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▶ エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137206
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】拡張可能シース
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61M25/06 556
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022112462
(22)【出願日】2022-07-13
(62)【分割の表示】P 2020200415の分割
【原出願日】2015-12-10
(31)【優先権主張番号】62/145,968
(32)【優先日】2015-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/880,109
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プ・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ブルマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・エー・ガイザー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジー・ヴァルディーズ
(72)【発明者】
【氏名】イドン・エム・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】バイグイ・ビアン
(72)【発明者】
【氏名】サニー・トラン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ディー・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】タン・フイ・レ
(72)【発明者】
【氏名】トゥン・ティー・レ
(72)【発明者】
【氏名】アルパナ・キラン・ゴウダール
(57)【要約】
【課題】弁および他のプロテーゼデバイスの植込みに使用される血管内システム用の誘導シースのさらなる改善を提供する。
【解決手段】送達シースは、弾性外方管状層と、薄壁部分に一体的に連結された厚壁部分を有する内方管状層とを備える。内方管状層は、薄壁部分が弾性外方管状層の付勢下において厚壁部分の外方表面上に折り畳まれる圧縮状態または折畳み状態を有することが可能である。インプラントが通され送られるときに、外方管状層は伸張し、内方管状層は拡張ルーメン直径へと拡がる。インプラントが通過すると、外方管状層は、シースがそのより小さな輪郭を再び呈する状態である圧縮状態へと内方管状層を再び付勢する。また、シースは、容易な拡張および圧壊を助長するために内方管状層と外方管状層との間の摩擦に仲介することによりシースのルーメンに通してインプラントを前進させるために必要な押力を軽減させる選択的に配置された長手方向ロッドを備え得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書及び図面に記載されていることを特徴とするシース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、心臓弁を修復および/または置換するためにならびに人工弁などのインプラントを患者の血管系を経由して心臓に送達するためにカテーテルベース技術と共に使用するためのシースの実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内送達カテーテルアセンブリは、手術によるアクセスが容易には可能でないかまたは侵襲手術を伴わないアクセスが望ましい体内の位置に、人工弁などのプロテーゼデバイスを植え込むために使用される。例えば、人工大動脈弁、人工僧房弁、人工三尖弁、および/または人工肺動脈弁が、低侵襲外科技術を利用して治療部位に送達され得る。
【0003】
誘導シースが、患者の血管系(例えば、大腿動脈)内に送達装置を安全に導入するために使用され得る。誘導シースは、血管系に挿入される細長スリーブと、失血を最小限に抑えつつ送達装置を血管系と流体連通状態に配置し得る1つまたは複数の封止弁を収容するハウジングとを一般的に有する。従来の誘導シースは、典型的には、バルーンカテーテル上に取り付けられた弁にハウジングを貫通する通りの良い経路を与えるために、管状ローダをハウジングのシールに挿通することを必要とする。従来のローダは、誘導シースの近位端部から延在するため、したがってシースを通り体内に挿入され得る送達装置の利用可能な作動長さが縮小される。
【0004】
送達システムの導入前に大腿動脈などの血管にアクセスする従来の方法は、直径が徐々に増大する複数の拡張器またはシースを使用して血管を拡張させることを含む。挿入および血管拡張のこの繰り返しにより、手順が要する時間量と血管への損傷リスクとが増大し得る。
【0005】
径方向に拡張する血管内シースが開示されている。かかるシースは、シースの元の直径よりも大きな直径を有するデバイスが導入されると、シャフトまたはシースを拡張構成に維持するラチェット機構などの複雑な機構を有する傾向がある。
【0006】
しかし、プロテーゼデバイスおよび他の材料を患者に送達するおよび/または患者から除去することは、依然として患者をリスクにさらす。さらに、血管へのアクセスは、送達システムの輪郭が比較的大きいことにより挿入の最中に血管が長手方向および径方向に引き裂かれる恐れがあるため、依然として困難である。さらに、この送達システムは、血管内の石灰化プラークを押しのける恐れがあるため、この押しのけられたプラークによりクロットリスクがさらに課せられる。
【0007】
「EXPANDABLE SHEATH FOR INTRODUCING AN ENDOVASCULAR DELIVERY DEVICE INTO A BODY」と題され参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,790,387号は、例えば図27Aおよび図28などにおいて分離された外方ポリマー管状層および内方ポリマー層を有するシースを開示している。内方ポリマー層の一部分が、切断により形成された間隙を貫通して延在し、外方ポリマー管状層の部分間にて圧迫され得る。シースの拡張時には、外方ポリマー管状層の部分同士が相互に離間されており、内方ポリマー層は実質的に円筒状チューブへと拡張される。有利には、米国特許第8,790,387号に開示されるシースは、植込み可能デバイスの通過のために一時的に拡張し、次いでその開始時直径へと戻り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8,790,387号
