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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137253
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114102
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2018099044の分割
【原出願日】2018-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】518181888
【氏名又は名称】株式会社ケイ・メック
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國澤 秀徳
(57)【要約】
【課題】止水板を迅速且つ容易に設置できる止水装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本願発明の止水装置は、間隔を空けて設置された左右の支持体2L,2Rと、左右の支持体2L,2Rに着脱可能に取り付けられて立設される止水板3A,3Bとを備えたる。止水板は、支持体2L,2Rと当接する面より支持体2L,2Rに向けて突起させた係止突起部32を有している。止水板3A,3Bが支持体2L,2Rに対して前後方向に移動されるとともに、係止突起部32が支持体2L,2Rに設けた係止穴22に挿入されて係止されることで、止水板3A,3Bが支持体2L,2Rに接続されるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて設置された左右の支持体と、左右の前記支持体に着脱可能に取り付けられて立設される止水板とを備えた止水装置であって、
前記止水板は、前記支持体と当接する面より前記支持体に向けて突起させた係止突起部を有しており、前記止水板が前記支持体に対して前後方向に移動されるとともに、前記係止突起部が前記支持体に設けた係止穴に挿入されて係止されることで、前記止水板が前記支持体に接続される、止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集中豪雨や洪水などの自然災害の際に、地下鉄駅や地下駐車場、建物などの構造物にその出入口から水が侵入するのを防止するために、当該出入口に止水板を設置することが行われる。
【0003】
構造物の出入口に止水板を設置する技術として、間隔を空けて設置された左右の支持体に、止水板の左右端部位を着脱可能に設置して水を堰き止める止水装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1に開示された止水装置では、構造物の出入口の左右両側に支持体をそれぞれ設け、各支持体に設けられた対向溝に止水板を上方から落し込むことで、止水板が立設配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-169561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された止水装置では、止水板を設置する際には、左右の支持体の対向溝に止水板を落し込むために、止水板を支持体の対向溝よりも高い位置まで持ち上げる必要がある。止水板は、高い水圧に耐えられるように十分な強度が必要なので、重量が大きい。したがって、止水板を支持体の対向溝よりも高い位置(例えば1メートル以上)まで人力で持ち上げるのは困難を伴い、例えば年配者や女性などの非力な作業者が止水板を設置するのは困難であるという問題があった。
【0006】
本願発明は、このような現状を改善すべく、止水板を迅速且つ容易に設置できる止水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の止水装置は、間隔を空けて設置された左右の支持体と、左右の前記支持体に着脱可能に取り付けられて立設される止水板とを備えた止水装置であって、前記止水板は、前記支持体と当接する面より前記支持体に向けて突起させた係止突起部を有しており、前記止水板が前記支持体に対して前後方向に移動されるとともに、前記係止突起部が前記支持体に設けた係止穴に挿入されて係止されることで、前記止水板が前記支持体に接続されるものである。
【0008】
本願発明の止水装置によれば、止水板を前後へスライドさせることで、止水板を支持体の高さ以上に持ち上げなくても止水板を支持体に接続できるので、止水板を迅速且つ容易に設置できる。
【0009】
上記止水装置において、前記係止突起部が、前記止水板における前後の起立面部のうち少なくとも一方の起立面部に複数設けられており、同一の前記起立面部に設けられた前記係止突起部は、前記起立面部の中心に対して点対称となる位置に配置されるものとしてもよい。これにより、止水板を上下反転させたとしても、係止突起部を係止穴に係止できるため、緊急時において止水板の上下を確認せずとも容易に且つ迅速に支持体に接続できる。
【0010】
