(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137113
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】コネクタシステムおよびコネクタシステムを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/652 20060101AFI20220913BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01R13/652
H01R43/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022103538
(22)【出願日】2022-06-28
(62)【分割の表示】P 2020545084の分割
【原出願日】2019-02-26
(31)【優先権主張番号】102018202955.5
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トルステン クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】ヴ ラム ニュイェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング パーデ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単に製造可能であり、廉価な材料で製造することができ、ケーシングからコネクタのシールドエレメントへの遮蔽をコネクタシステムの予定された寿命にわたって信頼性よく維持し、ケーシングとコネクタのシールドエレメントとの間の接触抵抗が寿命にわたってできるだけ小さいままであるコネクタシステムを提供する。
【解決手段】コネクタシステムに関する。コネクタシステムは、コネクタ1と、コネクタ1が組み付けられているケーシング20とを有し、ケーシング20は、第1の内壁22を備えた開口21を有し、コネクタ1は、開口21内に少なくとも部分的に突出するシールド金属薄板40を有し、開口21内にリング30が配置されており、リングの外壁31は、開口21の第1の内壁22に電気的に接触し、シールド金属薄板40は、シールド金属薄板40の別の外壁41で、リング30の第2の内壁32に電気的に接触する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタシステムであって、該コネクタシステムは、
コネクタ(1)と、
前記コネクタ(1)が組み付けられているケーシング(20)と、
を有し、
前記ケーシング(20)は、第1の内壁(22)を備えた開口(21)を有し、
前記コネクタ(1)は、前記開口(21)内に少なくとも部分的に突出するシールド金属薄板(40)を有し、
前記開口(21)内にリング(30)が配置されており、該リングの外壁(31)は、前記開口(21)の前記第1の内壁(22)に電気的に接触し、
前記シールド金属薄板(40)は、該シールド金属薄板(40)の別の外壁(41)で、前記リング(30)の第2の内壁(32)に電気的に接触する、コネクタシステム。
【請求項2】
前記リング(30)は、前記開口(21)内に、力結合式または摩擦結合式に取り付けられている、または前記リング(30)は、前記開口(21)内に圧入されている、請求項1記載のコネクタシステム。
【請求項3】
前記リング(30)の前記外壁(31)の第1の平均粗さ(RA1)は、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さい、請求項1または2記載のコネクタシステム。
【請求項4】
前記リング(30)の前記第2の内壁(32)の第2の平均粗さ(RA2)は、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さい、請求項1から3までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項5】
前記シールド金属薄板(40)の前記別の外壁(41)の第3の平均粗さ(RA3)は、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さい、請求項1から4までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項6】
前記シールド金属薄板(40)の前記別の外壁(41)は、コーティングを有し、
前記コーティングは、特に多層に形成されており、
前記コーティングは、特に、銀、金、プラチナ、パラジウム、ニッケル、錫の群から選択されている材料を特に大部分において有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項7】
前記開口(21)の前記第1の内壁(22)は、アルミニウムを含んでいるか、または大部分においてアルミニウムを含んでいる、請求項1から6までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項8】
前記開口(21)の前記第1の内壁(22)は、前記リング(30)の組付け前に、第4の平均粗さ(RA4)を有し、該第4の平均粗さ(RA4)は、10μmよりも大きい、または10μm~50μmであるか、または15μm~30μmである、請求項1から7までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項9】
前記シールド金属薄板(40)の、前記ケーシング(20)の前記開口(21)内に突出する区分は、銅を含んでいる、または大部分で銅を含んでいる、請求項1から8までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項10】
前記リング(30)は、前記ケーシング(20)の前記開口(21)の前記第1の内壁(22)の標準電極電位と、特にコーティングを有しない、前記シールド金属薄板(40)の、前記開口(21)内に突出する前記区分(45)の標準電極電位との間にある標準電極電位を有する材料から構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項11】
