(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137233
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】シェーグレン症候群の治療に使用するための抗CD40抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220913BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220913BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220913BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220913BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220913BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220913BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220913BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P37/02
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/22
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113630
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2020523246の分割
【原出願日】2018-10-31
(31)【優先権主張番号】62/581,212
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/644,939
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】エスピー,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ゲアゲリー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュ,ジェイムズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シェーグレン症候群の治療に使用するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】シェーグレン症候群の治療に使用するための抗CD40抗体を含む医薬組成物であって、前記抗CD40抗体は、N297A変異を含み、かつ以下のaを含む群から選択され;
a.特定の配列のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、別の特定の配列のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
前記抗CD40抗体は負荷投薬及び維持投薬を通して投与され、前記負荷投薬は、第1の用量の皮下注射を介して投与され、且つ前記維持投薬は、第2の用量の皮下注射を介して投与され、前記第1の用量は、約600mgの活性成分であり、且つ前記第2の用量は、約300mg~約600mgの活性成分である、医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェーグレン症候群の治療に使用するための抗CD40抗体を含む医薬組成物であって、
前記抗CD40抗体は、N297A変異を含み、かつ以下のa~cからなる群から選択され;
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、及び
c.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、
前記抗CD40抗体は負荷投薬及び維持投薬を通して投与され、前記負荷投薬は、第1の用量の皮下注射を介して投与され、且つ前記維持投薬は、第2の用量の皮下注射を介して投与され、前記第1の用量は、約600mgの活性成分であり、且つ前記第2の用量は、約300mg~約600mgの活性成分である、医薬組成物。
【請求項2】
シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1種又は複数の薬学的に許容し得る担体を含み、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための抗体を治療有効量で含む医薬組成物。
【請求項5】
前記負荷投薬は、少なくとも2回の皮下注射を含み、且つ前記維持投薬は、毎週(Q1W)、隔週(Q2W)又は毎月(Q4W)の皮下注射からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造のための、抗CD40抗体、緩衝液、安定剤及び可溶化剤を含む液体医薬組成物の使用。
【請求項7】
シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群である、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願
本出願は、その内容の全体が組み込まれる、2017年11月3日に出願された米国仮
特許出願第62/581212号明細書及び2018年3月19日に出願された米国仮特
許出願第62/644939号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、CFZ533などの抗CD40抗体を用いることにより、原発性シェーグレ
ン症候群又は続発性シェーグレン症候群などのシェーグレン症候群を治療するための方法
、治療レジメン、使用、キット及び治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
原発性シェーグレン症候群(pSS)又は続発性シェーグレン症候群(sSS)などの
シェーグレン症候群(SS)は、原因不明の一般的な慢性の自己免疫疾患である。
【0004】
原発性SS患者と続発性SS患者との両方における疾患の特徴としては、唾液腺及び涙
腺における抗Ro及び抗La自己抗体の存在並びに単核細胞浸潤が挙げられる(Bomb
ardieri,et al.2012)。場合により、T及びBリンパ球のこれらの蓄
積は、GCとの形態的及び機能的類似性を有する異所性リンパ構造(ELS)と称される
十分に組織化された構造を形成する(Voulgarelis et al.2008)
。先行研究は、SS患者及びこの疾患の前臨床モデルからの唾液腺におけるELSのエビ
デンス並びに進行中の親和性成熟のエビデンスを報告しており(Jacobi et a
l.2002;Stott et al.1998;Bombardieri et a
l.2012)、これらの構造を疾患病態に関連付けている(Bombardieri
et al.2017)。
【0005】
この疾患の生活の質(QoL)尺度に対する影響は、かなりのものであり、比較研究は
、pSS QoLがうっ血性心不全又は多くの癌よりも量的に悪いスコアであることを示
した(Segal et al 2009;Kuenstner et al 2002
;Komaroff et al 1996)。さらに、SSにおけるB細胞活性の増大
は、SS患者の5%に生じるリンパ腫発生を伴う悪性転換のリスクの増大をもたらす。S
S患者の治療は、粘膜の徴候及び症状の対症処置に限られ、今日まで、SS患者に対する
根拠に基づく全身療法は、利用可能ではない。
【0006】
糖質コルチコイド及び典型的な疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)は、大抵、有効で
はなく、いかなる薬理学的介入も、重度の、日常生活に支障をきたす倦怠に対して有効で
ない。有効性の説得力のあるエビデンスがないにもかかわらず、全身性エリテマトーデス
などの類似の自己免疫疾患からの事例証拠及び経験に基づいて、特に腎臓又は関節合併症
などの腺外の症状の治療に対して抗マラリア薬(Tishler et al 2008
)、メトトレキサート(Winzer and Aringer 2010)又はアザチ
オプリン(Kaufman et al 1999)がときに使用される。
【0007】
B細胞枯渇剤リツキシマブを用いる小さい試験は、ある程度の治療有効性を示している
が、いかなる正規の大きい無作為化された対照試験も、腺外の及び腺の疾患顕在化に関す
る明確な有効性を示していない。分泌腺破壊を予防し、且つ腺外の疾患顕在化に対処する
疾患修飾薬は、慢性pSSなどのSSの治療に対する革新的な進歩を導入するであろう。
【0008】
CFZ533は、ヒトCD40に対して誘導されるヒトモノクローナル抗体である。こ
れは、IgG1アイソタイプサブクラスに属し、FcγR結合並びにADCC及びCDC
のような関連するエフェクター機能を無効にするFc-サイレンシング変異(N297A
)を含む。CFZ533は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第882839
6号明細書及び米国特許第9221913号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ADCC活性が抑制されたヒト、抗CD40モノクローナル抗体がシェーグレン症候群
の治療に好適であることが判明した。具体的には、抗体CFZ533が、概念実証研究に
おいて、臨床的に活動性のpSSにおける新規の治療モダリティを提供する見込みを示し
た。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、シェーグレン症候群の治療に使用するための抗CD40
抗体が提供される。一実施形態では、シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群
である。
【0011】
抗体は、
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫
グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高
頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD
40抗体、
d.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD
40抗体、及び
e.サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体
からなる群から選択され得る。
【0012】
抗体は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列
番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含むことができる。
【0013】
一実施形態では、治療有効量の、第1の態様による使用のための抗体と、1種又は複数
の薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0014】
一実施形態では、投与経路は、第1の態様による抗体の皮下若しくは静脈内又は皮下若
しくは静脈内の組み合わせである。
【0015】
用量は、ヒト対象の1キログラムあたり約3mg~約30mgの活性成分であり得る。
この用量を毎週、2週おき又は4週おきに与えることができる。
【0016】
一実施形態では、用量は、ヒト対象の1キログラムあたり約10mgの活性成分である
。
【0017】
一実施形態では、用量は、約150mg~約600mgの活性成分である。この用量を
毎週、2週おき又は4週おきに与えることができる。
【0018】
一実施形態では、用量は、約300mgの活性成分である。
【0019】
ある好ましい実施形態では、用量は、150mgの活性成分である。別の好ましい実施
形態では、用量は、300mgの活性成分である。さらに別の好ましい実施形態では、用
量は、600mgの活性成分である。
【0020】
一実施形態では、抗体は、負荷投薬及び維持投薬を通して投与される。
【0021】
一実施形態では、負荷投薬は、第1の用量の皮下注射を介して投与され、且つ維持投薬
は、第2の用量の皮下注射を介して投与される。第1の用量は、第2の用量と同じである
か又は第2の用量よりも高いことができる。
【0022】
一実施形態では、第1の用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約3
00mgの活性成分であり、且つ第2の用量は、約150mg~約600mgの活性成分
、例えば約300mgの活性成分である。
【0023】
一実施形態では、第1の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分で
あり、且つ第2の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分である。
【0024】
一実施形態では、負荷投薬は、少なくとも2回の皮下注射を含み、且つ維持投薬は、毎
週(Q1W)、隔週(Q2W)又は毎月(Q4W)の皮下注射からなる。一実施形態では
、負荷投薬は、2回の皮下注射からなる。別の実施形態では、負荷投薬は、3回の皮下注
射からなる。
【0025】
一実施形態では、負荷投薬の各皮下注射は、異なる用量である。別の実施形態では、負
荷投薬の各皮下注射は、同じ用量である。
【0026】
第2の態様によれば、ヒト対象におけるシェーグレン症候群を治療する方法であって、
治療有効用量の抗CD40抗体を前記対象に投与することを含む方法が提供される。好ま
しい実施形態では、シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群である。
【0027】
一実施形態では、抗体は、
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫
グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高
頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD
40抗体、
d.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD
40抗体、及び
e.サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される。
【0028】
一実施形態では、抗体は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミ
ノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含
む。
【0029】
一実施形態では、抗体は、1種又は複数の薬学的に許容し得る担体と共に投与される。
【0030】
一実施形態では、抗体は、皮下若しくは静脈内又は皮下若しくは静脈内の組み合わせで
投与される。
【0031】
一実施形態では、抗体は、ヒト対象の1キログラムあたり約3mg~約30mgの活性
成分の用量として投与される。
【0032】
一実施形態では、用量は、ヒト対象の1キログラムあたり約10mgの活性成分である
。
【0033】
一実施形態では、抗体は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約300m
gの活性成分の用量として投与される。
【0034】
ある好ましい実施形態では、用量は、150mgの活性成分である。別の好ましい実施
形態では、用量は、300mgの活性成分である。さらに別の好ましい実施形態では、用
量は、600mgの活性成分である。
【0035】
一実施形態では、抗体は、負荷投薬及び維持投薬で投与される。
【0036】
一実施形態では、負荷投薬は、第1の用量の皮下注射を介して投与され、且つ維持投薬
は、第2の用量の皮下注射を介して投与される。
【0037】
第1の用量は、第2の用量と同じであるか又は第2の用量よりも高いことができる。
【0038】
一実施形態では、第1の用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約3
00mgの活性成分であり、且つ第2の用量は、約150mg~約600mgの活性成分
、例えば約300mgの活性成分である。
【0039】
一実施形態では、第1の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分で
あり、且つ第2の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分である。
【0040】
一実施形態では、負荷投薬は、少なくとも2回の皮下注射を含み、且つ維持投薬は、毎
週(Q1W)、隔週(Q2W)又は毎月(Q4W)の皮下注射からなる。
【0041】
一実施形態では、負荷投薬は、2回の皮下注射からなる。別の実施形態では、負荷投薬
は、3回の皮下注射からなる。
【0042】
一実施形態では、負荷投薬の各皮下注射は、異なる用量である。別の実施形態では、負
荷投薬の各皮下注射は、同じ用量である。
【0043】
第3の態様によれば、シェーグレン症候群の治療のための医薬品の製造のための、抗C
D40抗体、緩衝液、安定剤及び可溶化剤を含む液体医薬組成物の使用並びにシェーグレ
ン症候群を有する患者に抗CD40抗体を皮下投与するための手段が提供され、ここで、
抗CD40抗体は、
a.第1の負荷投薬で、且つ
b.その後、第2の維持投薬で皮下投与され、ここで、前記抗CD40抗体は、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
ii.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免
疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される
高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
iii.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8の
アミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗
CD40抗体、
iv.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のア
ミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗C
D40抗体、
v.サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体、及び
vi.配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号
11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される。
【0044】
好ましい実施形態では、シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】pSS患者におけるCFZ533についての概念実証研究(CCFZ533X2203)の第1の及び第2のコホートの研究デザインの概略図である。
【
図2】pSS患者におけるCFZ533についての概念実証研究(CCFZ533X2203)の第3のコホートの研究デザインの概略図である。
【
図3】概念実証研究CCFZ533X2203を開始する前の予備的なシミュレートした薬物動態プロフィールを示すグラフである。
【
図4】静脈内投与後の薬物動態プロフィールを示すグラフである(研究CCFZ533X2203のコホート2;中間解析)。
【
図5】IV投与後の臨床スコア(ESSDAI)を示すグラフである(コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図6】IV投与後のバイオマーカーレベル(CXCL13)を示すグラフである(コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図7】IV投与後の異なる臨床エンドポイントに対する治療結果を示す概略図である(コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図8】薬力学プロフィールを示すグラフである(IV投与後の血漿における総可溶型CD40;コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図9】皮下投与後の臨床スコア(ESSDAI)を示すグラフである(コホート1;研究CCFZ533X2203)。
【
図10】皮下投与後の薬物動態プロフィールを示すグラフである(コホート1;研究CCFZ533X2203)。
【
図11】SC投与後の薬力学プロフィール(総可溶型CD40)を示すグラフである(コホート1;研究CCFZ533X2203)。
【
図12】SC投与後の臨床スコア(ESSPRI)を示すグラフである(コホート1;研究CCFZ533X2203)。
【
図13】IV投与後の臨床スコア(ESSPRI)を示すグラフである(コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図14】IV投与後のバイオマーカーレベル(CXCL13)を示すグラフである(コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図15】IV投与後の臨床スコア(ESSDAI)を示すグラフである(コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図16】IV投与後のICAM及びB細胞を示すグラフである(コホート2;研究CCFZ533X2203)。
【
図17】異なる臨床エンドポイントに対する治療結果を示す概略図である(IV及びSC投与;研究CCFZ533X2203)。
【
図18】rCD154誘導性の経路活性化のインビトロCFZ533阻害を示すグラフである。
【
図19】インビトロでのCFZ533最小刺激活性を示すグラフである。
【
図20】CFZ533がインビトロで細胞枯渇を媒介しないことを示すグラフである。
【
図21】recCD154又はCFZ533による結合時のCD40受容体の内在化を示す、個々のRI-1 B細胞の代表的な画像である。
【
図22】非ヒト霊長類におけるCFZ533の薬物動態学的及び薬力学的(標的エンゲージメント;非B細胞枯渇)特性)を示すグラフである。
【
図23】
図23Aは、非ヒト霊長類におけるPK/PD及びワクチン接種研究の実験設計の概略図である。
図23Bは、抗KLH IgG及び血漿CFZ533濃度(薬物動態)を示すグラフである。
図23Cは、胚中心の組織学的分析の結果を示す。
【
図24】
図24A~Cは、皮下に与えられる活性成分の可能な毎週の負荷用量、それに続く(皮下への)活性成分の隔週の維持レジメンの図的表現である。
【
図25】
図25Aは、皮下に与えられる活性成分の可能な毎週の負荷用量、それに続く(皮下への)活性成分の4週おきの投与の図的表現である。
図25Bは、皮下に与えられる活性成分の可能な毎週の負荷用量、それに続く(皮下への)活性成分の毎週の投与の図的表現である。
【
図26】MR1での10週の治療後のNODマウスの実験結果;唾液腺におけるELSにおけるCD40の特徴及び唾液腺における三次リンパ組織の減少を示す。
【
図27】抗CD154での10週の治療後のNODマウスの実験結果;唾液腺におけるAQP-5陽性細胞の割合の増大を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
CD40-CD154(CD154はCD40Lである)経路は、シェーグレン症候群
(SS)の病因において重要な役割を果たすと考えられている。
【0047】
したがって、抑制されたADCC活性を有する抗CD40抗体など、CD40-CD1
54シグナル伝達を遮断する能力があるあらゆるモノクローナル抗体は、SS、例えば原
発性シェーグレン症候群(pSS)の治療に適している可能性がある。
【0048】
理論に拘泥されることを望まないが、本発明者らは、維持レジメン中のCFZ533抗
体の少なくとも約40μg/mLの血漿中濃度の持続が、SS患者、例えばpSS患者の
標的組織におけるCD40-CD40L経路を遮断するのに必要であることを明らかにし
た。また、CFZ533は、標的介在性の消失(これは、標的の代謝回転及び発現に関連
する)にさらされ、且つSS患者は、体内で高いCD40発現を呈しているため、治療の
開始時により高い用量又はより高頻度のレジメンを必要とする、CD40レベルが亢進さ
れている状態では、これらの患者においてCD40受容体を十分に飽和させるために治療
の開始時に負荷レジメンが必要であった。したがって、CD40受容体の迅速な飽和を治
療の開始時に(2~3週)提供する負荷投薬レジメン、それに続く少なくとも40μg/
mL又は少なくとも100μg/mLの血漿中濃度の持続を、治療期間全体を通して提供
する維持投薬レジメンが、罹患した組織においてCD40発現が亢進されるであろう状況
(状態の重症度)において治療効果のために考慮される。定常状態での観察される最大血
漿中濃度は、約300~400μg/mL(コホート3;研究CCFZ533X2203
)であり、感染症のリスク増大を示唆する重大なシグナルが存在せずに概ね安全且つ良好
な耐容性を示した。血栓塞栓症は、観察されなかった。
【0049】
適切な投薬量は、例えば、個々のCD40経路アンタゴニスト、例えば用いられる抗C
D40抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、mAb1(本明細書ではCFZ533と
も呼ばれる)、mAb2、ASKP1240)又は抗CD40L抗体(例えば、BIIB
063)若しくはその抗原結合断片、治療の対象、投与様式及び治療される状態の性質及
び重症度に応じて、また患者が受けてきた前治療の性質に応じて変わる。最終的に、担当
する医療提供者が、それぞれ個々の患者を治療するCD40経路アンタゴニストの量を決
定する。いくつかの実施形態では、担当する医療提供者は、低用量のCD40経路アンタ
ゴニストを投与し、患者の反応を観察することができる。他の実施形態では、患者に投与
されるCD40経路アンタゴニストの初回用量は、高く、その後、再発の徴候が生じるま
で下向きに用量調整される。患者にとって最適な治療効果が得られるまで、より大きい用
量のCD40経路アンタゴニストを投与することができ、この投薬量は、一般に、それ以
上増大させない。
【0050】
本開示の治療又は使用の方法のいくつかを実施する際、治療有効量のCD40経路アン
タゴニスト、例えば抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、mAb1(本明
細書ではCFZ533とも呼ばれる)、mAb2、ASKP1240)又は抗CD40L
抗体若しくはその抗原結合断片が患者、例えば哺乳類(例えば、ヒト)に投与される。開
示した方法は、CD40経路アンタゴニスト(例えば、mAb1/CFZ533、mAb
2、ASKP1240)を使用してSS患者の治療を提供することが理解されるが、これ