本願発明の止水装置は、間隔を空けて設置された左右の支持体と、左右の前記支持体に着脱可能に取り付けられて立設される止水板とを備えた止水装置であって、前記止水板は、前後の起立面部のうち少なくとも一方の起立面部における左右の幅方向端部位のそれぞれに、前後に延びる軸部の先端に幅広の頭部を有する係止突起部と、上下方向に延びる弾性体からなる起立面部パッキン部材とを備える一方、前記支持体は、前記起立面部の幅方向端部位が対向配置される止水板取付け面部に、前記頭部を挿通可能な頭部挿通穴から下方に向けて延びる軸部挿通溝を有する係止穴を備え、前記係止突起部の頭部を前記係止穴の頭部挿通穴に挿入した後、前記止水板を下方へスライドさせることで、前記止水板が前記支持体に接続されるものである。
【0011】
本願発明の止水装置によれば、止水板の係止突起部の頭部を支持体の係止穴の頭部挿通穴に挿入した後、止水板を下方へスライドさせることで、止水板を支持体の高さ以上に持ち上げなくても止水板を支持体に接続できるので、止水板を迅速且つ容易に設置できる。
【0012】
本願発明の止水装置において、前記支持体の内部に、前記頭部挿通穴の下方に配置されて前記係止突起部の頭部を保持する頭部保持部が設けられており、前記頭部保持部は、下方側ほど前記止水板取付け面部から離れるように傾斜する頭部スライド面と、前記頭部スライド面の下方に設けられて前記係止突起部の頭部が嵌り込む頭部保持凹部とを備えているようにしてもよい。
【0013】
この態様によれば、止水板の係止突起部の頭部を支持体の係止穴の頭部挿通穴に挿入した後、止水板を下方へスライドさせる際に、係止突起部の頭部は、頭部保持部の頭部スライド面に当接し、頭部スライド面に沿って、支持体の止水板取付け面部から離れるように斜め下向きに移動する。このとき、止水板の起立面部は、支持体の止水板取付け面部に近づくように変位し、起立面部パッキン部材が支持体の止水板取付け面部に密着当接するとともに押圧変形する。止水板がさらに下方へスライドして、係止突起部の頭部が頭部保持部の頭部保持凹部に到達すると、弾性体からなる起立面部パッキン部材の復元力によって係止突起部の頭部が頭部保持凹部に嵌り込む。このように、止水板の係止突起部の頭部を支持体の係止穴の頭部挿通穴に挿入した後に止水板を下方へスライドさせるという簡単な操作で、止水板を支持体に確実に接続できるとともに、止水板の上向き移動が規制されて、止水板の浮き上がりを防止できる。
【0014】
このような態様の止水装置において、さらに、前記支持体の内部に、操作ハンドルを回動させることで前記頭部保持凹部に保持された前記係止突起部の頭部を跳ね上げ可能な解除装置が設けられているようにしてもよい。
【0015】
この態様によれば、解除装置の操作ハンドルを回動させることで係止突起部の頭部を頭部保持凹部から上向きに容易に離脱させることができ、簡単な操作で、止水板を支持体から取り外し可能な状態にできる。
【0016】
ところで、従来の止水装置では、止水板は前後の向き及び上下の向きが決まっている。したがって、止水板を支持体に取り付ける際には、止水板の向きの確認作業が煩雑であるとともに、止水板の向きを間違えると止水板を支持体に取り付けられないという問題があった。また、止水板を保管場所から設置場所(建造物の出入口など)に移動させる際に、作業者が止水板を落下させたときや疲労したときなどには、作業者が止水板の向きを持ち替えることがある。したがって、止水板を設置場所へ移動させたときには、止水板の向きは一定ではないので、止水板を支持体に取り付ける前に止水板の向きの確認が必要であり、止水板を取り付けるのに時間を要するという問題もあった。このような問題は、止水板の取付けに緊急性を要するときに特に顕著になる。
【0017】
そこで、本願発明の止水装置において、前記止水板は、前記前後の起立面部のそれぞれに、前記係止突起部及び前記起立面部パッキン部材を備えるとともに、上下の水平面部のそれぞれに、左右方向に延びる弾性体からなる水平面部パッキン部材を備えており、前記係止突起部は、前記止水板における4つの前記幅方向端部位に、前記起立面部の左右方向中心線からの距離が同じで、且つ前記起立面部の上下方向中央位置に位置するように、それぞれ配置されているようにしてもよい。
【0018】
この態様によれば、止水板を上下反転させても、左右反転させても、所定の位置に係止突起部が位置する。したがって、止水板を支持体に取り付ける際に、止水板の向きを確認する作業が不要になるとともに、止水板の取付け向きの間違いが無くなり、止水板を支持体に迅速且つ正確に取り付けることができる。
【0019】
このような態様の止水装置において、さらに、複数の前記止水板が上下に並べられて前記支持体に取り付けられる構成であって、前記止水板は、前記上下の水平面部のそれぞれに、上下方向に向けて突出するストッパ突起部と、他の前記止水板の前記ストッパ突起部を収容可能なストッパ受け凹部とを備えており、それぞれの前記止水板で、前記ストッパ突起部の左右方向位置が異なっているとともに、前記ストッパ受け凹部が、他の前記止水板の前記ストッパ突起部の左右方向位置に対応して左右方向中央位置又は左右対称位置に設けられており、前記止水板が配置される床面に、複数の床面ストッパ受け凹部が、いずれの前記止水板が前記床面の上に配置されても前記ストッパ突起部を収容できる位置に設けられているようにしてもよい。
【0020】
この態様によれば、複数の止水板を上下に並べて配置することで、止水板の合計高さを高くできる構成でありながら、1枚あたりの止水板の重量を小さくでき、止水板の移動作業が容易になる。また、上下の止水板同士の間、及び止水板と床面との間を、ストッパ突起部及びストッパ受け凹部で連結するので、水圧に起因する止水板の湾曲を低減でき、止水板の湾曲に起因する水密性の低下や止水板の破損を防止できる。
