(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136961
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】香り見本容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20220913BHJP
A47F 7/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B65D83/00 F
A47F7/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193231
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2021036390の分割
【原出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000133157
【氏名又は名称】株式会社TANAX
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史訓
(72)【発明者】
【氏名】中江 靖
(72)【発明者】
【氏名】南城 岳之
(72)【発明者】
【氏名】日野 亮一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 健太
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲也
(57)【要約】
【課題】液状又は粉末状の芳香体を収容した場合でも、該芳香体が外部に漏れ出すことのない香り見本容器を提供する。
【解決手段】開口部11を有し、芳香体を収容する中空の容器本体10と、ガス透過性を有する合成ゴムから成り、開口部11を液密に封止する封止体20と、封止体20を覆う開閉又は着脱可能なキャップ36とを有し、封止体20が容器本体10の内方へと窪む薄肉の凹部21を備えている香り見本容器を構成する。封止体20は、芳香体から放散される香気成分を透過させるため、開口部11を封止体20で封止した状態でも、使用者が香りを十分に嗅ぎ取ることができる。また、封止体20に凹部21を設けたことにより、香気成分の透過面積が増大すると共に、キャップ36を閉じた状態において凹部21内に香気成分を溜めて、キャップ36が開けられたときに該香気成分を一気に放出することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部に取り付けられて該開口部を液密に封止する封止体と、
前記封止体を覆う開閉又は着脱可能なキャップと、
を有し、
前記封止体が、前記容器本体の内方へと窪み、前記キャップとの間に空間を形成する薄肉の凹部を有し、且つ、
前記凹部の深さが、前記容器本体の高さの1/5~1/2であり、前記凹部の下部領域の外周面が前記容器本体の内周面と離間していることを特徴とする香り見本容器。
【請求項2】
開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部に取り付けられて該開口部を液密に封止する封止体と、
前記封止体を覆う開閉又は着脱可能なキャップと、
を有し、
前記封止体が、前記容器本体の内方へと窪み、前記キャップとの間に空間を形成する薄肉の凹部を有し、且つ、
前記薄肉の凹部の底部の中央が前記開口部へと向かう方向に突出していることを特徴とする香り見本容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店頭に設置して柔軟剤やシャンプー等の芳香性商品の香りを買い物客に嗅がせるための香り見本に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟剤、シャンプー、芳香剤、又は化粧品等の香りを発する商品の売り場では、買い物客に商品の香りを試しに嗅がせるためのテスター(香り見本)が広く設置されている。こうした香り見本としては、例えば特許文献1に記載のように、粒状の担体に香り物質(すなわち製品に含まれる香料)を保持させて成る芳香体を、中空のプラスチック容器に収容し、該容器に形成された通気孔に買い物客が鼻を近づけることで香りを嗅げるようにしたものが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような粒状の芳香体を収容した香り見本を作製する際には、香りの強さが製品と同等になるように、前記担体に保持させる香料の量を調整する必要がある。このような手間を省くため、また製品本来の香りを買い物客に嗅いでもらうため、製品そのものを香り見本に使用したいというニーズがある。しかしながら、製品が液状や粉末状であった場合、上記のような従来の香り見本において、こうした製品を芳香体として使用すると、容器に設けられた香り放出用の通気孔から容器内の芳香体(すなわち液状又は粉末状の製品)が漏れ出すおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液状又は粉末状の芳香体を収容した場合でも、該芳香体が外部に漏れ出すことのない香り見本容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る香り見本容器は、
