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特開2022-136991内視鏡用処置具およびクリップユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136991
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具およびクリップユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A61B17/122
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031146
(22)【出願日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/008932
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】吉井 利博
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 直輝
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD19
4C160DD29
4C160MM32
4C160MM33
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】組織のつかみなおしを可能としつつ、処置部の留置動作が簡便な内視鏡用処置具を提供する。
【解決手段】第一アームと第二アームとが基端部で接続されたアーム部を有するクリップユニットと、動力伝達部材を有し、クリップユニットと連結されるアプリケータとを備えた内視鏡用処置具は、基端部および動力伝達部材の一方に設けられた係合部と、基端部および前記動力伝達部材のうち、係合部を有さない側に設けられた被係合部とを備える。係合部は、被係合部内に進入して被係合部と係合可能な鉤部と、鉤部に連なる支持部と、被係合部内に進入できない寸法を有する突出部とを有する。係合部と被係合部とが係合した状態で動力伝達部材から力量を加えると、鉤部および支持部の少なくとも一方が変形して係合部と被係合部との係合を解除可能に構成されている。
【選択図】図8


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一アームと第二アームとが基端部で接続されたアーム部を有するクリップユニットと、動力伝達部材を有し、前記クリップユニットと連結されるアプリケータとを備えた内視鏡用処置具であって、
前記基端部および前記動力伝達部材の一方に設けられた係合部と、
前記基端部および前記動力伝達部材のうち、係合部を有さない側に設けられた被係合部と、
を備え、
前記係合部は、
前記被係合部内に進入して前記被係合部と係合可能な鉤部と、
前記鉤部に連なる支持部と、
前記被係合部内に進入できない寸法を有する突出部と、を有し、
前記係合部と前記被係合部とが係合した状態で前記動力伝達部材から力量を加えると、前記鉤部および前記支持部の少なくとも一方が変形して前記係合部と前記被係合部との係合を解除可能に構成されている、
内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記突出部は、前記鉤部と前記支持部との間に位置する、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記被係合部は、
前記鉤部が進入可能かつ前記突出部が進入不能なU字状または環状の構造を有する、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記クリップユニットは、先端開口および基端開口を有して前記アーム部の基端側が前記先端開口から収納された管状部材を有し、
前記係合部と前記被係合部とが、前記管状部材内で係合している、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記アーム部の開閉方向における前記突出部の前記寸法は、前記第一アームと前記第二アームの間の距離よりも大きい、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記アーム部の開閉方向において、前記鉤部は、前記第一アームと前記第二アームの間に配される、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記アーム部の開閉方向における前記突出部の前記寸法は、前記鉤部の寸法よりも大きい、
請求項6に記載の内視鏡用処置具。
【請求項8】
前記アーム部の開閉方向における前記突出部の前記寸法は、前記支持部の寸法よりも大きい、
請求項7に記載の内視鏡用処置具。
【請求項9】
前記鉤部は、前記クリップユニットの長手方向を向くフック第一面を有し、