【0021】
また、各止水板でストッパ突起部の左右方向位置が互いに異なっているとともに、各止水板は、他の止水板のストッパ突起部の左右方向位置に対応して左右方向中央位置又は左右対称位置にストッパ受け凹部を備えていることから、各止水板を上下反転させても、左右反転させても、止水板同士を上下に連結可能である。また、止水板が配置される床面には、いずれの止水板が床面の上に配置されてもストッパ突起部を収容できる位置に複数の床面ストッパ受け凹部が設けられているので、いずれの止水板を床面の上に配置しても、ストッパ突起部が床面ストッパ受け凹部に収容される。これにより、各止水板の向きや、止水板を上下に並べる順番を気にすることなく、複数の止水板を支持体に取り付けることができる。したがって、支持体に複数の止水板を取り付ける構成でありながら、複数の止水板を支持体に取り付ける際に、各止水板の向きを確認する作業が不要になるとともに、各止水板の取付け向きの間違いが無くなり、止水板を支持体に素早く且つ正確に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明は、止水板を迅速且つ容易に設置できる止水装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】止水装置の一実施形態の全体を示す概略正面図である。
図2】同止水装置を示す概略平面図である。
図3】同止水装置の一方の止水板3Aを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図4】同止水板3Aを示す図であり、(A)は側面図、(B)は図3(B)のX-X位置での縦断面図、(C)は(B)の上側のストッパ突起部周辺を示す拡大図である。
図5】同止水装置の他方の止水板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図6】止水板3A,3Bの配置状態の一例を示す正面図である。
図7】止水板3A,3Bの配置状態の他の例を示す正面図である。
図8】支持体を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(B)のU-U位置に沿った横断面図、(D)は(A)のY-Y位置に沿った縦断面図である。
図9】同支持体を示す図であり、(A)は背面図、(B)は図8(A)のZ-Z位置に沿った縦断面図、(C)は(B)の係止穴周辺を示す拡大図である。
図10】同支持体を示す図であり、(A)は図8(A)のP-P位置に沿った縦断面図、(B)は図8(C)のQ-Q位置に沿った縦断面図、(C)は(B)の係止穴周辺を示す拡大図である。
図11】係止突起部と係止穴との係合操作を説明するための概略斜視図であり、(A)は係合前の状態、(B)は係止突起部が係止穴に挿入された状態、(C)は係止突起部が係止穴に係合された状態を示す。
図12】支持体への止水板3Aの取付け動作を説明するための断面図である。
図13】支持体に止水板3Aが取り付けられた状態を示す断面図であり、(A)は支持体及び止水板の全体図、(B)は係止突起部周辺を示す拡大図、(C)は下側のストッパ突起部周辺を示す拡大図である。
図14】支持体への止水板3Bの取付け動作を説明するための断面図である。
図15】支持体に止水板3A,3Bが取り付けられた状態を示す断面図であり、(A)は支持体及び止水板の全体図、(B)は止水板3A,3Bの連結部周辺を示す拡大図である。
図16】支持体からの止水板3A,3Bの取外し操作を説明するための断面図であり、(A)は止水板3Bを取り外すときの操作を、(B)は止水板3Aを取り外すときの操作を示す。
図17】止水装置の他の実施形態における止水板3Aを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図18】同止水装置の支持体を背面側から見た左右方向の縦断面図である。
図19】同支持体からの止水板3A,3Bの取外し操作を説明するための断面図であり、(A)は止水板3Bを取り外すときの操作を示し、(B)は止水板3Aを取り外すときの操作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。また、各方向を特定するため、前後・左右の文言を使用するが、図1及び図2に示すように、一対の支持体が間隔を空けて配置される方向を左右方向とし、これと直交した方向を前後方向と定義している。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態の止水装置1は、例えば地下鉄駅や地下駐車場、建物などの構造物への水の侵入を防止するために、構造物の出入口Eに設置される。止水装置1は、間隔を空けて設置された左右の支持体2L,2Rと、左右の支持体2L,2Rに着脱可能に取り付けられて立設される止水板3A,3Bとを備えている。
【0026】
止水板3A,3Bは、支持体2L,2Rと当接する面31より支持体2L,2Rに向けて突起させた係止突起部32を有しており、止水板3A,3Bが支持体2L,2Rに対して前後方向に移動されるとともに、係止突起部32が支持体2L,2Rに設けた係止穴22に挿入されて係止されることで、止水板3A,3Bが支持体2L,2Rに接続される。これにより、止水板3A,3Bを前後へスライドさせることで、止水板3A,3Bを支持体の高さ以上に持ち上げなくても止水板を支持体2L,2Rに接続できるので、止水板3A,3Bを迅速且つ容易に設置できる。
