(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013704
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】改質焼結Nd-Fe-B磁石、その作製方法および用途
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20220111BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20220111BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20220111BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20220111BHJP
C22C 28/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
B22F3/00 F
B22F3/24 K
C22C28/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085537
(22)【出願日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】202010608039.7
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(71)【出願人】
【識別番号】521180382
【氏名又は名称】有研稀土(栄成)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Grirem (Rongcheng) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Songjiazhuang Village, Renhe Town, Rongcheng City, Weihai City, Shandong, 264306, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】羅 陽
(72)【発明者】
【氏名】祝 偉
(72)【発明者】
【氏名】于 敦波
(72)【発明者】
【氏名】王 子龍
(72)【発明者】
【氏名】張 洪濱
(72)【発明者】
【氏名】白 馨元
(72)【発明者】
【氏名】林 笑
(72)【発明者】
【氏名】彭 海軍
(72)【発明者】
【氏名】謝 佳君
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K018AA27
4K018BB06
4K018FA11
4K018KA45
5E040AA04
5E040AA19
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB11
5E040HB14
5E040NN01
5E040NN05
5E040NN06
5E040NN18
5E062CD04
5E062CG02
5E062CG03
5E062CG05
5E062CG07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重希土類元素の使用量を削減し、磁石保磁力を改善しながらコストを大幅に削減する改質焼結Nd-Fe-B磁石及びその製造方法を提供する。
【解決手段】改質焼結Nd-Fe-B磁石は、マトリックス上で粒界拡散を実施することによって作製される。マトリックスは、焼結Nd-Fe-B磁石であり、粒界拡散源は、第1の拡散源および第2の拡散源からなる。ここで、第1の拡散源はPrMx合金であり、MはCu、Al、Zn、Mg、Ga、Sn、Ag、Pb、Bi、Ni、Nb、Mn、Co、Fe、Ti、Cr、Zr、Mo、Ge中の少なくとも1つから選択され、第2の拡散源は重希土類Dyおよび/またはTbであり、Prを含む低融点合金が優先的に磁石の内部に入ってより広くより長い拡散チャンネルが形成され、重希土類元素の高速拡散チャンネルになり、重希土類元素の拡散深さ、速度および磁石保磁力をさらに増加させ、製造コストも節約できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス上で粒界拡散を実施することによって作製される改質焼結Nd-Fe-B磁石であって、前記マトリックスは焼結Nd-Fe-B磁石であり、粒界拡散源は第1の拡散源および第2の拡散源からなり、ここで、前記第1の拡散源はPrMx合金であり、ここで、MはCu、Al、Zn、Mg、Ga、Sn、Ag、Pb、Bi、Ni、Nb、Mn、Co、Fe、Ti、Cr、Zr、Mo、Ge中の少なくとも1つから選択され、Xは質量%を示し、Xは8~90であり、残りはPrおよび不可避の不純物であり、第2の拡散源は重希土類Dyおよび/またはTbである、ことを特徴とする改質焼結Nd-Fe-B磁石。
