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特開2022-137070ステアリン酸マグネシウムを含む乾燥粉末組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137070
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ステアリン酸マグネシウムを含む乾燥粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/616 20060101AFI20220913BHJP
   A61K 31/4355 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A61K31/616
A61K31/4355
A61P7/02
A61P9/10
A61K9/14
A61K9/12
A61K9/48
A61K47/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022098813
(22)【出願日】2022-06-20
(62)【分割の表示】P 2020516655の分割
【原出願日】2017-09-26
(31)【優先権主張番号】62/562,295
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515299379
【氏名又は名称】オティトピック インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ヤディディ、カンビズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ステアリン酸マグネシウム(MgST)と、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの活性医薬品成分(API)を含む乾燥粉末組成物、およびその調製方法を提供する。また、心血管疾患を含む、虚血性または血栓塞栓症などの疾患を治療するための吸入によるAPIの肺への送達のための装置および方法を提供する。
【解決手段】吸入のための安定した乾燥粉末組成物は、約1μm~約5μmの範囲の空気力学的質量中位径(MMAD)を有する粒子中にアセチルサリチル酸を含む。乾燥粉末組成物は、ステアリン酸塩などの薬学的に許容な賦形剤を、組成物中の約0.04%(w/w)~約0.06%(w/w)、または約0.4%(w/w)~約0.6%(w/w)の範囲の量で含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリン酸塩と共微粉化した、アセチルサリチル酸、またはその薬学的に許容される塩を有する乾燥粒子を有する乾燥粉末組成物であって、15~20℃/35~45%RH、20℃/40%RH、30℃/60%RH、40℃/75%RH、および50℃/75%RHからなる群から選択される条件に、2週間、4週間、30日、1ヶ月、6週間、8週間、または12ヶ月曝露された後、ASA安定性は約95%以上を維持するものである、乾燥粉末組成物。
【請求項2】
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記ステアリン酸塩は、前記乾燥粉末組成物の約0.04%(w/w)~約0.06%(w/w)、または約0.4%(w/w)~約0.6%(w/w)の範囲の量であり、前記アセチルサリチル酸またはその薬学的に許容される塩は、前記乾燥粉末組成物の約50%(w/w)以上の量である、乾燥粉末組成物。
【請求項3】
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記ステアリン酸塩がステアリン酸マグネシウムである、乾燥粉末組成物。
【請求項4】
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記ステアリン酸塩が前記乾燥粉末組成物の約0.05%(w/w)または約0.5%(w/w)の量である、乾燥粉末組成物。
【請求項5】
実質的に担体粒子を含まない、請求項1記載の乾燥粉末組成物。
【請求項6】
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粒子は、約1μm~約5μmの範囲内のMMADを有する、乾燥粉末組成物。
【請求項7】
請求項6記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粒子は、約2μm~約3μmの範囲内のMMADを有する、乾燥粉末組成物。
【請求項8】
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記アセチルサリチル酸またはその薬学的に許容される塩は、前記乾燥粉末組成物の約80%(w/w)以上の量である、乾燥粉末組成物。
【請求項9】
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、NGIのステージ1からステージ8での質量堆積によって測定される前記乾燥粉末組成物のAPSDは、前記乾燥粉末組成物が50℃/75%の相対湿度で約30日間保管された後、時間tがゼロでのAPSDと比較すると、約10%未満変動するものである、乾燥粉末組成物。
【請求項10】
請求項6記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粉末組成物が50℃/75%の相対湿度で約5日間保管された後、時間tがゼロでのMMADと比較すると、前記乾燥粒子のMMADは、約10%未満変動するものである、乾燥粉末組成物。
【請求項11】
請求項6記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粒子は、約6μm未満のDV90、約3μm未満のDV50、および約1μm未満のDV10のMMADサイズ分布を有する、乾燥粉末組成物。
【請求項12】
請求項11記載の乾燥粉末組成物において、前記DV90、DV50および/またはDV10は、前記組成物が50℃/相対湿度75%で約15日間保管された後、約10%未満変化するものである、乾燥粉末組成物。
【請求項13】
血栓塞栓イベントのリスクを低減するか、または血栓症を治療するのに有効な薬物送達システムであって、前記システムは、請求項1に記載の乾燥粉末組成物を有する、薬物送達システム。
【請求項14】
クロピドグレルをさらに有する、請求項13に記載の薬物送達システム。
【請求項15】
乾燥粉末吸入器および請求項1記載の乾燥粉末組成物を有する薬物送達システム。
【請求項16】
請求項15記載の薬物送達システムにおいて、前記乾燥粉末吸入器は、
1つ以上の空気入口115および1つ以上の空気出口120を有するチャンバ110を画定するハウジング105と、
前記乾燥粉末組成物を含むカプセル125を受容するようなサイズである前記チャンバ110と、
カプセル125に1つ以上の開口部130を作成するためのハウジング105内の穿刺機構250と、
前記空気入口115のすべてではないが少なくとも2つの空気入口115を覆う任意のシールド170であって、前記任意のシールド170は、1つまたは2つ以上の被覆部分175を有し、各被覆部分175は少なくとも1つの入口115を覆うものであり、これにより任意のシールド170は、使用者が装置を握ることによる少なくとも2つの空気入口115の閉塞を防止する、任意のシールド170と、および、
ハウジング105に関連する端部140であって、前記乾燥粉末組成物をエアロゾル化し、前記カプセル125から出てエアロゾル化された乾燥粉末組成物を吸入するための前記端部140を通して使用者が吸入できるように、前記端部140は、前記使用者の口または鼻に受け入れるようなサイズおよび形状である、端部140と
を有するものである、薬物送達システム。
【請求項17】
請求項1記載の乾燥粉末組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を有する、血栓塞栓性イベントのリスクを治療する、または低減する方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、心筋梗塞を有する、方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、一過性の虚血性イベントを有する、方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、脳卒中を有する、方法。
【請求項21】
請求項17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、前記血栓塞栓性イベントの開始から約5分以内に治療される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年9月22日に出願され、現在係属中の米国仮特許出願第62/256,295号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本技術は、一般に、ステアリン酸マグネシウム(MgST)と、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリンまたはアセチルサリチル酸(ASA))などの活性医薬品成分(API)を含む乾燥粉末組成物、およびその調製方法に関する。本技術はまた、概して、心血管疾患を含む、虚血性または血栓塞栓症などの疾患を治療するための吸入によるAPIの肺への送達のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
治療剤の肺送達は、他の送達様式を超えるいくつかの利点を提供する。これらの利点には、作用の迅速な開始、患者の自己投与の便利さ、薬物の副作用が減少する可能性、吸入による送達の容易さ、および針の排除が含まれる。吸入療法は、入院患者または外来患者の設定で使いやすい薬物送達システムを提供することができ、薬物作用の非常に迅速な開始をもたらし、最小限の副作用をもたらす。
【0004】
MgSTは、医薬品製剤で使用される一般的な賦形剤である。しかしながら、MgSTは酸ベースの加水分解を触媒することが知られている。したがって、MgSTは、ASAなどの酸ベースの加水分解の影響を受けやすい有効成分と互換性がない。予期せぬことに、本明細書に開示されているASA/MgST製剤は、数か月間の様々な条件下で高いASA安定性を示した。以前に非相溶性であることが知られている他のAPIとMgSTの同様の組成は、MgSTの存在下で予期しない高いAPI安定性を持っている可能性もある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の特定の実施形態では、活性医薬成分(API)およびステアリン酸マグネシウム(MgST)を有する安定な乾燥粉末組成物が、その調製方法とともに本明細書で提供される。APIの例には、これに限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アセチルサリチル酸(ASA)などの酸ベースの加水分解を受けやすいAPIが含まれる。
【0006】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に開示されるAPI(例えば、ASA)およびMgST(例えば、ASA/MgST)の乾燥粉末組成物は、約0.5μm~約10μm、約0.5μm~約3μm、約2μm~約3μm、または約3μm以下の空気力学的質量中位径(MMAD)、約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約30%~約40%、約20%~約30%、約30%~約50%、または約30%~約60%の微粒子画分(FPF)%、約2.5μm以下、約2μm~約2.5μm、または約1.7μm~約2μmの幾何標準偏差(GSD)、および、約55%~約85%、約58%~約85%、約60%~約65%、約70%~約85%、約75%以上、または約90%以上の放出用量(ED)からなる群から選択される1つ以上の特性を有する。
【0007】
本発明の特定の実施形態において、例えば、血栓塞栓症のリスクを低減することにより、疾患を治療する方法は、本明細書に開示されるNSAID/MgST(例えば、ASA/MgST)の乾燥粉末組成物を投与することを有する。特定の実施形態では、本明細書に開示されるNSAID/MgST(例えば、ASA/MgST)の乾燥粉末組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)または定量吸入器(MDI)を介して投与される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本技術のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本技術の態様を示し、説明とともに本技術の原理を説明するのに役立つ。
【0009】
図1A図1A-1H:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された、様々な濃度のMgSTを含む共微粉化ASA組成物の例のHPLCクロマトグラム。 図1A:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された10%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。 図1B:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された5%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。 図1C:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された1%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。 図1D:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された0.5%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。 図1E:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された0.25%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。 図1F:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された0.1%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。 図1G:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された0.05%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。 図1H:実施例1に従って調製され、15~20℃/35~45%RHの条件で12ヶ月間保存された0.01%w/wのMgSTを含む共微粉化ASA組成物のHPLCクロマトグラム。
図1B】同上
図1C】同上
図1D】同上
図1E】同上
図1F】同上
図1G】同上
図1H】同上
図2A図2A~2D:50℃/75%RHでの様々なMgST濃度(0.01%~0.5%)のASA/MgST製剤の空気力学的粒度分布安定性プロファイル。 図2A:50℃/75%RHでのASA/MgST 0.5%w/w製剤の空気力学的粒度分布安定性プロファイル。 図2B:50℃/75%RHでのASA/MgST 0.05%w/w製剤の空気力学的粒度分布安定性プロファイル。 図2C:50℃/75%RHでのASA/MgST 0.01%w/w製剤の空気力学的粒度分布安定性プロファイル。 図2D:50℃/75%RHでのASA/MgST 0.1%w/w製剤の空気力学的粒度分布安定性プロファイル。
図2B】同上
図2C】同上
図2D】同上
図3】20℃/40%RH、30℃/60%RHおよび40℃/75%RHでのASA/MgST 10.0%w/w製剤の例のPSD(Dv50)安定性プロファイル。