【0027】
本実施形態では、左右の支持体2L,2Rは、出入口Eの左右端位置で床面Fに立設されるとともに、出入口Eの左右の側壁W及び床面Fとの間の水密性を接着剤又は弾性体などで確保しながら、床面F及び側壁Wに固着されている。また、止水板は、上下に分割された上下2枚の止水板3A,3Bで構成されている。
【0028】
図1図10を参照しながら、止水装置1の概略構成について説明する。図3及び図4に示された止水板3Aに関し、底面図は平面図と同一であり、背面図は正面図と同一であり、左側面図は右側面図と同一である。また、図5に示された止水板3Bに関し、底面図は平面図と同一であり、背面図は正面図と同一であり、左側面図は右側面図と同一である。
【0029】
図3図5に示すように、止水板3A,3Bは、矩形板状の形態を有し、前後の起立面部31,31における左右の幅方向端部位31a,31aのそれぞれに、係止突起部32と起立面部パッキン部材33とを備えている。係止突起部32は、前後に延びる軸部32bの先端に幅広の頭部32aを有している。起立面部パッキン部材33は、上下方向に延びる弾性体で形成されている。なお、止水板3A,3Bの内部は、中空部分を有する構造であってもよい。
【0030】
図1図2及び図8図10に示すように、左右の支持体2L,2Rは、止水板3A,3Bの起立面部31の幅方向端部位31aが対向配置される止水板取付け面部21の上下2箇所に、係止突起部32を係止するための係止穴22を備えている。係止穴22は、上下縦長で下方側が幅狭の鍵穴状であり、係止突起部32の頭部32aを挿通可能な頭部挿通穴22aと、頭部挿通穴22aから下方に向けて延びる軸部挿通溝22bを有している。
【0031】
止水板3A,3Bが支持体2L,2Rに取り付けられる際には、係止突起部32の頭部32aを係止穴22の頭部挿通穴22aに挿入した後、止水板3A,3Bを下方へスライドさせて、係止突起部32の軸部32bを係止穴22の軸部挿通溝22bに位置させる。これにより、止水板3A,3Bは、支持体2L,2Rに、前後に引き抜き不能に接続される。また、起立面部31の幅方向端部位31aに設けられた起立面部パッキン部材33が止水板取付け面部21に密接することで、止水板3A,3Bと支持体2L,2Rとの間の水密性が確保される。
【0032】
このように、止水装置1によれば、止水板3A,3Bを支持体2R,2Lの高さ以上に持ち上げなくても支持体2R,2Lに接続できるので、止水板3A,3Bを迅速且つ容易に設置できる。また、止水板3A,3Bを支持体2R,2Lの高さ以上に持ち上る必要がないので、年配者や女性などの非力な作業者であっても、止水板3A,3Bを支持体2R,2Lに迅速且つ容易に設置できる。
【0033】
図3図7を参照しながら、止水板3A,3Bの詳細な構成について説明する。止水板3A,3Bは、例えば炭素繊維強化プラスチック製又は金属製であり、矩形板状の形態を有する。止水板3Aと止水板3Bは、後述するストッパ突起部37及びストッパ受け凹部38の位置及び個数が互いに異なることを除いて、同じ形態を有している。そこで、止水板3Aの構成について説明した後、止水板3Bについて止水板3Aとは異なる構成部分を説明する。
【0034】
図3及び図4に示すように、止水板3Aの前後の起立面部31,31のそれぞれに、左右一対の係止突起部32と、左右一対の起立面部パッキン部材33とが設けられている。上述のように、係止突起部32及び起立面部パッキン部材33は、起立面部31の左右の幅方向端部位31a,31aのそれぞれに設けられている。すなわち、止水板3Aには、4つの係止突起部32と、4本の起立面部パッキン部材33が設けられている。
【0035】
係止突起部32が、止水板3Aにおける前後の起立面部31のうち少なくとも一方の起立面部31に複数設けられており、同一の起立面部31に設けられた係止突起部32は、起立面部31の中心に対して点対称となる位置に配置される。これにより、止水板3Aを上下反転させたとしても、係止突起部32を係止穴22に係止できるため、緊急時において止水板3Aの上下を確認せずとも容易に且つ迅速に支持体に接続できる。
【0036】
すなわち、同一高さ位置に配置された係止突起部32は、同一の起立面部31上において左右対称となる位置に配置されている。また、本実施形態においては、左右の幅方向端部位31a,31aのそれぞれにおいて、高さ方向で中心となる位置に一つの係止突起部32が突設されるものとしているが、複数の係止突起部32が上下対称となる位置に突設しても構わない。
【0037】
係止突起部32は、起立面部31に取り付けられる取付板部32cと、取付板部32cに突設された軸部32bと、軸部32bの先端に設けられた頭部32aと、軸部32bに沿って設けられた上下一対の補強リブ32d,32dを備えている。取付板部32cは略矩形板状である。軸部32bは、取付板部32cの中央部から前後一方向に向けて突設されている。
【0038】
頭部32aは、左右端面が略楕円形の略楕円柱形状を有し、頭部32aの左右方向幅は、軸部32bの左右方向幅よりも大きい。すなわち、頭部32aは、軸部32bよりも左右方向に幅広に形成されている。補強リブ32dは、側面視で取付板部32c側が広い略直角三角形板状の形態を有し、取付板部32cから軸部32bに沿って延びて、補強リブ32dの先端部は頭部32aに到達している。
【0039】
