(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137100
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】センサ電線
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20220913BHJP
H01L 41/087 20060101ALI20220913BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G01L1/16 C
H01L41/087
H01L41/113
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100753
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2021199855の分割
【原出願日】2018-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】517069066
【氏名又は名称】ロボセンサー技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】大村 昌良
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部ノイズの影響を受けにくいセンサ電線を提供する。
【解決手段】圧電材料で覆われた第一の内部導体と、圧電材料の外周を覆う第二の内部導体と、第一の内部導体および第二の内部導体を囲む外部シールド導体と、外周を覆うシースと、を備えたセンサ電線であって、第一の内部導体、第二の内部導体、および外部シールド導体の間には絶縁体が配置されており、センサ電線の一方の端部において、第一の内部導体の端部の外側が、第二の内部導体または第二の内部導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、さらにその外側が、外部シールド導体または外部シールド導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、さらに一方の端部は、シースの端部までをカバー部材で覆われたものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料で覆われた第一の内部導体と、
前記圧電材料の外周を覆う第二の内部導体と、
前記第一の内部導体および前記第二の内部導体を囲む外部シールド導体と、
外周を覆うシースと、を備えたセンサ電線であって、
前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されており、
前記センサ電線の一方の端部において、前記第一の内部導体の端部の外側が、前記第二の内部導体または前記第二の内部導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、さらにその外側が、前記外部シールド導体または前記外部シールド導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、
さらに前記一方の端部は、前記シースの端部までをカバー部材で覆われたものである、
ことを特徴とするセンサ電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性の素材を用いたセンサ電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電性素材を用いたセンサ電線が知られている(例えば、特許文献1等参照)。このセンサ電線は、力による変形が生じると、内部導体と外部導体との間に電圧が誘起される。この特性を利用して触覚センサや振動センサ等に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のセンサ電線は、外部ノイズの影響を受けやすいため、センサとしての信頼性が低下する場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、外部ノイズの影響を受けにくいセンサ電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明のセンサ電線は、
圧電材料で覆われた第一の内部導体と、
前記圧電材料の外周を覆う第二の内部導体と、
前記第一の内部導体および前記第二の内部導体を囲む外部シールド導体と、
外周を覆うシースと、を備えたセンサ電線であって、
前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されており、
前記センサ電線の一方の端部において、前記第一の内部導体の端部の外側が、前記第二の内部導体または前記第二の内部導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、さらにその外側が、前記外部シールド導体または前記外部シールド導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、
さらに前記一方の端部は、前記シースの端部までをカバー部材で覆われたものである、
ことを特徴とする。
【0007】
このセンサ電線によれば、外部との接続に用いられない側の端部においてノイズの影響を受けにくくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外部ノイズの影響を受けにくいセンサ電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は、本発明の第一実施形態のセンサ電線10の構造を示す断面図であり、(B)は、センサ電線10の第一の内部導体101の構造を示す断面図である。
【
図2】第一の絶縁被覆104の巻き付け方の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示すセンサ電線10を用いたセンサ回路20を示す図である。
【
図4】センサ電線10の端部のうち回路に接続されていない側の端部について、絶縁部材および導体部材を施した一例を示す図である。
【
図5】第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を二つ設けたセンサ電線11の構造を示す断面図である。
【
図6】
図5に示すセンサ電線11を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
【
図7】
図5に示すセンサ電線11を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
【
図8】第一の内部導体101を覆う第一の絶縁被覆104、およびさらにその外側を覆う第二の内部導体102の組み合わせを二つ設けたセンサ電線12の構造を示す断面図である。
【
図9】
図8に示すセンサ電線12を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
【
図10】(A)は、本発明の第二実施形態のセンサ電線13の構造を示す断面図であり、(B)は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の内部導体202をより合わせた状態を示す図である。
【
図11】
図10に示すセンサ電線13を用いたセンサ回路24を示す図である。
【
図12】センサ電線13の端部のうち回路に接続されていない側の端部について、絶縁部材および導体部材を施した一例を示す図である。
【
図13】第二実施形態の変形例を示す断面図である。
【
図14】