図4A図4A~4D:異なる濃度(0.01~10%w/w)のMgST(Co-M)を使用した共微粉化ASAの例の空気力学的粒度分布(APSD)性能。 図4A:異なる濃度(0.01~0.25%w/w)のMgST(Co-M)を使用した共微粉化ASAのAPSD性能。 図4B:異なる濃度(0.5~10.0%w/w)のMgST(Co-M)を使用した共微粉化ASAのAPSD性能。 図4C:異なる濃度(0.01~0.25%w/w)のMgST(Co-M)を使用した共微粉化ASAのAPSD性能。 図4D:異なる濃度(0.5~10.0%w/w)のMgST(Co-M)を使用した共微粉化ASAのAPSD性能。
図4B】同上
図4C】同上
図4D】同上
図5】噴霧乾燥ASA/ロイシン(製剤046)、微粉化ASA、および0.5%w/w MgST(Co-M)を含む共微粉化ASAの例のAPSDパフォーマンス。
図6】噴霧乾燥ASA/ロイシン(製剤36および46)、微粉化ASA(微粉化)、および0.5%w/w MgST(0% Co-Mic)を使用した共微粉化ASAの例から作成された5つの異なるプローブの凝集力測定。
図7】製剤036とASA/MgSTの共微粉化製剤の粉末透過性測定。
図8】乾燥粉末吸入器(DPI)の例の断面図。
図9】前方着座面の例の斜視図は、カプセルに接触するための1つ以上の突起を有する。
図10】フィードバック機構を備えた乾燥粉末吸入器(DPI)の例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ステアリン酸マグネシウム(MgST)は、酸ベースの分解(例えば、加水分解)の影響を受けやすい薬物にとって非適合性の賦形剤であることが知られている。MgSTと互換性のない薬物の例は、これに限定されないが、NSAID(例えば、ASA、イブプロキサム、インドメタシン、ケトプロフェン)、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル)、抗糖尿病薬(例えば、グリピジド、クロルプロパミド、グリメピリド、グリベンクラミド)、降圧薬(例えば、カプトプリル、フォシノプリル、モエキシプリル、オクスプレノロール、および、キナプリル)、抗生物質(例えば、セファレキシン、エリスロマイシン、ナリジクス酸、オキサシリン、ペニシリンG)、抗マラリア薬(例えば、プリマキン)、制吐薬(例えば、プロメタジン)、抗アメーバ薬(例えば、アルベンダゾール)、抗がん剤(例えば、β-ラパコン)、抗凝固薬(例えば、クロピドグレル)、抗ヒスタミン薬(例えば、ドキシラミン)、および、睡眠薬(例えば、テマゼパム)を含む(Bharate et al., "Interactions and incompatibilities of pharmaceutical excipients with active pharmaceutical ingredients: a comprehensive review," J. Excipients and Food Chem., 2010, 1 (3), pp. 3-26、その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0011】
予期せぬことに、本明細書に開示されたASAおよびMgSTを有する乾燥粉末組成物は、数ヶ月間の様々な条件下(例えば、15~20℃/35~45%RH、20℃/40%RH、30℃/60%RH、および、40℃/75%RH)での保存後にASAの予想外に高い安定性を示した(実施例2~3)。特定の実施形態では、本明細書に開示されるASAおよびMgSTを有する乾燥粉末組成物は、40℃/75%RH下で最大30日間保管した後、予想外に高い安定性(例えば、粒子安定性)を示した。
【0012】
したがって、本明細書では、活性医薬成分(API)およびステアリン酸塩(例えば、MgSTおよびステアリン酸カルシウム)を有する安定な乾燥粉末組成物が提供される。APIの例は、これに限定されないが、NSAID(例えば、ASA、イブプロキサム、インドメタシン、ケトプロフェン)、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル)、抗糖尿病薬(例えば、グリピジド、クロルプロパミド、グリメピリド、グリベンクラミド)、降圧薬(例えば、カプトプリル、フォシノプリル、モエキシプリル、オクスプレノロール、および、キナプリル)、抗生物質(例えば、セファレキシン、エリスロマイシン、ナリジクス酸、オキサシリン、ペニシリンG)、抗マラリア薬(例えば、プリマキン)、制吐薬(例えば、プロメタジン)、抗アメーバ薬(例えば、アルベンダゾール)、抗がん剤(例えば、β-ラパコン)、抗凝固薬(例えば、クロピドグレル)、抗ヒスタミン薬(例えば、ドキシラミン)、および、睡眠薬(例えば、テマゼパム)を含む。
【0013】
特に明記しない限り、本明細書で使用する場合、API/ステアリン酸塩(例えば、MgST)乾燥粉末組成物中のAPIのw/w濃度は、APIとステアリン酸塩(例えば、MgST)の総重量におけるAPIのwt%で表され、および、API/ステアリン酸塩(例えば、MgST)、乾燥粉末組成物におけるステアリン酸塩(例えば、MgST)のw/w比は、APIおよびステアリン酸塩(例えば、MgST)の総重量中のステアリン酸塩(例えば、MgST)のwt%によって表される。特定の実施形態において、ステアリン酸マグネシウム(例えば、MgST)、API/ステアリン酸塩(例えば、MgST)中のST、乾燥粉末組成物のw/w濃度は、最大約15%w/w、最大約10%w/w、最大約7.5%w/w、最大約5.0%w/w、最大約2.5%w/w、最大約1%w/w、最大約0.5%w/w、最大約0.25%w/w、最大約0.1%w/w、最大約0.05%w/w、最大約0.01%w/w、約0.04%(w/w)~約0.06%(w/w)、または、約0.4%(w/w)~約0.6%(w/w)である。
【0014】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるAPI/MgST乾燥粉末組成物(例えば、ASA/MgST)のAPIは、15~20℃/35~45%RH、20℃/40%RH、30℃/60%RH、40℃/75%RH、または、50℃/75%RHで、最大2週間、最大4週間、最大30日間、最大6週間、最大8週間、および最大12ヶ月間保管した後、99.5%超え、99%超え、98.5%超え、98%超え、97.5%超え、97%超え、96.5%超え、96%超え、95.5%超え、95%超え、90%超え、または85%を超えて安定である。特定の実施形態において、用語「安定した」は、ASAの化学的安定性を意味する。特定の実施形態において、用語「安定した」は、粒子パラメータの安定性、例えば、本明細書に開示されているAPSDおよびPSDの特徴付けを意味する。
【0015】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるAPI/MgST乾燥粉末組成物のMMAD(例えば、ASA/MgST)は、15~20℃/35~45%RH、20℃/40%RH、30℃/60%RH、40℃/75%RH、または、50℃/75%RHで、最大2週間、最大4週間、最大30日間、最大6週間、最大8週間、および最大12ヶ月間保管した後、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満で変動する(例えば、MMAD、FPF、DV、GSD、EDなど)。
【0016】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるAPI/MgST乾燥粉末組成物のMMAD(例えば、ASA/MgST)のDV90、DV50および/またはDV10は、組成物が、15~20℃/35~45%RH、20℃/40%RH、30℃/60%RH、40℃/75%RH、または、50℃/75%RHで、最大2週間、最大4週間、最大30日間、最大6週間、最大8週間、および最大12ヶ月間保管された後、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満で変動する。
【0017】
さらに、特定の実施形態では、アセチルサリチル酸を含む。乾燥粉末の粒子は、
約0.5μm~約10μm、約0.5μm~約3μm、約2μm~約3μm、または約3μm以下の空気力学的質量中位径(MMAD)、
約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約30%~約40%、約20%~約30%、約30%~約50%、または約30%~約60%の微粒子画分(FPF)%、
約2.5μm以下の幾何標準偏差(GSD)、および、
約75%以上の放出用量(ED)
からなる群から選択される1つ以上の特性を有することがある。
【0018】
呼吸可能乾燥粉末は、リン脂質、脂肪酸(例えば、C10-C30またはC19-C30を含む)、および他の疎水性賦形剤などの1つ以上の他の薬学的に許容される賦形剤を、粒子の約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の範囲の量で含むことができる。
【0019】
1A.血栓塞栓症の症状とイベント
心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血栓性脳卒中などの血栓塞栓イベントは、患者または臨床医が、そのイベントに対する最初の療法または治療を、すなわち、血栓塞栓性イベントの開始から直ちに、または1、5、10または15分以内に提供することを可能にする一群の症状を呈し得る。特定の状況において、81mg、低用量、または「乳児用」のアセチルサリチル酸または通常のアセチルサリチル酸(330mg)を経口投与して、患者に初期治療を提供することができる。しかしながら、経口投与は、十分な治療効果を提供するのに必要なほど迅速に作用しない可能性があり、したがって、あまり好ましくない結果をもたらす可能性がある。したがって、肺薬物送達システムおよび関連する方法または本発明は、血栓塞栓性イベントのリスクを低減するための、および/または血栓塞栓性イベントの治療を提供するための、加速されたより効率的な経路および治療を提供する。例えば、特定の実施形態は、乾燥粉末吸入器(DPI)または定量吸入器(MDI)などの吸入によって非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与するシステムおよび方法を提供する。
【0020】
1B.乾燥粉末吸入器
緊急事態の初期段階での吸入による薬物の送達は、特定の病状の予備的治療の迅速かつ効果的な形態を提供することができる。例えば、一実施形態では、深刻な血栓塞栓性イベントの症状の愁訴を受け取ると、治療量のNSAIDをDPIによって患者に投与することができる。NSAIDは、健康状態に関連する問題に対処したり、病状の初期治療を提供したりすることができる。
【0021】
しかしながら、薬物の乾燥粉末吸入は一般にミリグラム未満の投与量に制限されてきた。粒子工学における最近の開発、特にPulmoSphere(登録商標)技術の開発により、1回の作動で大量の乾燥粉末を肺に送達できるようになった。David E. Geller, M.D., et al., Development of an inhaled dry-powder formulation of tobramycin using pulmosphereTM technology, J Aerosol Med Pulm Drug Deliv. 2011 August; 24(4), pp. 175-82参照。この出版物では、112mgのトブラマイシン(4カプセル入り)がPulmoSphere(登録商標)を介して効果的に送達された。
【0022】
今日まで、市場で入手可能な血栓塞栓性イベントの症状の予防的ケアとして、NSAIDの従来の毎日の使用(乳児用アセチルサリチル酸など)やNSAIDの緊急使用に代わる乾燥粉末吸入器によるアセチルサリチル酸の単回投与はなかった。したがって、一実施形態では、方法は、乳児のアセチルサリチル酸の投与量より少ない量(例えば、81mg未満)でNSAIDを乾燥粉末吸入により投与することを提供する。
【0023】
したがって、例えば、血栓塞栓性イベントのリスクを低減することによって状態を治療するための方法は、サリチル酸塩などのNSAIDを、DPIまたはMDIによって投与することを有する。例えば、方法は、DPIまたはMDIによってアセチルサリチル酸を投与することを有し得る。投与される用量(例えば、単回用量)は、25mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。さらに、様々な実施形態では、投与される用量(例えば、単回用量)は、20mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与される用量(例えば、単回用量)は、80mg未満、70mg未満、60mg未満、50mg未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、15mg未満のアセチルサリチル酸、12mg未満のアセチルサリチル酸、10mg未満のアセチルサリチル酸、8mg未満のアセチルサリチル酸、5mg未満のアセチルサリチル酸、または、2mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。
【0024】
他の実施形態において、アセチルサリチル酸の用量(例えば、単回用量)は、約2mg~約30mg、約4mg~約25mgのアセチルサリチル酸、約6mg~約20mgのアセチルサリチル酸、約8mg~約15mgのアセチルサリチル酸、約10mg~約13mgのアセチルサリチル酸、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または、約20mgのアセチルサリチル酸であり得る。このような投与量は、約81mg~約325mgの典型的な投与量と比較した場合、生物学的に同等の投与量を提供できるが、負の副作用はほとんどない。
【0025】
したがって、アセチルサリチル酸などのNSAIDは、DPIまたはMDIによって、従来の経口投与のアセチルサリチル酸よりもはるかに少ない単回投与または複数回投与で投与でき、アセチルサリチル酸などの特定のNSAIDに関連する負の副作用を回避する傾向がある一方で、同等の治療を提供できる。さらに、そのような治療を施すシステム(装置)も提供される。
【0026】
NSAID、特にアセチルサリチル酸は、先行技術の投与方法と比較して、空気力学的性能、生物学的利用能および/または薬物動態を改善するのに有効な薬学的に許容される賦形剤を含むように処方することができる。
【0027】
DPIまたはMDI装置は、血栓塞栓性イベントのリスクを低減するために、患者による吸入のためにNSAIDを利用可能にするためのマウスピースおよび作動部材を有することができる。
【0028】
本明細書に開示される乾燥粉末組成物および方法に適したDPIまたはMDIは、再利用可能な装置、使い捨て装置、事前充填装置、ブリスター装置、事前計量装置、または吸入用の乾燥粉末組成物を送達できる任意の装置であり得る。
【0029】
DPIまたはMDIの例は、これに限定されないが、米国特許第4,995,385号、第4,069,819号に開示された吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons, Loughborough, U.K.)、Rotahalers(登録商標)、Diskhaler(登録商標)およびDiskus(登録商標)(GlaxoSmithKline, Research Triangle Technology Park, North Carolina)、Ellipta(商標)、Handihaler(登録商標)、FlowCapss(登録商標)、Neohaler(登録商標)、Pressair(商標)、Rotahaler(登録商標)、Turbuhaler(登録商標)、Twisthaler(登録商標)、XCaps(Hovione, Loures, Portugal)、Inhalators(登録商標)(BoehringerIngelheim, Germany)、Aerolizer(登録商標)(Novartis, Switzerland)、CDMHaler、Podhaler(商標)、および当業者において知られている他のものを含む。
【0030】
DPIの例は、その図面を含めて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,559,325号に開示されているDPIであり得る。
【0031】
