(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137063
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ペグ化ブタインターフェロンおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/56 20060101AFI20220913BHJP
C07K 1/02 20060101ALI20220913BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220913BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220913BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20220913BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220913BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20220913BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220913BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220913BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C07K14/56 ZNA
C07K1/02
A61P31/14
A61P31/16
A61K38/21
A61K9/08
A61K47/60
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/10
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022098147
(22)【出願日】2022-06-17
(62)【分割の表示】P 2018566519の分割
【原出願日】2017-06-16
(31)【優先権主張番号】62/352,163
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516001834
【氏名又は名称】エランコ・ユーエス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Elanco US Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】508048481
【氏名又は名称】アンブルックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ambrx,Inc.
【住所又は居所原語表記】10975 North Torrey Pines Road,Suite 100,La Jolla,California 92037,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・コナー・カニング
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ヌードセン
(72)【発明者】
【氏名】リリアン・スキッドモア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】豚集団をウイルス感染に伴う病状から保護するための、活発で進行中のウイルス感染を有する豚集団の治療において必要である、動物や畜産に使用するためのインターフェロン-αの形態を提供する。
【解決手段】特定の配列を含むブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体であって、特定位置のアミノ酸がセリン単独、セリン-グリシンジペプチドおよびヒスチジンからなる群から選択され、特定位置のアミノ酸が合成アミノ酸で置換された、ブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体である。pINF-α変異体はさらにペグ化することができる。ブタのウイルス感染を治療するためのこれらの化合物の製造方法および投与方法ならびに該変異体を含む製剤も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【表1】
を含む、ブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体であって、
残基E103、E107、L112、Y136、またはQ102(配列番号:4に対する番号付け)が合成アミノ酸で置換される、ブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体。
【請求項2】
合成アミノ酸が、パラアセチルフェニルアラニン(pAF)である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項3】
変異体が、配列番号:7である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項4】
変異体が、配列番号:10である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項5】
変異体が、配列番号:13である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項6】