は、患者が最終的にCD40経路アンタゴニストで治療される場合、こうしたCD40経
路アンタゴニスト療法が必然的に単剤療法であることを排除しない。実際、患者がCD4
0経路アンタゴニストでの治療について選択される場合、CD40経路アンタゴニスト(
例えば、mAb1/CFZ533、mAb2、ASKP1240)は、本開示の方法に従
い、単独で又は他の薬剤及び治療法と組み合わせて投与することができる。
【0051】
ある種のSS患者、例えばpSS患者、例えば用いられるCD40経路アンタゴニスト
、例えば抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、mAb1(本明細書ではC
FZ533とも呼ばれる)、mAb2、ASKP1240)又は抗CD40L抗体若しく
はその抗原結合断片での治療に対して不十分な反応を呈する患者にとってレジメン変更が
適切であり得ることが理解されるであろう。したがって、投与(例えば、mAb1/CF
Z533又はmAb2)は、毎月の投薬よりも高頻度、例えば隔週の投薬(2週おき)又
は毎週の投薬であり得る。
【0052】
一部の患者は、負荷レジメン(例えば、数週間の毎週投与[例えば、1~4週、例えば
第0、1、2及び/又は3週、例えば2週での投薬、第0及び1週での負荷投薬レジメン
]、それに続く例えば第3又は4週で開始する維持レジメン(ここで、CFZ533は、
毎週、隔週又は4週おきに数週間投与することができる)から恩恵を受ける可能性が高い
。
【0053】
例えば、mAb1/CFZ533又はmAb2にとって適切なレジメンは、毎週、数週
間[例えば、1~4週、例えば第0、1、2及び3週での投薬]、それに続く毎月の維持
レジメンであり得る。
【0054】
別の例では、mAb1/CFZ533又はmAb2にとって適切なレジメンは、毎週、
数週間(例えば、2~8週、例えば3週、例えば第0、1、2週での投薬)、それに続く
隔週の維持レジメンである。
【0055】
投与(例えば、mAb1/CFZ533又はmAb2について)は、毎月の投薬よりも
低頻度、例えば6週おき、8週おき(2か月おき)、年4回(3か月おき)の投薬などで
あり得ることも理解されるであろう。
【0056】
ある種のSS患者、例えばpSS患者、例えば用いられるCD40経路アンタゴニスト
、例えば抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、mAb1(本明細書ではC
FZ533とも呼ばれる)、mAb2、ASKP1240)又は抗CD40L抗体若しく
はその抗原結合断片での治療に対して不十分な反応を呈する患者にとって、疾患の重症度
に基づいて用量漸増が適切であり得ることが理解されるであろう。したがって、皮下(s
.c.)投薬量(負荷又は維持用量)は、約150mg~約900mg(s.c.)、例
えば約75mg、約100mg、約125mg、約175mg、約200mg、約250
mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mgなどよ
りも大きい可能性があり、同様に、静脈内(i.v.)投薬量は、約10mg/kg、例
えば約11mg/kg、12mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/
kg、30mg/kg、35mg/kgなどよりも大きい可能性がある。ある種のSS患
者、例えばpSS患者、例えばCD40経路アンタゴニスト(例えば、抗CD40抗体若
しくはその抗原結合断片(例えば、mAb1(本明細書ではCFZ533とも呼ばれる)
、mAb2、ASKP1240)又は抗CD40L抗体若しくはその抗原結合断片)での
治療に対する有害事象又は有害反応を呈する患者にとって用量低下が適切である可能性も
あることも理解されるであろう。したがって、CD40経路アンタゴニスト(例えば、抗
CD40抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、mAb1(本明細書ではCFZ533
とも呼ばれる)、mAb2、ASKP1240)又は抗CD40L抗体若しくはその抗原
結合断片)の投薬量は、約150mg~約900mg(s.c.)、例えば約25mg、
約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約175mg、約200mg、
約250mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600m
gなどよりも小さい可能性がある。
【0057】
いくつかの実施形態では、CD40アンタゴニスト、例えば抗CD40抗体若しくはそ
の抗原結合断片(例えば、mAb1(本明細書ではCFZ533とも呼ばれる)、mAb
2、ASKP1240)又は抗CD40L抗体若しくはその抗原結合断片は、s.c.送
達される600mgの初回用量で患者に投与することができ、この用量は、その後、医師
によって決定される通り、必要に応じて、s.c.送達される150mg又は300mg
に調整することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、CD40アンタゴニスト、例えば抗CD40抗体若しくはそ
の抗原結合断片(例えば、mAb1(本明細書ではCFZ533とも呼ばれる)、mAb
2、ASKP1240)又は抗CD40L抗体若しくはその抗原結合断片は、i.v.送
達される10mg/kgの初回用量で患者に投与することができ、この用量は、その後、
医師によって決定される通り、必要に応じて、s.c.送達される150mg又は300
mgに調整することができる。
【0059】
具体的実施形態では、第1日(D1)、第15日(D15)、D29、D57、D85
、D99、D113及びD141に3mg/kg CFZ533がs.c.投与される。
【0060】
別の具体的実施形態では、D1、D15、D29、D57、D85、D99、D113
及びD141に10mg/kg CFZ533がi.v.投与される。
【0061】
さらに別の具体的実施形態では、600mg CFZ533の4つの単位用量を含む負
荷用量が週1回(Q1W)s.c.投与され(すなわちD1、D8、D15及びD22で
の600mg CFZ533(s.c.))、それに続いて300mgの単位用量を含む
維持用量が週1回(Q1W)s.c.投与される(すなわちD29からD85までの週1
回の300mg CFZ533(s.c.))。
【0062】
さらなる具体的実施形態では、対象1kgあたり10mgのCFZ533の単回用量を
含む負荷用量が第1日に1回i.v.投与され、それに続いて300mgの単位用量を含
む維持用量が週1回(Q1W)s.c.投与される(すなわちD8からD85までの週1
回の300mg CFZ533(s.c.))。
【0063】
CFZ533は、年4回、毎月、毎週又は隔週、例えば皮下に約75mg、約150m
g、約300mg、約450mg又は約600mgの単位用量で皮下注射により、約75
mg~約600mg又は約150mg~約300mgが投与される投薬で投与することが
できる。
【0064】
CFZ533は、約150mg~約600mgの負荷用量で毎週、皮下注射により投与
することができ、ここで、この負荷用量は、1~4週間にわたって投与される。
【0065】
負荷用量は、約10mg/kg~約30mg/kgのi.v.投与でもあり得る。また
、負荷用量は、約150mg、300mg及び/又は600mgの活性成分の用量で毎週
又は隔週、皮下に投与することができる。
【0066】
CFZ533の負荷レジメン又は投薬(150/300/600mgなど、毎週又は隔
週)に、毎週、隔週又は毎月(4週おきに)投与される維持レジメン又は投薬が続くこと
が好ましい。維持用量は、毎週若しくは隔週300mg(s.c.)、又は隔週600m
g、又は4週おきに600mgであることが好ましい。
【0067】
抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、CFZ533、その機能性誘導体又はそのバ
イオ後続品であり得る。
【0068】
本明細書で定義される場合、「単位用量」は、約75mg~900mg、例えば約15
0mg~約600mg、例えば約150mg~約600mg、例えば約300mg~約6
00mg又は例えば約150mg~約300mgから構成され得るs.c.用量を指す。
例えば、単位s.c.用量は、約75mg、約150mg、約300mg、約350mg
、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mgである。
【0069】
定義
本明細書で使用する場合、CD40は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバ
ー5とも呼ばれる表面抗原分類40を指す。用語CD40は、別段の記述がない限り、配
列番号19において定義される通りのヒトCD40を指す。
【0070】
数値xに関する用語「約」は、例えば、+/-10%を意味する。数値範囲又は数の列
挙の前に使用される場合、用語「約」は、系列内のそれぞれの数に適用される。例えば、
表現「約1~5」は、「約1~約5」と解釈されるべきであるか、又は例えば、表現「約
1、2、3、4」は、「約1、約2、約3、約4など」と解釈されるべきである。
【0071】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組
成物は、Yを完全に含まない可能性がある。必要に応じて、単語「実質的に」は、本開示
の定義から省くことができる。
【0072】
用語「含む」は、「包含する」並びに「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組
成物は、専らXのみからなる可能性があるか、又は何らかの追加のものが含まれる(例え
ば、X+Y)可能性がある。
【0073】
AUC0-tは、時間0から時間「t」(ここで、tは、投与後の定義された時点であ
る)までの血漿中濃度-時間曲線下面積を示す[質量×時間/体積]。
【0074】
AUCtx-tyは、時間「x」から時間「y」(ここで、「時間x」及び「時間y」
は、投与後の定義された時点である)までの血漿中濃度-時間曲線下面積を表す。
【0075】
Cmaxは、薬物投与後に観察される最大血漿中濃度である[質量/体積]。
【0076】
Cminは、薬物投与後に観察される最小血漿中濃度である。
【0077】
Cトラフは、投薬期間の開始の直前又は投薬間隔の最後に観察される血漿中濃度である
。
【0078】
Tmaxは、薬物投与後に最大濃度に到達するまでの時間である[時間]。
【0079】
ss(下付き文字)は、パラメータが定常状態で定義されることを示す。
【0080】
本明細書で使用される用語「抗体」又は「抗CD40抗体」などは、CD40と(例え
ば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって)相互作用する抗体全体を指
す。天然起源の「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2本の
重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とを含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(
本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメ
イン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVL
と略される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからな
る。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存される領域
に割り込まれた、相補性決定領域(CDR)と称される高頻度可変性の領域にさらに細分
化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序
:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列される3つの
CDR及び4つのFRからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ド
メインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞
)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含めた宿主組織又は因子への免疫グロブリ
ンの結合を媒介することができる。用語「抗体」には、例えば、モノクローナル抗体、ヒ
ト抗体、ヒト化抗体、ラクダ抗体又はキメラ抗体が含まれる。抗体は、あらゆるアイソタ
イプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば
、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスの
もの、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1であり得る。例示的な抗体としては、
表1に記述した通り、CFZ533(本明細書ではmAb1とも称される)及びmAb2
が挙げられる。
【0081】
軽鎖及び重鎖の両方は、構造的及び機能的相同性の領域に分けられる。用語「定常」及
び「可変」は、機能に関して使用される。この点に関して、軽(VL)鎖部分と重(VH
)鎖部分との両方の可変ドメインが抗原認識及び特異性を決定することを理解されたい。
逆に、軽鎖(CL)及び重鎖(CH1、CH2又はCH3)の定常ドメインは、分泌、経
胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などの重要な生物学的性質を与える。慣例により
、定常領域ドメインの付番は、抗体の抗原結合部位又はアミノ末端から遠位になるにつれ
て増加する。N末端は、可変領域であり、C末端は、定常領域であり、CH3及びCLド
メインは、それぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を事実上含む。具体的には、用語「抗
体」には、特にIgG-scFv型が含まれる。
【0082】
抗体の用語「抗原結合部分」(又は単に「抗原部分」)は、本明細書で使用する場合、
抗原又はエピトープと特異的に結合する能力を保持するタンパク質など、抗体の全長又は
1つ又は複数の断片(例えば、CD40の一部)を指す。
【0083】
「相補性決定領域」(「CDR」)は、Kabat et al.(1991),「S
equences of Proteins of Immunological In
terest,」5th Ed.Public Health Service,Nat
ional Institutes of Health,Bethesda,MD(「
Kabat」ナンバリングスキーム)、Al-Lazikani et al.,(19
97)JMB 273,927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム)及
びImMunoGenTics(IMGT)ナンバリング(Lefranc,M.-P.
,The Immunologist,7,132-136(1999);Lefran
c,M.-P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77
(2003)(「IMGT」ナンバリングスキーム)によって記載されているものを含め
た、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定される境界を伴うアミノ酸配列
である。IMGTでは、抗体のCDR領域は、IMGT/DomainGap Alig
nプログラムを使用して決定することができる。
【0084】
本明細書で使用される用語「エピトープ」は、免疫グロブリンに高い親和性で結合する
能力があるあらゆる決定基を指す。エピトープは、その抗原を特異的に標的にする抗体に
よって結合される抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合、抗体と直接的に接触
する特異的なアミノ酸が含まれる。エピトープは、タンパク質上に存在することが最も多
いが、核酸などの他の種類の分子上に存在する場合もあり得る。エピトープ決定基は、ア
ミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面集団を含
むことができ、特異的な三次元構造特性及び/又は特異的な電荷特性を有することができ
る。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別の遺伝子によってコードさ
れるが、これらが単一のタンパク質鎖(ここで、VL領域とVH領域とが対合して、一価
の分子(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al.,(19
88)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(
1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照さ
れたい)を形成する)として振る舞うことを可能にする合成のリンカーにより、組換え方
法を使用してこれらを連結することができる。
【0085】
表現「単離された抗体」は、本明細書で使用する場合、異なる抗原特異性を有する他の
抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、CD40と特異的に結合する単離された抗
体は、CD40以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、CD
40と特異的に結合する単離された抗体は、他の種由来のCD40分子などの他の抗原と
の交差反応性を有することができる。さらに、単離された抗体は、他の細胞性材料及び/
又は化学物質を実質的に含まない可能性がある。本明細書で使用する場合の用語「モノク
ローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成の抗体分子の調製を
指す。用語「ヒト抗体」には、本明細書で使用する場合、そのフレームワークもCDR領
域もヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体が含まれることが意図される。「ヒ
ト抗体」は、ヒト、ヒト組織又はヒト細胞によって産生される必要はない。本開示のヒト
抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダ
ム又は部位特異的変異誘発により、抗体遺伝子の組換え中のインビボでのジャンクション
でのN-ヌクレオチド付加により、又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)
を含むことができる。
【0086】
天然のポリペプチド及びその機能性誘導体に関する「同一性」は、本明細書では、最大
のパーセント同一性を得るために、必要に応じて配列を整列し、ギャップを導入した後の
、対応する天然のポリペプチドの残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の割合と定
義され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなされない。N又はC末端伸長部も
挿入も同一性を低下させると解釈されないものとする。アラインメントのための方法及び
コンピュータプログラムは、周知である。パーセント同一性は、標準のアラインメントア
ルゴリズム、例えばAltshul et al.((1990)J.Mol.Biol
.,215:403 410)によって記載されているBasic Local Ali
gnment Search Tool(BLAST);Needleman et a
l.((1970)J.Mol.Biol.,48:444 453)のアルゴリズム;
又はMeyers et al.((1988)Comput.Appl.Biosci
.,4:11 17)のアルゴリズムによって決定することができる。一連のパラメータ
は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ及び5のフレームシフトギ
ャップペナルティを伴うBlosum 62スコア行列であり得る。2つのアミノ酸又は
ヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM120重み剰余テーブル、12のギャ
ップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(ve
rsion 2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller((1
989)CABIOS,4:11-17)のアルゴリズムを使用して決定することもでき
る。
【0087】
「アミノ酸」は、すべての天然起源のL-α-アミノ酸を指し、例えばD-アミノ酸が
含まれる。表現「アミノ酸配列変異体」は、本開示による配列と比較するとそのアミノ酸
配列がいくらか違う分子を指す。例えば、特定の配列の、本開示による抗体のアミノ酸配
列変異体は、ヒトCD40と結合する能力を依然として有するままである。アミノ酸配列
変異体には、置換変異体(本開示によるポリペプチド内の少なくとも1つのアミノ酸残基
が除去され、代わりに同じ位置に別のアミノ酸が挿入されたもの)、挿入変異体(本開示
によるポリペプチド内の特定の位置のアミノ酸の直接隣に1つ又は複数のアミノ酸が挿入
されたもの)及び欠失変異体(本開示によるポリペプチド内の1つ又は複数のアミノ酸が
除去されたもの)が含まれる。
【0088】
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、抗体の定常ドメインの、CH3、CH2及
びヒンジ領域の少なくとも一部分を含むポリペプチドを指す。任意選択により、Fc領域
には、いくつかの抗体クラスに存在するCH4ドメインが含まれる可能性がある。Fc領
域は、抗体の定常ドメインのヒンジ領域全体を含むことができる。一実施形態では、本発
明は、抗体のFc領域及びCH1領域を含む。一実施形態では、本発明は、抗体のFc領
域のCH3領域を含む。別の実施形態では、本発明は、抗体の定常ドメイン由来のFc領
域、CH1領域及びCκ/λ領域を含む。一実施形態では、本発明の結合分子は、定常領
域、例えば重鎖定常領域を含む。一実施形態では、こうした定常領域は、野生型の定常領
域と比較して改変される。すなわち、本明細書で開示した本発明のポリペプチドは、3つ
の重鎖定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)の1つ又は複数に対する且つ/又は軽
鎖定常領域ドメイン(CL)に対する変更又は改変を含むことができる。改変の例として
は、1つ又は複数のドメイン内の1つ又は複数のアミノ酸の付加、欠失又は置換が含まれ
る。こうした変更は、エフェクター機能、半減期などを最適化するために含めることがで
きる。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「親和性」は、単一の抗原部位での抗体と抗原との間の
相互作用の強さを指す。各抗原部位内では、抗体「アーム」の可変領域は、多数の部位で
弱い非共有結合性の力を通じて抗原と相互作用し、相互作用が多いほど親和性が強くなる
。本明細書で使用する場合、IgG抗体又はその断片(例えば、Fab断片)に関する用
語「高親和性」は、標的抗原に対する10-8M以下、10-9M以下、又は10-10
M、又は10-11M以下、又は10-12M以下、又は10-13M以下のKDを有す
る抗体を指す。しかし、高親和性結合は、他の抗体アイソタイプについて異なる可能性が
ある。例えば、IgMアイソタイプについての高親和性結合は、10-7M以下又は10
-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0090】
本明細書で使用する場合、「CD40ポリペプチドと特異的に結合する」抗体又はタン
パク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下のKDでヒトCD40ポリペプチ
ドと結合する抗体又はタンパク質を指すことが意図される。
【0091】
「CD40以外の抗原と交差反応する」抗体は、1μM以下、100nM以下、10n
M以下、1nM以下のKDで抗原と結合する抗体を指すことが意図される。「特定の抗原
と交差反応しない」抗体は、100nM以上のKD、又は1μM以上のKD、又は10μ
M以上のKDで抗原と結合する抗体を指すことが意図される。ある種の実施形態では、抗
原と交差反応しないこうした抗体は、標準の結合アッセイにおいて、これらのタンパク質
に対する本質的に検出不可能な結合を呈する。
【0092】
用語「Kassoc」又は「Ka」は、本明細書で使用する場合、特定の抗体-抗原相
互作用の会合速度を指すことが意図されるのに対して、用語「Kdis」又は「Kd」は
、本明細書で使用する場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図され
る。
【0093】
用語「KD」は、本明細書で使用する場合、Kaに対するKdの比(すなわちKd/K
a)から得られてモル濃度(M)として表される解離定数を指すことが意図される。抗体
についてのKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができ
る。抗体のKDを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用するか又はBiac
ore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによるもので
ある。
【0094】
本明細書で使用する場合、用語「ADCC」又は「抗体依存性細胞傷害」活性は、細胞
枯渇活性を指す。ADCC活性は、当業者に周知のADCCアッセイによって測定するこ
とができる。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語「サイレント」抗体は、ADCCアッセイにおいて測定
された場合にADCC活性を呈さないか又は低いADCC活性を呈する抗体を指す。
【0096】
一実施形態では、用語「ADCC活性なし又は低いADCC活性」は、サイレント抗体
が、標準のADCCアッセイにおいて測定された場合に50%未満の特異的細胞溶解、例
えば10%未満の特異的細胞溶解であるADCC活性を呈することを意味する。「ADC
C活性なし」は、サイレント抗体が、1%未満であるADCC活性(特異的細胞溶解)を
呈することを意味する。
【0097】
エフェクター機能の抑制は、抗体のFc領域内の変異によって得ることができ、当技術
分野において記載されている:LALA及びN297A(Strohl,W.,2009
,Curr.Opin.Biotechnol.vol.20(6):685-691)
;並びにD265A(Baudino et al.,2008,J.lmmunol.