図13に示すセンサ電線14を用いたセンサ回路25を示す図である。
【
図15】第二実施形態の変形例を示す断面図である。
【
図16】
図15に示すセンサ電線15を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
【
図17】第二実施形態の変形例を示す断面図である。
【
図18】
図17に示すセンサ電線16を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
【
図19】
図17に示すセンサ電線16を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
【
図20】第二実施形態の変形例を示す断面図である。
【
図21】
図20に示すセンサ電線17を用いたセンサ回路29を示す図である。
【
図22】
図3に示すセンサ回路20の一部にスイッチ301を加えたセンサ回路30を示す図である。
【
図23】
図11に示すセンサ回路24の一部にスイッチ301を加えたセンサ回路31を示す図である。
【
図24】
図3に示すセンサ回路20に対し、外部シールド導体103と第二の内部導体102との電位差を増幅して出力する差動増幅器151を加えたセンサ回路32を示す図である。
【
図25】
図11に示すセンサ回路24に対し、外部シールド導体203と第二の内部導体202との電位差を増幅して出力する差動増幅器251を加えたセンサ回路33を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のセンサ電線は、電線の形状をしたセンサである。以下このセンサ電線の実施形態について説明する。
【0011】
[第一実施形態のセンサ電線]
図1(A)は、本発明の第一実施形態のセンサ電線10の構造を示す断面図である。センサ電線10は、中心に設けられた第一の内部導体101と、その外側に設けられた第二の内部導体102と、さらにその外側に設けられた外部シールド導体103を有する。このうち第一の内部導体101と第二の内部導体102との間には第一の絶縁被覆104が設けられている。すなわち、第一の内部導体101は第一の絶縁被覆104で覆われており、これによって第二の内部導体102や外部シールド導体103と絶縁されている。また、第二の内部導体102と外部シールド導体103との間には第二の絶縁被覆105が設けられている。すなわち、第二の内部導体102は第二の絶縁被覆105で覆われており、これによって外部シールド導体103と絶縁されている。さらに外部シールド導体103の外側にはシース130が設けられている。
【0012】
図1(A)では、第一の内部導体101が直交する斜めの線によるハッチングで示されており、第二の内部導体102および外部シールド導体103が水平線によるハッチングで示されている。また、第一の絶縁被覆104が右下がりの線によるハッチングで示されており、第二の絶縁被覆105が左下がりの線によるハッチングで示されている。
【0013】
第一の内部導体101は、
図1(B)に示すように7本の導体線1000をより合わせたものである。また、図示は省略するが、
図1(B)に示す導体線1000も、それぞれがより細い7本の導体線(本実施形態では太さ10μm)をより合わせて構成されている。すなわち、第一の内部導体101は、49本の導体線を2段階に分けてより合わせて構成されたものである。
【0014】
第一の内部導体101の構成については、本実施形態の構成に限られるものではなく、より合わせる段数が異なってもよいし、より合わせる導体線の数が異なってもよく、また、より合わせる導体線の太さが異なってもよい。より合わせる際には、異なる方向に捩じった導体線を組み合わせてもよいし、より合わせる段階に応じて捩じる方向を異ならせてもよい。さらに、1本の導体線で第一の内部導体101を構成してもよい。また、本実施形態ではこれらの導体線は銅製であるが、素材については特に限定されるものではなく、例えばステンレス、タングステン、チタン、マグネシウム、あるいはこれらの合金であってもよく、素材の異なる複数種類の導体線を組み合わせてもよい。
【0015】
第二の内部導体102および外部シールド導体103は、いずれもアルミフィルムと銅のメッシュの組み合わせで構成されているが、これらの導体についてはこの構成に限定されるものではない。従って例えば、金属製のフィルムや、金属製のメッシュ、さらには金属線をらせん状に巻き付けたもの、またはその組み合わせであってもよい。また、第二の内部導体102および外部シールド導体103の構成や素材は同じである必要はなく、異なっていてもよい。また例えば、外部シールド導体103が、金属製のメッシュの層と、金属箔を付けたPETフィルムの層との二層構造のように、複数の層を有するものであってもよい。
【0016】
第一の絶縁被覆104は、圧電材料であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムを用いて構成されたものであり、
図2に示すように第一の内部導体101に螺旋状に巻き付けられたものである。なお、第一の絶縁被覆104は分極処理が施されたことにより圧電性を有するものである。
【0017】
なお、
図2では、第一の絶縁被覆104を二枚の圧電性フィルムで構成した例が示されているが、圧電性フィルムを用いる場合の数はこれに限定されるものではなく、例えば一枚であってもよいし複数であってもよい。なお、第一の内部導体101に圧電性フィルムを巻き付ける場合には隙間が生じないようにし、第一の内部導体101対してノイズの影響が生じにくくなるようにすることが好ましい。このため本実施形態の第一の絶縁被覆104では、
図2に示すように二枚の帯状の圧電性フィルムを180度ずらしながら同じ方向に巻き付けることで、第一の内部導体101を中心にして圧電性フィルムに係る張力を均等にし、フィルムの偏りによって隙間が生じることを防止している。また、
図1(A)に示すように第一の内部導体101を導体線1000をより合わせて構成した場合には、第一の内部導体101のより方向と同じ方向に圧電性フィルムを巻き付けてもよいし、逆方向に巻き付けてもよい。この方向によっては、センサ電線10の柔軟性を変えることができる場合がある。
【0018】
なお、本実施形態ではPVDFを用いているが、第一の絶縁被覆104が圧電性を有する材料で構成されていればよく、例えば、トリフルオロエチレン(TrEF)や、PVDFとTrEFの混晶材料や、ポリ乳酸、ポリ尿酸、ポリアミノ酸等の双極子モーメントをもつ高分子材料を用いてもよい。また、第一の絶縁被覆104についてはPVDFフィルムのような圧電材料のフィルムを用いる構成に限られるものではなく、圧電材料を塗布する構成であってもよい。このような方式としては、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいし含浸塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。
【0019】
第二の絶縁被覆105は、絶縁体の樹脂(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)による被覆であり、第一の絶縁被覆104とは異なり圧電性を有しないものである。
【0020】
次に、上記説明したセンサ電線10の使用例について
図3を用いて説明する。
図3は、
図1に示すセンサ電線10を用いたセンサ回路20を示す図である。このセンサ回路20では、第一の内部導体101と第二の内部導体102が差動増幅器150に接続されており、外部シールド導体103がグランドに接続されている。差動増幅器150は、第一の内部導体101と第二の内部導体102との電位差を増幅して出力する。
