(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013714
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】車両の部分的乃至全自立化された操縦を実施するための方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B60W30/10
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021090004
(22)【出願日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】10 2020 208 391.6
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ケタン・ババル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ファイク
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241CC17
3D241CE05
3D241DB07Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】目標軌道に沿った車両の操縦における横方向の誤差を回避できる方法および装置を提供する。
【解決手段】目標軌道(S)に沿った操縦を実施するために目標操舵角を設定するときに、目標軌道(S)と、その時点の車両の姿勢・位置との間にゼロ点シフトが生じているか否かを確認し、予め定められた閾値を超えるゼロ点シフトが割出された場合は、設定された目標操舵角が、補正定数を用いて調整され、動力車両の部分的乃至全てが自立化された操縦を実施する。
【選択図】
図3a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標軌道(S)に沿った操縦を実施するために目標操舵角を設定するにおいて、目標軌道(S)と、その時点の車両(1)の姿勢・位置との間にゼロ点シフトが生じているか否かを確認し、予め定められた閾値を超えるゼロ点シフトが割出された場合は、設定された目標操舵角が、補正定数を用いて調整されることを特徴とする動力車両(1)の部分的乃至全自立化された操縦を実施するための方法(S100)。
【請求項2】
静的なゼロ点シフトのみが、補正定数によって補正されるが、該ゼロ点シフトを割出すために定められた時間枠内の目標軌道に対するオフセット推移が静的に割出され、割出されたオフセット推移の平均値が算出され、これが予め定められた補正閾値を超えた場合は、該平均値を静的なゼロ点シフトとして捕捉され、捕捉されたゼロ点シフトを用いて補正オフセットが定められ、これを用いて設定されている目標操舵角の調整が実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
割出されたゼロ点シフトの補正が、安定的に推移する様に実施されることを特徴とする請求項1或いは2に記載の方法。
【請求項4】
設定されている目標操舵角の調整が、静的なゼロ点シフトの割出しに悪影響を及ぼす干渉が認識された場合は、補正定数によって除外されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
ゼロ点シフトがあることの確認と補正定数の調整が、周期的に実施され、ゼロ点シフトに影響を与える遅延シグナルがある場合は、次の周期にこれを考慮することを特徴とする請求項2から4のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
設定される補正定数の割出しが、割出されたゼロ点シフトとファクタを基に実施される、但し、該ファクタは、ワンレーンモデルに基づいて割出され、続いて、自車両の車両固有のパラメータに調整されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
目標軌道に対するゼロ点シフトの確認が、車載されているカメラユニットのカメラ画像によって割出されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
モータを備えたサーボ駆動系、該モータを制御するための電子制御手段を包含し、且つ、該電子制御手段が、請求項1から7のうち何れか一項に記載の方法を実施するために構成されていることを特徴とする目標軌道(S)に沿った動力車両(1)の部分的乃至全自立化された操縦を実施するための装置。
【請求項9】
請求項8の装置を搭載した動力車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の部分的乃至全自立化された操縦を実施するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、現代的な動力車両には、多様なドライバーアシストシステムが装備される様になった。例えば、レーン維持アシスタントなどの横方向制御を実施するドライバーアシストシステムでは、横方向制御を実施するための制御装置に、自車両の目標操舵角などが、割出されなければならない。その際、操舵角に関する情報は、非常に重要であり、高い精度と高い信頼性は、双方共に確実に担保されなければならない。
【0003】
尚、目標操舵角を割出す際は、横方向制御における横方向誤差を回避するために、車両固有の操舵角オフセットが、考慮されなければならない。車両固有の操舵角オフセットの割出しは、一般的には、既に工場出荷時に与えられたファクタを元に実施される。特に、該ファクタは、例えば所謂アッカーマン関数を基にした、本質的に車両の車輪の操舵角を、車両のヨーレート信号と走行速度に関連付ける所謂モデル操舵角を用いて一度だけ割出される。該ファクタは、一度セットされると二度と変更されない。
【0004】