図8に示すように、DPI100は、1つ以上の空気入口115および1つ以上の空気出口120を有するチャンバ110を画定するハウジング105を有する。チャンバ110は、本明細書に開示されているような乾燥粉末組成物(例えば、ASA/MgST製剤)を含むカプセル125、カプセル125に1つ以上の開口部130を作成するためのハウジング105内の穿刺機構250、すべてではないが少なくとも2つの空気入口115を覆う任意のシールド170であって、任意のシールド170は、1つまたは2つ以上の被覆部分175を含み、各被覆部分175は少なくとも1つの入口115を覆うものであり、これにより任意のシールド170は、使用者が装置を握ることによる少なくとも2つの空気入口115の閉塞を防止する任意のシールド170、および、ハウジング105に関連する端部140を受け入れるようなサイズであり、端部140は、使用者が、乾燥粉末組成物をエアロゾル化し、カプセル125から出てエアロゾル化された乾燥粉末組成物を吸入するための端部140を通して(例えば、開口部145を通して)吸入できるように、使用者の口または鼻に受け入れるようなサイズおよび形状である。ハウジング105は、本体205および取り外し可能な末端部210を備える。末端部210は、本体205から取り外されて、本体205と末端部210とが互いに接続されたときに形成されるチャンバ110にカプセル125を挿入することができる。末端部210は、任意の形状(例えば、図8に示されるドーム型)をとることができ、チャンバ110の前端を塞ぐ仕切り150を含み、仕切り150は、そこを通って延びる1つ以上の出口120を有する。仕切り150およびチャンバ構成を有するエアロゾル化装置の例は、米国特許第4,069,819号および米国特許第4,995,385号に記載され、その両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。入口115は、接線方向に向けられた複数のスロット220を有することができる。使用者が末端部210を通して吸入すると、外気が入口115(例えば、接線スロット220)を通って流れるようになる。この空気流は、チャンバ110内に旋回気流を作り出す。旋回気流は、カプセル125を仕切り150に接触させ、次いで、乾燥粉末組成物がカプセル125を出て旋回気流内に連行されるように、チャンバ110内を移動させる。1つの特定のバージョンでは、チャンバ110は、縁部235で終端するテーパー部230を含む。チャンバ110内の旋回気流の間、カプセル125の前端は、仕切り150に接触して静止し、カプセル125の側壁は、縁部235に接触し、縁部235に沿ってスライドおよび/または回転する。カプセルのこの動きは、カプセル125の後部の1つ以上の開口部130を通して大量の乾燥粉末組成物を押し出すのに特に効果的である可能性がある。穿刺機構250は、その前端部260で穿刺部材265に取り付けられたプランジャ255を含み得、これは、図8に示されるバージョンでは、2つの鋭利な先端部275を有するU字形ステープル270である。穿刺機構250は、プランジャ255および/または穿刺部材265と接触し、プランジャ255および穿刺部材265に対してスライド可能である着座部材280をさらに有する。カプセル125に開口部130を作成するために、使用者は、例えば、使用者の指または親指でプランジャ255の端面290を押すことにより、プランジャ255に力を加える。この力により、プランジャが本体205内でスライドする。プランジャ255と着座部材280の後部295との間のわずかな摩擦接触により、着座部材280もまた、本体205内で前方着座面300までスライドする。カプセル125の形状と概ね一致するように成形され得る前方着座面300は、着座部材280と仕切り150との間にカプセル125を固定する。力の継続的な適用により、プランジャ255および穿刺部材265が着座部材280に対してスライドし、穿刺部材135を前方着座面300の開口部305を通ってカプセル125内に前進させる。力が取り除かれると、ばね310または他の付勢部材が、穿刺機構250をその静止位置に戻すように促す。例えば、ばね310は、本体205の肩315に接触し、プランジャ255のフランジ320を本体205の縁部325に向かって押してもよい。プランジャ255と着座部材280との間の摩擦係合はまた、プランジャ255がその収縮位置に戻されると、着座部材280をその収縮位置に戻す。
【0032】
DPIの別の例は、米国特許第8,069,851号に開示されているDPIであり得、その図面を含めて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
特定の実施形態において、DPIは、1つ以上の2つの空気入口115を有するハウジング105であって、入口115は、旋回気流を生成するように構成および寸法決めされる(例えば、複数の接線方向に向けられたスロット220を含む)ものであるハウジング105、仕切り150(例えば、例えば、1つ以上の乾燥粉末組成物出口120を有する穴あき部材)を有する末端部210であって、チャンバ110を規定するためにハウジングに接続可能である末端部210、本明細書に開示される乾燥粉末組成物(例えば、ASA/MgST製剤)を含むカプセル125を受容するようなサイズであるチャンバ110、少なくとも1つの入口115を覆う任意のシールド170をさらに有する末端部210であって、前記任意のシールド170は、少なくとも1つの被覆部分175を有し、これにより被覆部分175は、使用者が装置を握ることによる少なくとも1つの空気入口115の閉塞を防止するものである末端部210、および、カプセルに1つ以上の開口部130を作成するためにハウジング105内に配置された穿刺機構250であって、この穿刺機構250は、着座部材280および穿刺部材(例えば、U字型ステープル270)を有するものであり、着座部材280は、着座部材280および穿刺部材270がカプセル125内に前進し、カプセル125に1つ以上の開口部130を作成する間、前進してカプセル125と接触して位置合わせする前方着座面300を備えるものであり、前方着座面300は、カプセル125に接触するための1つ以上の突起400を含むものである、穿刺機構250を有する(例えば、図9を参照)。
【0034】
DPIの別の例は、米国特許第7,516,741号に開示されているDPIであり得、その図面を含めて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
特定の実施形態において、DPIは、空気入口115および空気出口120を有するチャンバ110を規定するハウジング105であって、前記チャンバ110は、本明細書に開示される乾燥粉末組成物(例えば、ASA/MgST製剤)を含むカプセル125を受容するようなサイズであるハウジング105、カプセル125に接触し、カプセル125に開口部130を提供するためにチャンバ110内で移動可能な穿刺部材265、および、穿刺部材265が所定の位置(例えば、それがカプセルへの開口部を提供する位置)に動かされた場合にのみ、触覚指示380を使用者に提供するフィードバック機構であって、前記穿刺部材265は所定の位置を超えて移動可能なものであり、それにより、空気が入口115を通って流れるときに、乾燥粉末組成物がエアロゾル化され、エアロゾル化された乾燥粉末組成物が出口120を通して送達される、フィードバック機構を有する。図10に示されているように、フランジ320またはプランジャ255の他の部分と係合する1つ以上の突起395を本体205に設けることができる。使用中に穿刺機構250を動かす際、フランジ320と突起395との接触により抵抗が生じる。抵抗は継続的な力によって排除され、穿刺機構250はカプセル125を穿刺する。突出部395を超えるフランジ320の抵抗および通過は、カプセル125が穿刺されたという触覚表示380として使用者によって検出され得る。突出部395は、フランジ320が突出部395を通過するときに、穿刺部材265がカプセル125を所定の量だけ貫通するように配置される。したがって、使用者は、パンクが発生したことを警告され、力の適用を停止することができる。このようにして、過剰な挿入が防止される。別のバージョンでは、突出部がプランジャ上にあり、フランジまたは他の接触部材が本体上にある状態で、配置を逆にすることができる。
【0036】
例えば、血栓塞栓性イベントのリスクを低減する方法が提供され、該方法は、乾燥粉末吸入器によってある用量の非ステロイド性抗炎症薬を投与することを有し得る。用量は、患者における血栓塞栓性イベントのリスクを低減するのに有効であり得る。乾燥粉末吸入器は、マウスピースと、血栓塞栓性イベントのリスクを低減するために患者が吸入するための非ステロイド性抗炎症薬の用量を利用可能にするための作動部材とを有することができる。
【0037】
薬物送達システムはまた、例えば、血栓塞栓性(虚血性)イベントのリスクを低減することによって、疾患を処置するために提供され得る。薬物送達システムは、ある用量の非ステロイド性抗炎症薬を含む、本明細書に開示される乾燥粉末組成物を有し得る。用量は、患者における血栓塞栓性イベントのリスクを低減するのに効果的であり得る。システムはまた、本明細書に開示されるような乾燥粉末吸入器を有し得る。乾燥粉末吸入器は、マウスピース、非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けるためのリザーバー、および、マウスピースを介して患者が吸入する非ステロイド性抗炎症薬の用量を利用可能にするための作動部材を有することができる。
【0038】
血栓塞栓性イベントは、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、または血栓性脳卒中であり得る。NSAID薬の用量は、血栓塞栓性イベントの症状に応じた予備治療として投与することができる。NSAIDは、アセチルサリチル酸であり得、そして単回用量または複数回用量、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10回以上の用量で投与され得る。
【0039】
2.定義
本明細書に開示される乾燥粒子または乾燥粉末組成物は、吸入による対象における気道への送達(例えば、肺送達)に適している。乾燥粒子は、約20μm未満、約15μm未満、約10μm未満、約5μm未満、約1μm~約10μm、約1μm~約5μm、約1μm~約3μm、約2μm~約3μm、約1.7μm~約2.7μmまたは以下の空気力学的質量中位径(MMAD)を有し得る。
【0040】
「分散性」という用語は、呼吸可能なエアロゾルに放出される乾燥粉末または乾燥粒子の特性を表す。本明細書では、乾燥粉末または乾燥粒子の分散性は、1barの分散(すなわち、レギュレーター)圧で測定された体積中央幾何学的直径(VMGD)を、4barの分散(すなわち、レギュレーター)圧で測定されたVMGDで割った値、または、HELOS/RODOSで測定した、0.5barのVMGDを4barのVMGDで割った値である。これらの商は、本明細書ではそれぞれ「1/4bar」および「0.5/4bar」と呼ばれ、分散性は低い商と相関している。例えば、1/4barは、HELOSまたは他のレーザー回折システムで測定した、RODOS乾燥粒子分散機(または同等の手法)のオリフィスから約1barで放出された呼吸可能な乾燥粒子または粉末のVMGDを、HELOS/RODOSによって4barで測定された同じ呼吸可能な乾燥粒子または粉末のVMGDで割った値を指す。したがって、高分散性の乾燥粉末または乾燥粒子は、1.0に近い1/4barまたは0.5/4barの比率になる。高分散性粉末は、凝集(agglomerate)、集合、または凝集(clump together)する傾向が低く、および/または、凝集(agglomerated)、集合、または凝集(clumped together)すると、吸入器から放出されて被験者が吸い込むときに、容易に分散または脱凝集する。分散性は、流量の関数として吸入器から放出されるサイズを測定することによっても評価できる。
【0041】
「放出用量」または「ED」という用語は、発射または分散イベント後の適切な吸入器装置からの薬物製剤のAPIの送達の指標を指す。より具体的には、乾燥粉末組成物の場合、EDは、単位用量パッケージから引き出され、吸入器のマウスピースから出るAPIの質量であり得る。あるいは、EDは、吸入装置によって送達されたApl用量と公称用量(すなわち、発射前に適切な吸入装置に入れられた単位用量あたりの粉末の質量)の比であってもよい。EDは実験的に測定されたパラメータであり、USP Section 601 Aerosols、Metered-Dose Inhalers and Dry Powder Inhalers、Delivered-Dose Uniformity、Sampling the Delivered Dose from Dry Powder Inhalers、United States Pharmacopeia Convention, Rockville, MD, 13th Revision, 222-225, 2007の方法を使用して測定されることができる。この方法は、患者の投薬を模倣するためにin vitro装置設定を利用する。
【0042】
サイズ範囲内にある薬物製剤の部分は、典型的には、微粒子画分(FPF)と呼ばれる。
【0043】
特に明記されていない限り、「FPF」または「細粒分」という用語は、5.0μm未満の空気力学的直径を有する乾燥粒子のサンプルの画分を指し、「FPF(<5.0)」、「FPF(<5.0)μm」および「5.0μm未満の細粒分」とも呼ばれる。
【0044】
「FPF(<3.0)」、「FPF(<3.0)μm」および「3.0μm未満の細粒分」という用語は、3.0μm未満の空気力学的直径を有する呼吸可能な乾燥粒子の質量の画分を指す。
【0045】
本明細書で使用される「約」という用語は、別段の指定がない限り、「約」という用語に続く数値の±10%を意味する。
【0046】
3.非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
アセチルサリチル酸などのNSAIDは、様々な有益な効果をもたらし、心血管疾患(血栓症など)のリスクを軽減するのに役立つ。しかしながら、臨床現場におけるアセチルサリチル酸などのNSAIDの使用は、伝統的に経口投与に限定されてきた。例えば、アセチルサリチル酸の経口投与は、腸および肝臓における初回通過効果により、経口投与量の約2/3の喪失または不活化をもたらす可能性がある。投与量の3分の1が全身の血流に到達し、望ましい効果が得られるが、全投与量によって生じる負の副作用により、患者がアセチルサリチル酸を定期的または毎日使用するのを妨げることがよくある。
【0047】
本発明の方法およびシステムは、NSAIDの使用に関連する以前の欠点を最小限にしながら、アセチルサリチル酸などのNSAIDの有益な効果を定期的におよび緊急事態で達成することを可能にする。
【0048】
アセチルサリチル酸が心筋梗塞のリスクを軽減するのに重要な効果があることを様々な研究が決定した。これらの研究では、325mgのアセチルサリチル酸投与量を使用している。しかしながら、これらの研究はアセチルサリチル酸の経口投与に基づいており、DPIまたはMDIの投与は示唆されていない。
【0049】
アセチルサリチル酸の吸入乾燥粉末組成物が開発されたが、乾燥粉末の肺送達を介してアセチルサリチル酸の高用量要件(冠状動脈イベントおよび脳卒中の低用量予防には約80mg/日、痛みまたは発熱の緩和には少なくとも300mg/日)を満たすことが難しいため、製剤は臨床的に実現可能ではないと報告されている。
【0050】
さらに、これらのレポートは、用量が1回の呼吸で数ミリグラム未満でない限り、咳などの肺への乾燥粉末の悪影響を回避できないことを認識している。したがって、以前の教示は、アセチルサリチル酸のより高い投与量要件がDPI(またはMDI)を使用して満たすことが不可能または困難であることを示唆している。最後に、喘息患者では、アセチルサリチル酸が経口よりも吸入により送達される場合、アセチルサリチル酸不耐性の発生率が高くなる可能性がある。
【0051】