181:6664-69;Strohl,W.,上記)。サイレントFc IgG1抗体
の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列内のL234A及びL235A変異を含む、いわゆ
るLALA変異体を含む。サイレントIgG1抗体の別の例は、D265A変異を含む。
別のサイレントIgG1抗体は、グリコシル化/非グリコシル化抗体をもたらすN297
A変異を含む。
【0098】
用語「治療」又は「治療する」は、本明細書では、本発明による抗CD40抗体又はタ
ンパク質、例えばmAb1又はmAb2抗体の対象への適用又は投与又は本発明の前記抗
CD40抗体又はタンパク質を含む医薬組成物の、対象由来の単離された組織若しくは細
胞株への適用又は投与(ここで、対象は、自己免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患、自己
免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患に随伴する症状又は自己免疫疾患及び/若しくは炎症
性疾患の発症の素因を有し、その目的は、自己免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患、自己
免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患のあらゆる随伴症状又は自己免疫疾患及び/若しくは
炎症性疾患の発症の素因を軽減、回復又は改善することである)と定義される。
【0099】
「治療」は、本発明の抗CD40抗体又はタンパク質、例えばmAb1又はmAb2抗
体を含む医薬組成物の対象への適用又は投与又は本発明の前記抗CD40抗体又はタンパ
ク質を含む医薬組成物の、対象由来の単離された組織若しくは細胞株への適用又は投与(
ここで、対象は、自己免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患、自己免疫疾患及び/若しくは
炎症性疾患に随伴する症状又は自己免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患の発症の素因を有
し、その目的は、自己免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患、自己免疫疾患及び/若しくは
炎症性疾患のあらゆる随伴症状又は自己免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患の発症の素因
を軽減、回復又は改善することである)も意図する。
【0100】
用語「予防する」又は「予防すること」は、予防的又は防止的処置を指し;疾患、障害
及び/又はそれに随伴する症状の発症を遅らせること又はこれらの発症を予防することに
関する。
【0101】
本明細書で使用する場合、対象は、こうした対象が、こうした治療から生物学的に、医
学的に又は生活の質において恩恵を受ける場合、治療「を必要として」いる。
【0102】
用語「薬学的に許容し得る」は、活性成分の生物学的活性の有効性を邪魔しない非毒性
の材料を意味する。
【0103】
本明細書で使用する場合、対象化合物の用語「投与」又は「投与すること」は、治療を
必要としている対象に対して本発明の化合物及びそのプロドラッグを提供することを意味
する。1つ又は複数のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与には、任意の順序での任意
の投与経路での同時(並行)及び連続的投与が含まれる。1つの投与は、治療効果を達成
するためにどの程度の薬物物質が投与される必要があるかに応じて、単回注射又は互いに
併せて送達される複数回注射であり得る。
【0104】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」は、患者(ヒトなど)への単一用量又は反復
用量投与時、障害又は再発性の障害の少なくとも1つの症状を治療するか、予防するか、
発症を予防するか、治癒させるか、遅らせるか、重症度を低下させるか、回復させるか、
又は患者の生存をこうした治療が存在しない場合に予測される生存よりも延長させるのに
有効である、抗CD40抗体又はその抗原結合断片、例えばmAb1の量を指す。単独で
投与される個々の活性成分(例えば、抗CD40抗体、例えばmAb1)に適用される場
合、この用語は、その成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、この用語は、組み
合わせで、連続的に又は同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分
の合わせた量を指す。
【0105】
表現「治療レジメン」は、病気を治療するために使用されるレジメン、例えばSS、例
えばpSSの治療中に使用される投薬プロトコルを意味する。治療レジメンには、負荷レ
ジメン(又は負荷投薬)、それに続く維持レジメン(又は維持投薬)が含まれ得る。
【0106】
表現「負荷レジメン」又は「負荷期間」は、疾患の初期治療のために使用される治療レ
ジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。いくつかの実施形態では、開示される方法、
使用、キット、プロセス及びレジメン(例えば、SSを治療する方法)は、負荷レジメン
(又は負荷投薬)を用いる。いくつかの場合、負荷期間は、最大の有効性に到達するまで
の期間である。負荷レジメンの一般的目標は、治療レジメンの最初の期間中、患者に対し
て高レベルの薬物を提供することである。負荷レジメンは、医師が維持レジメン中に用い
るであろうよりも多い用量の薬物を投与すること若しくは医師が維持レジメン中に薬物を
投与するであろうよりも頻繁に薬物を投与すること又はこれらの両方を含むことができる
。用量漸増は、負荷レジメン中又は後に行うことができる。
【0107】
表現「維持レジメン」又は「維持期間」は、病気の治療中の患者の維持のため、例えば
患者を負荷レジメン又は期間後に長期間(数か月又は数年)、寛解状態に維持するために
使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。いくつかの実施形態では、
開示した方法、使用及びレジメンは、維持レジメンを用いる。維持レジメンは、継続療法
(例えば、一定の間隔で、例えば毎週、隔週又は毎月(4週おきに)、毎年などで薬物を
投与すること)又は間欠療法(例えば、断続的治療、間欠治療、再発時の治療又は特定の
あらかじめ定められた基準の到達[例えば、疼痛、疾患顕在化など]時の治療)を用いる
ことができる。用量漸増は、維持レジメン中に行うことができる。
【0108】
表現「投与するための手段」は、限定はされないが、プレフィルドシリンジ、バイアル
及びシリンジ、ペン型注射器、自己注射器、点滴静注バッグ、ポンプ、パッチ式ポンプな
どを含めた、患者に薬物を全身的に投与するためのあらゆる利用可能な道具を示すために
使用される。こうしたものを用いて、患者が薬物を自己投与する(すなわち薬物を自分自
身のために投与する)ことができるか、又は医師が薬物を投与することができる。
【実施例0109】
実施例1.抗CD40抗体
抑制されたADCC活性を有する抗CD40 mAbは、参照により本明細書にその全
体が組み込まれる米国特許第8828396号明細書及び米国特許第9221913号明
細書に開示されている。抑制されたADCC活性を有する抗CD40 mAbは、他の抗
CD40抗体と比較して改善された安全性プロフィールを有することが予測され、特に非
腫瘍性の適応症、例えばシェーグレン症候群(SS)及び特に原発性シェーグレン症候群
(pSS)により適している可能性がある。
【0110】
本発明者らの拘束力のない仮説によれば、mAb1及びmAb2と称される、米国特許
第8828396号明細書及び米国特許第9221913号明細書による2種のmAbは
、SSの治療に適した化合物であると考えられる。CFZ533とも呼ばれる抗体mAb
1が特に好ましい。
【0111】
mAb1は、インビトロでのCD154誘導性の活性化並びにインビボでのT細胞依存
性抗体形成及び胚中心形成を阻害する。pSSを有する患者では、mAb1でのCD40
遮断が新規の治療モダリティを提供することが示されている(実施例7)。
【0112】
当業者が本発明を実施できるようにするために、mAb1及びmAb2のアミノ酸及び
ヌクレオチド配列を下の表1に提供する。
【0113】
当技術分野で公知の別の抗CD40 mAbは、例えば、参照により本明細書に組み込
まれる米国特許第8568725B2号明細書に記載されている通りの、Astella
s Pharma/Kyowa Hakko Kirin CoからのASKP1240
である。
【0114】
当技術分野で公知のさらに別の抗CD40 mAbは、例えば、参照により本明細書に
組み込まれる米国特許第8591900号明細書に記載されている通りの、Boehri
nger IngelheimからのBI655064である。
【0115】
当技術分野で公知のさらなる抗CD40 mAbは、例えば、参照により本明細書に組
み込まれる米国特許第8669352号明細書に記載されている通りの、Fast Fo
rward PharmaceuticalsによるFFP104である。
【0116】
別の治療モダリティは、抗CD40L-Tn3融合タンパク質であるAstraZen
ecaからのMEDI4920又はBiogenからの抗CD40L抗体BIIB063
であり得る。
【0117】
上に言及した抗体と同じ作用様式を有する抗体、いわゆるバイオ後続品も、当業者によ
って理解されるであろう通り、本開示によって包含される。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
一実施形態では、抗CD40抗体であって、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロ
ブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと
を含む抗CD40抗体が提供される。
【0126】
一実施形態では、抗CD40抗体であって、配列番号1、配列番号2及び配列番号3と
して記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列
番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメイ
ンとを含む抗CD40抗体が提供される。
【0127】
一実施形態では、抗CD40抗体であって、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロ
ブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと
、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体が提供される。
【0128】
一実施形態では、抗CD40抗体であって、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロ
ブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと
、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体が提供される。
【0129】
一実施形態では、抗CD40抗体であって、サイレントFc IgG1領域を含む抗C
D40抗体が提供される。
【0130】
好ましい実施形態では、mAb1と称される抗CD40抗体が提供される。具体的には
、mAb1は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列を含
み、且つmAb2は、配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸
配列を含む。
【0131】
1.発現系
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準の技術に
よって宿主細胞に遺伝子導入させる。様々な形式の用語「遺伝子導入」は、外来性DNA
の原核生物又は真核生物宿主細胞への導入のために一般に使用される非常に様々な技術、
例えば電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラン遺伝子導入などを包含
することが意図される。本発明の抗体を原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞のいずれ
かにおいて発現させることは、理論的に可能である。真核細胞、例えば哺乳類宿主細胞、
酵母又は糸状菌における抗体の発現が論じられている。なぜなら、こうした真核細胞、特
に哺乳類の細胞が、適切にフォールディングされた免疫学的に活性な抗体を構築及び分泌
する可能性は、原核細胞よりも高いからである。
【0132】
具体的には、クローニング又は発現ベクターは、好適なプロモーター配列に動作可能な
ように連結される、以下のコード配列(a)~(b):
(a)mAb1の全長重鎖及び軽鎖をそれぞれコードする配列番号15及び配列番号16
、又は
(b)mAb2の全長重鎖及び軽鎖をそれぞれコードする配列番号17及び配列番号18
のいずれかの少なくとも1つを含むことができる。
【0133】
本発明の組換え抗体を発現させるための哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスター
卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.Kaufman及びP.A.Sharp,198
2 Mol.Biol.159:601-621に記載されている通りのDH FR選択
可能マーカーと共に使用される、Urlaub及びChasin,1980 Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されているdh
fr-CHO細胞が含まれる)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、C
OS細胞及びSP2細胞が含まれる。特に、NSO骨髄腫細胞との使用のために、別の発
現系は、PCT公報国際公開第87/04462号パンフレット、国際公開第89/01
036号パンフレット及び欧州特許第0338841号明細書に示されているGS遺伝子
発現系である。
【0134】
抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入する場合、抗体は
、宿主細胞における抗体の発現又は宿主細胞が成長する培養培地への抗体の分泌を可能に
するのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準のタン
パク質精製方法を使用して培養培地から回収することができる(例えば、Abhinav
et al.2007,Journal of Chromatography 84
8:28-37を参照されたい)。
【0135】
宿主細胞は、mAb1又はmAb2の発現及び産生に適した条件下で培養することがで
きる。
【0136】
2.医薬組成物
治療用抗体は、典型的には、直ちに投与可能な水性の形態又は投与前の好適な希釈剤で
の再構成のための凍結乾燥物として製剤化される。抗CD40抗体は、凍結乾燥物として
又は例えばプレフィルドシリンジに入れた水性の組成物として製剤化することができる。
製剤は、薬物製(DP)とも呼ばれる。
【0137】
好適な製剤は、再構成して、患者への送達のための高濃度の抗体活性成分且つ低レベル
の抗体凝集を伴う溶液を与えることができる、水性の医薬組成物又は凍結乾燥物を提供す
ることができる。高濃度の抗体は、これにより、患者に送達されなければならない材料の
量が減るために有用である。投薬体積の低下により、患者に一定用量を送達するためにか
かる時間が最小限になる。高濃度の抗CD40抗体を含む本発明の水性組成物は、皮下投
与に特に適している。
【0138】
したがって、本発明は、mAb1又はmAb2などの抗CD40抗体を含む、対象にお
ける投与、例えば皮下投与に適した水性医薬組成物を提供する。
【0139】
抗CD40抗体は、薬学的に許容し得る担体と組み合わせた場合、医薬組成物として使
用することができる。こうした組成物は、mAb1又はmAb2などの抗CD40抗体に
加えて、担体、種々の希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤及び当技術分野で
周知の他の材料を含有することができる。担体の特性は、投与経路に依存する。開示した
方法に使用するための医薬組成物は、標的とされる特定の障害の治療のための追加の治療
薬も含有することができる。
【0140】
ある具体的実施形態では、薬物製品(DP)とも呼ばれる組成物は、6.0のpHを有
し、且つ
(i)150mg/mL mAb1又はmAb2、
(ii)270mMスクロース(安定剤として)、
(iii)30mM L-ヒスチジン(緩衝剤として)、及び
(iv)0.06%ポリソルベート20(界面活性剤として)
を含む、水性製剤から調製される凍結乾燥製剤である。
【0141】
別の具体的実施形態では、薬物製品(DP)とも呼ばれる医薬組成物は、6.0のpH
を有し、且つ
(i)150mg/mL mAb1又はmAb2、
(ii)270mMスクロース(安定剤として)、
(iii)30mM L-ヒスチジン(緩衝剤として)、及び
(iv)0.06%ポリソルベート20(界面活性剤として)
を含む、水性医薬組成物である。
【0142】
3.投与経路
典型的には、抗体又はタンパク質は、注射により、例えば静脈内、腹腔内又は皮下に投
与される。この投与を実行するための方法は、当業者に公知である。局所的若しくは経口
的に投与することができるか、又は粘膜を透過する能力がある可能性がある組成物を得る
ことも可能である。当業者によって理解されるであろう通り、選択された特定の投与経路
に対して適切であるような、投与するのに適したあらゆる手段を使用することができる。
【0143】
可能な投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内(I.V.若しくはIV)、筋
肉内(IM)、皮内、皮下(S.C.若しくはSC)又は注入)、経口及び肺内(例えば
、吸入)、経鼻、経皮(局所)、経粘膜及び直腸内投与が挙げられる。非経口、皮内又は
皮下適用のために使用される液剤又は懸濁剤は、以下の構成成分を含むことができる:無
菌の希釈剤、例えば注射用水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グ
リセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒、抗菌剤、例えばベンジルアルコール
又はメチルパラベン、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム、キ
レート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸、緩衝液、例えば酢酸、クエン酸又はリン酸及
び張度の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、塩酸又
は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基を用いて調整することができる。非経口調製物は、
ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は反復投与バイアルに封入する
ことができる。
【0144】
抗CD40療法は、本発明の抗体又はタンパク質の負荷レジメン又は負荷投薬を、抗C
D40療法を必要としている対象に投与することによって開始することができる。「負荷
用量」は、対象に1回又は数回投与される本発明の抗CD40抗体又はタンパク質の初回
投薬を意図し、ここで、投与される本発明の抗体又はタンパク質の用量は、より高い投薬
範囲(すなわち約10mg/kg~約50mg/kg、例えば約30mg/kg(静脈内
)又は約600mg若しくは約300mg若しくは約150mg(毎週、隔週、最大4週
間))の範囲内にある。「負荷レジメン」は、単回投与又は反復投与、例えば単回又は反
復静脈内注入として又は疾患の重症度に応じて、「負荷投薬」レジメンにおいて組み合わ
せられる反復皮下投与として施すことができる)。次いで、「負荷レジメン」の施与後、
1種又は複数の追加の治療有効用量の本発明の抗CD40抗体又はタンパク質を対象に投
与する。その後の治療有効用量は、例えば、毎週の投薬スケジュールに従って又は2週に
1回(隔週)、3週に1回若しくは4週に1回投与することができる。こうした実施形態
では、その後の治療有効用量は、一般に、より低い投薬範囲(すなわち約0.003mg
/kg~約30mg/kg、例えば約10mg/kg、例えば10mg/kg(IV)又
は毎週、隔週若しくは4週おきに皮下に投与される、約150mg、約300mg若しく
は約600mg)の範囲内にある。
【0145】
代わりに、いくつかの実施形態では、「負荷レジメン」後、その後の治療有効用量の本
発明の抗CD40抗体又はタンパク質が、「維持スケジュール」(ここで、本発明の治療
有効用量の抗体又はタンパク質は、1か月に1回、6週に1回、2か月に1回、10週に
1回、3か月に1回、14週に1回、4か月に1回、18週に1回、5か月に1回、22
週に1回、6か月に1回、7か月に1回、8か月に1回、9か月に1回、10か月に1回
、11か月に1回又は12か月に1回投与される)に従って投与される。こうした実施形
態では、本発明の抗CD40抗体又はタンパク質の治療有効用量は、特に、その後の用量
がより高頻度の間隔、例えば毎週、2週に1回~4週に1回投与される場合、より低い投
薬範囲(すなわち約0.003mg/kg~約30mg/kg、例えば約10mg/kg
、例えば10mg/kg)の範囲内にあるか、又は特にその後の用量がより低頻度の間隔
で投与される場合、例えばその後の用量が1か月~12か月離れて投与される場合、より
高い投薬範囲(すなわち10mg/kg~50mg/kg、例えば30mg/kg)の範
囲内にある。
【0146】
投薬のタイミングは、一般に、「ベースライン」としても公知である、活性な化合物(
例えば、mAb1)の第1の投与の日から測定される。しかし、異なる医療提供者が異な
る命名規則を使用する。
【0147】
特に、第0週は、医療提供者によって第1週とみなされる可能性がある一方、第0日は
、医療提供者によって第1日とみなされる可能性がある。したがって、異なる医師が、同
じ投薬スケジュールを指すのに、例えば3週中/第21日、3週中/第22日、4週中/
第21日、4週中/第22日にある用量が与えられると称する可能性がある。一貫性を保
つために、投薬の最初の週は、本明細書では第0週とみなすこととするのに対して、投薬
の最初の日は、第1日とみなすこととする。しかし、この命名規則は、単に一貫性を保つ
ために使用され、限定的なものと解釈されるべきではなく、すなわち医師が特定の週を「
第1週」と呼ぶか「第2週」と呼ぶかにかかわらず、毎週の投薬は、抗CD40抗体(例
えば、mAb1)の毎週の用量の規定であることが当業者によって理解されるであろう。
本明細書に記述する投薬計画の例は、
図1及び2において参照される。ある用量が厳密な
時点で提供される必要はないことが理解されるであろう。例えば、およそ第29日の予定
である用量は、これが適切な週に提供されるのであれば、例えば第24日~第34日、例
えば第30日に提供される可能性がある。
【0148】
本明細書で使用する場合、表現「[指定された用量]の送達を可能にするのに十分な量
の抗CD40抗体を有する容器」は、所与の容器(例えば、バイアル、ペン(pen)、
シリンジ)が、所望される用量を提供するために使用することができる、(例えば、医薬
組成物の一部としての)ある体積の抗CD40抗体をその中に配置していることを意味す
るために使用される。一例としては、所望される用量が500mgである場合、臨床医は
、250mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤を含有する容器からの2ml、5
00mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤を含有する容器からの1ml、100
0mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤を含有する容器からの0.5mlなどを
使用することができる。こうした各場合において、これらの容器は、所望される500m
g用量の送達を可能にするのに十分な量の抗CD40抗体を有する。
【0149】
本明細書で使用する場合、表現「[指定された用量]の[投与経路]送達を可能にする
ための投薬量で製剤化される」は、所与の医薬組成物が、指定された投与経路(例えば、
s.c.又はi.v.)を介して、所望される用量の抗CD40抗体、例えばmAb1を
提供するために使用できることを意味するために使用される。一例として、所望される皮
下用量が500mgである場合、臨床医は、250mg/mlの濃度を有する抗CD40
抗体製剤の2ml、500mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤の1ml、10
00mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤の0.5mlなどを使用することがで
きる。こうした各場合において、これらの抗CD40抗体製剤は、抗CD40抗体の皮下
送達を可能にするのに十分に高い濃度である。皮下送達は、典型的には、約2ml未満の
体積、好ましくは約1ml以下の体積の送達を必要とする。しかし、例えばパッチ/ポン
プ機構を使用して、時間をかけてより高い体積を送達することができる。
【0150】
本明細書で開示するのは、患者におけるシェーグレン症候群の治療のための医薬品(こ
こで、医薬品は、容器を含むように製剤化され、各容器は、単位用量あたり少なくとも約
75mg、150mg、300mg又は600mgの抗CD40抗体若しくはその抗原結
合断片(例えば、mAb1)の送達を可能にするのに十分な量の抗CD40抗体を有する
)の製造のための抗CD40抗体(例えば、mAb1)の使用である。
【0151】
本明細書で開示するのは、患者におけるシェーグレン症候群の治療のための医薬品(こ
こで、医薬品は、単位用量あたり75mg、150mg、300mg又は600mgの抗
CD40抗体又はその抗原結合断片(例えば、mAb1)の全身送達(例えば、i.v.
