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特開2022-137084新規の用量投与レジメンを特定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137084
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】新規の用量投与レジメンを特定するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/665 20060101AFI20220913BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 31/429 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20220913BHJP
   A61K 31/431 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A61K31/665
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K31/496
A61K31/429
A61K31/7036
A61K31/546
A61K31/439
A61K31/431
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022099712
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2019557537の分割
【原出願日】2018-01-09
(31)【優先権主張番号】62/444,346
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519250361
【氏名又は名称】ザヴァンテ セラペウティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ZAVANTE THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】12670 High Bluff Drive, San Diego, CA 92130 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】エリス-グロッセ,イヴェリーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単剤でまたは他剤との組合せで、注射または経口での投与用に、ホスホマイシンを用いて、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌のヘテロ耐性亜集団を治療および予防するための新規の用量投与レジメンの方法を提供する。
【解決手段】有効量のホスホマイシンと、セフタジジム、セフタジム-アビバクタム、シプロフロキサシン、およびセフトロザン-タゾバクタム、トブラマイシンおよびセフェピムからなる群から選択される少なくとも1つの抗微生物剤とを併せた、感染対象への共投与レジメンを含む、グラム陰性細菌の感染を治療する方法である。黄色ブドウ球菌、フェカリス菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、および大腸菌からなる群から選択される「耐性」変異体の亜集団による感染を含めた、細菌感染に罹っている対象を治療する方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のホスホマイシンと、ピペラシリン-タゾバクタム、セフタジジム、およびメロペネムからなる群から選択される少なくとも1つの抗微生物剤とを併せた、感染対象への共投与レジメンを含む、グラム陰性細菌の感染を治療する方法。
【請求項2】
他の抗微生物剤が、ホスホマイシンと、ピペラシリン-タゾバクタム、セフタジジム、およびメロペネムからなる群から選択される前記少なくとも1つの抗微生物剤との前記共投与に組み合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラム陰性細菌の感染は、肺炎桿菌に起因する感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グラム陰性細菌の感染は、緑膿菌に起因する感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グラム陰性細菌の感染は、アシネトバクター・バウマニに起因する感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも少ない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
黄色ブドウ球菌、フェカリス菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、および大腸菌からなる群から選択される「耐性」変異体の亜集団による感染を含めた、細菌感染に罹っている対象を治療する方法であって、
a.細菌感染を患う対象から試料を取得すること;
b.前記試料中の「耐性」変異体の亜集団の存在を特定すること;および
c.ホスホマイシンと少なくとも1つの抗微生物剤とを前記対象に共投与することであって、前記共投与後に、細菌密度が有効に低減され、前記「耐性」変異体の亜集団が阻害されること
を含む方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの抗微生物剤は、ピペラシリン-タゾバクタム、セファロスポリン類、メロペネム、およびペニシリンからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
他の抗微生物剤が、ホスホマイシンと、ピペラシリン-タゾバクタム、セファロスポリン類、メロペネム、およびペニシリンからなる群から選択される前記少なくとも1つの抗微生物剤との前記共投与に組み合わされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも多い、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも少ない、請求項8に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物において肯定的な治療成績の確率を最適化する新しい用量投与のストラテジーを特定するための方法を提供する。具体的には、本発明は、単剤でまたは他剤との組合せで、注射または経口での投与用に、ホスホマイシンすなわちFOSを用いて、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌のヘテロ耐性亜集団を治療および予防するための新規の用量投与レジメンの方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ZTI-01(ホスホマイシン、FOS、注射用)は、多剤耐性(MDR)生物を含めて広域スペクトルの活性をin vitroで呈する。FOSは、他の抗生物質のクラスとの交差耐性を示さず、FOSの作用機構は、ペプチドグリカン生合成の初期段階を一意に阻害する。他の抗生物剤をFOSと併用することにより、MDR生物の殺細菌性を増強することが提案されている。健常対象における単回用量のZTI-01および経口(PO)ホスホマイシントロメタミンの効能、ならびに安全性、認容性、およびPKに関連するPK/薬力学的パラメーターを評価することは、抗微生物剤の薬物動態(PK)を理解するために極めて重要である。
【0003】
ZTI-01は、入院患者の複雑性尿路感染症を治療するために米国(US)で開発中にある。MOAは、FOSと他のクラスの抗生物質とでは異なる。FOSは、MurAとの共有結合を介して、細胞壁合成の初期段階を阻害する。FOSは、多剤耐性(MDR)生物を含めて、グラム陰性(GN)細菌およびグラム陽性(GP)細菌に対し広範なin vitro活性を呈する。MOAの異なる抗生物質の組合せは、関係するMDRに関する治療のためにたびたび採用されることから、相乗作用を生じ拮抗作用のない最適化されたFOSの組合せが、依然として求められている。