本発明の方法およびシステムは、DPIによる低用量のアセチルサリチル酸などの低量のNSAIDの投与による疾患の治療(予防的治療またはそのリスクの低減を含む)、例えば心血管疾患(血栓症など)の治療を提供する。用量は、乳児用アセチルサリチル酸の用量(例えば、81mg未満)よりはるかに少なくすることができる。投与量は、約40mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与量は、25mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。さらに、投与量は、20mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与量は、15mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与量は、12mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与量は、10mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。さらに、投与量は、8mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与量は、5mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。一部の実施形態において、投与量は、2mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。
【0052】
例えば、用量は、約1mg~約40mgであり得る。様々な実施形態において、用量は、約4mg~約25mgのアセチルサリチル酸、約6mg~約20mgのアセチルサリチル酸、約8mg~約15mgのアセチルサリチル酸、約10mg~約13mgのアセチルサリチル酸、または、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または約20mgのアセチルサリチル酸であり得る。あるいは、アセチルサリチル酸の用量は、約80mg未満、約1mg~約75mg、約2mg~約60mg、約5mg~約40mg、約10mg~約30mg、約12mg~約25mg、約15mg~約20mg、約60mg~約95mg、約50mg~約100mg、約50mg~約80mg、約40mg~約80mg、約20mg~約30mg、約30mg~約40mg、約40mg~約50mg、約50mg~約60mg、約60mg~約70mg、約70mg~約80mg、約80mg~約90mg、または、約90mg~約100mgであり得る。
【0053】
特定の実施形態において、NSAIDは、様々な方法およびシステムで使用することができる。一部の実施形態において、NSAIDは、抗血小板作用を有するサリチル酸塩、すなわちサリチル酸の塩およびエステルを含むことができる。さらに、NSAIDには、表1にリストされた以下の化合物の1つ以上を含めることもできる。
【表1】
【0054】
NSAIDの代わりに他の代替手段を使用することもできる。このような代替品には、プラビックス(クロピドグレル)、COX-2阻害剤、ナットウキナーゼ(酵素(EC 3.4.21.62、納豆と呼ばれる日本の食品から抽出および精製される))などの他の治療法が含まれる。さらに、一部の実施形態では、患者の心血管疾患(血栓症など)のリスクを低減するのに有効であるなど、異なる有益な効果をもたらす他の薬物も使用することができる。したがって、方法およびシステムの議論は、これらの様々な代替案に一般的に適用されるものとするが、議論の目的で、本開示は、しばしばアセチルサリチル酸に言及する。アセチルサリチル酸に関する方法、効果、薬物動態データ、およびその他の考慮事項は、他のNSAIDにも同様に適用できると考えられる。
【0055】
4.乾燥粉末および乾燥粒子
本明細書に開示される乾燥粒子および乾燥粉末組成物は、分散性である。乾燥粒子のサイズは、微粒子画分(FPF)、体積中央幾何学的直径(VMGD)、空気力学的質量中位径(MMAD)、幾何標準偏差(GSD)、および放出用量(ED)など、当技術分野で従来からある様々な方法で表現できる。
【0056】
本技術の乾燥粒子は、HELOS/RODOSで1.0barで測定した場合、VMGDが約10μm以下(例えば、約0.1μm~約10μm)である可能性がある。好適には、本技術の乾燥粒子は、HELOS/RODOSで1.0barで測定した場合、約9μm以下(例えば、約0.1μm~約9μm)、約8μm以下(例えば、約0.1μm~約8μm)、約7μm以下(例えば、約0.1μm~約7μm)、約6μm以下(例えば、約0.1μm~約6μm)、約5μm以下(例えば、約0.1μm~約5μm)、約4μm以下(例えば、約0.1μm~約4μm)、約3μm以下(例えば、約0.1μm~約3μm)、約2μm以下(例えば、約0.1μm~約2μm)、約1μm以下(例えば、約0.1μm~約1μm)、約0.5μm~約6μm、約0.5μm~約5μm、約0.5μm~約4μm、約0.5μm~約3μm、または、約0.5μm~約2μmのVMGDを有する。例示的な実施形態では、本技術の乾燥粒子は、HELOS/RODOSで1.0barで測定された、約1.3~約1.7μmのVMGDを有する。他の例示的な実施形態では、本技術の乾燥粒子は、HELOS/RODOSで1.0barで測定された、約0.5μm~約2μmのVMGDを有する。
【0057】
あるいは、乾燥粒子は、HELOS/RODOSで1.0barで測定された、約30μm以下(例えば、約5μm~約30μm)のVMGDを有し得る。好適には、本技術の乾燥粒子は、約25μm以下(例えば、約5μm~約25μm)、約20μm以下(例えば、約5μm~約20μm)、約15μm以下(例えば、約5μm~約15μm)、約12μm以下(例えば、約5μm~約12μm)、約10μm以下(例えば、約5μm~約10μm)、または、約8μm以下(例えば、約6μm~約8μm)のVMGDを有する。乾燥粉末は、異なるサイズを有する粒子の混合物を有することができる。
【0058】
呼吸可能乾燥粒子は、約0.5μm~約10μm、約1μm~約10μm、約0.5μm~約5μm、約2μm~約3μm、または約1μm~約5μmのような約10μm以下のMMADを有し得る。好適には、本技術の乾燥粒子は約5μm以下(例えば、約0.5μm~約5μm、好適には、約1μm~約5μm)、約4μm以下(例えば、約1μm~約4μm)、約3.8μm以下(例えば、約1μm~約3.8μm)、約3.5μm以下(例えば、約1μm~約3.5μm)、約3.2μm以下(例えば、約1μm~約3.2μm)、約3μm以下(例えば、約1μm~約3.0μm)、約2.8μm以下(例えば、約1μm~約2.8μm)、約2.2μm以下(例えば、約1μm~約2.2μm)、約2.0μm以下(例えば、約1μm~約2.0μm)、または、約1.8μm以下(例えば、約1μm~約1.8μm)のMMADを有する。
【0059】
あるいは、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、約2.5μm以下の幾何標準偏差(GSD)を有する。
【0060】
あるいは、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、約75%以上の放出用量(ED)を有する。
【0061】
あるいは、本技術の乾燥粉末および乾燥粒子は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、または、少なくとも約70%の5.0μm未満(FPF_TD<5.0μm)のFPFを有する。あるいは、または、さらに、本技術の乾燥粉末および乾燥粒子は、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または、少なくとも約85%の放出用量の5.0μm未満(FPF_ED<5.0μm)のFPFを有する。
【0062】
他の実施形態において、本発明の乾燥粉末および乾燥粒子は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、好適には、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、または、少なくとも約70%の約5.6μm未満(FPF_TD<5.6μm)のFPFを有し得る。
【0063】
第3の実施形態において、本発明の乾燥粉末および乾燥粒子は、少なくとも約20%、好適には、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、好適には、少なくとも約45%、少なくとも約50%、または、少なくとも約55%の約3.4μm未満(FPF_TD<3.4μm)のFPFを有し得る。
【0064】
乾燥粉末および乾燥粒子は、約0.1g/cm3~約1.0g/cm3のタップ密度を有し得る。例えば、小さく、分散可能な乾燥粒子は、約0.1g/cm3~約0.9g/cm3、約0.2g/cm3~約0.9g/cm3、約0.2g/cm3~約0.9g/cm3、約0.3g/cm3~約0.9g/cm3、約0.4g/cm3~約0.9g/cm3、約0.5g/cm3~約0.9g/cm3、または、約0.5g/cm3~約0.8g/cm3、約0.4g/cc超、約0.5g/cc超、約0.6g/cc超、約0.7g/cc超、約0.1g/cm3~約0.8g/cm3、約0.1g/cm3~約0.7g/cm3、約0.1g/cm3~約0.6g/cm3、約0.1g/cm3~約0.5g/cm3、約0.1g/cm3~約0.4g/cm3、約0.1g/cm3~約0.3g/cm3、0.3g/cm3未満のタップ密度を有する。好適な実施形態において、タップ密度は、約0.4g/cm3を超え、他の好適な実施形態において、約0.5g/cm3を超える。あるいは、タップ密度は、約0.4g/cm3未満であり得る。
【0065】
乾燥粉末および乾燥粒子は、乾燥粒子の約15重量%未満の水または溶媒含有量を有することができる。例えば、乾燥粒子は、約15重量%未満、約13重量%未満、約11.5重量%未満、約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満の水または溶媒含有量を有することができる、または無水であり得る。他の実施形態において、本技術の乾燥粒子は、約6%未満および約1%超、約5.5%未満および約1.5%超、約5%未満および約2%超、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%の水または溶媒含有量を有し得る。
【0066】
特定の用途に応じて、本発明の組成物(例えば、本発明の乾燥粉末または乾燥粒子)は、組成物中に低いまたは高いパーセンテージのAPIを含み得る。例えば、乾燥粒子は、3%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、約99%以上、約40%~約95%、約50%~約95%、約30%~約99%、約40%~約99%、約50%~約99%、約60%~約99%、約70%~約99%、約80%~約99%、約97.5%、約99.5%、約99.75%、約99.9%、約99.95%、または約99.9%(重量パーセント、w/w)の有効成分(例えば、ASA)を含み得る。
【0067】
5.乾燥粉末の送達
乾燥粉末吸入技術において、患者は、乾燥粉末吸入器を使用して、NSAIDなどの薬物の粉末製剤を吸入することができる。この用量は、患者の血栓塞栓性イベントのリスクを減らすのに効果的である。
【0068】
DPIまたはMDI送達システムを使用して薬剤を提供するために、様々なタイプの吸入器を使用できる。投与される用量は、患者における血栓塞栓性イベントのリスクを低減するのに有効であり得る。
【0069】
例えば、乾燥粉末吸入器は、マウスピース、API(例えば、NSAID)を含む乾燥粉末組成物を受け入れるためのリザーバー、およびマウスピースを通して患者が吸入するための乾燥粉末組成物を利用可能にするための作動部材を有し得る。
【0070】
本発明の方法およびシステムは、これに限定されないが、米国特許第4,995,385号、第4,069,819号に開示された吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons, Loughborough, U.K.)、Rotahalers(登録商標)、Diskhaler(登録商標)およびDiskus(登録商標)(GlaxoSmithKline, Research Triangle Technology Park, North Carolina)、Ellipta(商標)、Handihaler(登録商標)、FlowCapss(登録商標)、Neohaler(登録商標)、Pressair(商標)、Rotahaler(登録商標)、Turbuhaler(登録商標)、Twisthaler(登録商標)、XCaps(Hovione, Loures, Portugal)、Inhalators(登録商標)(BoehringerIngelheim, Germany)、Aerolizer(登録商標)(Novartis, Switzerland)、CDMHaler、および、Podhaler(商標)を含む任意のDPIまたはMDIデバイスでの使用に適合させることができる(例えば、http://www.nationaljewish.org/healthinfo/medications/devices/dry-powder参照)。
【0071】
本発明の方法およびシステムは、血栓塞栓性イベントのリスクを低減するために、治療的に有効な用量のAPI(例えば、NSAID)を提供するための装置および方法を提供する。上記で論じたように、一般的なアプローチは、吸入器によって、薬学的に許容される粉末形態(例えば、アセチルサリチル酸および/またはその誘導体)でNSAIDを送達することである。
【0072】
粒度分布(PSD)および空気力学的粒度分布(APSD)に関して、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、同じ(または類似の)サイズ分布を有する粒子、または異なるサイズ分布を有する粒子を含み得る。本明細書に開示される乾燥粉末組成物の粒径は、単峰性、二峰性または多峰性の分布を有し得る。結果として、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、単峰性、二峰性または多峰性の吸収を生じ得る。言い換えれば、本明細書に開示される乾燥粉末組成物の投与は、単峰性、二峰性または多峰性の濃度-時間プロファイルをもたらし得る。
【0073】
例えば、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、以下の1つ、2つ、または3つのグループを含み得る:約1μm~約5μmまたは約2μm~約3μmの範囲の空気力学的中央径を有する粒子、約5μm~約15μmの範囲の空気力学的中央径を有する粒子、および約15μmを超える空気力学的中央径を有する粒子。
【0074】
異なるサイズ分布を持つ粒子のバッチを使用して、同じAPI(例えば、アセチルサリチル酸)の粒子を混合すると、架橋が減少する場合がある。例えば、比較的均一な粒子サイズの組成物は凝集するが、約1μm~約5μmの空気力学的中央径を有するいくつかの粒子、約5μm~約15μmの範囲の空気力学的中央径を有する他の粒子、および、約15μmを超える空気力学的中央径を有するさらに他の粒子を有する混合組成物の提供は、凝集を抑制し、製剤の沈着特性を維持する可能性がある。実際には、薬学的に活性な化合物は、医薬品の保管中の凝集の防止に関して、賦形剤(ラクトースなど)の機能を置き換えるために使用される。
【0075】
さらに、様々な粒子サイズの比率を選択することにより、薬物が最終的に沈着する場所に基づいて、より速くまたはより遅く作用する製剤を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態は、約1μm~約5μmの空気力学的中央径を有するアセチルサリチル酸粒子を80%、および少なくとも15μmの空気力学的中央径を有する粒子を約20%有する調製物を提供する。他の組み合わせも可能であり、当業者は、より速く作用する調製物が比例的により小さな粒子を含み、遅い作用の調製物が比例的により大きな粒子を含むことを容易に理解するであろう。したがって、本明細書に記載の装置および方法を使用して、少なくとも経口投与により達成できるのと同じくらい迅速に、気道を介して治療有効量のAPI(例えば、アセチルサリチル酸などのNSAID)を提供することが可能である。
【0076】
より遅い作用の剤形が望ましい場合、製剤は、約5μm~約10μm、または15μm以上の範囲の空気力学的中央径を有する粒子の増加する画分を含み得る。これらの調製物は、気道または口腔および咽頭のいずれかに沈着し、したがって、アセチルサリチル酸およびその代謝誘導体の循環レベルをより徐々に増加させるであろう。
【0077】
したがって、本技術の一態様は、様々なサイズの粒子の混合物を含む乾燥粉末を提供する。
【0078】