【0021】
上記のセンサ回路20においてセンサ電線10に対して外力が加えられると、圧電性を有する第一の絶縁被覆104が変形し、その圧電効果によって第一の内部導体101と第二の内部導体102の電位差が変動する。この電位差が差動増幅器150によって増幅されて出力される。すなわちセンサ回路20は、センサ電線10にかかる外力に基づく信号を出力するセンサとしての機能を有する。
【0022】
また上記のセンサ回路20においては、外力に基づく信号に対する外部ノイズの影響を抑えるように構成されている。まず、第一の内部導体101と第二の内部導体102は、グランドに接続された外部シールド導体103によって囲まれており、外部ノイズによって電位が変動しにくくなるように構成されている。さらに、外部ノイズが外部シールド導体103を通過してしまっても、内側にある第一の内部導体101および第二の内部導体102の双方がこのノイズによる影響を受け、これらの内部導体同士で同様の電位の変動が生じる。上記センサ回路20では、第一の内部導体101と第二の内部導体102の電位差を増幅することで、外部ノイズの影響による電位の変動分を相殺するように構成されている。
【0023】
上記説明したようにセンサ回路20では、センサ電線10に対して外力が加えられた際に第一の内部導体101および第二の内部導体102の電位差が生じる一方、外部ノイズの影響による第一の内部導体101および第二の内部導体102の電位差についてはこれを抑えることができる。この構成により、外部ノイズの影響を抑えつつ、外力に基づく信号を得ることができる。
【0024】
なお、外部シールド導体103の接地の状況によってはグランド電位が変動する場合があるが、上記説明したセンサ回路20ではグランドとの電位差ではなく第一の内部導体101と第二の内部導体102との電位差を用いているため、グランド電位の変動による影響を抑えることができる。
【0025】
なお、センサ電線10を使用する際には、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体101、第二の内部導体102、外部シールド導体103が露出していると、これらが互いに接触して外力に基づく信号が正確に得られなくなる場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体101、第二の内部導体102、外部シールド導体103の絶縁を確実にしておくことが好ましい。また、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体101および第二の内部導体102が外部シールド導体103に覆われていない部分があると、そこから外部ノイズの影響を受ける場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体101および第二の内部導体102を確実にシールドしておくことが好ましい。
【0026】
図4は、センサ電線10の端部のうち回路に接続されていない側の端部について、絶縁部材および導体部材を施した一例を示す図である。この図では、端部に対して絶縁部材171、173、導体部材172、174、カバー部材175が適用されているが、各段階が理解しやすいよう、
図4(A)から(F)までが段階的に示されている。
【0027】
図4(A)では、第一の内部導体101、第二の内部導体102、外部シールド導体103が露出した端部が示されている。
図4(B)には、
図4(A)で示す第一の内部導体101ごと第一の絶縁被覆104までが絶縁部材171で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材171が第一の絶縁被覆104まで覆われており、第一の内部導体101を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
【0028】
図4(C)には、
図4(B)で示す状態から、絶縁部材171ごと第二の内部導体102までが導体部材172で覆われた様子が示されている。この例では、第二の内部導体102と導体部材172の電位は同じになる。この導体部材172により、第一の内部導体101が外部ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0029】
図4(D)には、
図4(C)で示す状態から、導体部材172ごと第二の絶縁被覆105までが絶縁部材173で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材173が第二の絶縁被覆105まで覆われており、第二の内部導体102を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
【0030】
図4(E)には、
図4(D)で示す状態から、絶縁部材173ごと外部シールド導体103までが導体部材174で覆われた様子が示されている。この例では、外部シールド導体103と導体部材174の電位は同じになる。この導体部材174により、第一の内部導体101および第二の内部導体102がシールドされ、外部ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0031】
図4(F)には、
図4(E)で示す状態から、導体部材174ごとシース130までがカバー部材175(シース130と同様の素材)で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材171、173および導体部材172、174が設けられた端部を保護することができる。なお、このカバー部材175を熱収縮(あるいは熱融着)する素材で構成しておき、端部を覆った状態で加熱することで密着させてもよい。
【0032】
なお、上記の例で説明した絶縁部材171、173は、絶縁体の素材(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)であればよい。また、導体部材172、174は導電性の素材(例えば、アルミ、銅、錫、あるいは複数材料による合金、等)であればよい。また、導体部材172、174の形状についても、フィルム状やメッシュ状の他、筒状の棒端子を用いてもよく、その形状が限定されるものではない。
【0033】
なお、上記の例で説明した絶縁部材171、173、導体部材172、174、カバー部材175は、カバー部材175だけを用いたり、導体部材172を除いたりする、といったように、全て適用しなくともよい。また、上記の例に限らず、例えば、シース130を除く端部が平面である場合には、このシース130を除く端部を絶縁部材で覆い、その上を外部シールド導体103と接するように導体部材で覆い、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。また、第一の内部導体101、第一の絶縁被覆104、第二の内部導体102、第二の絶縁被覆105までを、外部シールド導体103よりも短く切断し、これらを絶縁した上で外部シールド導体103で包み、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。すなわち、導体同士の絶縁およびシールドをより確実にする構成であればよく、その構成が限定されるものではない。
【0034】
[第一実施形態の変形例1]
図1で説明したセンサ電線10は、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101が一つの構成であったが、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を複数設けた構成としてもよい。