【請求項2】
前記マトリックス、第1の拡散源、第2の拡散源の質量比は100:0.1~2:0.1~1である、ことを特徴とする請求項1に記載の改質焼結Nd-Fe-B磁石。
【請求項3】
結晶粒は等軸結晶であり、結晶粒径は2~20μmである、ことを特徴とする請求項2に記載の改質焼結Nd-Fe-B磁石。
【請求項4】
前記粒界相は2つの結晶粒の間に位置する薄層粒界相を含み、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、薄層粒界相が結晶粒間に分布し、結晶粒界が明確であり、薄層粒界相の幅は50~500nmである、ことを特徴とする請求項2に記載の改質焼結Nd-Fe-B磁石。
【請求項5】
焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、結晶粒はコアシェル構造の結晶粒であり、シェル層の厚さは0.1~2.0μmである、ことを特徴とする請求項4に記載の改質焼結Nd-Fe-B磁石。
【請求項6】
(1)焼結Nd-Fe-B磁石の表面に合金膜を形成し、ここで、前記合金膜はPrMx、MはCu、Al、Zn、Mg、Ga、Sn、Ag、Pb、Bi、Ni、Nb、Mn、Co、Fe、Ti、Cr、Zr、Mo、Ge中の少なくとも1つから選択され、Xは質量%を示し、Xは8~90であり、残りはPrおよび不可避の不純物であるステップと、
(2)ステップ(1)で得られた合金膜表面に重希土類膜を形成し、前記重希土類はDyおよび/またはTbであるステップと、
(3)前記合金膜および重希土類膜を拡散源として、前記焼結Nd-Fe-B磁石の粒界拡散を行い、改質焼結Nd-Fe-B磁石を得るステップとを少なくとも含む、ことを特徴とする改質焼結Nd-Fe-B磁石の作製方法。
【請求項7】
ステップ(1)における合金膜の融点は400~700℃である、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項8】
ステップ(1)における合金膜の厚さは1~40μmである、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項9】
ステップ(1)における合金膜の形成方法は、
マグネトロンスパッタリング方法を採用して、真空度が2×10-3Pa未満の条件下で、PrMx合金をターゲット材として使用することにより合金膜を堆積させるステップを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項10】
ステップ(2)における重希土類膜の厚さは1~20μmである、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項11】
ステップ(2)における重希土類膜の形成方法は、
マグネトロンスパッタリング方法を採用して、真空度が2×10-3Pa未満の条件下で、重希土類をターゲット材として使用することにより重希土類膜を堆積させるステップ含む、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項12】
ステップ(3)における粒界拡散の具体的な条件は以下の通りであり、
真空度は3×10-3Pa未満であり、
拡散温度は750℃~1000℃であり、
拡散時間は0.5~24hである、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項13】
粒界拡散が行われた後、430℃~640℃で0.5~10hの焼き戻し処理を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の作製方法。
【請求項14】
拡散温度は850℃~950℃であり、
拡散時間は2~24hである、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項15】
前記焼結Nd-Fe-B磁石、合金膜、重希土類膜の質量比は100:0.5~1:0.2~0.6である、ことを特徴とする請求項6に記載の作製方法。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか1項に記載の改質焼結Nd-Fe-B磁石、および請求項7~16のいずれか1項に記載の作製方法により作製した改質焼結Nd-Fe-B磁石中の少なくとも1つの風力発電、省エネ家電および新エネルギー車の分野における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類永久磁石材料の技術分野に属し、改質焼結Nd-Fe-B磁石、その作製方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結Nd-Fe-B永久磁石は、その優れた総合的な磁気特性により、風力発電、省エネ家電、新エネルギー車などの分野に広く適用されている。製造技術の継続的な進歩と環境保護に対する人々の意識の向上により、磁石は、省エネと環境保護、新エネルギー、新エネルギー車の3つの分野で市場から大きな注目を集め、その消費量は毎年10~20%の速度で急速に増加しており、良好なアプリケーションの見通しを示している。