前記リング(30)は、鋼、または特殊鋼から形成されている、
または
前記リング(30)は、大部分で鋼または特殊鋼を含んでいる、請求項1から10までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項12】
コネクタシステムを製造する方法であって、
第1の内壁(22)を有する開口(21)を備えたケーシング(20)を提供するステップと、
外壁(31)および第2の内壁(32)を備えたリング(30)を提供するステップと、
前記リング(30)の前記外壁(31)は、前記開口(21)の前記第1の内壁(22)に電気的に接触するように、前記開口(21)内に前記リング(30)を配置するステップと、
別の外壁(41)を有するシールド金属薄板(40)を備えたコネクタ(1)を提供するステップと、
前記シールド金属薄板(40)が少なくとも部分的に前記開口(21)内に突出し、前記別の外壁(41)で前記リング(30)の前記第2の内壁(32)に電気的に接触するように、前記ケーシング(20)に前記コネクタ(1)を配置するステップと
を有する、方法。
【請求項13】
前記リング(30)を前記開口(21)内に圧入する、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタシステムと、コネクタシステムを製造する方法とに関する。
【0002】
先行技術
先行技術からは、たとえば自動車用途のために、複数の電気的なコネクタが知られている。このようなコネクタの1つは、たとえば遮蔽された形式でケーシングに組み付けられていてもよく、ケーシングの内部には、コネクタに電気的に接続されている複数の構成要素が配置されている。このような構成要素は、制御装置構成要素、たとえば、その上に配置された電子的または電気的な構成エレメント(ASICs、抵抗、コンデンサ、コイル等)を備えたプリント基板または電気的な接続部を介して、(たとえば100Mbit/sよりも高い)高いデータストリームを出力するデータ処理モジュールまたは大電流接続部、たとえば電気で動く自動車のインバータのコンタクトであってもよい。このような大電流接続部を介して、たとえば10Aよりも大きな、または50Aよりも大きな電流が流れることができ、12Vよりも大きな、または45Vよりも大きな、または100Vよりも大きな電圧を達成することができる。コネクタとケーシングとの組み合わせは、コネクタシステムと呼ぶことができる。ケーシングおよびコネクタの外周囲をケーシングの内部からの電磁放射からできるだけ分離するか、ケーシングの内部をケーシングおよびコネクタの外周囲からの電磁放射線から分離することが必要となるので、ケーシングの内部は、できるだけ外周囲からの電磁放射線の入射からできるだけ分離しておくことが必要となる。
【0003】
コネクタシステムのコネクタが、相補的な対向コネクタに差し合わされると、ケーシング、コネクタおよび対向コネクタから成るこのアセンブリを、コネクタアセンブリと呼ぶことができる。
【0004】
発明の開示
本発明は、コネクタシステムのケーシングが、有利には廉価かつ良好に熱伝導性かつ遮蔽性の材料から、たとえば金属、たとえばアルミニウムから形成されているという知識を起点とする。シールドエレメント、たとえばコネクタのシールド金属薄板は、たとえば導電性のケーシングに電気的に接触していて、この形式により一貫した遮蔽を生じさせることができると有利であり得る。この場合、ケーシングからシールドエレメントへのできるだけ小さな電気的な接触抵抗を提供すると有利であり得る。なぜならば、大きなシールド電流が発生してしまうからである。
【0005】
しかしアルミニウムは、その表面において、通常は特に良好に導電性ではない酸化アルミニウムを形成してしまう。したがって、コネクタのこのようなシールドエレメントのために銅を使用するか、もしくは主に銅を含んでいる材料を使用すると有利であり得る。
【0006】
このような例示的な材料対では、以下の問題が生じてしまう。一方では、ケーシングの良好に導電性ではない酸化アルミニウム層が、高められた接触抵抗を引き起こしてしまう。他方では、アルミニウムと銅の互いに異なる電子化学的な標準電極電位に基づいて、たとえば僅かな空気湿分がある場合に既に、ケーシングとシールドエレメントとの境界面においていわゆる接触腐食が発生してしまう。この接触腐食は、接触抵抗を局所的に高めてしまう。さらに、たとえばアルミニウムのような軟らかい材料に大きな圧力が加えられた場合に、この軟らかい材料は、押し退けられてしまう。これら両方の効果(接触腐食および過度に強い接触力または点状に負荷を加えられた場合の押し退け)は、時間が経過するにつれて、小さな接触抵抗を有する接触抵抗面の部分が減少することにつながってしまう。したがって、接触抵抗が不都合に増大する。
【0007】
したがって、簡単に製造可能であり、廉価な材料で製造することができ、ケーシングからコネクタのシールドエレメントへの遮蔽をコネクタシステムの予定された寿命にわたって信頼性よく維持し、ケーシングとコネクタのシールドエレメントとの間の接触抵抗が寿命にわたってできるだけ小さいままであるコネクタシステムを提供するという需要が生じている。この需要は、特に単心線シールドにおいて生じている。
【0008】
本発明の利点
この需要は、独立請求項に記載の本発明の対象により満たすことができる。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、コネクタシステムが提案される。コネクタシステムは、
-第1のコネクタと、
-コネクタが組み付けられ、もしくは取り付けられ、もしくは固定され、もしくは配置されているケーシングと
を有し、
ケーシングが、第1の内壁を備えた開口を有し、コネクタが、開口内に少なくとも部分的に突出するシールド金属薄板を有している。開口内には、リングが配置されており、このリングの外壁は、開口の第1の内壁に電気的に接触する。シールド金属薄板は、このシールド金属薄板の別の外壁で、リングの第2の内壁に電気的に接触する。
【0010】
