極の第2部位を形成して、前記第2部位を前記N型領域の前記他の一部に接触させる工程と、を含む請求項5に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記電極を形成する工程では、
前記第1部位と前記第2部位とを一体に形成する請求項6に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項8】
窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層の一方の面側に設けられたN型領域と、
前記窒化物半導体層の前記一方の面側に設けられ、前記N型領域下に位置する第1P型領域と、を備え、
前記N型領域におけるドナー元素の濃度は、前記第1P型領域におけるアクセプタ元素の濃度以上の値であり、
前記第1P型領域における前記アクセプタ元素の濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である、窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記第1P型領域の厚さは、1nm以上25nm以下である、請求項8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記窒化物半導体層の前記一方の面側に設けられ、前記N型領域に両側から挟まれる第2P型領域、をさらに備え、
前記第2P型領域の少なくとも一部における前記アクセプタ元素の濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である、請求項8又は9に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記N型領域のうち、前記第2P型領域を両側から挟む部位の間隔は、50nm以上500nm以下である、請求項10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記N型領域の前記一方の面からの深さと、前記第2P型領域の前記一方の面からの深さは、互いに同じ深さである、請求項10又は11に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記第2P型領域は、
第1領域と、
前記第1領域と前記N型領域との間に位置し、前記第1領域及び前記N型領域とそれぞれ接する第2領域と、を有し、
前記第1領域よりも前記第2領域の方が前記アクセプタ元素の濃度が高く、
前記第2領域における前記アクセプタ元素の濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である、請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記第2領域におけるアクセプタ偏析の密度は、前記第1領域における前記アクセプタ偏析の密度よりも低い、請求項13に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記アクセプタ偏析を、
一方向への長さが30nm以上で、前記アクセプタ元素の濃度が5×1020cm-3以上であるロッド状アクセプタ偏析と、
一方向への長さが30nm未満で、前記アクセプタ元素の濃度が5×1020cm-3以上である非ロッド状アクセプタ偏析と、に分類すると、
前記第2領域において、前記ロッド状アクセプタ偏析の密度は1×1014cm-3以下であり、前記非ロッド状アクセプタ偏析の密度は1×1015cm-3未満である、請求項14に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記N型領域が前記第2P型領域を両側から挟む方向における前記第2領域の長さは、1nm以上25nm以下である、請求項13から15のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
前記N型領域上に設けられた電極、をさらに備える請求項8から16のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項18】
前記N型領域を貫通して前記第1P型領域に接触する電極、をさらに備える請求項8又は9に記載の窒化物半導体装置。
【請求項19】
前記電極は、
前記N型領域を貫通する貫通穴内に配置され、前記貫通穴の底面で前記第1P型領域に接触する第1部位と、
前記窒化物半導体層の前記一方の面上に配置され、前記N型領域に接触する第2部位と、を有する請求項18に記載の窒化物半導体装置。
【請求項20】
前記第1部位と前記第2部位とが一体に形成されている、請求項19に記載の窒化物半導体装置。
【請求項21】
前記窒化物半導体層は窒化ガリウムである、請求項8から20のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項22】
前記アクセプタ元素は、マグネシウム及びベリリウムの少なくとも一方を含む、請求項8から21のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項23】
前記窒化物半導体層に設けられたP型のウェル領域と、
前記窒化物半導体層に設けられ、前記ウェル領域にチャネルが形成される電界効果トランジスタと、を備え、
前記第1P型領域は、前記ウェル領域よりも前記アクセプタ元素の濃度が高く、かつ前記ウェル領域と接する、請求項8から22のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項24】
前記窒化物半導体層に設けられたダイオード、を備え、
前記第1P型領域は前記ダイオードに含まれる、請求項8から22のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)構造を有する窒化物半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、窒化物半導体装置では、マグネシウム(Mg)をドーパントとして用いることによりP型の伝導度制御が可能である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
窒化物半導体装置において、良好なオーミック接触を実現するためには、高濃度のP型領域を窒化物半導体に選択的に形成する必要がある。P型領域を選択形成する手法としては、コスト、生産性、信頼性の観点でイオン注入が望ましい。しかし、窒化物半導体に対してMgを高濃度にイオン注入し、Mgを活性化させるために1300℃を超える高温度で熱処理を施すと、Mgがロッド状に高密度に偏析する。Mgがロッド状に高密度に偏析すると、偏析が生じている領域以外の領域でMg濃度は低下する(例えば、非特許文献1参照)。また、超高圧雰囲気下でさらに1400℃を超える高温度で熱処理を行うと、Mgが深く拡散し、濃度が低下する(例えば、非特許文献2参照)。このため、高濃度のP型領域を形成することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-096744号公報
【特許文献2】特開2014-086698号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kumar et.al.,J.Appl.Phys.126(2019)235704.
【非特許文献2】H.Sakurai et.al.,Appl.Phys.Lett. 115,142104(2019).
【非特許文献3】G.Miceli,A.Pasquarello PRB(2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱処理によりMgが活性化されてP型領域になると、P型領域のフェルミ準位が価電子帯に近づく。フェルミ準位が価電子帯に近づくと、Mgアクセプタの形成エネルギー(すなわち、GaNのGaサイトにMgを入れるために要するエネルギー)が増加し、Mgの活性化が不安定となる(例えば、非特許文献3参照)。上記したMgの高密度の偏析は、Mgの活性化が不安定となり、欠陥を介してMgが偏析しやすくなることで生じる、と考えられる。
【0007】
本発明は、このような考えに基づいて本発明者が鋭意検討してなされたものであって、高濃度のP型領域を形成可能な窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、窒化物半導体層にN型領域を形成する工程と、前記窒化物半導体層において前記N型領域下に位置する領域にアクセプタ元素をイオン注入する工程と、前記N型領域が形成され、かつ前記アクセプタ元素がイオン注入された前記窒化物半導体層に熱処理を施して前記アクセプタ元素を活性化することによって、前記N型領域下に位置する第1P型領域を形成する工程と、を含む。前記N型領域を形成する工程では、前記N型領域におけるドナー元素の濃度が前記第1P型領域における前記アクセプタ元素の濃度以上の値となるように前記窒化物半導体層へ前記ドナー元素を高濃度にイオン注入する。前記N型領域下に位置する領域に前記アクセプタ元素をイオン注入する工程では、前記第1P型領域における前記アクセプタ元素の濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるように前記アクセプタ元素をイオン注入する。
【0009】
本発明の一態様に係る窒化物半導体装置は、窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層の一方の面側に設けられたN型領域と、前記窒化物半導体層の前記一方の面側に設けられ、前記N型領域下に位置する第1P型領域と、を備える。前記N型領域におけるドナー元素の濃度は、前記第1P型領域におけるアクセプタ元素の濃度以上の値である。前記第1P型領域における前記アクセプタ元素の濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高濃度のP型領域を形成可能な窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係る縦型MOSFETの構成例を示す平面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施形態1に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの断面図において第1P+型領域とその周辺領域を拡大して示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図4D】
図4Dは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図4E】
図4Eは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図4F】
図4Fは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図5】
図5は、N型GaNとP型GaNとの接触部及びその近傍のバンド図であって、P型GaNにイオン注入されたアクセプタ元素(例えば、Mg)を活性化するための熱処理前と熱処理後の、価電子帯Ev、伝導帯Ec、フェルミ準位Efを示す図である。
【
図6】
図6は、N型GaNが周囲に無い場合のP型GaNのバンド図であって、アクセプタ元素を活性化するための熱処理前と熱処理後の、価電子帯Ev、伝導帯Ec、フェルミ準位Efを示す図である。
【
図7】
図7は、GaNにおけるMgアクセプタの形成エネルギー等とGaNのフェルミ準位との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、P型GaNのアクセプタ濃度と、N型GaNとの接触によりP型GaNに形成される空乏層の幅との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、GaNの深さ方向におけるMg、Siのプロファイル例を示すグラフである。
【
図10A】
図10Aは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図12C】
図12Cは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図12D】
図12Dは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図12E】
図12Eは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図12F】
図12Fは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図13】
図13は、GaNのX軸方向におけるMg、Siのプロファイル例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図16A】
図16Aは、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図16B】
図16Bは、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図16C】
図16Cは、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図16D】
図16Dは、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図18A】
図18Aは、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図18B】
図18Bは、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図20A】
図20Aは、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図20B】
図20Bは、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図21】
図21は、本発明の実施形態6に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図22】
図22は、本発明の実施形態6に係るGaN半導体装置100Eの構成例を示す断面図である。
【
図23】
図23は、本発明の実施形態7に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図24A】
図24Aは、本発明の実施形態7に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図24B】
図24Bは、本発明の実施形態7に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図25】
図25は、本発明の実施形態8に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図26】
図26は、本発明の実施形態9に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図27】
図27は、本発明の実施形態10に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図28】
図28は、本発明の実施形態11に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図29】
図29は、本発明の実施形態12に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図30】
図30は、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図31】
図31は、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図32A】