【0003】
磁石の場合、保磁力は、Nd-Fe-B永久磁石材料の磁気特性を評価するための重要な指標である。保磁力を向上させるための重要な元素である重希土類元素DyとTbは、2:14:1相の結晶磁気の異方性定数を効果的に増加させることができるが、価格は高い。したがって、保磁力は一般に、磁石の製造コストを削減するために、表面に重希土類元素DyおよびTbが堆積および拡散することによって増加する。しかし、重希土類元素の濃度は表面から内部に向かって大幅に減少し、拡散深さは比較的浅いため、特性の向上は限られている。
【0004】
中国特許番号201910183289.8には、低融点金属であるCu、Al、Zn、Mg、Sn中の1つまたは低融点合金であるCuAl、CuSn、CuZn、CuMg、SnZn、MgAl、MgCu、MgZn、AlMgZn、CuAlMg中の1つを使用し、マグネトロンスパッタリングまたは蒸着により、磁石表面に前記低融点純金属または低融点合金を堆積させてから、蒸着またはマグネトロンスパッタリングにより前記磁石表面に前記重希土類DyまたはTbを堆積させる方法が開示されている。しかしながら、この方法は磁石の保磁力を約37%しか改善することができず、磁石の保磁力をさらに改善することはできない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、改質焼結Nd-Fe-B磁石を提供することであり、この材料は、Prを含む低融点合金が優先的に磁石の内部に入ってより広くより長い拡散チャンネルが形成され、重希土類元素の高速拡散チャンネルになり、重希土類元素の拡散深さ、速度および磁石保磁力をさらに増加させ、製造コストも節約できる。
【0006】
改質焼結Nd-Fe-B磁石は、マトリックス上で粒界拡散を実施することによって作製され、前記マトリックスは焼結Nd-Fe-B磁石であり、粒界拡散源は第1の拡散源および第2の拡散源からなり、ここで、前記第1の拡散源はPrMx合金であり、ここで、MはCu、Al、Zn、Mg、Ga、Sn、Ag、Pb、Bi、Ni、Nb、Mn、Co、Fe、Ti、Cr、Zr、Mo、Ge中の少なくとも1つから選択され、Xは質量%を示し、Xは8~90であり、残りはPrおよび不可避の不純物であり、第2の拡散源は重希土類Dyおよび/またはTbである。
【0007】
本出願では、粒界の拡散過程で、前記第1の拡散源の拡散は、前記第2の拡散源の拡散より早い。
【0008】
任意選択で、前記マトリックス、第1の拡散源、第2の拡散源の質量比は100:0.1~2:0.1~1である。
【0009】
任意選択で、前記改質焼結Nd-Fe-B磁石の結晶粒は等軸結晶であり、結晶粒径は2~20μmである。
【0010】
任意選択で、前記改質焼結Nd-Fe-B磁石において、前記粒界相は2つの結晶粒の間に位置する薄層粒界相を含み、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、薄層粒界相が結晶粒間に分布し、結晶粒界が明確であり、薄層粒界相の幅は50~500nmである。
【0011】
任意選択で、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、結晶粒はコアシェル構造の結晶粒であり、シェル層の厚さは0.1~2.0μmである。
本出願の第2側面は、少なくとも以下のステップを含む改質焼結Nd-Fe-B磁石の作製方法を提供する。
【0012】
(1)焼結Nd-Fe-B磁石の表面に合金膜を形成し、ここで、前記合金膜はPrMx、MはCu、Al、Zn、Mg、Ga、Sn、Ag、Pb、Bi、Ni、Nb、Mn、Co、Fe、Ti、Cr、Zr、Mo、Ge中の少なくとも1つから選択され、Xは質量%を示し、Xは8~90であり、残りはPrおよび不可避の不純物であり、
(2)ステップ(1)で得られた合金膜表面に重希土類膜を形成し、前記重希土類はDy(TM=1412℃)および/またはTb(TM=1356℃)であり、
(3)前記合金膜および重希土類膜を拡散源として、前記焼結Nd-Fe-B磁石の粒界拡散を行い、改質焼結Nd-Fe-B磁石を得る。
【0013】
好ましくは、MはCu、Al、Zn、Ga、Fe、Ni、Co中の少なくとも1つである。