図5は、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を二つ設けたセンサ電線11の構造を示す断面図である。このセンサ電線11では、第一の内部導体101A、101Bによって複数(ここでは二つ)の芯が構成されており、これらの芯のそれぞれから外力に基づく信号が出力される。この断面図において第一の絶縁被覆104A、104Bと第二の内部導体102との間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。なお、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を複数設けるにあたっては、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらをより合わせた構成としてもよい。さらに、例えば第一の絶縁被覆104A、104Bの厚さを異ならせる、あるいは素材を異ならせるといったように、外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体101のそれぞれで異なるように構成してもよい。また、第二の内部導体102については
図1のセンサ電線10と同様の構成としてもよいし、導電性の素材による介在物を用いた構成としてもよい。
【0035】
図6および
図7は、
図5に示すセンサ電線11を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
図6に示すセンサ回路21では、複数の第一の内部導体101A、101Bの出力を合わせて増幅する構成を採用しており、外力に対する感度を高めることができる。一方
図7に示すセンサ回路22では、複数の第一の内部導体101A、101Bのそれぞれに対し、第二の内部導体102との電位差を増幅して複数の信号を出力する構成となっている。外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体101A、101Bのそれぞれで異なる場合に
図7のセンサ回路22の構成を採用した場合、外力に合わせて適切な信号を用いることができ、ダイナミックレンジを大きくとることができる。
【0036】
[第一実施形態の変形例2]
図5で説明したセンサ電線11は、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101が複数設けられており、これらが一つの第二の内部導体102で一緒に覆われた構成となっているが、この第二の内部導体102が、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101のそれぞれに対して設けられたものであってもよい。
図8は、第一の内部導体101を覆う第一の絶縁被覆104、およびさらにその外側を覆う第二の内部導体102の組み合わせを二つ設けたセンサ電線12の構造を示す断面図である。このセンサ電線12では、第一の内部導体101A、101Bによって複数の芯が構成されており、これらの芯のそれぞれから外力に基づく信号が出力される。なお、第一の絶縁被覆104で覆われた第一の内部導体101を複数設けるにあたり、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらをより合わせた構成とすることや、例えば第一の絶縁被覆104A、104Bの厚さを異ならせる、あるいは素材を異ならせるといった点については
図5のセンサ電線11と同様である。さらに、このセンサ電線12を用いたセンサ回路を構成する際には、
図6のセンサ回路21のように複数の第一の内部導体101A、101Bの出力を合わせて、第二の内部導体102(102A、102Bのいずれか、または双方)との電位差を増幅する構成としてもよいし、
図7のセンサ回路22のように複数の第一の内部導体101A、101Bのそれぞれに対し、第二の内部導体102(102A、102Bのいずれか、または双方)との電位差を増幅して複数の信号を出力する構成としてもよい。
【0037】
図9は、
図8に示すセンサ電線12を用いたセンサ回路の一例を示す図である。センサ電線12では、第一の内部導体101Aと第二の内部導体102Aが一方の芯に属し、第一の内部導体101Bと第二の内部導体102Bがもう一方の芯に属する構成となっている。ここで、これらの芯に設けられた第一の絶縁被覆104A、104Bは、製造の際に厚さにばらつきが生じる場合があり、その結果部位によって外力に応じた電位の変化量が他の部位と比較して異なる場合がある。そこで
図9に示すセンサ回路23では、同じ芯に属する内部導体同士の電位差ではなく、異なる芯に属する内部導体同士の電位差を増幅する構成を採用している。具体的には、第一の内部導体101Aと第二の内部導体102Bの電位差と、第一の内部導体101Bと第二の内部導体102Aの電位差をそれぞれ増幅し、さらにこれらの出力間の電位差を増幅する構成を採用している。この構成では、外力に応じた電位の変化量にばらつきが生じても、出力を平均化して安定させることができる。
【0038】
[第二実施形態のセンサ電線]
図10(A)は、本発明の第二実施形態のセンサ電線13の構造を示す断面図である。
【0039】
センサ電線13は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の内部導体202を有し、これらを覆う第二の絶縁被覆205と、さらにこの外側に設けられた外部シールド導体203を有する。第一の内部導体201、第二の内部導体202、および外部シールド導体203は互いに絶縁されている。さらに外部シールド導体203の外側にはシース230が設けられている。この断面図においては第一の絶縁被覆204、第二の内部導体202、および第二の絶縁被覆205の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。上記説明した第一実施形態では、第二の内部導体102によって第一の内部導体101とは異なる芯が構成されていないのに対し、この第二実施形態では、第二の内部導体202によって第一の内部導体201とは異なる芯が構成されている点が異なる。また、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の内部導体202は、
図10(B)に示すように外部ノイズの影響を抑えるためにこれらをより合わせた構成となっている。
【0040】
図10では、第一の内部導体201および第二の内部導体202が直交する斜めの線によるハッチングで示されており、外部シールド導体203が水平線によるハッチングで示されている。また、第一の絶縁被覆204が右下がりの線によるハッチングで示されており、第二の絶縁被覆205が左下がりの線によるハッチングで示されている。
【0041】
第一の内部導体201および第二の内部導体202は、第一実施形態における第一の内部導体101と同様の構成のものであり、素材については第一実施形態における第一の内部導体101と同様のものを採用することができる。なお、第一の内部導体201および第二の内部導体202の構成や素材は同じである必要はなく、異なるものであってもよい。
【0042】
外部シールド導体203は、アルミフィルムと銅のメッシュの組み合わせで構成されているが、この構成に限定されるものではない。従って例えば、金属製のフィルムや、金属製のメッシュ、さらには金属線をらせん状に巻き付けたもの、またはその組み合わせであってもよい。また例えば、外部シールド導体203が、金属製のメッシュの層と、金属箔を付けたPETフィルムの層との二層構造のように、複数の層を有するものであってもよい。
【0043】