例えば、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、VMGD(例えば、≧20μmまたは20~30μmなどのVMGD≧15μm)によって測定される大きなサイズの粒子、およびVMGD(例えば、1~3μmなどのVMGD≦5μm)によって測定される小さな粒子を、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:10、約1:15、約1:20、約1:25、約1:30、約1:40、約1:50、約1:100、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約40:1、約50:1、または約100:1などの比率(w:w)で有し得る。
【0079】
あるいは、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量パーセント)の約10μm以下、好適には約5μm以下のVMGDを有する粒子を有することができる。一般に、10μm以下の粒子は肺に到達でき、5μm以下(例えば、1~3μm)の粒子は肺胞に到達できる。
【0080】
他の実施形態において、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量パーセント)の約5μm~約20μmの間、約5μm~約15μmの間、または、約5μm~約10μmの間のVMGDを有する粒子を有することができる。
【0081】
あるいは、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量パーセント)の約15μm、20μm以上のVMGDを有する粒子を有することができる。
【0082】
上記の特徴は組み合わせることができる。例えば、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約5μm以下(VMGD)の粒子を約50%、約5~約15μm(VMGD)の粒子を約25%、および約15μm以上(VMGD)の粒子を約25%含み得る。
【0083】
本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、様々な空気力学的質量中位径(MMAD)を有する粒子の混合物も有することができる。例えば、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、大きなサイズ(例えば、2:20μmまたは、20~30μmなどのMMAD2:15μm)の粒子および小さなサイズ(例えば、1~3μmなどのMMAD:15μm)の粒子を、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:10、約1:15、約1:20、約1:25、約1:30、約1:40、約1:50、約1:100、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約40:1、約50:1、または約100:1などの比率(w:w)で有し得る。
【0084】
あるいは、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量パーセント)の約10μm以下、好適には約5μm以下のMMADを有する粒子を有することができる。一般に、10μm以下の粒子は肺に到達でき、5μm以下(例えば、1~3μm)の粒子は肺胞に到達できる。
【0085】
他の実施形態において、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量パーセント)の約5μm~約20μmの間、好適には、約5μm~約15μmの間、または、約5μm~約10μmの間のMMADを有する粒子を有することができる。
【0086】
他の実施形態において、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量パーセント)の約15μm以上、好適には20μm以上のMMADを有する粒子を有することができる。
【0087】
上記の特徴は組み合わせることができる。例えば、本明細書に開示される乾燥粉末または乾燥粉末組成物は、約5μm以下(MMAD)の粒子を約50%、約5~約15μm(MMAD)の粒子を約25%、および約15μm以上(MMAD)の粒子を約25%含み得る。
【0088】
特定の実施形態において、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、抗凝集(または抗架橋)賦形剤であり得る、MgST以外の賦形剤を有さない場合がある。
【0089】
本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、様々なサイズの粒子の混合物を含むことができ、粒子の架橋を実質的に防止または低減するのに効果的である。特定の実施形態において、乾燥粉末中のAPI(例えば、NSAID(アセチルサリチル酸など))の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%が、肺の肺胞腔に送達される。
【0090】
6.乾燥粉末および乾燥粒子を調製するための方法
本明細書に開示される乾燥粒子および乾燥粉末組成物は、任意の適切な方法を使用して調製され得る。乾燥粉末および粒子を調製するための多くの適切な方法は、当技術分野において従来通りであり、単一および二重乳化溶媒蒸発、噴霧乾燥、粉砕(例えば、ジェット粉砕)、混合、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純および複雑なコアセルベーション、界面重合、超臨界二酸化炭素(CO2)の使用を含む適切な方法、共微粉化、および他の適切な方法を含む。乾燥粒子は、当技術分野で既知のマイクロスフェアまたはマイクロカプセルを作製する方法を使用して作製することができる。これらの方法は、本明細書に開示されるような所望の空気力学的特性(例えば、空気力学的直径および幾何学的直径)および予期しない安定性を有する乾燥粒子の形成をもたらす条件下で使用され得る。必要に応じて、ふるいなどの適切な方法を使用して、サイズや密度などの望ましい特性を持つ乾燥粒子を選択できる。
【0091】
共微粉化
本明細書に開示されるAPI/MgST乾燥粉末組成物は、共微粉化によって調製することができる。適切な共微粉化技術は、例えば、StankおよびStechelによる、"Physico-chemical characterization of surface modified particles for inhalation," International Jounal of Pharmaceutics, 2013, 448:9-18に記載され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
特定の実施形態において、微粉化粉末は24時間静置され、包装される。
【0093】
他の賦形剤
本明細書に開示されるAPI/MgST乾燥粉末組成物は、例えば、ラクトース、糖、またはポリマーなどの別の医薬賦形剤によってカプセル化することができる。特定の実施形態において、他の医薬賦形剤は疎水性である。特定の実施形態では、他の医薬賦形剤は、約10~約30個の炭素、または約19~約30個の炭素を有する脂肪酸である。
【0094】
さらに、本明細書に開示されるAPI/MgST乾燥粉末組成物は、様々な薬学的に許容される賦形剤で混合および/またはコーティングされ得る。賦形剤は、活性薬物の空気力学的性能を改善し、生物学的利用能を改善し、安定性を高め、pHを調節し、持続放出特性を提供し、刺激性薬物の味マスキングを提供し、および/または薬物動態学的性能を改善するために含めることができる。
【0095】
乾燥粉末組成物では、賦形剤はまた、活性医薬成分の凝集を低減し、医薬製剤が吸入されるときの気流中の製剤の懸濁を改善するための担体機能を提供することができる。そのような担体は、例えば、これに限定されないが、グルコース、サッカロース、ラクトースおよびフルクトースなどの糖/糖アルコール、デンプンまたはデンプン誘導体、デキストリン、シクロデキストリンおよびそれらの誘導体などのオリゴ糖、ポリビニルピロリジン、アルギン酸、チロース、ケイ酸、セルロース、セルロース誘導体、マンニトールやソルビトールなどの糖アルコール、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳糖、ラクチトール、デキストレート、デキストロース、マルトデキストリン、単糖類、二糖類、多糖類を含む糖類、アラビノース、リボース、マンノース、スクロース、トレヘロース、マルトース、デキストランなどの糖アルコールのような物質を含み得る。
【0096】
場合によっては、活性医薬成分をコーティングするために賦形剤を提供して、それを「マスキング」することができる。マスキングは、修飾されていない活性医薬品が刺激を受けるか、そうでなければ受容者に不快である場合に特に有用です。例えば、場合によっては、苦い分子を硬化油と界面活性剤の組み合わせでコーティングすることが、そうでなければ有効成分の不快な味をカバーするのに効果的であることが示されている。
【0097】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、リン脂質が含まれる。 リン脂質は界面活性剤特性を有していても有していなくてもよい。適切なリン脂質賦形剤の例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンまたは他のセラミド、ならびにレシチン油などのリン脂質含有油が含まれるが、これらに限定されない。リン脂質の組み合わせ、またはリン脂質と他の物質の混合物を使用することができる。一実施形態では、賦形剤として使用されるリン脂質は、大豆レシチンである。別の実施形態では、リン脂質は肺に対して内因性である。
【0098】
本組成物において使用され得るリン脂質の非限定的な例としては、大豆レシチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジラウリロホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウリルロリルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリシロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)、および、ジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)が挙げられる。
【0099】
一実施形態では、大豆レシチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)またはそれらの混合物が賦形剤として使用される。
【0100】
本組成物では、賦形剤を使用することができる。賦形剤は、粒子の約0%~約99%(w/w)、約0.01%~約80%(w/w)、約0.05%~約70%(w/w)、約0.1%~約60%(w/w)、約0.1%~約50%(w/w)、約0.1%~約40%(w/w)、約0.1%~約30%(w/w)、約0.1%~約20%(w/w)、約0.1%~約10%(w/w)、約0.05%~約8%(w/w)、約0.1%~約6%(w/w)、約5%~約10%(w/w)、約3%~約8%(w/w)、約2%~約6%(w/w)、約0.1%~約5%(w/w)、約0.1%~約4%(w/w)、約0.1%~約3%(w/w)、約0.1%~約2%(w/w)、約0.1%~約1%(w/w)、約1%~約6%(w/w)、約1%~約5%(w/w)、約1%~約4%(w/w)、または約1%~約3%(w/w)の範囲のレベルで存在し得る。特定の実施形態では、1つ以上の賦形剤(例えば、1つ以上のリン脂質)は、粒子の約0.1%~約10%(w/w)、約1%~約5%(w/w)、約0.1%、約5%(w/w)、約3%、または約10%(w/w)の範囲のレベルで存在する。
【0101】
さらに、一部の実施形態では、界面活性剤は、吸収剤、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、抗菌剤、抗酸化剤、結合剤、可溶化剤、溶媒、粘度調整剤、保湿剤およびそれらの組み合わせを含む、1つまたは複数の追加の賦形剤と組み合わせて提供できる。一部の実施形態では、製剤は、溶解した製剤を肺と等浸透性にするのに有効な量の塩を含む。
【0102】
本明細書に開示される呼吸可能乾燥粒子および乾燥粉末組成物は、製造され、次いで、例えば、サイクロンによる濾過または遠心分離によって分離されて、予め選択されたサイズ分布を有する粒子サンプルを提供し得る。例えば、サンプル内において、呼吸可能乾燥粒子の約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超は、選択した範囲内の直径を持つことができる。呼吸用乾燥粒子の特定のパーセンテージが含まれる選択された範囲は、例えば、約0.1~約3μmの間のVMGDなど、本明細書に記載されている任意のサイズ範囲であり得る。
【0103】
VMGDなどの呼吸可能な乾燥粒子の直径は、Multisizer lie(Coulter Electronic, Luton, Beds, England)などの電気ゾーンセンシング機器またはHELOSシステム(Sympatec, Princeton, NJ)などのレーザー回折機器を使用して測定できる。粒子の幾何学的直径を測定するための他の機器は、当技術分野でよく知られている。サンプル中の呼吸可能な乾燥粒子の直径は、粒子の組成や合成方法などの要因によって異なる。サンプル中の呼吸可能な乾燥粒子のサイズの分布は、呼吸器系内の標的部位内での最適な沈着を可能にするように選択することができる。
【0104】
実験的には、飛行時間(TOF)測定を使用して空気力学的直径を決定できる。例えば、Model 3225 Aerosizer DSP Particle Size Analyzer(Amherst Process Instrument, Inc., Amherst, MA)のような機器を使用して、空気力学的直径を測定できる。Aerosizerは、個々の呼吸可能な乾燥粒子が2つの固定レーザービームの間を通過するのにかかる時間を測定する。
【0105】
空気力学的直径は、従来の重力沈降法を使用して直接実験的に決定することもできる。この方法では、呼吸可能な乾燥粒子のサンプルが特定の距離を沈降するのに必要な時間が測定される。空気力学的質量中位径を測定するための間接的な方法には、Andersen Cascade Impactor(ACI)と多段液体インピンジャー(MSLI)法がある。空気力学的直径を測定する別の方法は、Next Generation Impactor(NGI)を使用することである。NGIは、ACIと同様の慣性衝突の原理に基づいて動作する。NGIは7つのステージで構成され、30、60、および100LPMの流量で校正できる。インパクターステージがスタックされるACIとは対照的に、NGIのステージはすべて1つの平面にある。収集カップは、NGIの各ステージの下の粒子を収集するために使用される。米国特許第8,614,255号。粒子の空気力学的直径を測定するための方法および機器は、当技術分野でよく知られている。特に明記しない限り、本明細書に開示されているNGI特性は、4kPaの圧力降下を必要とするUSP<601>NGI(装置5)法に従って取得される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、http://www.pharmacopeia.cn/v29240/usp29nf24s0_c601_viewall.htmlを参照)。
【0106】
本明細書に開示された乾燥粉末組成物は、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、約0.5μm~約10μm、または約2μm~約3μmの範囲内の空気力学的質量中位径(MMAD)を有する実質的に乾燥した粒子を含み、ここで、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、乾燥粒子の約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の範囲の量の1つ以上のリン脂質をさらに含む。粒子は、粒子が(i)約20μm未満のDV90、約7μm未満のDV50、および約2μm未満のDV10、(ii)約10μm未満のDV90、約4μm未満のDV50、および約1μm未満のDV10、(iii)約6μm未満のDV90、約3μm未満のDV50、および約1μm未満のDV10を示すMMADサイズ分布を有する。
【0107】