【0014】
任意選択で、前記焼結Nd-Fe-B磁石は焼結状態または焼き戻し状態の焼結Nd-Fe-B磁石である。
【0015】
任意選択で、ステップ(1)における合金膜の融点は400~700℃である。
【0016】
任意選択で、ステップ(1)における合金膜の厚さは1~40μm、好ましくは5~20μmである。
【0017】
任意選択で、ステップ(1)における合金膜の作製方法は具体的に以下を含む。
【0018】
マグネトロンスパッタリング方法を採用して、真空度が2×10-3Pa未満の条件下PrMx合金をターゲット材として合金膜を堆積させる。
【0019】
任意選択で、ステップ(2)における重希土類膜の厚さは1~20μm、好ましくは3~10μmである。
【0020】
任意選択で、ステップ(2)における重希土類膜の作製方法は具体的に以下を含む:
マグネトロンスパッタリング方法を採用して、真空度が2×10-3Paの条件下で重希土類をターゲット材として重希土類膜を堆積させる。
【0021】
任意選択で、ステップ(3)におけるの粒界拡散の具体的な条件は以下の通りである:
真空度は3×10-3Paであり、
拡散温度は750℃~1000℃であり、
拡散時間は0.5~24hである。
【0022】
さらに、粒界拡散が行われた後、430℃~640℃で0.5~10hの焼き戻し処理を行う。
【0023】
好ましくは、拡散温度は850℃~950℃であり、
拡散時間は2~24hである。
【0024】
任意選択で、前記焼結Nd-Fe-B磁石、合金膜、重希土類膜の質量比は100:0.1~2:0.1~1である。
【0025】
1つの具体的な実施例では、焼結Nd-Fe-B磁石の磁気性能を改善する方法は、以下のステップを含む:
1)焼結Nd-Fe-B磁石の表面を洗浄し、焼結Nd-Fe-B磁石の上面および下面が滑らかで平坦であることを確認し、
2)真空度が2×10-3Pa未満の条件下で、磁石表面にPrを含む低融点合金PrMを堆積させ、堆積層の厚さは1~40um、好ましくは5~20μmであり、
3)磁石表面に重希土類Dy(TM=1412℃)またはTb(TM=1356℃)を堆積させ、堆積層の厚さは1~20μmであり、
4)処理された磁石を焼き戻し炉に配置し、真空化し、真空度が3×10-3Pa未満の場合、850℃~950℃で、2h~24h保温し、
5)430℃~640℃で、0.5~10h保温する。
【0026】
任意選択で、前記改質焼結Nd-Fe-B磁石の結晶粒は等軸結晶であり、結晶粒径は2~20μmである。本出願において、結晶粒径とは、結晶粒内で最大の表面積を有する結晶面内の2点間の最大距離、すなわち、結晶粒の長軸の長さを指す。
【0027】
任意選択で、前記粒界相は2つの結晶粒の間に位置する薄層粒界相および複数の結晶粒の角に位置する三分岐粒界相を含み、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、薄層粒界相が結晶粒の間に均一に分布し、結晶粒界が明確であり、薄層粒界相の幅は50~500nmである。
【0028】
ここで、本出願において、焼結Nd-Fe-B磁石拡散面とは合金膜および重希土類膜を有する表面を指し、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm内の領域とは拡散面までの垂直距離≦50μmの領域を指し、薄層粒界相の幅とは隣接する結晶粒間の最短距離を指す。
【0029】
任意選択で、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、結晶粒はコアシェル構造の結晶粒であり、シェル層の厚さは0.1~2.0μmである。
【0030】
本出願において、結晶粒シェル層は、Tbおよび/またはDyを含む主相エピタキシャル層である。
【0031】
本出願第3側面は、上記のいずれか1項に記載の作製方法によって作製された改質焼結Nd-Fe-B磁石、上記のいずれか1項に記載の改質焼結Nd-Fe-B磁石の風力発電、省エネ家電および新エネルギー車の分野における用途を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0033】
(1)本発明の解決策では、Prを含む低融点合金が優先的に磁石内部に入ってより広くより長い拡散チャンネルが形成され、重希土類元素の高速拡散チャンネルになり、重希土類元素の拡散深さおよび拡散速度をさらに増加させ、磁石保磁力を改善することができる。
(2)この方法は、重希土類元素の使用量を削減し、磁石保磁力を改善しながらコストを大幅に削減することができる。