【特許文献2】米国特許第5,411,552号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0123529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米国特許第8,790,387号の開示にも関わらず、弁および他のプロテーゼデバイスの植込みに使用される血管内システム用の誘導シースのさらなる改善の必要性が依然として残されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のニーズおよび他の利点が、カテーテル上に取り付けられたインプラントを送達するための拡張可能誘導シースにより達成される。このシースは、弾性外方管状層と、薄壁部分に一体的に連結された厚壁部分を有する内方管状層とを備える。内方管状層は、弾性外方管状層の付勢下において薄壁部分が厚壁部分の外方表面上に折り畳まれる圧縮構成/折畳み構成を有し得る。インプラントが通され送られるときに、外方管状層は伸張し、内方管状層はインプラントの直径に対応するように拡張ルーメン直径へと少なくとも部分的に拡がる。インプラントが通過すると、外方管状層は、シースがそのより小さな輪郭を再び呈する状態となる折畳み状態へと内方管状層を再び付勢する。初期輪郭サイズが小さいことに加えて、内方管状層の一体構成が、先行技術のスプリットチューブおよび均一厚さライナの組合せにおける漏れおよび突起を防止する。また、シースは、容易な拡張および圧壊を助長するために内方管状層と外方管状層との間の摩擦に仲介することによりシースのルーメンに通して過大サイズのインプラントを前進させるために必要な押力を軽減させる選択的に配置された長手方向ロッドを備え得る。
【0011】
実施形態には、カテーテル上に取り付けられたインプラントを送達するためのシースが含まれる。このシースは、弾性外方管状層および内方管状層を備え得る。外方管状層は、軸方向に貫通して延在し初期直径を有する初期弾性ルーメンを画成する。内方管状層は、製造中に一体押出成形などにより薄壁部分に一体的に連結された厚壁部分を有する。厚壁部分は、第1の長手方向延在端部および第2の長手方向延在端部を有するC字形状断面を有する。薄壁部分は、内方管状層を貫通して軸方向に延在する拡張ルーメンを画成するように第1の長手方向延在端部と第2の長手方向延在端部との間に延在する。拡張ルーメンは、初期弾性ルーメンの初期直径よりも大きな拡張直径を有する。内方管状層は、圧縮状態では、弾性外方管状層が内方管状層の第2の長手方向延在端部の下方に第1の長手方向延在端部を付勢する状態において、弾性外方管状層の初期弾性ルーメンを貫通して延在する。内方管状層は、局所的拡張状態では、インプラントの通過による弾性外方管状層の付勢に対して、薄壁部分が第1の長手方向延在端部と第2の長手方向延在端部との間に延在して拡張ルーメンを形成する非重畳状態へと離れるように径方向に拡張された第1の長手方向延在端部および第2の長手方向延在端部を有する。内方管状層は、拡張ルーメンをインプラントが通過した後に、弾性外方管状層により圧縮状態へと付勢されるように構成される。
【0012】
別の態様では、内方管状層の外方表面および/または外方管状層の内方表面が、外方弾性層および内方管状層の自由な相対摺動を可能にするように構成された潤滑コーティングを有し得る。内方管状層の外方表面の長手方向延在部分またはストリップが、内方層と外方層との間の回転に対して幾分かの制約を与えるために、外方管状層の内方表面の対応する長手方向延在部分に接着され得る。
【0013】
別の実施形態では、管状層は、表面に結合された複数の長手方向ロッドを備え得る。例えば、外方管状層の内方表面は、初期弾性ルーメン内に延在するロッドを備え得る。これらのロッドは、局所的拡張状態から圧縮状態に動く(および戻る)場合の層の相対移動を助長するために軸受表面を形成するように構成される。また、弾性外方管状層内に埋設された長手方向ロッドは、弾性外方管状層の内方表面および外方表面の両方から突出し得る。
【0014】
長手方向ロッドは、外方管状層の内方表面の周囲に周方向に離間され得る。また、内方管状層は、内方表面に結合された接触面積縮小ロッドを備え得る。
【0015】
別の態様では、シースは、弾性外方管状層の長手方向部分の周囲に延在する放射線不透過性管状層を備えることが可能である。いくつかの実施形態では、外方管状層は、透明材料から構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、熱収縮チューブが、弾性外方管状層の遠位端部にて弾性外方管状層の周囲に適用され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、弾性外方管状層の遠位部分および内方管状層が、相互に接着される。例えば、弾性外方管状層の遠位部分が、内方管状層の拡張外方表面に接着され得る。弾性外方管状層の遠位部分および内方管状層は、封止構成へと相互にリフロー接合され得る。いくつかの実装形態では、シースの遠位部分がフレア形状を有する。このフレア形状は、重畳構成へと折り畳まれ得る。
【0018】
拡張可能誘導シースを使用する方法が、患者の血管内に少なくとも部分的にシースを挿入するステップを含み得る。インプラントが、シースの内方管状層を通して前進される。内方管状層は、インプラントの径方向外方力を利用して圧縮状態から局所的拡張状態へと移行する。インプラントの通過後に、局所的に拡張された内方管状層は、弾性外方管状層の径方向内方力により圧縮状態へと少なくとも部分的に収縮される。内方管状層の局所的拡張中には、第1の長手方向延在端部および第2の長手方向延在端部は、相互に向かって、次いで相互から離れるように移動する。局所的に拡張された内方管状層の収縮中には、第1の長手方向延在端部および第2の長手方向延在端部は、相互に向かって、次いで相互から離れるように移動して、圧縮状態へと少なくとも部分的に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】プロテーゼインプラントを植え込むための血管内送達装置を伴った拡張可能シースの立面図である。
図2】シースおよびハブの断面図である。
図3A】シースの遠位先端部の拡大図である。
図3B図3Aの線3B-3Bに沿ったシースの遠位先端部の断面図である。
図4】シースの外方管状層の例示の実装形態の断面図である。
図5】シースの外方管状層の別の例示の実施形態の断面図である。