前記支持部は、前記長手方向に交わる方向を向くフック第二面を有し、
前記フック第一面と前記フック第二面のなす角度が鋭角である、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項10】
前記基端部は、前記フック第一面に対向する基端部第一面と、前記フック第二面に対向する基端部第二面と、前記基端部第一面と前記基端部第二面との間に設けられた斜面を有する、
請求項9に記載の内視鏡用処置具。
【請求項11】
前記基端部は、前記フック第一面に対向する基端部第一面と、前記フック第二面に対向する基端部第二面と、前記基端部第一面と前記基端部第二面との間に設けられた曲面を有する、
請求項9に記載の内視鏡用処置具。
【請求項12】
前記基端部は、前記フック第一面に対向する基端部第一面と、前記フック第二面に対向する基端部第二面とを有し、
前記基端部第一面と前記基端部第二面のなす角度が鈍角である、
請求項9に記載の内視鏡用処置具。
【請求項13】
被係合部を有するアプリケータに連結可能なクリップユニットであって、
第一アームと第二アームとを有し、基端部に前記被係合部と係合可能な係合部を有するアーム部と、
先端開口および基端開口を有して前記アーム部の基端側が前記先端開口から収納された管状部材と、
を備え、
前記係合部は、
前記被係合部内に進入して前記被係合部と係合可能な鉤部と、
前記鉤部に連なる支持部と、
前記被係合部内に進入できない寸法を有する突出部と、を有する、
クリップユニット。
【請求項14】
前記突出部は、前記鉤部と前記支持部との間に位置する、
請求項13に記載のクリップユニット。
【請求項15】
前記突出部の前記寸法は、前記鉤部の寸法よりも大きい、
請求項13に記載のクリップユニット。
【請求項16】
前記突出部の前記寸法は、前記支持部の寸法よりも大きい、
請求項15に記載のクリップユニット。
【請求項17】
前記鉤部は、前記クリップユニットの長手方向を向くフック第一面を有し、
前記支持部は、前記長手方向に交わる方向を向くフック第二面を有し、
前記フック第一面と前記フック第二面のなす角度が鋭角である、
請求項13に記載のクリップユニット。
【請求項18】
第一アームと第二アームとにより構成されたアーム部と、被係合部と、を有するクリップユニットと、
前記被係合部と解除可能に連結される係合部を有するアプリケータと、
前記係合部に設けられ、前記アーム部の開閉方向において前記第一アームと前記第二アームとの間に配され、前記被係合部と係合可能な鉤部と、
前記係合部に設けられ、前記アーム部の開閉方向において前記鉤部よりも大きい寸法を有する突出部と、
を有する内視鏡用処置具。
【請求項19】
前記係合部は、前記鉤部に連なる支持部を有し、
前記突出部は、前記支持部が前記被係合部へ近づくことを規制する、
請求項18に記載の内視鏡用処置具。
【請求項20】
前記アプリケータは、動力伝達部材を有し、
前記係合部は、前記鉤部に連なる支持部を有し、
前記係合部と前記被係合部とが係合した状態で前記動力伝達部材から力量を加えると、前記鉤部および前記支持部の少なくとも一方が変形して前記係合部と前記被係合部との係合を解除可能に構成されている、
請求項18に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2021年03月08日に出願されたPCT/JP2021/008932号の利益を主張し、その全文が参照により本明細書に援用される。
[技術分野]
本発明は、内視鏡用処置具、より詳しくは、組織を結紮するクリップユニットを備えた内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いて行う処置として、クリップユニット等を使った組織の結紮が知られている。クリップユニットは一対のアームを備えている。一対のアームが組織を挟んだ状態で一対のアームを所定量牽引すると、一対のアームが組織を強く締め付けた状態でロックされる。
【0003】
処置部であるクリップユニットは、アクチュエータに装着された状態で体内に導入される。クリップユニットは組織を結紮した状態で体内に留置されるため、一対のアームがロックされた後にアクチュエータから切り離す必要がある。
【0004】
特許文献1に記載のクリップユニットは、一対のアームの基端部が押さえ管に収容された構成を有する。アームの基端部は操作ワイヤと連結されている。
操作ワイヤを牽引してアームの基端部を所定量押さえ管外に引き出してからアームと操作ワイヤとの連結を解除すると、アームが閉じた状態でロックされる。したがって、アームの基端部を所定量押さえ管外に引き出すまでは、操作ワイヤを押し込むことにより閉じかけたアームを開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特許第5750620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構造では、アームが適切でない位置の組織を挟んだ等の場合に、再度アームを開いて組織をつかみなおすことができる利点がある。