【0004】
経口製剤に基づくCLSI判断基準は、寒天希釈法[AD;25μg/mLグルコース-6-リン酸(G6P)を補充]およびディスク拡散(DD)法について、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)(EF)および大腸菌(Escherichia coli)(EC)の尿路分離株に対してのみ存在する。cUTIに対し6gかつ8時間の投薬量とするZTI-01は、エポキシド抗生物質のクラスの唯一のメンバーである。その固有のMOAは、他剤に比べて細胞壁合成の阻害の初期段階で作用する。それゆえ、FOSは、グラム陰性(GN)細菌およびグラム陽性(GP)細菌に見られる共通の耐性機構による影響を受けない。
【0005】
主に腎臓を排出経路として活性があることから、ZTI-01は、cUTI患者のための有利な可能性のある治療法となる。第1相データを使用して、ホスホマイシンの経時変化を表しかつ第2/3相で可能性のあるスパースPKサンプリングストラテジーを評価するための集団PK(PPK)モデルが開発された。
【0006】
上記の観点から、本明細書に記載される所望の特長、ならびに治療下での薬剤耐性の可能性を減少させるなどの追加の利点を提供することが、本発明の目的の1つである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、有効量のホスホマイシンと、ピペラシリン-タゾバクタム、セフタジジム、およびメロペネムからなる群から選択される少なくとも1つの抗微生物剤とを併せた、感染対象への共投与レジメンを含む、グラム陰性細菌の感染を治療する方法を提供する。任意選択的に、他の抗微生物剤が、ホスホマイシンと、ピペラシリン-タゾバクタム、セフタジジム、およびメロペネムからなる群から選択される少なくとも1つの抗微生物剤との共投与レジメンに組み合わされる。
【0008】
一態様では、グラム陰性細菌の感染は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に起因する感染である。別の態様では、そこでは、グラム陰性細菌の感染は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に起因する感染である。さらに別の態様では、グラム陰性細菌の感染は、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)に起因する感染である。
【0009】
一態様では、本発明は、感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量が少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも多い、共投与レジメンをさらに提供する。あるいは、感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも少ない。
【0010】
本発明は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、フェカリス菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、および大腸菌からなる群から選択される「耐性」変異体の亜集団による感染を含めた、細菌感染に罹っている対象を治療する方法をさらに提供し、本方法は、(a)細菌感染を患う対象から試料を取得すること;(b)前記試料中の「耐性」変異体の亜集団の存在を特定すること;および(c)ホスホマイシンと少なくとも1つの抗微生物剤とを対象に共投与することであって、共投与後に、細菌密度が有効に低減され、「耐性」変異体の亜集団が阻害されることを含む。好ましくは、少なくとも1つの抗微生物剤は、ピペラシリン-タゾバクタム、セファロスポリン類、メロペネム、およびペニシリンからなる群から選択される。任意選択的に、他の抗微生物剤が、ホスホマイシンと、ピペラシリン-タゾバクタム,セファロスポリン類、メロペネム、およびペニシリンからなる群から選択される少なくとも1つの抗微生物剤との共投与に組み合わされる。
【0011】
一態様では、本発明は、共投与レジメンをさらに提供し、その場合、感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも多い。あるいは、感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも少ない。
【0012】
本発明の新規の特長は、本発明の特許請求の範囲の形態で具体化されて本明細書に明記されている。本発明の特長および利点は、本発明の例証となる実施形態および好適な特長ならびに添付の図面に明記されている、以下の本発明の詳細な記載を参照することによって、最も良く理解されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ZTI-01 6g 8時間毎(q8h)ベースの用量投与レジメンの投与後の腎機能群による、刺激された患者間の正味の静菌性に関連するAUC:MIC比の目標に基づいた、MICによるPK-PD目標達成率のパーセントを示す図であり、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に対するホスホマイシンのMIC分布に重ね合わせている。
図2】供試されたいくつかの分離株に対するFOSのMIC分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下の実施例をこれより参照することによって、さらによく描き出すことができる。
【実施例0015】
実施例1:ホスホマイシン単剤による、および選抜された抗微生物剤との組合せにおける、関係するグラム陰性細菌(GNB)の時間-死滅解析
方法:FOSおよび比較薬剤を用いたチェッカーボード分析により試験された際に相乗作用を呈した、選抜された細菌株に、時間-死滅動態解析(TKK)を実施した。FOSおよび比較剤のブロスによる微量希釈(25μg/mLグルコース-6-リン酸を補充したミューラー-ヒントンブロス)を実施した後、TKKを実施した。TKKでは、FOSのMICの倍数、ならびに選抜された比較剤の1/4および1×MIC、ならびにFOSと比較剤との組合せを採用した。TKKでは、T、T、T、T、およびT24時間(h)でのコロニー数についてサンプリングした。2種類の肺炎桿菌分離株(KPC1種とESBL1種)、2種類の緑膿菌分離株(非MDR)、および1種類のアシネトバクター・バウマニ分離株(MDR)を供試した。
【0016】
結果:肺炎球菌(KPC生産株)分離株に対し供試した際に、FOSは殺細菌性であった。>3log10の細菌増殖(コロニー形成単位、CFU)の低減が、2×MICで4時間までに起こった。FOS(0.5、1、および2×MIC)を用いて24時間までに、細菌増殖がおよそ2log10増加した。1/4および1×MICでのピペラシリン-タゾバクタム(PTZ)は、阻害活性を殆ど示さなかった。24時間で、細菌増殖は増殖制御に同様となった。PTZ(1/4および1×MIC)と組み合わせた0.5、1、および2×MICでのFOSは、相乗作用を示し、4時間でおよそ3.8~4.2log10の低減があり、24時間で3.4~5.4log10の低減があった。ESBL生産肺炎球菌分離株に対し供試した際に、FOS(1、2、4×MIC)は、4時間でおよび24時間までに僅かな減少(1.4~2.2log10CFU)を示し、増殖は増殖制御と同様となった。1/4および1×MICでのセフタジジム(CAZ)では、4~8時間までに僅かな減少(0.9-2.1log10CFU)があり、24時間でCFUは増殖制御と同様となった。CAZと組み合わせたFOS(1、2、および4×MIC)は、相乗作用を示し、8時間で3.8~4.3log10の低減があり(1×CAZ MIC)、24時間で少なくとも5.1log10の低減があった(1/4および1×CAZ MIC)。FOSの活性は、2、4、および8×MICでは、1/4もしくは1×CAZ MIC(緑膿菌#893949)または1/4もしくは1×MICのメロペネム(MEM;緑膿菌#889839)のどちらと共に供試された際も、24時間で相乗作用があることが示された。アシネトバクター・バウマニに対して、FOSは、0.5、1、および2×MICでは、MEM(1×MIC)と共に供試された際に、24時間で相乗作用があることが示された。