図6】長手方向ロッドの断面をさらに詳細に示した、図5の外方管状層の部分拡大図である。
図7】シースの内方管状層の例示の実装形態の断面図である。
図8】シースの内方管状層および外方管状層の両方の断面図である。この例では、内方管状層は圧縮状態にある。
図9】拡張可能シースの一実装形態の遠位端部の斜視図である。
図10】拡張可能シースの一実装形態の側面図である。
図11】シースのフレア状遠位部分の一実施形態の斜視図である。
図12】熱収縮チューブ内で折り畳まれたシースの遠位部分の側面図である。
図13】放射線不透過性管状層を備えるシースの遠位部分の一実施形態の長手方向断面図である。
図14】折畳み構成にあるシースの一例のフレア状遠位部分を示す図である。
図15】折畳み構成にあるシースの遠位部分の断面図である。
図16】インプラントが通過中であるシースを示す図である。内方管状層および外方管状層は、長手方向延在ストリップ内で共に接着されている。
図17】外方管状層に埋設され弾性ルーメン内に突出した長手方向ロッドを備える例示の実施形態の断面図である。
図18】外方管状層に埋設され弾性ルーメン内におよび外方管状層の外方表面から外方に突出した長手方向ロッドを備える例示の実施形態の断面図である。
図19】外方管状層に埋設された長手方向ロッドを備え、一部のロッドは弾性ルーメン内に突出し、他のロッドは外方管状層の外方表面から外方に突出する、例示の実施形態の断面図である。
図20】外方管状層および内方管状層に埋設された長手方向ロッドを備える例示の実施形態の断面図である。外方管状層に埋設された長手方向ロッドは、弾性ルーメン内に突出し、内方管状層に埋設された長手方向ロッドは、中央ルーメン内に突出する。
図21】外方管状層に埋設され弾性ルーメン内に突出した長手方向ロッドを備える別の例示の実施形態の断面図である。
図22】インプラントが通過中であるシースの側面図である。
図23】フレア状部分が圧縮構成に折り畳まれた場合の、シースの遠位部分のフレア状実装形態を示す図である。
図24】フレア状部分が開かれ拡張された状態にある、図23の遠位部分を示す図である。
図25】フレア状部分が圧縮状態に折り畳まれた場合の、図23の遠位部分の断面図である。
図26】拡張可能シースの例示の実装形態の斜視図である。
図27図26に示す実装形態の近位領域の長手方向断面図である。
図28図26に示す実装形態の遠位領域の長手方向断面図である。
図29図26に示す実装形態の遠位領域の断面図である。
図30】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図31】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図32】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図33】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図34】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図35】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図36】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図37】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
図38】拡張可能シースの別の実施形態用の剛化され封止された先端部の組立て方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のコンセプトの特定の例の以下の説明は、特許請求の範囲を限定するように利用されるべきではない。以下の説明から、他の例、特徴、態様、実施形態、および利点が当業者に明らかになろう。理解されるように、これらのデバイスおよび/または方法は、本発明のコンセプトの主旨からいずれも逸脱することなく他の異なるおよび明らかな態様が可能である。したがって、図面および説明は、限定的なものとしてではなく本質的に例示的なものとして見なされるべきである。
【0021】
本説明を目的として、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規の特徴が本明細書に説明される。これらの説明される方法、システム、および装置は、いかなる意味においても限定的なものとして解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、単独でのならびに相互の様々な組合せおよび下位組合せにおける、様々な開示の実施形態のあらゆる新規かつ非自明な特徴および態様に向けられる。本開示の方法、システム、および装置は、いかなる特定の態様、特徴、またはそれらの組合せにも限定されず、本開示の方法、システム、および装置もまた、1つまたは複数の特定の利点が存在するかあるいは問題が解消されることを必要としない。
【0022】
本発明の特定の態様、実施形態、または例との組合せにおいて説明される特徴、完全体、特性、化合物、化学部分、または群は、不適合である場合を除いては本明細書において説明される任意の他の態様、実施形態、または例に適用可能であるものとして理解されるべきである。本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示される特徴の全て、および/または同様に開示される任意の方法またはプロセスのステップの全ては、かかる特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的となる組合せを除いては、任意の組合せで組み合わされ得る。本発明は、いかなる前述の実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)において開示される特徴の任意の新規の1つまたは任意の新規の組合せにまで、あるいは同様に開示される任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規の1つまたは任意の新規の組合せにまで及ぶ。
【0023】