本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、薬学的に許容される賦形剤でコーティングされた粒子を有し得る。薬学的に許容される賦形剤は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)または大豆レシチンなどの界面活性剤特性を有するリン脂質であり、約0.1%~約10%w/wの範囲の量、または、約1%~約5%w/wの範囲の量であり得る。一実施形態では、乾燥粒子上のDSPCの重量百分率は5%w/wである。別の実施形態では、乾燥粒子の大豆レシチンの呼吸可能な乾燥粉末は、0.1%w/wである。
【0108】
特定の実施形態において、本明細書に開示される薬物送達システムは、血栓塞栓性イベントのリスクを低減するか、または血栓症を治療するのに効果的である。アセチルサリチル酸の用量は、約5mg~約40mgの範囲の量で存在し得る。製剤は、クロピドグレルをさらに含み得る。呼吸可能乾燥粉末は、約75%~約95%の範囲の放出用量を有することができる。
【0109】
特定の実施形態において、本明細書に開示される乾燥粉末組成物(例えば、ASA/MgST)は、約2.0~約3.0μmの範囲のMMADおよび約55%~約85%、約58%~約85%、または、約70%~約85%の範囲の放出用量を有する乾燥粒子を実質的に含む。この実施形態において、本明細書に開示される乾燥粉末組成物のNGI試験装置の各ステージまたはそれらの組み合わせで収集された(API質量でのEDと比較して)API(例えば、ASA)の質量パーセントは、ステージ1では、約5%~約12%、約5%~約10%、約6%~約9%、約7%~約8.5%、約9.85%、約8.54%、約7.73%、約7.63%、約7.5%、約6.79%、または約5.89%、ステージ2では、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約17%、約10%~約15%、約10%~約12%、約22.25%、約21.56%、約20.43%、約20.06%、約19.6%、約17.42%、または約16.52%、ステージ3では、約10%~約30%、約15%~約25%、約20%~約25%、約25.89%、約25.79%、約24.70%、約23.26%、約22.56%、約20.63%、約18.47%、または約9.87%、ステージ4では、約10%~約25%、約15%~約25%、約17%~約25%、約20%~約25%、約21.30%、約19.29%、約18.8%、約17.47%、約17.17%、または約12.77%、ステージ5では、約5%~約10%、約9.74%、約9.39%、約8.63%、約7.98%、約7.73%、約7.22%、または約4.86%、ステージ2~3では、約20%~約50%、約30%~約50%、約35%~約50%、約40%~約50%、約45%~約50%、約48.04%、約44.82%、約44.76%、約43.30%、約42.99%、約40.14%、約34.99%、または約19.96%、ステージ4~6では、約10%~約35%、約20%~約35%、約20%~約30%、約25%~約30%、約32.11%、約31.92%、約31.39%、約27.93%、約27.25%、約26.31%、約18.93%、または約10.15%、および、ステージ7~8では、約1%~約20%、約1%~約10%、約1%~約5%、約1%~約3%、約16.9%、約1.64%、約1.49%、約1.46%、約1.29%、約1.21%、または約0.88%、および微粒子画分(FPF)は、約30%~約50%、約35%~約45%、約40%~約45%、約43.63%、約39.51%、約39.17%、約37.55%、約35.21%、約33.83%、または約32.67%である。上記の実際のパーセンテージの90%~110%または80%~120%の範囲は、各実施形態に含まれる。
【0110】
タップ密度は、粒子を特徴付けるエンベロープの質量密度の尺度である。統計的に等方性の形状の粒子のエンベロープ質量密度は、粒子の質量を、その粒子を閉じ込めることができる最小球エンベロープ体積で割ったものとして定義される。低タップ密度に寄与する可能性のある特徴には、不規則な表面テクスチャと多孔質構造がある。タップ密度は、Dual Platform Microprocessor Controlled Tap Density Tester(Vankel, NC)、GeoPyc(商標)機器(Micrometries Instrument Corp., Norcross, GA)、または、SOTAX Tap Density Tester model TD2(SOTAX Corp., Horsham, PA)など、当業者に既知の機器を使用して測定できる。タップ密度は、USP Bulk Density and Tapped Density、United States Pharmacopia convention, Rockville, MD, 10th Supplement, 4950-4951, 1999の方法を使用して決定できる。
【0111】
微粒子画分(FPF)は、分散粉末のエアロゾル性能を特徴付ける1つの方法として使用できる。微粒子画分は、空気中の呼吸可能な乾燥粒子のサイズ分布を表す。カスケードインパクターを使用した重量分析は、空気中の呼吸可能な乾燥粒子のサイズ分布または微粒子の割合を測定する1つの方法である。Andersen Cascade Impactor(ACI)は、エアロゾルを空気力学的サイズに基づいて9つの異なる画分に分離できる8ステージのインパクターである。各ステージのサイズカットオフは、ACIが操作される流量に依存する。ACIは、一連のノズル(つまり、ジェットプレート)と衝突面(つまり、衝突ディスク)で構成される複数のステージで構成される。各ステージでエアロゾルの流れがノズルを通過し、表面に衝突する。各段階でエアロゾルの流れがノズルを通過し、表面に衝突する。十分に大きな慣性を持つエアロゾルの流れ内の呼吸可能な乾燥粒子は、プレートに影響を与える。プレートに衝撃を与えるのに十分な慣性を持たない、より小さな呼吸可能な乾燥粒子は、エアロゾルの流れに残り、次のステージに運ばれる。ACIの連続する各ステージでは、ノズル内でエアロゾルの速度が高くなるため、連続する各ステージでより小さな呼吸可能な乾燥粒子を収集できる。
【0112】
本技術は、本明細書に記載されている方法のいずれかを使用して製造された呼吸可能乾燥粉末または呼吸可能乾燥粒子にも関する。
【0113】
本明細書に開示される乾燥粒子または乾燥粉末組成物はまた、乾燥粒子が含む塩または賦形剤の化学的安定性によって特徴付けることができる。構成塩の化学的安定性は、保存期間、適切な保管条件、投与に許容される環境、生物学的適合性、塩の有効性など、粒子の重要な特性に影響を与える可能性がある。化学的安定性は、当技術分野で周知の技術を使用して評価することができる。化学的安定性を評価するために使用できる手法の1つの例は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)である。
【0114】
必要に応じて、本明細書に記載の乾燥粒子および乾燥粉末組成物をさらに処理して、安定性を向上させることができる。医薬品の乾燥粉末の重要な特性は、様々な温度および湿度条件で安定しているかどうかである。不安定な粉末は、環境から湿気を吸収して凝集し、粉末の粒度分布を変化させる。
【0115】
マルトデキストリンなどの賦形剤を使用して、より安定した粒子や粉末を作成できる。マルトデキストリンは、アモルファス相安定剤として作用し、成分がアモルファス状態から結晶状態に変換するのを阻害する可能性がある。あるいは、制御された方法で(例えば、高湿度のバグハウスで)結晶化プロセスを介して粒子を支援する後処理ステップを使用して、結晶化プロセス中に凝集物が形成された場合、得られる粉末をさらに粒子をサイクロンに通して凝集体を分離するなどの処理をして分散性を回復することができる。別の可能なアプローチは、より結晶性が高く、したがってより安定した粒子の製造につながるプロセス条件の周りで最適化することである。別のアプローチは、異なる賦形剤、または異なるレベルの現在の賦形剤を使用して、より安定な形態の塩を製造することを試みることである。
【0116】
本明細書に記載の呼吸可能な乾燥粒子および乾燥粉末は、吸入療法に適している。呼吸可能乾燥粒子は、適切な材料、表面粗さ、直径、および深部肺または上気道または中央気道などの呼吸器系の選択された領域への局所送達のためのタップ密度で製造され得る。例えば、高密度またはより大きな呼吸用乾燥粒子を上気道送達に使用したり、同じまたは異なる製剤で提供されたサンプル内の様々なサイズの呼吸用乾燥粒子の混合物を投与して、1回の投与で肺の異なる領域を標的にできる。
【0117】
異なる吸入流量、体積、異なる抵抗の吸入器からの粉末の分散を関連付けるために、吸入操作を実行するために必要なエネルギーを計算できる。吸入エネルギーは、方程式E=R22Vから計算でき、Eはジュール単位の吸入エネルギー、RはkPa1/2/LPM単位の吸入抵抗、QはL/分単位の定常流量、VはL単位の吸入空気量である。
【0118】
健康な成人の集団は、乾燥粉末吸入器に関するFDAガイダンス文書と、様々なDPIを通じて平均2.2Lの吸入量の成人を発見したTiddensら(Journal of Aerosol Med, 19, (4), p.456-465, 2006)の研究に基づいて、2Lの吸入量で、0.02および0.055kPa1/2/LPMの2つの吸入抵抗からの流量Qに対して、Clarkeら(Journal of Aerosol Med, 6(2), p.99-110, 1993)によって測定されたピーク吸気流量(PIFR)の値を使用して、2.9~22ジュールの範囲の吸入エネルギーを達成できると予測されている。
【0119】
7.方法および治療
他の態様では、本技術は、それを必要とする被験者の気道に有効量の、本明細書に記載された乾燥粒子または乾燥粉末組成物を投与することを含む、心血管疾患(血栓症など)の治療(予防的治療またはリスクの低減を含む)のための方法である。特定の実施形態では、本明細書に開示される乾燥粒子または乾燥粉末組成物は、本明細書に開示されるDPIまたはMDIによって送達される。特定の実施形態において、本明細書に開示される乾燥粒子または乾燥粉末組成物は、本明細書に開示されるDPIまたはMDIおよび本明細書に開示される乾燥粒子または乾燥粉末組成物を含む乾燥送達システムを作動させることにより送達される。
【0120】
心血管疾患には、例えば、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患(CAD)、狭心症(angina pectoris)(一般に「狭心症」("angina")として知られている)、血栓症、虚血性心疾患、冠動脈不全、末梢血管疾患、心筋梗塞、脳血管疾患(脳卒中など)、一過性虚血発作、細動脈硬化症、小血管疾患、コレステロール上昇、間欠性跛行または高血圧が含まれる。
【0121】
本明細書に開示される呼吸可能乾燥粒子および乾燥粉末組成物は、点滴技術などの任意の適切な方法、および/または乾燥粉末吸入器(DPI)または定量吸入器(MDI)などの吸入装置を使用して、それを必要とする対象の気道に投与することができる。米国特許第4,995,385号、第4,069,819号に開示された吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons, Loughborough, U.K.)、Rotahalers(登録商標)、Diskhaler(登録商標)およびDiskus(登録商標)(GlaxoSmithKline, Research Triangle Technology Park, North Carolina)、Ellipta(商標)、Handihaler(登録商標)、FlowCapss(登録商標)、Neohaler(登録商標)、Pressair(商標)、Rotahaler(登録商標)、Turbuhaler(登録商標)、Twisthaler(登録商標)、XCaps(Hovione, Loures, Portugal)、Inhalators(登録商標)(BoehringerIngelheim, Germany)、Aerolizer(登録商標)(Novartis, Switzerland)、CDMHaler、Podhaler(商標)、および当業者において知られている他のものなど、多くのDPIが利用可能である。
【0122】
一般に、吸入装置(DPIなど)は、1回の吸入で最大量の乾燥粉末または乾燥粒子を送達でき、吸入器内に乾燥粒子または乾燥粉末を含む、ブリスター、カプセル(例えば、サイズ000、00、OE、0、1、2、3、および4、それぞれの容量は1.37ml、950μl、770μl、680μl、480μl、360μl、270μl、および200μl)または他の手段の容量に関連する。したがって、所望の用量または有効量の送達は、2回以上の吸入を必要とし得る。好ましくは、それを必要とする対象に投与される各用量は、有効量の呼吸用乾燥粒子または乾燥粉末を含み、約4回以下の吸入を使用して投与される。例えば、呼吸可能な乾燥粒子または乾燥粉末の各用量は、単回吸入または2、3、または4回の吸入で投与することができる。呼吸可能乾燥粒子および乾燥粉末は、好ましくは、呼吸活性化DPIを使用する単一の呼吸活性化工程で投与される。このタイプの装置が使用される場合、対象の吸入のエネルギーは、呼吸可能な乾燥粒子を分散させ、それらを気道に引き込む。
【0123】
呼吸可能乾燥粒子または乾燥粉末は、必要に応じて、吸入によって気道内の所望の領域に送達することができる。MMADが約1μm~約3μmの粒子は、肺胞腔などの肺の深部に効果的に送達できることはよく知られている。例えば、約3μm~約5μmの大きな空気力学的直径を、中央および上気道に送達できる。
【0124】
乾燥粉末吸入器の場合、口腔内沈着は慣性衝突によって優位を占められるため、エアロゾルのストークス数によって特徴付けられる(DeHaan et al. Journal of Aerosol Science, 35 (3), 309-331, 2003)。同等の吸入器形状、呼吸パターン、および口腔形状の場合、ストークス数、つまり口腔内沈着は、主に吸入される粉末の空気力学的サイズの影響を受ける。したがって、粉末の経口沈着に寄与する要因には、個々の粒子のサイズ分布および粉末の分散性が含まれる。個々の粒子のMMADが大きすぎる場合、5μmを超えると、粉末の割合が増加して口腔内に沈着する。同様に、粉末の分散性が悪い場合は、粒子が乾燥粉末吸入器を離れ、凝集物として口腔に入る可能性がある。凝集粉末は、凝集体と同じ大きさの個々の粒子のように空気力学的に機能し、したがって、個々の粒子が小さい場合でも(例えば、MMADが約5μm以下)、吸入された粉末のサイズ分布は、MMADが約5μmを超える場合があり、口腔内沈着の促進につながる。
【0125】
特定の実施形態は、粒子が小さく(例えば、約1μm~5μm間のような5μm以下のMMAD)、高度に分散性(例えば、2.0、好ましくは1.5未満の1/4bar、あるいは、0.5/4bar)である粉末を提供する。呼吸可能乾燥粉末は、MMADが1~4μmまたは1~3μmの呼吸可能乾燥粒子を有し、1/4bar 1.4未満、または1.3未満、より好ましくは1.2未満を有する。
【0126】
粒子のエンベロープ密度が十分であり、MMADが上記の範囲のいずれかにある場合、HELOSシステムを使用して1barで測定された粒子の絶対幾何学的直径は重要ではなく、ここで、MMADはVMGDにエンベロープ密度の平方根を掛けたものである(MMAD=VMGD*sqrt(エンベロープ密度))。固定容量の投薬容器を使用して塩の高い単位用量を送達することが望ましい場合、より高いエンベロープ密度の粒子が望ましい。エンベロープ密度が高いため、固定容量の投薬容器内により多くの粉体を収容できる。好適なエンベロープ密度は、0.1g/cm3を超え、0.25g/cm3を超え、0.4g/cm3を超え、0.5g/cm3を超え、0.6g/cm3を超える。
【0127】
本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、呼吸器系を介した薬物送達に適した組成物で使用することができる。例えば、そのような組成物は、本技術の呼吸可能な乾燥粒子と、別の活性剤を含む、または、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤からなるか、または本質的に1つ以上の薬学的に許容される賦形剤からなる乾燥粒子または乾燥粉末組成物などの1つ以上の他の乾燥粒子または粉末とのブレンドを含むことができる。
【0128】