換言すると、軸方向が、開口の中心軸線により規定されている場合、半径方向外方から見て、構成要素の以下の順序が生じる。すなわち、まず開口の内壁、次いで内方に向かって外壁および第2の内壁を備えたリングが続き、リングに続いて最も内側のエレメントとしてシールド金属薄板の第1の区分が続く。このシールド金属薄板の別の外壁は、リングの内壁に接触する。これら3つのエレメント(開口内壁、リング、シールド金属薄板)は、たとえば互いに直接に隣接して配置されていてもよく、たとえば間隙なしに、つまり直接に隙間なしに接触していてもよい。これにより、有利には特に大きな接触面、ひいては特に小さな接触抵抗が生じる。
【0011】
これにより、有利には、特に簡単な組付けをもたらすことができる。さらに有利には、これにより、特に大きな接触面、ひいては特に小さな接触抵抗を引き起こすことができる。なぜならば、リングは、比較的小さく、かつ簡単に形成することができる部分として、極めて廉価に、かつ比較的簡単にその寸法に関して高い精度で製造することができるからである。したがって、ケーシングの開口は、比較的粗くてもよく、つまり、たとえば開口の直径の比較的大きな公差を伴って製造されていてもよく、かつ/またはたとえば第1の内壁において大きな粗さを有していてもよく、たとえば射出成形プロセスまたは溶融液鋳造プロセスまたはダイカストプロセス(たとえばアルミダイカスト)から直接に用いられる。開口内におけるリングの配置により、一方では開口の第1の内壁に対する良好かつ大きな接触面を引き起こすことができ、同時にリングの比較的正確な公差により、シールド金属薄板がリングの第2の内壁に常に確実かつ信頼性よく接触することが確保されていてもよい。最終的に、リングもしくはリングの材料は、ケーシングに対する接触面においても、シールド金属薄板に対する接触面においても接触腐食が生じないように、選択されていてもよい。
【0012】
コネクタは、上述のように、ケーシングの内部に配置されている構成要素のための外方に向かった一種の電気的なインタフェースを形成することができる。
【0013】
コネクタは、たとえばコネクタケーシングおよび/または接触ピンもしくは接触ブレードを有していてもよい。
【0014】
コネクタは、まず、ケーシングとは別個のエレメントとして形成されていてもよく、製造工程の途中に初めてケーシングに組み付ける、たとえば被せ嵌めるか、もしくは差し込むことができる。コネクタは、次いでたとえばねじ締結されるか、リベット締結されるか、または接着されてもよい。コネクタケーシングは、たとえばプラスチックから製造されていてもよく、たとえば熱可塑性のプラスチック、たとえばポリアミド、ポリエチレン、プリプロピレンまたは別のプラスチックから射出成形されていてもよい。
【0015】
シールド金属薄板は、一種のクラウンとして形成されていてもよい。換言すると、シールド金属薄板は、基部エレメントを有していてもよく、基部エレメントから複数のアームが、対向コネクタの、コネクタ内へのもしくはコネクタ上への差込方向とは反対方向で突出することができる。差込方向は、たとえば軸方向に対して平行に延びていてもよい。基部エレメントは環状に閉じて形成されていてもよい。ケーシングの開口内に突出するシールド金属薄板の第1の区分を形成することができる。リングの内壁に電気的に接触するシールド金属薄板の別の外壁は、基部エレメントに属していてもよい。別の外壁には、より良好かつ持続的もしくは信頼性のよい接触のために、接触点が、たとえば押込み成形部により形成されていてもよい。シールド金属薄板は、ケーシングにおけるコネクタの組付け時にリング内にたとえば締り嵌めにより、または力結合式または摩擦結合式に配置することができ、たとえば圧入することができる。
【0016】
当然ながら、ケーシングが、複数の、少なくとも2つの開口を有していてもよい。これらの開口内には、たとえばそれぞれ1つのリングが配置されており、コネクタは、これに対応するように、対応する個数の(または少ない)シールド金属薄板を有している。シールド金属薄板は、少なくとも第1の区分で部分的に複数の開口のうちのそれぞれ1つの開口内に突出する。
【0017】
リングが開口内で力結合式または摩擦結合式に取り付けられているか、またはリングが開口内に圧入されていることにより、有利にはリングとケーシングとの間の特に信頼性のよい接触が寿命にわたって大きな接触面積で確保されている。同時にこのような取付け形式により、場合によっては存在する非導電性の表面、たとえば酸化物層または汚れ、オイル、グリース等が突破され、これによりリングとケーシングとの間の接触抵抗が低下する。これにより、最終的に、リングと開口の第1の内壁との間の接触箇所への流動性の媒体、たとえば空気もしくは酸素の侵入も困難にするか、または阻止することができるので、電気的な接続は持続的に小さな抵抗を有している。
【0018】
リングの外壁の第1の平均粗さが、1.0μmよりも小さく、好適には0.5μmよりも小さく、特に好適には0.35μmよりも小さく、極めて特に好適には0.3μmよりも小さいことにより、有利には、開口の第1の内面とリングとの間で特に大きな接触面が生じ、ひいては特に小さな接触抵抗が生じるようになる。リングの外壁の、このように形成された平滑な表面により、さらに有利には、開口の場合によっては粗い、たとえば10μmよりも大きな平均粗さを有する第1の表面が、リングの第1の外壁によっていわば削り取られるか、もしくは研磨され、この形式によって特に良好な接触もしくは特に低い接触抵抗が生じる。なぜならば、たとえば開口の第1の内壁の、半径方向内方に向かって突出する、大きな平均粗さに寄与する「尖端部」が削り取られると、これによってあらゆる表面汚れもしくはあらゆる酸化物層が削り取られ、電気的な接触抵抗が低下するからである。さらに、リングの外壁の、このように選択された小さな粗さにより、開口の第1の内壁の、場合によっては存在するコーティングを損傷するか、もしくは引っ掻き傷をつけてしまうリスクが最小限にされる。したがって、リングは、たとえば、第1の内面が(たとえば貴金属により)高価値にコーティングされていて引っ掻き傷をつけてはならないシステムのためにも使用することができる。これによりリングは、モジュール式に使用可能であり、製造時のスケールメリットを生じさせることができる。