開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部に取り付けられて該開口部を液密に封止する封止体と、
前記開口部に装着されて前記封止体を覆う開閉又は着脱可能なキャップと、
を有し、
前記封止体が、前記容器本体の内方へと窪む薄肉の凹部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記封止体は、液体及び粉末を透過しないため、液状又は粉末状の芳香体を容器本体に収容した状態で、香り見本容器が傾けられたり倒されたりしても、芳香体が外部に漏出することがない。また、前記封止体は、気体を透過するため、前記開口部を該封止体で封止した状態でも、使用者が容器内の芳香体の香りを十分に嗅ぎ取ることができる。更に、封止体に上記のような凹部を設けることで香気成分の透過面積を増大させることができると共に、キャップを閉じた状態において凹部内に香気成分を溜めることができる。凹部に溜まった香気成分は、使用者(買い物客等)がキャップを開けた際に一気に容器外に放出されるため、芳香体の香りを使用者に強く感じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る香り見本容器の斜視図。
【
図3】芳香体を収容した上記香り見本容器の上部を示す縦断面図。
【
図6】本発明に係る香り見本容器の別の構成例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る香り見本容器の斜視図であり、
図2は前記香り見本容器の分解斜視図である。また、
図3は、前記香り見本容器の上部を
図1の矢印Aで示す方向から見た拡大縦断面図である。但し、
図3では、前記香り見本容器に液状の芳香体40を収容して蓋部36(後述)を閉じた状態を示している。本実施形態に係る香り見本容器は、容器本体10と、封止体20と、被せ部30と、を有している。
【0010】
容器本体10は、上面が開放された有底の円筒状容器である。容器本体10は、典型的には、硬質のプラスチック素材で構成されるが、その他の素材、例えばガラス等によって構成されたものであってもよい。以下、容器本体10の上面の開口部を本体開口11とよぶ。容器本体10の上部の外周面には、被せ部30に設けられた係合凹部32(後述)と係合する、円環状の係合凸部12が設けられている。
【0011】
図4は封止体20の縦断面図である。封止体20は、本体開口11に内嵌される薄肉カップ状の凹部21と、凹部21の上端から径方向に突出し、凹部21が本体開口11に嵌め込まれた際に、容器本体10の上端縁に係止されるフランジ部22とを備えている。凹部21の上端付近は、本体開口11の内径と略同一の外径を有しており、フランジ部22は、容器本体10の上端部の外径と略同一の外径を有している。また、凹部21は、その底面の中央部分が、上方に(すなわち凹部21が容器本体10に取り付けられた状態において、本体開口11に向かう方向に)突出した湾曲形状となっている。以下、この部分を突出領域23(本発明における凸部に相当)とよぶ。
【0012】
封止体20は、ガス透過性を有する合成ゴムで構成されている。前記合成ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム(ミラブル型シリコーンゴム)を用いることができる。更に、前記シリコーンゴムとしては、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)を好適に用いることができる。なお、本発明者らは、ガス透過性試験及び官能検査を行い、このようなシリコーンゴムが優れたガス透過性を有すること、及び芳香体が収容された容器の開口を前記シリコーンゴムで封止した場合に優れた香り放散効果が得られることを確認している。但し、封止体20を構成する合成ゴムの種類は、上記に限定されるものではなく、例えば、VMQ以外のミラブル型シリコーンゴム、ウレタンゴム、又はイソプレンゴム等、いかなるものを用いてもよい。また、前記合成ゴムは、JIS K 7126-2:2006に基づいて23℃、60%RHで測定された酸素透過率が5,000 ml・mm/m2・24hr・atm以上(望ましくは10000 ml・mm/m2・24hr・atm)であるものとすることが望ましい。