この様なファクタの割出し方法では、例えば、タイヤ交換、路面条件、操舵システム内の摩擦の減少乃至上昇、操舵システムの機械的弾性の経年変化、或いは、被牽引車両を引くことによって変化した車両の質量などと言った操舵角に影響を与え得るファクタは、考慮されない。この方法では、該一度割出されたファクタは、車両ライフサイクルの始めのうちは、必要な精度の範囲において、正しい操舵角オフセットを示しているかもしれないが、時間の経過と共に、過度に不正確な乃至正しくないものになっていく。そして、その結果として、目標軌道に沿った制御における横方向のずれが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様な背景に基づいて、本発明の課題は、目標軌道に沿った車両の操縦における横方向の誤差を回避できる方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、請求項1及びその他の請求項の総合的な教えによって解決される。本発明の目的にかなった実施形態は、従属請求項において請求される。
【0007】
先ず、車両の部分的乃至全自立化された操縦を実施するための方法が提供される。ここでは、目標軌道に沿った操縦を実施するための目標操舵角が設定される。ここで言う目標軌道とは、例えば、算出された駐車乃至発進の軌道、或いは、車両がその時点において走行している各々のレーンのレーン中央が辿るコースなどのことである。尚、目標操舵角は、好ましくは、ドライバーアシスタント装置乃至評価ユニットによって定められた曲率要求によって割出される。ここで言うドライバーアシスタント装置とは、例えば、駐車アシスタント、レーン維持アシスタント、レーンガイドアシスタントや渋滞アシスタント装置のことである。
【0008】
特に、目標操舵角を求める式は、「目標操舵角=ファクタx曲率」であることが好ましい。また、該ファクタは、操舵角オフセット、言い換えれば、横方向誤差を補正するためのものである。該ファクタは、好ましくは、舵角モデル、特に好ましくは、ワンレーンモデルに基づいて、以下の様に割出される:
【0009】
【0010】
m=車両重量
lv=前輪軸と重心との間の間隔
lh=後輪軸と重心との間の間隔
Cav=前輪軸の横剛性
Cah=後輪軸の横剛性
v=車両速度
【0011】
オプションとして補足的に、該ファクタを、車両の車両固有のパラメータ、例えば、車両重量、軸間の間隔、ねじりモーメント(トルク)、前輪軸と後輪軸の剛性など操舵角に影響を与えるパラメータに応じて、補正することも可能である。車両パラメータは、車両の操縦を実施するための装置が取付けられている個々の車両において既知である。
【0012】
ここでは、目標軌道と、その時点の車両の姿勢・位置との間のゼロ点シフトの有無が確認される。ここで言うゼロ点シフトとは、特に、目標軌道に対して車両が横方向にずれることの原因となる横方向誤差のことである。目標軌道に対するゼロ点シフトは、例えば車両に車載されたカメラユニットのカメラ画像データと言ったセンサーデータを用いることなどにより割出されることができる。
【0013】
設定された目標操舵角は、予め定められた閾値を超えるゼロ点シフトが割出された場合、補正定数を用いて調整される。ここで言う予め定められている閾値とは、特に、目標軌道に対して許容される最大の設定された横方向の差異の値のことである。尚、該予め定められている閾値は、固定された閾値、即ち、一度だけ設定され、変更できない閾値であることが好ましい。しかしながら、該閾値を、例えば、交通状況に依存して、特に好ましくは、レーンの幅及び/或いは車両速度に依存して定めることも可能である。
【0014】
調整される目標操舵角は、以下の様に割出されることが好ましい:調整される目標操舵角=補正定数x設定されている目標操舵角
【0015】
尚、該補正定数は、以下の様に割出すことが特に好ましい:
【0016】
【0017】
割出され、調整される目標操舵角は、特に、目標操舵角の設定を制御するための車両の制御手段に出力されることが好ましい。
【0018】
開示されている方法によれば、操舵角特性に影響を与える様々なファクタを非常に簡単な方法によって統合することが可能になる。車両のライフサイクル中にも生じ得る横方向誤差を調整することにより、長期的に、車両の信頼性ある安全な操縦を保障することができる。この様にすることで、ゼロ点シフトを、影響ファクタを数多く考慮すること無く、信頼性高く、調整することができる。その結果として、その時点でセットされている操舵角オフセットを定期的な確認と、それに合わせたアダプティブな安全な走行を確実なものとするための調整が、達成される。
【0019】
ある好ましい実施形態によれば、静的なゼロ点シフトのみが、補正定数によって補正されるが、ゼロ点シフトを割出すために定められた時間枠内の目標軌道に対するオフセット推移が静的に割出され、割出されたオフセット推移の平均値が算出される。特に、平均値は、これが、予め与えられている補正閾値を超えた場合、静的なゼロ点シフトとして捕捉されるが、捕捉されたゼロ点シフトを用いて、補正オフセットが定められ、これを用いて、設定されている目標操舵角の調整が実施される。これによれば、目標操舵角の調整は、定まった路程において、車両が、好ましくは、ファクタを用いて補正された曲率を有しているにもかかわらず、常に左或いは右へゼロ点シフトする場合にのみ実施される。この様にすることで、特に動的なゼロ点シフトは、除外される。その結果、例えば横風などと言った動的な影響ファクタが、補正定数に取り入れられないため、該方法及び装置が、干渉源に対して堅牢に保たれると言う長所が得られる。
【0020】
更なる好ましい実施形態では、割出されたゼロ点シフトの補正は、安定的に推移する様に実施される。これにより、設定された目標操舵角の突発的な補正を回避し、その結果として、ドライバーに安全で快適な操縦感覚を与える。
【0021】