【0019】
平均粗さは、概して、記号Raで表される。
【0020】
リングの第2の内壁の第2の平均粗さが、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さいことにより、有利には、シールド金属薄板の可能なコーティングを損傷するか、または破壊するか、または引っ掻き傷をつけるリスクが低減されるようになる。さらに、リングの第2の内壁と、シールド金属薄板との間の出来るだけ大きく平滑な接触面、ひいては小さな電気的な接触抵抗が生じる。
【0021】
シールド金属薄板の別の外壁の第3の平均粗さが、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さいことにより、有利には、リングの第2の内壁を損傷し、または破壊し、または引っ掻き傷をつけるリスクが低減されるようになる。さらに、リングの第2の内壁と、シールド金属薄板との間の出来るだけ大きく平滑な接触面、ひいては小さな電気的な接触抵抗が生じる。
【0022】
シールド金属薄板の別の外壁がコーティングを有していることによって、有利には、シールド金属薄板の電気的な接触抵抗を持続的に低く維持し、かつ/またはシールド金属薄板を、たとえば空気に対する暴露の結果としての腐食から保護することができる。差込力も減じることができる。さらに、有利には、コーティングに応じて、コーティングされていないシールド金属薄板の表面と比べて、表面を硬化することができる。このようなコーティングは、たとえば多層に形成されていてもよい。これは、シールド金属薄板材料の最も外側の層と、シールド金属薄板材料(および/またはリング材料)との間に、たとえば付着促進剤として働くことができる材料の1つまたは複数の層が被着されていることにより、有利にはシールド金属薄板(および/またはリング)上の最も外側の層の特に良好な付着を可能にする。この形式により、シールド金属薄板材料と、最も外側の層もしくはリングとの間の標準電極電位の差、かつケーシングに対する標準電極電位の差も段階的に減じることができ、このことは接触腐食のリスクを低下させる。
【0023】
たとえばコーティングは、銀、金、プラチナ、パラジウム、ニッケル、錫の群から選択されている材料を、たとえば大部分において有していてもよい。たとえば、コーティングは、内方から外方に向かって見てまずニッケルを(直接にシールド金属薄板もしくはリング上に)有していてもよく、次いで銀が(外方に向かって)、つまりニッケル上に被着される。
【0024】
基本的には、代替的または付加的に、リングの内面および/または外面がコーティングを有していることも規定されていてもよい。この形式により、適切なコーティング順序により、リング材料と外側および/または内側の接触パートナとの間の標準電極電位の差を減じることができる。
【0025】
開口の第1の内壁がアルミニウムを含んでいるか、または大部分でアルミニウムを含んでいることにより、特に単純で廉価な製造が可能にされ、開口の領域において特に良好な遮蔽が保証されている。
【0026】
たとえば、ケーシングの大部分がアルミニウムから製造されているか、またはアルミニウムを有する合金から製造されていてもよく、もしくは大部分でアルミニウムを含んでいてもよい。
【0027】
開口の第1の内壁が、リングの組付け前に、第4の平均粗さを有していて、この第4の平均粗さが、10μmよりも大きく、または10μm~50μmであるか、または15μm~30μmであることにより、有利には、ケーシングを、別の加工なしに製造直後に、たとえばケーシングの射出成形、溶融液鋳造またはダイカストの直後に使用することができるようになる。後加工が必要なくなるので、ケーシングは特に廉価に製造可能である。開口内へのリングの配置により、有利には、第1の内壁の表面上の、場合によっては存在する良好に電導性でない層を、特に良好に、もしくは特に多くの箇所で削り落とすか、削り取ることができる。次いで、開口内へのリングの配置(または圧入)後に、電気絶縁層(たとえば酸化物または汚れ)を有しない大きな接触面が存在している。大きな粗さにより、このような削り取りプロセスのための確率が、少なくとも幾つかの箇所において著しく高められる。同時に、これにより、リングがその外壁において大きな粗さを有している必要がなく、平滑な第1の内面の表面を引っ掻かない。したがって、リングは、たとえば、第1の内面が(たとえば貴金属により)高価値にコーティングされていて、引っ掻き傷をつけられてはならないシステムのためにも使用することができる。
【0028】
シールド金属薄板の、ケーシングの開口内に突出する区分が銅を含んでいる、または大部分で銅を含んでいることにより、コネクタもしくはシールド金属薄板の特に簡単かつ廉価な製造が可能にされる。さらに、銅(もしくは銅の合金)は、特に良好な導電性を有していて、したがって特に小さな電気抵抗を有している。さらに、銅は、特に良好な熱伝導性を有している。したがって、シールドの強い加熱が生じることなしに、高いシールド電流も問題なく導出することができる。
【0029】
リングが、ケーシングの開口の第1の内壁の標準電極電位と、特にコーティングを有しない、シールド金属薄板の、開口内に突出する区分の標準電極電位との間にある標準電極電位を有している材料から構成されていることにより、有利には、接触腐食のリスクが減じられる。換言すると、これにより、ケーシングもしくは開口の第1の内壁とシールド金属薄板との間の接触抵抗が時間の経過につれ増大するリスクを減じることができる。特に、アルミニウム(ケーシング)と銅(シールド金属薄板)の材料対では、リングの介在により、シールドの持続性を著しく高めることができる。
【0030】
