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  • 特開-磁気シェル及び磁気装置 図1a
  • 特開-磁気シェル及び磁気装置 図1b
  • 特開-磁気シェル及び磁気装置 図1c
  • 特開-磁気シェル及び磁気装置 図2a
  • 特開-磁気シェル及び磁気装置 図2b
  • 特開-磁気シェル及び磁気装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013716
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】磁気シェル及び磁気装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20220111BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01F27/24 W
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F37/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092319
(22)【出願日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】20183062
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504103641
【氏名又は名称】シャフナー・エーエムファウ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ムラド
(57)【要約】
【課題】空隙を持つ磁気シェル及び磁気装置を温度変化に対して低感度にする。
【解決手段】本発明は、磁気装置用の、磁気コアを形成する他のシェルと並置可能な磁気シェルであり、複数の磁気シェルが並置されて空隙を少なくとも1つ形成している状態で、磁気シェルの表面の少なくとも一部が会合していて、磁気コアは、空隙において、主膨張方向に沿って、温度変化により膨張及び収縮する。本発明は、空隙を形成して会合している磁気シェルの複数の表面が、少なくとも部分的に、空隙において主要な膨張方向と平行に配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気装置用の、磁気コアを形成する他のシェルと並置可能な磁気シェルであって、
複数の磁気シェルが並置されて空隙を少なくとも1つ形成している状態で、磁気シェルの複数の表面の少なくとも一部が会合していて、
磁気コアが、空隙において主膨張方向に沿って、温度変化により膨張及び収縮する前記磁気シェルにおいて、
空隙を形成して会合している磁気シェルの複数の表面は、少なくとも部分的に、空隙において主要な膨張方向と平行に配置されていることを特徴とする磁気シェル。
【請求項2】
複数のシェルは「E」字の形状を備えて、空隙を1つ又は3つ持つ3脚部のコアをなすように別の同様なシェルに並置されている、請求項1に記載の磁気シェル。
【請求項3】
複数のシェルは、「C」字の形状を持つ、請求項1に記載の磁気シェル。
【請求項4】
空隙を形成して会合している前記複数の表面は、段付きである、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気シェル。
【請求項5】
主要な膨張方向に平行な前記複数の表面間の空隙が基本的にゼロである、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気シェル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の磁気シェルを少なくとも2つと、前記磁気コア内に磁束を生成する少なくとも電気的巻部とを備える、磁気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空隙を有する高透磁率コアを備えた、温度変化に対して低感度を示す磁気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インダクタンス、トランス、チョークなどの磁気誘導部品は、誘導部品の飽和を和らげ、所望の磁気抵抗を得るために、あるいはインダクタンスの場合は部品に蓄えられる磁気エネルギーを増加させるために、その磁気回路に空隙を設けることが多い。しかし、このような装置に共通する欠点は、部品のインダクタンスが空隙の厚さに非常に敏感で、公称値からのわずかなずれでもインダクタンスが大きく変化してしまうことである。これを避けるために、精密なスペーサーやシムを入れて空隙の幅を一定に保つことが知られているが、これらの対策では全ての変化、特に熱による変化を防ぐことはできない。
【0003】
この望ましくない効果を制限するために当技術分野で使用されている別の装置は、低い熱膨張係数又はCTEを持つ化合物又は接着剤で装置をポッティングすることである。しかし、これは完全に満足のいく解決策ではなく、費用対効果も低い。