変異体が、配列番号:16である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項7】
変異体が、配列番号:19である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項8】
変異体が、配列番号:8である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項9】
変異体が、配列番号:11である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項10】
変異体が、配列番号:14である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項11】
変異体が、配列番号:17である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項12】
変異体が、配列番号:20である、請求項1に記載のpINF-α変異体。
【請求項13】
合成アミノ酸が、ペグ化される、請求項1~12のいずれかに記載のpINF-α変異体。
【請求項14】
ペグ化pINF-α変異体が、約5kDa~40kDaのPEGでペグ化される、請求項13に記載のpINF-α変異体。
【請求項15】
PEGが、30kDaのPEGである、請求項14に記載のpINF-α変異体。
【請求項16】
【表2】
からなる、ブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体であって、
E107(配列番号:4に対する番号付け)に対応する残基が、パラアセチルフェニルアラニン(pAF)で置換され、該pAF残基が、30kDaの直鎖状PEGでペグ化される、ブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体。
【請求項17】
20mMの酢酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム、5%のグリセロール、pH5.0で約2.0~約6.0g/Lの力価のpINF-α変異体を含む、請求項1~16のいずれかに記載のpINF-α変異体を含む製剤。
【請求項18】
請求項1に記載のpINF-α変異体を製造する方法であって、
以下の工程:
(a)pINF-αを精製する工程;
(b)精製pINF-α変異体を、pH8にて、50mM Tris、6Mグアニジンに可溶化する工程;
(c)可溶化pINF-αA変異体を、pH8にて、20mM Tris、1Mアルギニン、10mMメチオニン(met)、1mM EDTA中、室温にて16-24時間インキュベートする工程;
(d)残留アセチル化変異体を除去する工程;
(e)pINF-α変異体を、1:1~1:2のPEG:タンパク質比にてPEGでコンジュゲートさせる工程;および
(f)ペグ化pINF-α変異体を精製する工程;
を含む方法。
【請求項19】
それを必要とするブタに、請求項1~16のいずれかに記載のpINF-α変異体を皮下投与することを含む、ブタのウイルス感染を予防または治療する方法。
【請求項20】
pINF-α変異体が、動物の体重kg当たり25μg/kg~150μg/kgの範囲で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
動物の体重kg当たり25μg/kg~150μg/kgのpINF-α変異体の第二の投与を含む、害請求項20に記載の方法であって、該pINF-α変異体。
【請求項22】
第二の投与が、第一の投与の7~14日後である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ウイルス感染が、ブタ生殖器および呼吸器疾患ウイルス、口蹄疫ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ブタサーコウイルス、ブタ流行性下痢ウイルスおよび伝染性胃腸炎ウイルスからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
ブタが、新生ブタであるか、または妊娠中のブタである、請求項19~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項17に記載のpIFN-α変異体を含有する複数回投与用バイアル。
【請求項26】
ウイルス感染を治療するためのブタにおける療法における、請求項1~16のいずれかに記載のpINF-α変異体の使用。
【請求項27】
療法のための請求項1~16のいずれかに記載のpINF-α変異体の使用。
【請求項28】
ブタにおけるウイルス感染を治療するための、請求項17に記載の製剤または請求項1~16のいずれかに記載のpINF-α変異体の使用。
【請求項29】
ブタにおけるウイルス感染を治療するための医薬の製造における使用のための、請求項17に記載の製剤または請求項1~16のいずれかに記載のpINF-α変異体の使用。
【請求項30】