リングが、鋼または特殊鋼から形成されているか、またはリングが大部分で鋼または特殊鋼を含んでいることにより、特に廉価な製造が可能にされる。特殊鋼もしくは鋼は、たとえばアルミニウムと銅との間、もしくはアルミニウムと銀との間にある標準電極電位を有している。同時に特殊鋼もしくは鋼は、錆なしに製造することができるので、リング自体の腐食を高い空気湿分においても阻止することができる。最終的に、鋼もしくは特殊鋼は、比較的硬い材料であるので、このように製造されたリングは、問題なしに持続的に開口内に導入され、たとえば圧入工程により導入される。ケーシングの開口は、たとえば、その内径において比較的大きな公差を有していてもよく、リングの硬い材料により、このリングは、たとえば、開口の(製造公差帯範囲内で)最大の第1の内径と同一の大きさであるか、または最大の第1の内径よりも大きな外径を有している。ケーシングがリングに比べて柔らかい材料を有している場合、たとえば圧入工程により、リングを常に確実かつ固定的に開口内に配置し、もしくは組み付け、もしくは取り付けることができる。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、コネクタシステムを製造するための方法が提案される。方法は、
-第1の内壁を有する開口を備えたケーシングを提供するステップと、
-外壁および第2の内壁を備えたリングを提供するステップと、
-リングの外壁が、開口の第1の内壁に電気的に接触するように、開口内にリングを配置するステップと、
-別の外壁を有するシールド金属薄板を備えたコネクタを提供するステップと、
-シールド金属薄板が少なくとも部分的に開口内に突出し、別の外壁でリングの第2の内壁に電気的に接触するように、ケーシングにおいて、もしくはケーシング内に、もしくは少なくとも部分的にケーシング内にコネクタを配置するステップと
を有している。
【0032】
これにより、有利には、コネクタシステムの特に簡単な製造が可能にされ、特に小さな電気的な接触抵抗が生じ、接触腐食を阻止する可能性が生じる。
【0033】
リングを開口内に圧入することにより、有利には開口内におけるリングの特に持続的な座着が生じる。さらに、リングと、開口の第1の内面との間で特に大きな接触面が達成される。
【0034】
本発明の別の特徴および利点は、添付の図面に関連した、本発明を限定するものとして設計されていない例示的な実施形態の以下の説明から当業者にとって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】差し合わせられていない状態におけるコネクタアセンブリの部分的に断面した斜視図である。
【
図2】
図1に示したコネクタアセンブリのコネクタシステムのケーシングの詳細を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示したコネクタシステムの分解斜視図である。
【
図4a】
図1に示したコネクタシステムの横断面図である。
【
図5】差し合わせられた状態における、
図1に示したコネクタアセンブリの横断面図である。
【0036】
図1は、差し合わせられていない状態におけるコネクタアセンブリ200の部分に断面した斜視図を例示的に示している。コネクタアセンブリ200は、コネクタシステム100と、対向コネクタ60とから構成され、対向コネクタ60は、差込方向Eに沿ってコネクタシステム100のコネクタ1上に被せ嵌めるか、またはコネクタ1内に差し込むことができる。
【0037】
図1では、コネクタ1のうち、外壁3を備えたコネクタケーシング2しか図示されていない。コネクタケーシング2からは、
図1では差込方向Eに対して平行に延びる軸方向Aに対して横方向の半径方向Rで、互いに反対を向いた2つのピン4が突出している。軸方向A周りに、回転方向Uが延びている。
【0038】
対向コネクタ60は、対向コネクタケーシング61を有している。対向コネクタケーシング61には、レバー62が回転可能に支持されて配置されている。レバー62は、その軸の領域において、両側でそれぞれ1つのスライドガイド63を有している。これらのスライドガイド63内には、差込方向Eに沿ってコネクタ1と対向コネクタ60とが互いに嵌め合わされるときに、コネクタ1のそれぞれ1つのピン4が係合することができる。したがって、レバー62の回転によって、回転運動を、差込方向Eに沿った差込運動に変換することができ、したがって、組立工が差し合わせのために加えなければならない力を減じることができる。
【0039】
対向コネクタ60からは、差込方向Eとは反対方向で2つの電気的な線路70が突出している。対向コネクタ60の内部では、それぞれの線路70のために、線路70の内側導体71(
図1では見えない)が接触エレメント78(
図1では見えない)に接続されている。この接触エレメント78は、コネクタ1の対応する接触エレメント5(
図1では見えない)に接触するために適して形成されている(たとえば
図5を参照)。
【0040】
コネクタシステム100は、
-
図1ではたとえばプラスチックから成るコネクタケーシング2を有する、既に述べたコネクタ1と、
-コネクタ1が組み付けられている、たとえば、差し込まれ、次いでねじ締結されるか、またはリベット結合部により、または接着結合部または溶接結合部により着脱可能または着脱不能に取り付けられている、ケーシング20と
を有している。
【0041】
コネクタシステム100の別の構成要素もしくはエレメントを良好に図示することができるように、ケーシング20は、
図1では単に示唆され、断面して図示されている。ケーシング20は、
図1では、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されていてもよい。
【0042】
ケーシング20は、この実施例では、それぞれ第1の内壁22を備えた2つの開口21を有している。しかしケーシング20に、まさに1つの開口21しか設けられていなくてもよく、または2つよりも多い開口21が設けられていてもよい。
【0043】
ケーシング20は、内部28を有している。内部28には、別の構成要素、たとえばプリント基板、制御装置、データ処理モジュール、インバータの電気的な接続部等が配置されていてもよい。好適には、ケーシング20の内部28はケーシングの外周囲29に対して電気的に遮蔽されている。ケーシング20の内部28には、2つの接触ピン5の第1の遠位の端部5aも突出している(
図3~
図5を参照)。これらの接触ピン5は、両開口21のうちそれぞれ1つの開口21を貫通し、第2の遠位の端部5bにおいて(
図4および