4つの係止突起部32は、止水板3Aにおける4つの幅方向端部位31aに、起立面部31の左右方向中心線Cからの距離Lが同じで、且つ起立面部31の上下方向中央位置に位置するように、それぞれ配置されている。これにより、止水板3Aを左右反転しても又は上下反転しても、4つの係止突起部32の頭部32aが止水板3Aにおいて同一位置に位置するように構成されている。
【0040】
なお、前後の起立面部31,31のそれぞれには、幅方向中央部に、4つの左右横長の取っ手凹部31bが設けられている。これらの取っ手凹部31bは、中心位置が起立面部31と同一位置の仮想長方形の4つの角部に配置されている。すなわち、止水板3Aを左右反転しても又は上下反転しても、4つの取っ手凹部31bが止水板3Aにおいて同一位置に位置するように構成されている。これにより、作業者が止水板3Aを持ち運ぶ際に、止水板3Aの向きにかかわらず、持ち上げたときの感覚を同じにできる。
【0041】
図3及び図4に示すように、幅方向端部位31aにおいて、起立面部パッキン部材33は、起立面部31の上下方向の一端から他端にわたって連続して、係止突起部32よりも左右外側位置に配置されている。これにより、止水板3Aが支持体2R,2Lに取り付けられたときに、起立面部パッキン部材33は、支持体2R,2Lの係止穴22よりも左右外側位置で止水板取付け面部21に密接するので、係止穴22を介して支持体2R,2L内部に水が侵入するのを防止できる。
【0042】
また、起立面部パッキン部材33は、上下に延びる水膨張性止水材33aと、水膨張性止水材33aを左右で挟んで上下に延びる左右の耐水性止水材33b,33bとで構成されている。水膨張性止水材33aは、例えば水膨張ゴム製である。耐水性止水材33bは、例えば断面D字形の中空のゴム製である。起立面部パッキン部材33が水膨張性止水材33aを含む左右3重構造に形成されているので、起立面部31と止水板取付け面部21との間の水密性を高めることができる。
【0043】
なお、平面視で前後に並ぶ2本の起立面部パッキン部材33,33の端部は、止水板3Aの上下の水平面部34,34のそれぞれに設けられる前後方向パッキン部材35に連続している。すなわち、前後2本の起立面部パッキン部材33と上下2本の前後方向パッキン部材35は、連続して環状に設けられている。なお、前後方向パッキン部材35は、水膨張性止水材35aと左右の耐水性止水材35b,35bとで構成されており、起立面部パッキン部材33と同様に、左右3重構造に形成されている。
【0044】
図3及び図4に示すように、上下の水平面部34,34のそれぞれに、ストッパ突起部37とストッパ受け凹部38とが配置されるストッパ配置領域39が設けられている。本実施形態では、ストッパ配置領域39は、水平面部34の左右方向中央部に設けられている。
【0045】
上下2つのストッパ配置領域39のそれぞれに、水平面部34から上下方向に向けて突出するストッパ突起部37が設けられている。すなわち、止水板3Aには、2つのストッパ突起部37が設けられている。各ストッパ突起部37は、水平面部34の中央位置(左右方向中央位置かつ前後方向中央位置)に配置されている。これにより、止水板3Aを左右反転しても又は上下反転しても、上下2つのストッパ突起部37が止水板3Aにおいて同一位置に位置するように構成されている。
【0046】
また、各ストッパ配置領域39には、ストッパ突起部37を左右で挟んで、左右のストッパ受け凹部38,38が形成されている。すなわち、止水板3Aには、4つのストッパ受け凹部38が設けられている。ストッパ受け凹部38は、後述する止水板3Bのストッパ突起部37を収容可能なものであり、ストッパ受け凹部38の内径は、ストッパ突起部37の外径よりも少し大きく形成されている。
【0047】
各ストッパ配置領域39において、左右のストッパ受け凹部38,38は、水平面部34の中央位置に対して左右対称位置に配置されている。また、止水板3Aにおいて、4つのストッパ受け凹部38は、水平面部34の中央位置から同一距離だけ離れた位置に設けられている。これにより、止水板3Aを左右反転しても又は上下反転しても、4つのストッパ受け凹部38が止水板3Aにおいて同一位置に位置するように構成されている。
【0048】
図3及び図4に示すように、止水板3Aの上下の水平面部34,34のそれぞれに、左右方向に延びる弾性体からなる水平面部パッキン部材36と、上述の前後方向パッキン部材35が設けられている。前後方向パッキン部材35は、水平面部34の左右の幅方向端部位にそれぞれ設けられている。水平面部パッキン部材36の左右両端部は、左右の前後方向パッキン部材35に隙間なく接続されている。
【0049】
水平面部パッキン部材36は、左右に延びる水膨張性止水材36aと、水膨張性止水材36aを前後で挟んで左右に延びる前後の耐水性止水材36b,36bとで構成されている。水膨張性止水材36aは、例えば水膨張ゴム製である。耐水性止水材36bは、例えば断面D字形の中空のゴム製である。水平面部パッキン部材36が水膨張性止水材36aを含む前後3重構造に形成されているので、床面Fと止水板3A又は3Bとの間の水密性、及び止水板3Aと止水板3Bとの間の水密性を高めることができる。
【0050】
図3及び図4に示すように、水平面部パッキン部材36の水膨張性止水材36aの左右方向中央部分は、ストッパ配置領域39を囲むようにして、前後に分岐して設けられている。また、前後の耐水性止水材36b,36bの左右方向中央部分は、ストッパ配置領域39を囲む水膨張性止水材36aの分岐形状に沿って、ストッパ配置領域39を迂回するように湾曲している。すなわち、ストッパ配置領域39は、水膨張性止水材36aの前後分岐部分と、前後の耐水性止水材36b,36bとで囲まれている。