(3)この方法は、プロセスが簡単であり、実現しやすく、アプリケーションの見通しが広い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施例1で作製された粒界拡散後の高保磁力磁石の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例1における未改質の焼結Nd-Fe-B磁石の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
当業者が本発明の技術的解決策をよりよく理解できるようにするために、本発明の技術的解決策を、本発明の添付の図面と併せて以下に明確かつ完全に説明するが、創造的な労働をせずに本発明の実施例に基づいて当業者によって得られた他の同様の実施例は、すべて本発明の保護範囲に含まれるものとする。さらに、以下の実施例で言及される「上」、「下」、「左」および「右」などの方向用語は、添付の図面を参照する方向のみを指すため、使用される方向用語は、本発明を説明するために使用されるが、限定するものではない。相互に排他的な特徴および/またはステップを除いて、開示されたすべての方法またはプロセスの説明またはステップに開示されたすべての特徴は、任意の方法で組み合わせることができる。特に明記しない限り、説明に開示されている特徴(追加のクレーム、要約および付随する図面を含む)は、同様の目的を持つ他の同等または代替の特徴に置き換えることができる。つまり、特に明記されていない限り、各特徴は一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0036】
本出願において、特に明記しない限り、原材料はすべて従来の市販製品である。
【0037】
改質焼結Nd-Fe-B磁石は、マトリックス上で粒界拡散を実施することによって作製され、前記マトリックスは焼結Nd-Fe-B磁石であり、粒界拡散源は第1の拡散源および第2の拡散源からなり、ここで、前記第1の拡散源はPrMx合金であり、ここで、MはCu、Al、Zn、Mg、Ga、Sn、Ag、Pb、Bi、Ni、Nb、Mn、Co、Fe、Ti、Cr、Zr、Mo、Ge中の少なくとも1つから選択され、Xは質量%を示し、Xは8~90であり、残りはPrおよび不可避の不純物であり、第2の拡散源は重希土類Dyおよび/またはTbである。
【0038】
本出願において、粒界の拡散過程で、前記第1の拡散源の拡散は、前記第2の拡散源の拡散より早い。
【0039】
任意選択で、前記マトリックス、第1の拡散源、第2の拡散源の質量比は100:0.1~2:0.1~1である。
【0040】
任意選択で、前記改質焼結Nd-Fe-B磁石において、結晶粒は等軸結晶であり、結晶粒径は2~20μmである。
【0041】
任意選択で、前記改質焼結Nd-Fe-B磁石において、前記粒界相は2つの結晶粒の間に位置する薄層粒界相を含み、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、薄層粒界相が結晶粒間に分布し、結晶粒界が明確であり、薄層粒界相の幅は50~500nmである。
【0042】
任意選択で、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、結晶粒はコアシェル構造の結晶粒であり、シェル層の厚さは0.1~2.0μmである。
【0043】
改質焼結Nd-Fe-B磁石の作製方法は、少なくとも以下のステップを含む。
【0044】
(1)焼結Nd-Fe-B磁石の表面に合金膜を形成し、ここで、前記合金膜はPrMx、MはCu、Al、Zn、Mg、Ga、Sn、Ag、Pb、Bi、Ni、Nb、Mn、Co、Fe、Ti、Cr、Zr、Mo、Ge中の少なくとも1つから選択され、Xは質量%を示し、Xは8~90であり、残りはPrおよび不可避の不純物であり、
(2)ステップ(1)で得られた合金膜表面に重希土類膜を形成し、前記重希土類はDy(TM=1412℃)および/またはTb(TM=1356℃)であり、
(3)合金膜および重希土類膜を拡散源として、前記焼結Nd-Fe-B磁石の粒界拡散を行い、改質焼結Nd-Fe-B磁石を得る。
【0045】
好ましくは、MはCu、Al、Zn、Ga、Fe、Ni、Co中の少なくとも1つである。
【0046】
任意選択で、前記焼結Nd-Fe-B磁石は、焼結状態または焼き戻し状態の焼結Nd-Fe-B磁石である。
【0047】
任意選択で、ステップ(1)における合金膜の融点は400~700℃である。
【0048】
任意選択で、ステップ(1)における合金膜の厚さは1~40μm、好ましくは5~20μmである。
【0049】
任意選択で、ステップ(1)における合金膜の形成方法は具体的に以下を含む。
【0050】
マグネトロンスパッタリング方法を採用して、真空度が2×10-3Pa未満の条件下でPrMx合金をターゲット材として合金膜を堆積させる。
【0051】
任意選択で、ステップ(2)における重希土類膜の厚さは1~20μm、好ましくは3~10μmである。