【0017】
結論:データは、2種の細胞壁活性剤であるFOSと選抜されたβ-ラクタムとを足し合わせた組合せによって、関係するGNBに対する死滅作用およびin vitroの相乗作用が増強されたことを示す。
【0018】
実施例2:SENTRY抗微生物サーベイランスプログラムにより収集されたグラム陽性およびグラム陰性のUS分離株に対して供試した際のホスホマイシン活性
方法:SENTRY抗微生物サーベイランスプログラムの一部としてUS医療センターで収集された1,400種類超のGN臨床分離株および800種類超のGP臨床分離株(2015年以降の分離株の96%)と、29種類のGN嫌気菌および20種類のGP嫌気菌の選抜体に対し、FOSを供試した。比較評価のための経口製剤に関するFDAの既存の区切り点を用いて、寒天希釈(25μg/mLグルコース-6-リン酸を補充)を参照して、FOSおよび比較剤に対し、分離株を感受性(S)試験に供した。
【0019】
結果:FOSは、選択された腸内細菌科に対し非常に活性があった(MIC50/90、4/16μg/mL)。無作為に選択された大腸菌では、100.0%がFOSに対しSであり(MIC50/90、0.5/1μg/mL)、肺炎桿菌では、FOSのMIC50/90が4/16μg/mL(97.0%、≦64μg/mL)であった。無作為に選択されたエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカ(E.cloacae)菌群、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、シトロバクタ-・コセリ(Citrobacter koseri)、およびシトロバクター・フロインディ(C.freundii)菌群のFOSのMIC50/90は、それぞれ8/16、8/64、8/16、1/8、1/1、および0.5/1μg/mLであった。緑膿菌およびアシネトバクター-バウマニ-カルコアセチカス(calcoaceticus)菌群では、さらに高いFOSのMIC50/90が観察され、それぞれ64/128μg/mLおよび128/256μg/mLであった。FOSの活性は、プレボテラ属(Prevotella)およびポルフィロモナス属(Porphyromonas)に対しては限定的であり(MIC値>256μg/mL)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)群では様々なMICを示した(16から>256μg/mL;殆どの分離株は>256μg/mL)。ベイロネラ属(Veillonella)に対するMICは、≦0.03から0.06μg/mLに及んだ。FOSは、黄色ブドウ球菌に対し(MIC50/90,4/8μg/mL)、およびスタフィロコッカス・サプロフィティカス(S.saprophyticus)を除くコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)に対し(MIC50/90,8/64μg/mL)、非常に活性があった。スタフィロコッカス・サプロフィティカスでは、FOSのMIC50/90は128/>256μg/mLであった。FOSに耐性であるフェカリス菌分離株はなかった(99.0%はS;1.0%は中間)。エンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)のMICは、1種類のFOS分離株を含めて、様々な抗微生物剤よりも概ね高かった(19.2%は中間;79.8%はS)。FOSは、β-溶血性レンサ球菌[化膿レンサ球菌(S.pyogenes);MIC50/90,32/64μg/mL;アガラクチア菌(S.agalactiae);MIC50/90,8/64μg/mL]およびGP嫌気菌に対し、活性があった。少数のクロストリジウム属(Clostridium)、フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)に対するMIC値は、0.5から32μg/mLまでに及んだが、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)に対するMICは、>256μg/mLであった。
【0020】
結論:FOSは、実に多様なGN分離株およびGP分離株に対し広域スペクトルの活性を呈する。FOSは、耐性のGN細菌およびGP細菌が生じることがある感染での研究をさらに進めるに値する。現状の経口製剤に生物学的利用能の上で制約があることを考慮すれば、IV形態の導入の可能性があることは、FDAの区切り点を再評価する正当な理由となろう。
【0021】
実施例3:チェッカーボード法を用いて選択された抗微生物剤と組み合わされて細菌分離株に対し供試された際のホスホマイシンの抗微生物活性の評価
【0022】
方法:以下の計40株を評価した:臨床株およびATCC株を含めて、黄色ブドウ球菌(SA)5株、フェカリス菌(EF)5株、緑膿菌(PSA)5株、アシネトバクター・バウマニ(ACB)5株、および腸内菌20株。FOS(25μg/mLグルコース-6-リン酸を補充)と最大10種の組合せ剤との相互作用を、計16種の抗微生物剤に由来するそれぞれの種/群に対するチェッカーボードブロス微量希釈法によって検討した。最小値、最大値、および平均値での各FOS/剤の組合せについて、分画阻害濃度(fractional inhibitory concentration)(ΣFIC)値の一覧を算出した。ΣFICを使用して、組み合わされた活性を相乗効果(SYN;≦0.5)、不関(INDIF;>0.5かつ<4)、または拮抗作用(ANT;≧4)に分類する。不確定(INDET)のカテゴリーは、組合せの効果を判定できない際に割り当てた。
【0023】
結果:FOSは、全ての5種/群に由来する分離株に対し複数の剤を組み合わせた際に、ANTを示さなかったがSYNを示した(表1)。FOSがピペラシリンータゾバクタム、セファロスポリン類、メロペネム、またはペニシリンと組み合わされた際に、最も高いSYN率が認められた。他の剤は、FOSと組み合わされた際に、10.0%から40.0%のSYN率を示した。INDIF分離株の中でも、17.7%がΣFIC>1かつ<4であり、16.8%がΣFIC=1(相加)であり、65.5%がΣFIC>0.5かつ<1(部分的な相乗作用)であった。
【0024】
表1 抗微生物剤と組み合わされたホスホマイシンのチェッカーボード解析の結果
【0025】
結論:FOSとの抗微生物の組合せの全てのうちほぼ30%が相乗的であり(ΣFIC≦0.5)、40%が部分的な相乗作用を呈し、このことは、FOSとの組合せ療法が有益である可能性があることを示す。重要なことに、FOSの組合せのいずれにも、ANTが観察されなかった。
【0026】
実施例4:グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対しホスホマイシンについて供試した対照寒天希釈のMIC値とKirby-Bauerディスク拡散との相関
方法:米国の医療施設で収集した計938株のGN分離株およびGP分離株を、FOSに対し、AD(25μg/mL[G6P]を補充)およびDD(FOS、200μg/50μg G6P)によって試験した。ディスク拡散の結果とMIC値との間に発生した判断上の乖離率を算出した。解析を目的として、現行のEF/EC用のCLSI判断基準を、全ての生物群に適用した。黄色ブドウ球菌およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の試験結果に判断基準を適用した際に、大きな誤差(ME)または非常に大きな誤差(VME)は起こらなかった。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌について小さな誤差(MIE)がI+1からI-1の範囲に12.5%あり、全体で2.9%のMIEがあった。EFについては、ME/VMEはなく、2.6%のMIE(I+1からI-1)があり、全体で1.5%のMIEがあった。3.9%のMEおよび27.5%のMIEが、エンテロコッカス・フェシウムについてI+1からI-1の範囲で起こり、全体では3.5および24.1%であった。誤差率は、β-溶血性ブドウ球菌について全体で23.8%のMEおよび23.8%のMIEと高いものであった。腸内細菌科についてのME率およびMIE率は、I+1からI-1の範囲では10%(1/10)よび30%(3/10)であり、総誤差率は、それぞれ0.28および2.0%であった。ECは、ME/VMEがなく、MIE(0.9%)が1つあるのみであった。誤差率は、緑膿菌(PA)およびアシネトバクター・バウマニ(AB)について高かった。