【0051】
次に、図5を参照しながら止水板3Bについて説明する。上述のように、止水板3Aと止水板3Bは、ストッパ突起部37及びストッパ受け凹部38の位置及び個数が互いに異なることを除いて、同じ形態を有している。すなわち、止水板3Bは、前後の起立面部31,31のそれぞれに、4つの係止突起部32と、左右2本の起立面部パッキン部材33とを備えている。また、止水板3Bは、上下の水平面部34,34のそれぞれに、左右2本の前後方向パッキン部材35と、左右方向に延びる水平面部パッキン部材36と、水平面部34の左右方向中央部に設けられたストッパ配置領域39とを備えている。
【0052】
止水板3Bにおいて、上下のストッパ配置領域39のそれぞれに、ストッパ受け凹部38が形成されている。すなわち、止水板3Bには、上下2つのストッパ受け凹部38が設けられている。ストッパ受け凹部38は、止水板3Aのストッパ突起部37を収容可能なものである。各ストッパ受け凹部38は、水平面部34の中央位置に配置されている。これにより、止水板3Bを左右反転しても又は上下反転しても、2つのストッパ受け凹部38が止水板3Aにおいて同一位置に位置するように構成されている。
【0053】
また、止水板3Bの上下のストッパ配置領域39のそれぞれに、ストッパ受け凹部38を左右で挟んで、水平面部34から上下方向に向けて突出する左右のストッパ突起部37,37が設けられている。すなわち、止水板3Bには、4つのストッパ突起部37が設けられている。
【0054】
各ストッパ配置領域39において、左右のストッパ突起部37,37は、水平面部34の中央位置に対して左右対称位置に配置されている。また、止水板3Bにおいて、4つのストッパ突起部37は、水平面部34の中央位置から同一距離だけ離れた位置に設けられている。これにより、止水板3Bを左右反転しても又は上下反転しても、4つのストッパ突起部37が止水板3Bにおいて同一位置に位置するように構成されている。
【0055】
図1に示すように、止水板3A又は3Bが配置される床面Fに、複数の床面ストッパ受け凹部40が設けられている。本実施形態では、3つの床面ストッパ受け凹部40が床面Fに設けられている。床面ストッパ受け凹部40は、止水板3Aのストッパ突起部37に対応する位置と、止水板3Bのストッパ突起部37に対応する位置とに設けられている。すなわち、床面ストッパ受け凹部40は、いずれの止水板3A又は3Bが床面Fの上に配置されてもストッパ突起部37を収容できる位置に設けられている。
【0056】
本実施形態の止水装置1では、止水板3A,3Bは、前後の起立面部31,31のそれぞれに、4つの係止突起部32及び起立面部パッキン部材33を備えるとともに、上下の水平面部34,34のそれぞれに、左右方向に延びる弾性体からなる水平面部パッキン部材36を備えている。4つの係止突起部32は、止水板3A,3Bにおける4つの幅方向端部位31aに、起立面部31の左右方向中心線Cからの距離Lが同じで、且つ起立面部31の上下方向中央位置に位置するように、それぞれ配置されている。
【0057】
本実施形態の止水装置1によれば、止水板3A,3Bを上下反転させても、左右反転させても、所定の位置に4つの係止突起部32が位置する。したがって、止水板3A,3Bを支持体2L,2Rに取り付ける際に、止水板3A,3Bの向きを確認する作業が不要になるとともに、止水板3A,3Bの取付け向きの間違いが無くなり、止水板3A,3Bを支持体2L,2Rに迅速且つ正確に取り付けることができる。
【0058】
また、本実施形態の止水装置1は、複数の止水板3A,3Bが上下に並べられて支持体2L,2Rに取り付けられる構成である。そして、止水板3A又は3Bは、上下の水平面部34,34のそれぞれに、上下方向に向けて突出するストッパ突起部37と、他の止水板3B又は3Aのストッパ突起部37を収容可能なストッパ受け凹部38とを備えている。それぞれの止水板3A,3Bで、ストッパ突起部37の左右方向位置が異なっているとともに、ストッパ受け凹部38が、他の止水板3B又は3Aのストッパ突起部37の左右方向位置に対応して左右方向中央位置又は左右対称位置に設けられている。さらに、止水板3A又は3Bが配置される床面Fに、複数の床面ストッパ受け凹部40が、いずれの止水板3A又は3Bが床面Fの上に配置されてもストッパ突起部37を収容できる位置に設けられている。
【0059】
したがって、本実施形態の止水装置1によれば、複数の止水板3A,3Bを上下に並べて配置することで、止水板3A,3Bの合計高さを高くできる構成でありながら、1枚あたりの止水板3A,3Bの重量を小さくでき、止水板3A,3Bの移動作業が容易になる。
【0060】
また、上下の止水板3A,3B同士の間、及び止水板3A又は3Bと床面Fとの間を、ストッパ突起部37及びストッパ受け凹部38で連結するので、水圧に起因する止水板3A,3Bの湾曲を低減でき、止水板3A,3Bの湾曲に起因する水密性の低下や止水板3A,3Bの破損を防止できる。
【0061】
また、本実施形態の止水装置1では、各止水板3A,3Bでストッパ突起部37の左右方向位置が互いに異なっているとともに、各止水板3A,3Bは、他の止水板3B又は3Aのストッパ突起部37の左右方向位置に対応して左右方向中央位置又は左右対称位置にストッパ受け凹部38を備えていることから、各止水板3A,3Bを上下反転させても、左右反転させても、止水板3A,3B同士を上下に連結可能である。