図32Aは、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図32B】
図32Bは、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図32C】
図32Cは、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図33】
図33は、
図32AにおけるN+型ソース領域、第1P+型領域及びP型のウェル領域を拡大して示す断面図である。
【
図34】
図34は、Mgを活性化するための熱処理を行った後の、N+型ソース領域、第1P+型領域及びP型のウェル領域の深さ方向における不純物濃度分布を模式的に示すグラフである。
【
図35】
図35は、本発明の実施形態14に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図36】
図36は、本発明の実施形態14に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図37】
図37は、本発明の実施形態15に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図38】
図38は、本発明の実施形態15に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図39】
図39は、本発明の実施形態16に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図40】
図40は、本発明の実施形態17に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
また、以下の説明では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の文言を用いて、方向を説明する場合がある。例えば、X軸方向及びY軸方向は、後述のGaN基板10の表面10aに平行な方向である。X軸方向及びY軸方向を水平方向ともいう。また、Z軸方向は、GaN基板10の表面10aと垂直に交わる方向(すなわち、GaN基板10の厚さ方向)である。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
また、以下の説明において、「平面視」とは、例えば、後述のGaN基板10の表面10aと垂直に交わる方向(例えば、Z軸方向)から見ることを意味する。
【0014】
また、以下の説明では、Z軸の正方向を「上」と称し、Z軸の負方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
また以下の説明において、導電型を示すPやNに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じPとP(または、NとN)とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0015】
<実施形態1>
(構成例)
図1は、本発明の実施形態1に係る窒化ガリウム半導体装置(本発明の「窒化物半導体装置」の一例;以下、GaN半導体装置)100の構成例を示す平面図である。
図1は、X-Y平面図である。
図1に示すように、GaN半導体装置100は、活性領域110とエッジ終端領域130とを有する。活性領域110は、ゲートパッド112及びソースパッド114を有する。ゲートパッド112及びソースパッド114は、後述のゲート電極23及びソース電極25にそれぞれ電気的に接続された電極パッドである。
【0016】
Z軸方向からの平面視で、エッジ終端領域130は、活性領域110の周囲を囲んでいる。エッジ終端領域130は、ガードリング構造、JTE(Junction Termination Extension)構造の一以上を有してよい。エッジ終端領域130は、活性領域110で発生した空乏層をエッジ終端領域130まで広げることにより、活性領域110での電界集中を防ぐ機能を有してよい。
【0017】
図2は、本発明の実施形態1に係る縦型MOSFET1の構成例を示す平面図である。
図2は、
図1に示した活性領域110の一部を拡大して示すとともに、N+型ソース領域18等のZ軸方向からの平面視による形状を示すため、ゲートパッド112、ソースパッド114、ゲート電極23及びソース電極25の図示は省略している。
【0018】
図3Aは、本発明の実施形態1に係る縦型MOSFET1の構成例を示す断面図である。
図3Aは、
図2の平面図をX1-X´1線で切断した断面を示している。
図3Bは、
図3Aの断面図において第1P+型領域とその周辺領域を拡大して示す断面図である。
図3Bは、
図2Bの平面図をX2-X´2線で切断した断面を示している。
【0019】
図2及び
図3Aに示すGaN半導体装置100は、窒化ガリウム基板(本発明の「窒化物半導体層」の一例;以下、GaN基板)10と、GaN基板10に設けられた複数の縦型MOSFET1(本発明の「電界効果トランジスタ」の一例)と、を備える。GaN半導体装置100では、縦型MOSFET1が一方向(例えば、X軸方向)に繰り返し設けられている。1つの縦型MOSFET1が繰り返しの単位構造であり、この単位構造が一方向(例えば、X軸方向)に並んで配置されている。
【0020】
図2及び
図3Aに示すように、縦型MOSFET1は、GaN基板10に設けられたN-型のドリフト領域12、P型のウェル領域14、N+型ソース領域18(本発明の「N型領域」の一例)及び第1P+型領域30(本発明の「第1P型領域」の一例)と、GaN基板10の表面10a(本発明の「一方の面」の一例)上に設けられたゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21上に設けられたゲート電極23と、GaN基板10の表面10a側に設けられてN+型ソース領域18と電気的に接続するソース電極25(本発明の「電極」の一例)と、GaN基板10の裏面10b側に設けられてドリフト領域12に電気的に接続するドレイン電極27と、を有する。
【0021】
GaN基板10は、GaN単結晶基板である。GaN基板10は、例えばN-型の基板である。GaN基板10は、表面10aと、表面10aの反対側に位置する裏面10bとを有する。例えば、GaN基板10は、貫通転位密度が1×107cm-2未満である低転位自立GaN基板である。
GaN基板10に含まれるドナー元素(N型不純物)は、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、及びO(酸素)の一種類以上の元素であってよい。また、GaN基板10に含まれるアクセプタ元素(P型不純物)は、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Be(ベリリウム)及びZn(亜鉛)の一種類以上の元素であってよい。
【0022】
GaN基板10が低転位自立GaN基板であることにより、GaN基板10に大面積のパワーデバイスが形成される場合でも、パワーデバイスにおけるリーク電流を少なくすることができる。これにより、パワーデバイスを高い良品率で製造することが可能となる。また、縦型MOSFET1の製造工程に含まれる熱処理において、イオン注入された不純物が転位に沿って深く拡散することを防止することができる。
なお、GaN基板10は、N-型ではなく、N型であってもよい。また、GaN基板10は、GaN単結晶基板と、GaN単結晶基板上にエピタキシャル成長された単結晶のGaN層とを含んでもよい。この場合、GaN単結晶基板はN+型又はN型であってもよく、GaN層はN型又はN-型であってもよい。また、GaN単結晶基板が低転位自立GaN基板であってもよい。
【0023】
縦型MOSFET1において、GaN基板10は、アルミニウム(Al)及びインジウム(In)の一以上の元素を含んでもよい。GaN基板10は、GaNにAl及びInを微量に含んだ混晶半導体、即ちAlxInyGa1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1)であってもよい。なお、GaNは、AlxInyGa1-x-yNにおいてx=y=0とした場合である。
GaN基板10に、ドリフト領域12、P型のウェル領域14、N+型ソース領域18及び第1P+型領域30がそれぞれ設けられている。ウェル領域14、N+型ソース領域18及び第1P+型領域30は、それぞれ、GaN基板10の表面10aから所定の深さに不純物がイオン注入され、熱処理により不純物が活性化された領域である。
【0024】
例えば、P型のウェル領域14内であって、N+型ソース領域18下に第1P+型領域30が設けられている。
図3A及び
図3Bに示すように、第1P+型領域30は、N+型ソース領域18及びP型のウェル領域14に上下から挟まれており、N+型ソース領域18及びウェル領域14とそれぞれ接している。ウェル領域14よりも第1P+型領域30の方が、P型の不純物濃度が高い。ウェル領域14及び第1P+型領域30は、アクセプタ元素として、Mg及びBeの少なくとも一方を含む。
一例を挙げると、ウェル領域14及び第1P+型領域30は、アクセプタ元素としてMgを含む。ウェル領域14におけるMg濃度は、1×10
16cm
-3以上3×10
18cm
-3以下である。第1P+型領域30におけるMg濃度は、1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下である。
【0025】
ドリフト領域12はN-型の領域である。N-型のドリフト領域12よりもN+型ソース領域18の方が、N型の不純物濃度が高い。ドリフト領域12及びN+型ソース領域18は、N型の不純物として、例えばSiを含む。例えば、ドリフト領域12のN型の不純物濃度は、GaN基板10のN型の不純物濃度と同じである。この場合、ドリフト領域12には、N型の不純物がイオン注入されていなくてもよい。ドリフト領域12におけるSiの濃度は、1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下である。
【0026】
N+型ソース領域18は、ウェル領域14の表面(すなわち、ウェル領域14内であって、GaN基板10の表面10a)側に設けられている。N+型ソース領域18は、ウェル領域14の表面側にSiがイオン注入され、熱処理によりSiが活性化されることにより形成される。N+型ソース領域18におけるSiの濃度は、1×1019cm-3以上1×1022cm-3以下である。
【0027】
N+型ソース領域18の上部は、GaN基板10の表面10aに露出している。N+型ソース領域18は、X軸方向における一方の側部と、X軸方向において一方の反対側に位置する他方の側部とを有する。N+型ソース領域18の一方の側部と他方の側部はウェル領域14にそれぞれ接している。また、N+型ソース領域18の底部の一部又は全部は、第1P+型領域30に接している。縦型MOSFET1のチャネルは、ウェル領域14であって、N+型ソース領域18の一方の側部又は他方の側部と隣接する領域に形成される。以下の説明では、ウェル領域14であって、縦型MOSFET1のチャネルが形成される領域をチャネル領域という。
【0028】
図2に示すように、ウェル領域14、第1P+型領域30及びN+型ソース領域18は、例えば、Y軸方向に延伸するストライプ形状を有する。
ドリフト領域12の上部(以下、上部領域)121は、GaN基板10の表面10aに露出している。上部領域121は、表面10aにおいてゲート絶縁膜21と接している。上部領域121は、Y軸方向で向かい合う一対のウェル領域14間に位置する。上部領域121はJFET領域と呼んでもよい。上部領域121は、N-型ではなく、N型であってもよい。これにより、縦型MOSFET1のオン抵抗を低減することができる。
【0029】
ドリフト領域12の下部(以下、下部領域)122は、ウェル領域14の底部と接している。下部領域122は、上部領域121とドレイン電極27との間、及び、ウェル領域14とドレイン電極27との間にそれぞれ位置する。下部領域122は、X軸方向で繰り返される複数の縦型MOSFET1(すなわち、複数の単位構造)間で、X軸方向に連続して設けられている。
ドリフト領域12は、ドレイン電極27とチャネル領域との間の電流経路として機能する。第1P+型領域30は、ソース電極25とP型のウェル領域14との間でオーミック性に優れたオーミック接続を取るための領域である。
【0030】
すなわち、第1P+型領域30は、トンネル接合により、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間でオーミック接続を実現させる。ソース電極25とN+型ソース領域18との間、及び、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間がそれぞれオーミック接触であるため、ソース電極25とP型のウェル領域14との間がオーミック接続となる。ソース電極25は、N+型ソース領域18と第1P+型領域30とを介して、P型のウェル領域14とオーミック接続を取ることができる。なお、N+型ソース領域18と第1P+型領域30は、ゲートオフ時の正孔引き抜き経路としても機能する。
【0031】
ゲート絶縁膜21は、例えばシリコン酸化膜(SiO2膜)である。ゲート絶縁膜21は、例えば平坦な表面10a上に設けられる。
ゲート電極23は、ゲート絶縁膜21を介してチャネル領域の上方に設けられている。例えば、ゲート電極23は、平坦なゲート絶縁膜21上に設けられたプレーナ型である。ゲート電極23は、ゲートパッド112と異なる材料で形成されている。ゲート電極23は不純物をドープしたポリシリコンで形成され、ゲートパッド112はAlまたはAl‐Siの合金で形成されている。
【0032】
ソース電極25は、GaN基板10の表面10a上に設けられている。ソース電極25は、N+型ソース領域18の一部と接している。ソース電極25は、図示しない層間絶縁膜を介してゲート電極23上にも設けられてもよい。層間絶縁膜は、ゲート電極23とソース電極25とが電気的に接続しないように、ゲート電極23の上部及び側部を覆ってもよい。
【0033】
ソース電極25は、N+型ソース領域18とオーミック接触することができる材料で構成されており、例えばソースパッド114と同一の材料で構成されている。一例を示すと、ソース電極25は、AlまたはAl-Siの合金で構成されており、ソースパッド114を兼ねている。ソース電極25は、GaN基板10の表面10aとAl(または、Al-Si)との間にバリアメタル層を有してもよい。バリアメタル層の材料としてチタン(Ti)を使用してもよい。
ドレイン電極27は、GaN基板10の裏面10b側に設けられており、裏面10bに接している。ドレイン電極27は、GaN基板10の裏面10bとオーミック接触することができる材料で構成されており、例えばソース電極25と同様の材料で構成されている。
【0034】
図3Aにおいて、ゲート端子、ソース端子及びドレイン端子を、それぞれG、D及びSで示す。例えば、ゲート端子Gを介してゲート電極23に閾値電圧以上の電位が与えられると、チャネル領域に反転層が形成される。チャネル領域に反転層が形成されている状態で、ドレイン電極27に所定の高電位が与えられ、かつ、ソース電極25に低電位(例えば、接地電位)が与えられると、ドレイン端子Dからソース端子Sへ電流が流れる。また、ゲート電極23に閾値電圧よりも低い電位が与えられるとチャネル領域に反転層は形成されず、電流は遮断される。これにより、縦型MOSFET1は、ソース端子S及びドレイン端子D間における電流をスイッチングすることができる。
【0035】
第1P+型領域30では、Mgの偏析が抑制されている。例えば、Mg偏析を、ロッド状Mg偏析と非ロッド状Mg偏析とに分類する。ロッド状Mg偏析は、一方向への長さが30nm以上で、Mg濃度が5×1020cm-3以上の偏析である。非ロッド状Mg偏析は、一方向への長さが30nm未満で、Mg濃度が5×1020cm-3以上の偏析である。第1P+型領域30におけるロッド状アクセプタ偏析の密度は1×1014cm-3以下であり、非ロッド状アクセプタ偏析の密度は1×1015cm-3未満となっている。