図5を参照)電気的な線路70のうちのそれぞれ1つの線路70に電気的に接続するか、もしくは接触することができる。接触ピン5は、ケーシング20の内部28において、たとえばデータ線路または大電流用途等のための電気的な接続部に接続させることができる。電気的な接続部は、たとえば少なくとも1mm
2または少なくとも10mm
2、または少なくとも20mm
2の横断面を有していてもよく、これにより、少なくとも1A、または少なくとも10A、または少なくとも50Aの電流を伝達することができる。
【0044】
コネクタ1は、この
図1では見えないシールド金属薄板40を有している。このシールド金属薄板40は、少なくとも部分的に開口21内に突出する(
図3~
図5を参照)。開口21内にはリング30が配置されている。リング30は、このリング30の外壁31で、開口21の第1の内壁22に電気的に接触する。
図1では見えないシールド金属薄板40は、このシールド金属薄板40の別の外壁41で、リング30の第2の内壁32に電気的に接触する。これにより、ケーシング20からシールド金属薄板40までの一貫した遮蔽が保証される。この遮蔽は、次いで、シールド金属薄板と対向コネクタのシールド金属薄板90(
図5を参照)との電気的な接続により、かつ対向コネクタのシールド金属薄板90から線路70の遮蔽導体73へと隙間なしに形成することができる。この場合、ここではたとえば単心線シールドもしくは個別線路シールドが存在し、総シールドは存在していない。接触ピン5は、それぞれ1つのシールド金属薄板40により個別に遮蔽されている。
【0045】
リング30は、この実施形態では、たとえば圧入部材として形成されている。リング30は、たとえば開口21内に力結合式もしくは摩擦結合式に配置されているか、もしくは圧入されていてもよく、これにより、開口21の第1の内壁22に対する大きな接触面積を有していることができる。これにより、小さな電気的な接触抵抗が生じる。
【0046】
リング30は、たとえば鋼または特殊鋼から形成されていてもよい。ケーシング20もしくは開口21の第1の内壁22は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されていてもよい。この材料対の使用により、接触腐食のリスクは減じられている。これにより、電気的な接触抵抗は寿命にわたって小さなままである。
【0047】
リング30の外壁31の第1の平均粗さRA1は、1.0μmよりも小さく、好適には0.5μmよりも小さく、特に好適には0.35μmよりも小さく、極めて特に好適には0.3μmよりも小さい。したがって、リング30の外壁31は、極めて平滑である。
【0048】
開口21の第1の内壁22は、たとえば、リング30の組付け前には、第4の平均粗さRA4を有している。この第4の平均粗さRA4は、10μmよりも大きく、または10μm~50μmであるか、または15μm~30μmである。たとえば、開口21の内壁22は、ケーシングの鋳造により直接に形成されていて、つまり加工されていない。
【0049】
今、平滑な外壁31および硬い材料を備えたリング30が開口21内に圧入されると、リング30は、開口21の第1の内壁22における全ての「尖端部」を削り落すか、もしくは削り取り、これにより、たとえば酸化物層またはグリースまたはオイルあるいは汚れのようなあらゆる非導電性の表面層を削ぎ落とす。これにより、特に大きな接触面が生じ、これにより特に小さく、かつ持続的に小さな接触抵抗が生じる。
【0050】
図2は、
図1に示したコネクタアセンブリ200のコネクタシステム100のケーシング20の詳細の斜視図を示している。ケーシング内には、2つの開口21の周囲に、かつ2つの開口21の間に、合計で5個の取付け開口25が配置されている。これらの取付け開口25において、もしくはこれらの取付け開口25内に、コネクタケーシング2を、たとえばねじ締結またはリベットによって取り付けることができる。
【0051】
ケーシング20は、ケーシング壁24内に2つの開口21を有している。ケーシング壁24は、2つの開口の箇所において、それぞれ完全かつ通路状に貫通されている。しかし、
図2では例示的に円形に形成された開口21の縁部は、差込方向Eもしくは軸方向Aに沿って見て二段階に形成されている。換言すると、外周囲29から見て、開口21は、
図2では、まず第1の直径D1を有している。次いで、開口21の直径は僅かに、たとえばリング30のリング厚DRの量だけ減少して第2の直径D2になる。リング厚は、たとえば、100μm~3mmの範囲であり、好適には500μm~1.5mmの範囲である。したがって、開口21内には、開口21に挿入もしくは圧入されたリング30もしくは開口21内に配置されたリング30が載置するソケットが生じる。これは、開口21内でのリング30の特に簡単な組付けを可能にする。なぜならば、リング30は、ケーシング20の内部28に落ちてしまわないからである。リング30の外径としての第3の直径D3(
図2には図示せず)は、たとえば室温で(特に小さな圧力では)、開口21の第1の直径D1と同じ大きさであってもよく、または室温では、開口21の第1の直径D1よりも僅かに大きく、たとえば1μm~1000μmだけ大きく、好適には10μm~500μmだけ大きく、極めて特に好適には20μm~250μmだけ大きくてもよい。この形式により、リング30は、締り嵌めにより開口21内に保持されていてもよい。
【0052】
この
図2では、リング30の外壁31および第2の内壁32ならびに開口21の第1の内壁22を良好に確認することができる。
【0053】
図3は、
図1に示したコネクタシステム100の分解図を斜視図で示している。接触ピン5は、ここではまだコネクタケーシング2内に挿入されていない。コネクタケーシング2の、ケーシング20の内部28に面した端部には、それぞれ1つの取付けエレメント7のための2つの収容部6が形成されている。取付けエレメント7は、
図3では例示的に、ねじナットとして図示されている。取付けエレメント7は、収容部6内に挿入され、次いで、接触ピン5の第1の遠位の端部5aがコネクタケーシング2内に押し込まれる。コネクタ1がケーシング20に配置されている場合に、取付けエレメント7において、たとえばインバータの電気的な接続部またはケーシング20の内部28からのその他の電気的な接触部をねじ締結することができる。