第一の絶縁被覆204は、第一実施形態における第一の絶縁被覆104と同様に圧電材料であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムを用いて構成されたものであり、
図2に示す第一実施形態の第一の絶縁被覆104と同様に第一の内部導体201に螺旋状に巻き付けられたものである。この第一の絶縁被覆204は分極処理が施されたことにより圧電性を有するものである。第一の絶縁被覆204の素材や構成については第一実施形態における第一の絶縁被覆104と同様のものを採用することができる。
【0044】
第二の絶縁被覆205は、絶縁体の樹脂(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)による被覆であり、第一の絶縁被覆204とは異なり圧電性を有しないものである。
【0045】
次に、
図10に示すセンサ電線13の使用例について
図11を用いて説明する。
図11は、
図10に示すセンサ電線13を用いたセンサ回路24を示す図である。このセンサ回路24では、第一の内部導体201と第二の内部導体202が差動増幅器250に接続されており、外部シールド導体203がグランドに接続されている。差動増幅器250は、第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を増幅して出力する。
【0046】
上記のセンサ回路24においてセンサ電線13に対して外力が加えられると、圧電性を有する第一の絶縁被覆204が変形し、その圧電効果によって第一の内部導体201と第二の内部導体202の間の電位が変動する。この電位差が差動増幅器250によって増幅されて出力される。すなわちセンサ回路24は、センサ電線13にかかる外力に基づく信号を出力するセンサとしての機能を有する。
【0047】
また上記のセンサ回路24においては、外力に基づく信号に対する外部ノイズの影響を抑えるように構成されている。まず、第一の内部導体201と第二の内部導体202は、グランドに接続された外部シールド導体203によって囲まれており、外部ノイズによって電位が変動しにくくなるように構成されている。さらに、外部ノイズが外部シールド導体203を通過してしまっても、内側にある第一の内部導体201および第二の内部導体202の双方がこのノイズによる影響を受け、これらの内部導体同士で同様の電位の変動が生じる。上記センサ回路24では、第一の内部導体201と第二の内部導体202の電位差を増幅することで、外部ノイズの影響による電位の変動分を相殺するように構成されている。
【0048】
上記説明したようにセンサ回路24では、センサ電線13に対して外力が加えられた際に第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差が生じる一方、外部ノイズの影響による第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差についてはこれを抑えることができる。この構成により、外部ノイズの影響を抑えつつ、外力に基づく信号を得ることができる。
【0049】
なお、外部シールド導体203の接地の状況によってはグランド電位が変動する場合があるが、上記説明したセンサ回路24ではグランドとの電位差ではなく第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を用いているため、グランド電位の変動による影響を抑えることができる。
【0050】
なお、センサ電線13を使用する際には、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体201、第二の内部導体202、外部シールド導体203が露出していると、これらが互いに接触して外力に基づく信号が正確に得られなくなる場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体201、第二の内部導体202、外部シールド導体203の絶縁を確実にしておくことが好ましい。また、回路に接続されていない側の端部で第一の内部導体201および第二の内部導体202が外部シールド導体203に覆われていない部分があると、そこから外部ノイズの影響を受ける場合がある。このため、回路に接続されていない側の端部においては、第一の内部導体201および第二の内部導体202を確実にシールドしておくことが好ましい。
【0051】
図12は、センサ電線10の端部のうち回路に接続されていない側の端部について、絶縁部材および導体部材を施した一例を示す図である。この図では、端部に対して絶縁部材271、273、導体部材274、カバー部材275が適用されているが、各段階が理解しやすいよう、
図12(A)から(E)までが段階的に示されている。
【0052】
図12(A)では、第一の内部導体201、第二の内部導体202、外部シールド導体203が露出した端部が示されている。
図12(B)には、
図12(A)で示す第一の内部導体201ごと第一の絶縁被覆204までが絶縁部材271で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材271が第一の絶縁被覆204まで覆われており、第一の内部導体201を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
【0053】
図12(C)には、
図12(B)で示す状態から、絶縁部材271および第二の内部導体202ごと第二の絶縁被覆205までが絶縁部材273で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材273が第二の絶縁被覆205まで覆われており、第二の内部導体202を露出させずに他の導体から確実に絶縁した状態とすることができる。
【0054】
図12(D)には、
図12(C)で示す状態から、絶縁部材273ごと外部シールド導体203までが導体部材274で覆われた様子が示されている。この例では、外部シールド導体203と導体部材274の電位は同じになる。この導体部材274により、第一の内部導体201および第二の内部導体202がシールドされ、外部ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0055】
図12(E)には、
図12(D)で示す状態から、導体部材274ごとシース230までがカバー部材275(シース230と同様の素材)で覆われた様子が示されている。この例では、絶縁部材271、273および導体部材274が設けられた端部を保護することができる。なお、このカバー部材275を熱収縮(あるいは熱融着)する素材で構成しておき、端部を覆った状態で加熱することで密着させてもよい。
【0056】
なお、上記の例で説明した絶縁部材271、273は、絶縁体の素材(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)であればよい。また、導体部材274は導電性の素材(例えば、アルミ、銅、錫、あるいは複数材料による合金、等)であればよい。また、導体部材274の形状についても、フィルム状やメッシュ状の他、筒状の棒端子を用いてもよく、その形状が限定されるものではない。
【0057】
なお、上記の例で説明した絶縁部材271、273、導体部材274、カバー部材275は、カバー部材275だけを用いたり、導体部材272だけを他の導体から絶縁する絶縁部材を用いたりする、といったように、同じ構成である必要はない。また、上記の例に限らず、例えば、シース230を除く端部が平面状である場合には、このシース230を除く端部を絶縁部材で覆い、その上を外部シールド導体203と接するように導体部材で覆い、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。また、第一の内部導体201、第一の絶縁被覆204、第二の内部導体202、第二の絶縁被覆205までを、外部シールド導体203よりも短く切断し、これらを絶縁した上で外部シールド導体203で包み、さらにカバー部材を設ける、といった構成であってもよい。すなわち、導体同士の絶縁およびシールドをより確実にする構成であればよく、その構成が限定されるものではない。