又はs.c.送達)を可能にするための投薬量で製剤化される)の製造のための抗CD4
0抗体(例えば、mAb1)の使用である。
【0152】
4.キット
本開示は、(場合に応じて)抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片、例えばmAb
1で、シェーグレン症候群を患う患者を治療するためのキットも包含する。こうしたキッ
トは、(例えば、液体又は凍結乾燥形態の)抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片、
例えばmAb1又は(上に記載した)抗CD40抗体を含む医薬組成物を含む。さらに、
こうしたキットは、抗CD40抗体を投与するための手段(例えば、シリンジ及びバイア
ル、プレフィルドシリンジ、プレフィルドペン、パッチ/ポンプ)及び使用のための説明
書を含むことができる。説明書は、具体的な投薬レジメンの一部として、患者に抗CD4
0抗体(例えば、mAb1)を提供することを明らかにすることができる。これらのキッ
トは、乾癬を治療するため、例えば封入される抗CD40抗体、例えばmAb1と組み合
わせた送達のための(上に記載した)追加の治療薬も含有することができる。
【0153】
表現「投与するための手段」は、限定はされないが、プレフィルドシリンジ、バイアル
及びシリンジ、ペン型注射器、自己注射器、点滴静注バッグ、ポンプ、パッチ/ポンプな
どを含めた、患者に薬物を全身的に投与するためのあらゆる利用可能な道具を示すために
使用される。こうしたものを用いて、患者が薬物を自己投与する(すなわち薬物を自分自
身のために投与する)ことができるか、又は介護者又は医師が薬物を投与することができ
る。
【0154】
本明細書で開示するのは、a)治療有効量の抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片
を含む医薬組成物、b)抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片を患者に投与するため
の手段、及びc)抗CD40抗体若しくはその抗原結合断片を、それを必要とする患者に
ヒト対象の1キログラムあたり約3~約30mgの活性成分の用量(1週おきに1回を3
回)、それに続いてヒト対象の1キログラムあたり約3~約30mg、例えば10mgの
活性成分の毎月投薬、又は約150mg、約300mg、又は約600mg(維持レジメ
ン中、毎週、隔週又は毎月)として皮下に投与することを提供する説明書を含む、シェー
グレン症候群を有する患者の治療のためのキットである。
【0155】
ある具体的実施形態では、シェーグレン症候群の治療のための医薬品の製造のための、
a)抗CD40抗体、緩衝液、安定剤及び可溶化剤を含む液体医薬組成物、及びb)抗C
D40抗体を、シェーグレン症候群を有する患者に皮下投与するための手段の使用が提供
され、ここで、抗CD40抗体は、
i)ヒト対象の1キログラムあたり約3~約30mg、例えば10mgの活性成分の用量
で1週おきに1回を3回、患者に静脈内投与され、
ii)その後、ヒト対象の1キログラムあたり約3~約30mg、例えば10mgの活性
成分の毎月の用量として患者に静脈内投与され、ここで、前記抗CD40抗体は、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b)配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫
グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高
頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD
40抗体、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD
40抗体、
e)サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体、及び
f)配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号1
1の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される。
【0156】
別の具体的実施形態では、シェーグレン症候群の治療のための医薬品の製造のための、
a)抗CD40抗体、緩衝液、安定剤及び可溶化剤を含む液体医薬組成物、及びb)抗C
D40抗体を、シェーグレン症候群を有する患者に皮下投与するための手段の使用が提供
され、ここで、抗CD40抗体は、
i)約150mgの活性物質、約300mgの活性物質又は約600mgの活性物質(毎
週又は隔週)の用量で患者に皮下投与され、
ii)その後、約150mgの活性物質、約300mgの活性物質又は約600mgの活
性物質の毎週、隔週又は毎月(4週おき)の用量として患者に皮下投与され、ここで、前
記抗CD40抗体は、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b)配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫
グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高
頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD
40抗体、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD
40抗体、
e)サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体、及び
f)配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号1
1の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される。
【0157】
実施例2.薬理学
1.第1の薬理学
mAb1は、ヒトCD40と高親和性(0.3nMのKd)で結合する。しかし、これ
は、Fcγ受容体(CD16が含まれる)と結合せず、又は抗体依存性細胞傷害若しくは
補体依存性細胞傷害を媒介しない。mAb1は、ヒト白血球の組換えCD154(rCD
154)誘導性の活性化を阻害するが、単球由来樹状細胞(DC)によるPBMC増殖又
はサイトカイン産生を誘発しない。mAb1は、非常に類似の親和性でヒト及び非ヒト霊
長類CD40と結合する。
【0158】
mAb1は、インビボで一次及び二次T細胞依存性抗体反応(TDAR)を阻止し、非
ヒト霊長類における腎臓同種移植片の生存を延長させることができる(Cordoba
et al 2015)。さらに、mAb1は、構築された胚中心(GC)をインビボで
崩壊させることができる。
【0159】
CD40受容体占有率と機能活性を、ヒト全血培養を使用してインビトロで同時に評価
した。機能活性は、CD20陽性細胞(B細胞)上のCD69(活性化マーカー)のCD
154誘導性の発現を介して定量化し、CD40占有は、蛍光標識したmAb1を使用し
て観察した。rCD154誘導性のCD69発現の十分な阻害のために、mAb1による
ほぼ完全なCD40占有が必要であった。
【0160】
2.第2の薬理学
血小板機能及び止血に対するmAb1の効果を研究し、mAb1が血小板凝集反応を誘
発せず、むしろ、高濃度で血小板凝集に対するある種の穏やかな抑制効果を呈することが
示された。
【0161】
実施例3.非臨床の毒性学及び安全性薬理学
mAb1を用いる毒性研究は、抗CD154 mAbを用いる臨床試験において報告さ
れた場合に血栓塞栓症の証拠がなかったことを含めて、いずれの有意な臓器毒性も示さな
かった(Kawai et al 2000)。13週のGLPアカゲザル研究(10、
50及び150mg/kgでの毎週の投薬)では、5/22匹の動物において、進行中の
感染症に起因すると考えられるリンパの細胞充実性の増大が認められ、観察結果は、mA
b1の薬理学と一致していた。50mg/kgの2匹の動物の腎臓及び肺において炎症性
病変が認められ、2匹の動物のうちの1匹では眼及び気管における病変も認められた。腎
臓及び肺に対するmAb1の直接的影響は、排除することができないが、日和見病原体の
確認を含めた証拠の重みは、これらの所見が、mAb1介在性の免疫抑制に続発する可能
性が高く、感染症由来のものであることを示唆する。これらの炎症所見を考慮して、13
週の毒性研究についての無毒性量(NOAEL)を10mg/kgに設定した。カニクイ
ザルにおける26週の慢性毒性研究では、有害なmAb1関連の所見は発見されなかった
。これらのデータに基づいてNOAELを150mg/kg(26週)に設定した。平均
(全動物)Cmax,ssは、1、50及び150(NOAEL)mg/kg(S.C.
、毎週)でそれぞれ44、3235及び9690μg/mLであった。26週のカニクイ
ザル研究から得られたNOAELは、臨床投薬レジメンを裏付けるために最も適切である
と考えられる。
【0162】
死後の組織学的及び免疫組織学的評価は、脾臓の皮質B細胞領域及びリンパ組織におけ
るGCの低下を示した。回復動物は、正常なT細胞領域及び増大したB細胞領域を伴うリ
ンパ節細胞充実性の増大といういくつかの症例を示し、これは、退薬後のGCの再構成と
一致していた。回復動物は、mAb1の血中濃度が、十分な受容体占有に必要な濃度未満
に低下した直後に、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に対する一次TDAR
を開始することができた。
【0163】
T細胞依存性抗体反応(TDAR)の完全な阻害が原因で、KLH、すなわちmAb1
に対する抗薬物抗体(ADA)の形成が期待されず、したがってmAb1の濃度が継続的
に薬理学的レベルに維持される場合、ADA関連の副作用はなさそうであると考えられる
。
【0164】
組織交差反応性研究は、CD40が、免疫細胞上に存在するだけでなく、様々な組織内
にも存在することを示した。これは、主として、内皮及び上皮細胞(ここで、CD40は
、創傷治癒プロセスに反応することなどのシグナル伝達、ウイルス防御の上方調節及び炎
症関連メディエーターに関与する)上でのその発現に起因する。mAb1のような拮抗性
の抗CD40モノクローナル抗体は、炎症プロセスに寄与することが期待されず、これは
、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を使用するインビトロ研究によって確認された。
【0165】
完全にガイドラインに従う生殖毒性研究は、これまでのところ行われていない。しかし
、適切な生殖毒性学種としてのウサギを確認するために、ウサギにおける用量範囲設定、
胚-胎児発生(EFD)研究が行われている。胚-胎児発生に対する影響は見られず、い
ずれの群でも治療関連の胎児外部奇形は存在しなかった。
【0166】
結論として、この非臨床データは、原発性シェーグレン症候群を患う患者における第1
の反復用量研究を支持する。
【0167】
実施例4.非臨床の薬物動態及び薬力学
1.薬物動態(PK)
IgG免疫グロブリンに典型的であるが、mAb1の排除の主要な経路は、血漿と平衡
状態にある部位で起こるタンパク質分解性の異化作用を介する可能性が高い。さらに、m
Ab1-CD40複合体の結合及び内在化は、迅速な飽和性のクリアランス経路をもたら
した。これは、約10~20μg/mLでの屈曲点を示す非線形のmAb1血清中濃度-
時間プロフィールによって示された。クリアランス全体に対するCD40介在性のクリア
ランスの寄与は、CD40発現、内在化及び受容体代謝回転速度のレベルと共にmAb1
濃度に依存する。mAb1>10~20μg/mLの血清中濃度について線形の動態が予
想されるのに対し、より低い濃度では非線形動態が明らかになる。
【0168】
2.薬力学(PD)
カニクイザルにおけるPK/PD研究では、PKプロフィールにおける屈曲点(約10
μg/mL)は、独立したリンパ球標的飽和アッセイにおいて決定される場合のCD40
飽和の低下と関係があった。したがって、この屈曲点は、CD40の飽和のレベルについ
てのマーカー及び標的エンゲージメントを示す証拠とみなされる。
【0169】
CD40占有率と薬力学的活性との関連を、KLHで免疫を受けたアカゲザルにおいて
さらに実証した。サルは、KLHで3回免疫を受けた(1回目は、投薬の約3週前であり
、2回目は、mAb1投与の2週後であり、3回目は、mAb1の完全なウォッシュアウ
ト後であった)。第2のKLHワクチン接種時の血漿中濃度>40μg/mLのmAb1
によるCD40占有は、リコール抗体反応を完全に予防した。mAb1がなくなると、す
べての動物は、第3のKLHに対する十分なメモリー抗体反応を開始した。これらの結果
は、既存のメモリーB細胞の機能が影響を受けなかったことを示唆する。mAb1の完全
な排除後、破傷風トキソイド(TTx)での免疫化は、治療されていない動物と同様の抗
TTx-IgG/IgM力価をもたらし、mAb1排除後に十分なTDARが回復したこ
とを実証した。
【0170】
3.免疫原性
免疫抑制薬から予測される通り、アカゲザル(単一用量)における免疫原性データは、
KLH-TDAR実験からの結果と一致しており、mAb1による十分なCD40占有下
ではmAb1に対する免疫応答が開始されない可能性があることを裏付けた。
【0171】
4.治療レジメン
mAb1の薬物動態学的及び薬力学的プロフィール並びにmAb1の前臨床及び臨床研
究の結果に基づいて、以下の治療レジメンを使用することができる。
【0172】
一実施形態では(
図24A、1を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、2回の投
与間に1週間をおいて投与される600mg mAb1の2回投与からなる負荷投薬、そ
れに続く2週おきに(Q2W)投与される600mg mAb1の投与からなる維持投薬
からなる。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回
の注射を通して皮下投与される。
【0173】
別の実施形態では(
図24A、2を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、600
mg mAb1の第1の投与及び300mg mAb1の第2の投与からなる負荷投薬(
ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く2週おきに(Q
2W)投与される600mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。300mg用
量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与
される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回の
注射を通して皮下投与される。
【0174】
さらに別の実施形態では(
図24A、3を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、
600mg mAb1の第1の投与及び150mg mAb1の第2の投与からなる負荷
投薬(ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く2週おき
に(Q2W)投与される600mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。150
mg用量は、好ましくは、1mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して、
代わりに1/2倍希釈した2mL薬物製品(75mg/mL)の1回の注射を通して皮下
投与される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2
回の注射を通して皮下投与される。
【0175】
一実施形態では(
図24B、1を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、2回の投
与間に1週間をおいて投与される600mg mAb1の2回投与からなる負荷投薬、そ
れに続く2週おきに(Q2W)投与される300mg mAb1の投与からなる維持投薬
からなる。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回
の注射を通して皮下投与される。300mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(15
0mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与される。
【0176】
別の実施形態では(
図24B、2を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、600
mg mAb1の第1の投与及び300mg mAb1の第2の投与からなる負荷投薬(
ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く2週おきに(Q
2W)投与される300mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。300mg用
量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与
される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回の
注射を通して皮下投与される。
【0177】
さらに別の実施形態では(
図24B、3を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、
600mg mAb1の第1の投与及び150mg mAb1の第2の投与からなる負荷
投薬(ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く2週おき
に(Q2W)投与される300mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。150
mg用量は、好ましくは、1mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して、
代わりに1/2倍希釈した2mL薬物製品(75mg/mL)の1回の注射を通して皮下
投与される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2
回の注射を通して皮下投与される。300mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(1
50mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与される。
【0178】
一実施形態では(
図24C、1を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、2回の投
与間に1週間をおいて投与される600mg mAb1の2回投与からなる負荷投薬、そ
れに続く2週おきに(Q2W)投与される150mg mAb1の投与からなる維持投薬
からなる。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回
の注射を通して皮下投与される。150mg用量は、好ましくは、1mL薬物製品(15
0mg/mL)の1回の注射を通して、代わりに1/2倍希釈した2mL薬物製品(75
mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与される。
【0179】
別の実施形態では(
図24C、2を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、600
mg mAb1の第1の投与及び300mg mAb1の第2の投与からなる負荷投薬(
ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く2週おきに(Q
2W)投与される150mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。300mg用
量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与
される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回の
注射を通して皮下投与される。150mg用量は、好ましくは、1mL薬物製品(150
mg/mL)の1回の注射を通して、代わりに1/2倍希釈した2mL薬物製品(75m
g/mL)の1回の注射を通して皮下投与される。
【0180】
さらに別の実施形態では(
図24C、3を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、
600mg mAb1の第1の投与及び150mg mAb1の第2の投与からなる負荷
投薬(ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く2週おき
に(Q2W)投与される150mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。150
mg用量は、好ましくは、1mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して、
代わりに1/2倍希釈した2mL薬物製品(75mg/mL)の1回の注射を通して皮下
投与される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2
回の注射を通して皮下投与される。300mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(1
50mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与される。
【0181】
さらなる実施形態では(
図25A、1を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、2
回の投与間に1週間をおいて投与される600mg mAb1の2回投与からなる負荷投
薬、それに続く4週おきに(Q4W)投与される600mg mAb1の投与からなる維
持投薬からなる。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)
の2回の注射を通して皮下投与される。
【0182】
別の実施形態では(
図25A、2を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、600
mg mAb1の第1の投与及び300mg mAb1の第2の投与からなる負荷投薬(
ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く4週おきに(Q
4W)投与される600mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。300mg用
量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与
される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回の
注射を通して皮下投与される。
【0183】
さらに別の実施形態では(
図25A、3を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、
600mg mAb1の第1の投与及び150mg mAb1の第2の投与からなる負荷
投薬(ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く4週おき
に(Q4W)投与される600mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。150
mg用量は、好ましくは、1mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して、
代わりに1/2倍希釈した2mL薬物製品(75mg/mL)の1回の注射を通して皮下
投与される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2
回の注射を通して皮下投与される。
【0184】
さらなる実施形態では(
図25B、1を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、2
回の投与間に1週間をおいて投与される600mg mAb1の2回投与からなる負荷投
薬、それに続く毎週(Q1W)投与される300mg mAb1の投与からなる維持投薬
からなる。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回
の注射を通して皮下投与される。300mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(15
0mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与される。
【0185】
別の実施形態では(
図25B、2を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、600
mg mAb1の第1の投与及び300mg mAb1の第2の投与からなる負荷投薬(
ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く毎週(Q1W)
投与される300mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。300mg用量は、
好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与される
。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の2回の注射を
通して皮下投与される。
【0186】