参照により本明細書に組み込まれると述べられたあらゆる特許、出願公開、または他の開示材料の全体または一部は、組み込まれる材料が、本開示に示された既定の定義、陳述、または他の開示材料と矛盾しない限りにおいてのみ、本明細書に組み込まれる点を理解されたい。そのため、および必要な範囲において、本明細書にて明示されるような開示は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾材料に対して優先される。参照により本明細書に組み込まれると述べられるが、本明細書に示される既定の定義、陳述、または他の開示材料と矛盾するあらゆる材料または部分は、その組み込まれる材料と既定の開示材料との間に矛盾が生じない限りにおいてのみ組み込まれる。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈が明確に別様のことを述べない限りは複数への言及を含む。範囲は、本明細書では「約」ある特定の値からおよび/または「約」別の特定の値までとして表され得る。かかる範囲が表される場合には、別の態様は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により近似値として値が表される場合には、特定の値が別の態様を形成することが理解されよう。さらに、他の端点との関係においておよび他の端点に関係なくの両方で各範囲の端点が重要である点が理解されよう。
【0025】
「オプションの」または「任意に」は、後述の事象または状況が生じてもまたは生じなくてもよいことを、ならびにその説明が前記事象または状況が生じる例および生じない例を含むことを意味する。
【0026】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通じて、「備える(comprise)」という語およびその変形語(comprising, comprisesなど)は、「含むがそれに限定されない」を意味するが、例えば他の追加物、構成要素、完全体、またはステップなどを排除するようには意図されない。「例示の(exemplary)」は、「の一例(an example of)」を意味するが、好ましいまたは理想的な態様を示唆するようには意図されない。「などの(such as)」は、限定的な意味では使用されず、説明を目的として使用される。
【0027】
開示される拡張可能シースの実施形態は、誘導シースの一部分の一時的拡張により送達システムを収容可能にし、その後デバイスが通過すると誘導シースが元の直径に戻り得ることによって、血管に対する外傷を最小限に抑えることが可能である。この拡張可能シースは、例えば厚い壁部部分および薄い壁部部分を有する一体形成された内方管状層を備えることが可能であり、薄い壁部部分は、インプラントの通過のために拡張されたルーメンへと拡張し、次いでインプラントの退去後には弾性外方管状層の付勢下において折り畳まれ得る。別の態様では、拡張可能シースは、弾性外方層に結合されて拡張可能シースに剛性を与える1つまたは複数の長手方向に配向された剛化要素(ロッドなど)を備え得る。いくつかの実施形態は、先行技術の誘導シースの輪郭よりも小さな輪郭を有するシースを備え得る。さらに、本実施形態は、複数の異なるサイズのシースではなく1つのみのシースが必要とされることにより、手順が必要とする時間長さを短縮し、長手方向もしくは径方向への血管の引裂きまたはプラークの押しのけのリスクを軽減することが可能である。本拡張可能シースの実施形態は、血管を拡張させるために複数回にわたる挿入の必要性を回避させ得る。
【0028】
本明細書では、バルーン拡張可能な植込み可能心臓弁などの植込み可能心臓弁の形態のインプラントを送達するのに特に適した細長送達シースが開示される。バルーン拡張可能な植込み可能心臓弁は、周知のものであり、本明細書では詳細には説明しない。かかる植込み可能心臓弁の一例は、米国特許第5,411,552号に、および米国特許出願公開第2012/0123529号においても説明されており、これらは共に参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において開示される細長送達シースは、自己拡張型植込み可能心臓弁、ステント、またはフィルタなどの他のタイプの植込み可能デバイスを送達するためにも使用され得る。本明細書において使用される「植込み可能な」という用語は、体内の部位に送達される人工的または非人工的なあらゆるものを意味するように広く定義される。例えば、診断デバイスが植込み可能であり得る。
【0029】
図1は、患者にインプラント12または他のタイプの植込み可能物を送達するための代表的な送達装置10と共に使用される状態にある例示のシース8を示す。装置10は、操縦可能ガイドカテーテル14(可撓性カテーテルとも呼ばれる)と、ガイドカテーテル14を貫通して延在するバルーンカテーテル16とを備えることが可能である。以下で詳細に説明されるように、この図示する実施形態におけるガイドカテーテル14およびバルーンカテーテル16は、患者の体内の植込み部位へのインプラント12の送達および位置決めを容易にするために相互に対して長手方向に摺動するように構成される。シース8は、細長の拡張可能チューブであり、漏血を停止させるためにシースの対向側の近位端部に止血弁を備え得る。
【0030】
一般的には、使用中に、シース8の遠位端部が、患者の皮膚を貫通して送られ、経大腿血管などの血管に挿入される。送達装置10が止血弁を通りシース8に挿入され、次いでインプラント12が送達され患者内に植え込まれ得る。
【0031】
図2に示すように、シース8は、ハブ20、フレア状近位端部22、および遠位先端部24を備える。ハブ20は、ハブルーメン21を画成する剛性円筒状構造体から構成され、止血弁26を収容し、側部ポート28を画定し得ると共にねじ山付き遠位端部30を有し得る。シース8のフレア状近位端部22は、管状壁部構造体34上に取り付けられたねじ山付き雌コネクタ32を備える。シース8の遠位先端部24は、図3に示すように管状壁部構造体34の遠位端部を覆い取り付けられる。管状壁部構造体34は、中央ルーメン38を画成する。
【0032】
ハブ20は、ねじ山付き遠位雄端部30を対応するねじ山付き雌コネクタ32にねじ込むことによりフレア状近位端部22に装着される。これにより、ハブルーメン21は、管状壁部構造体34の中央ルーメン38と連通状態におかれる。止血弁26は、ハブルーメン21および中央ルーメン38への送達装置10によるアクセスと、加圧(血液充填)環境内におけるインプラント12の最終的な展開とを仲介する。側部ポート28は、生理食塩水または他の流体を適用するための追加的なアクセスを可能にする。
【0033】
一方で、遠位先端部24は、それがない場合には径方向に拡張可能である管状壁部構造体34に対して幾分かの拘束を与える。また、遠位先端部24は、テーパ状前進表面を形成することにより誘導針上への前進を補助する。さらに、遠位先端部24は、トルク力および前進力が印加される最中の管状壁部構造体34の座屈または圧壊を防止するように、シース8の遠位先端部における剛性を向上させる。
【0034】