【0054】
さらに、ケーシング20とコネクタケーシング20との間には、シールリングの形のシールエレメント50が配置されている。この形式により、外周囲29からケーシング20の内部28内への流動性の媒体の侵入を阻止することができる。2つのリング30は、当初はケーシング20とは別個の部分としてケーシング20の2つの開口21内に挿入されるか、もしくは開口21内に組み付けられ、たとえば圧入される。当然ながら、ケーシング20にただ1つの開口21しか設けられていなくてもよく、または2つよりも多い開口21が設けられていてもよい。
【0055】
最終的には、
図3には、2つのシールド金属薄板40が図示されていて、各接触ピン5のために、1つのシールド金属薄板40が図示されている。シールド金属薄板40は、
図3では、単に例示的に、クラウンの形状を有している。換言すると、シールド金属薄板40は、環状に閉じた基部エレメント44を有している。この基部エレメント44に、複数の、たとえば8本のアーム43が配置されている。これらのアーム43は、基部エレメント44から見て、差込方向Eとは反対方向に延びていて、それぞれ1つの自由端46を有している。複数のアーム43により、一方では接触における冗長性が確保されている。なぜならば、1つのアーム43の故障時にも、対向コネクタのシールド金属薄板90(
図5)に対する遮蔽が確保されるからである。同時に、複数のアーム43により、対向コネクタのシールド金属薄板90への複数の並行な回路が形成される。これにより、キルヒホッフの法則により、単に個別の接触点に比べて電気的な接触抵抗は低下する。
【0056】
基部エレメント44は、コネクタケーシング2内およびコネクタシステム100に組み付けられた状態で、少なくとも部分的に、ケーシング20の対応する開口21内に突出する。これは、たとえば区分45であってもよく、たとえば完全な基部エレメント44または差込方向Eに沿って見て基部エレメント44の前方の区分であってもよい。基部エレメント44は、別の外壁41を有している、もしくは別の外壁部を有していて、この別の外壁31もしくは別の外壁部でシールド金属薄板40がリング30の第2の内壁32に接触する。シールド金属薄板40の別の外壁41には、たとえば、半径方向外方に向かって別の外壁41から突出する押込み成形部により、接触点42が形成されている。これにより、リング30の第2の内壁32に対する接触を特に信頼性よく保証することができる。さらに、リング30に対する電気的な接触抵抗は、複数の接触点42により減じることができる。なぜならば、接触点42の個数に対応する個数の回路を備えた1種の並列接続が生じるからである(キルヒホッフの法則)。
【0057】
シールド金属薄板40の別の外壁41は、たとえば(たとえば電着またはCVD法またはPAD法による)コーティングを有していてもよい。このようなコーティングは、たとえば電気的な接触抵抗を減じることができる。コーティングは、一種の腐食防止部としても働く。なぜならば、たとえばシールド金属薄板40の材料が、空気との接触時にも変色(anlaufen)しないからである。コーティングは、たとえば表面を硬化させ、これにより表面を差込み時に保護することができる。最終的に、このようなコーティングは、差込み力を減少させることができる。このようなコーティングは、たとえば、銀、金、プラチナ、パラジウム、ニッケル、錫の群から選択されている材料を特に大部分で有していてもよい。このようなコーティングは、たとえば多層に形成されていてもよい。たとえば、シールド金属薄板40の材料上に、ニッケルから成る層が被着されていて、その上に銀から成る層が被着されていてもよい。
【0058】
基本的には、代替的または付加的には、リング30も、外壁31および/または第2の内壁32においてこのようなコーティングを有していてもよい。
【0059】
リング30の第2の内壁32は、好適には平滑に形成されている。第2の内壁32は、たとえば、第2の平均粗さRA2を有していてもよい。第2の平均粗さRA2は、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、またはそれどころか0.3μmよりも小さい。これにより、開口21内へのシールド金属薄板40の差込み時にシールド金属薄板40の表面に引っ掻き傷をつけてしまうリスクが最小限にされる。
【0060】
シールド金属薄板40の別の外壁41の第3の平均粗さRA3は、たとえば1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さくてもよい。これにより、開口21内への差込み時またはリング30の第2の内壁32との接触時の差込み力を減じることができる。これによりさらに、シールド金属薄板40の表面の損傷のリスクも減じることができる。
【0061】
図4aは、
図1に示したコネクタシステム100の横断面を示している。半径方向外方から見て、開口21の領域において、まずケーシング20、次いでリング30、次いでシールド金属薄板40が続き、電気的に接触しているかを確認することができる。軸方向Aで見て、ケーシング20内のソケットも、開口21の縁部の領域において良好に確認することができる。
【0062】
接触ピン5は、その第2の遠位の端部5bにおいて、接触保護部8を有している。この接触保護部8は、たとえば、一種のキャップとして、非導電性のプラスチックから形成されている。これは、たとえば、大電流用途もしくは高出力用途もしくは高電圧用途の場合に重要であり得る。
【0063】
コネクタケーシング2は、半径方向外方に位置するように対向コネクタ60用の差込み開口9を有している。
【0064】
図4bは、
図4aの拡大詳細図を示している。
図4bでは、対向コネクタ60がコネクタ1内に差し込まれている。これは、対向コネクタのシールド金属薄板90において見ることができ、この対向コネクタのシールド金属薄板90は、差込み開口9内に突出し、シールド金属薄板40のアーム43の内面に接触していることが見える。
【0065】
図5は、
図1に示したコネクタアセンブリの横断面を差し合わされた状態で示している。
【0066】