さらに別の実施形態では(
図25B、3を参照されたい)、mAb1治療レジメンは、
600mg mAb1の第1の投与及び150mg mAb1の第2の投与からなる負荷
投薬(ここで、第2の用量は、第1の用量の1週後に投与される)、それに続く毎週(Q
1W)投与される300mg mAb1の投与からなる維持投薬からなる。150mg用
量は、好ましくは、1mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注射を通して、代わり
に1/2倍希釈した2mL薬物製品(75mg/mL)の1回の注射を通して皮下投与さ
れる。300mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150mg/mL)の1回の注
射を通して皮下投与される。600mg用量は、好ましくは、2mL薬物製品(150m
g/mL)の2回の注射を通して皮下投与される。
【0187】
負荷投薬部分と維持投薬部分とに分けられた治療レジメンを有することの利点は、最適
な治療効果を可能にすることである。
【0188】
本明細書に記載したすべての治療レジメンについて、負荷投薬の目的は、標的飽和(4
0μg/mLに近い血漿中濃度)、したがって治療効果の開始を達成することであり、維
持投薬の目的は、有効性を持続させることである。
【0189】
実施例5.ヒト安全性及び忍容性データ
mAb1の安全性、忍容性、PK及びPD活性は、健康な対象及び関節リウマチ(RA
)を患う患者における、mAb1の進行中の、無作為化された、二重盲検の、プラセボ対
照の単一用量漸増研究において評価されている。合計48人の対象が登録されている:最
大3mg/kg(IV又はS.C.)の単一用量のmAb1を受けた36人の健康な対象
及びRAを有する12人の患者(そのうちの6人は、10mg/kg(IV)の単一用量
のmAb1を受けた)。全体的に見ると、健康なボランティアにおける最大3mg/kg
mAb1までの単一用量及びRA患者における単一の10mg/kg mAb1は、安
全且つ良好な耐容性を示しており、重篤な有害事象の疑い(SAE)は発生していない。
30mg/kg(IV)用量の研究は、RA患者において進行中である。この研究は、依
然として進行中であるため、すべての臨床データは、事実上、予備的であり、RA患者に
おいて最大10mg/kgの用量で行われた中間解析に基づいている。
【0190】
実施例6.ヒト薬物動態及び薬力学(健康なボランティア及び関節リウマチ患者)
単回IV又はSC投与後の、健康な対象並びに関節リウマチを患う患者では、CFZ5
33 PKプロフィールは、標的介在性の消失と一致しており、CD40受容体占有率が
およそ90%未満に低下した場合、非線形PKプロフィール及びより急速なクリアランス
がもたらされた。
【0191】
中国人対象からのPKプロフィールにおけるいくらかの個人間の変動性はあるものの、
中国人対象におけるCFZ533の消失は、概して、非中国人対象と同様であり、3mg
/kg(IV)CFZ533後の標的エンゲージメントも同様(約4週)であった。この
用量レベルにおいて、血漿中の遊離CFZ533プロフィール、遊離CD40及び総CD
40を測定する末梢B細胞上のCD40占有率並びに血漿中の総CD40濃度を通して同
様のPK/PDプロフィールが示された。
【0192】
健康な対象におけるSC投与後、CFZ533は、急速に吸収され、ヒトにおける典型
的なIgG1抗体について予測されるものと一致して分配された。3mg/kg(SC)
では、CFZ533は、概して、投与後3日(2人の対象について7日)でピークになり
、投薬の1週後、血漿中濃度は、IV後と同じ範囲であった。3mg/kg(SC)では
、標的エンゲージメントの期間は、やはり約4週であった。
【0193】
関節リウマチを患う10mg/kg(IV)の患者では、投与前平均と比較される全血
B細胞上の遊離CD40及び血漿中の総sCD40プロフィールによって測定された場合
、十分なCD40占有は、概して、8週間維持された。30mg/kg(IV)では、P
K及び血漿中の総sCD40プロフィールは、16週の標的エンゲージメントの期間と一
致していた。
【0194】
健康な対象では、CFZ533によるCD40エンゲージメントは、B細胞上の遊離C
D40によって測定される場合のB細胞上のCD40占有率を追跡すると、概して、末梢
B細胞上の総CD40の約50%の減少をもたらした。これは、CFZ533への結合時
の膜結合型CD40の内在化及び/又はシェディングに起因する可能性が高い。関節リウ
マチを患う患者では、末梢B細胞上の総CD40の減少は確認されなかった。
【0195】
血漿中のCFZ533と、全血B細胞上のCD40占有率(B細胞上の遊離CD40)
との関係が明らかにされ、0.3~0.4μg/mLのCFZ533濃度は、全血B細胞
上の十分な(≧90%と定義される)CD40占有と関係があった。
【0196】
より一般的には、CFZ533について、非特異的及び特異的な排除経路が特定されて
いる。FcRn受容体によって介在される非特異的な高容量の経路は、一般に、内在性I
gGによって共有される。CFZ533の特異的な標的介在性の消失は、(その後のリソ
ソーム分解を伴って)部分的に内在化され、且つ/又は膜からシェディングされるCFZ
533-CD40複合体の形成をもたらした。標的介在性のプロセスは、CFZ533の
飽和性の及び非線形消失をもたらした。CFZ533-CD40複合体の形成は、用量/
濃度-依存性であり、高濃度のCFZ533で飽和が生じた。
【0197】
全体的に見ると、CFZ533の消失は、CFZ533のクリアランス全体に対する、
特異的な(標的介在性の)及び非特異的な排除経路の相対的寄与に依存する。CFZ53
3濃度が標的の濃度よりも低い場合、非線形PK挙動が観察されたのに対し、CD40受
容体が飽和しているより高い濃度では非特異的経路が優勢であり、CFZ533の排除が
線形であった。
【0198】
膜結合型受容体を標的にし、且つ標的介在性の消失を示す典型的なIgG1抗体につい
て予測される通り、CFZ533の曝露の程度(AUClast)は、用量の増大よりも
大きく(比例を超えて)増大した。したがって、これは、より高い用量でのCFZ533
の分布容積及びクリアランスの低下と関係があることが予測される。
【0199】
1mg/kg(IV)CFZ533(1週、十分なCD40占有)の1人の対象は、C
FZ533に対する特異的な抗体を生じた。これは、CFZ533血漿中濃度が定量化の
限界未満になり、且つ組織内でいずれかのCD40経路関連の影響を遮断するのには確実
に低すぎるようになってから6週後に検出された。この対象における抗薬物抗体(ADA
)の存在は、曝露を損なわず、免疫関連の安全性シグナルと関係がなかった。これは、こ
の研究では2%のADA発生率に相当する。
【0200】
3mg/kg(IV及びSC)の単一用量のCFZ533は、十分な(≧90%)受容
体占有率に相当するCFZ533濃度において、第1のKLH免疫化に対する抗KLH反
応を一時的に抑制した(約3~4週間)。抗KLH一次反応は、CFZ533濃度として
すべての対象において検出され、それに伴って受容体占有率が低下した。すべての対象は
、第2のKLH免疫化(受容体占有の喪失が予測された後に投与される)に対するリコー
ル反応を開始することができた。
【0201】
データは、CFZ533によるCD40エンゲージメントがヒト全血における組換え型
ヒトCD154(rCD154)介在性のB細胞活性化を防止することを示唆する。B細
胞上のrCD154誘導性CD69発現は、概して、B細胞上の十分なCD40占有に相
当する期間中に抑制された。CD40占有が不完全であった場合、rCD154の機能活
性は回復した。
【0202】
免疫表現型検査データに対するCFZ533のいかなる影響の証拠も存在しなかった。
【0203】
実施例7.原発性シェーグレン症候群を有する患者におけるCFZ533の安全性、忍容
性、薬物動態及び予備的な有効性を評価するための、多施設の、無作為化された、二重盲
検の、プラセボ対照の並行群研究
シェーグレン症候群の治療における、ADCC活性が抑制されたヒト、抗CD40モノ
クローナル抗体を利用する適合性を評価するために、本明細書ではmAb1とも呼ばれる
抗体CFZ533を使用して、臨床研究を設計及び実行した。
【0204】
シェーグレン症候群(SS)は、原発性である可能性があるか、又は多くの場合に全身
性エリテマトーデス(SLE)又は関節リウマチ(RA)などの他の自己免疫疾患を伴う
。この場合、SSは、続発性と呼ばれる。原発性の疾患(例えば、RA又はSLE)及び
その併用治療が、原発性SSを評価することを著しく邪魔するであろうことから、続発性
シェーグレン症候群を有する患者は、CFZ533臨床試験から除外されている。例えば
、RAにおける関節合併症/損傷は、ESSDAIの関節痛領域を解釈不可能にし、抗T
NF治療は、CFZ533の使用と適合しないであろう。しかし、続発性SSの病因は、
CD40-CD154経路の異常な活性化によって媒介される胚中心形成及び自己抗体形
成など、pSSにおいて見られるのと同じ病態生物学的事象によって引き起こされるため
、CFZ533での治療は、続発性SSに有益であると期待され、熱心な臨床試験の正当
な根拠となる。
【0205】
原発性シェーグレン症候群(pSS)は、外分泌腺における異所性胚中心の形成及び分
泌腺機能障害を特徴とする、全身性の進行性の自己免疫疾患である。一部の患者は、腺外
の症状も発症する。CFZ533は、CD40、すなわちpSS病因に関与する胚中心反
応及び他の免疫介在性の機能に必須の共刺激経路受容体を強力且つ選択的に遮断する新規
のモノクローナル抗体である。pSSを有する患者におけるCFZ533の安全性、忍容
性及び有効性を評価するために、無作為化された、二重盲検の、プラセボ対照の、多施設
の、部分的クロスオーバー第IIa相概念実証(PoC)研究を実行した。
【0206】
いくつかの系統のエビデンスは、CD40-CD154経路によって駆動されるか又は
CD40-CD154経路と密接に関連する疾患病態がpSSに不可欠であることを示唆
している。pSSの特徴を診断する特性には、唾液腺における胚中心様構造の形成(患者
の18~59%に観察される)及び自己抗体などのB細胞反応性亢進が含まれる(Vos
senkaemper et al 2012)。pSS病変では、活性化T細胞が優勢
であり、B細胞活性亢進、Ig分泌を誘発し、且つ腺の破壊を促進する能力がある(Ma
nganelli and Fietta 2003)。さらに、これらの患者の唾液腺
におけるT及びB細胞浸潤は、CD40及びCD154の上方調節を示す。CD40-C
D154介在性の組織炎症もpSS病因の一因となる可能性がある。
【0207】
さらに、CD40-CD154介在性の組織炎症もPss病因の一因となる可能性があ
る。pSS患者から得られる上皮細胞株は、恒常的に上方調節される表面CD40を有す
る(Dimitriou et al 2002)。pSS血清では、sCD154濃度
の上昇と共に、血小板由来及びまた白血球由来の微小粒子のレベルの増大が報告されてい
る(Sellam et al 2009)。
【0208】
1.SSにおける概念実証研究CCFZ533X2203の設計
これは、次のコホート1及び2におけるCFZ533の反復投与の安全性、忍容性、薬
物動態及び予備的な臨床的有効性を評価するための、二重盲検の、それに続く非盲検の、
無作為化された、プラセボ対照の、並行群の、非確証的な研究である:
・コホート1:二重盲検のプラセボ対照様式、それに続く非盲検の治療における、pSS
を有する患者において皮下投与される3mg/kg CFZ533;
・コホート2:二重盲検のプラセボ対照様式、それに続く非盲検の治療における、pSS
を有する患者において静脈内注入によって投与される10mg/kg CFZ533。
【0209】
これらのコホートに、非盲検の、無作為化された、並行群の、非確証的な部分のコホー
ト3が続く:
・コホート3:治療群1では、CFZ533は、4回の600mg s.c.(毎週)(
負荷レジメン)、それに続く9回の300mg s.c.(毎週)(研究第29日に開始
する維持レジメン)で与えられた。
【0210】
治療群2では、負荷レジメンは、10mg/kg CFZ533の単回i.v.投与(
研究第1日に)、それに続く12回の300mg s.c.(毎週)(研究第8日に開始
する維持レジメン)であった。
【0211】
コホート1及び2では、無作為化は、経口副腎皮質ステロイドのベースライン摂取(あ
り/なし)によって層別化されることになる。コホート3には層別化が存在しないことに
なる。
【0212】
この研究は、コホート1及びコホート2について3つの期間を含む:
1.プラセボ対照期間(第1日、第1週から第85日、第13週の投与前評価の完了まで
)(その間、pSSを治療するのに必要である標準治療の療法(例えば、低用量副腎皮質
ステロイド)に加えて、CFZ533又はプラセボの4回の投与が施された);
2.非盲検期間(第85日、第13週の投薬から第169日、第25週の評価の完了まで
)(すべての患者が非盲検のCFZ533治療の4回の投与を受けた場合)、及び
3.追跡調査期間(第25~32週)(患者が研究薬物を受けずに追跡される場合)。
【0213】
図1は、コホート1及び2の研究デザインの概略図である。
【0214】
コホート3は、2つの期間を含む:
1.非盲検治療期間(第1日、第1週の投薬から第85日、第13週の最終投与及び評価
の完了まで)、
2.追跡調査期間(最終投与の完了後の第13週から第141日、第21週まで)(患者
が研究薬物を受けずに8週間追跡される場合)。
【0215】
非盲検治療期間では、治療群1の投薬は、CFZ533 600mg(s.c.)(週
1回、4週間)で開始し;治療群2では、投薬は、第1日のCFZ533 10mg/k
g(i.v.)で開始する。
【0216】
その後、CFZ533 300mg(s.c.)(それぞれ週1回、4週間(治療群1
)及び9週間(治療群2))で投薬を継続する。
【0217】
【0218】
コホート1
このコホートは、およそ12人の患者を無作為に割り付けた。各患者について、第-2
8日から第-2日までのスクリーニング期間が存在していた。スクリーニング時に適格性
基準を満たした患者は、ベースライン評価に入った。ベースライン評価は、第1日での治
療前の、第-1日での評価の完了を可能にするために第-6日から開始した。
【0219】
すべてのベースライン安全性評価結果は、投薬の前に利用可能であり、且つ適格性基準
を満たしていた。適格の患者は、第1日(第1週)のプラセボ対照期間に入り、2:1の
比で無作為化されて、CFZ533又はプラセボでの治療を受けた。第1日に3mg/k
gの用量のCFZ533又はプラセボを皮下注射(s.c.)によって投与し、それに続
いて最大6時間、PK、薬力学(PD)及び安全性の評価を行った。患者は、すべての評
価の完了後、同日に、安全上の懸念が存在しないという条件で施設から解放された。
【0220】
患者は、第15日(第3週)、第29日(第5週)及び第57日(第9週)にそれぞれ
研究拠点に戻って、CFZ533又はプラセボ(第1日に受けたのと同じ)の3回のs.
c.投与を受けた。これらの来診では、安全性及び有効性評価を実行し、PK及びバイオ
マーカー試料を収集した。
【0221】
第85日(第13週)に、プラセボ対照期間の最後の評価である安全性及び他の評価後
、すべての患者は、非盲検期間に入り、非盲検の3mg/kg CFZ533のs.c.
投与を受けた。これに続いて、第99日(第15週)、第113日(第17週)及び第1
41日(第21週)にそれぞれCFZ533(各3mg/kg)の3回の非盲検のs.c
.投与を受けた。これらの来診では、安全性及び有効性評価を実行し、PK及びバイオマ
ーカー試料を収集した。対照期間の盲検化は、研究者と患者に対して研究終了まで維持し
た。
【0222】
第169日(第25週)に、患者は、非盲検期間の最後の評価を受け、研究薬物が投与
されない追跡調査期間に入った。患者は、この期間中、安全性モニタリングのために研究
拠点に戻った。
【0223】
第225日(第33週)に研究終了の来診(これには、研究完了時評価、それに続く研
究からの解放が含まれる)を行う。
【0224】
コホート2
およそ12人の対象がコホート1に登録されている場合、コホート2は、およそ30人
の患者を、およそ24人の患者が12週の治療を完了するように無作為に割り付ける登録
を開始した。コホート2の研究デザインは、10mg/kg CFZ533の反復静脈内
投薬、それに続くPK、薬力学(PD)及び安全性の評価(注入終了後最大2時間)を含
む投薬レジメンを除いて、コホート1と同一であった。さらに、投薬来診ごとに体重を測
定して、対象の実際の重量に従って薬物投薬量を算出した(コホート1では、対象のベー
スライン重量を、研究全体を通して使用した)。
【0225】
コホート3
コホート3は、およそ24人の患者を、およそ20人の患者(治療群1に10人、治療
群2に10人)が12週の治療を完了するように無作為に割り付ける。
【0226】
患者は、治療が研究中に一定レベルに維持されるという条件でその患者の標準治療の療
法を続けることができる。
【0227】
安全性評価には、身体検査、ECG、バイタルサイン、標準の臨床検査評価(血液学、
血液化学、尿分析、妊娠検査、血液凝固)、有害事象及び重篤有害事象モニタリングが含
まれる。
【0228】
すべてのs.c.注射及びi.v.注入は、監視設備内で行われる。患者は、コホート
1ではs.c.注射後の少なくとも6時間、コホート2ではi.v.注入の完了後の2時
間に綿密に観察する。コホート3では、患者は、i.v.注入の完了後の少なくとも1時
間及びs.c.注射後の30分間又はバイタルサイン及び注射反応の発生を含めた有害事
象の徴候又は症状に関する研究者の裁量でより長時間観察する。薬物動態学的、薬力学的
及び安全性評価は、コホート1ではs.c.注射後の最大6時間、コホート2ではi.v
.注入の完了後の2時間又はコホート3ではi.v.注入の完了後の1時間及びs.c.
注射後の30分にわたって行った。対象は、これらの評価後、安全性データを十分に見直
した後の研究者の裁量で開放された。
【0229】
PK評価には、血漿中の遊離CFZ533の測定が含まれる。
【0230】
併用PDマーカー:PK/PDモデル化を可能にするために、末梢血B細胞上のCD4
0飽和(B細胞上の遊離CD40及び総CD40、コホート1及び2のみ)、総可溶型C
D40及び総可溶型CD154(任意選択、コホート1及び2のみ)を患者の血漿におい
て測定する。さらに、自己抗体及びいくつかの探索的バイオマーカーを調べる。免疫原性
は、抗CFZ533抗体の準定量的分析を介して評価する。
【0231】
コホート1及びコホート2では、ベースラインで且つプラセボ対照期間の最後(第85
日、第13週)に任意選択の口唇生検を採取する。
【0232】
コホート1における12週の治療期間を完了したおよそ12人の患者を含める中間解析
(初回IA)を実施する。これらの患者について、主要な安全性及び忍容性データ及び予
備的な有効性を評価する。
【0233】
現在の臨床研究、試験依頼者の臨床開発プロジェクトに関して一般に又は何らかの安全
性への懸念の場合に行っている決定を裏付けるために、さらなる安全性及び有効性中間解
析を実行する。
【0234】
2.研究デザインの理論的根拠
コホート1及び2
2つの異なる用量(3mg/kg s.c.及び10mg/kg i.v.)のCFZ
533を2つの別のコホートにおいて評価した。
【0235】
pSS患者におけるこの第1の探索的研究における、安全性及び臨床有効性データを報
告する際の潜在的な偏りをなくすために、無作為化された、プラセボ対照の、二重盲検の
手法を使用した。
【0236】
プラセボへの曝露を最小限にし、CFZ533に関するより多くのデータを集めるため
に、患者をCFZ533又はプラセボに2:1の比で無作為化した。活性成分群とプラセ
ボ群との間の経口副腎皮質ステロイドのベースライン摂取の不均衡を制限するために、層
別化される無作為化を行った。
【0237】
非盲検期間は、CFZ533を、プラセボ対照期間にプラセボを投与した患者を含めた
すべての患者に投与する。非盲検期間は、これらの患者にとっての治療利益の可能性を提
供し、pSS患者におけるCFZ533についてのさらなる安全性及び有効性データを収
集する。非盲検期間後、患者は、追跡調査期間(安全性を観察し且つ奏効期間を探索する
のに十分な時間を設けるために、8週(CFZ533での最終投薬の12週後)という期
間が選択される)に入った。
【0238】
安全性に加えて、欧州リウマチ学会(European League Agains
t Rheumatism)(EULAR)シェーグレン症候群疾患活動性指標(ESS
DAI)によって推定される有効性を研究の主要評価項目として選択した。ESSDAI
測定基準は、当業者に周知である(例えば、Seror et al.2011aを参照
されたい)。ESSDAIは、リツキシマブに対する無作為化された対照試験の遡及的分
析において反応性であることが示されており、リツキシマブ治療の有効性を評価するため
の高感度なツールであると示唆される(Moerman et al 2014)。著者
らは、第12週及び第24週でのプラセボ群と比較したリツキシマブ群における有意に低
いESSDAIを報告し、これは、この小さい研究における疾患活動性を低下させること
におけるいくらかの有効性を示している。
【0239】
同様に、この研究では、EULARシェーグレン症候群患者報告指標(ESSPRI)
を使用する(例えば、Seror et al.2011bを参照されたい)。
【0240】
コホート3
このコホートの主要目的により、プラセボ対照は、必要とされず、非盲検の治療が正当
化される。コホート3では、2つの負荷レジメン(治療群1における反復s.c.投与又
は治療群2における単回i.v.投与)、それに続く維持レジメン(両群反復s.c.投
与)が12週(第1日~第85日)に設定されるかどうかを評価して、コホート2(10
mg/kg i.v.レジメン)において観察されるトラフ濃度と同様のレベルの血漿中
のCFZ533濃度についての定常状態条件を確立するために2つの治療群が実施される
。
【0241】
追跡調査期間は、
(i)標的が十分に飽和される(ゆっくりした排除)条件下及び不完全なCD40飽和(
急速な排除)下でのCFZ533の排除を追跡するために、且つ
(ii)12週の治療後の、CFZ533に対する標的介在性の排除経路の能力を特徴付
けるために
8週(第85日~第141日)に設定する。
【0242】
3.用量/レジメン、治療の期間の理論的根拠
ヒト原発性シェーグレン症候群における、抗CD40遮断剤を用いる以前の実験は、存
在しない。しかし、エビデンスは、罹患した個人の唾液腺におけるリンパ系凝集体及び胚
中心様構造の存在、疾患特異的な自己抗体並びにCD40及びそのリガンドの腺での発現
を含めた、疾患の病態生理学におけるCD40依存性の免疫過程の関与を指し示す。前臨
床及びヒト初回投与研究結果は、T細胞依存性のB細胞機能の十分な抑制並びに実質部の
CD40関連機能の遮断のために完全なCD40受容体占有が必要とされ、また最大の治
療的利益を達成するために必要とされるであろうことを示唆している。例えば、26週の
毒性研究の結果は、1mg/kg CFZ533(毎週)で末梢B細胞上の十分なCD4
0占有が測定されたが、何匹かの動物(3匹/6匹)では、胚中心の部分的減少として現
れる不完全な薬理学的効果が観察されたことを示した。
【0243】
これは、CD40-CD154相互作用及び組織におけるその後のシグナル伝達事象の
完全な抑制のために、1mg/kg(毎週)よりも大きい用量のCFZ533が必要とな
ることを示した。
【0244】
コホート1(皮下、3mg/kg)
健康なボランティアにおいて試験されているCFZ533の最大の皮下用量は、現在、
3mg/kgであり、健康なボランティアに対する単回投与として安全であり且つ良好な
耐容性を示すことが証明されている。1及び3mg/kg(i.v.)の用量は、末梢血
B細胞上のそれぞれ1及び4週の十分な(≧90%と定義される)CD40占有を伴って
いた。さらに、3mg/kg CFZ533(i.v.)を受けている健康なボランティ
アからのPBMCを使用する、エクスビボでのCD154誘導性のCD69発現は、およ
そ4週間抑制された。CD40占有率は、3mg/kg CFZ533の単回皮下投与後
、4週時点で90%(平均n=6;範囲73~97%)であった。
【0245】
まとめると、本コホート1のために3mg/kg(s.c.)が選択される。なぜなら
、この投薬は、健康なボランティアにおいて安全であり且つ良好な耐容性を示しており、
且つ所望される薬理学的及び薬力学的効果をもたらす可能性があるからである。
【0246】
開始時の2週の投薬期間は、皮下投与後の組織における末梢B細胞上の十分なCD40
飽和並びにCD40-CD154相互作用の完全な抑制を確実にするように意図されてい
る。12週の治療期間の最後までに、主要評価項目並びに他の主要な有効性及びバイオマ
ーカー読み取りの臨床的に意味のある変化が起こることが期待された。単一サイクルのリ
ツキシマブを用いる、発表された結果に基づくと、早ければ第5週にpSS患者における
有意な臨床反応を検出することができる(最大の効果は、第12週に示される)(Mei
jer et al 2010)。追加の12週の非盲検の延長期間中、CFZ533の
、より長期の有効性及び安全性に関するさらなるデータを収集した。
【0247】
コホート2(静脈内、10mg/kg)
より高いCD40発現が起こり得る条件における標的組織における完全な且つ持続する
CD40経路遮断を確実にするために、10mg/kg i.v.レジメンを導入して、
治療期間全体を通したより高い血漿曝露を提供した。このレジメンは、ヒトにおける安全
性データ、前臨床毒性学的研究から得られる適切な安全率、非ヒト霊長類における組織に
おける関連するPD効果及びASKP1240からの最近発表されたデータによって裏付
けられる。
【0248】
ヒトにおいて確認される安全性及び忍容性:単一用量漸増(0.03~30mg/kg
)のCFZ533(i.v.)及び3mg/kg(s.c.)を試験する第1相研究(C
CFZ533X2101)が完了し、試験された最大用量(10mg/kg(i.v.)