【0052】
任意選択で、ステップ(2)における重希土類膜の形成方法は具体的に以下を含む:
マグネトロンスパッタリング方法を採用して、真空度が2×10-3Pa未満の条件下で、重希土類をターゲット材として重希土類膜を堆積させる。
【0053】
任意選択で、ステップ(3)におけるの粒界拡散の具体的な条件は以下の通りである。
真空度が3×10-3Pa未満であり、
拡散温度は750℃~1000℃であり、
拡散時間は0.5~24hである。
【0054】
さらに、粒界拡散が行われた後、430℃~640℃で0.5~10hの焼き戻し処理を行う。
【0055】
好ましくは、拡散温度は850℃~950℃であり、
拡散時間は2~24hである。
【0056】
任意選択で、前記焼結Nd-Fe-B磁石、合金膜、重希土類膜の質量比は100:0.1~2:0.1~1である。
【0057】
1つの具体的な実施例では、焼結Nd-Fe-B磁石磁気性能を改善する方法は、以下のステップを含む。
1)焼結Nd-Fe-B磁石表面を洗浄し、焼結Nd-Fe-B磁石の上面および下面が滑らかで平坦であることを確認し、
2)真空度が2×10-3Pa未満の条件下で、磁石表面にPrを含む低融点合金PrMを堆積させ、堆積層の厚さは1~40um、好ましくは5~20μmであり、
3)磁石表面に重希土類Dy(TM=1412℃)またはTb(TM=1356℃)を堆積させ、堆積層の厚さ1~20μmであり、
4)処理された磁石を焼き戻し炉に配置し、真空化し、真空度が3×10-3Pa未満の場合、850℃~950℃で2h~24h保温し、
5)430℃~640℃で0.5~10h保温する。
【0058】
任意選択で、前記改質焼結Nd-Fe-B磁石の結晶粒は等軸結晶であり、結晶粒径は2~20μmである。本出願において、結晶粒径とは結晶粒内で最大の表面積を有する結晶面内の2点間の最大距離、すなわち、結晶粒の長軸の長さを指す。
【0059】
任意選択で、前記粒界相は2つの結晶粒の間に位置する薄層粒界相および複数の結晶粒の角に位置する三分岐粒界相を含み、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、薄層粒界相は結晶粒の間に均一に分布し、結晶粒界が明確であり、薄層粒界相の幅は50~500nmである。
【0060】
ここで、本出願において、焼結Nd-Fe-B磁石拡散面とは合金膜および重希土類膜を有する表面を指し、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm内の領域とは拡散面までの垂直距離≦50μmの領域を指し、薄層粒界相の幅とは隣接する結晶粒間の最短距離を指す。
【0061】
任意選択で、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、結晶粒はコアシェル構造の結晶粒であり、シェル層の厚さは0.1~2.0μmである。
本出願において、結晶粒のシェル層はTbおよび/またはDyを含む主相エピタキシャル層である。
【0062】
本発明は、上記のいずれか1項に記載の作製方法により作製した改質焼結Nd-Fe-B磁石、上記のいずれか1項に記載の改質焼結Nd-Fe-B磁石の風力発電、省エネ家電および新エネルギー車の分野における用途をさらに提供する。
【0063】
実施例1
(1)組成(PrNd)27.67Fe68.71B0.97Al0.19Co0.82Cu0.16Ga0.18Tb0.64(wt.%)即ちグレード48Hの焼結Nd-Fe-B磁石を8*8*7mmのブロックにスライスする。
(2)焼結Nd-Fe-B磁石ブロック表面を洗浄し、その上下の極性表面が滑らかで平坦であることを確認する。
(3)真空度が1×10-3Paである場合、融点850℃の合金Pr92Al8(wt.%)をターゲット材として、焼結Nd-Fe-B磁石ブロックの上下の極性表面にマグネトロンスパッタリングを行い、上下の極性表面にそれぞれ厚さ6μmの合金膜を形成する。
(4)真空度が1×10-3Paである場合、マグネトロンスパッタリング方法により合金膜表面に重希土類Tbを堆積させて、層厚3μmの重希土類膜を得、このとき焼結Nd-Fe-B磁石、合金Pr92Al8、重希土類の質量比は100:0.3:0.3である。
(5)真空度が2×10-3Paである条件下で、920℃で4h保温した後、500℃で焼き戻し、焼き戻し時間は2hである。得られた高保磁力焼結Nd-Fe-B磁性材料を材料1とする。
【0064】
実施例2
(1)組成(PrNd)27.67Fe68.71B0.97Al0.19Co0.82Cu0.16Ga0.18Tb0.64(wt.%)の焼結Nd-Fe-B磁石を8*8*7mmのブロックにスライスする。