図3Aに示すように、管状壁部構造体34は、弾性外方管状層40および内方管状層42と、遠位先端部24とを備える。遠位先端部24は、一般的には若干テーパ状のまたは裁頭円錐状の遠位端部を有する管状構造体を有する。遠位先端部24は、外方壁部44、内方壁部46、および保持具48を備える。外方壁部44は、内方壁部46よりも長い軸方向長さを有する。外方壁部44の近位端部は、直線状側部を有する管形状を有する。外方壁部は、遠位自由端部のネック52にかけてテーパ状をなし、遠位自由端部から近位方向に向かって円筒状バルジ50にかけて若干フレア状になり始める。ネック52は、外方壁部44の近位管状端部よりも小さな直径を有する。また、近位管状端部は、円筒状バルジ50よりも小さな直径を有する。
【0035】
内方壁部46は、外方壁部よりも短い軸方向長さを有するが、遠位自由端部に向かってより漸進的にではあるがテーパ状をなす円筒形状をさらに有する。図3Aに示すように、内方壁部46の外方表面および外方壁部44の内方表面は、弾性外方管状層40の遠位自由端部を受けるように構成された環状空間54を画成する。環状空間54は、外方壁部44の円筒状バルジ50の下方に位置することにより幾分か膨出する。この膨出により、弾性外方管状層の挿入および捕獲が容易になる。環状空間54は、外方壁部44および内方壁部46の各表面が収束して拘束接触状態になることにより、遠位方向に向かってある点までテーパ状をなす。
【0036】
図3Bの断面に示されるように、保持具48は、内方壁部46の内方表面の一部分に沿って延在し固有の三日月形状空間56を画成する追加の円弧形状壁部である。三日月形状空間56は、以下でさらに詳細に説明されるように、内方管状層42の折畳み可能薄壁部分を受けるように構成される。保持具48は、圧縮構成または折畳み構成にある場合に、内方管状層42の折曲げ部分の周方向円弧長さに対応する円弧サイズを有する。有利には、遠位先端部24は、管状壁部構造体34の遠位端部の構造剛性を上昇させるのを助け、層間の血流を阻止し、ワイヤまた拡張器の上で前進される場合に組織に押し通されるような平滑テーパ状輪郭を与える。
【0037】
図4に示すように、一実施形態の外方管状層40は、その全長に沿って円形断面を有する円筒形状を有する。外方管状層40は、その円筒状断面を軸方向に貫通して延在する初期弾性ルーメン58を画成する。外方管状層は、患者の送達通路および/または送達されることとなるインプラント12のサイズに対応するようにサイズ設定される。例えば、層40の内径IDは、0.185インチであってもよく、経大腿アクセスを介したステント付き心臓弁の送達のために0.005±0.001インチの壁部厚さを有し得る。一態様では、外方管状層40の内方表面および/または内方管状層42の外方表面が、内方管状層42の拡がりおよび折畳みを容易にするために潤滑コーティングを有するまたは付されるように処理されてもよい。
【0038】
弾性ルーメン58は、インプラント12が通過するなどの外部力の影響下にない場合におけるその受動的なまたは形成時の直径または断面寸法を示すために「初期」と呼ばれる。しかし、外方管状層40は、図示する実施形態では弾性材料から構成されるため、重力などの軽い力の下であってもその形状を保持できない点に留意されたい。また、外方管状層40は、円筒状断面を有する必要はなく、代わりに内方管状層42の要件および/またはインプラント12の予想される形状に合致するように一般的に構成され得る楕円形、正方形、または他の断面を有することが可能である。したがって、本明細書において使用される「チューブ」または「管状の」という用語は、円形断面に形状を限定するようには意図されない。代わりに、チューブまたは管状のは、閉断面およびそれを軸方向に貫通して延在するルーメンを有する任意の細長構造体を指し得る。また、チューブは、幾分か選択的に配置されたスリットまたは開口を有してもよいが、そのルーメン内に他の構成要素を収容するのに十分な閉鎖構造を依然としてもたらす。
【0039】
一実装形態では、外方管状層40は、インプラント12の通過により誘発される拡張および内方管状層42の拡張を仲介するのに十分な可撓性を有する一方で、同時にインプラントが通過すると内方管状層を初期直径の近似値へと付勢して戻すのに十分な材料剛性を有する、比較的弾性の材料から構成される。例示の材料は、NEUSOFTを含む。NEUSOFTは、良好な弾性、振動緩衝性、耐摩耗性、および耐引裂性を有する半透明のポリエーテルウレタンベース材料である。このポリウレタンは、加水分解に対する化学的耐性を有し、ポリオレフィン、ABS、PC、Pebax、およびナイロンの上にオーバーモールド成形するのに適する。このポリウレタンは、良好な水分および酸素バリアとUV安定性とを与える。外方管状層40の1つの利点は、圧縮血液に流体バリアを与える点である。類似の弾性特性を有する他の材料もまた、弾性外方管状層40に使用され得る。
【0040】
図5は、複数の長手方向ロッド60を備える弾性外方管状層40の別の実装形態を示す。長手方向ロッド60は、外方管状層40の長さにわたり延在し、初期弾性ルーメン58内に突出する。図6に示すように、長手方向ロッド60は、外方管状層の弾性材料中に同時押出成形および/または埋設されることなどにより外方管状層に結合される。有利には、長手方向ロッド60は、外方管状層40内における内方管状層42の相対移動を容易にするために軸受表面を形成するように構成される。これは、内方管状層42が拡がるおよびその元の折畳み形状へと戻る場合に特に有用である。
【0041】
長手方向ロッド60は、外方管状層40の内部表面の周囲に周方向に離間されてもよい。図5の断面では15個の長手方向ロッド60が示されるが、1つを含む任意個数の長手方向ロッドが使用され得る。また、長手方向ロッド60は、外方管状層40の全長にわたり延在する必要はない。代わりに、長手方向ロッド60は、インプラント、用途、および他の状況による必要に応じて選択的に適用され得る。長手方向ロッド60は、図5において外方管状層40の内部表面の約90度が非装飾表面として残されるなどのように、間隔パターン全体から選択的に除外されてもよい。
【0042】
図6に示すように、長手方向ロッドは、弾性ルーメン58内に向かって湾曲状軸受表面を存在させるように円形断面を有し得る。長手方向ロッド60の直径は変更されてもよいが、一実施形態では0.004インチの直径である。長手方向ロッドの最外部分は、外方管状層40の外部表面から約0.006インチの位置に位置決めされる。このようにすることで、長手方向ロッド60の内方エッジ表面は、外方管状層40の表面から内方管状層42を離間させ、したがって相対移動を留め妨げる摩擦または傾向を軽減させる。他の実施形態では、長手方向ロッドは、他の形状を有することが可能であり、これらの形状は、長手方向に沿って単一のロッド内で変化してもよい。また、図6に示すように、外方管状層40の材料は、追加的な安定性のために長手方向ロッド60の断面の中間点を通過して傾斜状に延在する。