)まで、安全上の大きい懸念は示されなかった。今までの臨床経験に基づくと、10mg
/kg(i.v.)の投薬レジメンは、安全であり且つpSS患者において容認できると
予測される。
【0249】
前臨床毒性学的研究から得られる適切な安全域:これまでのGLP毒性研究は、(i)
アカゲザルにおける10、50及び150mg/kg(s.c.及びi.v.)での13
週間の毎週のs.c.投薬、並びに(ii)カニクイザルにおける1、50及び150m
g/kgでの26週間の毎週のs.c.投薬でCFZ533を試験している。これらの研
究は、12週又は24週間の提案された静脈内レジメンでのCFZ533の使用を妨げる
ことになるいかなる主要所見も示さなかった。カニクイザルにおける26週の毒性研究で
は、定常状態で、150mg/kg(NOAEL)での毎週の投薬後、8300μg/m
L(Cav,ss)の平均濃度が得られた。1か月の期間にわたる相当する全身曝露(A
UC、定常状態条件)は、232400日*μg/mLであろう。これは、最初の1か月
にわたる予測される全身的血漿曝露よりも約57倍高い(AUC0-28日;
図3)。2
6週の毒性研究では、NOAELで、Cmax,ssは、9495μg/mLであった。
これは、pSS患者における提案された静脈内レジメンについての予測されるC
max(
約400μg/mL)よりも24倍高い(
図3)。
【0250】
図3は、10mg/kgで静脈内に与えられるCFZ533(コホート2)についての
予測される平均血漿中濃度-時間プロフィールを示す。研究第1日、15日、29日及び
57日(プラセボ対照期間)並びに研究第85日、99日、113日及び141日(非盲
検期間)に与えられる10mg/kg(i.v.)CFZ533についての平均PKプロ
フィールをシミュレートした。健康な対象におけるFIH研究CCFZ533X2101
からのコホート5(3mg/kg(i.v.))PKデータの予備的モデルに基づく集団
分析から得られたパラメータを使用して、ミカエリスメンテンモデルを適用した。抗CD
40遮断剤を用いた以前の経験は、ヒトpSSに存在せず、また健康な対象とpSS患者
との間のCD40(発現、ターンオーバー)の生物学のいかなる潜在的な違いも不明であ
った。提案されたi.v.レジメンは、治療期間全体を通して、pSS患者における標的
組織におけるCD40発現の増大について予測するための、40μg/mLを超えて維持
される血漿中濃度を提供することが期待された。40μg/mLでの水平な点線は、標的
組織における十分なCD40占有及び経路遮断が期待される濃度を超える血漿中濃度を表
している(カニクイザル-1mg/kg用量群における26週の毒性研究からのPDデー
タに基づく)。最初の1か月(より高い投薬頻度)中の予測される全身曝露は、4087
日*μg/mLであり(カニクイザル-毎週の150mg/kgのNOAELにおける2
6週の毒性研究における定常状態での1か月にわたって観察された全身的血漿曝露よりも
57倍低い)、予測されるC
maxは、約400μg/mLである。
【0251】
非ヒト霊長類における組織における関連するPD効果:26週の毒性学的研究(1mg
/kg用量群)では、平均の定常状態血漿中濃度が≧38μg/mLである動物は、リン
パ節の皮質B細胞領域における胚中心の完全な抑制を有していた。10mg/kg(i.
v.)レジメンは、治療期間全体(プラセボ対照及び非盲検、
図3を参照されたい)を通
して、pSS患者における、より高いCD40発現について予測するための、40μg/
mLを超えて維持される血漿中濃度並びに標的飽和の喪失に起因する標的組織における不
完全なPD効果を提供することが期待された。
【0252】
ASKP1240、CD40を遮断するモノクローナル抗体からのデータ:実質臓器移
植における、Astellasの抗CD40抗体ASKP1240からの開示されたPK
/有効性データの最近の分析(Harland et al 2015)は、組織におけ
る効率的な標的介在性の抗体クリアランスが、標的組織における標的発現の有意な増大の
結果として、CD40遮断の喪失及び有効性の喪失の可能性をもたらす可能性があること
を実証した。提案された静脈内レジメンは、治療期間全体を通して、より高いCD40発
現が起こり得る条件において、CD40排除経路を飽和させることを目的としている。社
内のデータは、原発性シェーグレン症候群を有する患者から得られた組織におけるCD4
0の過剰発現を示唆し(社内資料)、元の皮下レジメンは、これらの条件において、標的
組織における完全な且つ持続するCD40経路遮断を提供しない可能性がある。
【0253】
コホート3
コホート1及び2の結果に基づくと、pSSを有する患者における効率的な投薬レジメ
ンは、早期の十分なCD40飽和及び最小限の標的介在性の消失(TMDD)を提供する
負荷レジメン(i.v.又はs.c.)、それに続くs.c.維持レジメンを必要とする
と考えられた。
【0254】
コホート3では、負荷レジメン(i.v.又はs.c.)、それに続くs.c.維持レ
ジメンは、コホート2において試験されたi.v.レジメンと同様の定常状態血漿中濃度
を送達することが可能であり、且つs.c.経路を介するCFZ533の標的介在性の消
失を克服する能力を有していたかどうかを評価するために、治療群1及び治療群2におけ
る用量/レジメンを設定する。
【0255】
治療群1:CFZ533は、4回の毎週の600mg s.c.(1mLの4回の注射
)(負荷)、それに続く9回の毎週の300mg s.c.(1mLの2回の注射)(維
持;研究第29日に開始する)で与えられる。負荷段階中、CD40プールの飽和の割合
及びs.c.投与のバイオアベイラビリティは、不明である。しかし、最初の1か月にわ
たる(第29日までの)2700mgの累積用量は、TMDDを克服する能力を有してい
たことが予測される(累積用量は、コホート1及びコホート2では第29日にそれぞれ6
30及び2100mgであった)。600mgの毎週の負荷レジメン、それに続く300
mgの毎週の維持レジメンは、第85日までに定常状態条件を与えることが予測される。
なぜなら、標的飽和が達成される場合、皮下投与のバイオアベイラビリティは、健康なボ
ランティアに関して≧75%であると予測されるからである。コホート1及びコホート2
におけるそれぞれ1050及び3500mgと比較して、治療群1では、第85日(最終
投与)までの累積用量は、5100mgであろう)。
【0256】
治療群2:負荷レジメンは、10mg/kg CFZ533の単回i.v.投与(研究
第1日に)、それに続く12回の毎週の300mg s.c.(研究第8日に開始する維
持レジメン)からなる。コホート3の治療群2では、コホート2 i.v.において既に
実証された通り、10mg/kgの単回i.v.投与(第1日)は、研究第8日(維持レ
ジメンの開始)までの血漿中濃度≧100μg/mL及び十分なCD40飽和状態を提供
することが予測される。治療群2では、有意な標的介在性の消失及び初回通過効果(s.
c.経路)がない場合の毎週s.c.維持レジメンを評価する。
【0257】
薬物製品の各バイアルは、150mg/mL CFZ533を含んで提供されるため、
コホート3では、すべての皮下投与(300mg又は600mg、毎週)は、投与を容易
にし、且つ利便性を向上させるために(体重に対して調整しない)一定の用量として与え
られる。
【0258】
コホート1(3mg/kg s.c.レジメン)では、中間解析時、平均体重は、70
.7kg(50.0~91.1kgの範囲)であり、これは、212.2mgの一定の用
量(150~273.3mgの範囲)に相当する。コホート2(10mg/kg i.v
.レジメン)では、平均体重は、72.6kg(50.0~107.2kgの範囲)であ
り、これは、726mgの一定の用量(500~1072mgの範囲)に相当する。コホ
ート3では、各場合の300mg又は600mgの皮下用量は、コホート1及び2で既に
適用された用量の範囲内であり、安全性及び忍容性に影響を与える可能性が低い。体重が
CFZ533の消失に影響を与える様式は、十分に特徴付けられていないが、いずれの群
についても、治療期間全体を通して、平均最大血漿中濃度(Cmax)が、(すべての皮
下投与が安全性の理由で100%生体利用可能であり、且つpSS患者の平均体重が70
kgであると仮定すると)およそ300μg/mL未満となることが期待され、且つコホ
ート2において認められた平均Cmax(約386μg/mL、コホート2のプラセボ対
照期間1の第85日の第5投与)を超えることが期待されない。これは、NOAEL(1
50mg/kg s.c.、毎週)でのカニクイザルにおける26週の毒性研究における
Cmax値(9495μg/mLの平均)よりも32倍低いことになる。
【0259】
PK/PD及び免疫原性評価項目は、治療及び追跡調査期間中に評価されている。表2
は、この研究についてのプロトコル骨子を提供する。
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
4.結果
コホート1及び2
44人の患者が登録された:8人の患者は、コホート1における3mg/kg(s.c
.)のCFZ533及びプラセボ(4人)を受け、21人は、コホート2における10m
g/kg(i.v.)のCFZ533及びプラセボ(11人)を受けた。PK/PDは、
ヒト初回投与試験からのデータに基づくと、CFZ533 10mg/kg(i.v.)
コホートにおいて予測された通りであったが、CFZ533曝露は、3mg/kg(s.
c.)コホートにおいて予測されたよりも低いように見え、CD40発現が亢進されてい
る可能性が高い状態における効率的な標的介在性の消失(初回通過効果)に起因する可能
性が高い。全体的に見ると、CFZ533は、安全且つ良好な耐容性を示し、大多数のA
Eが軽度又は中等度であった。3mg/kg(s.c.)コホートにおいて、1件の重篤
なAE(細菌性結膜炎)が存在したが、これは、研究薬物と関連しなかった。コホート1
では、ESSDAIが、プラセボ群と3mg/kg(s.c.)群の両方において、およ
そ12という平均ベースラインスコアからおよそ2ポイント向上することが認められ、し
たがって治療差のエビデンスがなかった(ΔESSDAI=0.68、95% CI=-
4.71~6.46)。しかし、コホート2では、およそ11人の平均ベースラインから
のESSDAIの改善が、プラセボ群における1.27と比較して10mg/kg(i.
v.)群において6.35であることが認められ、ΔESSDAI=5.2(95% C
I=1.02~10.58)という群間のモデル化された差は、CFZ533(i.v.
)治療を強く支持していた。10mg/kg(i.v.)CFZ533群では、ESSP
RI、MFI、医師総合評価(Physician’s Global Assessm
ent)、及び患者総合評価(Patient’s Global Assessmen
t)、及び胚中心関連の血清バイオマーカーCXCL13の減少などの他の尺度の改善も
認められた。
【0267】
図4は、CFZ533-10mg/kg(IV)の薬物動態を示すグラフである。IV
レジメンは、標的組織における十分な標的飽和及び完全なCD40経路遮断を提供した。
血漿中濃度>40μg/mL(グラフ内の点線)で組織中のCD40経路遮断が予測され
る(GC発達及びT依存性抗原反応の抑制)。12/24週の治療後、何人かのpSS患
者では、CD40発現が下方調節されるという徴候が現れた。
【0268】
図5は、ベースライン補正したESSDAI合計スコア-10mg/kg(IV)を示
す。上の線は、プラセボ(iv)であり、下の線は、CFZ533 10mg/kg(i
v)である。この図から分かる通り、プラセボに対するCFZ533群の明確な改善(第
12週までに平均Δ(delta)=5.6)が存在していた。
【0269】
図6は、ベースライン補正したCXCL13-10mg/kg(IV)を示す。上の線
は、プラセボ(iv)であり、下の線は、CFZ533 10mg/kg(iv)である
。
【0270】
図7は、第13週での(12週の治療-期間1後の)プラセボに対する10mg/kg
CFZ533についての様々なエンドポイントにおける治療群の差を示す。
【0271】
ESSDAI及び医師総合評価(VAS)の明確な改善が存在することを結論付けるこ
とができる。また、大抵の副次的評価項目の傾向は、CFZ533が優勢である。ESS
DAI変化は、非盲検期間において持続した。CXCL13レベルの有意な低下を伴う、
10mg/kg IV CFZ533に切り替えた場合のプラセボ群におけるいくつかの
改善は、同じパターンをたどった。
【0272】
原発性シェーグレン症候群において初めて遮断性の非細胞枯渇抗CD40抗体を試験す
るこの概念実証研究では、結果は、CFZ533が臨床的に活動性のpSSにおける新規
の治療モダリティを提供できることを示唆している。
【0273】
さらに、
図8は、薬力学/標的エンゲージメント(10mg/kg(IV)) - 血
漿中の総可溶型CD40における - 治療及び追跡調査期間中の標的エンゲージメント
の持続を示す。12/24週の治療後、何人かのpSS患者では、CD40発現が下方調
節されるという徴候が現れた。
【0274】
図9は、ESSDAI合計スコア-コホート1:3mg/kg(SC)のプロフィール
プロットを示す。
【0275】
図10は、薬物動態:遊離CFZ533-コホート1:3mg/kg(SC)を示す。
この図から分かる通り、全身を巡る前の効率的な標的介在性のクリアランス(初回通過効
果;CD40発現の上昇に起因する可能性が高い)が存在する - 組織におけるCD4
0経路遮断は、達成されない(CFZ533<40μg/mL)。
【0276】
図11は、薬力学/標的エンゲージメント:血漿中の総可溶型CD40-コホート1:
3mg/kg(SC)を示す。この図から分かる通り、標的エンゲージメントは、CD4
0発現が亢進されている可能性が高い状態における標的介在性の排除に起因して持続しな
かった。
【0277】
図12は、ESSPRI合計スコア-コホート1:3mg/kg(SC)のプロフィー
ルプロットを示す。
【0278】
図13は、ESSPRI合計スコア-コホート2:10mg/kg(IV)のプロフィ
ールプロットを示す。
【0279】
図14は、CXCL13(pg/mL)-コホート2:10mg/kg(IV)のプロ
フィールプロットを示す。
【0280】
図15は、10mg/kg CFZ533コホートにおけるESSDAI合計スコアの
プロフィールプロットを示す。
【0281】
図16は、ICAM+B細胞(%)-コホート2:10mg/kg(IV)のプロフィ
ールプロットを示す。
【0282】
図17は、第13週での(12週の治療-期間1後の)様々なエンドポイントにおける
治療群の差、プラセボに対するCFZ533を示す。
【0283】
CD40シグナル伝達は、自己免疫疾患(AD)の病因と関連しており、全身性ADを
有する患者は、一般に、CD40発現の増大及び血清/血漿sCD40レベルの上昇を呈
する。原発性シェーグレン症候群患者からの唾液腺生検では、CD40は、リンパ球、管
上皮細胞及び内皮細胞によって恒常的に発現され(Dimitriou et al,2
002)、これは、研究CCFZ533X2203で認められたベースラインでの血漿中
濃度の上昇と一致している。
【0284】
CFZ533は、標的介在性消失(TMD)、すなわち(用量に相関して)かなりの割
合のCFZ533がCD40と高親和性で結合され、その結果、この相互作用は、CFZ
533のPKプロフィールに反映されるプロセスを受ける。こうした状況では、pSS患
者を治療するための適切な用法用量を定義するために検討するための追加の因子には、体
内のCD40発現レベル、CD40合成及び分解(標的の生物学)並びにCFZ533-
CD40結合動態が含まれる。
【0285】
健康なボランティア、関節リウマチ、原発性シェーグレン症候群、腎移植、グレーブス
病及び重症筋無力症患者におけるCFZ533の以前の臨床経験は、CD40発現の上昇
が、CD40が十分に飽和していなければ、CFZ533の高い排除(クリアランス)速
度、標的エンゲージメントの喪失及び標的組織におけるCD40経路遮断の喪失と関連す
ることを示している。十分なCD40占有下では、CFZ533のクリアランス全体への
CD40の寄与は、最小限であり、CFZ533の消失は、主として、FcRn受容体(
再利用/サルベージによるIgG恒常性を担う高能力受容体へのCFZ533結合の結果
である。
【0286】
データから分かる通り、薬物動態学的/薬力学的展望及び用量設定戦略から、pSS患
者における適切な用法用量が負荷レジメン、それに続く維持レジメンを含むであろう可能
性が高い。
【0287】
おそらく最初の1か月にわたり、IV又はSC投与を通した負荷レジメンが正当化され
る。なぜなら、CFZ533は、CD40介在性の排除を受けるからである。治療の開始
時にCD40が十分には飽和されていない場合、CD40発現の上昇の状況において、C
FZ533の高い排除(クリアランス)率は、標的エンゲージメントの喪失及び標的組織
におけるCD40経路遮断の喪失と関連する可能性が高い。負荷期間後、pSS患者にお
ける進行中の研究CCFZ533X2203からのPKデータを使用する予備的なモデル
化に基づいて、SC維持レジメンが、標的組織における十分なCD40経路遮断を確実に
するように選択されることになる。
【0288】
コホート3
コホート3におけるベースラインから第12週までのESSDAIの低下は、コホート
2において見られるように、いずれの投薬群においても類似のパターンを示し、したがっ
てCFZ533の2つのIV/SC又はSC/SC投薬レジメンの有効性を裏付けている
。しかし、コホート3は、非盲検であり、且つプラセボ対照を含まないため、有効性デー
タは、探索的なものに過ぎず、慎重に解釈されるべきである。
【0289】
実施例8.CD40-CD154経路相互作用の遮断は、異所性胚中心を抑制し、且つシ
ェーグレン症候群のNOD/ShiLtJマウスモデルにおける病態を阻害する
シェーグレン症候群(SS)は、唾液腺炎及び外分泌腺機能障害を特徴とする慢性の自
己免疫疾患である。これは、RA後の最も一般的なリウマチ性の全身性自己免疫疾患の1
つであり、成人集団の有病率は、0.3~0.5%である。臨床症状としては、倦怠、乾
性角結膜炎、口内乾燥、鼻内乾燥、膣乾燥、気管乾燥、皮膚乾燥、関節痛/関節炎、レイ
ノー病、リンパ節腫脹、間質性肺炎、(通常、皮膚の)血管炎、腎炎及びリンパ腫が挙げ
られる。
【0290】
EULARシェーグレン症候群疾患活動性指標(ESSDAI)は、原発性SSを有す
る患者における疾患活動性を測定するために設計された。ESSDAIは、SSのための
HA承認の主要評価基準であり、患者報告型の転帰(ESSPRI)を補完するものとし
て設計されている。
【0291】
原発性SS患者と続発性SS患者との両方における疾患の特異的な徴候としては、唾液
腺及び涙腺における抗Ro及び抗La自己抗体の存在並びに単核細胞浸潤が挙げられる(
Bombardieri,et al.,2012)。場合により、T及びBリンパ球の
これらの蓄積は、GCとの形態的及び機能的類似性を有する異所性リンパ構造(ELS)
と称される十分に組織化された構造を形成する(Voulgarelis et al.
,2008)。先行研究は、SS患者及びこの疾患の前臨床モデルからの唾液腺における
ELSのエビデンス並びに進行中の親和性成熟のエビデンスを報告しており(Jacob
i et al.,2002;Stott et al.,1998;Bombardi
eri et al.,2012)、これらの構造を疾患病態に関連付けている(Bom
bardieri et al.,2017)。
【0292】
GC生物学におけるCD40-CD154(CD40リガンド)のような経路の基本的
役割を裏付ける明確なデータ(Laman et al.,1996)にもかかわらず、
ELS形成及び作用における様々な免疫共刺激経路の役割に関する発表されたデータは、
比較的に少ない。こうした相互作用がELS形成及び作用における役割を果たす場合、経
路遮断は、罹患した組織における構築された構造を排除し、且つ器官機能を潜在的に向上
させることが予測されるであろう。この仮説を検証するために、本発明者らは、続発性S
Sの非肥満糖尿病(NOD/ShiLtJ)マウスモデルにおける抗CD154モノクロ
ーナル抗体の治療的投与の効果を調べ(Humphreys-Beher et al.