本明細書に開示される方法に適した、本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、気管を含む上気道(すなわち、中咽頭および喉頭)、下気道、続いて気管支および細気管支への分岐を通過することができ、そして、終末細気管支を介して呼吸細気管支に分かれ、最終的には最終的な呼吸ゾーンである肺胞または肺深部に至る。本技術の一実施形態では、呼吸可能な乾燥粉末または粒子の大部分が深部肺に沈着する。本技術の別の実施形態では、送達は主に中央気道へのものである。別の実施形態では、送達は上気道へのものである。
【0129】
本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、呼吸サイクルの様々な部分での吸入(例えば、呼吸中における層流)によって送達することができる。本明細書に開示される乾燥粉末組成物の高い分散性の利点は、気道における沈着を標的とする能力である。例えば、噴霧化された溶液の呼吸制御送達は、液体エアロゾル送達における最近の進展である(Dalby et al. in Inhalation Aerosols, edited by Hickey 2007, p. 437)。この場合、噴霧された液滴は、呼吸サイクルの特定の部分でのみ放出される。深部肺送達の場合、液滴は吸入サイクルの初めに放出されるが、中央気道沈着の場合、液滴は吸入の後半に放出される。
【0130】
本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、呼吸サイクルにおける薬物送達のタイミングおよびまたヒトの肺における位置を標的とするための利点を提供する。本明細書に開示される乾燥粉末組成物は、典型的な吸入操作の一部内などで迅速に分散できるため、粉末分散のタイミングを制御して、吸入内の特定の時間にエアロゾルを送達することができる。
【0131】
分散性の高い粉末を使用すると、吸入の最初の部分でエアゾールの全量を分散させることができる。患者の吸入流量が吸気流量のピークまで上昇する一方で、分散性の高い粉末は、上昇の開始時にすでに分散し始め、吸入の最初の部分で用量を完全に分散させることができる。吸入の始めに吸入された空気は、肺の奥深くに換気されるため、吸入の最初の部分に最も多くのエアロゾルを分散させることが、肺の深部沈着に適している。同様に、中央沈着の場合、中央気道を換気するエアロゾルを高濃度で空気中に分散させることは、吸入の中間から終了近くで用量を急速に分散させることによって達成できる。これは、時間、圧力、または流量によって操作されるスイッチなど、いくつかの機械的手段および他の手段によって達成でき、患者の吸入空気をスイッチ条件が満たされた後にのみ散布される粉末に転換する。
【0132】
例えば、Gonda, I. "Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract," in Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 6: 273-313 (1990)およびMoren, "Aerosol Dosage Forms and Formulations," in Aerosols in Medicine, Principles, Diagnosis and Therapy, Moren, et al., Eds., Esevier, Amsterdam (1985)に記載されているように、エアロゾルの投与量、製剤および送達システムは、特定の治療用途のために選択されてもよい。
【0133】
所望の治療効果を提供する用量間の適切な間隔は、状態の重症度、対象の全体的な健康状態、ならびに呼吸可能乾燥粒子および乾燥粉末に対する対象の耐性および他の考慮事項に基づいて決定できる。これらおよび他の考慮事項に基づいて、臨床医は投与間の適切な間隔を決定することができる。呼吸に適した乾燥粒子および乾燥粉末は、1日1回、2回または3回または必要に応じて投与することができる。
【0134】
様々な実施形態において、気道(例えば、肺、呼吸気道)に送達されるAPI(例えば、アセチルサリチル酸などのNSAID)の量は、約0.001mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.002mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.005mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.02mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.05mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.075mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.1mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.2mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、約0.5mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量、または、約0.75mg/kg体重/用量~約2mg/kg体重/用量である。
【0135】
特定の実施形態において、投与されたAPI(例えば、アセチルサリチル酸などのNSAID)の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%は、投与後約60分以内、または投与後約40分以内、または投与後約30分以内、または投与後約20分以内、または投与後約15分以内、または投与後約5分以内に対象の体循環に到達する。
【0136】
API(例、アセチルサリチル酸などのNSAID)の投与量は調整可能であり、そのため、鼻粘膜細胞を含む内皮細胞の鼻、気管支、または肺上皮のPGI2合成能力は阻害されない。
【0137】
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法および送達装置は、体循環に対して、約30mgのアセチルサリチル酸、約40mgのアセチルサリチル酸、約50mgのアセチルサリチル酸、約80mgのアセチルサリチル酸、または、約160mgのアセチルサリチル酸の経口投与によって送達されるレベルと比較して、実質的に同じかそれ以上のレベルで、アセチルサリチル酸、およびそのアセチルサリチル酸の薬理学的に活性な代謝副産物を送達することができる。
【0138】
約30mg、約40mg、約50mg、約80mg、または約160mgのアセチルサリチル酸の経口投与により送達されるものと比較して実質的に同じかまたはより高いレベル(または患者の集団の間の平均レベル)を達成するために投与されるアセチルサリチル酸の用量は、従来の方法によって決定できる。投薬、投与技術およびスケジュールは当技術分野で知られており、熟練した臨床医の能力の範囲内である。例えば、対象におけるアセチルサリチル酸またはその代謝産物の血清レベル(または対象の集団における平均血清レベル)は、従来の薬物動態学または薬力学研究によって決定することができる。
【0139】
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法および送達装置は、アセチルサリチル酸の循環血漿レベルが、投与後約60分以内、または投与後約40分以内、または投与後約30分以内、または投与後約20分以内、または投与後約15分以内、または投与後約5分以内に、少なくとも約1μg/mL、少なくとも約2μg/mL、少なくとも約3μg/mL、少なくとも約4μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約6μg/mLになるように、アセチルサリチル酸を全身循環に送達することができる。
【0140】
他の実施形態において、本明細書に記載の方法および送達装置は、サリチル酸の循環血漿レベルが、投与後約60分以内、または投与後約40分以内、または投与後約30分以内、または投与後約20分以内、または投与後約15分以内、または投与後約5分以内に、約8μg/mL、約9μg/mL、約11μg/mL、約12μg/mL、または約15μg/mLになるように、アセチルサリチル酸を全身循環に送達することができる。
【0141】
所望または指示される場合、本明細書に記載の呼吸可能乾燥粒子および乾燥粉末は、1つまたは複数の他の治療薬と共に投与することができる。他の治療剤は、経口、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、または皮下注射)、局所的、吸入(例えば、気管支内、鼻腔内または経口吸入、鼻腔内滴)、直腸、膣などの任意の適切な経路で投与できる。呼吸可能乾燥粒子および乾燥粉末は、他の治療剤の投与の前、実質的に同時に、または後に投与することができる。好適には、呼吸可能乾燥粒子および乾燥粉末ならびに他の治療剤は、それらの薬理学的活性の実質的な重複を提供するように投与される。
【0142】
本発明を実施するための特定の態様の以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0143】
実施例
実施例1
共微粉化ASA/MgST乾燥粉末組成物の調製
ASAとMgSTはそれぞれ個別に溶液に溶解した。ASAとMgSTが混合され、エアジェットマイクロナイザーによって共微粉化された。実施例2~4に記載されるように、微粉化粉末を24時間静置し、さらなる分析のために包装した。
【0144】
実施例2
ASAは、実施例1に従って調製された様々な濃度のMgSTを含む共微粉化ASA組成物において予想外に安定したままであった。
MgST濃度が10.00%、5.00%、1.00%、0.50%、0.25%、0.10%、0.05%、および0.01%の共微粉化ASA組成物を、実施例1に記載の共微粉化方法に従って調製し、様々な状態で最大12ヶ月間保存した。次に、共微粉化されたASA/MgST組成物を、Phenomenex C18カラム(250X4.6mm、5μm)を使用して、25℃、1.0mL/分の流速、10μLの注入量でHPLCにより分析した。検出には237nmのUVを使用した。移動相/希釈剤は、2mLのリン酸を400mLのアセトニトリルと600の水の混合液に加えることで調製した。サンプルをアセトニトリルに溶解し、標準で較正して、次の式1によってサンプル中のASAのアッセイ%(w/w)を提供した。
式1
ここにおいて、Std=標準、Samp=サンプル、Vol=体積(mL)、純度=参照標準物質の純度(%)である。
【0145】
共微粉化されたASA/MgST組成物は、すべてのMgST濃度を試験した組成物において予想外に高いASA安定性を示した。ASAの加水分解をさらに促進する可能性があるため、MgSTはASAと互換性がないことがよく知られている。したがって、MgST濃度の共微粉化ASA組成物におけるASAが15~20℃/35~45%RHで12ヶ月後も安定したままであることは予想外であった(表2)。
【表2】
【0146】
実施例3
ASAは、実施例1に従って調製した様々な濃度のMgSTを含む共微粉化ASA組成物で、20℃/40%RH、30℃/60%RH、40℃/75%RHで8週間、予想外に安定したままであった。
MgST濃度が0.50の共微粉化ASA組成物は、実施例1に記載の共微粉化方法に従って、12PPH下で調製し、20℃/40%RH、30℃/60%RH、および40℃/75%RHで最大8週間保存した。次に、共微粉化されたASA/MgST組成物を、25℃、1.0mL/分の流量、20μLの注入量で、ZORBAX Eclipse Plus C18カラム(3mmX100mm、3.5μm)を使用するHPLCで分析し、オートサンプラーの温度は5℃であった。275nmのUVを検出に使用した。移動相/希釈剤は水:メタノール:TFA=72:28:0.2(v/v)であった。サンプルを移動相/希釈液に溶解し、標準で校正して、実施例2の式1を使用してサンプル中のASAのアッセイ%(w/w)を提供した。
【0147】
表3Aおよび3Bに示すように、ASAは安定したままであり、SAにおいてほとんど分解されない。
【表3A】
【表3B】
【0148】
実施例4
ASA/MgST乾燥粉末組成物の空気力学的粒度分布と粒度分布安定性。
A)50℃/75%RHで実施例1に記載されるように調製された様々なMgST濃度を有するASA/MgST乾燥粉末組成物の空気力学的粒度分布安定性。
実施例1に記載されるように調製されたASA/MgST乾燥粉末組成物の空気力学的直径は、Next Generation Impactor(NGI)によって特徴付けられ得る。NGIは7つのステージで構成され、30、60、および100LPMの流量で校正できる。NGIのステージはすべて1つの平面にあった。収集カップを使用して、NGIの各ステージの下の粒子を収集した。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,614,255号を参照されたい。
【0149】
0.5%w/w、0.05%w/w、0.01%w/w、および0.1%w/wのMgST濃度のASA/MgST製剤をサイズ3のカプセルに充填し、HDPEボトルに包装し、アルミホイルで包んだ。次に、製剤を50℃/75%RHで保管し、5、15、および30日間保管した後の空気力学的粒度分布(APSD)安定性プロファイルをNGIにより特徴付けた(図2A~2D)。
【0150】
0.5%w/wおよび0.05%w/wのMgST/ASA組成物のAPSDデータは、製剤のそれぞれの空気力学的粒度分布が応力安定性の時点全体で安定していることを示唆した(図2A~2B)。比較すると、0.01%w/wおよび0.1%w/wのMgSTを含むASA/MgST乾燥粉末組成物のAPSDは、応力安定性の保存に悪影響を及ぼした(図2C~2D)。15日間の応力安定性により、両方の製剤のFPMが20%減少し、MMADの大幅な粗大化があり、これは、APSDの変化によって示された。
【0151】
B)実施例1に記載されるように調製され、20℃/40%RH、30℃/60%RH、および40℃/75%RHで最大8週間保存された10%w/wMgSTを有するASA/MgST乾燥粉末組成物の粒度分布安定性。
ASA/MgST組成物の粒度分布は、Wet Dispersion Unit(Malvern Instruments, Malvern, UK)とともに、Spraytecを使用して湿式分散によって測定された(表3C)。MieおよびFraunhofer散乱が分析された。データは、高速モードでは10kHz、連続モードでは1Hzで取得され、最大測定時間は、高速モードで30秒、連続モードで60分であった。内部測定トリガーは、透過または光散乱レベルに基づき、また、外部測定トリガーは、TTL入力または単純なスイッチトリガーに基づいていた。光源は632.8nmの最大4mW He-Neレーザーであった。レンズ配置はフーリエ(平行ビーム)で、レンズの焦点距離は300mmと750mmであった。測定範囲は、0.5μmで150mmであり、5μmを超えると1mを超えた。300mmレンズはサイズ0.1-900μm(DV50:0.5-600μm)用で、750mmレンズはサイズ2-2,000μm(DV50:5-1600μm)用であった。ソフトウェアSOPは、湿式測定用であり、300mmレンズ、時限測定/1秒、サンプリング周期/15秒であった。バックグラウンドの測定には15秒かかった。ASAの屈折率は1.57±0.10、密度は1.00、シクロヘキサンの屈折率は1.43、検出器範囲は1~最後、および、散乱閾値は1であった。スターラー/ポンプは3,000rpmであり、オブスキュレーションは5~15%であり、内部超音波処理時間は1分であった。約100mLの分散剤を3,000rpmのポンプで循環させて追加した。閉じ込められた空気がシステムから上昇するのを可能にするために、装置は短時間オフにされた。光エネルギーは100未満で、レーザー強度は70~95%であった。サンプル(約10.0±1mgの粉末)を1分間の内部超音波処理により約4mLのシクロヘキサンに分散させた。次に、測定のオブスキュレーションレベルが5~15%になるまで、サンプルをシステムに追加した。
【0152】
結果は、10%のMgSTを含むASA/MgST乾燥粉末組成物のPSDが、20℃/40%RHおよび30℃/60%RHで比較的安定している一方で、40℃/75%RHで長期間保存すると粒子サイズが増加したことを示した(図3)。
【表4】
【0153】
実施例5
実施例1に記載されているように調製されたASA/MgST乾燥粉末組成物の空気力学的粒度分布(APSD)