【0036】
これは、後述するように、第1P+型形成領域30´(
図4D参照参照)にイオン注入されたMgを熱処理で活性化する際に、予め、N+型ソース領域18を第1P+型形成領域30´に隣接して形成しておくことで実現される。第1P+型形成領域30´にN+型ソース領域18を接触させることで、第1P+型形成領域30´に空乏層を生じさせ、空乏層におけるフェルミ準位が価電子帯に近づくことを抑制している(より好ましくは、伝導帯に近づけている)。これにより、第1P+型領域30のMg偏析を抑制している。Mgの偏析が抑制されることによって、高濃度で、濃度のばらつきが小さいP+型化が実現される。
【0037】
また、N+型ソース領域18におけるドナー元素(例えば、Si)の濃度は、第1P+型領域30におけるMg濃度以上の値となっている。これにより、N+型ソース領域18から第1P+型領域30側へ空乏層は広く拡がり易く、Mg濃度が高い第1P+型領域30が広く形成され易くなっている。
第1P+型領域30は、Mg濃度が高く、Mg濃度のばらつきも小さいため、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間をトンネル接合することができ、ソース電極とウェル領域14との間でオーミック接続を実現することができる。
なお、
図3Bにおいて、N+型ソース領域18の深さd18は、例えば1nm以上500nm以下であり、一例を示すと数nmから数十nmの範囲である。第1P+型領域30の厚さt30は、例えば、1nm以上25nm以下である。
【0038】
(製造方法)
次に、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法について説明する。
図4Aから
図4Fは、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法を工程順に示す断面図である。GaN半導体装置100は、成膜装置、露光装置、エッチング装置、イオン注入装置、熱処理装置など、各種の装置によって製造される。以下、これらの装置を、製造装置と総称する。
【0039】
まず、製造装置は、ウェル領域14(
図3A参照)を形成するためのイオン注入を行う。例えば、製造装置は、ウェル領域14が形成される領域(以下、ウェル形成領域)14´の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク(図示せず)をGaN基板10上に形成し、このマスクが形成されたGaN基板10にアクセプタ元素としてMgをイオン注入する。マスクは、例えばレジストパターンである。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクを除去する。
【0040】
ウェル領域14を形成するためのイオン注入工程では、N+型ソース領域18及び第1P+型領域30(
図3A参照)の各々よりもウェル領域14の方が、GaN基板10の表面10aから深く形成されるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。このイオン注入工程は、加速エネルギーが1条件である一段イオン注入で行ってもよいし、加速エネルギーが複数条件ある多段イオン注入で行ってもよい。また、このイオン注入工程では、ウェル領域14におけるMg濃度が1×10
16cm
-3以上3×10
18cm
-3以下となるように、Mgのドーズ量が設定される。
【0041】
次に、製造装置は、N+型ソース領域18(
図3A参照)を形成するためのイオン注入を行う。例えば、製造装置は、N+型ソース領域18が形成される領域(以下、ソース形成領域18´)の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク(図示せず)をGaN基板10上に形成し、このマスクが形成されたGaN基板10にドナー元素としてSiをイオン注入する。マスクは、例えばレジストパターンである。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクを除去する。
【0042】
N+型ソース領域18を形成するためのイオン注入工程では、N+型ソース領域18の深さd18(
図3B参照)が1nm以上500nm以下となるように、Siの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。
また、N+型ソース領域18を形成するためのイオン注入工程では、N+型ソース領域18におけるSi濃度が、第1P+型領域30におけるMg濃度以上の値となるように、Siのドーズ量が設定される。例えば、N+型ソース領域18におけるSi濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
22cm
-3以下となるように、Siのドーズ量が設定される。
【0043】
次に、製造装置は、GaN基板10に最大温度が1200℃以下の熱処理を施す。この熱処理は、例えば急速加熱処理である。この熱処理によりGaN基板10にイオン注入されたMgとSiとが活性化され、
図4Bに示すように、GaN基板10にP型のウェル領域14とN+型ソース領域18とが形成されるとともに、ドリフト領域12が画定される。また、この熱処理により、GaN基板10において、Mg及びSiのイオン注入により生じた欠陥をある程度回復することができる。なお、この熱処理は、GaN基板10上に保護膜(図示せず)を形成した状態で行ってもよい。保護膜として、例えば窒化アルミニウム(AlN)又は窒化シリコン(SiN)を用いてよい。この保護膜は、熱処理後に除去する。
【0044】
次に、
図4Cに示すように、製造装置は、第1P+型領域30(
図3A参照)が形成される領域(以下、第1P+型形成領域)30´の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク52をGaN基板10上に形成する。マスク52は、例えばレジストパターンである。
図4Cに示すように、第1P+型形成領域30´は、N+型ソース領域18と一部が重なるように設定されてもよい。この場合、第1P+型形成領域30´であってN+型ソース領域18下に位置する領域(すなわち、N+型ソース領域18と重ならない領域)に空乏層が形成され、この空乏層が形成された領域に第1P+型領域30が形成される。
【0045】
次に、製造装置は、マスク52が形成されたGaN基板10にアクセプタ元素としてMgをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスク52を除去する。
第1P+型領域30を形成するためのイオン注入工程では、第1P+型領域30がN+型ソース領域18下に形成されるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。すなわち、第1P+型領域30を形成するためのイオン注入工程では、GaN基板10の表面10aからの深さがN+型ソース領域18の底部よりも深い位置であり、かつN+型ソース領域18との接触により空乏層が形成される領域にMgが注入されるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。
【0046】
また、第1P+型領域30を形成するためのイオン注入工程では、第1P+型領域30におけるMg濃度が、N+型ソース領域18におけるSi濃度以下の値となるように、Mgのドーズ量が設定される。例えば、第1P+型領域30におけるMg濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるように、Mgのドーズ量が設定される。
【0047】
次に、
図4Dに示すように、製造装置は、GaN基板10上に保護膜53を形成する。保護膜53は、例えば、AlN又はSiNである。
次に、製造装置は、保護膜53で覆われたGaN基板10に、最大温度が1300℃以上2000℃以下の熱処理を施す。この熱処理は、例えば急速加熱処理である。この熱処理によりGaN基板10にイオン注入されたMgが活性化され、
図4Eに示すように、GaN基板10に、第1P+型領域30が形成される。また、この熱処理により、GaN基板10において、Mgのイオン注入により生じた欠陥をある程度回復することができる。熱処理後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上から保護膜53を除去する。
【0048】
次に、
図4Fに示すように、製造装置は、GaN基板10上にゲート絶縁膜21を形成する。次に、製造装置は、ゲート電極23とソース電極25とを形成する。次に、製造装置は、ゲート電極23とソース電極25とが覆わるようにGaN基板10の表面10a上に層間絶縁膜(図示せず)を形成する。次に、製造装置は、ゲート電極23に電気的に接続するゲートパッド112(
図1参照)と、ソース電極25に電気的に接続するソースパッド114(
図1参照)とを形成する。その後、製造装置は、GaN基板10の裏面10bにドレイン電極27を形成する。このような工程を経て、縦型MOSFET1を備えるGaN半導体装置100(
図3A参照)が完成する。
【0049】
(GaNに生じる空乏層のフェルミ準位)
図5は、N型GaNとP型GaNとの接触部及びその近傍のバンド図であって、P型GaNにイオン注入されたアクセプタ元素(例えば、Mg)を活性化するための熱処理前と熱処理後の、価電子帯Ev、伝導帯Ec、フェルミ準位Efを示す図である。なお、
図5の熱処理前及び熱処理後のN型GaNは、本実施形態のN+型ソース領域18に相当する。また、
図5の熱処理前のP型GaNは本実施形態の第1P+型形成領域30´に相当し、熱処理後のP型GaNは本実施形態の第1P+型領域30に相当する。
【0050】
図5に示すように、N型GaNとP型GaNとの接触部には空乏層が生じる。空乏層でバンド構造は曲がり、N型GaNのフェルミ準位EfとP型GaNのフェルミ準位Efとが一致している。この状態で熱処理を施すと、P型GaNではMgが活性化されてフェルミ準位が価電子帯に近づくが、空乏層ではバンド構造が曲がっている。このため、P型GaNにおいて空乏層が生じている領域では、空乏層が生じていない領域と比べて、フェルミ準位Efの価電子帯への接近が抑制される。
【0051】
図6は、N型GaNが周囲に無い場合のP型GaNのバンド図であって、アクセプタ元素を活性化するための熱処理前と熱処理後の、価電子帯Ev、伝導帯Ec、フェルミ準位Efを示す図である。N型GaNが周囲に無い場合は、
図6に示すようにP型GaNに空乏層は生じず、空乏層におけるバンド構造の曲がりも生じない。絶縁膜で覆われたP型GaNに熱処理を施すと、P型GaNにイオン注入されたアクセプタ元素(例えば、Mg)は活性化され、P型GaNのフェルミ準位は価電子帯に近づく。
【0052】
(フェルミ準位の制御によるMg偏析の抑制)
図7は、GaNにおけるMgアクセプタの形成エネルギー等とGaNのフェルミ準位との関係を示すグラフである。このグラフは、第一原理計算で算出されたデータである。
図7の横軸はフェルミ準位Ef(eV)を示し、
図7の縦軸はエネルギー(eV)を示す。
図7の実線(a)は、Mgアクセプタの形成エネルギー(すなわち、GaNのGaサイトにMgを入れるために要するエネルギー)と、GaNのフェルミ準位Efとの関係を示している。
図7の破線(b)は、GaNの格子間にGaが入るのに要するエネルギーと、GaNのフェルミ準位Efとの関係を示す。
【0053】
図7において、フェルミ準位Efが0(eV)に近づくほど(すなわち、フェルミ準位Efが価電子帯に近づき、GaNの導電型がP型に近づくほど)、Mgアクセプタの形成エネルギーは大きくなる。また、フェルミ準位が0(eV)に近づくほど、GaNの格子間にGaが入るのに要するエネルギーは小さくなる。
図7のグラフから、GaNのフェルミ準位が価電子帯に近づき、GaNの導電型がP型に近づくほど、Mgは活性化され難くなり、アクセプタとして機能し難くなることがわかる。換言すると、GaNのフェルミ準位が伝導帯に近づき、GaNの導電型がN型に近づくほど、Mgは活性化され易くなり、アクセプタとして機能し易くなることがわかる。
【0054】
本発明の実施形態では、第1P+型形成領域30´であってN+型ソース領域18下に位置する領域(すなわち、N+型ソース領域18と重ならない領域)は、N+型ソース領域18との接触により空乏層が形成され、空乏層のフェルミ準位Efは価電子帯Evへの接近が抑制される。第1P+型形成領域30´であってN+型ソース領域18下に位置する領域のフェルミ準位Efは価電子帯に接近しないように制御されるため、この領域では、Mgは活性化され易く、アクセプタとして機能し易くなっている。
【0055】
(空乏層の幅)
図8は、P型GaNのアクセプタ濃度と、N型GaNとの接触によりP型GaNに形成される空乏層の幅との関係を示すグラフである。
図8の横軸はP型GaNのアクセプタ濃度(cm
-3)を示し、
図8の縦軸はP型GaNに形成される空乏層の幅(nm)を示している。
図8に示すように、P型GaNにおけるアクセプタ濃度が1×10
18cm
-3以上1×10
21cm
-3以下で、N型GaNにおけるドナー濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
22cm
-3以下の場合、N型GaNとの接触によりP型GaNに形成される空乏層の幅(深さ)は、およそ数nm以上60nm以下となる。N型GaNにおけるドナー濃度が高濃度になるほど、P型GaNに形成される空乏層の幅は大きくなる傾向がある。また、P型GaNにおけるアクセプタ濃度が高濃度になるほど、P型GaNに形成される空乏層の幅は小さくなる傾向がある。
【0056】
例えば、P型GaNにおけるアクセプタ濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下で、N型GaNにおけるドナー濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
22cm
-3以下の場合、N型GaNとの接触によりP型GaNに形成される空乏層の幅(深さ)は、1nm以上25nm以下となる。P型GaNにおけるアクセプタ濃度が1×10
19cm
-3台のとき、ドナー濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
22cm
-3以下のN型GaNとの接触によりP型GaNに形成される空乏層の幅は、実質25nm程度である。
図4Dに示したように、第1P+型形成領域30´の少なくとも一部は、N+型ソース領域18下に位置する。このため、第1P+型形成領域30´のアクセプタ濃度(例えば、Mg濃度)が1×10
19cm
-3台のとき、第1P+型形成領域30´であってN+型ソース領域18下に位置する領域には、25nm程の空乏層が形成される。
【0057】
(Mg、Siのプロファイル)
図9は、GaNの深さ方向におけるMg、Siのプロファイル例を示すグラフである。
図9の横軸はGaNの深さ方向を示し、
図9の縦軸はMg又はSiの濃度を示す。
図9において、例えば、N+注入領域はソース形成領域18´(
図4A参照)に相当し、P+注入領域は第1P+型形成領域30´(
図4C参照)に相当する。また、N+、P+重なり領域は、ソース形成領域18´と第1P+型形成領域30´との重複領域に相当する。N+注入領域に注入されるSiはP+注入領域に注入されるMgよりも高濃度であるため、ソース形成領域18´と第1P+型形成領域30´との重複領域の導電型はN型となる。
Mg濃度維持領域は、活性化されたN+注入領域(例えば、N+型ソース領域18)との接触により空乏化され、フェルミ準位Efが価電子帯に接近しないように制御される。これにより、Mg濃度維持領域では、Mgの活性化が安定化し、Mgの偏析が抑制されるので、活性化後のMg濃度が高く維持される。