ブタが、新生ブタまたは妊娠中のブタである、請求項28または29のいずれかに記載のpIFN-α変異体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。2017年6月15日に作成された前述のASCIIコピーの名前は、204257_0028_561478_SL_ST25.txtであり、サイズは45,280バイトである。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンアルファ(INF-α)を投与することは、評価され管理される必要がある医学的後遺症を有する。たとえば、自己免疫は、ヒトの慢性ウイルス性肝炎に対するINF-α療法によっても引き起こされる可能性がある。したがって、治療は既存の自己免疫を悪化させ、無症候性の自己免疫プロセスを顕にするか、または新たな自己免疫疾患を誘発することさえありうるので、一般にヒトの治療は、治療を必要とする患者に限定されてきた。F.L. Dumoulinら、“Autoimmunity induced by interferon-α therapy for chronic viral hepatitis,” Biomed. & Pharmacother.、53:242-54(1999)。インターフェロンαは、ヒトのC型肝炎ウイルス感染の治療に失敗したことも観察されている。
【0003】
インターフェロンは、いくつかのヒトC型肝炎ウイルス(HCV)を治療するのに有効であると見られており、2つのペグ化型のインターフェロンアルファ((INF-α)、すなわち、それぞれPEGASYS(登録商標)およびPEGINTRON(登録商標)としても知られるペグインターフェロン-α-2aおよびペグインターフェロン-α-2bが、現在ヒトに対して臨床的に使用されている。それにもかかわらず、INF-αがどのようにHCV複製を阻害するのかは不明でのままある。さらに興味深いことに、ペグインターフェロン-α-2aおよびペグインターフェロン-α-2bは、それらの天然(野生型)形態と比較して、それぞれ7%および28%の活性しか示さない。
【0004】
インターフェロンを製造する過程において、バイオアベイラビリティを拡張し、タンパク質産生を補佐するヒトの治療のために、さまざまな変異体が創製されてきた。1つの例は、米国特許第8,106,160号に記載され、これは、非天然ジスルフィド結合の形成を減少させ、それによって構造アイソフォームのレベルを低下させるための、成熟ヒトインターフェロンアルファ-2bのN末端システインへの1つ以上のアミノ酸残基の付加を論じている。これは、N末端にプロリン残基を付加することを含む。
【0005】
タンパク質のサイトに挿入された非天然アミノ酸を導入する方法は、たとえば、国際公開第2010/011735号および国際公開第2005/074650号に記載されている。
【0006】
野生型ブタインターフェロンアルファ-1は、189アミノ酸の長さであり、GenBank X57191に位置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
動物や畜産に使用するためのインターフェロン-αの形態が、特にウイルス感染しやすい豚集団の治療において、さらにより具体的には、豚集団をウイルス感染に伴う病状から保護するための、活発で進行中のウイルス感染を有する豚集団の治療において必要である。利益は、長期的に作用し、ウイルス複製、群れの病理およびウイルス感染に関連する動物の死を抑制または低減するのに有用である、ブタ動物に使用するためのIFN-α変異体の発見であろう。該ブタIFN-α変異体は生物活性を維持し、より長いバイオアベイラビリティを有し、そしてより簡単な精製を可能にするアイソフォームをほとんど有さないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】プロリン-セリンN末端挿入を含む、pIFN-α-PS-E107アンバーを有するプラスミドpKG0083を示す。このプラスミドは、AXID2820細胞株による配列番号:14のタンパク質変異体の産生を指示する。
【
図2】残基Q102、E103、E107、L112、およびY136を置換された合成アミノ酸pAFを有するpINF-α変異体の配列アラインメントおよび配列識別子を示す。これらの配列は全てpINF-αに対するシグナル配列を欠いている。配列は、N末端にアミノ酸が付加されていない(配列番号:6、9、12、15、および18)か、あるいはN末端に付加されたプロリン(配列番号:7、10、13、16、および19)またはプロリン-セリン(配列番号:8、11、14、17、および20)を有するかのいずれかである。
【
図3】配列番号:1のモチーフ配列を示す。配列番号:2は、配列番号:1と同じであるが、成熟pIFN-α変異体の成熟時に通常切断されるN末端メチオニンを含む。配列番号:3はシグナル配列を含むが、プロリン、プロリン-セリン、および/またはメチオニンの挿入を欠いている。配列番号:4は、野生型成熟pIFN-αである。配列番号:5は、N末端にメチオニンを有する野生型である。
【
図4】位置X
aおよびX
bに示されるように、付加残基を有さないか、またはN末端に付加されたプロリンもしくはプロリン-セリンを有するかのいずれかであるQ102、E103、E107、L112、および136のさまざまなpIFN-α変異体変異体を表に示す。「abs」は存在しないことを意味する。参照として配列番号:1を示す。
【
図5】pAFが、H7、R34、およびH40で置換されている、3つのさらなるpIFN-α変異体についての配列アラインメントを示す。これらの配列は、N末端にプロリンまたはプロリン-セリンを有さないか、またはN末端メチオニンを有する。突然変異のサイトは、表の上のWT pIFN-アルファ配列において四角囲みによって示され、表中、それらは、四角で囲まれた「X」によって示される。X
aおよびX
bは、チャート中で定義される。「abs」は存在しないことを意味する。
【