【0013】
凹部21の肉厚、すなわち凹部21の周面及び底面(突出領域23を含む)を構成する壁体の厚さは0.1mm~1.5mm(好ましくは0.5mm~1mm)とすることが望ましい。また、封止体20の高さ(すなわち凹部21の深さ)は、容器本体10の高さの1/5~1/2(好ましくは1/4~1/3)程度とすることが望ましい。更に、突出領域23の高さは、凹部21の深さの1/4以上(好ましくは1/3以上)とすることが望ましい。
【0014】
被せ部30は、容器本体10の上部に取り付けられる被せ部本体31と、被せ部本体31に対してヒンジ35を介して開閉可能な蓋部36(本発明におけるキャップに相当)と、香り見本容器を陳列棚等に引っ掛けて取り付けるための引掛部37と、を備えている。
図5は、被せ部30を
図1の矢印Aで示す方向から見た縦断面図である(ここでは容器本体10及び封止体20の図示を省略している)。被せ部本体31は、下面が解放された略円筒形の部材であり、その上面は円形の板状部材であるガード部材33によって覆われている。ガード部材33は、使用者によって封止体20が破損されるのを防止するものであり、人の指が通らない程度の大きさの通気孔34を備えている。なお、
図1及び
図2には、ガード部材33に2つの半円形の通気孔34を設けた例を示しているが、通気孔34の数及び形状はこれに限定されるものではなく、例えば、円形や四角形の通気孔を多数設けた構成としてもよい。また、被せ部本体31の内周面には、容器本体10の外周面に設けられた係合凸部12と係合する、円環状の係合凹部32が設けられている。
【0015】
なお、買い物客(すなわち香り見本容器の使用者)が、本実施形態に係る香り見本容器を躊躇なく手に取ることができるよう、容器本体10及び被せ部30には、抗菌性又は抗ウィルス性のコーティングを施すことが望ましい。あるいは、容器本体10及び被せ部30を、抗菌剤又は抗ウィルス剤が練り込まれた樹脂等で構成するようにしてもよい。
【0016】
本実施形態に係る香り見本容器を組み立てる際には、まず、容器本体10の内部に液状の芳香体40を収容した状態で、本体開口11に封止体20を取り付ける。このとき、芳香体40の液面が、封止体20の下端よりも下方に位置するよう、芳香体40の収容量を調整する。なお、容器本体10に収容する液状の芳香体40は、典型的には、柔軟剤、シャンプー、ボディーソープ、芳香剤、又は化粧品等の芳香性の製品そのものであるが、これに限らず、こうした製品に用いられる香料を液体の溶媒に溶解したものであってもよい。封止体20を本体開口11に取り付けると、凹部21の上部領域の外周面が容器本体10の内周面に密着するため、容器本体10が封止体20によって液密に封止された状態となる。次に、封止体20が取り付けられた容器本体10の上部に、被せ部30を取り付ける。このとき、容器本体10に設けられた係合凸部12と被せ部本体31に設けられた係合凹部32とが互いに係合することにより、容器本体10に被せ部30が確実に固定される。なお、このような係合凸部12及び係合凹部32に代えて、容器本体10の外周面にねじ山を設けると共に、被せ部本体31の内周面に前記ねじ山と螺合するねじ溝を設けるようにしてもよい。
【0017】
以上のようにして組み立てられた香り見本容器は、芳香性の製品と共に、店頭の陳列棚などに配置される。その際、前記香り見本容器は、引掛部37を、陳列棚の前端に設けられた溢れ止め部材又はプライスカードホルダ等に掛けることによって、陳列棚に取り付けることができる。
【0018】
封止体20は、ガス透過性に優れた素材で構成されているため、芳香体40から放散される香気成分は、封止体20を透過して上方に移動することができる。更に、本実施例では、封止体20のうち、本体開口11を覆う領域を凹状に形成した(すなわち凹部21とした)ことにより、当該領域を平坦に形成した場合に比べて、香気成分の透過面積を増大させることができる。また、蓋部36を閉じた状態では、凹部21の壁面を通過した香気成分は、カップ状に形成された当該凹部21の内部に滞留する。そして、この香り見本容器を買い物客(使用者)が手にとって蓋部36を開けると、凹部21内に滞留していた香気成分が、通気孔34を介して香り見本容器の外に一度に放出されるため、芳香体40の香りを買い物客に強く感じさせることができる。更に、本実施形態における封止体20は、凹部21の底に突出領域23を備えているため、該突出領域23を設けない場合に比べて、更に香気成分の透過面積を増大させることができる。
【0019】