【0058】
[第二実施形態の変形例1]
図10で説明したセンサ電線13は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の内部導体202を、第二の絶縁被覆205で覆う構成を採用しているが、この構成に限らず、例えば、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と、第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202のそれぞれが設け、さらにこれらの外側を外部シールド導体203で覆う構成としてもよい。
図13は、この構成を採用したセンサ電線14の構造を示す断面図である。このセンサ電線14は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202を有し、さらにこれらの外側に設けられた外部シールド導体203を有する。第一の内部導体201、第二の内部導体202、および外部シールド導体203は互いに絶縁されている。さらに外部シールド導体203の外側にはシース230が設けられている。なお、
図10のセンサ電線13とは、第二の絶縁被覆205が設けられた位置が異なっている。この断面図においては第一の絶縁被覆204、第二の絶縁被覆205、および外部シールド導体203の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。なお、
図10のセンサ電線13では、外部ノイズの影響を抑えるために第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と第二の内部導体202をより合わせているが、このセンサ電線14では、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202をより合わせた構成となっている。
【0059】
また、第二の絶縁被覆205は、第一の絶縁被覆204と同じ素材、構成の被覆であって、圧電性を有しないものを採用している。すなわち、第二の絶縁被覆205は、第一の絶縁被覆204とは圧電性の有無が異なるものである。なお、第一の絶縁被覆204と同じ素材に限らず、例えば絶縁体の樹脂(例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、等)のような第一の絶縁被覆204と異なる素材を用いてもよい。
【0060】
図14は、
図13に示すセンサ電線14を用いたセンサ回路25を示す図である。このセンサ回路25は、第二の絶縁被覆205の位置以外は
図11に示すセンサ回路24と同じ構成である。上記のセンサ回路25においてセンサ電線14に対して外力が加えられると、圧電性を有する第一の絶縁被覆204が変形し、その圧電効果によって第一の内部導体201の電位が変動する。一方、第二の絶縁被覆205は圧電性を有しないため、第二の内部導体202においては外力に応じた電位の変動が生じない。結果として、センサ電線14に対して外力が加えられると第一の内部導体201と第二の内部導体202の電位差が変動し、この電位差が差動増幅器250によって増幅されて出力される。すなわちセンサ回路25は、センサ電線14にかかる外力に基づく信号を出力するセンサとしての機能を有する。
【0061】
また上記のセンサ回路25においては、外力に基づく信号に対する外部ノイズの影響を抑えるように構成されている。まず、第一の内部導体201と第二の内部導体202は、グランドに接続された外部シールド導体203によって囲まれており、外部ノイズによって電位が変動しにくくなるように構成されている。さらに、外部ノイズが外部シールド導体203を通過してしまっても、内側にある第一の内部導体201および第二の内部導体202の双方がこのノイズによる影響を受け、これらの内部導体同士で同様の電位の変動が生じる。上記センサ回路25では、第一の内部導体201と第二の内部導体202の電位差を増幅することで、外部ノイズの影響による電位の変動分を相殺するように構成されている。なお、外部ノイズの影響による電位の変動分をより効果的に相殺するにあたっては、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202の長さや太さ、静電容量(絶縁被覆の誘電率および厚さ)、インピーダンス、シールドのされ具合等、電気的・物理的な条件が揃っていることが好ましい。
【0062】
上記説明したようにセンサ回路25では、センサ電線14に対して外力が加えられた際に第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差が生じる一方、外部ノイズの影響による第一の内部導体201および第二の内部導体202の電位差についてはこれを抑えることができる。この構成により、外部ノイズの影響を抑えつつ、外力に基づく信号を得ることができる。
【0063】
なお、外部シールド導体203の接地の状況によってはグランド電位が変動する場合があるが、上記説明したセンサ回路25ではグランドとの電位差ではなく第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を用いているため、グランド電位の変動による影響を抑えることができる。
【0064】
[第二実施形態の変形例2]
図13で説明したセンサ電線14は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202の双方が、外部シールド導体203によって仕切られた一つの空間内に収められた構成となっている。しかし、センサ電線の構成はこれに限られるものではなく、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202が、それぞれ外部シールド導体203によって仕切られた別々の空間内に収められた構成であってもよい。
図15に示すセンサ電線15はこのような構成の一例であり、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202が、それぞれ別の外部シールド導体203A、203Bに覆われた構成となっている。なお、外部シールド導体203Aおよび第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と、外部シールド導体203Bおよび第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202については、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらをより合わせた構成としてもよい。
【0065】
図16は、
図15に示すセンサ電線15を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
図16のセンサ回路26では、二つの外部シールド導体203A、203Bがそれぞれグランドに接続されていること以外は
図14に示すセンサ回路25と同じ構成であり、
図14に示すセンサ回路25と同様の効果を奏する。なお、
図15に示すセンサ電線15では、二つの外部シールド導体203A、203Bが接しているためいずれかをグランドに接続した構成としてもよい。また、二つの外部シールド導体203A、203Bが絶縁された構成としてもよく、この場合には