,1996)、また唾液腺ELS、抗体分泌細胞及びアクアポリン-5(AQP-5)、
すなわち分泌細胞機能に必須のタンパク質の発現をモニタリングした(Delporte
et al.,2006)。
【0293】
1.材料及び方法
唾液腺におけるCD40経路遺伝子の特徴
治療していないNOD/ShiLtJマウス(Charles River,Germ
any)からの唾液腺の凍結切片をマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイリングの
ために使用した。レーザーキャプチャーマイクロダイセクションを適用してELSを濃縮
した。
【0294】
続発性SSのNOD/ShiLtJマウスモデル
NOD/ShiLtJ系統は、SS様疾患に加えて、1型糖尿病様の疾患を発症するた
め、続発性SSのモデルとみなすことができる(Humphreys-Beher et
al.,1994)。12週齢の雌のNOD/ShiLtJを、10週間、2×/週、
腹腔内への(i.p.)15mg/kgでの2つの治療群(群あたりn=15、2つの実
験):MR1(アルメニアンハムスター抗マウスCD154 IgG)及びアイソタイプ
対照(IC、ハムスター抗マウスIgG、BioX細胞)に無作為に割り付けた。すべて
の手順は、動物保護のためのスイスの法律に従って実施し、Basel、Switzer
landのCantonal Veterinary Officeによって承認された
(Animal License No.BS-2482)。
【0295】
NOD/ShiLtJマウスからの脾臓及び唾液腺の病理組織学及び免疫組織化学
左の唾液腺の3μm厚のパラフィン切片をヘマトキシリン及びエオシン(HE)で染色
した。CD3、CD45R、CD138、Iba-1、Ki-67及びAQP-5に対す
る自動化された免疫組織化学的染色をVentana Discovery XT免疫染
色機(immunostainer)(Roche Diagnostics、Swit
zerland)上で実施した。NODマウスからの脾臓をKi-67で染色した。
【0296】
抗体分泌細胞(ASC)に対するELISPOTアッセイ
唾液腺及び脾臓からの単一細胞の懸濁液を調製し(オンライン補足ファイル)、あらか
じめコートされたELISPOTプレートに新鮮なCD45+細胞を添加し、暗所で37
℃において20時間インキュベートした。TMB基質溶液を添加することにより、プレー
トへのASC結合が明らかになり、EliSpot Reader「AID class
ic」を用いてスポットの密度を測定した。
【0297】
抗Ro ELISA
マウス抗SSA/Ro60は、製造業者の指示書に従ってELISAキットcat.N
o.5710(Alpha Diagnostic International,In
c.USA)を使用して、血清中で評価した。
【0298】
2.結果
唾液腺におけるB細胞CD40遺伝子シグネチャーの上方調節
マイクロアレイ分析を使用して、初代のヒトCD19pos B細胞のrCD154刺
激後のB細胞におけるCD40の下流の遺伝子を同定し、そのうちの43個をマウス遺伝
子に位置付けることができた。次いで、これらの遺伝子の発現が12及び24週齢のNO
Dマウスからの唾液腺(SG)組織において調節されたかどうかを調べた。Cd40、C
d80及びAicdaを含めた14個の遺伝子は、いずれの時点でも、唾液腺(WS)組
織全体と比較して、マイクロダイセクションを行ったELSにおいて有意に上方調節され
、これは、慢性の経路活性化(
図26A)を示唆していた。精工なパスウェイ解析も、C
D40及びCD154(CD40LG)が、第12週と第24週の両方で最高の上流調節
因子の1つであることを示し(
図26B)、NOD/ShiLtJマウスからのSG及び
pSSを有する患者からのSGにおいて上方調節されるCD40経路遺伝子間のオーバー
ラップを実証することが可能であった(Horvath et al.,2012)。
【0299】
CD40-CD154相互作用は、ELS形成に必須である
NOD/ShiLtJマウスは、100%の発生率において、8~12週齢で、SG機
能の減退に先行するSGにおける限局的な細胞浸潤を起こす(Jonsson et a
l.2012)。上述のデータは、NOD SG組織における慢性のCD40経路シグナ
ル伝達を示唆し、これは、炎症性病巣における単核細胞によるCD40発現のエビデンス
によって裏付けられた(Roescher et al.2012)。したがって、抗C
D154 mAb MR1を12週齢で開始し、隔週、15mg/kgで10週間投与す
ることにより、治療的なCD40-CD154遮断の効果を試験することが選択された。
【0300】
図26Bは、NOD/ShiLtJマウスにおける10週間のMR1の長期的な投薬が
、Ki67陽性細胞のクラスターによって定義される場合の、唾液腺におけるELSの有
意な減少をもたらしたことを示す。さらに、SG常在のB及びT細胞並びにマクロファー
ジの割合の強い低下が存在した。組織学的画像は、MR1が、投薬の開始の10週後、E
LSを抑制することができたことを示した(
図26C)。
【0301】
CD40-CD154相互作用の遮断は、ASC形成及び自己抗体産生を阻害(inhi
bit)する
MR1投与はまた、脾臓、SG及び骨髄における総IgG(ただし、IgMではない)
ASCの減少(
図26B)並びに脾臓GCの完全な抑制をもたらした。抗CD154で治
療したマウスは、血清の抗Ro IgGレベルの有意な低下も呈したが、唾液腺における
Ro特異的なASCの頻度は、有意に影響を受けたように見えなかった(
図26C)。
【0302】
CD40-CD154相互作用の遮断は、AQP-5陽性細胞の喪失を予防する
マウスにおける刺激された唾液分泌を評価することが可能であるが、こうした分析のた
めの試料採取は、絶食、麻酔及びピロカルピン刺激(Jonsson et al.20
06);動物の福祉に影響を与える可能性がある因子並びに読み取りの解釈を必要とする
。したがって、SSにおける分泌機能に関与することが示唆されている(Yoshimu
ra et al.,2016)、AQP-5、すなわち唾液及び涙の産生の調節に関与
する水チャネルタンパク質(Delporte et al.,2006)の発現をモニ
タリングすることが選択された。IHC染色(
図27)によって評価される場合のAQP
-5陽性の評価は、MR1治療された動物では、対照動物と比較してより高い割合のAQ
P-5陽性細胞を示し、これは、CD40-CD154遮断が唾液腺分泌細胞機能の喪失
を予防するか又は遅らせ得ることを示唆している。
【0303】
3.考察
唾液腺ELSにおける親和性成熟のエビデンス及び自己反応性B細胞の存在は、SS病
態におけるこれらの構造の潜在的役割を示唆している(Stott et al.,19
98)。ELSとGCとの間の機能的類似性を考慮すると、GC生物学に関与する免疫学
的な共刺激経路がELSにおいて同様の役割を果たす可能性があると仮定された。CD4
0又はCD154の欠乏は、GC形成を予防し、リガンド又は受容体の薬理学的遮断も、
構築されたGCを崩壊する(Ristov et al.,2018;Kim et a
l.2014)。CD40-CD154相互作用は、ELS生物学にも関連付けられてい
る。なぜなら、CD40発現は、pSS患者からのSG腺における浸潤細胞上で且つNO
Dマウスにおいて観察されているからである(Roescher et al.2012
;Ohlsson et al.2002)。NODマウスからのELSにおける、且つ
pSS患者からのSG生検におけるCD40の下流の遺伝子の永続的な上方調節と合わせ
ると、これらのデータは、この共刺激経路が、浸潤する唾液腺白血球において活性である
ことを示唆していた。
【0304】
さらに、CD40-CD154相互作用の治療的遮断がELSの排除、浸潤白血球の大
きい減少並びに血清抗Ro自己抗体レベルの低下をもたらすことが実証され、CD40-
CD154遮断は、(唾液産生の評価が、SG機能の、より直接的な尺度ではあるだろう
が)AQP-5、すなわち分泌細胞機能に必須のタンパク質を発現している細胞の喪失を
予防するようにも見えた(Delporte et al.,2006)。以前のデータ
は、若いNODマウス(4~5週齢;唾液腺炎のエビデンスの前の1~2か月)における
MR1の単回投与の予防的投与が唾液腺炎の発症を予防し、且つ抗Ro自己抗体のレベル
を低下させることができたことを示し(Mahmoud et al.,2016)、C
D40欠損NODマウスの結果と一致していた。しかし、CD40-CD154相互作用
の治療的遮断がこのモデルにおいてSG炎症、ELSを消失させ、且つ自己抗体レベルを
低下させ得ることは、以前に示されていない。
【0305】
このデータを、NODマウスのSGにおける可溶型CD40-Ig融合タンパク質のア
デノ随伴ウイルス発現が、唾液腺炎を軽減させることができなかった以前の研究(Roe
scher et al.,2012)と対比させる。著者らは、SGにおける融合タン
パク質発現の証拠がなかったことを報告したため、薬物の濃度が、十分なCD40-CD
154経路遮断を達成するのに不十分であった可能性が高い。対照的に、この研究は、脾
臓GCの阻止を明確に実証することができ、これは、組織における、完全な、経路関連の
PD効果に十分なMR1曝露が存在することを示唆していた。まとめると、このデータは
、抗CD40抗体mAb1などの生物製剤を用いるCD40-CD154共刺激経路の治
療的遮断がSS患者における有益な治療効果を提供できた(Ristov et al.
,2018)ことを示唆している。
【0306】
実施例9.CFZ533、すなわち遮断性の非細胞枯渇抗CD40モノクローナル抗体の
インビトロ及びインビボ特性の特徴
1.方法
CD40に対するCFZ533の親和性の表面プラズモン共鳴分析
組換えCFZ533の結合分析を、ランニング緩衝液としてHBS-EP+を用いて2
5℃で実施した。典型的な結合分析サイクルは、3つのステップ(i)チップ表面上に固
定されたタンパク質Aを介する抗体の捕捉、(ii)捕捉された抗CD40抗体へのCD
40抗原の結合、及び(iii)タンパク質A表面の再生から構成されていた。抗原-抗
体結合相互作用の動態速度定数を決定するために、ブランク注射からの反応を二重参照し
て、結合データを処理した。結合曲線を、Biacore T100 Evaluati
onソフトウェアの1:1相互作用モデルを使用して局所的に適合させて、動態速度定数
を決定した。平衡解離定数(KD)の値を速度定数kd/kaの比として算出した。すべ
ての結合測定は、2つの独立した実験で実施した。
【0307】
FcγRIIIAに対するCFZ533の親和性の表面プラズモン共鳴分析
4-アミノ酸精製タグ(4APP;Novartis)及びAviビオチン標識タグ(
GLNDIFEAQKIEWHE;Avidity)でタグ付けされたヒトFcγRII
IAの細胞外ドメインをGeneart:ヒトFcγRIIIA(CD16a)158V
(Uniprot:P08637、17-199)、ヒトFcγRIIIA 158F(
Uniprot:P08637、17-199)によって合成し、HEK293細胞にお
いて発現させ、抗4APP親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。受容体を、スト
レプトアビジンセンサーチップ(General Electric)に結合させたBi
rA(Avidity)を用いて部位特異的にビオチン標識し、異なるAbの平衡-結合
レベルを、記載されている通りに表面プラズモン共鳴(T100、General El
ectric)によって分析した(Warncke et al.2012)。平衡解離
定数(KD)は、1:1モデルによって算出した。
【0308】
ヒト白血球培養
全血バフィーコートは、健康なボランティア(Blutspendezentrum,
Basel,Switzerland)から、又はSwiss Human Resea
rch Act及び責任ある倫理委員会(Ethikkommission Nordw
est-und Zentralschweiz;EKNZ)の承認に従ってインフォー
ムドコンセント下で提供された健康なボランティアから採取された全血から得た。ヒト扁
桃試料は、Ergolz Klinik(Liestal,Switzerland)(
研究プロトコルNo.1000244 v.03;Ethikkommission b
eider Basel;EKBBによって承認されている)及びKantonspit
al(Liestal,Switzerland)(研究プロトコルNo.TRI014
9 v.01;EKNZによって承認されている)の両方から得た。インビトロ培養実験
については、詳細な方法についての補足資料を参照されたい。簡単に言うと、全血、単離
されたPBMC、インビトロで得られた単球DC又はヒト扁桃B細胞を単一濃度の又は用
量漸増のCFZ533又は適切な対照抗体と共にインキュベートした。経路遮断実験につ
いて、これらの培養物は、EC80濃度の組換えヒトCD154(5μg/ml)及びI
L-4(75ng/ml)も含んでいた。インビトロアッセイの読み取りには、チミジン
取り込み(3H-TdR)によって評価される増殖、B細胞上の活性化分子CD69の発
現のフローサイトメトリーに基づく評価及びELISAによって評価されるサイトカイン
分泌が含まれていた。NHP全血及びPBMCについて、同様のアッセイを使用した。い
くつかのヒト全血実験では、蛍光的にタグ付けしたCFZ533を使用してCD40受容
体占有も調べた。適切な場合、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア
における線形回帰に基づく曲線適合を使用してIC50値を推定した。
【0309】
インビトロ細胞枯渇アッセイ
詳細な方法についての補足資料を参照されたい。簡単に言うと、CFZ533がCD2
0posB細胞の枯渇を媒介する能力を、B細胞枯渇抗体リツキシマブと比較して、3日
の期間にわたってヒト全血においてモニタリングした。CDCについて、CFZ533又
はリツキシマブをウサギ補体の存在又は非存在下でRAJI B細胞と共にインキュベー
トし、細胞溶解を発光によって評価した。
【0310】
CFZ533の内在化
蛍光的にタグ付けしたCFZ533及びrCD154の内在化を、ヒトB細胞株RI-
1(Th’ng et al,1987)を使用してインビトロで評価した。CFZ53
3内在化のCD40依存性は、CD40ノックアウトRI-1細胞株を使用して評価した
。内在化は、製造業者の指示書に従ってAmnis(登録商標)イメージフローサイトメ
ーター(image flow cytometer)(Merck KHaA,Dar
nstadt)を使用して評価し、データはImageStream(登録商標)Xソフ
トウェアを使用して解析した。
【0311】
インビボ研究
単一用量薬物動態/薬力学的(PK/PD)研究は、7.5~8.5歳(6.5±2.
6kg)の、フィリピン(Siconbrec,Makati City,Philip
pines)で飼育下繁殖された、生物製剤治療を受けていないカニクイザル(Maca
ca fascicularis)を利用した。動物の取り扱い、世話、薬物治療及び血
液採取は、動物保護に関するSwiss Federal Lawに従って実施される(
動物ライセンスBS #1900、BS#1495)。リコール免疫化実験について、本
発明者らは、Covance Laboratories GmbH,Muenster
,Germanyで行われた毒性研究からの動物を利用した(論文準備中)。この研究は
、動物福祉法及び認められている動物福祉の標準に関して国の法的規制の徹底順守で、認
可された研究プロトコル及び地域の標準の手術手順に従って実施した。
【0312】
PK研究では、CFZ533は、16.2(5532)、18.5(5531)及び2
0(5530)mg/kgの計算された単一用量で3匹の動物に投与された。CFZ53
3血清中濃度、末梢T及びBリンパ球の数及びCFZ533による末梢B細胞上のCD4
0占有の分析のために血液を採取した。リコールTDAR実験について、動物は、研究第
8日(初回抗原刺激)及び43日(リコール;CFZ533治療中)にそれぞれAlum
中のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)で免疫を受けた。初回抗原刺激及びリ
コール免疫化の1日前並びに7、14及び21日後に血清を採取した。KLH特異的なI
gM/IgG力価は、標準としてカニクイザル抗KLH IgM/IgG標準血清を使用
するサンドイッチELISAを用いて決定した。PK評価は、上に記載している通りに実
施した。PK及びTDAR実験の追加的詳細については、補足資料を参照されたい。
【0313】
胚中心の組織学的分析
ホルマリン固定し、パラフィンワックスに包埋した(FFPE)脾臓及びリンパ節(腋
窩、下顎及び腸間膜)の切片を、ヘマトキシリン及びエオジンで、且つ以下のマーカー:
抗CD20抗体(M0755、Dako)、抗CD8抗体(RM-9116-SO、Me
dac)及びKi67(M7240、Dako)を用いる間接的な免疫ペルオキシダーゼ
方法(DakoによるHRP+DAB)で染色した。すべてのスライドを評価し、染色の
強度に従って(陰性~強度)等級分けした。さらに、組織内のあらゆる免疫組織化学的染
色された細胞の染色パターン及び分布も記載した。
【0314】
2.結果
CFZ533は、ヒトCD40と結合し、複数のCD40発現細胞型のrCD154誘導
性の活性化を阻害する。
表3は、組換えヒトCD40に対するCFZ533のKDが表面プラズモン共鳴によっ
て0.3nMと決定され、したがってその親抗体HCD122(CFZ533の野生型I
gG1バージョン)と非常に類似していたことを示す。
【0315】
【0316】
図18Aは、複数のドナー(それぞれ5、32及び6人のドナー)からのヒト全血培養
物、PBMC及び単離された扁桃B細胞のrCD154及びIL-4介在性の増殖(3H
-TdR)に対するCFZ533の効果を示す。データは、正規化されたcpmとして示
す(rCD154+IL-4=100;点線)。
図18Bは、CFZ533が、一晩の培
養後のrCD154刺激されたmoDCによるTNF-α産生を阻害したことを示す。図
18Cは、CFZ533の添加の遅延がrCD154+IL-4介在性のヒトPBMC増
殖を阻害したことを示す。rCD154+IL-4での刺激の1時間前、同時又は2及び
6時間後にCFZ533をヒトPBMCに添加し、その後の4日間の培養後に増殖(3H
-TdR)を評価した(点線及び破線は、rCD154+IL-4及び細胞+培地対照を
表す)。すべてのデータについて、rCD154誘導性の刺激の読み取りの平均値及びS
Dを、対数変換したCFZ533濃度の関数としてグラフで示した。適切な場合、IC5
0値を、線形回帰に基づく曲線適合を使用して決定した。
図18Dは、CFZ533によ
るCD40占有と経路遮断との関係を示す。10人のドナーからのヒト全血を用量漸増の
CFZ533の存在下でrCD154と共に一晩培養した。経路活性化の程度(B細胞上
の%CD69pos)及びCD40占有の程度(CFZ533をAlexaFlour
488標識して染色)を評価した。白丸及び黒丸は、それぞれCFZ533によって占有
されるCD40の割合及びCD20pos B細胞上のCD69pos発現細胞の割合を
、対数変換したCFZ533濃度の関数として示す(平均値及びSDを示す)。点線及び
破線は、すべてのドナーに対して正規化されたrCD154誘導性のCD69発現及び細
胞+培地対照培養物を表す。
【0317】
図18Aは、CFZ533が複数のドナーからのヒト全血培養物、PBMC並びに精製
された扁桃B細胞のrCD154誘導性の増殖をそれぞれ0.024μg/ml(0.1
6nM)、0.017μg/ml(0.12nM)及び0.071μg/ml(0.47
nM)の力価(IC50値)で完全に阻害したことを示す。さらに、本発明者らは、CF
Z533が初代単球由来樹状細胞(moDC)によるrCD154誘導性のTNF産生を
0.04μg/ml(0.27nM)のIC50で完全に阻止したことを実証することが
できた(
図18B)。
【0318】
以前に公表されている通り、CFZ533は、カニクイザル由来のPBMCのrCD1
54誘導性の増殖を阻害した(Cordoba et al.,2015)。CFZ53
3は、ヒト、アカゲザル及びカニクイザル動物由来のPBMCのrCD154誘導性の増
殖を同様の力価(それぞれ0.02、0.03及び0.01μg/mlのIC50)で阻
害し、またこれらの種由来のB細胞上のCD40とおよそ0.2μg/mlのEC50値
で結合することができた(表4を参照されたい)。
【0319】
【0320】
上の細胞データは、CFZ533がrCD154の前に又はrCD154と同時に添加
される実験から得られ、この抗体が内在性リガンドの結合を妨げることができたことを示
している。本発明者らは、rCD154を含有する白血球培養の開始の最大6時間後のC
FZ533の添加が、最小限の力価の損失を伴って、細胞活性化の完全な阻害をもたらす
ことを実証することもでき、これは、CFZ533がCD40から内在性リガンドを外し
て取って代わることができることを示している(
図18C)。
【0321】
本発明者らは、CFZ533によるCD40占有の程度と、経路阻害の程度との間の関
係を評価することも望んでいた。それを行うために、本発明者らは、複数のドナーからの
全血において、CFZ533によるCD40受容体占有及びrCD154誘導性のCD6
9を同時に評価した。
図18Dは、CFZ533による少なくとも90%のCD40受容
体占有率がCD40経路活性化の完全な遮断のために必要とされていたことを示す。受容
体占有と経路阻害との間の同様の関係は、CD40経路活性化の読み取りとしてCD23
及びCD54を使用しても認められた(データは示さない)。
【0322】
CFZ533は、インビトロで最小限の刺激の可能性を呈する
CFZ533がヒト白血球の活性化を刺激する能力を、全血におけるB細胞上の活性化
分子CD69の増殖及び上方調節を使用して評価した。
図19Aは、以下に関するデータ
を示す。i.複数のドナー(n=13)からのヒト全血を用量漸増のCFZ533と共に
インキュベートし、培養の3日後に増殖(
3H-TdR)を評価した。ii.複数のドナ
ー(n=26)からのヒトPBMCを用量漸増のCFZ533と共にインキュベートし、
培養の3日後に増殖(
3H-TdR)を評価した。いずれのグラフについても、データは
、対数変換したCFZ533濃度の関数として、正規化されたcpmの平均値及びSDと
して示す(rCD154+IL-4=100;点線、細胞+培地=0;破線)。
図19B
は、CFZ533が追加の刺激の存在下でヒトPBMC増殖を誘発しないことを示す。ヒ
トPBMCをIL-4(i)又は抗IgM F(ab’)2.(ii)の存在下において
用量漸増のCFZ533で3日間刺激した。3H-TdR(cpm)の平均及びSDを、
対数変換したCFZ533濃度の関数として示す。
図19Cでは、ヒト全血(41人のド
ナー)が、刺激なし、CFZ533、アイソタイプ対照又はrCD154と共にどのよう
に一晩培養されたか、またB細胞上のCD69発現がFACSによってどのように評価さ
れたかを示す。それぞれの点は、単一のドナーからのデータを表し、平均の%CD69値
は、水平な赤線によって示される。
【0323】
図19Aは、CFZ533が、rCD154と対照的に、ヒト全血(1:10希釈)又
はPBMCによるチミジン取り込みを誘発できなかったことを示す。CFZ533が増殖
を誘発できないことは、IL-4又は抗IgMなどの追加の共刺激物質の添加によって影
響を受けなかった(
図19B)。本発明者らは、CFZ533が、やはりrCD154と
対照的に、複数のドナーからの全血におけるB細胞上のCD69の上方調節を誘発できな
かったことを実証することもできた(
図19C)。最後に、CFZ533は、CD40を
発現している単球由来DC又はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)によるサイトカイン
産生を誘発できなかった(データは示さない)。
【0324】
CFZ533は、細胞枯渇を媒介しない
CFZ533を、FcγR結合を阻止し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介でき
ないことをもたらすことが以前に示されているN297A変異を含有するように操作した
。CFZ533は、HCD122(野生型IgG1)と比較すると、FcγRIIIAと
結合することができず(表5)、本発明者らは、結合のこの欠如が、CFZ533が細胞
枯渇を媒介する能力にどのようにして影響を与えるかを調べることを望んでいた。
【0325】
【0326】
図20Aは、用量漸増のCFZ533又は50μg/mlリツキシマブの存在下で72
時間インキュベートされたヒト全血培養物からのデータを示す。B細胞数は、リンパ球F
SC/SSCゲートの範囲内にあるCD45pos及びCD19pos事象に基づいて決
定した。個々の抗体濃度についての結果を、治療していない試料に関して、残存するB細
胞(パーセント)として算出し、対数変換した抗体濃度の関数としてグラフで示した(1
00%に補正し、点線として示した)。データは、8人の独立したドナーの平均値及びS
Dを表す。
図20Bは、異なる濃度のリツキシマブ又はCFZ533及び一定濃度のウサ
ギ補体と共にインキュベートしたRaji B細胞からの結果を示す。Raji細胞の濃
度依存性の死滅を2時間後に分析し、ここで、細胞の生存率を、ルシフェラーゼを使用す
る各ウェル内のATP濃度の決定によって測定した。結果は、対数変換した抗体濃度の関
数として、アイソタイプ対照に対して正規化された相対ルシフェラーゼ単位(RLU)と
して示す。
【0327】
図20Aは、枯渇抗CD20抗体リツキシマブがヒト全血におけるB細胞のおよそ80
%を排除することができたのに対して、CFZ533が細胞枯渇を少しも媒介できなかっ
たことを示す。さらに、CFZ533は、リツキシマブとは対照的に、Raji B細胞
の補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介することができなかった(
図20B)。
【0328】
CFZ533は、B細胞によってCD40依存的に内在化される
本発明者らは、次に、CFZ533が、ヒトB細胞株RI-1において発現しているC
D40によって内在化される可能性があるかどうかを調べることを望んでいた。
図21A
は、rCD154が、非許容条件(4℃)と比較して、許容条件(37℃)下で内在化さ
れた(ここで、rCD154の弱い染色を原形質膜上に観察することができた)ことを示
す。CFZ533も内在化されたが、37℃において残留する膜染色が確かにあるように
見えた。
図21Bは、rCD154の内在化の程度が、CFZ533について観察される
ものよりも大きいように見えることを示した。本発明者らは、CD40ノックアウトRI
-1 B細胞株を使用して、CFZ533(
図21C)及びrCD154(データは示さ
ない)の結合及び内在化がCD40依存性であることを実証することができた。
【0329】
図21Aは、AlexaFlour 488で標識したrCD154又はCFZ533
と共に37℃又は4℃で3時間培養した個々のRI-1 B細胞の代表的な画像を示す。
図21B.許容条件下でのCFZ533及びrCD154の相対的な内在化侵食(非許容
侵食値を引いたもの)。それぞれの点は、個々の実験からのデータを表し、集団平均は、
水平な赤線として示される。
図21C.Alexa488で標識したCFZ533と共に
37℃で3時間培養した個々のCD40発現又はCD40ノックアウトRI-1細胞の代
表的な画像。すべての実験において、細胞膜の境界を明確にするために、細胞は、Ale
xaFlour 647標識されたCD45で共染色した。
【0330】
非ヒト霊長類におけるCFZ533の薬物動態特性
図22A.16.2(5532)、18.5(5531)及び20(5530)mg/
kg(静脈内)の計算された用量での単一用量投与後の3匹のカニクイザルにおけるCF
Z533の血清中濃度。
図22B.CD40占有率:利用可能なCD40(パーセント)
(i)及び総CD40(パーセント)(ii)C.末梢B/T細胞:単回投与後の末梢血
B細胞の割合。第0日は、CFZ533が投与された時である。
【0331】
上のデータは、CFZ533がNHP CD40に結合し、NHP B細胞のrCD1
54誘導性の活性化を同様の力価で阻害することができたことを示した。これは、カニク
イザル及びアカゲザルが、CFZ533 PKとPDとの間の関係を調べるインビボ研究
に適した種であろうことを示唆している。
図22A中のデータは、CFZ533の単回静
脈内投与(16.2、18.5及び20mg/kgの計算された用量)後の3匹のカニク
イザルのPKプロフィールを示す。内在化している膜結合型抗原を標的にするモノクロー
ナル抗体に典型的であるが(Mager et al.2006及びNg et al.