【0004】
自動車分野をはじめとする多くの適用では、拡張された温度範囲と激しい振動の中での動作、及び厳しい公差の制御と低い熱ドリフトが求められる。そのため、空隙の幅を変化させるような温度変化及び機械的な影響とに対して低感度の磁気装置が強く望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来の技術の欠点や限界を克服した磁気部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、これらの課題は、添付の請求項の対象によって達成され、特に、磁気コアを形成する別のシェルに並置可能な磁気装置用の磁気シェルであって、磁気シェルの表面の少なくとも一部が、シェルが並置されたときに会合して、少なくとも空隙を1つ形成していて、前記磁気コアが、前記空隙における主膨張方向に沿った温度変化の下で伸縮する前記磁気シェルにおいて、前記空隙を形成するために合流する前記磁気シェルの表面の少なくとも一部が、前記空隙における主膨張方向に平行に配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記に定義されている、並置されて磁気コアを形成する少なくとも2つの磁気シェルと、磁気コアに磁束を発生させるための少なくとも1つの電気巻線とを備える磁気装置に関する。
【0008】
従属請求項は、本質的ではないが、本発明の重要かつ潜在的に有用な特徴に関するものであり、3脚のコアを与える「E」字状、「C」字状、ポット状、又は任意の適切な形状をとり得るシェルの特別な形状、空隙での段差のある表面、及び、コアが並置されたときに空隙がゼロ幅、又は表面が主な膨張方向に平行である設計によって画定される別の幅の値になるようにコアを構成することを含む。
【0009】
当該技術分野で知られているものに関して、本発明のシェルから組み立てられた磁気コアは、先行技術の多くのコアよりも温度依存性が低い磁気抵抗を示す。これらは、ポッティングを含む任意の適切な方法で組み立て可能であるが、その好ましい熱特性は、特別なCTE化合物(特別な熱膨張係数の化合物)や接着剤の使用に依存しない。本発明のインダクタ及び磁気装置では、空隙におけるフリンジ磁場によって導入される直列抵抗は、当該技術分野で知られている同様の装置よりも低くてもよい。
【0010】
本発明の例示的な実施形態は、本明細書に開示され、以下の図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a図1aは、本発明の第1実施態様を模式的に示したものである。
図1b図1bは、本発明の第1実施態様を模式的に示したものである。
図1c図1cは、図1の実施態様の変形態様を示す。
図2a図2aは、本発明の別の実施態様を示す図である。
図2b図2bは、本発明の別の実施態様を示す図である。
図3図3は、温度によるインピーダンスの変化をプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1aは、同一又は互換性のある形状の別のシェルに並置して磁気コアを形成可能なシェル20を示す。シェル20は、粉末磁気材料及び積層磁気材料を含む、任意の適切な磁気材料で作製し得る。可能な材料の非網羅的なリストには、ニッケル-亜鉛フェライト、マンガン-亜鉛フェライト、その他のフェライト、Si-Fe(シリコン鉄)電気鋼、センダスト、鉄粉、パーマロイなどが含まれる。図に示した例は、「E」字状のシェルであり、これを同じ構成の別のシェルに接合して、3脚磁気コアを得られるが、本発明はこれらの形状に限定されるものではなく、「ER」、「EQ」、「EP」、「C」、ポットなどの標準的なコア形状のいずれにも適用可能であり、また、多くのカスタム形状にも適用可能である。
【0013】
図1bは、2つの並置された「E」シェル20によって形成された3つのレッグスコアの中心脚部に巻線40を備えた磁気装置15(この場合はインダクタ)を示す。図面では、シェルは同一であり、これは材料費を削減する上で好ましいことであるが、本発明の本質的な特徴ではない。シェル20a、20bは、異なるものであってもよく、接合したときに所望のコア形状を提供するように構成されている。脚部は、円筒形、正方形、又は任意の適切な形状を有してもよく、実施態様のように平坦である必要はない。少なくとも2つのシェルは、任意の適切な形状を備えてよい。シェルを一緒に組み立てる方法も、本発明の範囲を離れることなく、いくつかの変形が可能である。シェルは角柱状であり、一方のシェル又は脚部が他方のシェルの対応する形状に収まるように「LEGO(登録商標)スタイル」で組み立てられる。左と右のシェルは対称であっても異なっていてもよい。
【0014】