一方、アームと操作ワイヤとの連結を解除するためには、操作ワイヤを前進させる必要があり、アームをロックして留置するために操作ワイヤの牽引および押し込みの2つの動作が必要になる。
発明者らは、アームと操作ワイヤとの連結解除操作を簡便にしつつ、新たに見出された問題を解決して、本発明を完成させた。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、組織のつかみなおしを可能としつつ、処置部の留置動作が簡便な内視鏡用処置具およびクリップユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、第一アームと第二アームとが基端部で接続されたアーム部を有するクリップユニットと、動力伝達部材を有し、クリップユニットと連結されるアプリケータとを備えた内視鏡用処置具である。
この内視鏡用処置具は、基端部および動力伝達部材の一方に設けられた係合部と、基端部および動力伝達部材のうち、係合部を有さない側に設けられた被係合部とを備える。
係合部は、被係合部内に進入して被係合部と係合可能な鉤部と、鉤部に連なる支持部と、被係合部内に進入できない寸法を有する突出部とを有する。
内視鏡用処置具は、係合部と被係合部とが係合した状態で動力伝達部材から力量を加えると、鉤部および支持部の少なくとも一方が変形して係合部と被係合部との係合を解除可能に構成されている。
【0009】
本発明の第二の態様は、被係合部を有するアプリケータに連結可能なクリップユニットである。
このクリップユニットは、第一アームと第二アームとを有し、基端部に被係合部と係合可能な係合部を有するアーム部と、先端開口および基端開口を有してアーム部の基端側が先端開口から収納された管状部材とを備える。
係合部は、被係合部内に進入して被係合部と係合可能な鉤部と、鉤部に連なる支持部と、被係合部内に進入できない寸法を有する突出部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組織のつかみなおしが可能であり、処置部の留置動作が簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係る内視鏡用処置具の全体構成図である。
図2】同内視鏡用処置具のクリップユニットを示す図である。
図3】同クリップユニットの断面図である。
図4】同クリップユニットの断面図であり、図3と異なる方向における断面を示す。
図5】スライダとワイヤとの接続手順の一例を示す図である。
図6】同内視鏡用処置具におけるクリップ装着部位の拡大断面図である。
図7】フックの拡大図である。
図8】フックとアーム部との係合部位の拡大図である。
図9】フックとアーム部との連結解除が困難になった状態を示す図である。この図は、同内視鏡用処置具の図ではない。
図10】フックの変形例を示す図である。
図11】フックの変形例を示す図である。
図12】操作部本体の変形例を示す図である。
図13】変形例におけるフックとアーム部との係合部位を示す図である。
図14】変形例におけるフックとアーム部との係合部位の拡大図である。
図15】変形例におけるフックとアーム部との係合部位の拡大図である。
図16】変形例におけるフックとアーム部との係合部位の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図1から図9を参照して説明する。
図1は、本実施形態の内視鏡用処置具1の外観を示す図である。内視鏡用処置具1は、体内に留置されるクリップユニット10と、クリップユニット10を操作するためのアプリケータ50とを備えている。クリップユニット10は、アプリケータ50の先端(遠位端)に装着される。
【0013】
図2は、クリップユニット10の外観を示す図である。図3は、クリップユニット10の断面図である。図2に示すように、クリップユニット10は、アーム部20と、アーム部20の一部が収容された押さえ管(管状部材)30とを備えている。
【0014】
アーム部20は、第一アーム21および第二アーム22の一対のアームを有する。第一アーム21および第二アーム22は、それぞれ先端部に爪21aおよび22aを有する。図3に示すように、アーム部20の基端部20aにおいて、第一アーム21と第二アーム22とが接続されている。基端部20aは、U字状に形成されている。
アーム部20は、合金や金属で形成されている。アーム部20の材質としては、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、ニッケルチタン合金などを例示できる。