図6】E107(四角で囲まれた「X」によって示される)で置換されたpAFを有するIFN-α変異体のアミノ末端にセリン(配列番号:24)、セリン-グリシン(配列番号:25)、およびヒスチジン(配列番号:26)が付加される、さらなる合成E107突然変異を示す。X
aおよびX
bは、チャート中で定義される。「abs」は存在しないことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書は、ワクチン未接種の新生子ブタならびに免疫抑制動物、すなわち、妊娠中のブタ(妊娠中の雌ブタまたは未経産ブタ)などのワクチン接種されていない動物;予防接種が不十分な防御しか付与しない動物;有効なワクチンが入手できないウイルスによる感染を受けやすい動物;および現在感染している動物に使用することができるブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体およびその使用方法を提供する。これらの組成物および使用方法は、ウイルス発生という事実において感染を防ぐためのものであろう。組成物は、感染したブタの疾患の重症度を低下させるためにも使用することができる。一般に、単回投与計画が投与される。あるいは、そして必要に応じて、投与量は、約1~3週間、または2週間間隔で、最適には1~2回の投与量のみで、提供されうる。
【0010】
23残基のシグナル配列を含む野生型ブタインターフェロン-α(pINF-α)は:
【表1】
である。
【0011】
二重下線部は、成熟型の野生型pIFN-αには存在しないシグナル配列である。
【0012】
本明細書は、(pINF-α)変異体を提供する。変異体は、23アミノ酸シグナル配列を除外する。変異体は、アミノ末端にメチオニン残基を有することができ、これはタンパク質の成熟形態において切断することができる。このメチオニンは、野生型のpIFN-αには存在しない。pINF-α変異体はさらに、シグナル配列メチオニンとN末端システインとの間に1または2個のアミノ酸挿入を有する。挿入は、プロリンまたはプロリン-セリンのいずれかである。配列は、下記:
【表2】
で示される。「X
b」(配列番号:2の3位)は、プロリン、セリンまたは不在のいずれかである。X
a(配列番号:2の2位)は、不在またはプロリンのいずれかである。X
bが不在である場合、X
aは不在であり、X
bがプロリンである場合、X
aは不在であり、X
bがセリンである場合、X
aはプロリンである。X
aおよびX
bの下流に位置する太字のグルタミン酸残基「E」は、合成アミノ酸、すなわち、pAFの置換のサイトである。
【0013】
pINF-α変異体はさらに、配列番号:1の5つの位置:残基E103(それぞれ配列番号:9~11)、E107(それぞれ配列番号:12~14 )、L112(それぞれ配列番号:15~17)、Y136(配列番号:18~20)、またはQ102(それぞれ配列番号:6~8)(番号付けは、N末端Metを有さない配列番号:4に示された配列に対するものである)の1つにおいて置換された合成アミノ酸であるパラアセチルフェニルアラニン(pAF)を有する。
【0014】
pINF-α変異体は、pAF上でさらにペグ化することができる。pINF-α変異体は、約5~約40kDaのPEG、または30kDaのPEGでペグ化することができる。pINF-α変異体は、直鎖状の30kDaのオキシアミノ-PEGでペグ化することができる。活性化オキシアミノ基は、パラアセチルフェニルアラニンなどの合成アミノ酸上に存在するアセチル側鎖と化学選択的に反応する。pINF-α変異体は、E107(配列番号:12~14)で置換されたpAFに共有結合した直鎖状の30kDaのPEGを有する(番号付けは、配列番号:4に示された配列に対するものである)。E107 pINF-α変異体は、それぞれ配列番号:13および14に反映されるように、N末端にプロリンまたはプロリンとセリンをさらに有する。
【0015】
pINF-α変異体を製剤に配合することができる。pINF-α変異体を含む製剤は、20mMの酢酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム、5%のグリセロール、pH5.0で2.0~6.0g/Lの力価のブタINF-αを含みうる。
【0016】
製剤は、以下の工程:
(a)pINF-αを精製する工程;
(b)精製pINF-α変異体を、pH8にて、50mM Tris、6Mグアニジンに可溶化する工程;
(c)可溶化pINF-αA変異体を、pH8にて、20mM Tris、1Mアルギニン、10mMメチオニン(met)、1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)中、室温にて16-24時間インキュベートして、タンパク質のリフォールディングを可能にする工程;
(d)残留アセチル化変異体を、強陰イオン交換樹脂上のクロマトグラフィー分割によって除去する工程;
(e)pINF-α変異体を、1:1~1:8または1:1~1:2のPEG:タンパク質比にてPEGでコンジュゲートさせる工程;および
(f)ペグ化pINF-α変異体を精製する工程;
を含む方法によって製造することができる。
【0017】
pINF-α変異体およびその製剤は、ウイルス感染を治療するために使用することができる。ブタインターフェロン-α(pINF-α)変異体のいずれかの25μg/kg~150μg/動物体重kgの量で、pINF-α変異体をブタに皮下投与することを含む、ブタにおけるウイルス感染を治療する方法。該方法は、約25μg/kg~約150μg/動物体重kgのpINF-αA変異体の第2の投与をさらに含みうる。方法が2回目の投与を含む場合、2回目の投与は、1回目の投与の約7、14、または21日後に起こりうる。