【0062】
また、止水板3A又は3Bが配置される床面Fには、いずれの止水板3A又は3Bが床面Fの上に配置されてもストッパ突起部37を収容できる位置に複数の床面ストッパ受け凹部40が設けられているので、いずれの止水板3A又は3Bを床面Fの上に配置しても、ストッパ突起部37が床面ストッパ受け凹部40に収容される。これにより、各止水板3A,3Bの向きや、止水板3A,3Bを上下に並べる順番を気にすることなく、複数の止水板3A,3Bを支持体2L,2Rに取り付けることができる。
【0063】
すなわち、図1及び図6に示すように、止水板3Aを床面Fの上に配置し、止水板3Bを止水板3Aの上に配置することもできるし、図7に示すように、止水板3Bを床面Fの上に配置し、止水板3Aを止水板3Bの上に配置することもできる。
【0064】
したがって、本実施形態の止水装置1は、支持体2L,2Rに複数の止水板3A,3Bを取り付ける構成でありながら、複数の止水板3A,3Bを支持体2L,2Rに取り付ける際に、各止水板3A,3Bの向きを確認する作業が不要になるとともに、各止水板3A,3Bの取付け向きの間違いが無くなり、止水板3A,3Bを支持体2L,2Rに素早く且つ正確に取り付けることができる。
【0065】
次に、支持体2L,2Rの構成について説明する。図1及び図2に示すように、支持体2L,2Rは、中空構造の四角柱状の形態を有し、左右対称の構成を有する。そこで、出入口Eの手前側(前側)から見て左側の支持体2Lについて説明し、右側の支持体2Rの詳細な説明は省略する。
【0066】
図8図10に示すように、支持体2Lは、平面視略長方形であり、出入口Eの手前側から見て正面に位置する止水板取付け面部21と、止水板取付け面部21の左右端部に連結された左右外側面部23及び左右内側面部24と、止水板取付け面部21に対向配置されるカバー部25とを備えている。支持体2Lの下端側は板状の底面部26により塞がれている。支持体2Lの上端側は板状の天面部27により塞がれている。
【0067】
支持体2Lの左右外側面部23は、複数の側面固定ネジ28にて、出入口Eの左側の側壁Wに固定される。また、底面部26は、複数の底面固定ネジ29にて、出入口Eの左端部に位置する床面Fに固定される。左右外側面部23と側壁Wの間、及び底面部26の間は、接着剤又は弾性体などの止水材によって、水密性が確保されている。
【0068】
止水板取付け面部21の上下2箇所に、止水板3A,3Bの係止突起部32が嵌め込まれる係止穴22が設けられている。一方の係止穴22には止水板3A又は3Bの係止突起部32が嵌め込まれ、他方の係止穴22には止水板3B又は3Aの係止突起部32が嵌め込まれる。
【0069】
係止穴22は、止水板3A,3Bの係止突起部32の頭部32aを挿通可能な頭部挿通穴22aと、頭部挿通穴22aから下方に向けて延びる軸部挿通溝22bとを有し、上下縦長の略鍵穴状の形状を有している。上下に延びる軸部挿通溝22bの幅寸法は、係止突起部32の頭部32aの左右幅寸法よりも小さく、かつ、係止突起部32の軸部32b及び補強リブ32dの幅寸法よりも大きい。頭部挿通穴22aの下辺22cは、軸部挿通溝22bを挟んで左右に分割されており、各下辺22cは、軸部挿通溝22b側ほど下方に位置するように傾斜している。
【0070】
支持体2Lの内部に、係止穴22の頭部挿通穴22aの下方に配置されて係止突起部32の頭部32aを保持する頭部保持部30が設けられている。本実施形態では、1つの係止穴22に対して左右一対の頭部保持部30が設けられている。頭部保持部30は、止水板取付け面部21の内部側面に、係止穴22の軸部挿通溝22bを挟んで取り付けられている。
【0071】
頭部保持部30は、略楔形の形態を有し、下方側ほど止水板取付け面部21から離れるように傾斜する頭部スライド面30aと、頭部スライド面の下方に設けられて係止突起部32の頭部32aが嵌り込む左右横長溝状の頭部保持凹部30bとを備えている。
【0072】
また、支持体2Lの内部に、頭部保持凹部30bに保持された係止突起部32の頭部32aを、操作ハンドル42を回動させることで跳ね上げ可能な解除装置41が設けられている。本実施形態では、左右内側面部24の内部壁面に、上下2つの解除装置41が上下に並んで取り付けられている。
【0073】
解除装置41は、作業者が把持する把持部42aを一端に有し、他端に作用部42bを有する操作ハンドル42を備える。操作ハンドル42の中途部は、左右内側面部24に取り付けられるベース部材43に、回動自在に軸支される。すなわち、作業者が把持部42aを手前側に引いて下向き回動させると、作用部42bが上向き回動するように構成されている。また、ベース部材43の下方に、操作ハンドル42の作用部42bと係合して操作ハンドル42を位置固定可能なハンドル固定部材44が設けられている。
【0074】
支持体2Lにおいて、カバー部25は、ヒンジ部材45によって開閉可能に設けられている。カバー部25は、閉じた状態で、図示しないシリンダー錠又はマグネット等の固定具によって回動不能に固定されている。
【0075】
次に、図11図15を参照しながら、支持体2L,2Rへの止水板3A,3Bの取付け操作について説明する。なお、図11図15では、支持体2L,2Rのうち支持体2Lのみを図示しているが、上述のように支持体2L,2Rは左右対称に設けられるので、支持体2Rについても同様の取付け操作が行われる。