シェルの並置により、シェル20a、20bの表面が接近する空隙30、31を有する磁気コアが形成される。空隙の幅は、シム、セパレータ、ポッティングコンパウンドの介在、又はその他の手段によって決まってくる。重要なのは、中央部の脚部30、30の空隙は、直交する2つの方向に沿って方向付けられていることである。隙間の一部は、脚の軸及び磁束の一般的な方向に直交する表面30が並置されていることから生じる。空隙の一部は、脚部の軸線に整列される面31が対面することで生じる。このように様々な方向性があるのは、中央の脚部23が階段状になっているという特殊な構成によるものである。側部の脚部22a、22bは、この変形態様では、突き合わせる端部を有する。軸方向の空隙30は、横方向の空隙31と同じ幅を有する必要はなく、実際には、提示された例では、横方向の空隙31はかなり狭く、いくつかの実現例では、表面30が接触している状態で、ゼロまで減少し得る。
【0015】
本発明は、脚軸に平行かつ直交する表面を有する段付き脚に限定されず、非図示の変形態様では、傾斜又は湾曲されている会合表面を有する脚を備えることがある。
【0016】
コアの温度が変化すると、その材料は温度変化に応じて伸縮する。中央部の脚部の空隙の幅は、それに応じて変化し、磁気コアのリラクタンシーとコイル40のインピーダンスも変化する。特に、接着剤、セパレータ、ポッティングコンパウンドなど、熱膨張率の高い有機材料を含むアセンブリの場合、熱膨張により、二重矢印28で示すように、シェル20a、21aが互いに離れていく傾向がある。矢印20は、セパレータや接着剤など、関係する全ての材料の熱膨張係数によって決まる、空隙における主な膨張方向を示す。
【0017】
熱膨張は、幅が増加する軸方向の空隙30と、幅が基本的に変化しないが、隙間31の横方向の面積がごくわずかに減少する横方向の空隙31に、反対の影響を与える。これらの特徴のおかげで、コアのリラクタンシーとコイル40のインピーダンスの変化は、中央の脚部と側部の脚部が平らな横方向の表面(図では垂直)で終わっている標準的なEコアの場合よりも小さい。
【0018】
磁気装置は、インダクタ、チョーク、トランス、又はその他の装置であり得ることに留意されたい。最終的な組立体は、エナメル線、リッツ線、又はPCBトラックや剛性棒部材を含む他のタイプの導体で作製可能な、少なくとも1つの巻線rコイルを含むことになる。コイル又は巻線は、中央の脚、側部の脚、又は上部と下部のヨークに巻き付け可能であり、異なる脚や磁気回路の一部に分割可能である。
【0019】
空隙は、隙間自体を中心に放射される量のフリンジ磁場を発生させる。これは、導体の局所的な渦電流のために、高周波でのコイル抵抗の増加に寄与する。本発明では、フリンジ磁場は、少なくとも一部が90度回転し、電流方向と平行に配向するため、コイルの高周波抵抗への影響が少なくなる。
【0020】
図1cは、段付き空隙30、31が脚部の中央ではなく、コアの後壁と整列している本発明の変形態様を示す。図示していない変形態様では、空隙は同様に任意の中間位置にあり得る。
【0021】
図2a及び2bは、中央の脚部だけでなく、側部の脚部にも段差のある隙間を有する本発明の別の変形態様を示す。このコアは、熱的な変化に対してさらに免疫力が高くなる。段差のある隙間は、描かれているように脚の中央にあってもよいし、他の位置にあってもよい。
【0022】
図3は、図1bのようなコア(プロット111)、図2bのようなコア(プロット112)、あるいは直線的空隙を持つ既知のタイプのコア(プロット100)に巻かれたコイルのインダクタンスを、異なる隙間の大きさについてプロットしたものである。隙間の大きさは、温度によって直接決定され、例えば、常温では10μm、100℃では50μm、150℃では150μmである。従来の設計(プロット100)では、約100nHのインダクタンス低下が見られるが、図1b及び図2bの変形態様では、75nH、それぞれ66nHの低下が見られ、本発明の優位性を示している。
【符号の説明】
【0023】
15 磁気装置
20 段差付き中央部の脚部を持つ「E」字状シェル
20a 第1シェル
20b 第2シェル
21 段付き脚部を持つ「E」字状シェル
21a 第1シェル
21b 第2シェル
22a 側部の直線的脚部
22b 側部の直線的脚部
23 中央部の段付き脚部
24a 側部の段付き脚部
24b 側部の段付き脚部
28 熱膨張の主要方向
30 軸方向の空隙、中央部の脚部
30a 軸方向の空隙の1要素、第1側部の脚部
30b 軸方向の空隙の1要素、第1側部の脚部
30c 軸方向の空隙の1要素、第2側部の脚部
30d 軸方向の空隙の1要素、第2側部の脚部
31 横方向の空隙、中央の脚
31a 横方向の空隙、第1側の脚
31b 横方向の空隙、中央の脚
31c 横方向の空隙、第1側部の脚部
40 コイル、巻線
100 従来装置のインピーダンス
111 本発明の第1変形態様のインピーダンス
112 本発明の第2変形態様のインピーダンス
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3
【外国語明細書】