尚、設定されている目標操舵角の調整は、静的なゼロ点シフトの割出しに悪影響を及ぼす干渉が認識された場合、補正定数によって除外されていることが好ましい。ここで言う干渉とは、例えば、横風、傾いた路面、ドライバーが実施した操舵、或いは、アンダーステアリングやオーバーステアリングと言った不安定な走行状況ことである。これらの干渉は、例えば、センサや、代案的には、操舵中のダイナミクスから割出すことができる。
【0022】
また、ゼロ点シフトがあることの確認と補正定数の調整は、周期的に実施されることが好ましい。これにより、必要な場合、特に最後に割出された補正定数に対する補正定数の定期的なアップデートが実施される。更には、ゼロ点シフトに影響を与える遅延シグナルがある場合、次の周期にこれを考慮することにより、短時間内に影響を有する主要な値を補正定数に考慮することができるようにすることも好ましい。
【0023】
本発明の更なる対象は、目標軌道に沿った車両の部分的乃至全自立化された操縦を実施するための、モータを備えたサーボ駆動系、該モータを制御するための電子制御手段を包含する装置に関するが、該電子制御手段は、上述の方法のうちの一つを実施するために構成されている。尚、該装置は、例えば、レーン維持アシスタント装置などのドライバーアシスタント装置であることが好ましい。
【0024】
概装置は、特に好ましくは、マイクロコントローラ乃至プロセッサ、中央処理装置(CPU)、画像処理装置(GPU)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit / 特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array/フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、並びに、これらに類するもの、及び、関連する方法ステップを実施するためのソフトウェアを包含している。
【0025】
本発明の更なる対象は、上述の装置を装備した車両に関するものである。
【0026】
本発明の発展形態、長所、及び、応用範囲は、実施例と図面に関する以下の説明によって示される。
【0027】
以下本発明を、図面と実施例に基づいて詳しく説明する。図の説明:
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1a】目標軌道に沿った車両の操縦においてゼロ点シフトが生じている交通シナリオの例;
【
図1b】目標軌道に沿った車両の操縦においてゼロ点シフトが生じている交通シナリオの例;
【
図2】目標軌道に沿った車両の操縦を実施するための装置のブロック回路図;
【
図3a】目標軌道と、その時点の車両の姿勢・位置との間の静的ゼロ点シフトの割出し方の例;
【
図3b】目標軌道と、その時点の車両の姿勢・位置との間の静的ゼロ点シフトの割出し方の例;
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1aは、目標軌道Sに沿って車両1を運転する場合において、右側にシフトしたゼロ点シフトを、一方、
図1bは、左側にシフトしたゼロ点シフトを例示している。この様な特に安定的に推移するゼロ点シフトは、例えば、機械的な故障や変化に起因し得るが、ゼロ点シフトの原因は、システムによって判定されないことも多々あり、相応に補正することも困難である。
【0030】
この様な背景から、
図2のブロック回路図に示すような、車両1の部分的乃至全自立化された操縦を実施するための装置2が、想定されている。例えば、評価手段3は、目標軌道Sに沿った操縦を実施するための目標操舵角を割出し、目標操舵角を設定する様に構成されている制御手段4にこれを出力する様に構成されている。例えば、評価手段3は、目標軌道Sと、その時点の車両1の姿勢・位置との間にゼロ点シフトが生じているか否かを確認するように構成されている。評価手段3は、特に、補正定数を割出し、予め定められた閾値を超えるゼロ点シフトが割出された場合、これを用いて目標操舵角を調整する様に構成されている。該補正定数は、例えば、以下の様に割出される:
【0031】
【0032】
m=車両重量、lv=前輪軸と重心との間の間隔、lh=後輪軸と重心との間の間隔、
Cav=前輪軸の横剛性、Cah=後輪軸の横剛性、v=車両速度
【0033】
ここで言う閾値としては、例えば、+/-15cmの一定の横方向誤差閾値であることができる。割出され、調整される目標操舵角は、目標操舵角の調整を制御するための制御手段4へ出力されることが好ましい。
図1aに例示されている交通シナリオでは、特に左カーブに沿って、補正定数の値が上げられ、
図1bでは、補正定数の値が下げられる。
【0034】
図3aは、定まった路程における目標軌道に沿った動的なゼロ点シフトの推移と平均されたゼロ点シフトを鳥瞰図として示している。例えば、静的なゼロ点シフトのみが捕捉されるべきである。ゼロ点シフトが静的であるかと言う割出しのために、例えば、
図3a,3bにおいて目標軌道に対する動的な横方向エラーとして示されているオフセット推移を、一定の時間枠或いは一定の路程の間割出し、これを用いてオフセット推移の平均値を算出することが想定されている。特に、これが、予め定められた補正閾値を超えた場合は、該平均値を静的なゼロ点シフトとして捕捉する。ここで言う補正閾値とは、ゼロ点シフトを静的であると確定するときに超えるべき、例えば、予め定められている最短時間枠乃至予め定められている最短路程のことである。特に、捕捉されたゼロ点シフトを用いて補正オフセットが定められ、これを用いて設定されている目標操舵角の調整が実施されることが好ましい。
【0035】
図4は、目標軌道Sに沿って部分的乃至全自立化された装置を用いて車両1を操縦するための方法S100のフローチャートを示している。該方法は、以下のステップを包含している:目標軌道Sに沿った操縦をするための目標操舵角を設定するステップS101、目標軌道Sと、その時点の車両1の姿勢・位置との間にゼロ点シフトが生じているか否かを確認するステップS102、割出されたゼロ点シフトが、予め定められた閾値を超えている場合、補正定数Kを用いて目標操舵角を調整するステップS103。
【外国語明細書】