【0058】
第1P+型領域30(
図3A、3B参照)は、Mg濃度維持領域のみで構成されていることが好ましい。Mg濃度維持領域の厚さ(
図9では、横軸方向の長さ)は、1nm以上25nm以下であり、好ましくは1nm以上20nm以下であり、より好ましくは1nm以上10nm以下である。第1P+型領域30を介したN+型ソース領域18(
図3A、
図3B参照)とP型のウェル領域14(
図3A、
図3B参照)とのトンネル接合を実現するために、第1P+型領域30は、Mg濃度が高く、かつ薄いことが好ましい。第1P+型領域30をMg濃度維持領域のみで構成し、Mg濃度低下領域は形成されないようにすることで、第1P+型領域30のさらなる高濃度化が容易となる。
【0059】
なお、Mg濃度低下領域は、N+注入領域(例えば、N+型ソース領域18)から距離が離れているために空乏化されず、フェルミ準位Efが価電子帯に接近する領域である。Mg濃度低下領域では、Mg濃度維持領域と比べて、Mgの活性化が安定せず、Mgが偏析し易くなるので、Mg濃度が低下する。例えば、Mg濃度低下領域では、Mg濃度維持領域と同じ濃度でMgがイオン注入された場合でも、Mgの析出により、活性化後のMg濃度は3×1018cm-3付近まで低下する。
【0060】
Mg濃度低下領域を形成しないようにするには、Mgの注入領域がN+型ソース領域18下の空乏層内に収まるようにMgのイオン注入エネルギーを設定すればよい。例えば、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との接合界面から深さ方向へ25nmまでの範囲に空乏層が形成される場合は、イオン注入されるMgがこの範囲内で止まるように、Mgのイオン注入エネルギーを設定すればよい。これにより、N+型ソース領域18下にイオン注入されるMgのほぼ全てが空乏層内で活性化される。N+型ソース領域18下には、第1P+型領域30として、厚さが1nm以上25nm以下のMg濃度維持領域が形成され、Mg濃度低下領域の形成は抑制される。
【0061】
(実施形態1の効果)
以上説明したように、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法は、GaN基板10にN+型ソース領域18を形成する工程と、GaN基板10においてN+型ソース領域18下に位置する領域にアクセプタ元素(例えば、Mg)をイオン注入する工程と、N+型ソース領域18が形成され、かつMgがイオン注入されたGaN基板10に熱処理を施してMgを活性化することによって、N+型ソース領域18下に位置する第1P+型領域30を形成する工程と、を含む。N+型ソース領域18を形成する工程では、N+型ソース領域18におけるドナー元素(例えば、Si)の濃度が第1P+型領域30におけるMgの濃度以上の値となるようにGaN基板10へSiを高濃度にイオン注入する。N+型ソース領域18下に位置する領域にMgをイオン注入する工程では、第1P+型領域30におけるMg濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるようにMgをイオン注入する。
【0062】
これによれば、N+型ソース領域18と第1P+型形成領域30´とが接触することにより、第1P+型形成領域30´には空乏層が生じ、空乏層のフェルミ準位はN+型ソース領域18のフェルミ準位と一致する。N+型ソース領域18はN+型であるため、第1P+型形成領域30´に生じた空乏層のフェルミ準位が価電子帯に接近することを抑制することができる。これにより、第1P+型形成領域30´では、Mgアクセプタの形成エネルギーを低い状態で維持することができ、Mgを活性化し易くすることができるので、熱処理によるMgの偏析を抑制し、Mg偏析によるMg濃度の低下を抑制することができる。
【0063】
また、N+型ソース領域18におけるSi濃度は、第1P+型形成領域30´におけるMg濃度以上の値となる。これにより、第1P+型形成領域30´に空乏層が広く形成され、Mg偏析によるMg濃度の低下が抑制された、高濃度の第1P+型領域30を形成することができる。高濃度の第1P+型領域30は、トンネル接合により、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間でオーミック接続を実現させる。
【0064】
本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100は、GaN基板10と、GaN基板10の表面10a側に設けられたN+型ソース領域18と、GaN基板10の表面10a側に設けられ、N+型ソース領域18下に位置する第1P+型領域30と、を備える。N+型ソース領域18におけるSi濃度は、第1P+型領域30におけるMg濃度以上の値である。第1P+型領域30におけるMg濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。このような構成を有するGaN半導体装置100は、実施形態1で説明した上記の製造方法で製造することができる。
【0065】
<実施形態2>
(構成例)
図10Aは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの構成例を示す平面図である。
図10Aでは、実施形態1で説明した
図2と同様に、N+型ソース領域18等のZ軸方向からの平面視による形状を示すため、ゲートパッド112、ソースパッド114(
図1参照)、ゲート電極23及びソース電極25(
図11A参照)の図示は省略している。
図10Bは、
図10Aの平面図において2点鎖線で囲む領域をさらに拡大して示す平面図である。
図11Aは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの構成例を示す断面図である。
図11Aは、
図10Aの平面図をX1-X´1線で切断した断面を示している。
図11Bは、
図11Aの断面図において第2P+型領域20とその周辺領域を拡大して示す断面図である。
図11Bは、
図10Bの平面図をX3-X´3線で切断した断面を示している。
【0066】
図10A及び
図11Aに示すように、GaN半導体装置100Aは、縦型MOSFETの構成部として、GaN基板10に設けられたN-型のドリフト領域12、P型のウェル領域14、N+型ソース領域18、第1P+型領域30及び第2P+型領域20(本発明の「第2P型領域」の一例)と、GaN基板10の表面10a上に設けられたゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21上に設けられたゲート電極23と、GaN基板10の表面10a側に設けられてN+型ソース領域18及びP+型領域20と電気的に接続するソース電極25と、GaN基板10の裏面10b側に設けられてドリフト領域12に電気的に接続するドレイン電極27と、を有する。
【0067】
N-型のドリフト領域12、P型のウェル領域14、N+型ソース領域18、第1P+型領域30、ゲート絶縁膜21、ゲート電極23、ソース電極25及びドレイン電極27の各構成は、実施形態1と同様である。
第2P+型領域20は、GaN基板10に設けられている。第2P+型領域20は、GaN基板10の表面10aから所定の深さに不純物がイオン注入され、熱処理により不純物が活性化された領域である。
【0068】
例えば、第2P+型領域20は、P型のウェル領域14の表面側に設けられており、ウェル領域14と接している。第2P+型領域20は、アクセプタ元素として、Mg及びBeの少なくとも一方を含む。第2P+型領域20は、ウェル領域14よりもP型の不純物濃度が高い。
一例を挙げると、第2P+型領域20は、アクセプタ元素としてMgを含む。ウェル領域14におけるMg濃度は、1×1016cm-3以上3×1018cm-3以下である。第2P+型領域20の少なくとも一部(例えば、後述の第2領域202)におけるMg濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0069】
N+型ソース領域18は、X軸方向における一方の側部と、X軸方向において一方の反対側に位置する他方の側部とを有する。N+型ソース領域18の一方の側部はウェル領域14に接し、N+型ソース領域18の他方の側部は第2P+型領域20に接している。N+型ソース領域18の一方の側部は、チャネル領域側に位置する。また、N+型ソース領域18の底部の一部は、第1P+型領域30に接している。
【0070】
第2P+型領域20は、GaN基板10の表面10aに露出している。第2P+型領域20は、X軸方向における両側部がN+型ソース領域18に接し、底部がウェル領域14に接している。ウェル領域14、N+型ソース領域18、第1P+型領域30及び第2P+型領域20は、例えば、Y軸方向に延伸するストライプ形状を有する。
第2P+型領域20は、ウェル領域14と電極(例えば、ソース電極25)とのコンタクトを取るための領域である。第2P+型領域20は、ゲートオフ時の正孔引き抜き経路としても機能する。
【0071】
図10B及び
図11Bに示すように、第2P+型領域20は、第1領域201と、X軸方向において第1領域201の両側に位置する第2領域202とを有する。第2領域202は、第1領域201とN+型ソース領域18との間に位置し、第1領域201及びN+型ソース領域18とそれぞれ接している。第2P+型領域20のうち、第2領域202がN+型ソース領域18と接している。第2P+型領域20のX軸方向の長さ(すなわち、幅)をWとし、第1領域201の幅をW1とし、第2領域202の幅をW2とすると、W=W1+W2×2、の関係が成り立つ。Wは、例えば50nm以上500nm以下である。W1は、0nm以上498nm以下である。W2は、例えば1nm以上25nm以下である。
【0072】
第2P+型領域20はN+型ソース領域18に両側から挟まれているため、第2P+型領域20の幅WはN+型ソース領域18の間隔と言い換えてもよい。すなわち、上記の幅Wは、N+型ソース領域18のうち、第2P+型領域20を両側から挟む部位の間隔、と言い換えてもよい。
第2P+型領域20において、第2領域202におけるMg偏析の密度は、第1領域201におけるMg偏析の密度よりも低い。例えば、第2領域202におけるロッド状アクセプタ偏析の密度は1×1014cm-3以下であり、非ロッド状アクセプタ偏析の密度は1×1015cm-3未満となっている。第1領域201におけるロッド状アクセプタ偏析の密度及び非ロッド状アクセプタ偏析の密度は、第2領域202における各密度よりも高い値となっている。
【0073】
これは、後述するように、P+型形成領域20´(
図12D参照)にイオン注入されたMgを熱処理で活性化する際に、予め、N+型ソース領域18をP+型形成領域20´に隣接して形成しておくことで実現される。P+型形成領域20´にN+型ソース領域18を接触させることで、P+型形成領域20´の側部(第2領域202に相当する領域)に空乏層を生じさせ、空乏層におけるフェルミ準位が価電子帯に近づくことを抑制している(より好ましくは、伝導帯に近づけている)。これにより、第2領域202のMg偏析を抑制している。
【0074】
Mgの偏析が抑制されることによって、高濃度で、濃度のばらつきが小さいP+型化が実現される。第2P+型領域20では、N+型ソース領域18から空乏層が伸びることにより、第1領域201よりも第2領域202の方がMgの偏析が抑制されており、Mg濃度が高くなっている。例えば、第2領域202におけるMg濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。第1領域201におけるMg濃度は、第2領域202におけるMg濃度よりも低く、3×1018cm-3付近まで低下している。
【0075】
また、N+型ソース領域18におけるドナー元素(例えば、Si)の濃度は、第2領域202におけるMg濃度以上の値となっている。これにより、N+型ソース領域18から第2領域202側へ空乏層は広く拡がり易く、Mg濃度が高い第2領域202が広く形成され易くなっている。
第2領域202は、Mg濃度が高く、Mg濃度のばらつきも小さいため、第2P+型領域20とソース電極25との間でオーミック接触を実現することができる。
【0076】
なお、
図11Bに示すように、N+型ソース領域18の表面10aからの深さd18と、第2P+型領域20の表面10aからの深さd20は、互いに同じ深さであることが好ましい。例えば、N+型ソース領域18の深さd18と、第2P+型領域20の深さd20はそれぞれ、1nm以上500nm以下であり、一例を示すと数nmから数十nmの範囲である。N+型ソース領域18の深さd18と、第2P+型領域20の深さd20は、その差が50nm以下であることが好ましい(|d18-d20|≦50nm)。その理由は、第2P+型領域20がN+型ソース領域18よりも浅いと、第2P+型領域20の下部が空乏化して、第2P+型領域20とP型のウェル領域14との接続抵抗が増えてしまうからである。また、第2P+型領域20がN+型ソース領域18よりも深いと、この深い部分はN+型ソース領域18から離れるため空乏層は拡がり難く、深い部分のMgは活性化しにくくなるからである。
【0077】
(製造方法)
次に、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの製造方法について説明する。
図12Aから
図12Fは、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの製造方法を工程順に示す断面図である。実施形態2に係るGaN半導体装置100Aは、実施形態1に係るGaN半導体装置100と同様に、成膜装置、露光装置、エッチング装置、イオン注入装置、熱処理装置など、各種の製造装置によって製造される。
【0078】
まず、製造装置は、ウェル領域14(
図11A参照)を形成するためのイオン注入を行う。例えば、
図12Aに示すように、製造装置は、ウェル形成領域14´の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク(図示せず)をGaN基板10上に形成し、このマスクが形成されたGaN基板10にアクセプタ元素としてMgをイオン注入する。マスクは、例えばレジストパターンである。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクを除去する。
【0079】
ウェル領域14を形成するためのイオン注入工程では、
図11Aに示したN+型ソース領域18、第1P+型領域30及び第2P+型領域20の各々よりもウェル領域14の方が、GaN基板10の表面10aから深い位置まで形成されるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。このイオン注入工程は、加速エネルギーが1条件である一段イオン注入で行ってもよいし、加速エネルギーが複数条件ある多段イオン注入で行ってもよい。また、このイオン注入工程では、ウェル領域14におけるMg濃度が1×10
16cm
-3以上3×10
18cm
-3以下となるように、Mgのドーズ量が設定される。
【0080】
次に、製造装置は、N+型ソース領域18を形成するためのイオン注入を行う。例えば、製造装置は、ソース形成領域18´の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク(図示せず)をGaN基板10上に形成し、このマスクが形成されたGaN基板10にドナー元素としてSiをイオン注入する。マスクは、例えばレジストパターンである。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクを除去する。
【0081】
N+型ソース領域18を形成するためのイオン注入工程では、N+型ソース領域18の深さd18(