【0027】
結論:現行のECおよびEF用のCLSIのMICおよびDDの判断基準は、MICとディスク域径との相関において良く機能した。他の腸内菌およびブドウ球菌も、EC/EF用のCLSIの区切り点を適用した際の相関において良く機能した。β-溶血性ブドウ球菌、PA、およびABは良く機能しなかった。現在6gで8時間毎という用量で研究されているFOSに使用される区切り点の妥当性については、生物学的利用能の限定された承認済みの3gの経口投薬に比べて有意に高い血漿濃度および尿濃度がIV投与後に得られることを明らかにする必要がある。MICとDDとの試験結果の相関を含む第2/3相cUTI治験から得られる結果は、FDAの現行の区切り点の適切さを判定する際に重要となる。
【0028】
実施例5:米国の病院に由来する他の抗細菌剤に対する様々な耐性の機構を有した細菌に対するホスホマイシンのin vitro活性
方法:解析を目的として、上市されている経口剤(3gで用量投与される)のための既存の解釈基準を用いて、最近の耐性のGN臨床分離株およびGP臨床分離株について、FOS感受性(S)を判定した。これらの分離株には、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VREM)およびフェカリス菌(VREF);メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびMRコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR-CoNS)、基質特異性拡張型ベータ-ラクタマーゼ(ESBL)またはカルバペネム耐性(CR)を含有する大腸菌(EC)および肺炎桿菌(KPN);ならびにセフタジジム非感受性(CAZ-NS)またはメロペネム非感受性(MER-NS)の緑膿菌(PSA)が含まれていた。全ての分離株に対するFOSの最小阻害濃度(MIC)を、25μg/mLグルコース-6-リン酸を補充した対照寒天希釈によって判定した。分離株は、2013~2015年のSENTRYサーベイランスプログラムの一部として、米国の入院患者から採集した。
【0029】
結果:81株のVREMについてのMIC範囲は、32から>256μg/mLであり、63株の分離株が、MIC≦64μg/mL(MIC50/90 64/128μg/mL)であった。101株のMRSAの全てが、MIC≦64μg/mL(MIC50/90 4/8μg/mL)であった。153株のMR-CoNSのうち72株がFOS MIC≦64μg/mLであり、76株のスタフィロコッカス・サプロフィティカスが128から>256μg/mLのMICを有し、1株のS.capitis(スタフィロコッカス・カピティス)がMIC=128μg/mLであり、1株のS.hominis(スタフィロコッカス・ホミニス)がMIC>256μg/mLであった。ESBL表現型を有する49株のECについては、MIC50/90は0.5/4μg/mLであり、2株の分離株がFOS MIC>256μg/mLであり、残りの分離株はMIC値≦32μg/mLであった。CRである11株のECについては、2株がFOS MIC>256μg/mLであった一方で、9株がMIC領域0.5~32μg/mLを有した。ESBL表現型を有する50株のKPNのうち、49株がFOS MIC≦64μg/mLであり、1株の分離株のMICが>256μg/mLであり、MIC50/90は4/16μg/mLであった。17株のCR-KPNについては、16株がFOS MIC≦64μg/mLであり、1株の分離株がMIC>256であり、MIC50/90は8/64μg/mLであった。38株のCAZ-NS PSAについては、32株がFOS MIC≦64μg/mLであり、1株の分離株がMIC>256μg/mLであり、MIC50/90が64/128μg/mLであった。42株のMER-NS PSAについては、34株がFOS MIC≦64μg/mLであり、1株の分離株がMIC>256μg/mLであり、MIC50/90は64/128μg/mLであった。
【0030】
結論:FOSは、最近の薬剤耐性のGN分離株およびGP分離株に対し強力な活性を呈し、他の薬剤クラスに対し耐性に影響を受けなかった。現行の経口製剤では生物学的利用能が限定的であることを考慮すると、IV製剤について、区切り点の再評価は、FDAによって正当なものとされよう。これらのin vitroの結果は、薬剤耐性病原菌に起因する感染に対しこの薬剤が有用な療法である可能性があることを示している。
【0031】
実施例6:健常ボランティアにおける単回用量投与のZTI-01(注射用のホスホマイシン)および経口のホスホマイシンの薬物動態、安全性、および認容性
材料/方法:健常成人対象におけるIV(ZTI-01)およびPO[Monurol(登録商標)]のFOSを評価する第I相のオープンラベル試験である。対象は、間に休薬期間をおいて無作為クロスオーバー方式で、単回用量の1gのIV、8gのIV、および3gのPO FOSを受けた。用量投与の前および48時間後にわたって、血液試料および尿試料を順次採集し、LC/MS-MSにより分析した。ノンコンパートメント解析をWinNonlinにより実施した。試験の経過を通じて、安全性をモニタリングした。
【0032】
結果:対象の人口統計:男性39%、白人75%、平均(±SD)年齢26±5歳、平均(±SD)体重69.9±11.2kg、平均(±SD)CrCl139.3±23.9mL/分、IVおよびPO投与後の平均(±SD)血漿PKパラメーターを表2に示す。1gのIV用量投与に対するPO FOSの%相対生物学的利用能は、52.8%であった。1g、8gのIV、および3gのPOについて、48時間後に尿中に排泄された用量の割合は、それぞれ74%、80%、および37%であった。80%の対象が、治療下で発現した有害事象(TEAE)を報告し、その大部分(67.9%)が、8gのIV用量投与後に起こった。全てのTEAEが軽度~中等度であり、後遺症なく回復した。8gのIV後に最もよくみられたTEAEは徐脈(28.6%)であり、1gのIV後では低カルシウム血症(17.9%)であった。頭痛は、最もよくみられた(10.7%)FOS関連TEAEであった。事象は群間で同等であり、新たに特定された安全性上の懸念はなかった。
【0033】
表2 ホスホマイシンのIV投与およびPO投与の薬物動態
【0034】
結論:ZTI-01の血漿中PKは、1gと8gとの用量投与間でほぼ線形であり比例していた。3gのPO FOSの投与の結果、1gのIV用量投与に比べて、血漿への曝露がAUC0-∞では1.5倍高くなったが、8g用量投与よりもはるかに低いAUC0-infであった(5.5倍)。PO FOSの血漿中排出半減期は、IV投与後よりも長く、それは「フリップフロップカイネティクス」、すなわち中心コンパートメント内への吸収が遅いことに起因する可能性がある。ZTI-01のPK曝露がより高く安全性プロファイルが同等であることにより、標的とする患者の母集団におけるさらに別の検討がサポートされる。ZTI-01は、入院患者の複雑性cUTIを6gで8時間毎の毎日投薬量で治療するために米国で開発中にある。
【0035】
実施例7:ZTI-01の第1相データを用いたZTI-01(注射用のホスホマイシン)の母集団薬物動態(PK)解析よび第2/3相スパースPKサンプリングストラテジーの評価