【0018】
ウイルス感染を治療する方法は、ブタ生殖器および呼吸器系疾患ウイルス、口蹄疫ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ブタサーコウイルス、ブタ流行性下痢ウイルス、および伝染性胃腸炎ウイルスからなる群から選択されるウイルス感染を治療するために使用することができる。方法は、新生ブタまたは妊娠中のブタを治療するために使用することができる。
【0019】
ウイルス感染を治療するためのブタにおける療法におけるpIFN-α変異体(またはその変異体を含む製剤)のいずれかの使用もまた企図され、ここで感染は本明細書で論じられるウイルスのいずれかによって引き起こされうる。
【0020】
ブタにおけるウイルス感染を治療するための医薬の製造における使用のためのpINF-α変異体の使用もまた記載される。ブタは、新生ブタまたは妊娠中のブタでありうる。
【0021】
「投与すること」は、治療有効量の開示された化合物および該化合物を含む組成物の注射を意味する。投与は、筋肉内(i.m)または皮下(s.c.)でありうる。投与されるpINF-α変異体変異体の量は、動物の体重に基づいて与えられ、たとえば、妊娠中のブタが新生ブタより多く投与される。
【0022】
本明細書に開示される製剤はまた、単回投与または複数回投与用バイアルに入れることができる。
【0023】
本明細書に記載の方法によって治療されるブタは、新生ブタ、または妊娠中のブタ(妊娠中の雌ブタまたは未経産ブタ)である。
【0024】
「治療する」、「治療すること」、または「治療」とは、本明細書に記載のウイルスのうちの1つによる感染症に関連する1つ以上の症状を軽減または改善することを意味する。組成物はさらに、ブタのウイルス感染を治療するための医薬の製造に使用することができる。組成物または医薬は、ブタを治療するために使用することができる。ブタは、新生ブタまたは妊娠中のブタでありうる。
【0025】
ここで、化合物、該化合物の製剤、該製剤の製造方法、ならびにウイルス感染しているブタ(pig)(porcineまたはswine)を治療するための該化合物および製剤の使用方法について詳細に言及する。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形の言及を含み、複数形の使用法は、単数形の使用法も含むことができる。
【0027】
「合成アミノ酸」とは、20種の一般的なアミノ酸の1つではないアミノ酸、またはピロリシンまたはセレノシステインを示す。そのような合成アミノ酸の例として、パラアセチルフェニルアラニン(pAF)、アセチルグルコサミニル-L-セリン、およびN-アセチルグルコサミニル-L-トレオニンが挙げられるが、これらに限定されない。そのような合成アミノ酸ならびにそれらの取り込みおよび修飾に関するさらなる詳細については、国際公開第2010/011735号および国際公開第2005/074650号を参照のこと。
【0028】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ブタ、特に家庭用ブタ(Sus scrofa domesticusまたはSus domesticus)を示し、ミニブタおよび肉生産用に飼育された品種を含むことができる。「pig」、「swine」または「porcine」は、すべてのブタ品種を含むことを意味する。
【0029】
使用される「有効量」という用語は、感染した動物から未感染の動物へのブタウイルスの伝染を予防する、治療する、もしくは減少させるか、またはブタウイルスの感染によって引き起こされる病気の症状を軽減するであろう、投与されるpINF-α変異体の量を示す。本明細書は、ブタインターフェロンアルファ(pIFN-α)変異体を開示する。これらの変異体は、ブタIFN-α配列上のさまざまな位置で置換されている合成アミノ酸を有している。以下に示すように、下線を引いたリーダー配列(配列番号:3の1-23残基)が除去される(アミノからカルボキシ末端方向)Sus scrofa domestica pIFN-α遺伝子(GenBank X57191):
【表3】
【0030】
成熟配列は、
【表4】
である。配列番号:3のN末端の下線を引いたシグナル配列は、たとえば、インビトロ転写のために、他のシグナル配列または単一のメチオニン残基でも置換することができ、その結果、以下の配列:
【表5】
が得られるか、またはN末端メチオニンとシステインとの間に、プロリンもしくはプロリン-セリン残基を包含することができる(配列番号:2参照)。他の関連するブタ配列を使用することができる。
【0031】
pIFN-α変異体は、Sus scrofa domestica上の以下の位置(配列番号:4で示される成熟配列に対する番号付けを用いる):Q102(配列番号:6)、E103(配列番号:9)、E107(配列番号:12)、L112(配列番号:15)、およびY136(配列番号:18)(上記では太字で下線が引かれている)の1つに導入された合成アミノ酸を有しており、
図2~4にも示す。成熟pINF-αは、成熟時に切断されるN末端メチオニン残基(たとえば、配列番号:5の残基1)を有してもよい。
【0032】