図11B参照)が1nm以上500nm以下となるように、Siの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。このイオン注入工程では、N+型ソース領域18の深さd18が第2P+型領域20の深さd20と同じ深さとなるように、Siの注入エネルギー(加速電圧)が設定されることが好ましい。
【0082】
また、N+型ソース領域18を形成するためのイオン注入工程では、N+型ソース領域18におけるSi濃度が、第1P+型領域30及び第2P+型領域20の各々におけるMg濃度以上の値となるように、Siのドーズ量が設定される。例えば、N+型ソース領域18におけるSi濃度が1×1019cm-3以上1×1022cm-3以下となるように、Siのドーズ量が設定される。
【0083】
次に、製造装置は、GaN基板10に最大温度が1200℃以下の熱処理を施す。この熱処理は、例えば急速加熱処理である。この熱処理によりGaN基板10にイオン注入されたMgとSiとが活性化され、
図12Bに示すように、GaN基板10にP型のウェル領域14とN+型ソース領域18とが形成されるとともに、ドリフト領域12が画定される。また、この熱処理により、GaN基板10において、Mg及びSiのイオン注入により生じた欠陥をある程度回復することができる。なお、この熱処理は、GaN基板10上に保護膜を形成した状態で行ってもよい。保護膜として、例えば窒化アルミニウム(AlN)又は窒化シリコン(SiN)を用いてよい。この保護膜は、熱処理後に除去する。
【0084】
次に、
図12Cに示すように、製造装置は、第2P+型領域20(
図11A参照)が形成される領域(以下、第2P+型形成領域)20´の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク51をGaN基板10上に形成する。マスク51は、例えばレジストパターンである。
図12Cに示すように、第2P+型形成領域20´は、N+型ソース領域18と一部が重なるように設定されてもよい。次に、製造装置は、マスク51が形成されたGaN基板10にアクセプタ元素としてMgをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスク51を除去する。
【0085】
第2P+型領域20を形成するためのイオン注入工程では、第2P+型領域20の深さd20(
図11B参照)が1nm以上500nm以下となるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。このイオン注入工程では、第2P+型領域20の深さd20がN+型ソース領域18(
図11B参照)の深さd18と同じ深さとなるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定されることが好ましい。
また、第2P+型領域20を形成するためのイオン注入工程では、第2P+型領域20におけるMg濃度が、N+型ソース領域18におけるSi濃度以下の値となるように、Mgのドーズ量が設定される。例えば、第2P+型領域20におけるMg濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下となるように、Mgのドーズ量が設定される。
【0086】
次に、
図12Dに示すように、製造装置は、第1P+型領域30(
図11A参照)が形成される領域(以下、第1P+型形成領域)30´の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク52をGaN基板10上に形成する。マスク52は、例えばレジストパターンである。
図4Bに示すように、第1P+型形成領域30´は、N+型ソース領域18と一部が重なるように設定されてもよい。この場合、第1P+型形成領域30´であってN+型ソース領域18下に位置する領域(すなわち、N+型ソース領域18と重ならない領域)に空乏層が形成され、この空乏層が形成された領域に第1P+型領域30が形成される。
【0087】
次に、製造装置は、マスク52が形成されたGaN基板10にアクセプタ元素としてMgをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスク52を除去する。
第1P+型領域30を形成するためのイオン注入工程では、第1P+型領域30がN+型ソース領域18下に形成されるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。すなわち、第1P+型領域30を形成するためのイオン注入工程では、GaN基板10の表面10aからの深さがN+型ソース領域18の底部よりも深い位置であり、かつN+型ソース領域18との接触により空乏層が形成される領域にMgが注入されるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。
【0088】
また、第1P+型領域30を形成するためのイオン注入工程では、第1P+型領域30におけるMg濃度が、N+型ソース領域18におけるSi濃度以下の値となるように、Mgのドーズ量が設定される。例えば、第1P+型領域30におけるMg濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下となるように、Mgのドーズ量が設定される。
なお、実施形態2では、
図12Cに示したイオン注入工程と、
図12Dに示したイオン注入工程との実行順を入れ替えてもよい。すなわち、第1P+型領域30を形成するためのイオン注入工程を先に行い、その後で、第2P+型領域20を形成するためのイオン注入工程を行ってもよい。
【0089】
次に、
図12Dに示すように、製造装置は、GaN基板10上に保護膜53を形成する。保護膜53は、例えば、AlN又はSiNである。
次に、製造装置は、保護膜53で覆われたGaN基板10に、最大温度が1300℃以上2000℃以下の熱処理を施す。この熱処理は、例えば急速加熱処理である。この熱処理によりGaN基板10にイオン注入されたMgが活性化され、
図12Eに示すように、GaN基板10に、第1P+型領域30及び第2P+型領域20が形成される。また、この熱処理により、GaN基板10において、Mgのイオン注入により生じた欠陥をある程度回復することができる。熱処理後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上から保護膜53を除去する。
【0090】
次に、
図12Fに示すように、製造装置は、GaN基板10上にゲート絶縁膜21を形成する。次に、製造装置は、ゲート電極23とソース電極25とを形成する。次に、製造装置は、ゲート電極23とソース電極25とが覆わるようにGaN基板10の表面10a上に層間絶縁膜(図示せず)を形成する。次に、製造装置は、ゲート電極23に電気的に接続するゲートパッド112(
図1参照)と、ソース電極25に電気的に接続するソースパッド114(
図1参照)とを形成する。その後、製造装置は、GaN基板10の裏面10bにドレイン電極27を形成する。このような工程を経て、縦型MOSFETを備えるGaN半導体装置100A(
図11A参照)が完成する。
【0091】
(Mg、Siのプロファイル)
図13は、GaNのX軸方向におけるMg、Siのプロファイル例を示すグラフである。
図13の横軸はX軸方向を示し、
図13の縦軸はMg又はSiの濃度を示す。
図13において、例えば、N+注入領域はソース形成領域18´(
図12A参照)に相当し、P+注入領域は第2P+型形成領域20´(
図12C参照)に相当する。また、N+、P+重なり領域は、ソース形成領域18´と第2P+型形成領域20´との重複領域に相当する。N+注入領域に注入されるSiはP+注入領域に注入されるMgよりも高濃度であるため、ソース形成領域18´と第2P+型形成領域20´との重複領域の導電型はN型となる。また、
図13において、例えば、Mg濃度低下領域は第1領域201(
図11B参照)に相当し、Mg濃度維持領域は第2領域202(
図11B参照)に相当する。Mg濃度低下領域の両側にMg濃度維持領域が位置する。
【0092】
Mg濃度維持領域は、活性化されたN+注入領域(例えば、N+型ソース領域18)との接触により空乏化され、フェルミ準位Efが価電子帯に接近しないように制御される。これにより、Mg濃度維持領域では、Mgの活性化が安定化し、Mgの偏析が抑制されるので、Mg濃度が高く維持される。
Mg濃度維持領域の幅は、上記のように1nm以上25nm以下であり、一例を示すと、25nmである。また、N+注入領域の間隔(すなわち、P+領域)の幅は、例えば50nm以上500nm以下であり、好ましくは100nm以下である。N+注入領域の間隔を狭くすると、P+領域におけるMg濃度維持領域の面積の割合を増やすことができる。
【0093】
(実施形態2の効果)
以上説明したように、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの製造方法は、N+型ソース領域18に両側から挟まれる領域にMgをイオン注入する工程、をさらに含む。第1P+型領域30を形成する工程では、N+型ソース領域18が形成され、かつN+型ソース領域18下に位置する領域とN+型ソース領域18に両側から挟まれる領域とにMgがイオン注入されたGaN基板10に熱処理を施してMgを活性化することによって、N+型ソース領域18下に位置する第1P+型領域30と、N+型ソース領域18に両側から挟まれる第2P+型領域20とを形成する。N+型ソース領域18を形成する工程では、N+型ソース領域18におけるドナー元素の濃度が、第1P+型領域30及び第2P+型領域20の各々におけるMgの濃度以上の値となるようにGaN基板10へドナー元素を高濃度にイオン注入する。N+型ソース領域18に両側から挟まれる領域にMgをイオン注入する工程では、第2P+型領域20におけるMgの濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるようにMgをイオン注入する。
【0094】
これによれば、実施形態1と同様に、Mg偏析によるMg濃度の低下が抑制された、高濃度の第1P+型領域30を形成することができる。高濃度の第1P+型領域30は、トンネル接合により、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間でオーミック接続を実現させる。
【0095】
また、N+型ソース領域18と第2P+型形成領域20´とが接触することにより、第2P+型形成領域20´の両側部には空乏層が生じ、この両側部のフェルミ準位はN+型ソース領域18のフェルミ準位と一致する。N+型ソース領域18はN+型であるため、第2P+型形成領域20´の両側部に生じた空乏層のフェルミ準位が価電子帯に接近することを抑制することができる。これにより、第2P+型形成領域20´の両側部では、Mgアクセプタの形成エネルギーを低い状態で維持することができ、Mgを活性化し易くすることができるので、熱処理によるMgの偏析を抑制し、Mg偏析によるMg濃度の低下を抑制することができる。
【0096】
また、N+型ソース領域18におけるSi濃度は、第2P+型形成領域20´におけるMg濃度以上の値となる。これにより、第2P+型形成領域20´の両側部には空乏層が広く形成され、Mg偏析によるMg濃度の低下が抑制された第2領域202が広く形成される。第2領域202を含む高濃度のP+型領域20を形成することができる。
また、このような第2P+型領域20にソース電極25を接合することによって、オーミック性に優れたソースコンタクトを実現することができる。高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とにより、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
【0097】
本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aは、GaN基板10の表面10a側に設けられ、N+型ソース領域18に両側から挟まれる第2P+型領域20、をさらに備える。
第2P+型領域20の少なくとも一部(例えば、第2領域202)におけるMg濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。このような構成を有するGaN半導体装置100Aは、実施形態2で説明した上記の製造方法で製造することができる。
【0098】
<実施形態3>
上記の実施形態2では、第1P+型領域30は、N+型ソース領域18下に配置され、第2P+型領域20下には配置されていない構成を示した。しかしながら、本発明の実施形態において、第1P+型領域30はN+型ソース領域18下だけでなく、第2P+型領域20下にも配置されていてもよい。
【0099】
図14は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bの構成例を示す平面図である。
図15は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bの構成例を示す断面図である。
図15は、
図14の平面図をX4-X´4線で切断した断面を示している。
図14及び15に示すように、実施形態3に係るGaN半導体装置100Bにおいて、第1P+型領域30はN+型ソース領域18下だけでなく、第2P+型領域20下にも配置されている。第1P+型領域30は、P型のウェル領域14内で一方のN+型ソース領域18下から他方のN+型ソース領域18下にかけて連続して設けられている。
【0100】
図16Aから
図16Dは、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bの製造方法を工程順に示す断面図である。
図16Aに示すように、製造装置は、実施形態2と同様の方法で、GaN基板10にP型のウェル領域14と、N+型ソース領域18とを形成する。
次に、
図16Bに示すように、製造装置は、第1P+型形成領域30´の上方を開口し、その他の領域の上方を覆うマスク52をGaN基板10上に形成する。実施形態2では、N+型ソース領域18下だけでなく、第2P+型領域20下にも第1P+型領域30を形成するため、第1P+型形成領域30´は、第2P+型形成領域20´と重複するように広く設定される。
次に、
図16Cに示すように、製造装置は、マスク52が形成されたGaN基板10にアクセプタ元素としてMgをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスク52を除去する。
【0101】
実施形態3では、GaN基板10の表面10aから第1P+型領域30の底部が形成される位置(すなわち、GaN基板10の表面10aからの深さがN+型ソース領域18よりも深い位置であって、N+型ソース領域18との接触により空乏層が形成される位置)まで、Mg濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるように、Mgのドーズ量と注入エネルギー(加速電圧)とが設定される。
このMgのイオン注入工程は、加速エネルギーが1条件である一段イオン注入で行ってもよいし、加速エネルギーが複数条件ある多段イオン注入で行ってもよい。多段イオン注入で行う場合は、GaN基板10の表面10aから深い位置までMgをイオン注入する場合でも、深さ方向におけるMg濃度を一定値にすることが容易となる。
【0102】
次に、
図16Cに示すように、製造装置は、GaN基板10上に保護膜53を形成する。保護膜53は、例えば、AlN又はSiNである。
次に、製造装置は、保護膜53で覆われたGaN基板10に、最大温度が1300℃以上2000℃以下の熱処理を施す。この熱処理は、例えば急速加熱処理である。この熱処理によりGaN基板10にイオン注入されたMgが活性化され、
図16Dに示すように、GaN基板10に、第1P+型領域30と第2P+型領域20とが形成される。熱処理後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上から保護膜53を除去する。