第一アーム21および第二アーム22は、図2に示す初期状態において拡開している。第一アーム21および第二アーム22は、初期状態から互いに接近すると、材料の弾性力により、初期状態に戻ろうとする付勢力が生じる。
【0015】
押さえ管30は、金属や樹脂等で形成された筒状の部材である。図3に示すように、アーム部20の基端部20aは、押さえ管30内に収容されている。アーム部20の先端部は、押さえ管の先端開口30aから突出している。押さえ管30の基端開口30bは、先端開口30aよりも小さい。
【0016】
図4は、押さえ管30の内部を図3と異なる方向から見た図である。図4に示すように、アーム部20の各アームの中間部には、係止部23が設けられており、係止部23において各アーム21、22の幅方向の寸法が大きくなっている(図4には第一アーム21のみ見えている)。各係止部23は、第一アーム21と第二アーム22とが接近することにより、基端開口30bを通過することができる。基端開口30bを通過後に第一アーム21と第二アーム22とが離間すると、係止部23は、基端開口30bを通過できなくなる。その結果、アーム部20は、一対のアームが閉じた状態でロックされる。
【0017】
押さえ管30の内部には、コイルバネ31が配置されている。コイルバネ31の後端は、基端開口30bを有する押さえ管の後端面32と接触できる。
コイルバネ31の前側には、ワッシャ35が配置されている。ワッシャ35の内径寸法は、コイルバネ31の内径よりも小さい。第一アーム21および第二アーム22の前側は基端部よりも幅広になっており、ワッシャ35内に進入できない寸法となっている。これにより、ワッシャ35は、第一アーム21および第二アーム22の前側後面に接触でき、コイルバネ31に内径の小さい座巻部などを設けなくても第一アーム21および第二アーム22の前側がコイルバネ31内に進入しない構造となっている。
【0018】
上述したアーム部20および押さえ管30の構造の一部は、例えば、PCT国際公開2014/181676に開示されており公知であるが、さらに、以下のような変更も可能である。
初期状態におけるアーム部20の開き幅は、初期状態において押さえ管30内に位置する領域と押さえ管30外に位置する領域との曲げ角度(曲率半径)を変更することにより、適宜変更できる。このとき、曲率半径を小さくすることにより、初期状態への復元性が低下することがあるが、アーム部の板厚を変更することによりこの低下を抑制できる。さらに、同一の部材を用いて曲率半径のみを異ならせることにより、初期状態の開き幅が異なる複数のラインナップを構成することもできる。
・アーム部は、例えば金属の板材を打ち抜いて曲げ加工することにより製造できるが、製造後に押さえ管の内面と接触する角部を面取りすることにより、押さえ管30内での移動を円滑にし、角部による押さえ管の摩耗や損傷を抑制できる。
【0019】
アプリケータ50は、図1に示すように、細長の挿入部51と、挿入部51に通された操作ワイヤ(動力伝達部材)52と、挿入部51に接続された操作部60とを備える。
挿入部51の先端側の構造については後述するが、先端部以外の部分については、例えばコイルで形成されたシースを使用できる。コイルシースを用いる場合、前後の端面を研磨等により平坦に加工することが好ましい。
操作部60は、挿入部51と接続された本体61と、本体61に対して摺動可能に取り付けられたスライダ62とを有する。
操作ワイヤ52としては、たとえば金属素線からなる撚線ワイヤを使用できる。操作ワイヤ52の基端部は、スライダ62と接続されている。スライダ62を本体61に対して移動させると、挿入部51内で操作ワイヤ52を進退させることができる。
【0020】
操作ワイヤ52とスライダ62との接続態様は適宜決定できるが、図5を参照してその一例を説明する。
まず、貫通する横穴101aと、横穴101aに連通する有底の縦穴101bとを有するブロック101を準備する。図5における(a)に示すように、座屈防止用のパイプ102に通した操作ワイヤ52を横穴101aに通す。
図5における(b)に示すように、縦穴101bにピン103を挿入してパイプ102および操作ワイヤ52を縦穴101bの底に向かって押圧してカシメを行うと、パイプ102および操作ワイヤ52の一部が折れ曲がって縦穴101b内に進入する。その結果、図5における(c)に示すようにピン103を抜いても、パイプ102および操作ワイヤ52がブロック101から抜けなくなり、ブロック101に対してパイプ102および操作ワイヤ52が固定される。
その後、ブロックをスライダ62に組み付けることにより、パイプ102および操作ワイヤ52をスライダに接続できる。
【0021】
図6は、クリップユニット10が装着されたアプリケータ50先端部の拡大断面図である。クリップユニット10とアプリケータ50とは、操作ワイヤ52の先端に設けられたフック(係合部)70がアーム部20の基端部(被係合部)20aと係合することにより、解除可能に連結されている。
【0022】