なお、封止体20は、ガス透過性に優れているものの、液体は透過しないため、蓋部36が開放された状態で香り見本容器が傾けられたり倒されたりしても、液状の芳香体40が外部に漏出することはない。
【0020】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、本発明における容器本体10の形状は、上記のような円筒形に限らず、例えば断面が楕円形又は多角形である筒型のものなど、種々の形状とすることができる。また、封止体20及び被せ部30の形状も上記実施形態で示した形状に限らず、容器本体10の本体開口11の形状に合わせた種々の形状とすることができる。
【0021】
上記実施形態では、封止体20の凹部21の底に、1つの突出領域23を設けた構成を示したが、このような突出領域23を2つ以上設けるようにしてもよい。また、本発明における封止体20には、必ずしもこのような突出領域23を設けなくてもよい。更に、上記実施形態では、封止体20の下端が芳香体40の液面よりも上方に位置するようにしたが、これに限らず、例えば、
図6に示すように、封止体20の下端が芳香体40の液面よりも下に位置するようにしてもよい。この場合、封止体20の高さ(すなわちカップ状に形成された凹部21の深さ)は、容器本体10の高さの1/2以上(好ましくは2/3以上)とすることが望ましい。
【0022】
また、本発明に係る香り見本容器は、上記実施形態のように、被せ部本体31と蓋部36とがヒンジ35を介して接続されているものに限らず、被せ部本体31と蓋部36とが分離された形状であってもよい。また、本発明における被せ部30は、ガード部材33を有しないものとしてもよい。更に、本発明に係る香り見本容器は、上記のような被せ部30に代えて、容器本体10の上部に着脱自在なスクリューキャップを備えた構成としてもよい。この場合、該スクリューキャップが本発明におけるキャップに相当する。
【0023】
更に、上記実施形態では、容器本体10に液状の芳香体を収容するものとしたが、本発明における香り見本容器に収容される芳香体は、これに限定されるものではなく、いかなる形態のものであってもよい。例えば、上記液状の芳香体に代えて、粉末状又は顆粒状の芳香体を容器本体10に収容するようにしてもよい。この場合、該粉末状又は顆粒状の芳香体は、芳香性の製品そのものであってもよいが、製品に用いられる香料を粉末状又は顆粒状の担体に保持させたものであってもよい。
【0024】
また、上記実施形態に係る香り見本容器は、引掛部37によって陳列棚に掛けられるものとしたが、本発明に係る香り見本容器は、このような引掛部37を有しないものとしてもよい。その場合、本発明に係る香り見本容器は、例えば、陳列棚に取り付けた専用のケース等に収容されるものとする。更に、本発明に係る香り見本容器には、紐などを通すための挿通孔やリング等から成る紐通し部を設けるようにしてもよい。これにより、本発明に係る香り見本容器を紐等によって陳列棚に繋ぐことができ、香り見本容器が陳列棚から持ち去られるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0025】
10…容器本体
11…本体開口
12…係合凸部
20…封止体
21…凹部
23…突出領域
22…フランジ部
30…被せ部
31…被せ部本体
32…係合凹部
33…ガード部材
34…通気孔
35…ヒンジ
36…蓋部
37…引掛部
40…芳香体
【手続補正書】
【提出日】2022-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部に取り付けられて該開口部を液密に封止する封止体と、
前記封止体を覆う、前記容器本体の上部に装着された被せ部本体にヒンジを介して取り付けられた、前記開口部を開閉自在なキャップと、
を有し、
前記封止体が、前記容器本体の内方へと窪み、前記キャップとの間に空間を形成する薄肉の凹部を有し、且つ、
前記凹部の深さが、前記容器本体の高さの1/5~1/2であり、前記凹部の下部領域の外周面が前記容器本体の内周面と離間していることを特徴とする香り見本容器。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する、高さが横断面の最大長よりも大きい筒型の中空の容器本体と、
ガス透過性を有する合成ゴムから成り、前記開口部に取り付けられて該開口部を液密に封止する封止体と、
前記封止体を覆う、前記容器本体の上部に装着された被せ部本体にヒンジを介して取り付けられた、前記開口部を開閉自在なキャップと、
を有し、
前記封止体が、前記容器本体の内方へと窪み、前記キャップとの間に空間を形成する薄肉の凹部を有し、且つ、
前記凹部の深さが、前記容器本体の高さの1/5~1/2であり、前記凹部の下部領域の外周面が前記容器本体の内周面と離間していることを特徴とする香り見本容器。