これ以降の工程は、実施形態1、2と同じである。製造装置は、ゲート絶縁膜21、ゲート電極23、ソース電極25及びドレイン電極27等を形成する。このような工程を経て、縦型MOSFET1を備えるGaN半導体装置100B(
図15参照)が完成する。
【0103】
本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bは、実施形態2に係るGaN半導体装置100Aと同様に、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とにより、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
また、実施形態3では、同一のマスク52を用いて第1P+型領域30と第2P+型領域20とを同時に形成することができるので、製造工程の短縮や製造コストの低減が可能である。
なお、実施形態3の方法では、N+型ソース領域18の表面付近にもアクセプタ元素(例えば、Mg)がイオン注入されるが、N+型ソース領域18におけるドナー元素(例えば、Si)の濃度は、イオン注入されるMgの濃度よりも高濃度である。このため、実施形態3においても、N+型ソース領域18は高濃度のN型に維持される。
【0104】
<実施形態4>
上記の実施形態2では、第2P+型領域20は、平面視で、Y軸方向に延伸するストライプ形状を有することを説明した。しかしながら、本発明において、第2P+型領域20の平面視による形状はこれに限定されない。第2P+型領域20は、X軸方向に延伸する部分を有してもよい。
【0105】
図17は、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置100Cの構成例を示す平面図である。
図18A及び
図18Bは、本発明の実施形態4に係るGaN半導体装置100Cの構成例を示す断面図である。
図18Aは、
図17の平面図をX5 -X´5線で切断した断面を示している。
図18Bは、
図17の平面図をX6-X´6線で切断した断面を示している。
図17から
図18Bに示すように、実施形態4に係るGaN半導体装置100Cにおいて、第2P+型領域20は、平面視で、Y軸方向に延伸する第1部位20Yと、X軸方向に延伸する第2部位20Xとを有し、第1部位20Yと第2部位20Xとが互いに接続して櫛歯状を成している。平面視で、第1部位20Yと第2部位20Xは、それぞれN+型ソース領域18に両側から挟まれており、第1領域201と、第1領域201の両側に位置する第2領域202とを有する。
【0106】
実施形態4に係るGaN半導体装置100Cは、実施形態2に係るGaN半導体装置100Aと同様に、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とにより、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
また、GaN半導体装置100Cでは、第1部位20Yだけでなく、第2部位20Xにおいても、Mg偏析が抑制されMg濃度の低下が抑制された第2領域202が形成される。これにより、高濃度の第2P+型領域20をより面積広く形成することが可能となる。
【0107】
<実施形態5>
本発明の実施形態において、第2P+型領域20は、平面視でドット状に配置されていてもよい。
図19は、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置100Dの構成例を示す平面図である。
図20A及び
図20Bは、本発明の実施形態5に係るGaN半導体装置100Dの構成例を示す断面図である。
図20Aは、
図19の平面図をX7-X´7線で切断した断面を示している。
図20Bは、
図19の平面図をX8-X´8線で切断した断面を示している。
【0108】
図19から
図20Bに示すように、実施形態5に係るGaN半導体装置100Dにおいて、第2P+型領域20は、平面視でドット状に配置されている。ドット状に配置された第2P+型領域20では、平面視で全方向からN+型ソース領域18で囲まれているため、1つの第2P+型領域20における活性化範囲の割合(すなわち、第2領域202の面積の割合)を増やすことができる。
実施形態5に係るGaN半導体装置100Dは、実施形態2に係るGaN半導体装置100Aと同様に、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とにより、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
【0109】
また、GaN半導体装置100Dでは、第2P+型領域20における活性化範囲の割合(すなわち、第2領域202の面積の割合)を増やすことができるので、第2P+型領域20をより高濃度化することが可能となる。
なお、ドット状の第2P+型領域20は平面視でN+型ソース領域18に囲まれていればよく、その配置は任意である。また、
図19では、ドット状の第2P+型領域20が平面視で正方形の場合を示しているが、これはあくまで一例である。ドット状の第2P+型領域20は、平面視で長方形でもよいし、円形でもよい。
【0110】
<実施形態6>
図21は、本発明の実施形態6に係るGaN半導体装置100Eの構成例を示す平面図である。
図22は、本発明の実施形態6に係るGaN半導体装置100Eの構成例を示す断面図である。
図22は、
図21の平面図をX9-X´9線で切断した断面を示している。
【0111】
図21及び
図22に示すように、実施形態6に係るGaN半導体装置100Eでは、1つのソース電極25下に、Y軸方向に延伸する2つの第2P+型領域20が配置されている。そして、2つの第2P+型領域20の間にN+型領域28が配置されている。X軸方向において、N+型ソース領域18、第1の第2P+型領域20、N+型領域28、第2の第2P+型領域20、N+型ソース領域18、の順で並んで配置されている。2つの第2P+型領域20の各々は、N+型ソース領域18及びN+型領域28に両側から挟まれている。実施形態6では、N+型ソース領域18及びN+型領域28が本発明の「N型領域」の一例となる。
【0112】
N+型領域28におけるドーパント元素の濃度(例えば、Si濃度)は、N+型ソース領域18におけるドーパント元素の濃度(例えば、Si濃度)と同じでもよいし、異なっていてもよいが、第2P+型領域20のアクセプタ元素の濃度(例えば、Mg濃度)以上の値となっている。また、
図22に示すように、N+型領域28の表面10aからの深さは、第2P+型領域20の表面10aからの深さと同じ深さとなっている。
【0113】
実施形態6に係るGaN半導体装置100Eは、実施形態2に係るGaN半導体装置100Aと同様に、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とにより、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
また、GaN半導体装置100Eでは、N+型ソース領域18ではなく、N+型領域28と隣接する第2領域202においても、Mgの偏析が抑制されMg濃度の低下が抑制される。これにより、ソース電極25下に複数の第2P+型領域20が配置される場合でも、複数の第2P+型領域20の各々の両側部に第2領域202を形成することができ、複数の第2P+型領域20の各々を高濃度化することが可能となる。
【0114】
なお、
図21では、N+型ソース領域18とN+型領域28とが平面視で接続していない例を示しているが、これはあくまで一例である。本発明の実施形態6において、N+型ソース領域18とN+型領域28は平面視で接続していてもよい。
また、実施形態6では、1つのソース電極25下に、Y軸方向に延伸する2つの第2P+型領域20が配置されている態様を例示したが、これはあくまで一例である。実施形態6では、1つのソース電極25下に、Y軸方向に延伸する3つ以上の第2P+型領域20が配置されていてもよい。このような場合も、X軸方向で隣り合う一方の第2P+型領域20と他方の第2P+型領域20との間にN+型領域28が配置されることによって、3つ以上の第2P+型領域20の各々を高濃度化することが可能となる。
【0115】
<実施形態7>
図23は、本発明の実施形態7に係るGaN半導体装置100Fの構成例を示す平面図である。
図24A及び
図24Bは、本発明の実施形態7に係るGaN半導体装置100Fの構成例を示す断面図である。
図24Aは、
図23の平面図をX10-X´10線で切断した断面を示している。
図24Bは、
図23の平面図をX11-X´11線で切断した断面を示している。
【0116】
図23に示すように、実施形態7に係るGaN半導体装置100Fでは、平面視で、第2P+型領域20中にN+型領域28が点在している。
図23から
図24Bに示すように、X軸方向において、第2P+型領域20は、N+型ソース領域18に両側から挟まれている。また、第2P+型領域20の一部は、第2P+型領域20内に点在するN+型領域28と接しており、N+型領域28(または、N+型領域28とN+型ソース領域18)とに両側から挟まれている。X軸方向において、N+型ソース領域18とN+型領域28との間隔は、
図10Bに示した間隔Wと同じであり、例えば50nm以上500nm以下である。
【0117】
実施形態7においても、実施形態6と同様に、N+型領域28におけるドーパント元素の濃度(例えば、Si濃度)は、N+型ソース領域18におけるドーパント元素の濃度(例えば、Si濃度)と同じでもよいし、異なっていてもよいが、第2P+型領域20のアクセプタ元素の濃度(例えば、Mg濃度)以上の値となっている。また、
図23に示すように、N+型領域28の表面10aからの深さは、第2P+型領域20の表面10aからの深さと同じ深さとなっている。
【0118】
N+型領域28から第2P+型領域20へ空乏層が伸びる。これにより、第2P+型領域20において、N+型ソース領域18と隣接する領域だけでなく、N+型領域28と隣接する領域においても、第1領域201よりもアクセプタの濃度(例えば、Mg濃度)が高い第2領域202が形成される。
【0119】
実施形態7に係るGaN半導体装置100Fは、実施形態2に係るGaN半導体装置100Aと同様に、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とにより、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
また、GaN半導体装置100Fでは、N+型ソース領域18ではなく、N+型領域28と隣接する第2領域202においても、Mgの偏析が抑制されMg濃度の低下が抑制される。これにより、GaN半導体装置100Fでは、第2P+型領域20における活性化範囲の割合(すなわち、第2領域202の面積の割合)を増やすことができるので、第2P+型領域20をより高濃度化することが可能となる。
【0120】
なお、
図23では、N+型ソース領域18とN+型領域28とが平面視で接続していない例を示しているが、これはあくまで一例である。本発明の実施形態7においても、N+型ソース領域18とN+型領域28は平面視で接続していてもよい。
また、ドット状のN+型領域28は平面視で第2P+型領域20に囲まれていればよく、その配置は任意である。また、
図23 では、ドット状のN+型領域28が平面視で正方形の場合を示しているが、これはあくまで一例である。ドット状のN+型領域28は、平面視で長方形でもよいし、円形でもよい。
【0121】
<実施形態8>
上記の実施形態1から7では、GaN半導体装置が備える縦型MOSFETがプレーナである場合を示した。しかしながら、本発明の実施形態において、GaN半導体装置が備える縦型MOSFETは、プレーナ型に限定されず、トレンチゲート型であってもよい。
【0122】
図25は、本発明の実施形態8に係るGaN半導体装置100Gの構成例を示す断面図である。
図25に示すように、実施形態8に係るGaN半導体装置100Gは、GaN基板10に設けられたトレンチHを有する。トレンチHは、GaN基板10の表面10a側に開口している。トレンチHはP型のウェル領域14よりも深く形成されており、トレンチHの底部はN-型のドリフト領域12まで達している。
トレンチHの内側に、ゲート絶縁膜21とゲート電極23とが配置されている。トレンチHの内側の側面と底面とがゲート絶縁膜21で覆われている。また、ゲート電極23は、ゲート絶縁膜21を介してトレンチHに埋め込まれている。トレンチゲート構造では、ウェル領域14であって、トレンチHの側面に設けられたゲート絶縁膜21を介してゲート電極23と向かい合う領域が、縦型MOSFETのチャネル領域となる。
【0123】
実施形態8に係るGaN半導体装置100Gは、実施形態2に係るGaN半導体装置100と同様に、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とにより、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。また、縦型MOSFETがトレンチゲート構造を採用することにより、チャネル領域をより密に配置することが可能となるので、素子の微細化が容易となる。
【0124】
<実施形態9>
本発明は、ダイオードに適用してもよい。
図26は、本発明の実施形態9に係るGaN半導体装置200の構成例を示す断面図である。
図26に示すように、実施形態9に係るGaN半導体装置200は、GaN基板10と、GaN基板10に設けられた1つ以上のPNダイオード2と、を備える。
【0125】
PNダイオード2は、GaN基板10に設けられたN-型領域13と、GaN基板10に設けられてN-型領域13と接するP型領域15と、GaN基板10に設けられてP型領域15と接する第1P+型領域30と、GaN基板10に設けられてP型領域15及び第1P+型領域30と接するN+型領域28(本発明の「N型領域」の一例)と、GaN基板10の表面10a側に設けられてN+型領域28と接するアノード電極35(本発明の「電極」の一例)と、GaN基板10の裏面10b側に設けられてN-型領域13と接するカソード電極37と、を有する。P型領域15は、PNダイオード2のアノード領域である。N-型領域13は、PNダイオード2のカソード領域である。
【0126】
P型領域15は、N型のGaN基板10にアクセプタ元素がイオン注入され、熱処理されることにより形成される。アクセプタ元素は、例えばMgである。
アノード電極35及びカソード電極37は、例えば、AlまたはAl-Siの合金で構成されている。アノード電極35及びカソード電極37は、GaN基板10との間にバリアメタル層を有してもよい。バリアメタル層の材料としてTiを使用してもよい。
【0127】
図26に示すように、第1P+型領域30は、GaN基板10の厚さ方向(例えば、Z軸方向)において、P型領域15とN+型領域28とに挟まれている。N+型領域28におけるドナー元素(例えば、Si)の濃度は、第1P+型領域30におけるアクセプタ元素(例えば、Mg)の濃度よりも高い値である。
【0128】
第1P+型領域30を形成する工程では、P型領域15であってN+型領域28の直下に位置する領域(第1P+型形成領域)に空乏層が形成される。第1P+型形成領域に予めイオン注入されたMgは、空乏層内で活性化される。これにより、Mg濃度が高く、厚さが1nm以上25nm以下の第1P+型領域30が形成される。
第1P+型領域30は、Mg濃度が高くて薄いため、トンネル接合により、N+型領域28とP型領域15との間でオーミック性に優れたオーミック接続を実現させる。アノード電極35とN+型領域28との間、及び、N+型領域28とP型領域15との間がそれぞれオーミック接触であるため、アノード電極35とP型領域15との間がオーミック接続となる。アノード電極35は、N+型領域28と第1P+型領域30とを介して、P型領域15とオーミック接続を取ることができる。
【0129】
<実施形態10>
図27は、本発明の実施形態10に係るGaN半導体装置200Aの構成例を示す断面図である。