様々なMgST濃度のASA/MgST乾燥粉末濃度のAPSDは、Next Generation Impactor(NGI)によって特徴付けられた。NGIは7つのステージで構成され、30、60、および100LPMの流量で校正できる。NGIのステージはすべて1つの平面にあった。収集カップを使用して、NGIの各ステージの下の粒子を収集した。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,614,255号を参照されたい。結果は、各ASA/MgSt乾燥粉末組成物に対するNGI測定の3回の実行から平均で示された(実施例1に記載されるように調製された乾燥粉末組成物の第1のバッチのNGI結果を示す図4Aおよび4Bならびに表5A~5B、および、実施例1に記載されるように調製された乾燥粉末組成物の第2のバッチのNGI結果を示す図4Cおよび4Dならびに表5Cおよび5D)。
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【表5D】
【0154】
様々なASA/MgST乾燥粉末組成物の微粒子画分(FPM)、微粒子用量(FPD)、および空気力学的質量中位径(MMAD)で示されているように(図4A~4D、表5A~5D)、ASAの吸入送達には、0.05%および0.5%w/wのMgSTを含むASA/MgST乾燥粉末組成物が好ましい。両方の乾燥粉末組成物は、約2.7μmのMMADを持っていたが、これは主に、インパクターのステージ4に堆積した材料の量が多いためである。ステージ4画分の粒子は1.4~1.6μmで、末梢気道に沈着する可能性がある。0.05%および0.5%w/wのMgSTを含むASA/MgST乾燥粉末組成物は、他の製剤よりもはるかに低い咽喉沈着を示した。したがって、これらの製剤システムは優れたエアロゾル化効率を有しており、口内咽喉沈着が少ないと思われた。
【0155】
0.5%、1%、5%、および10%w/wのMgST、噴霧乾燥したアスピリン85%/ロイシン15%製剤(036または36)>アスピリン95%/ロイシンを含むASA/MgST乾燥粉末組成物の粒度分布5%製剤(046または46)、および微粉化ASAは、低抵抗装置を使用し、装置/マウスピース/USP/咽喉/IC/DUSAのステップで2.7秒の作動時間で90L/分の流量でSpraytecによって測定され、各組成について5つのテストが行われた(表5E)。
【表5E】
【0156】
NGIとSpraytecのデータの比較を表5Fに示す。
【表5F】
【0157】
実施例6
ASA/MgST乾燥粉末組成物の凝集特性
すべてのDPIシステムの製剤パフォーマンスは、粒子の凝集性/接着性表面界面特性によって制御される。DPIシステムに存在する粒子は10μm未満であるため、それらの凝集/接着特性を支配する力は、ファンデルワールス力、静電力、および毛管力である。DPIシステムからエアロゾルを生成するために、装置は凝集/接着力を克服するのに役立つ必要がある。したがって、装置が患者の吸入時にエアロゾルを生成できるように、粉末の特性を調整する必要がある。
【0158】
粗い乳糖担体粒子を利用する担体ベースのDPI製剤では、これらの力は、微細な乳糖粒子の添加、または粗い乳糖粒子をステアリン酸マグネシウムなどの低エネルギーの力制御剤(FCA)でコーティングすることによって調整される。高ペイロードDPIシステムでは、原薬の投与量は数ミリグラムであり、無担体システムとして処方される。これらのシステムでは、賦形剤の含有量は低く、エアロゾル化効率に影響を与える主な支配力は凝集性である(薬物間相互作用)。
【0159】
ASAとステアリン酸マグネシウム(MgST)の共微粉化は、実施例1で説明したように、アセチルサリチル酸(ASA)の高ペイロードDPI製剤の配合に使用された。この製剤のエアロゾル化パフォーマンスは、微粉化ASAおよびスプレー乾燥ASA/ロイシンよりも優れている(図5)。ASA/MgST乾燥粉末組成物は、凝集力が低く、エアロゾル化効率が向上している。
【0160】
コロイドプローブ原子間力顕微鏡研究(AFM)を使用して、凝集表面の界面力を測定した(図6)。各粉末製剤からの5つの個別の粒子をチップレスカンチレバーに取り付けた。これらは薬物プローブと呼ばれ、結晶アスピリンの滑らかな表面と相互作用した。このようにして、異なる製剤の粒子の凝集力を測定することができ(図6)、次のランク順に従った:
アスピリン85%/ロイシン15%配合(36)>アスピリン95%/ロイシン5%配合(46)>微粉化ASA>0.5%ステアリン酸マグネシウムと共微粉化したASA。
【0161】
FT4パウダーレオメーター(Freeman Technologies, Gloucester, UK)を使用したパウダー透過性試験は、上記のように様々なASA製剤で行われた。
【0162】
粉体システムの粉体透過性測定は、粉体の凝集性に対する加えられた応力の影響間の関係を調査する。テストは、粉末に空気の一定の流量を維持しながら、粉末に異なる垂直応力を適用することによって実行された。したがって、粉末全体で測定された圧力降下は、材料の凝集力の測定値であった。より垂直な応力が粉体に加えられると、粉体層全体の圧力降下が増加し、これは、通常の応力を適用すると粒子間の空所が減少するために空気が粉末床を通過するためのチャネルが減少するためであると予想される。したがって、かさ密度の低い粉末は凝集性が高く、圧力降下が大きくなる。
【0163】
製剤036および共微粉化ASA/MgST製剤の圧力降下と適用された垂直応力プロファイルを図7に示す。これらのデータは、0.5~6.0kPaの適用された垂直応力の間で、共微粉化されたASA/MgST製剤全体の圧力降下が036製剤よりも大幅に低いことを示している。これらのデータは、MgST製剤の凝集性が036製剤よりも著しく低いことを示唆している。
【0164】
両方の凝集力測定に基づくと、ASAに0.5%w/wのMgSTを導入すると、製剤システムの凝集力が低下し、図5に示すようにエアロゾル化効率の向上に役立つ。
【0165】
実施例7
ASA/MgST乾燥粉末組成の薬物動態研究
イヌへの単回吸入投与後のASA/MgST乾燥粉末組成物の薬物動態プロファイルを測定し、同じイヌへの単回経口投与後の市販のアセチルサリチル酸錠剤(アスピリン(登録商標))と比較した。
【0166】
以下のように、ASA/MgST乾燥粉末組成物を3匹のイヌに10分間の吸入で1回投与(1日目)し、7日間のウォッシュアウト期間(8日目)の後、市販のアセチルサリチル酸錠剤(アスピリン(登録商標))を同じ3匹のイヌに投与した。
【表6A】
【0167】
一連の10の血液サンプル(それぞれ約0.75mL)は、次のように、治療期間の1日目と8日目のそれぞれに各イヌから収集された:
1日目:投与前、10分曝露直後(IPE±2分)、20、30、40分、曝露開始から1、2、4、6、および24時間
8日目:投与前、投与後10、20、30、40分、1、2、4、6および24時間
【0168】
ビーグル犬の0.5%MgSTを含むASA/MgST乾燥粉末組成物の薬物動態(PK)プロファイルは、1回目の吸入投与および市販のアセチルサリチル酸錠剤(アスピリン(登録商標))単回経口投与後1日目および8日目に得られたASAとサリチル酸(SA)の血漿濃度データセットから決定された。ASAおよびSAの血漿中濃度は、Phoenix WinNonlin 6.4ソフトウェアを使用してモデル化された。
【0169】
ASA血漿中濃度の最大平均濃度レベル(Cmax)は、吸入および経口曝露で、投与後それぞれ0.2時間および0.3時間以内に到達した。3匹のイヌのうち2匹は、吸入投与後(0.2時間)よりも経口投与後(0.3時間)に長いTmaxを示したが、1匹のイヌは、経口および吸入投与後(0.2時間)に同様のTmaxを示した。Tmax後、血漿濃度は急速に減少し、吸入および経口曝露経路の平均t1/2値はそれぞれ0.23および0.21時間と推定された。
【0170】
SA血漿中濃度の最大平均濃度レベル(Cmax)は、吸入および経口曝露で、投与後それぞれ0.4および1.7時間以内に達した。対象は、吸入投与後(平均0.4時間)に経口投与後(平均1.7時間)よりも有意に短いTmaxを示す。Tmax後、血漿中濃度は、吸入および経口曝露経路でそれぞれ、平均t1/2値1.72時間および3.86時間で減少した。
【0171】
吸入によるASA曝露は、AUCとCmaxの比率がそれぞれ2.7から6.7の範囲で示されるように、経口曝露よりも高かったが、2つの投与経路間にt1/2の違いは観察されなかった。
【0172】
AUCとCmaxの薬物動態パラメータでそれぞれ0.7から1.5の範囲である比率から明らかなように、SAの曝露に主な投与関連の差異は観察されなかった。
【表6B】
【表6C】
【表6D】
【表6E】
【0173】
前述の説明は、当業者が本明細書で説明されている様々な構成を実施できるようにするために提供されている。本技術は、様々な図および構成を参照して特に説明されているが、これらは例示のみを目的としており、本技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0174】
本技術を実装する他の多くの方法がある可能性がある。本明細書で説明される様々な機能および要素は、本技術の範囲から逸脱することなく、示されるものとは異なるように分割され得る。これらの構成に対する様々な変更は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は他の構成に適用されてもよい。したがって、本技術の範囲から逸脱することなく、当業者によって、本技術に対して多くの変更および修正を行うことができる。
【0175】
開示されたプロセスにおけるステップの特定の順序または階層は、例示的なアプローチの例示であることが理解される。設計の好みに基づいて、プロセス内のステップの特定の順序または階層を再配置できることを理解されたい。一部の工程は同時に実行できる。付随する方法は、サンプルの順序で様々な工程の現在の要素を要求し、提示された特定の順序または階層に限定されることを意味しない。
【0176】
本技術は詳細な説明と併せて説明されているが、前述の説明は例示を意図しており、本技術の範囲を限定するものではないことを理解されたい。ここでの参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0177】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような同等物は、以下の実施形態によって包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0177
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0177】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような同等物は、以下の実施形態によって包含されることが意図されている。
次に、本発明のまた別の好ましい態様を示す。
1. ステアリン酸塩と共微粉化した、アセチルサリチル酸、またはその薬学的に許容される塩を有する乾燥粒子を有する乾燥粉末組成物であって、15~20℃/35~45%RH、20℃/40%RH、30℃/60%RH、40℃/75%RH、および50℃/75%RHからなる群から選択される条件に、2週間、4週間、30日、1ヶ月、6週間、8週間、または12ヶ月曝露された後、ASA安定性は約95%以上を維持するものである、乾燥粉末組成物。
2. 上記1記載の乾燥粉末組成物において、前記ステアリン酸塩は、前記乾燥粉末組成物の約0.04%(w/w)~約0.06%(w/w)、または約0.4%(w/w)~約0.6%(w/w)の範囲の量であり、前記アセチルサリチル酸またはその薬学的に許容される塩は、前記乾燥粉末組成物の約50%(w/w)以上の量である、乾燥粉末組成物。
3. 上記1記載の乾燥粉末組成物において、前記ステアリン酸塩がステアリン酸マグネシウムである、乾燥粉末組成物。
4. 上記1記載の乾燥粉末組成物において、前記ステアリン酸塩が前記乾燥粉末組成物の約0.05%(w/w)または約0.5%(w/w)の量である、乾燥粉末組成物。
5. 実質的に担体粒子を含まない、上記1記載の乾燥粉末組成物。
6. 上記1記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粒子は、約1μm~約5μmの範囲内のMMADを有する、乾燥粉末組成物。
7. 上記6記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粒子は、約2μm~約3μmの範囲内のMMADを有する、乾燥粉末組成物。
8. 上記1記載の乾燥粉末組成物において、前記アセチルサリチル酸またはその薬学的に許容される塩は、前記乾燥粉末組成物の約80%(w/w)以上の量である、乾燥粉末組成物。
9. 上記1記載の乾燥粉末組成物において、NGIのステージ1からステージ8での質量堆積によって測定される前記乾燥粉末組成物のAPSDは、前記乾燥粉末組成物が50℃/75%の相対湿度で約30日間保管された後、時間tがゼロでのAPSDと比較すると、約10%未満変動するものである、乾燥粉末組成物。
10. 上記6記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粉末組成物が50℃/75%の相対湿度で約5日間保管された後、時間tがゼロでのMMADと比較すると、前記乾燥粒子のMMADは、約10%未満変動するものである、乾燥粉末組成物。
11. 上記6記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粒子は、約6μm未満のDV90、約3μm未満のDV50、および約1μm未満のDV10のMMADサイズ分布を有する、乾燥粉末組成物。
12. 上記11記載の乾燥粉末組成物において、前記DV90、DV50および/またはDV10は、前記組成物が50℃/相対湿度75%で約15日間保管された後、約10%未満変化するものである、乾燥粉末組成物。
13. 血栓塞栓イベントのリスクを低減するか、または血栓症を治療するのに有効な薬物送達システムであって、前記システムは、上記1に記載の乾燥粉末組成物を有する、薬物送達システム。
14. クロピドグレルをさらに有する、上記13に記載の薬物送達システム。
15. 乾燥粉末吸入器および上記1記載の乾燥粉末組成物を有する薬物送達システム。
16. 上記15記載の薬物送達システムにおいて、前記乾燥粉末吸入器は、
1つ以上の空気入口115および1つ以上の空気出口120を有するチャンバ110を画定するハウジング105と、
前記乾燥粉末組成物を含むカプセル125を受容するようなサイズである前記チャンバ110と、
カプセル125に1つ以上の開口部130を作成するためのハウジング105内の穿刺機構250と、
前記空気入口115のすべてではないが少なくとも2つの空気入口115を覆う任意のシールド170であって、前記任意のシールド170は、1つまたは2つ以上の被覆部分175を有し、各被覆部分175は少なくとも1つの入口115を覆うものであり、これにより任意のシールド170は、使用者が装置を握ることによる少なくとも2つの空気入口115の閉塞を防止する、任意のシールド170と、および、
ハウジング105に関連する端部140であって、前記乾燥粉末組成物をエアロゾル化し、前記カプセル125から出てエアロゾル化された乾燥粉末組成物を吸入するための前記端部140を通して使用者が吸入できるように、前記端部140は、前記使用者の口または鼻に受け入れるようなサイズおよび形状である、端部140と
を有するものである、薬物送達システム。
17. 上記1記載の乾燥粉末組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を有する、血栓塞栓性イベントのリスクを治療する、または低減する方法。
18. 上記17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、心筋梗塞を有する、方法。
19. 上記17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、一過性の虚血性イベントを有する、方法。
20. 上記17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、脳卒中を有する、方法。
21. 上記17記載の方法において、前記血栓塞栓性イベントは、前記血栓塞栓性イベントの開始から約5分以内に治療される、方法。
【外国語明細書】