図16に示すようにいずれの外部シールド導体203もグランドに接続した構成とすればよい。
【0066】
[第二実施形態の変形例3]
図10で説明したセンサ電線13や
図13で説明したセンサ電線14は、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201が一つの構成であったが、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201を複数設けた構成としてもよい。
図17はこのような構成の一例であって、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201を二つ設けたセンサ電線16の構造を示す断面図である。このセンサ電線16では、第一の内部導体201A、201Bのそれぞれから外力に基づく信号が出力される。この断面図においては第一の絶縁被覆204A、204B、第二の絶縁被覆205、および外部シールド導体203の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。なお、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201を複数設けるにあたっては、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらをより合わせた構成としてもよく、第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202とより合わせた構成としてもよい。さらに、例えば第一の絶縁被覆204A、204Bの厚さを異ならせる、あるいは素材を異ならせるといったように、外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体201のそれぞれで異なるように構成してもよい。また、
図17に示すセンサ電線16では、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202がすべて外部シールド導体203によって仕切られた一つの空間に収められた構成となっているが、
図15の例で説明したように、それぞれ外部シールド導体203によって仕切られた別の空間に分けて収められた構成であってもよい。
【0067】
図18および
図19は、
図17に示すセンサ電線16を用いたセンサ回路の一例を示す図である。
図18に示すセンサ回路27では、複数の第一の内部導体201A、201Bの出力を合わせて増幅する構成を採用しており、外力に対する感度を高めることができる。一方
図19に示すセンサ回路28では、複数の第一の内部導体201A、201Bのそれぞれに対し、第二の内部導体102との電位差を増幅して複数の信号を出力する構成となっている。外力に対する電位の変動(センサ感度)が第一の内部導体201A、201Bのそれぞれで異なる場合に
図19のセンサ回路28の構成を採用した場合、外力に合わせて適切な信号を用いることができ、ダイナミックレンジを大きくとることができる。
【0068】
[第二実施形態の変形例4]
図13のセンサ電線14の説明において、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201と第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202の長さや太さ、静電容量、インピーダンス、シールドのされ具合等、電気的・物理的な条件が揃っていることが好ましい点について述べたが、このような電気的・物理的な条件を揃えた組を採用する場合、その数は一つに限られるものではなく、複数設けてもよい。この場合、外力に対して生じる第一の内部導体201の電位の変動(センサ感度)が、各組において同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
図20に示すセンサ電線17は、第一の内部導体201と第二の内部導体202の組を二つ設けた例を示す断面図である。この
図20では左側と上側にそれぞれ第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201が配置され、右側と下側にそれぞれ第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202が配置されている。二つある第一の内部導体201は、これらを覆う第一の絶縁被覆204の厚さがそれぞれ異なっている。具体的には、
図20の左側に位置している第一の絶縁被覆204Aよりも、上側に位置している第一の絶縁被覆204Bの方がより厚くなっている。これにより、上側に位置している第一の内部導体201Bの方が、左側に位置している第一の内部導体201Aよりも、外力に対して生じる電位の変動(センサ感度)が高くなっている。この断面図においては第一の絶縁被覆204A、204B、第二の絶縁被覆205A、205B、および外部シールド導体203の間に隙間があるが、この隙間には介在物が充填されている。
【0070】
なお、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202を複数設けるにあたっては、外部ノイズの影響を抑えるためにこれらをより合わせた構成としてもよい。このとき例えば、後述する第一の組および第二の組のそれぞれをより合わせた後でさらにこれらをより合わせる、といったように、段階的により合わせてもよく、より合わせ方が限定されるものではない。また、
図20に示すセンサ電線17では、第一の絶縁被覆204で覆われた第一の内部導体201、および第二の絶縁被覆205で覆われた第二の内部導体202がすべて外部シールド導体203によって仕切られた一つの空間に収められた構成となっているが、
図15の例で説明したように、それぞれ外部シールド導体203によって仕切られた別の空間に分けて収められた構成であってもよい。
【0071】
二つある第二の内部導体202のうち、右側にある第二の内部導体202Aは、左側にある第一の内部導体201Aにおける外部ノイズの影響を相殺するために設けられたものである。第一の内部導体201Aと第二の内部導体202Aは同じ構成のものである。また、第一の絶縁被覆204Aと第二の絶縁被覆205Aは、第一の絶縁被覆204Aが圧電性を有している(分極処理が施されている)のに対し、第二の絶縁被覆205Aは圧電性を有しない(分極処理が施されていない)点が異なるが、その素材や厚さは同じ構成のものである。すなわち、第一の絶縁被覆204Aで覆われた第一の内部導体201Aと、第二の絶縁被覆205Aで覆われた第二の内部導体202Aは、圧電性の有無を除き、電気的・物理的な条件を揃えたものである。なお以下の説明では、これらの第一の絶縁被覆204Aで覆われた第一の内部導体201Aと、第二の絶縁被覆205Aで覆われた第二の内部導体202Aの組を第一の組と称する。
【0072】
二つある第二の内部導体202のうち、下側にある第二の内部導体202Bは、上側にある第一の内部導体201Bにおける外部ノイズの影響を相殺するために設けられたものである。第一の内部導体201Bと第二の内部導体202Bは同じ構成のものである。また、第一の絶縁被覆204Bと第二の絶縁被覆205Bは、第一の絶縁被覆204Bが圧電性を有している(分極処理が施されている)のに対し、第二の絶縁被覆205Bは圧電性を有しない(分極処理が施されていない)点が異なるが、その素材や厚さは同じ構成のものである。すなわち、第一の絶縁被覆204Bで覆われた第一の内部導体201Bと、第二の絶縁被覆205Bで覆われた第二の内部導体202Bは、圧電性の有無を除き、電気的・物理的な条件を揃えたものである。なお以下の説明では、これらの第一の絶縁被覆204Bで覆われた第一の内部導体201Bと、第二の絶縁被覆205Bで覆われた第二の内部導体202Bの組を第二の組と称する。