方法:クロスオーバー方式でZTI-01を単回(1時間にわたって1および8gを輸注)のIV用量投与として受けた28名の健常対象由来の第1相の血漿および尿のPKデータを用いて、NONMEN7.1.2でPPKモデルを開発した。演繹的に、PPKパラメーターを体重に合わせてスケール調整した。ホスホマイシンのPKとクレアチニンクリアランス(CLcr)との関係を記載している公開データ[Fillastre JP et al. Pathologie Biologie 1988; 36: 728-30]を考慮した。ADAPT5における最終的なPPKモデルおよび最適サンプリング理論(OST)に基づき、最適サンプリングスキーム(OSS)を導き出した。モンテカルロシミュレーションを用いて、OSSを評価した。CLcr群に割り当てられたZTI-01用量投与レジメンを受けたシミュレートされた患者について、OSSに基づく血漿中濃度-時間のデータを生成した。OSSに基づく帰納的な最大のベイズ推定を、NONMEMにて実施し、個々のPKパラメーターを推定した。バイアス、すなわちクリアランスおよび定常状態分布容積の真値に対するベイズのPK推定値の予測誤差のパーセント(PE%)、および精度、すなわち真値の二乗平均平方根誤差(RMSE)、および推定PKパラメーターを算出した。
【0036】
結果:ゼロ次の入力と1次の排出とを有する3コンパートメントモデルは、ホスホマイシンの血漿中および尿中のPKを最も良好に表した。シグモイド式は、腎臓のクリアランスとCLcrとの関係を最も良好に表した。PPKモデルは、血漿中データに許容可能なフィッティングを生じたとともに(r=0.99)、尿中データにフィッティングさせる際に許容可能な精度を示した(r=0.87)。PPKモデルおよびOSTに基づき、特定されたPK試料取得に最適な時間は、輸注開始の1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後であった。全てのPKパラメーターは、最小限のバイアスと比較的高い精度を伴って推定され、それは、全てのCLcr群にわたってそれぞれPE%中央値<15%およびRMSE推定値<10であることに明示される通りである。
【0037】
結論:ZTI-01の投与後のホスホマイシンのPKを表すPPKモデルを開発することに成功した。このモデルを使用して、cUTIの入院患者の治療用にZTI-01を評価する進行中の第2/3相試験について、OSSを特定した。
【0038】
実施例8:基質特異性拡張型ベータ-ラクタマーゼ(ESBL)およびカルバペネム耐性(CR)の表現型を有したものを含む大腸菌(EC)、肺炎桿菌(KPN)、および緑膿菌(PSA)に対するZTI-01(FOS、注射用のホスホマイシン)の薬効
方法:5株のEC(4株のESBL)、3株のKPN(2株のCR)、および2株のPSAを使用した。MICを寒天希釈により決定した。単回用量の血漿中PKを、3.125、12.5、50、200、400、および800mg/kgのSC投与後のマウスにて決定した。用量分割(DF)試験のデザインを用いて、PK/PD指標の決定を実施した。次いで、ZTI-01の薬効を10株全ての分離株に対して調べた(用量範囲12.5~6400mg/kg/24時間)。24時間後の生物学的負荷を、各大腿部の感染から列挙した。Emax Hill式を用いて、用量-応答データを解析した。正味の静止および1-log死滅活性に関連するPK/PD指標であるAUC/MICを、全ての分離株について決定した。また、単独の分離株を用いた用量範囲生存性試験も使用して、特定されたPD標的の優位性を検証した。
【0039】
結果:MICは1~16mg/Lに及んだ。単回用量投与のPKパラメーターの範囲は以下を含む:Cmax 0.6~42.4mg/L、AUC0-∞ 1.4~87mg*h/L、T1/2 0.51~1.1時間。DF試験から得られたPK/PD指標の回帰解析は以下を示した:AUC/MIC R 0.70、Cmax/MIC R 0.51、T>MIC R 0.44。どの分離株にも用量依存的な殺傷活性を示した。最大の殺傷活性は、2~3logの死滅活性であり、ホスホマイシンのMICがより低い分離株に共通してみられた。平均静止用量(static dose)ならびに付随するAUC/MIC標的およびT>MIC標的を表3に示し、同様に各PD指標の非線形回帰解析も示す。
【0040】
表3 薬剤-耐性分離株に対するホスホマイシンの薬物動態学的および統計学的解析
【0041】
結論:ZTI-01は、ESBL表現型およびCR表現型を有するものを含めて、EC、KPN、およびPSAに対しin vitroおよびin vivoの効力を呈した。PD指標であるAUC/MICは、R2に基づく薬効に最も密接に連関していた。PD標的であるAUC/MIC標的およびT>MIC標的は、各生物群間で同様であった。最大の生存性は、静止状態の終点と同様の曝露時にみられた。これらのデータにより、用量投与レジメンの設計と臨床試験の最適化のために有用であることが実証されよう。ZTIは現在、cUTIのために米国で開発中にある。
【0042】
実施例9:多様な耐性機構を有するカルバペネム-耐性およびセフタジジム-アビバクタム耐性の腸内細菌科(CRE)の臨床分離株に対するZTI-01(FOS、注射用のホスホマイシン)の活性
方法:25μg/mLグルコース-6-リン酸を補充したミューラー-ヒントン中の寒天希釈を用いて、FOS感受性を試験した。経口FOSの既存の区切り点を比較に使用した:MIC>64μg/mLによりFOS-Rを規定した。Illumina MiSeqを用いてWGSを実施した。
【0043】
結果:50株の分離株を供試した:42株のKp[34株のKPC、3株のNDM-1、4株のクラスC-カルバペネマーゼ(2株のOXA-46、各1株のOXA-181およびOXA-232)、および1株のESBLおよびompK36変異保有]、5株のエンテロバクター属(全てKPC、1株はNDM-1でもある)、2株の大腸菌(1株のNDM-1および1株のNDM-6)、ならびに1株のクレブシエラ・オキシトカ(K.oxytoca)(KPC-2およびVIM-1)。14株の分離株がC-A Rであった:5株のNDM-1、1株のNDM-6、1株のVIM-1、2株の野生型KPC-3,5株の変異型KPC-3[D179Yアミノ酸置換(n=2)、D179Y/T243M(n=2)およびV240G(またはKPC-8、n=1)]。72%(36株)および40%(20株)は、ompK35およびompK36内にそれぞれ変異を有する。FOSのMIC50およびMIC90は、それぞれ2および512μg/mLであった。分離株の94%(47)は、FOSに感受性であり、そのうち全ての分離株がC-A Rであった。C-A R分離株に対するFOS MICの中央値は、8μg/mL(範囲:1~64)であった。3株の分離株が、FOS修飾酵素fosA2コードする遺伝子を擁し、うち1株がFOS Rであった(MIC 256μg/mL)。R分離株はまた、FOS輸送体遺伝子glpTにSNPを有していた。第2のFOS-R分離株は、fosA3(MIC≧1024μg/mL)を擁していた。第3のFOS-R分離株(OXA-181+、CTXM-15+Kp;MIC 128μg/mL)は、Rの機構が不明であった。SNPが、glpT(上述の1株を含む3株の分離株)、FOS輸送体遺伝子uhpT(3株の分離株)、ならびに調節遺伝子ptsI(uhpTも有する1株の分離株)およびuhpA(1株の分離株)に見出された。これらの分離株にFOS Rのものはなかった。全ての分離株が、FOS標的MurAおよび調節因子CyrAをコードする野生型遺伝子を有していた。fosCまたはfomA/Bキナーゼ遺伝子を擁する分離株はなかった。
【0044】
結論:FOSは現在、cUTIの治療のために米国で開発中にあり、IV製剤として区切り点を再評価することの正当な根拠を成す。既存の経口での区切り点を利用すると、FOSはin vitroでCREに対し活性が高く、そのような株には、C-A Rである分離株、クラスB-およびC-カルバペネマーゼを擁する分離株、ならびにompK36ポリン変異を有するKPC-Kpが含まれる。以上より、FOSは、現在β-ラクタム治療の選択肢のないCRE分離株に対し、活性がある。
【0045】
実施例10:複雑性尿路感染症(cUTI)の患者に用いるZTI-01の用量の選択をサポートするための、薬物動態-薬力学的(PK-PD)目標達成解析