合成アミノ酸およびそれらの取り込みは、たとえば、WO2010/011735に議論されている。合成アミノ酸は、大腸菌(E. coli)(たとえば、L. Wang、et al.、(2001)、Science 292:498-500)、および真核生物である出芽酵母(S. cerevisiae)(たとえば、J. Chinら、Science 301:964-7(2003))において使用することができ、インビボでのタンパク質への合成アミノ酸の取り込みを可能にしている。
【0033】
生物学的活性を有する5つの列挙された合成アミノ酸置換変異体(5つのE103、E107、L112、Y136、またはQ102残基のうちの1つにおけるpAFの置換は、配列中、下線が引かれる)において、これらの変異体は、分子のN末端にアミノ酸を挿入することによってさらに修飾されうる。たとえば、プロリン(Pro)またはプロリン-セリン(Pro-Ser)をN末端のMetとCysの間に挿入することができる。
【0034】
変異体の成熟は、N末端メチオニンを除去する。
【0035】
本明細書は、水溶性ポリマーに結合したpINF-αポリペプチドを作製する方法を記載する。「ペグ化すること」および「ペグ化された」は、特定の合成アミノ酸のポリエチレングリコール(PEG)分子への共有結合を示すことを意味する。該方法は、合成アミノ酸を含む単離されたpINF-αポリペプチドを、合成アミノ酸と反応する部分を含む水溶性ポリマーと接触させることを含みうる。
【0036】
ポリ(エチレングリコール)分子は、約0.1kDaから約100kDaの間の分子量を有することができる。ポリ(エチレングリコール)分子は、0.1kDa~50kDa、20kDa~40kDa、および25kDa~35kDaの任意の整数値の分子量を有することができる。ポリ(エチレングリコール)分子は、約30kDaの分子量を有することができる。ポリ(エチレングリコール)分子は、0.1kDa~50kDa、20kDa~40kDa、および25kDa~35kDaの任意の整数値の分子量を有する直鎖状分子でありうる。ポリ(エチレングリコール)分子は、30kDaの分子量を有する直鎖状分子でありうる。ポリ(エチレングリコール)分子は、合成アミノ酸上のアセチル基と反応することができるアミノオキシ基を有しうる。ポリ(エチレングリコール)分子は、パラアセチルフェニルアラニンのアセチル側鎖とオキシム結合を形成することができる30kDaのアミノオキシ活性化直鎖状PEGでありうる。
【0037】
1つのpINF-αは、pAF残基に結合した約30kDaである直鎖状PEGを有する。
【0038】
上記および下記でさらに論じられる変異体は、動物への投与のために、さまざまな賦形剤、安定化剤、緩衝剤、および他の成分と共に、製剤にさらに混合することができる。安定性、動物への投与、および活性に適した製剤を特定することは簡単なことではない。代わりに、製剤は、各化合物、その化合物を精製するための必要性、化合物を維持するために必要な安定剤、および他のさまざまな製剤成分に合わせて調整されなければならない。
【0039】
製剤に配合するのに適切な塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化カルシウムが挙げられる。
【0040】
緩衝剤および/または安定化剤として、酢酸ナトリウムを使用することができる。
【0041】
適切な緩衝剤として、リン酸-クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、L-ヒスチジン、L-アルギニン塩酸塩、重炭酸塩緩衝剤、コハク酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、およびTRIS緩衝剤の単独または組み合わせのいずれかが挙げられる。
【0042】
製剤は、抗凍結剤も含みうる。抗凍結剤として、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)、スクラロース、およびポリビニルピロリドン4000(PVP 4000)からなる群から選択される抗凍結剤が挙げられる。
【0043】
製剤は、任意に界面活性剤を含んでもよい。適切な界面活性剤として、ポリソルベート(たとえば、ポリソルベート80)、硫酸ドデシル(SDS)、レシチンの単独または組み合わせのいずれかが挙げられる。
【0044】
製剤は、水性組成物、または再構成された液体組成物の形態もしくは粉末としてでありうる。製剤は、対象への投与を容易にするために、バイアルもしくはカートリッジまたは予め充填された滅菌注射器にさらに保管することができる。
【0045】
製剤が液体形態である場合、製剤のpHは、4.0~7.0または4.5~6.5の範囲でありうる。
【0046】
治療されうる適切なウイルス感染として、コロナウイルス、ペスチウイルス(ブタ熱ウイルスまたは古典的ブタ熱、CSF)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ動脈炎ウイルス(PoAV)、ブタ生殖器および呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、ブタサーコウイルス(PCV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ブタデルタコロナウイルス(PDCoV)などのブタコロナウイルス、およびブタインフルエンザウイルス(SIV)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