図27に示すように、実施形態10に係るGaN半導体装置200Aは、GaN基板10と、GaN基板10に設けられた1つ以上のPNダイオード2と、を備える。
【0130】
GaN半導体装置200Aにおいて、PNダイオード2は、N-型領域13と、P型領域15と、第1P+型領域30と、GaN基板10に設けられて第1P+型領域30と接する第2P+型領域20と、第2P+型領域20と接するN+型領域28と、第2P+型領域20及びN+型領域28と接するアノード電極35と、カソード電極37と、を有する。P型領域15、第1P+型領域30及び第2P+型領域20は、PNダイオード2のアノード領域である。N-型領域13は、PNダイオード2のカソード領域である。
【0131】
図27に示すように、第2P+型領域20とN+型領域28はX軸方向に向かって交互に並んで配置されている。これにより、第2P+型領域20では、N+型領域28から空乏層が伸び、第1領域201よりもアクセプタ元素の濃度(例えば、Mg濃度)が高い第2領域202が形成される。
【0132】
実施形態10に係るGaN半導体装置200Aは、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。アノード電極35は、N+型領域28と第1P+型領域30とを介して、P型領域15とオーミック接続を取ることができる。また、第2P+型領域20にアノード電極35を接合することによって、第2P+型領域20とアノード電極35との間でオーミック性に優れたアノードコンタクトを実現することができる。これにより、アノード電極35とP型領域15との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
【0133】
<実施形態11>
図28は、本発明の実施形態11に係るGaN半導体装置200Bの構成例を示す断面図である。
図28に示すように、実施形態11に係るGaN半導体装置200Bは、GaN基板10と、GaN基板10に設けられたMPS(Merged PiN Schottky)ダイオード2Aと、を備える。MPSダイオード2Aは、PNダイオードと、ショットキーダイオードとを組み合わせた素子である。
【0134】
MPSダイオード2Aは、GaN基板10に設けられたN-型領域13と、GaN基板10に設けられてN-型領域13と接する複数のP型領域15と、GaN基板10に設けられてP型領域15と接する第1P+型領域30と、GaN基板10に設けられてP型領域15及び第1P+型領域30と接するN+型領域28と、GaN基板10の表面10a側に設けられてN-型領域13、P型領域15、第1P+型領域30及びN+型領域28と接するアノード電極35と、GaN基板10の裏面10b側に設けられてN-型領域13と接するカソード電極37と、を有する。
【0135】
図28に示すように、複数のP型領域15は互いに離して配置されている。隣り合うP型領域15の一方と他方との間には、N-型領域13が配置されている。第1P+型領域30は、Mg濃度が高くて薄いため、トンネル接合により、N+型領域28とP型領域15との間でオーミック接続を実現させる。また、アノード電極35とN+型領域28との間はオーミック接触である。
【0136】
アノード電極35、N+型領域28、第1P+型領域30、P型領域15、N-型領域13及びカソード電極37により、PNダイオードが構成されている。P型領域15は、PNダイオードのアノード領域である。N-型領域13は、PNダイオードのカソード領域である。
また、アノード電極35とN-型領域13との間の接続はショットキー接続となっている。アノード電極35、N-型領域13及びカソード電極37により、ショットキーダイオードが構成されている。
【0137】
アノード電極35を構成する材料と、カソード電極37を構成する材料は、互いに同一の材料で構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。例えば、アノード電極35は、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)のいずれか1つの材料で構成されている。カソード電極37は、Al、Al-Siの合金、又は、チタン(Ti)で構成されている。
【0138】
図28に示すように、MPSダイオード2Aにおいて、第2P+型領域20とN+型領域28はX軸方向に向かって交互に並んで配置されている。これにより、第2P+型領域20では、N+型領域28から空乏層が伸び、第1領域201よりもアクセプタ元素の濃度(例えば、Mg濃度)が高い第2領域202が形成される。
【0139】
実施形態11に係るGaN半導体装置200Bは、実施形態9に係るGaN半導体装置200と同様に、Mgの偏析が抑制された高濃度の第1P+型領域30を備える。アノード電極35は、N+型領域28と第1P+型領域30とを介して、P型領域15とオーミック接続を取ることができる。
【0140】
<実施形態12>
図29は、本発明の実施形態12に係るGaN半導体装置200Cの構成例を示す断面図である。
図29に示すように、実施形態12に係るGaN半導体装置200Cは、GaN基板10と、GaN基板10に設けられたMPSダイオード2Aと、を備える。
【0141】
GaN半導体装置200Cにおいて、MPSダイオード2Aは、N-型領域13と、複数のP型領域15と、第1P+型領域30と、GaN基板10に設けられて第1P+型領域30と接する第2P+型領域20と、第2P+型領域20と接するN+型領域28と、N-型領域13、N+型領域28及び第2P+型領域20と接するアノード電極35と、カソード電極37と、を有する。
【0142】
図29に示すように、複数のP型領域15は互いに離して配置されている。隣り合うP型領域15の一方と他方との間には、N-型領域13が配置されている。アノード電極35と第2P+型領域20との間、及び、N-型領域13とカソード電極37との間は、それぞれオーミック接触である。また、第1P+型領域30は、Mg濃度が高く、Mg濃度のばらつきも小さいため、N+型領域28とP型領域15との間をトンネル接合することができる。これにより、アノード電極35とP型領域15との間でオーミック接続を実現することができる。
【0143】
アノード電極35、第1P+型領域30、第2P+型領域20、P型領域15と、N-型領域13及びカソード電極37により、PNダイオードが構成されている。P型領域15、第1P+型領域30、第2P+型領域20は、PNダイオードのアノード領域である。N-型領域13は、PNダイオードのカソード領域である。
また、アノード電極35とN-型領域13との間の接続はショットキー接続となっている。アノード電極35、N-型領域13及びカソード電極37により、ショットキーダイオードが構成されている。
【0144】
図29に示すように、MPSダイオード2Aにおいても、第2P+型領域20とN+型領域28はX軸方向に向かって交互に並んで配置されている。これにより、第2P+型領域20では、N+型領域28から空乏層が伸び、第1領域201よりもアクセプタ元素の濃度(例えば、Mg濃度)が高い第2領域202が形成される。
【0145】
実施形態12に係るGaN半導体装置200Cは、実施形態10に係るGaN半導体装置200Aと同様に、高濃度の第1P+型領域30と第2P+型領域20とを備える。アノード電極35は、N+型領域28と第1P+型領域30とを介して、P型領域15とオーミック接続を取ることができる。また、第2P+型領域20にアノード電極35を接合することによって、第2P+型領域20とアノード電極35との間でオーミック性に優れたアノードコンタクトを実現することができる。これにより、アノード電極35とP型領域15との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
【0146】
<実施形態13>
上記の実施形態では、本発明の電極(例えば、ソース電極25又はアノード電極35)がN型領域(例えば、N+型ソース領域18又はN+型領域28)上に設けられていることを説明した。しかしながら、本発明の電極の配置はこれに限定されない。本発明の電極は、N型領域を貫通して第1P型領域(例えば、第1P+型領域30)に接触していてもよい。このような態様は、MOSFET、ダイオードのいずれにおいても可能である。
【0147】
図30は、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置300の構成例を示す平面図である。
図31は、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置300の構成例を示す断面図である。
図31は、
図30の平面図をX12-X´12線で切断した断面を示している。なお、
図30では、実施形態1で説明した
図2と同様に、N+型ソース領域18等のZ軸方向からの平面視による形状を示すため、ゲートパッド112、ソースパッド114(
図1参照)、ゲート電極23及びソース電極25(
図31参照)の図示は省略している。
【0148】
図30及び
図31に示すように、GaN半導体装置300は、縦型MOSFETの構成部として、GaN基板10に設けられたN-型のドリフト領域12、P型のウェル領域14、N+型ソース領域18、第1P+型領域30と、GaN基板10の表面10a上に設けられたゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21上に設けられたゲート電極23と、GaN基板10の表面10a側に設けられてN+型ソース領域18及びP+型領域20と電気的に接続するソース電極25と、GaN基板10の裏面10b側に設けられてドリフト領域12に電気的に接続するドレイン電極27と、を有する。
【0149】
図31に示すように、GaN半導体装置300において、ソース電極25は、N+型ソース領域18上に設けられており、N+型ソース領域18の一部を貫通して第1P+型領域30に接触している。例えば、第1P+型領域30上には、N+型ソース領域18を厚さ方向(例えば、Z軸方向)に貫通する貫通穴H1が設けられている。ソース電極25は、貫通穴H1内に配置され、貫通穴H1の底面で第1P+型領域30に接触する第1部位251と、GaN基板10の表面10a上に配置され、N+型ソース領域18と接触する第2部位252とを有する。第1部位251と第2部位252は互いに接している。
【0150】
第1部位251と第2部位252は、第1P+型領域30及びN+型ソース領域18とオーミック接触することができる材料で構成されており、例えばAlまたはAl-Siの合金で構成されている。第1部位251と第2部位252は、互いに同一の材料で構成されていてもよいし、互いに異なる種類の材料で構成されていてもよい。第1部位251と第2部位252は一体に形成されていてもよい。すなわち、第1部位251と第2部位252は、同一プロセスで同時に形成されていてもよい。
【0151】
図32Aから
図32Cは、本発明の実施形態13に係るGaN半導体装置300の製造方法を工程順に示す断面図である。
図33は、
図32AにおけるN+型ソース領域18、第1P+型領域30及びP型のウェル領域14を拡大して示す断面図である。
図34は、Mgを活性化するための熱処理を行った後の、N+型ソース領域18、第1P+型領域30及びP型のウェル領域14の深さ方向における不純物濃度分布を模式的に示すグラフである。
図32Aに示すように、製造装置は、実施形態1と同様の方法で、GaN基板10にP型のウェル領域14と、N+型ソース領域18と、第1P+型領域30とを形成する。
【0152】
すなわち、第1P+型領域30を形成する工程では、P型のウェル領域14であって、N+型ソース領域18下に位置する領域に空乏層が形成される。製造装置は、この空乏層が形成された領域の一部にアクセプタ元素としてMgをイオン注入する。このイオン注入工程では、第1P+型領域30がN+型ソース領域18下に形成されるように、Mgの注入エネルギー(加速電圧)が設定される。また、このイオン注入工程では、第1P+型領域30におけるMg濃度が、N+型ソース領域18におけるSi濃度以下の値となるように、Mgのドーズ量が設定される。例えば、第1P+型領域30におけるMg濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下となるように、Mgのドーズ量が設定される。
【0153】
次に、製造装置は、保護膜53(
図4D参照)を形成し、保護膜53で覆われたGaN基板10に、最大温度が1300℃以上2000℃以下の熱処理を施す。N+型ソース領域18下に位置する領域のフェルミ準位Efは、空乏層が形成されることにより、価電子帯に接近しないように制御されるため、この領域では、Mgは活性化され易く、アクセプタとして機能し易くなっている。これにより、熱処理によるMgの偏析を抑制し、Mg偏析によるMg濃度の低下とMg濃度のばらつきとを抑制することができるので、高濃度の第1P+型領域30を形成することができる。第1P+型領域30を形成した後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上から保護膜53を除去する。
【0154】
なお、
図33に示すように、第1P+型領域30において、N+型ソース領域18と接することにより生じる空乏層は、第1P+型領域30の厚さ方向の全体に及んでいることが好ましい。これにより、第1P+型領域30の厚さ方向の全体において、Mg偏析によるMg濃度の低下を抑制することができる。
【0155】
次に、
図32Bに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスク(図示せず)を形成し、N+型ソース領域18においてマスクから露出している領域をエッチングして除去する。マスクは、例えばレジストパターン、又は、SiO
2膜等の絶縁膜で構成されるハードマスクである。これにより、
図32Bに示すように、製造装置は、N+型ソース領域18に貫通穴H1を形成する。貫通穴H1を形成した後、製造装置は、マスクを除去する。
【0156】
図34に示すように、N+型ソース領域18ではアクセプタ元素よりもドナー元素の方が高濃度であり、第1P+型領域30ではドナー元素よりもアクセプタ元素(例えば、Mg)の方が高濃度となっている。Mgを活性化するための熱処理後にN+型ソース領域18をエッチングし除去する(例えば、貫通穴H1を形成する)ことで、Mgの偏析が抑制され、Mg偏析によるMg濃度の低下とMg濃度のばらつきとが抑制された、高濃度(例えば、Mg濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下)の第1P+型領域30の表面を露出させることができる。
【0157】
次に、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にゲート絶縁膜を形成する。例えば、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にゲート絶縁膜となる材料膜(例えば、SiO
2膜)を形成し、この材料膜上にマスク(図示せず)を形成し、この材料膜においてマスクから露出している部分をエッチングして除去する。このマスクは、ゲート絶縁膜の形成領域を覆い、それ以外の領域(例えば、貫通穴H1と、貫通穴H1の周囲に位置するN+型ソース領域18)を露出する形状を有する。このマスクは、例えばレジストパターン、又は、ゲート絶縁膜と異なる材料で構成されるハードマスクである。これにより、
図32Cに示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にゲート絶縁膜21を形成する。
【0158】
次に、
図32Cにおいて、製造装置は、GaN基板10の表面10a上に導電膜(図示せず)を形成して、導電膜で貫通穴H1を埋め込む。この導電膜は、第1P+型領域30及びN+型ソース領域18とオーミック接触することができる材料膜であり、例えばAl膜またはAl-Siの合金膜である。次に、製造装置は、この導電膜上にマスク(図示せず)を形成し、導電膜においてマスクから露出している部分をエッチングして除去する。これにより、GaN基板10の表面10a上にゲート電極23とソース電極25(