方法:母集団PKモデル(ゼロ次の入力と1次の排出とを有する3コンパートメントモデル)から得たパラメーター推定値を用いて、クレアチニンクリアランス(CLcr、mL/分/1.73m)の異なる6,000名のシミュレートされた患者について、総薬剤の血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。シミュレートされた患者は、CLcrに応じて以下のZTI-01を受けた:>50mL/分/1.73mでは6g IV q8h、>40から50mL/分/1.73mでは4g IV q8h、>30から40mL/分/1.73mでは6g IVの初回負荷の後に3g IV q8h、および>10から30mL/分/1.73mでは6g IVの初回負荷の後に5g IV q24h。1日目のAUC0-24を算出した。腸内細菌科について好中球減少性マウス大腿感染モデルから得た24時間での正味の静菌性およびベースラインからの1-log10のCFUの低下(それぞれ19.1および41.6)に関連する、血漿中の総薬剤のAUC:MIC比の目標の中央値を用いて、MICおよび全体(すなわち、米国由来の1,091株の腸内細菌科分離株のMIC分布全てにわたって考慮した)によるPK-PD目標達成のパーセント確率を決定した。
【0046】
結果:正味の静菌性(図1)およびベースラインから1log10のCFUに関連する血漿中の総薬剤のAUC:MIC比の目標を達成するパーセント確率は、腎機能群を通じてそれぞれ、MIC 64mg/Lでは≧98.3%、MIC32mg/Lでは≧97.3%であった。これらのMIC値は、腸内細菌科のMIC90 16mgLよりも1から2希釈分高かった。両AUC:MIC比の目標についての全体のPK-PD目標達成のパーセント確率は、それぞれ97.8および95.5%であった。
【0047】
結論:これらのデータによって、cUTIの患者を治療するための、ZTI-01 6g IV q8h(および腎臓に適合された用量投与レジメン)がサポートされる。
【0048】
実施例11:複雑性尿路感染症での第3相治験(ZEUS)の患者由来のグラム陰性ベースライン細菌分離株に対するホスホマイシンの活性
背景:ZTI-01(ホスホマイシン、FOS、注射用)は、複雑性尿路感染症(cUTI)を治療するために、米国で開発中にある。FOSは、MurAとの共有結合を介して細胞壁合成の初期段階を阻害する点で、他の抗微生物剤に比べてユニークである。FOSは、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)を含有する生物を含めて、グラム陰性(GN)最近およびグラム陽性(GP)細菌に対し、広いin vitro活性を呈する。この試験では、我々は、第3相cUTI治験(ZEUS)由来のグラム陰性臨床分離株に対するFOSの活性を検討した。
【0049】
方法:cUTI臨床治験で採集された465株のGNベースライン臨床分離株に対して、FOSを供試した。比較薬剤に対してブロス微量希釈を参照し、FOSに対して寒天希釈(25μg/mLグルコース-6-リン酸を補充)を参照して、比較剤に対して分離株を感受性(S)試験に供した。経口製剤についての既存のFDAのFOSの区切り点≦64mg/Lを比較評価に用いた。スクリーニング陽性ESBL腸内細菌科分離株は、全ゲノムシークエンシングおよび公知のβ-ラクタマーゼ遺伝子の存在の分析によって、特徴を明らかにした。
【0050】
結果:FOSは、腸内細菌科に対し非常に活性があった(MIC50/90、1/16mg/L;96.4%≦64mg/L)。329株の大腸菌では、100.0%がSからFOS(MIC50/90、1/1mg/L)であり、62株の肺炎桿菌では、FOS MIC50/90値が16/128mg/L(87.1%、≦64mg/L)であった。14株のエンテロバクター・クロアカ菌群および20株のプロテウス・ミラビリスのFOS MIC50/90値は、それぞれ16/128および2/32mg/Lであった。21株の緑膿菌では、さらに高いFOS MIC50/90が観察され、64/256mg/Lであった。特徴が明らかにされたESBL含有離株に関しては、49株の大腸菌のFOS MIC50/90が1/2mg/Lであり、28株の肺炎球菌では16/128mg/Lであり、3株のプロテウス・ミラビリスではMIC50が2mg/Lであった。最もよくみられたESBLはCTX-Mであり(大腸菌で42/49および肺炎球菌で27/28)、CTX-M-15(群1に属する)が最もよくみられたバリアントであった。カルバペネマーゼ遺伝子であるNDM-1およびOXA-48は、2株の肺炎球菌分離株に検出され、それらはそれぞれFOS MICが8および64mg/Lであった。
【0051】
結論:FOSは、ESBLまたはカルバペネマーゼを有するものを含めて第3相cUTI治験でのベースライン臨床分離株に対して、広域スペクトルの活性を呈した。FOSは、耐性GNが発生する感染において、研究をさらに進めるに値する。現状の経口製剤に生物学的利用能の上で制約があることを考慮すれば、IV形態の導入の可能性があることは、感受性の区切り点を再評価する正当な理由となろう。
【0052】
実施例12:カルバペネム非感受性緑膿菌(PSA)に対するホスホマイシン(FOF)と非経口の抗微生物剤とのIn Vitro相乗作用
背景:薬剤耐性PSAに起因する感染は、治療上のジレンマを、特にカルバペネム-非感受性の(NS)表現型が存在する場合に生じる。そのため、臨床ガイドラインは、このプロファイルを有するPSAに対し、組合せ療法の使用を次第に推奨するようになっている。静脈内へのFOFが、その広域スペクトルの活性の結果として、米国で臨床開発を実施中であり、MDR病原菌のための組合せレジメンに組み込むことが有望であるように思われる。ここでは、我々は、多様な表現型プロファイルを有するカルバペネム-NS PSAの母集団に対し、FOFの相乗性の可能性を評価した。
【0053】
方法:米国の病院から得られたメロペネム-NS PSAを供試した。FOF以外の全ての抗生物剤のMICは、ブロス微量希釈によって既に決定されていた。FOF MICは、FOFとアズトレオナム(ATM)、セフェピム(FEP)、セフタジジム(CAZ)、メロペネム(MEM)、ピペラシリン/タゾバクタム(TZP)、およびトブラマイシン(TOB)との相乗作用の評価を行う前に、ETEST(登録商標)抗生物剤勾配拡散ストリップによって決定した。FOFのETEST(登録商標)ストリップを上述の抗生物剤のストリップのそれぞれと角度90°でそれぞれのMICで交差させ、続いて分画阻害濃度を算出することによって、各組合せの相乗性の可能性を決定した。このうち、商業的に入手できることから、Liofilchem(登録商標)MICテストストリップをTZPについて用いた。第2の薬剤に対しNSであった生物のみ、相乗作用について評価した。
【0054】
結果:87株の臨床MDR PSA分離株のうち、FOF MIC50/90は64/>1024μg/mLであった。相乗作用は、39/87(44.8%)の分離株間で、246通りのFOF-薬剤組合せのうち57通り(23.2%)に検出された。相加作用は、66株(75.9%)の分離株間で、112通り(45.5%)の組合せに示された。重要なことに、観察された拮抗作用はなかった。薬剤によって、CAZが最も多くの場合に相乗作用を呈し(16/25、64.0%)、TOB(5/18、27.8%)およびFEP(7/27、25.9%)がそれに続いた。FOF-ATMは、47株のうち32株(68.1%)の分離株に観察されたように、最も高頻度で相加作用を生じた。TZPは、42株のうち10株(23.8%)の分離株にのみ観察されたように、最も相乗的または相加的な組合せが少なかった。他の組合せの全てが、供試された分離株の>50%で相乗的または相加的であった。FOFとの組合せでは、MEMのMICは、87株のうち12株(13.8%)の分離株で、≧8mg/Lから≦2mg/Lに低減した。
【0055】
結論:ETEST(登録商標)法を用いて、相乗作用または相加作用が、FOFとMDR PSAに対する他の抗生物剤との間に共通して観察された。さらに、FOFはメロペネムの活性を復活させる能力を呈したが、この観察はさらに進んだ研究を行うに値する。これらのデータは、MDR PSAに起因する感染の治療のために最適なFOF-薬剤の組合せを選択する際に、臨床医の助けとなる。
【0056】
実施例13:カルバペネマーゼ生産腸内細菌科(CPE)に対するホスホマイシン(FOF)と様々な抗微生物剤との相乗作用のIn Vitro検討