挿入部51の先端部は、筒状の第一部材55と、第一部材55の前側に取り付けられた筒状の第二部材56とを有する。
第二部材56の後部の外径は第一部材55の内径よりも小さく、第一部材55内に進入した状態で両者が溶接等により接続されている。第二部材56の前側の内径は押さえ管30の外径よりも大きく、押さえ管30の後部が第二部材内に進入している。第二部材56の後側の内径は、前側よりも小さく、径の違いにより生じる段差面56aが押さえ管30の後部を支持できる構造となっている。
フック70は、第一部材55および第二部材56内を通って押さえ管30内に進入し、押さえ管30内でアーム部20の基端部20aと係合している。
【0023】
フック70は、操作ワイヤ52の先端に固定された接続部材76に、ロウ付け等により取り付けられている。
図7にフック70の拡大図を示す。図7の左側はフック70の正面図であり、右側は右側面図である。フック70の前側は、アーム部20に係止される鉤部71と、鉤部71から後方に延びる支持部72と、鉤部71と支持部72との境界部分に形成された突出部73とを有する。支持部72は操作ワイヤ52と概ね平行に延びており、鉤部71の後面71aは支持部72の延びる方向と略直角をなしている。
【0024】
鉤部71と支持部72とは、概ね同一の厚さ(図7に示すT1)を有するが、突出部73の厚さは、T1よりも大きいT2となっている。アーム部20の基端部20aにおける第一アーム21と第二アーム22との距離は、T1以上T2未満となっている。したがって、鉤部71は、図8に示すように、第一アーム21と第二アーム22との間に進入して基端部20aに係止できる。一方、突出部73は、第一アーム21および第二アーム22と干渉するため、第一アーム21と第二アーム22との間に進入しない。
上記のような形状を有するフック70は、厚さがT2の板材を用いた鍛造や、金属射出成型(MIM:Metal Injection Mold)等により製造できる。
【0025】
操作ワイヤ52には、ストッパ53が取り付けられている。ストッパ53の形状や寸法は、第一部材55内に進入できないように設定されているため、ストッパ53が第一部材55の後端と接触すると、操作ワイヤ52はそれ以上前進できない。ストッパ53の外面は面取りされており、操作ワイヤ52が挿入部51内で進退する際に挿入部51と干渉しにくくなっている。
【0026】
上記のように構成された内視鏡用処置具1の使用時の動作について説明する。内視鏡用処置具1は、内視鏡のチャンネルを経由して体内に導入される。内視鏡用処置具1を内視鏡に挿入する際、使用者はスライダ62を所定量後退させて、アーム部20が閉じ、かつロックされていない状態で挿入する。アーム部20が閉じたクリップユニット10および挿入部51の先端部を、別途準備したアウターシース内に収容した状態で内視鏡に挿入してもよい。
【0027】
内視鏡用処置具1を内視鏡先端部のチャンネル開口から突出させて、スライダを引く力を小さくしたりアウターシースを後退させたりすると、アーム部20は、自身の弾性復元力と、コイルバネ31の弾性復元力とにより、押さえ管30に対して前進する。その結果、一対のアーム21、22が開いた開形態となる。ストッパが第一部材55の後端と接触すると、アーム部20は、押さえ管30に対して前進できなくなるため、アーム部20は押さえ管30から脱落せずに開形態を保持する。
アウターシースが短すぎると、アウターシースを後退させたときに上述の弾性復元力により内視鏡用処置具1が勢い良く前進することがあるため、挿入部51の長さよりも少し短い(例えば30mm前後)程度のアウターシースを使用することが好ましい。
【0028】
使用者が、スライダ62を本体61に対して後退させると、操作ワイヤ52およびフック70が牽引されてアーム部20が押さえ管30に対して後退する、その結果、一対のアーム21、22が閉じた閉形態となる。使用者は、一対のアーム21、22間に組織を位置させて一対のアーム21、22を閉じることにより、組織を結紮できる。後述するロック操作を行うまでは、スライダ62を本体61に対して前進させることにより、一対のアーム21、22を閉形態から再び開形態に遷移させることができる。したがって、内視鏡用処置具1においては、ロック操作を行うまでは、操作ワイヤ52によりクリップユニット10を操作して組織のつかみ直しを行える。
つかみ直しが可能な操作ワイヤ52の移動範囲においては、フック70の前側の少なくとも一部が第二部材56内において内径の小さい後側に位置しているため、つかみ直しの操作中にフック70と基端部20aとの係合が解除されることはない。
【0029】
一対のアーム21、22間に位置する組織を結紮してよいと判断したら、使用者はアーム部20を閉形態に固定するためのロック操作を行う。ロック操作において、使用者は、つかみ直しができる範囲を超えて、さらにスライダ62を本体61に対して後退させる。スライダ62が後退すると、操作ワイヤ52が牽引され、一対のアーム21、22は、組織を挟んだまま略平行となって押さえ管30内に進入する。さらに、一対のアーム21、22に設けられた係止部23が互いに接近し、押さえ管30の基端開口30bを通過可能な位置関係となる。