図31参照)とを形成する。このような工程を経て、縦型MOSFETを備えるGaN半導体装置300(
図31参照)が完成する。
【0159】
以上説明したように、実施形態13に係るGaN半導体装置300の製造方法によれば、N+型ソース領域18を利用して第1P+型領域30が形成される領域(すなわち、第1P+型形成領域)のフェルミ準位Efを伝導帯Ec側へ近づくように制御し、この状態で熱処理を行うことによって、高濃度の第1P+型領域30を形成する。次に、N+型ソース領域18の一部を除去して第1P+型領域30の表面を露出させ、露出した表面に接触するようにソース電極25の第1部位251を形成する。
【0160】
第1P+型領域30は、高濃度(例えば、Mg濃度が1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下)であり、ソース電極25の第1部位251と接触している。これにより、ソース電極25の第1部位251と第1P+型領域30との間でオーミック接続を実現することができ、第1P+型領域30を介して、ソース電極25の第1部位251とP型のウェル領域14との間でオーミック接続を実現することができる。
【0161】
<実施形態14>
図35は、本発明の実施形態14に係るGaN半導体装置300Aの構成例を示す平面図である。
図36は、本発明の実施形態14に係るGaN半導体装置300Aの構成例を示す断面図である。
図36は、
図35の平面図をX13-X´13線で切断した断面を示している。なお、
図35では、実施形態13で説明した
図30と同様に、ゲートパッド112、ソースパッド114(
図1参照)、ゲート電極23及びソース電極25(
図36参照)の図示は省略している。
【0162】
図35及び
図36に示すように、実施形態14に係るGaN半導体装置300Aにおいて、実施形態13に係るGaN半導体装置300(
図30及び
図31参照)との違いは、第1P+型領域30の配置にある。
図35及び
図36に示すように、GaN半導体装置300Aにおいて、高濃度(例えば、Mg濃度が1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下)の第1P+型領域30は、ソース電極25の第1部位251下からN+型ソース領域18下まで延設されている。第1P+型領域30は、ソース電極25の第1部位251とP型のウェル領域14との間、及び、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間にそれぞれ設けられている。
【0163】
実施形態14に係るGaN半導体装置300Aによれば、実施形態13と同様に、ソース電極25の第1部位251と高濃度の第1P+型領域30とが接触しているため、ソース電極25の第1部位251と第1P+型領域30との間でオーミック接続を実現することができる。第1P+型領域30を介して、ソース電極25の第1部位251とP型のウェル領域14との間でオーミック接続を実現することができる。
【0164】
また、GaN半導体装置300Aによれば、実施形態1と同様に、高濃度の第1P+型領域30を介して、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間をトンネル接合することができる。このトンネル接合により、ソース電極25とウェル領域14との間でオーミック接続を実現することができる。
GaN半導体装置300Aによれば、実施形態13の構成に、トンネル接合によるオーミック接続の構成が加わるので、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
【0165】
<実施形態15>
図37は、本発明の実施形態15に係るGaN半導体装置300Bの構成例を示す平面図である。
図38は、本発明の実施形態15に係るGaN半導体装置300Bの構成例を示す断面図である。
図38は、
図37の平面図をX14-X´14線で切断した断面を示している。なお、
図37では、実施形態13で説明した
図30と同様に、ゲートパッド112、ソースパッド114(
図1参照)、ゲート電極23及びソース電極25(
図38参照)の図示は省略している。
【0166】
図37及び
図38に示すように、実施形態15に係るGaN半導体装置300Bにおいて、実施形態13に係るGaN半導体装置300(
図30及び
図31参照)との違いは、縦型MOSFETのゲート構造にある。実施形態13では縦型MOSFETがプレーナである場合を示した。実施形態15では、縦型MOSFETはトレンチゲート型である場合を示す。
図38に示すように、実施形態15に係るGaN半導体装置300Bは、GaN基板10に設けられたトレンチHを有する。トレンチHは、GaN基板10の表面10a側に開口している。トレンチHはP型のウェル領域14よりも深く形成されており、トレンチHの底部はN-型のドリフト領域12まで達している。
【0167】
トレンチHの内側に、ゲート絶縁膜21とゲート電極23とが配置されている。トレンチHの内側の側面と底面とがゲート絶縁膜21で覆われている。また、ゲート電極23は、ゲート絶縁膜21を介してトレンチHに埋め込まれている。トレンチゲート構造では、ウェル領域14であって、トレンチHの側面に設けられたゲート絶縁膜21を介してゲート電極23と向かい合う領域が、縦型MOSFETのチャネル領域となる。
【0168】
実施形態15に係るGaN半導体装置300Bは、実施形態13と同様に、ソース電極25の第1部位251と高濃度の第1P+型領域30とが接触しているため、ソース電極25の第1部位251と第1P+型領域30との間でオーミック接続を実現することができる。第1P+型領域30を介して、ソース電極25の第1部位251とP型のウェル領域14との間でオーミック接続を実現することができる。また、縦型MOSFETがトレンチゲート構造を採用することにより、チャネル領域をより密に配置することが可能となるので、素子の微細化が容易となる。
【0169】
なお、GaN半導体装置300Bは、その変形例として、実施形態14の構成が加えられてもよい。すなわち、
図37及び
図38に示すGaN半導体装置300Bにおいて、高濃度の第1P+型領域30は、ソース電極25の第1部位251下からN+型ソース領域18下まで延設されていてもよい。第1P+型領域30は、ソース電極25の第1部位251とP型のウェル領域14との間、及び、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間にそれぞれ設けられていてもよい。
この変形例によれば、N+型ソース領域18とP型のウェル領域14との間がトンネル接合によりオーミック接続される。これにより、実施形態14と同様に、ソース電極25とP型のウェル領域14との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
【0170】
<実施形態16>
図39は、本発明の実施形態16に係るGaN半導体装置400の構成例を示す断面図である。
図39に示すように、実施形態16に係るGaN半導体装置400は、GaN基板10と、GaN基板10に設けられた1つ以上のPNダイオード4と、を備える。
【0171】
PNダイオード4は、GaN基板10に設けられたN-型領域13と、GaN基板10に設けられてN-型領域13と接するP型領域15と、GaN基板10に設けられてP型領域15と接する第1P+型領域30と、GaN基板10に設けられてP型領域15及び第1P+型領域30と接するN+型領域28と、GaN基板10の表面10a側に設けられてN+型領域28と接するアノード電極35と、N-型領域13と接するカソード電極37と、を有する。
【0172】
PNダイオード4では、アノード電極35がN+型領域28を貫通して第1P+型領域30に接触している。例えば、GaN基板10の表面10a側には、N+型領域28を貫通する貫通穴H2が設けられている。貫通穴H2の底面は第1P+型領域30である。アノード電極35は、貫通穴H2内に配置され、貫通穴H2の底面で第1P+型領域30に接触する第1部位351と、GaN基板10の表面10a上に配置され、N+型領域28に接触する第2部位352とを有する。第1部位351と第2部位352は一体に形成されている。
【0173】
PNダイオード4においても、実施形態9に係るPNダイオード2(
図26参照)と同様に、第1P+型領域30は、N+型領域28直下に生じる空乏層を利用したフェルミ準位制御により、Mg濃度が高く形成される。例えば、第1P+型領域30を形成する工程では、P型領域15であってN+型領域28の直下に位置する領域(第1P+型形成領域)に空乏層が形成される。第1P+型形成領域に予めイオン注入されたMgは、熱処理時に空乏層内で活性化される。これにより、Mg濃度は1×10
19cm
-3以上1×10
21cm
-3以下と高く、厚さは1nm以上25nm以下と薄い、第1P+型領域30が形成される。
【0174】
第1P+型領域30はMg濃度が高くて厚さが薄い。これにより、PNダイオード4は、実施形態9と同様に、第1P+型領域30を介したトンネル接合により、N+型領域28とP型領域15との間でオーミック接続を実現することができる。
また、アノード電極35の第1部位351と高濃度の第1P+型領域30とが接触しているため、アノード電極35の第1部位351と第1P+型領域30との間でオーミック接続を実現することができる。第1P+型領域30を介して、アノード電極35の第1部位351とP型領域15との間でオーミック接続を実現することができる。
【0175】
PNダイオード4によれば、実施形態9の構成に、アノード電極35の第1部位351とP型領域15とのオーミック接続の構成が加わるので、アノード電極35とP型領域15との間の接続のオーミック性をさらに高めることができる。
なお、実施形態16に係るGaN半導体装置400は、その変形例として、アノード電極35の第2部位352が第1部位351上からN-型領域13上まで延設されていてもよい。この変形例では、アノード電極35、N-型領域13及びカソード電極37により、ショットキーダイオードが構成されていてもよい。GaN半導体装置400は、実施形態11に係るGaN半導体装置200B(
図28参照)と同様に、PNダイオード4とショットキーダイオードとを組み合わせたMPSダイオードを備えてもよい。
【0176】
<実施形態17>
図40は、本発明の実施形態17に係るGaN半導体装置400Aの構成例を示す断面図である。
図40に示すように、実施形態17に係るGaN半導体装置400Aは、GaN基板10と、GaN基板10に設けられた1つ以上のPNダイオード4Aと、を備える。
【0177】
図40に示すPNダイオード4Aにおいて、
図39に示したPNダイオード4との違いは、貫通穴H2の形成範囲がN+型領域28の全域に及んでいる点である。PNダイオード4Aの形成工程では、第1P+型領域30の形成後に、N+型領域28の全部を除去して貫通穴H2を形成し、形成された貫通穴H2内にアノード電極35の第1部位351を形成して、第1部位351を第1P+型領域30に接触させる。
【0178】
このような構成であっても、アノード電極35の第1部位351と高濃度の第1P+型領域30とが接触しているため、アノード電極35の第1部位351と第1P+型領域30との間でオーミック接続を実現することができる。第1P+型領域30を介して、アノード電極35の第1部位351とP型領域15との間でオーミック接続を実現することができる。
【0179】
なお、実施形態17に係るGaN半導体装置400Aは、その変形例として、アノード電極35の第2部位352が第1部位351上からN-型領域13上まで延設されていてもよい。この変形例では、アノード電極35、N-型領域13及びカソード電極37により、ショットキーダイオードが構成されていてもよい。GaN半導体装置400Aは、実施形態11に係るGaN半導体装置200B(
図28参照)と同様に、PNダイオード4Aとショットキーダイオードとを組み合わせたMPSダイオードを備えてもよい。
【0180】
<その他の実施形態>
上記のように、本発明は実施形態及び変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、変形例が明らかとなろう。
例えば、本発明では、実施形態1、2、4から7で示したGaN半導体装置100、100A、100Cから100Dの縦型MOSFETは、プレーナ型ではなく、実施形態8で示したようなトレンチゲート型の構造を有してもよい。
【0181】
また、第1P+型領域30は、GaN基板10の垂直方向に電流が流れる縦型MOSFETではなく、GaN基板10の水平方向に電流が流れる横型MOSFETに含まれていてもよい。同様に、第2P+型領域20も横型MOSFETに含まれていてもよい。
また、ゲート絶縁膜21は、SiO2膜に限定されるものではなく、他の絶縁膜であってもよい。ゲート絶縁膜21には、シリコン酸窒化(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、シリコン窒化物(Si3N4)膜、アルミニウム酸化物(Al2O3)膜も使用可能である。また、ゲート絶縁膜21には、単層の絶縁膜をいくつか積層した複合膜等も使用可能である。ゲート絶縁膜21としてSiO2膜以外の絶縁膜を用いた縦型MOSFETは、縦型MISFETと呼んでもよい。MISFETは、MOSFETを含む、より包括的な絶縁ゲート型トランジスタを意味する。
【0182】
また、上記の実施形態2から8、13から15では、第1P+型領域30を介してP型のウェル領域14とオーミック接続する電極がソース電極25であることを説明した。上記の実施形態9から12、16、17では、第1P+型領域30を介してP型領域15とオーミック接続する電極がアノード電極35であることを説明した。しかしながら、本発明の実施形態はこれに限定されない。第1P+型領域30を介してP型のウェル領域14とオーミック接続する電極は、ソース電極以外の電極でもよい。第1P+型領域30を介してP型領域15とオーミック接続する電極は、アノード電極以外の他の電極であってもよい。また、第1P+型領域30に例示される第1P型領域は、MISFET、PNダイオード以外の他の素子に含まれていてもよく、例えば、バイポーラトランジスタ、容量素子又は抵抗素子等に含まれていてもよい。
【0183】
このように、本技術はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。上述した実施形態及び変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0184】
1 縦型MOSFET
2、4、4A PNダイオード
2A MPSダイオード
10 GaN基板
10a 表面
10b 裏面
12 ドリフト領域
13 N-型領域
14 ウェル領域
14´ ウェル形成領域
15 P型領域
18 N+型ソース領域
18´ソース形成領域
20 第2P+型領域
20´第2P+型形成領域
20X 第2部位
20Y 第1部位
21 ゲート絶縁膜
23 ゲート電極
25 ソース電極
27 ドレイン電極
28 N+型領域
30 第1P+型領域(以下、P+型形成領域)
30´ 第1P+型形成領域
35 アノード電極
37 カソード電極
51、52 マスク
53 保護膜
100、100A、100B,100C、100D,100E、100F、100G、200、200A、200B、200C、300、300A、300B、400、400A GaN半導体装置
110 活性領域
112 ゲートパッド
114 ソースパッド
121 上部領域
122 下部領域
130 エッジ終端領域
201 第1領域
202 第2領域
251、351 第1部位
252、352 第2部位
D ドレイン端子
G ゲート端子
H トレンチ
H1、H2 貫通穴
S ソース端子