【0043】
図7に示すように、内方管状層42は、薄壁部分64と共に一体的に押出成形された厚壁部分62を有する。厚壁部分62は、約0.011±0.001インチであり、薄壁部分64は、約0.0065±0.0010インチである。好ましくは、内方管状層42は、高密度ポリエチレン(HDPE)または同等のポリマーなどの剛性ポリマーなどの比較的剛性の(外方管状層40と比べた場合に)材料から構成される。有利には、壁部部分が一体押出成形などの一体構造であることにより、拡張性を促進するためにシース中にスプリットを使用する先行技術のシースの漏れが回避される。先行技術のC字形シースは、シースが最も伸張されるマニホルドの近位端部付近で漏れを起こす傾向がある。また、一体構造により、シース8にトルクを与える能力が向上する。
【0044】
図7に示す実施形態では、厚壁部分62は、第1の長手方向延在端部66および第2の長手方向延在端部68を有するC字形状断面を有する。これらの端部は、厚壁部分62の厚さがその断面において薄壁部分64にかけて薄くなり始める位置である。その移行部は、厚壁部分62が細長C字形状チャネルを形成するように、シース8の軸方向へと長手方向に延在する。
【0045】
薄壁部分64は、厚壁部分62のそれらの端部66、68から延在し、共に管形状を画成する。中央ルーメン38は、その管形状内へと長手方向に延在する。特に、図7は、弾性外方管状層40の初期直径よりも大きな拡張直径にある中央ルーメン38を示す。例えば、内方管状層42は、約0.300±0.004インチである中央ルーメン38を有する。外方管状層40は、約0.185インチの初期弾性ルーメン58を有する。
【0046】
図8および図9は、折り畳まれ外方管状層の初期弾性ルーメン58に嵌入された圧縮状態または折畳み状態にある内方管状層42を示す。圧縮状態では、弾性外方管状層40は、内方管状層42の第2の長手方向延在端部68の下方に第1の長手方向延在端部66を付勢する。これにより、薄壁部分64は、第1の長手方向延在端部66と第2の長手方向延在端部68との間に位置決めされる。
【0047】
図10は、シース8を通り移動するインプラントの側面図を示す。中央ルーメン38に通してインプラントを送る最中に、管状壁部構造体34は、インプラント12の長さおよび幾何学形状に対応した局所的に拡張された状態になる。図7におけるように、この拡張状態では、第1の長手方向延在端部66および第2の長手方向延在端部68は、インプラント12の通過による弾性外方管状層40の付勢に対して、薄壁部分64がこれらの第1の長手方向延在端部66と第2の長手方向延在端部68との間に延在して拡張ルーメンを形成する非重畳状態へと離れるように径方向に拡張する。インプラント12の通過後に、内方管状層42は、弾性外方管状層40により図8および図9に示される圧縮状態へと付勢される。この構成により、14フレンチのシース8は、Edwards Lifesciencesから市販のSapien XTおよびSapien 3の経カテーテル心臓弁などの29mm経カテーテル心臓弁の通過を可能にする。
【0048】
別のオプションとして、内方管状層42は、外方管状層40の1つまたは複数の長手方向延在部分に沿って接着されてもよい。接着は、例えば2つの層間の熱融着または接着剤結合によるものであってもよい。図9に示すように、この長手方向延在部分は、内方管状層42の外方表面が外方管状層40の内方表面に結合されるまたは他の方法で接着される位置であるストリップ70であることが可能である。好ましくは、ストリップ70は、内方管状層42から離れ内方管状層42の折畳みに影響を及ぼさないように、薄壁部分64の対向側に位置決めされる。また、折畳みを抑止することにより、インプラント12を通過させるための押力が上昇する。別の実装形態は、第2の薄結合ストリップ70またはラインを備える。ストリップ70の厚さは多様であることが可能であるが、好ましくは、2つの層の拡張抑止と押力上昇とを軽減するように比較的細い。層40、42間に細い結合ラインを使用することにより、押力への影響を最小限に抑えつつ、これらの層の相互に対する自由回転が防止される。
【0049】
別の実施形態では、図11図15に示すように、シース管状壁部構造体34の遠位先端部24は、血液の侵入を軽減するおよび/またはインプラント12の移動遠位端部における拡張を容易にするために、封止先端部であることが可能である。一態様では、管状壁部構造体34の遠位部分が、図11に示すように内方層40および外方層42を接着させるようにリフロー接合されてもよい。特に、2つの層40、42は、完全拡張状態(拡げられた状態)へと付勢され、次いで外方管状層40の内方表面に内方管状層42の外方表面を結合するためにリフロー接合される。次いで、リフロー接合部分は、圧縮構成または折畳み構成へと戻され、熱収縮層74の下で圧縮されて折り目を設定される。次いで、熱収縮層74は除去される。したがって、図14および図15に示すように、壁部構造体34の遠位端部が折り畳まれると、外方管状層40もまた折り畳まれる。先端部を封止することにより、管状壁部構造体34の高い拡張性能を維持しつつ、シース8の遠位端部における2つの層40、42間への血液の進入が阻止される。
【0050】
リフロー接合された外方管状層40は、放射線不透過性リング72を加えられてもよい。放射線不透過性リング72は、外方管状層40のリフロー接合され折り畳まれた遠位部分の外部に(熱収縮などにより)およびその周囲に接着され得る。このリング72は、外方管状層40の外部に(図13)(リフロー接合などにより)または外方管状層40の内部に(図12)適用されてもよい。好ましくは、リング72は、拡張を可能にし、先端部を折畳み構成に付勢して戻すことを容易にするように、高弾性ポリマーから構成される。
【0051】
有利には、外方管状層40および内方管状層42は、共にシームレスであり、それによりシース8内への漏血が阻止される。内方管状層42がシームレス構成であることにより、従来のC字形シースの端部が不要となる。薄壁部分64が追加されることによりC字形シースの刻み目が不要となることによって、トルク性能が向上する。また、両層は、押出成形プロセスにより容易に製造される。弾性外方管状層40は、殆どの軟性先端部と同様または同一である弾性材料を有することにより、装着がはるかに容易になる。
【0052】