基端開口30bを通過して押さえ管30外に移動した一対の係止部23は、再び離間して基端開口30bを通過できない位置関係となる。その結果、押さえ管30の基端面に一対の係止部23が当接することでアーム部20の押さえ管30からの突出が防止され、アーム部20はロックされて閉形態が保持される。
【0030】
使用者がさらにスライダ62を後退させると、アーム部20がさらに後退し、係止部23が基端開口30bを通って押さえ管30外に移動する。さらに、係止部23が押さえ管30の基端面に係止されてアーム部20が開かないようにロックされる。
使用者がさらにスライダ62を後退させると、牽引力によりフック70の前側が変形する。例えば、鉤部71が変形して後面71aと支持部72とが平行に近い状態になったり、支持部72が変形して鉤部71が支持部72を中心に回動したりする。
その結果、フック70と基端部20aとの係合が解除され、押さえ管30が第二部材56から外れてクリップユニット10が組織に留置される。
使用者が内視鏡およびアプリケータ50を体外に抜去すると、一連の手技が終了する。
【0031】
内視鏡用処置具1においては、アーム部20がロックされた後、フックをさらに後退させるだけでアーム部20とフック70との連結を解除できるため、基本的にアーム部20がロックされた後にフック70が前進されることはない。しかし、使用者が、アーム部20がロックされたことに気づかずにつかみ直ししようとした場合等に、フック70が前進操作される可能性がある。このとき、フックが前進しようとしてもアーム部はもう前進できないため、アーム部の長手方向とフックの長手方向とが平行でなくなることがある。
【0032】
発明者らはこのような場合に、図9に示すように、前進したフック700(このフックは内視鏡用処置具1のフックではない)がアーム部の基端部20aにおいて、第一アーム21と第二アーム22との間に入り込んでしまう可能性があることを検討により見出した。さらに、図9に示す状態になると、基端部20aからフック70を外すことは著しく困難となることもわかった。
【0033】
発明者らはさらに検討を重ね、フック70に、第一アーム21と第二アーム22との間に進入できない寸法および形状を有する突出部73を設けることにより、この可能性を排除することに成功した。これにより、使用者が誤ってアーム部20がロックされた後にフック70を前進させても、突出部73は基端部20aと干渉して第一アーム21と第二アーム22との間に進入できないため、図9に示す状態になることを確実に抑制できる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡用処置具1によれば、クリップユニット10による組織のつかみ直しを可能としつつ、操作ワイヤ52を引くだけでアプリケータ50とクリップユニット10との連結を解除でき、操作が簡便である。さらに、上述したように、アーム部がロックされた後の操作によりアプリケータ50とクリップユニット10との連結解除が困難になる事態が発生することを確実に防止できる。
【0035】
内視鏡用処置具1においては、挿入部51の先端に内径の大きい第一部材55と内径の小さい第二部材56が取り付けられている。これにより、第二部材56で押さえ管30を確実に支持しつつ、ロックに必要な大きな力量をアーム部に加えることができる。上述したように、コイルシースの両端面が平坦に加工されていると、アプリケータ50で大きな力量を安定して受け止めることができ、より支持が安定する。
さらに、アーム部20がロックされるまでは、内径がさらに狭い第二部材の後部内にフック70が位置しているため、変形によるフック70の大きな変位が抑制され、アーム部との連結状態が確実に維持される。
加えて、アーム部20がロックされた後は、フック70が第一部材55内の広い空間に位置するため、変形により大きく変位できるスペースが確保される。その結果、操作ワイヤ52の牽引により円滑にアーム部とフックとの連結を解除できる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にいくつかの変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0037】
・突出部の態様は、上述したものに限られない。図10に示す変形例のフックに設けられた突出部73Aは、幅方向(板状材料の厚さ方向)の一方にだけ突出している。突出部73Aは、上述した鍛造やMIMの他に、反対側からパンチ等で打撃を与えることにより形成できる。パンチ等で形成した場合、突出部の反対側は凹部となっているため、突出部73Aの厚さT2は、必ずしも第一アームと第二アームとの距離よりも大きくない場合もあるが、突出部73Aが一方の面に十分突出していれば同様の効果を奏する。