電気的な線路70は、内側導体71を有している。内側導体71は、半径方向外方に向かって見て、内部絶縁部72により取り囲まれている。内部絶縁部72自体は、シールド導体73により取り囲まれている。シールド導体は最終的には外側で外部絶縁部74により取り囲まれている。
【0067】
接触エレメント78が、接触ピン5(接触ブレードまたは接触エレメント等として形成されていてもよい)と電気的な線路70の内側導体71との間の電気的な接続をどのように形成するかが、概略的に図示されている。
【0068】
対向コネクタのシールド金属薄板90は、同様にクラウン状の接続エレメント80により、電気的な導体70のシールド導体73に接続されている。
【0069】
この形式により、コネクタアセンブリ200は、軸方向Aに沿って見て、もしくは電流経路に沿って見て半径方向外方であらゆる箇所において電気的に遮蔽されていて、したがって特に良好な電磁適合性(EMV)を有している。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタシステムであって、該コネクタシステムは、
コネクタ(1)と、
前記コネクタ(1)が組み付けられているケーシング(20)と、
を有し、
前記ケーシング(20)は、第1の内壁(22)を備えた開口(21)を有し、
前記コネクタ(1)は、前記開口(21)内に少なくとも部分的に突出するシールド金属薄板(40)を有し、
前記開口(21)内にリング(30)が配置されており、該リングの外壁(31)は、前記開口(21)の前記第1の内壁(22)に電気的に接触し、
前記シールド金属薄板(40)は、該シールド金属薄板(40)の別の外壁(41)で、前記リング(30)の第2の内壁(32)に電気的に接触し、
前記コネクタ(1)は、少なくとも1つの接触エレメント(5)と、前記接触エレメント(5)が内部に配置されたコネクタケーシング(2)とを有する、
コネクタシステム。
【請求項2】
前記シールド金属薄板(40)は、環状の基部エレメント(44)と、前記基部エレメント(44)から軸方向に延びる複数のアーム(43)とを有し、前記基部エレメント(44)が、前記開口(21)内に少なくとも部分的に突出し、
前記シールド金属薄板(40)の前記基部エレメント(44)は、前記基部エレメント(44)の別の外壁(41)で、前記リング(30)の第2の内壁(32)に電気的に接触する、請求項1記載のコネクタシステム。
【請求項3】
前記リング(30)は、前記開口(21)内に、力結合式または摩擦結合式に取り付けられている、または前記リング(30)は、前記開口(21)内に圧入されている、請求項1または2記載のコネクタシステム。
【請求項4】
前記リング(30)の前記外壁(31)の第1の平均粗さ(RA1)は、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さい、請求項1から3までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項5】
前記リング(30)の前記第2の内壁(32)の第2の平均粗さ(RA2)は、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さい、請求項1から4までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項6】
前記シールド金属薄板(40)の前記別の外壁(41)の第3の平均粗さ(RA3)は、1.0μmよりも小さく、または0.5μmよりも小さく、または0.35μmよりも小さく、または0.3μmよりも小さい、請求項1から5までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項7】
前記シールド金属薄板(40)の前記別の外壁(41)は、コーティングを有し、
前記コーティングは、特に多層に形成されており、
前記コーティングは、特に、銀、金、プラチナ、パラジウム、ニッケル、錫の群から選択されている材料を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項8】
前記コーティングは、特に、銀、金、プラチナ、パラジウム、ニッケル、錫の群から選択されている材料を大部分において有している、請求項7記載のコネクタシステム。
【請求項9】
前記開口(21)の前記第1の内壁(22)は、アルミニウムを含んでいるか、または大部分においてアルミニウムを含んでいる、請求項1から8までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項10】
前記開口(21)の前記第1の内壁(22)は、前記リング(30)の組付け前に、第4の平均粗さ(RA4)を有し、該第4の平均粗さ(RA4)は、10μmよりも大きい、または10μm~50μmであるか、または15μm~30μmである、請求項1から9までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項11】
前記シールド金属薄板(40)の、前記ケーシング(20)の前記開口(21)内に突出する区分(45)は、銅を含んでいる、請求項1から10までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項12】
前記シールド金属薄板(40)の前記区分(45)は、大部分で銅を含んでいる、請求項11記載のコネクタシステム。
【請求項13】
前記リング(30)は、前記ケーシング(20)の前記開口(21)の前記第1の内壁(22)の標準電極電位と、特にコーティングを有しない、前記シールド金属薄板(40)の、前記開口(21)内に突出する区分(45)の標準電極電位との間にある標準電極電位を有する材料から構成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項14】
前記リング(30)は、鋼、または特殊鋼から形成されている、
または
前記リング(30)は、鋼または特殊鋼を含んでいる、請求項1から13までのいずれか1項記載のコネクタシステム。
【請求項15】
前記リング(30)は、大部分で鋼または特殊鋼を含んでいる、請求項14記載のコネクタシステム。
【外国語明細書】