図17図20に示すように、シース8の他の実施形態は、長手方向ロッド60を使用した弾性外方管状層40により囲まれた従来のC字形状内方管状層42を備え得る(図17図20は、本明細書において開示される一体的に形成されたものなどの他のタイプの内方管状層42を使用することもできる)。図17は、外方管状層40の内部表面の周囲において相互に均等に離間された7つの長手方向ロッドの使用を示すが、例外として、1つのロッドが内方管状層42のスプリットに隣接する部分からなくなっている。この間隙により、C字形状内方管状層42の自由エッジの延展および復元が容易になる。図18は、同様ではあるが第8の長手方向ロッド60が存在する構成を示す。しかし、ロッドは、内方管状層42の自由エッジの位置から幾分かオフセットされる。さらに、図18のロッドは、外方管状層40の外方表面から外方に突出して、シースと例えば体腔または追加的な外方送達シースとの間の摩擦を低減させる。
【0053】
図19は、ロッドが外方管状層40に埋設され、内部表面および外部表面から交互に延在する別の実施形態を示す。これは、シース8の前進による摩擦を低減させることが可能であり、例えば層40の外方表面は、体腔または追加の外方送達シースに接触する。図20は、内方管状層42が例えばインプラント12の容易な通過などを助長する複数の長手方向ロッド60をやはり備えた別の実施形態を示す。
【0054】
図17図20の構成にある外方管状層40は、従来のC字形シース内方管状層42上に嵌着するように高弾性の薄構造を有することがさらに可能である。外方管状層40が内方管状層42に接着されないことにより、スリーブと送達カテーテル10との間の移動が自由になる。また、外方管状層40は、漏血を阻止するようにシームレスである。シース8は、全てのセグメントに沿って均等に径方向に伸張されて、引裂きまたは破裂のリスクを軽減させる。また、弾性外方管状層40は、小輪郭構成へとC字形シースを付勢して戻す。作製中には、内方層42は、平坦化または熱ラッピングを用いずに外方層40の内部に容易に嵌められる。実装形態は、多数の長手方向ロッド60を、断面サイズによっては100またはそれ以上の長手方向ロッド60を備え得る。長手方向ロッド60は、摩擦をさらに低減させる微小構造パターンを備えてもよい。
【0055】
図21および図22は、内方管状層42を伴ってまたは伴わずに使用され得る長手方向ロッド60を有するセグメント化された外方管状層40を備えるシース8のさらに別の実施形態を示す。図21に示すように、外方管状層40は、内方表面に沿って軸方向に延在する細長セグメント76を形成する細長刻み目または溝を有する。長手方向ロッド60は、これらの溝に沿って形成または取り付けられる。図21では、長手方向ロッド60は、インプラント12の通過のために摩擦を低減させる湾曲状または円弧形状の頂部表面を有するのが示される。長手方向ロッド60は、HDPE、フッ素重合体、およびPTFEなどの比較的高い剛性の材料から構成される。外方管状層40は、拡張後の復元を容易にするために低い引張永久ひずみを有する高弾性材料(TPE、SBR、シリコーン等)から構成され得る。内方管状層42を用いずに使用される場合には、外方管状層40は、特により高い強度の材料(ロッド)が径方向に連結されないことにより、さらに低下した拡張力を有し得る。他の変形例は、ロッド60の個数および形状の変更と、外方層40に対するロッドの連結を強化させるための結合層または切下げ部/掛かりの組込みと、剛性および押し込み性の向上のための外方層の外部に対する剛性材料セクションの追加とを含み得る。図22は、インプラント12が通過することによるシース8の膨出を示す。
【0056】
図23図25は、管状壁部構造体34の遠位端部がフレア状部分78を有し得る別の実施形態を示す。フレア状部分78のフレア形状は、医用デバイスの後退中に従来のシースが被る後退中の引っ掛かりまたは干渉の軽減を助ける。フレア状部分78は、図23および図25に示すように、前進用の小輪郭を維持するように導入針80のテーパ状遠位端部の周囲にて折り畳まれるまたは巻きつけられる。折り目の個数およびサイズは、管状壁部構造体34のサイズおよび材料タイプに応じて様々であってもよい。例えば、図25は、3つの折り目を断面図で示す。シース8の遠位端部が定位置におかれた後に、導入針80が除去される。次いで、シース8は、送達カテーテル10およびインプラント12を受けることが可能な状態となる。インプラント12がフレア状部分78に到達すると、次いでこれらの折り目は、開かれ図24に示すようなフレア状構成へと拡張される。フレア状部分78は、インプラント12が後退可能となるようにこのフレア状構成に留まる。
【0057】
図26図29は、シース8の別の実施形態を示す。このシース8は、近位端部(図27において断面で示されるような)から遠位端部(図28および図29)まで延在する管状壁部構造体34を備える。一般的には、管状壁部構造体34は、内方管状層42、内方先端部層81、ひずみ逃がし管状層82、外方先端部層84、および弾性外方管状層40を備える。
【0058】
示すように、管状壁部構造体34は、軸方向位置によって異なる層を有する。壁部構造体34は、図27に示すように近位端部から約2/3の位置で終端するひずみ逃がし管状層82を備える。このひずみ逃がし管状層82は、好ましくは、送達装置10の初期挿入に応じるためにハブ20および他の構成要素に接合された場合にシース8の近位端部のひずみに耐え得るHDPEなどの比較的剛性の材料から構成される。ひずみ逃がし層82は、シース8の遠位端部のより高い可撓性およびより小さな輪郭を助長するためにシース8の遠位端部の手前で終端する。
【0059】
ひずみ逃がし管状層82を越えて管状壁部構造体34を延在させることにより、2つの層すなわち内方管状層42および弾性外方管状層40へと減少する。図27に示すシース8の部分の最近位端部において、内方管状層は、折畳み構成で厚壁部分62および薄壁部分64へと分かれる(断面において)。
【0060】
図28および図29に示すように、シース8は、壁部構造体34をテーパ状にし血液または流体の侵入から層の自由端部を封止するように構成された先端部構造(内方先端部層81および外方先端部層84を含む)を遠位端部に備える。一般的に、これらの構成要素は、剛化層を含むいくつかの追加層を有することで壁部構造体34の長さ部分の直径を増径させ、次いでテーパ状に先細り内方管状層42の遠位自由端部にて終端する。
【0061】
内方管状層42は、上述のものと同様である。内方管状層42は、厚壁部分62に対して折畳み構成へと折り畳まれるように構成された薄壁部分64を備える。また、弾性外方管状層40は、内方管状層42の拡張を拘束する。しかし、外方管状層40の弾性は、インプラント12または他のデバイスの通過のためにより広い中央ルーメン38内へと少なくとも部分的に内方管状層が拡げられ得るように克服されることも可能である。
【0062】