2006)、CFZ533濃度の時間経過は、明らかな標的介在性の消失を呈し、非線形
PKプロフィール並びに濃度依存性のクリアランス速度及び半減期がもたらされた。PK
プロフィールにおいて観察される屈曲点は、標的エンゲージメントのマーカーであり、C
FZ533のクリアランス全体へのCD40の寄与の増大及びより短い半減期と関連して
いる。さらに、PKプロフィールにおける屈曲点は、CD40飽和の低下が観察される時
間と一致していた(
図22B、i)。これは、CFZ533がより急速な排除を受けた場
合、およそ10~20μg/mlで起こった。すべての動物において、細胞上のCD40
受容体発現の喪失は存在しなかった(
図22B、ii)。さらに、CFZ533は、研究
全体を通したいくつかの観察される変動にもかかわらず、末梢血B細胞(
図22C)又は
T細胞(データは示さない)を枯渇させなかった。
【0332】
CFZ533は、リコールT細胞依存性抗体産生を阻害する
図23Aは、リコールTDARに対するCFZ533の効果を評価するための実験設計
の概略図を示す。x軸よりも下の矢印は、一次及び二次KLH免疫化を強調する。単一用
量の10mg/kg CFZ533のタイミングを上に示す。アスタリスクは、抗KLH
IgG及び/又はCFZ533濃度が測定された時点を示す。
図23B.各グラフは、
個々の動物についての抗KLH IgG(黒塗記号)及び血漿CFZ533濃度(対数ス
ケール;実線)を示す。対照動物からの平均抗KLH IgGレベル(白抜き記号)を比
較目的で各グラフに重ね合わせる。
図23C.CFZ533を使用する1mg/kg/週
の皮下反復投与(26週研究)から得られるアカゲザルからのmLNにおける胚中心(K
i67染色)の組織学的分析。6匹の動物からの代表的なmLN切片を、(i)対照の画
像、(ii).iii.治療期間の最後の個々の動物からの投薬期間にわたる平均の定常
状態CFZ533血清中濃度と共に示す。
【0333】
CD40が遮断されることの予測される狙い通りのPD効果は、TDARの阻害である
(Kawabe et al.1994)。CFZ533は、NHP及びヒトにおける一
次TDARを阻害し、本発明者らは、リコールTDARに対するこの抗体の効果を調べる
ことも望んでいた。その実験設計の概要を
図23Aに示す。簡単に言うと、4匹のアカゲ
ザルは、研究第1日の10mg/kgでのCFZ533の単回静脈内投与前、研究第-2
8日(初回抗原刺激)にAlum中のKLHで免疫を受け、それに続いて研究第15日に
第2のKLH免疫化を行った。
【0334】
図23Bは、4匹のそれぞれの動物における、免疫を受けた対照(CFZ533なし)
からのデータと比較した、抗KLH IgGリコール反応に対するCFZ533の効果を
示す。CFZ533のPKプロフィールでは、動物間の変動性が存在しており、動物#1
及び#3では、より迅速なCFZ533の排除が観察された。動物#2及び#4では、よ
り長い期間、より高い血漿中濃度が観察された。興味深いことに、これらの動物は、研究
第15日での抗KLH IgG(及びIgM;データは示さない)リコール反応の完全な
抑制を示した(すべての動物は、KLHに対する一次TDARを開始したことに留意され
たい)。対照的に、より迅速なCFZ533のクリアランスを有する動物(動物#1と比
較すると、動物#3がより大きい遅延)では、特に血清CFZ533濃度が第2のKLH
免疫化の時点でおよそ40μg/ml未満である場合、抗KLH IgG反応が(いくら
かの遅れを伴っているが)観察された。移植された(Cordoba et al.20
15)及び移植されていない(
図22B)動物における、CFZ533での以前のインビ
ボ実験で観察されている通り、末梢B細胞枯渇は、観察されなかった(データは示さない
)。
【0335】
上の結果は、NHPにおけるリコールTDARの完全な抑制のためにおよそ40μg/
mlよりも高いCFZ533血清中濃度が必要であることを示した。本発明者らは、CF
Z533曝露とCD40経路関連の組織薬力学的効果との間の関係をさらに調べることを
望んでいた。1mg/kg/週のCFZ533(皮下)での26週の毒性研究の停止時、
本発明者らは、腸間膜リンパ節(mLN)におけるGCの組織学的及び分子的分析を実施
した。
図23C(i)は、本発明者らが、投与された6匹の動物のうち、3匹の個体にお
いてGCの完全な抑制を観察することができたのに対して、残りの動物のmLNでは依然
としてGCが観察されたことを示す。
図23C(iii)は、少なくとも38μg/mL
の血清中濃度(投薬期間にわたる平均の定常状態濃度)がリンパ節の皮質B細胞領域にお
けるGC発達の完全な抑制を伴っていたのに対して、全血CD20
posB細胞上の十分
なCD40占有にもかかわらず(動物26842及び26772;データは示さない)、
GCの不完全な抑制(動物26842)又は抑制なし(動物26772及び26837)
が20μg/mL未満の血清中濃度で観察されたことを示す。末梢B細胞枯渇の証拠は存
在しなかった(データは示さない)。
【0336】
考察
CFZ533は、CD40-CD154共刺激経路の調節不全を伴う実質臓器移植及び
自己免疫疾患の潜在的治療法として開発されている。本発明者らは、本明細書において、
CD40経路関連のインビトロ及びインビボモデル系におけるCFZ533の機能特性の
特徴を記載し、またCFZ533曝露とPD効果との関係を追求する。
【0337】
CFZ533は、CD40と結合し、B細胞及びDCを含めた様々なヒト免疫細胞型上
のrCD154誘導性の経路活性化を完全に妨げることができた。さらに、CFZ533
が全血における経路活性化を完全に遮断するために、90%を超えるCD40占有が必要
とされたように見える。まとめると、これらのデータは、十分な受容体占有が得られると
仮定すれば、CFZ533が、細胞型に関係なくCD40経路依存性エフェクター機能を
阻止する可能性を有することを示唆する。本発明者らのデータは、PBMCでは、CFZ
533が、CD40から、あらかじめ結合されているrCD154を外して取って代わる
ことができたことも示し、これは、mAbと生理的リガンドのエピトープが重複する可能
性があること;構造研究における調査段階にある概念を示唆している。
【0338】
単一用量PK研究では、CFZ533について、インビボでの濃度依存性のクリアラン
ス速度及び半減期が観察された。このPKプロフィールは、CD40受容体発現がCFZ
533の排除に影響を与えることを示唆していた。低いCFZ533濃度(すなわち不完
全な標的飽和)では、CFZ533のクリアランス全体へのCD40の寄与が上昇し、半
減期は、IgG1型抗体について通常観察されるよりもいくらか短かった。完全な標的飽
和(及び十分な機能上経路阻害)に対応するより高い濃度では、CFZ533のクリアラ
ンス全体への受容体の寄与が制限され、半減期が増大した。CFZ533の標的介在性の
クリアランスは、インビトロで観察されたCFZ533のCD40介在性の内在化(この
複合体のリソソーム分解がこれに続くと思われる)と一致していた。
【0339】
PK/PD研究からの追加の発見は、CFZ533が末梢B細胞をインビボで枯渇でき
ないことを裏付けた(Cordoba et al.2015)。言及した通り、CFZ
533がCD40発現細胞を枯渇できないことは、ヒンジ領域内のN結合型グリコシル化
の欠如をもたらしてFcγRIIIAと結合できないように又はADCC又はCDCを媒
介できないようにする抗体におけるN297A変異の存在に起因する。CD40発現細胞
型(特に炎症条件下での、免疫及び非免疫細胞型上のこの受容体の広い組織分布に特に関
心が持たれる)の枯渇を防止するためにCFZ533のFc-サイレンシングを行った。
【0340】
NHP腎移植における有効性(Cordoba et al.2015)に加えて、こ
の文献における結果は、CFZ533がリコールTDARを完全に阻害することを示した
。この結果は、T細胞依存性抗原に対するメモリーB細胞の反応がCD40-CD154
相互作用に十分に依存していることを示唆していた。リコール反応の阻害の程度は、CF
Z533の濃度に関連するように見え、(追加免疫後の少なくとも1週間の)30~40
μg/mlを超える血清レベルが抗原特異的な抗体反応の十分な抑制のために必要である
。血清中濃度と、CD40経路関連の組織PD読み取りとの間のこの関係は、腸間膜リン
パ節GCに対するCFZ533の効果を調べる場合にも適用され、ここで、平均の定常状
態血清CFZ533濃度の最小閾値がGCの完全な抑制のために必要であった。これらの
データは、投薬戦略を提供するための、末梢の薬物曝露と、組織における標的関連のPD
効果との間の関係を確立することの重要性を指し示す。CD40-CD154共刺激経路
を標的にするいくつかの生物製剤が様々な自己免疫疾患のために開発されている。血栓塞
栓症のリスクの可能性(Boumpas et al.,2003)にもかかわらず、C
FZ533のような抗CD40 mAbに加えて、抗CD154 mAbが引き続き臨床
中である。最近の結果は、Fcサイレンシング及びペグ化F(ab’)2手法が、CD1
54を標的にする抗体の血栓塞栓傾向を排除することができることを示唆している。しか
し、Fcサイレント抗CD154 mAbは、効果が低い可能性があるという報告が存在
する。これまで、前臨床モデルにおける又は臨床中の複数の抗CD40抗体の投与に伴う
血栓塞栓症の証拠は存在しない。
【0341】
結論として、本発明者らのデータは、CFZ533が、最小のアゴニスト特性を有する
経路遮断性の非細胞枯渇抗CD40抗体であることを示す。十分で薬理学的に適切な曝露
で、CFZ533は、CD40発現細胞型を枯渇せずに、リコールTDARを完全に阻害
し、また胚中心を抑制することができる。これらのデータは、腎移植における前臨床有効
性と組み合わせて、選択された自己免疫疾患及び実質臓器移植におけるCFZ533の臨
床的有用性の可能性の確固たる科学的な理論的根拠を提供する。
【0342】
参考文献
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本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
シェーグレン症候群の治療に使用するための抗CD40抗体。
[2]
シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群である、[1]に記載の使用のための抗体。
[3]
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、
d.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体、及び
e.サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される、[1]又は[2]に記載の使用のための抗体。
[4]
配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む、[3]に記載の使用のための抗体。
[5]
治療有効量の、[1]~[4]のいずれか一項に記載の使用のための抗体と、1種又は複数の薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
[6]
投与経路は、皮下若しくは静脈内又は皮下若しくは静脈内の組み合わせである、[1]~[5]のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
[7]
用量は、ヒト対象の1キログラムあたり約3mg~約30mgの活性成分である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
[8]
用量は、ヒト対象の1キログラムあたり約10mgの活性成分である、[7]に記載の使用のための抗体化合物。
[9]
用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約300mgの活性成分である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
[10]
前記用量は、150mgの活性成分、300mgの活性成分又は600mgの活性成分である、[9]に記載の使用のための抗体化合物。
[11]
負荷投薬及び維持投薬を通して投与される、[1]~[10]のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
[12]
負荷投薬は、第1の用量の皮下注射を介して投与され、且つ維持投薬は、第2の用量の皮下注射を介して投与される、[11]に記載の使用のための抗体。
[13]
第1の用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約300mgの活性成分であり、且つ第2の用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約300mgの活性成分である、[12]に記載の使用のための抗体。
[14]
第1の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分であり、且つ第2の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分である、[12]又は[13]に記載の使用のための抗体。
[15]
前記負荷投薬は、少なくとも2回の皮下注射を含み、且つ前記維持投薬は、毎週(Q1W)、隔週(Q2W)又は毎月(Q4W)の皮下注射からなる、[11]~[14]のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
[16]
前記負荷投薬の少なくとも2回の皮下注射は、異なる用量である、[15]に記載の使用のための抗体。
[17]
ヒト対象におけるシェーグレン症候群を治療する方法であって、治療有効用量の抗CD40抗体を前記対象に投与することを含む方法。
[18]
シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群である、[17]に記載の方法。
[19]
前記抗体は、
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、
d.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体、及び
e.サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される、[17]又は[18]に記載の方法。
[20]
前記抗体は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む、[19]に記載の治療の方法。
[21]
前記抗体は、1種又は複数の薬学的に許容し得る担体と共に投与される、[17]~[20]のいずれか一項に記載の方法。
[22]
前記抗体は、皮下若しくは静脈内又は皮下若しくは静脈内の組み合わせで投与される、[17]~[21]のいずれか一項に記載の方法。
[23]
前記抗体は、ヒト対象の1キログラムあたり約3mg~約30mgの活性成分の用量として投与される、[17]~[22]のいずれか一項に記載の方法。
[24]
前記用量は、前記ヒト対象の1キログラムあたり約10mgの活性成分である、[23]に記載の方法。
[25]
前記抗体は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約300mgの活性成分の用量として投与される、[17]~[22]のいずれか一項に記載の方法。
[26]
前記用量は、150mgの活性成分、300mgの活性成分又は600mgの活性成分である、[25]に記載の方法。
[27]
前記抗体は、負荷投薬及び維持投薬で投与される、[17]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]
前記負荷投薬は、第1の用量の皮下注射を介して投与され、且つ前記維持投薬は、第2の用量の皮下注射を介して投与される、[27]に記載の方法。
[29]
前記第1の用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約300mgの活性成分であり、且つ前記第2の用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば約300mgの活性成分である、[28]に記載の方法。
[30]
前記第1の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分であり、且つ前記第2の用量は、150mg、300mg又は600mgの活性成分である、[28]又は[29]に記載の方法。
[31]
前記負荷投薬は、少なくとも2回の皮下注射を含み、且つ前記維持投薬は、毎週(Q1W)、隔週(Q2W)又は毎月(Q4W)の皮下注射からなる、[27]~[30]のいずれか一項に記載の方法。
[32]
前記負荷投薬の少なくとも2回の皮下注射は、異なる用量である、[31]に記載の方法。
[33]
シェーグレン症候群の治療のための医薬品の製造のための、抗CD40抗体、緩衝液、安定剤及び可溶化剤を含む液体医薬組成物の使用並びにシェーグレン症候群を有する患者に前記抗CD40抗体を皮下投与するための手段であって、前記抗CD40抗体は、
a.第1の負荷投薬で、且つ
b.その後、第2の維持投薬で皮下投与され、ここで、前記抗CD40抗体は、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
ii.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
iii.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、
iv.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体、
v.サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体、及び
vi.配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される、使用及び手段。
[34]
シェーグレン症候群は、原発性シェーグレン症候群である、[33]に記載の使用。
前記負荷投薬は、少なくとも2回の皮下注射を含み、且つ前記維持投薬は、毎週(Q1W)、隔週(Q2W)又は毎月(Q4W)の皮下注射からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。