背景:CPE感染は、公衆衛生に深刻な脅威をもたらす。CPEの台頭に伴って、β-ラクタムは、これらの不応性の病原菌に対する単剤療法としては多くの場合に効果のないものとなる。FOFは、米国での使用のために静脈注射(IV)製剤として現在開発中の広域スペクトルのホスホン酸誘導体である。CPEに対し組合せ療法が主に採用されることから、FOFと他の抗生物剤との相乗効果を評価することは、IV FOFの潜在的な役割を最適化するために正当なことである。
【0057】
方法:KPC、NDM、OXA、またはVIMのカルバペネマーゼを擁する分離株(n=37)であって、その大部分が基質特異性拡張型β-ラクタマーゼも生産する株を、FDA-CDC抗微生物剤耐性バンクから入手した。FOFと組み合わせて供試した剤のMICを、ブロス微量希釈によって決定した。FOF MICは、FOFとアズトレオナム(ATM)、セフタジジム(CAZ)、セフタジジム/アビバクタム(CZA)、セフェピム、セフトロザン/タゾバクタム(C/T)、メロペネム、ピペラシリン/タゾバクタム、およびトブラマイシン(TOB)との相乗作用の評価を行う前に、ETEST(登録商標)抗生物剤勾配拡散ストリップによって決定した。FOFのETEST(登録商標)ストリップを上述の抗生物剤のストリップのそれぞれと角度90°でそれぞれのMICで交差させ、続いて分画阻害濃度を算出することによって、各組合せの相乗性の可能性を決定した。特に、Etestは、FOS MICを約2希釈分高くオーバーコールすることが観察されているが、この方法によって、潜在的なFOSの相乗作用を評価するための慎重かつ理に適った手段が提供される。第2の薬剤に対し非感受性であった生物のみ、相乗作用について評価した。
【0058】
結果:供試された37株のCPEのうち、fos(A)を擁する11株の分離株を含めて、ETEST(登録商標)によるFOF MIC50は>1024μg/mLであった。相乗作用は、37株のうち10株(28.2%)分離株間で、281通りのFOF-薬剤組合せのうち16通り(5.7%)に検出された。相加作用は、281通りのうち49通り(17.4%)の組合せに観察されたとともに、組合せの大部分(76.9%)が不確定(indifference)に含まれた。重要なことに、観察された拮抗作用はなかった。薬剤によって、C/Tが、37株のうち5株(13.5%)の分離株について最も多くの場合に相乗作用を呈し、それに続いて、ATMが36株のうち4株(11.1%)の分離株について、CAZが37株のつい3株(8.1%)の分離株について、作用を呈した。FOF-ATMは、36株のうち11株(30.6%)の分離株に観察されたように、最も高頻度で相加作用を生じた。CZAおよびTOBは、CZA非感受性の(n=25)およびTOB非感受性の(n=35)の分離株に対し供試した際に、相乗的な組合せを生じなかった。
【0059】
結論:ETEST(登録商標)法を用いて、FOFと一般に利用される広域スペクトル抗生物剤との相乗作用または相加作用が、供試された全ての組合せのほぼ1/4に観察された。このデータは、FOF-C/T、FOF-ATM、およびFOF-CAZのさらに進んだ研究をサポートするものであり、このことは、これらの組合せが、研究に供された他の組合せに比べて最も高頻度で相乗作用および/または相加作用を示した通りである。
【0060】
実施例14:多様な耐性機構を有するカルバペネム-耐性腸内細菌科(CRE)臨床分離株に対するホスホマイシン(FOS)活性
背景:FOSは、腸内細菌科に対する殺細菌活性を有する細胞壁合成阻害剤である。我々は、多様な耐性機構を有した臨床CRE分離株に対するFOSのin vitro活性を検討した。
【0061】
方法:25μg/mLグルコース-6-リン酸を補充されたミューラー-ヒントン中の寒天希釈を用いて、FOS感受性を試験した。15mmと20mmのディスク間距離でのディスク拡散によって、相乗作用を評価した。経口FOSでの区切り点を使用した(MIC>64μg/mLによりFOS-Rを定義した)。
【0062】
結果:50株の分離株を供試した:41株の肺炎球菌(Kp)、5株のエンテロバクター・クロアカ、2株の大腸菌、1株のクレブシエラ・オキシトカ、および1株のエンテロバクター・アエロゲネス。耐性機構には、KPC(39株)、NDM(7株)、クラスC-OXA(4株)、およびAmpC(7株)が含まれた。非感受性率は、メロペネム(MEM)82%、イミペネム(IMP)86%、ピペラシリンータゾバクタム(P-T)96%、シプロフロキサシン(CIP)84%、ゲンタマイシン(GEN)54%、セフタジジム(CAZ)92%、CAZ-アビバクタム(C-A)6%、セフトロザン-タゾバクタム(C-T)43%であった。3株の分離株がFOS MIC>64μg/mLを示し、そのそれぞれはまた、MEM、IMP、P-T、GEN、およびC-Tに感受性ではなかった。相乗作用は、15mmの距離に観察されたが、20mmには観察されなかった。FOS-S分離株に対するFOSと他剤との相乗作用率は、MEM 19%、IMP 23%、P-T 6%、CIP 8%、GEN 11%、CAZ 4%、C-A 53%、C-T 11%であった。第2の剤のSに基づく相乗作用率は、MEM-S 56%対MEM-R 10%(p=0.0008)、IMP-S 86%対IMP-R 12%(p=0.0003)、P-T-S 50%対P-T-R 4%(p=0.12)、CIP-S 57%対CIP-R 0%(p=0.0002)、GEN-S 22%対GEN-R 0%(p=0.02)、CAZ-S 0%対CAZ-R 5%、C-A-S 53%対C-A-R 53%、C-T-S 57%対C-T-R 2%(p=0.009)。FOS-R分離株では、相乗作用がC-A(n=1)でのみ認められた。3株の分離株が、FOS修飾酵素fosA2をコードする遺伝子を擁し、うち1株がFOS R(MIC 256μg/mL)であった。R分離株はまた、FOS輸送体遺伝子glpTにSNPを有していた。第2のFOS-R分離株は、fosA3(MIC≧1024μg/mL)を擁していた。第3のFOS-R分離株(OXA-181+、CTXM-15+Kp;MIC 128μg/mL)は、Rの機構が不明であった。SNPは、glpT(上述の1株を含む3株の分離株)、FOS輸送体遺伝子uhpT(3株の分離株)、ならびに調節因子遺伝子ptsI(uhpTも有する1株の分離株)およびuhpA(1株の分離株)内に見出された。これらの分離株にFOS Rであるものはなかった。全ての分離株が、FOSの標的MurAおよび調節因子CyrAをコードする野生型遺伝子を有していた。fosCまたはfomA/Bキナーゼ遺伝子を有する分離株はなかった。
【0063】
結論:FOSは、in vitroで、新剤C-AおよびC-Tを含めた広域スペクトル抗生物剤に対しRである分離株を含めて、CREに対する活性が高かった。ゆえに、FOSは、活性のあるβ-ラクタムが現在存在しないCRE分離株に対して活性であった。概して、FOSと他剤との相乗作用率は、両剤が活性であった際に優れていた。FOSとC-Aとの相乗作用率は、分離株がC-A Rであった場合でも高かった。したがって、FOSは、CRE感染に対する組合せ剤として大いに有望である。相乗作用は、15mmのディスク間距離でのみ観察されたが、このことは、薬物動態の最適化が、in vivoにおける剤同士の正の相互作用に極めて重要となることを示す。
【0064】
実施例15:カルバペネム耐性緑膿菌臨床分離株に対するホスホマイシンの単剤のおよび多剤との組合せのin vitro活性の評価
背景:カルバペネム耐性緑膿菌(CR-Pa)は、世界的に主要な病原菌として出現している。CRおよび他の高耐性のPaに感染した患者間の抗生物剤治療応答率は、β-ラクタム/β-ラクタマーゼ阻害剤であるセフトロザン-タゾバクタム(CFT-TAZ)およびセフタジジム-アビバクタム(CAZ-AVI)のような新たに開発された薬剤に対してさえ、不充分なものである。ホスホマイシン(FOS)は、細菌の細胞壁合成の最初の段階を触媒する酵素であるUDP-N-アセチルグルコサミンエノールピルビルトランスフェラーゼ(MurA)を阻害する。FOSは、好気性のグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌に対する広域スペクトルの活性を有する。そのユニークな作用機構により、FOSは、Paに対する組合せレジメンにおいて特に有望であり、他の抗生物剤との相乗作用の展望をもたらす。我々の目的は、特徴を十分に明らかにされたPa臨床分離株に対するFOSのin vitro活性を、単剤でおよび他剤との組合せで研究することであった。