図28に示すように、内方先端部層81は、軸方向長さに短くのみ延在する。特に、内方先端部層81は、折畳み可能な内方管状層42の最遠位端部の周囲におよびそれを越えて延在して、折畳み可能な内方管状層の自由端部を遠位方向に越えて延在した後により小径の自由端部へとテーパ状をなす。図29のシース8の長軸に対して直交する断面で示すように、内方先端部層81は、C字形状断面を有する(C字形状の頂部は、壁部構造体34の重畳層を考慮して幾分か拡張され、それにより自由長手方向エッジが径方向に離間されて間隙を形成する)。C字形状断面により、内方先端部層81の自由長手方向エッジ同士は、内方管状層42が拡がる最中に離間されることが可能となる。有利には、内方管状層42は、比較的剛性の材料構造を有することにより、シース8の遠位端部が平滑化、剛化、およびテーパ状化され、内方管状層42の自由端部に対して幾分かの保護が与えられる。また、有利には、内方先端部層81は、内方管状層42の遠位端部を越えて延在し、それにより血液および流体の侵入に対して厚壁部分62および薄壁部分64を封止する。
【0063】
外方先端部層84は、内方先端部層81および内方管状層42の遠位部分を越えて延在してそれらに接着される。外方先端部層84は、内方先端部層81の近位エッジを覆い、内方管状層42に対してこの近位エッジを封止する。外方先端部層84は、比較的曲げ可能な材料からなり、薄壁部分64に直接接着される場合には、図28に示すようにそれ自体に対して折り畳まれ得る。有利には、次いで、外方先端部層84は、厚壁部分62および薄壁部分64が拡がる後を辿って、内方管状層42に対する内方先端部81の封止を継続する。注目すべき点としては、外方先端部層84が拡がることにより、C字形状内方先端部層81の自由長手方向エッジ同士は、シース8の調整されたルーメン拡張のために離間状態になり得る。しかし、また同時に、内方先端部層81の剛性および外方先端部層84の追加的補強により、先端部の剛性および安定性の維持が補助される。
【0064】
弾性外方管状層40は、外方先端部層84の遠位端部を越えることを含め、シース8の遠位端部まで全長にわたり延在する。さらに、弾性外方管状層の内部は、軸方向に延在する、および表面積を縮小し潤滑性を上昇させることにより拡がり抵抗を軽減させるロッド60を備える。
【0065】
また、シース8は、植込みまたは他の医療手技の最中に放射線透視下において配向および深さの示唆を与える放射線不透過性マーカバンドまたは放射線不透過性層部分86を備えてもよい。
【0066】
図30から図38は、シース8の別の実施形態のための剛化され封止された先端部を組み立てる方法を示す。図30図38は、この組立て方法を受けるにつれて変化する同一のシース8の図を示す。図30および図31は、拡げられた構成における内方管状層42を(右側)示す。追加の管状層92(ひずみ逃がし層または弾性層など)(左側)は、内方管状層42を越えて延在するが、内方管状層の自由端部の手前で終端する。図31は、内方管状層42に装着された放射線不透過性マーカ86の部分を示す。
【0067】
図32は、先端部拡張を可能にするために自由端部に切り込まれた窓またはV字形状切欠部90を有する内方管状層42を示す。また、V字形状切欠部90は、インプラントの後退を容易にする。また、図32は、内方管状層の外部の周囲に延在するC字形状内方先端部層81を示す。図33は、内方管状層42の対向側の第2の切欠部90を示す。また図33では、一部が構成されたシース8の遠位先端部が、他の層の折畳みおよび装着を容易にするためにマンドレル94を越えて延在される。
【0068】
図34は、追加管状層92の遠位自由端部の周囲に、ならびに出現しつつある内方管状層42の遠位端部を越えて延在する近位封止層96の適用による近位止血シールの形勢を示す。図34に示す実施形態では、近位封止層96は、V字形状切欠部90が封止層96の下方から視認可能となるように透明である。封止層96の近位セクション98が、追加管状層92と内方管状層42との間の移行部を封止するために熱処理され、いくつかの実施形態では、これにより封止層96の残りの部分よりも光沢のある外観が近位セクション98に与えられ得る。近位セクション98は、血液および他の流体が2つの層42、92間に進入するのを阻止する。
【0069】
図35は、層42、92、および96が自体に対して折り畳まれるのを示す。図36は、ロッド60を有する弾性外方管状層40またはジャケットが、このとき折り畳まれている層42、92、および96上に拡げられるのを示す。図37は、外方管状層40自体が、遠位端部にて若干折り畳まれ、遠位封止層100を上に適用されているのを示す。遠位封止層100を越えて延在する近位封止層96の自由端部の余剰部分が、切除される。有利には、遠位封止層は、層40、42、および96の遠位自由端部をテーパ状構成へと付勢し、ガイドワイヤを介した挿入および前進を容易にする管状壁部構造体34用の丸み遠位端部を形成する。
【0070】
開示される本発明の原理を適用し得る多数の可能な実施形態を鑑みて、示された実施形態は、本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない点を理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義される。したがって、これらの請求項の範囲および主旨の範囲内に含まれるあらゆるものを我々の発明として特許請求する。
【符号の説明】
【0071】
8 シース
10 送達装置
12 インプラント
14 操縦可能ガイドカテーテル
16 バルーンカテーテル
20 ハブ
21 ハブルーメン
22 フレア状近位端部
24 遠位先端部
26 止血弁
28 側部ポート
30 ねじ山付き遠位雄端部
32 ねじ山付き雌コネクタ
34 管状壁部構造体
38 中央ルーメン
40 弾性外方管状層
42 内方管状層
44 外方壁部
46 内方壁部
48 保持具
50 円筒状バルジ
52 ネック
54 環状空間
56 三日月形状空間
58 初期弾性ルーメン
60 長手方向ロッド
62 厚壁部分
64 薄壁部分
66 第1の長手方向延在端部
68 第2の長手方向延在端部
70 ストリップ
72 放射線不透過性リング
74 熱収縮層
76 細長セグメント
78 フレア状部分
80 導入針
81 内方先端部層
82 ひずみ逃がし管状層
84 外方先端部層
86 放射線不透過性マーカバンド、放射線不透過性層部分
90 V字形状切欠部
92 追加管状層
94 マンドレル
96 近位封止層
98 近位セクション
100 遠位封止層
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
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【外国語明細書】