【0073】
図21は、
図20に示すセンサ電線17を用いたセンサ回路29を示す図である。このセンサ回路29では、第一の組の第一の内部導体201Aおよび第二の内部導体202Aが差動増幅器250に接続され、第二の組の第一の内部導体201Bおよび第二の内部導体202Bが差動増幅器250に接続され、外部シールド導体203がグランドに接続されている。差動増幅器250は、第一の組と第二の組のそれぞれにおいて、第一の内部導体201と第二の内部導体202との電位差を増幅して出力する。このセンサ回路29では、外力に合わせて適切な信号を用いることができ、ダイナミックレンジを大きくとることができる。
【0074】
[ノイズセンサとしての構成1]
上記説明した第一実施形態と第二実施形態、およびこれらの変形例のセンサ回路20~29は、センサ電線に外力が加えられない状態では、有効に活用することができない。例えば、これらのセンサ回路をベッドや枕に適用して就寝中の患者の状態をモニターする、といった用途を考えた場合、患者がベッドから離れている間はセンサ電線に外力が加えられないため、有効に利用することができない。そこで上記のセンサ回路における差動増幅器への接続を切り替えてノイズセンサとして使用できるようにすることで、利用できる機会を増やすことができる。上記の例では、ベッドに患者が接近した際には外部ノイズが検出されることから、ベッド周辺における動きのデータとして利用することができる。以下、この構成について説明する。
【0075】
上記説明した第一実施形態と第二実施形態、およびこれらの変形例のセンサ回路20~29では、いずれも第一の内部導体101、201と第二の内部導体102、202が差動増幅器150、250に入力され、外部シールド導体103、203がグランドに接続されている(
図3、5、6、8、10、12、14、16、17、19)。外部シールド導体103、203は、第一の内部導体101、201と第二の内部導体102、202を囲んでおり、これらの導体の中では最も外部ノイズの影響を受ける。そこで、これらのセンサ回路20~29において、差動増幅器150、250への入力のいずれか一方を外部シールド導体103、203に切り替えることで、差動増幅器150、250の出力に外部ノイズを反映させることができ、ノイズセンサとして使用することができる。このとき、差動増幅器150、250へのもう一方の入力についてはそのままであってもよいし、グランドに接続してもよい。
【0076】
図22に示すセンサ回路30は上記説明した構成の一例であり、
図3に示すセンサ回路20の一部にスイッチ301を加えたものである。このスイッチ301が初期状態である場合(
図22に示す状態)では、
図3に示すセンサ回路20と同じ構成となっているが、スイッチ301が切り替えられると、第一の内部導体101にかわって外部シールド導体103が差動増幅器150に接続され、ノイズセンサとして使用することができる。
【0077】
また、
図23に示すセンサ回路31は上記説明した構成の一例であり、
図11に示すセンサ回路24の一部にスイッチ301を加えたものである。このスイッチ301が初期状態である場合(
図23に示す状態)では、
図11に示すセンサ回路24と同じ構成となっているが、スイッチ301が切り替えられると、第一の内部導体201にかわって外部シールド導体203が差動増幅器250に接続され、ノイズセンサとして使用することができる。
【0078】
なお、上記
図22、21のスイッチ301については、例えばタイマを用いてスイッチ301の状態を切り替えることでセンサ機能が切り替えられるようにしてもよい。また、マイコン等を用いて、所望の条件に応じてスイッチ301が切り替えられるようにしてもよい。
【0079】
[ノイズセンサとしての構成2]
図22のセンサ回路30および
図23のセンサ回路31では、センサ電線にかかる外力に基づく信号を出力するセンサとしての機能と、ノイズに起因する信号を出力するセンサとしての機能をスイッチ301を用いて切り替える構成について説明した。このうち前者の機能は、第一の内部導体101、201と第二の内部導体102、202の電位差を差動増幅器150、250によって増幅することで実現することができる。また、後者の機能については、第一の内部導体101、201と第二の内部導体102、202のいずれか一方と、外部シールド導体103、203との電位差を差動増幅器150、250によって増幅することで実現することができる。ここで、これらの機能を切り替えずに、双方の機能を有するように構成してもよい。
【0080】
図24に示すセンサ回路32は上記説明した構成の一例であり、
図3に示すセンサ回路20に対し、外部シールド導体103と第二の内部導体102との電位差を増幅して出力する差動増幅器151を加えたものである。このセンサ回路32では、外力に応じた信号と、ノイズに応じた信号の双方を同時に利用することができる。
【0081】
また、
図25に示すセンサ回路33は上記説明した構成の一例であり、
図11に示すセンサ回路24に対し、外部シールド導体203と第二の内部導体202との電位差を増幅して出力する差動増幅器251を加えたものである。このセンサ回路33では、外力に応じた信号と、ノイズに応じた信号の双方を同時に利用することができる。
【0082】
例えば、
図3に示すセンサ回路20や
図11に示すセンサ回路24では、外力に応じた信号が外部ノイズによる影響を受けた場合に、その信号が外力によるものなのか、それとも外部ノイズによるものなのか判断できない場合がある。
図24に示すセンサ回路32や
図25に示すセンサ回路33では、別途追加した差動増幅器151、251の出力によって外部ノイズの影響の度合いが判別でき、信号が外力に応じたものであるかを判断することができる。
【0083】
[その他]
上記説明したセンサ電線およびセンサ回路の構成は一例であり、処理の内容が同じであればよく、その構成について限定されるものではない。例えば、上記のセンサ電線の実施形態では内部導体同士をより合わせることについて説明したが、より合わせる対象が三つ以上ある場合には、例えば三つ編みのように編み込みによってより合わせてもよい。また、センサ電線の導体をメッシュ状に構成する場合、その孔の大きさによっては、内側にノイズが侵入し易くなる問題がある。この場合、その孔の大きさが、問題とするノイズの波長の半分以下となるように構成することで、ノイズが侵入しにくくすることができる。また、上記のセンサ回路の実施形態において、差動増幅器を複数用いずに一の差動増幅器を共有する構成としてもよいし、ノッチフィルタ等を適宜設けてもよい。また、上記のセンサ回路の実施形態では、センサ電線の端部の一方側に差動増幅器を接続する構成について説明したが、センサ電線の両端側ともに同じ差動増幅器に接続する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10、11、12、13、14、15、16、17 センサ電線
101、201 第一の内部導体
102、202 第二の内部導体
103、203 外部シールド導体
104、204 第一の絶縁被覆
105、205 第二の絶縁被覆
130、230 シース
171、173、271、273 絶縁部材
172、174、274 導電部材
175、275 カバー部材
20、21、22、23、24、25、26、27、28、29 センサ回路
30、31、32、33 センサ回路
150、151、250、251 差動増幅器