【0065】
方法:43株のPa分離株(別個の患者から回収)を試験用に選択した。寒天希釈[25ug/mLグルコース-6-リン酸(G6P)を含む35℃でのミューラー-ヒントン寒天(CLSI法)]によって、FOS、CAZ-AVI、CFT-TAZ、ゲンタマイシン(GEN)、シプロフロキサシン(CIP)、メロペネム(MER)、イミペネム(IMP)、ピペラシリンータゾバクタム(PIP-TAZ)、およびCAZについて、単剤の薬剤の最小阻害濃度(MIC)を決定した。FOSと他剤との相互作用を、ミューラー-ヒントン寒天上の二重ディスク試験によって決定した。300μgのFOSおよび50μgのG6Pを含有するディスクを使用するとともに、商業的に入手可能なKirby Bauerディスクを他剤に使用した。静脈注射用のFOS MICの区切り点は確立していない。我々は、MIC≦64ug/mLおよび>64ug/mLを、それぞれ感受性(S)および非感受性(NS)(すなわち、経口FOSと腸内細菌科との区切り点)と規定した。12株の分離株に対する時間死滅アッセイを、FOS、CAZ-AVI、CFT-TAZ、およびPIP-TAZ(単剤で、または各剤をFOSと組み合わせて)について、それぞれのMIC(または耐性分離株に対するMICの区切り点)で実施した。時間-死滅の間の殺細菌活性は、初発の接種に比べた際の12および/または24時間での>3-log10の低減として規定した。時間-死滅の間の相乗作用は、最も良好な単剤のみに比べた際の12および/または24時間での>2-log10の低減として規定した。
【0066】
結果:MICに基づく各剤のSおよびNSの比率を表4に示す。
【0067】
表4 Pa分離株に対する様々な薬剤のSおよびNSの比率
【0068】
分離株の70パーセントがCR(MERとIMPのどちらかにNS)であった。単剤としては、CFT-TAZ(88% S)、CAZ-AVI(74% S)、FOS(70% S)、およびGEN(70% S)が最も活性があった。FOS MICの分布を図2に示す。二重ディスク拡散によって決定された際の、多剤との組合せにおけるFOSの相乗作用率を、表5に示す。
【0069】
表5 ディスク拡散に基づくFOSと他剤との相乗作用
【0070】
相乗作用は、FOS+CAZ-AVI(42%)、FOS+CIP(35%)、およびFOS+CFT-TAZ(30%)に最もよくみられた。FOS+CAZ-AVIおよびFOS+CFT-TAZでは、相乗作用は、FOS-Sであった分離株に対してのみ観察された(相乗作用率:それぞれ60%および43%,)。FOS+CIPでは、相乗作用は、FOS-Sであった分離株に対して、FOS-Rよりも傾向が高かった(40%対23%)。FOS-S分離株に対する時間-死滅活性を単剤で試験した際に、CAZ-AVI、CFT-TAZ、およびPIP-TAZは、分離株の8%(1/12)に対し殺細菌性があった。CAZ-AVI、CFT-TAZ、およびPIP-TAZと組み合わされたFOSの殺細菌活性率および相乗作用率を、表6に示す。相乗作用率は、それぞれ67%、83%、および50%であり、各組合せで、ディスク拡散によって観察されたよりも高かった。
【0071】
表6 他剤と組み合わされたFOSの時間-死滅活性に基づく殺細菌活性および相乗作用
【0072】
結論:FOSは、CRおよびその他の高薬剤耐性のPa分離株のコレクションに対し活性があり、それらの感受性率は、新しいβ-ラクタム/β-ラクタマーゼ阻害剤であるCFT-TAZおよびCAZ-AVIと同等であった。さらに、FOSは、時間-死滅活性により測定した際に、大部分のFOS-S分離株に対し、セフトロザン-タゾバクタム(CFT-TAZ)およびセフタジジム-アビバクタム(CAZ-AVI)との相乗性がある。FOSはまた、CIP(ディスク拡散)およびPIP-TAZ(時間-死滅活性)との相乗作用を、それぞれ分離株の40%および50%に対して示す。したがって、FOSは、CRおよび高薬剤耐性のPaに起因する感染に対し、特に他の活性剤との組合せレジメンの一部分として、有望な剤である。
【0073】
説明を目的として示された前述の実施形態の詳細は、この発明の範囲を限定するものと解されることはないことが理解されよう。この発明の複数の実施形態が上記に詳細に記載されているとはいえ、当業者は、この発明の新規の教示および利点を実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において数多くの改変が可能であることを、容易に理解するものとなる。したがって、そのような改変の全てが、以下の特許請求の範囲およびそのあらゆる等価物に規定されるこの発明の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、数多くの実施形態がいくつかの実施形態の、具体的には好適な実施形態の利点の全てを達成しないことが想定される場合があるが、ある具体的な利点がなくとも、そのような実施形態が本発明の範囲外にあることを意味するとは必ずしも解されないものとすることを認識されたい。

図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のホスホマイシンと、セフタジジム、セフタジム-アビバクタム、シプロフロキサシン、およびセフトロザン-タゾバクタム、トブラマイシンおよびセフェピムからなる群から選択される少なくとも1つの抗微生物剤とを併せた、感染対象への共投与レジメンを含む、グラム陰性細菌の感染を治療する方法。
【請求項2】
他の抗微生物剤が、ホスホマイシンと、セフタジジム、セフタジム-アビバクタム、シプロフロキサシン、およびセフトロザン-タゾバクタム、トブラマイシンおよびセフェピムからなる群から選択される前記少なくとも1つの抗微生物剤との前記共投与に組み合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラム陰性細菌の感染は、肺炎桿菌に起因する感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グラム陰性細菌の感染は、緑膿菌に起因する感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グラム陰性細菌の感染は、アシネトバクター・バウマニに起因する感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも少ない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
黄色ブドウ球菌、フェカリス菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、および大腸菌からなる群から選択される「耐性」変異体の亜集団による感染を含めた、細菌感染に罹っている対象を治療する方法であって、
a.細菌感染を患う対象から試料を取得すること;
b.前記試料中の「耐性」変異体の亜集団の存在を特定すること;および
c.ホスホマイシンと少なくとも1つの抗微生物剤とを前記対象に共投与することであって、前記共投与後に、細菌密度が有効に低減され、前記「耐性」変異体の亜集団が阻害されること
を含む方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの抗微生物剤は、セフタジジム、セフタジム-アビバクタム、シプロフロキサシン、およびセフトロザン-タゾバクタム、トブラマイシンおよびセフェピムからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
他の抗微生物剤が、ホスホマイシンと、セフタジジム、セフタジム-アビバクタム、シプロフロキサシン、およびセフトロザン-タゾバクタム、トブラマイシンおよびセフェピムからなる群から選択される前記少なくとも1つの抗微生物剤との前記共投与に組み合わされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも多い、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記感染対象に共投与される際に、ホスホマイシンの有効量は、前記少なくとも1つの抗微生物剤の有効量よりも少ない、請求項8に記載の方法。
【外国語明細書】