また、突出部を設ける位置も変更できる。図11に示す変形例のフックに設けられた突出部73Bは、支持部72よりも後方に設けられている。このような態様でも、フック全体が第一アームと第二アームとの間に入り込むことを防止できる。
【0038】
本発明に係る動力伝達部材は、上述したワイヤには限られない。例えば、腹腔鏡下で使用する処置具等に本発明が適用される場合、動力伝達部材は、硬質のロッドであってもよい。
【0039】
本発明に係る内視鏡用処置具においては、係合部および被係合部の構造が逆転していてもよい。例えば、アーム部の基端部にフックを設け、操作ワイヤの先端部にフックが係合可能なU字状やループ状の構造を設けてもよい。
係合部および被係合部の構造が逆転したアーム部及び操作ワイヤの変形例を図13に示す。図13に示すように、アーム部120の基端部120aに、突出部73を有するフック70が設けられ、フック70は、操作ワイヤ152の先端に設けられたU字状の被係合部152aと係合する。このような構成でも、上述した実施形態と概ね同様の効果を奏する。
【0040】
本発明に係る内視鏡用処置具においては、クリップユニットを留置した後に、新しいクリップユニットを装着して再度留置手技を行える構造としてもよい。この場合は、フックが弾性変形することによりアーム部との連結が解除される構成としたり、上述のように、係合部および被係合部の構造が逆転した構造としたりすることが好ましい。図13に示した構造は、フックが塑性変形することにより連結が解除される構造を採用しつつ新しいクリップユニットを再装着可能にする際に適している。
【0041】
本発明に係る内視鏡用処置具においては、アプリケータとクリップユニットとの連結が解除される際に大きな力量が操作部60の本体61に作用する。本体61は、例えば樹脂等で形成された円筒を半割りした形状を有する二つの部材をスナップフィット等で一体にすることにより形成できる。このとき、図12に示す変形例の本体61Aのように、第一の半割り部材611に突起612を設け、第二の半割り部材616に設けた凹部617に突起612を進入させた状態で一体にしておくと、本体に大きな力量が作用した際に意図せず第一の半割り部材611と第二の半割り部材616とが分離してしまうことを防止できる。
【0042】
図14は、変形例における基端部20aとフック70の拡大断面図である。フック70は、フック70の長手方向(クリップユニット10の長手方向)を向くフック第一面701(後面71a)と、長手方向に交わる方向を向くフック第二面702と、を有する。より詳細には、鉤部71がフック第一面701を有し、支持部72がフック第二面702を有する。フック第一面701とフック第二面702のなす角度θ1は鋭角である。基端部20aは、フック第一面701に対向する基端部第一面201と、フック第二面702に対向する基端部第二面202と、を有する。基端部第一面201と基端部第二面202との間には斜面203が設けられている。好ましくは、基端部第一面201と斜面203のなす角度θ2は10°以上20°以下である。
使用者がスライダ62を後退させると、牽引力によりフック70の前側が変形する。例えば、鉤部71が変形して後面71aと支持部72とが平行に近い状態になったり、支持部72が変形して鉤部71が支持部72を中心に回動したりする。ここで、使用者がスライダ62を後退させた際に鉤部71や支持部72がスムーズに変形しないと、牽引力によってフックが破断する可能性がある。本変形例では、鉤部71や支持部72の変形に伴って、フック第一面701が斜面203に接触することによって、フック70が基端部20a上を滑りやすい。これによって、使用者がスライダ62を後退させた際に、鉤部71や支持部72がスムーズに変形でき、フック70が破断することなくフック70と基端部20aとの係合を解除することができる。
なお、図15に示すように、斜面203に代えて、基端部第一面201と基端部第二面202との間に曲面204を設けてもよい。
また、図16に示すように、斜面203を有することなく、基端部第一面201と基端部第二面202とのなす角度θ3が鈍角であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 内視鏡用処置具
10 クリップユニット
20、120 アーム部
21 第一アーム
22 第二アーム
20a 基端部(被係合部)
30 押さえ管(管状部材)
30a 先端開口
30b 基端開口
50 アプリケータ
51 挿入部
52、152 操作ワイヤ(動力伝達部材)
70 フック(係合部)
71 鉤部
72 支持部
73、73A、73B 突出部
152a 被係合部
図1
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