(2)焼結Nd-Fe-B磁石ブロック表面を洗浄し、その上下の極性表面が滑らかで平坦であることを確認する。
(3)真空度が1×10-3Paである場合、融点550℃の合金Pr60Ga40(wt.%)をターゲット材として、焼結Nd-Fe-B磁石ブロックの上下の極性表面にマグネトロンスパッタリングを行い、上下の極性表面にそれぞれ厚さ6μmの合金膜を形成する。
(4)真空度が1×10-3Paである場合、マグネトロンスパッタリング方法により合金膜表面に重希土類Tbを堆積させ、層厚3μmの重希土類膜を得る。
(5)真空度が2×10-3Paである条件下で、900℃で4h保温した後520℃で焼き戻し、焼き戻し時間は2hである。得られた高保磁力焼結Nd-Fe-B磁性材料を材料2とする。
【0065】
実施例3~10
実施例3~10の作製方法は実施例1と同じであり、その違いは表1に示され、得られた材料を順次材料3~材料10とする。
【0066】
【0067】
比較例1
(1)焼結Nd-Fe-B磁石(グレード48H)を8*8*7mmのブロックにスライスする。
(2)焼結Nd-Fe-B磁石ブロック表面を洗浄し、その上下の極性表面が滑らかで平坦であることを確認する。
(3)真空度が1×10-3Paである場合、合金Cu70Zn30をターゲット材として、焼結Nd-Fe-B磁石ブロックの上下の極性表面にマグネトロンスパッタリングを行い、その上下の面にそれぞれ厚さ16μmの合金膜を形成する。
(4)真空度が1×10-3Paである場合、マグネトロンスパッタリング方法により合金膜表面に重希土類Dyを堆積させて、層厚7μmの重希土類膜を得る、
(5)真空度が2×10-3Paである条件下で、920℃で4h保温した後500℃で焼き戻し、焼き戻し時間は2hである。得られた高保磁力焼結Nd-Fe-B磁性材料を材料11とする。
【0068】
比較例2
ステップ(2)の合金ターゲット材はCu70Al30であることを除いて、作製方法は比較例1と同じである。
【0069】
各実施例から得られた材料の形態は、以下のように特徴づけられる。
【0070】
ここで、測定方法は以下を含む:
磁石が高さ方向に沿ってスライスされた後、その微細構造が走査され、走査は、周知の電界放出走査型電子顕微鏡SEMを採用することができる。磁石の拡散面から中心まで観察を行い、80μm(長さ)×40μm(幅)以上の観察範囲を設定し、拡散面からの距離を変えて材料の微細形態を観察する。
【0071】
磁石が高さ方向に沿ってスライスされた後、その微細構造が走査され、走査は、周知の電界放出走査型電子顕微鏡SEMを採用することができる。磁石の拡散面から中心まで観察を行い、80μm(長さ)×40μm(幅)以上の観察範囲を設定し、SEMを採用して相サイズを直接校正することで、結晶粒寸法、結晶粒シェル層の厚さおよび薄層粒界相幅を決定する。
【0072】
実施例1から得られた材料1を代表として説明するが、他の実施例から得られた材料はすべて、同じまたは類似の形態を有する。
【0073】
図1は磁石から拡散面まで50μm範囲内のスライス電子顕微鏡写真である。
図1に示すように、材料1の結晶粒は等軸結晶であり、結晶粒径は2~20μmであり、材料1の主相はNd
2Fe
14Bを含み、材料1の粒界相は2つの結晶粒の間に位置する薄層粒界相および複数の結晶粒の角に位置する三分岐粒界相を含む。
図1および2を参照すると、改質前の焼結Nd-Fe-B磁石と比較して、材料2の焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、薄層粒界相は結晶粒の間に均一に分布し、結晶粒界が明確であり、薄層粒界相の幅は50~500nmであり、焼結Nd-Fe-B磁石の拡散面から50μm以内の領域では、結晶粒はコアシェル構造の結晶粒であり、シェル層の厚さは0.1~2.0μmである。
【0074】
各実施例および比較例の材料の性能を以下のように測定した。
【0075】
NIM-500C磁気テスターによって室温環境下で各材料の残留磁気、保磁力、磁気エネルギー積を測定した。測定結果を表2に示す。
【0076】
表2 各実施例および比較例から得られた材料の磁気性能のパラメータ表
【0077】
表2から分かるように、本出願の実施例により提供される磁石材料の保磁力は、粒界拡散前の18.2kOeに対して29%以上増加するが、残留磁気はほとんど減少しない。特に実施例9により提供される材料9の保磁力は約54%増加するが、比較例1および2は、実施例9と同様の条件下で、保磁力が28.5%だけ増加した。
【0078】
以上、本発明を詳細に説明したが、以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲を限定するものではなく、本出願の範囲に従ってなされた同等の変更や修正はすべて、本発明の保護範囲に含まれるべきである。