変異体または変異体を含有する製剤の投与は、単回投与または単回投与と、それに続く初回投与の7~21日後、たとえば、初回投与の約14日後の第二の投与でありうる。動物は、動物の体重kg当たり、約25μg/kg~約150μg/kgの変異体の量で、変異体を投与される。pINF-α変異体の他の有効量は、動物の体重に対して約50μg/kg~約100μg/kgである。変異体は、製剤で、またはそれ自体で投与することができる。変異体は、たとえば、発生前に1回投与することができる。変異体はまた、さらなる群れの喪失を防ぐために、群れへのウイルス発生後に投与することもできる。変異体またはその製剤は、2回目に投与することができる。第二の投与は、初回投与の7~21日後、たとえば、初回投与の約14日後に投与することができる。ウイルス感染に関連する疾患を軽減または予防するために必要ならば、さらなる投与が企図されてもよい。
【0048】
本明細書に開示される組成物、化合物、および方法の真の趣旨または範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある限り、本発明の修正形態および変形形態を網羅することを意図している。
【実施例0049】
pAF変異体
11のpAF変異体を作製し、野生型pINF-α(wt)と比較する。これらのうち、3つのpINF-α変異体は、pINF-α内のさまざまな位置で置換された合成アミノ酸についての乏しいタンパク質発現/産生の問題が原因で、継続的な試験から除外される。
【0050】
AXID2820は、pIFN-α-E107アンバーおよびプロリン-セリンN末端挿入を有するプラスミドpKG0083を有する(
図1)。残基の番号付けは、野生型pIFN-α配列(配列番号:4)に対応するように標準化されている。野生型ブタインターフェロンα-1のアミノ酸配列は、GenBank(登録番号X57191)から得られる。対応する核酸配列を合成し、そして発現ベクターにクローニングする。アンバー終止コドン(TAG)は、成熟野生型コード領域のアミノ酸位置107(または示される他の位置)に対応するグルタミン酸コドンに挿入される。Pro-Serをコードする核酸は、開始メチオニンコドン(AUG)の後のアミノ末端に挿入される。クローニングおよびその後の突然変異誘発が、望まれない突然変異の導入なしに予想通りに進行したことを確認するために、pKG0083の全プラスミドDNA配列を配列決定する。
【0051】
第1表中の8つのpINF-α変異体は、タンパク質発現が可能であった。これらの8つの変異体はまた、30kDのアミノオキシ活性化直鎖状PEGでペグ化される。変異体のPEG化は、10%氷酢酸を用いてタンパク質溶液(約20mg/mL以上のタンパク質濃度にて)をpH4.0に調整することによって達成される。酢酸ヒドラジドを最終濃度100mMまで添加し、オキシアミノPEGを、pINFα変異体に対して1:1~2:1の間、または約8:1までのモル比で添加する。反応は、暗所で28~30℃にて1~3日間進行させる。反応物を30mM酢酸ナトリウム、pH5.0で5倍希釈することにより反応を停止させる。第1表に示すように、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて、これらの8つのペグ化変異体を分析する。pINF-α変異体は、たとえば、His7がpAFで置換され、Arg34がpAFで置換されたなどの示された残基においてのpAF置換を除いて、野生型pINF-αと同じである。タンパク質濃度は、mg/mLで示される。「RP」は、逆相(すなわち、逆相クロマトグラフィー、またはRP-HPLC)を表す。
【0052】
第1表:ペグ化pIFNα変異体の製造
【表6】
SECは、多波長検出が可能なHPLCシステム(Agilent 1100もしくは1200、または同等物)を使用して達成される。移動相は、200mMリン酸カリウム、250mM塩化カリウム、pH6.0、10%イソプロパノール(IPA)である。
【0053】
これらの8つの変異体をインビトロ生物活性アッセイで試験する。Pestka Biomedical Laboratories, Inc. (Piscataway、NJ、USA)製の市販のインターフェロンアッセイキットiLite(登録商標)huIFNαキットを使用して、pIFN-αの生物学的活性を試験する。以下のとおり、PEG-変異体の活性における損失倍数を、Ambrx WTタンパク質に対して算出する:
【数1】
【0054】
第2表に示すように、試験した8つのうち、3つのpINF-α変異体は、野生型の非PEG化pINF-αよりも実質的に活性が低かった:
第2表
【表7】
【0055】
野生型pIFN-α対照は、シグナルペプチドを欠き、N末端アミノ酸(メチオニン、プロリンまたはセリン)が挿入されておらず、いかなるアミノ酸もpAF置換されておらず、そしてペグ化されていない(配列番号:4)。
【0056】
これらの実験の結果として、H40(配列番号:23)、H7(配列番号:21)、およびR34(配列番号:22)にpAF置換を有するペグ化pIFN-α変異体は、iLite(登録商標)huIFNαアッセイにおいて、野生型と比較して活性レベルが低いことから、ブタにおけるウイルス感染の治療には有用なpIFN-α変異体ではないと考えられる。
【0057】
第2表の結果についてのペグ化および非ペグ化変異体の両方のRP-HPLC分析は、移動相A(0.05% TFA/水)および移動相B(0.05% TFA/ACN)を使用する。
pIFN-α変異体を、20mM酢酸ナトリウム、pH5.0、100mM NaClおよび5%グリセロールに可溶化する。各動物に、5つの変異体または野生型pIFN-α(実施例1で使用したものと同じ)のいずれかを皮下(すなわち、背頚内)注射して、3匹ずつのラットからなる6つの試験群を形成する。