【0076】
図12に示すように、支持体2L,2Rに対峙するように止水板3Aを配置し、止水板3Aを少し持ち上げて、支持体2L,2Rの下側の係止穴22の頭部挿通穴22aに、止水板3Aの係止突起部32の頭部32aを挿入する(図11(A),(B)も参照)。
【0077】
上述のように、止水板3Aの係止突起部32は、止水板3Aの上下向き、左右向き、前後向きに関わらず、起立面部31における同一位置に配置される。したがって、止水板3Aを取り付ける作業者は、止水板3Aの向きを確認することなく、迅速に係止突起部32の頭部32aを係止穴22の頭部挿通穴22aに挿入できる。
【0078】
作業者が止水板3Aを持ち上げる力を抜くと、止水板3Aの重さで、止水板3Aが下方へ変位し、係止突起部32の軸部32b及び補強リブ32dが係止穴22の軸部挿通溝22bに嵌り込むとともに、頭部32aが頭部保持部30の頭部スライド面30aに当接する。ここで、頭部32aを頭部挿通穴22aに挿通したときに軸部32b及び補強リブ32dが軸部挿通溝22bに対して左右方向に位置ズレしていても、軸部32b及び補強リブ32dは、軸部挿通溝22b側へ下向きに傾斜する下辺22cに沿って軸部挿通溝22bに案内される。これにより、軸部32b及び補強リブ32dを軸部挿通溝22bに容易かつ確実に嵌め込むことができる。また、止水板3Aの下側のストッパ突起部37の先端部が床面Fのストッパ受け凹部40に挿入される。
【0079】
止水板3Aを下方へスライドさせるように押し込むと、係止突起部32の頭部32aは、頭部保持部30の頭部スライド面30aに沿って、支持体2L,2Rの止水板取付け面部21から離れるように斜め下向きに移動する。このとき、止水板3Aの起立面部31は、止水板取付け面部21に近づくように変位し、起立面部パッキン部材33が止水板取付け面部21に密着当接するとともに押圧変形する。
【0080】
図13に示すように、止水板3Aをさらに下方へスライドさせると、係止突起部32の頭部32aが頭部保持部30の頭部保持凹部30bに到達して、頭部32aの軸部32b寄り部位が頭部保持凹部30bに嵌り込む(図11(C)も参照)。頭部32aは、弾性体からなる起立面部パッキン部材33の復元力によって頭部保持凹部30bに付勢されて、頭部保持凹部30b内に保持される。
【0081】
このように、止水板3Aの係止突起部32の頭部32aを支持体2L,2Rの係止穴22の頭部挿通穴22aに挿入した後に止水板3Aを下方へスライドさせるという簡単な操作で、止水板3Aを支持体2L,2Rに確実に接続できるとともに、止水板3Aの上向き移動が規制されて、止水板3Aの浮き上がりを防止できる。
【0082】
また、係止突起部32の頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、止水板3Aの下側の前後方向パッキン部材35(図3等参照)及び水平面部パッキン部材36が床面Fに密着当接するとともに押圧変形する。これにより、止水板3Aと床面Fとの間に高い水密性を確保できる。また、止水板3Aの下側のストッパ突起部37の先端側が床面Fのストッパ受け凹部40に挿入されるので、水圧に起因する止水板3Aの湾曲を低減でき、止水板3Aの湾曲に起因する水密性の低下や止水板3Aの破損を防止できる。
【0083】
続いて、図14に示すように、止水板3Bを、止水板3Aが取り付けられた支持体2L,2Rに対峙するように配置し、止水板3Bを止水板3Aの上方まで持ち上げて、支持体2L,2Rの上側の係止穴22の頭部挿通穴22aに、止水板3Bの係止突起部32の頭部32aを挿入する。
【0084】
止水板3Bは、止水板3Aと同様に、止水板3Bの向きに関わらず、起立面部31における同一位置に係止突起部32が配置される。したがって、止水板3Bを取り付ける作業者は、止水板3Bの向きを確認することなく、係止突起部32の頭部32aを係止穴22の頭部挿通穴22aに迅速に挿入できる。
【0085】
作業者が止水板3Bを持ち上げる力を抜くと、止水板3Aの取付け時と同様に、止水板3Bが下方へ変位して、係止突起部32の頭部32aが頭部保持部30の頭部スライド面30aに当接する。また、止水板3Bの下側のストッパ突起部37の先端部が止水板3Aの上側のストッパ受け凹部38に挿入される一方、止水板3Aの上側のストッパ突起部37の先端部が止水板3Bの下側のストッパ受け凹部38に挿入される。
【0086】
そして、止水板3Bを下方へスライドさせるように押し込むと、止水板3Aの取付け時と同様に、係止突起部32の頭部32aが頭部保持部30の頭部スライド面30aに沿って斜め下向きに移動とともに、止水板3Bの起立面部31が止水板取付け面部21に近づくように変位し、止水板3Bの起立面部パッキン部材33が止水板取付け面部21に密着当接するとともに押圧変形する。
【0087】
図15に示すように、止水板3Bをさらに下方へスライドさせると、止水板3Aの取付け時と同様に、係止突起部32の頭部32aが頭部保持凹部30bに到達し、起立面部パッキン部材33の復元力によって頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込む。このように、止水板3Bの係止突起部32の頭部32aを支持体2L,2Rの上側の係止穴22の頭部挿通穴22aに挿入した後に止水板3Bを下方へスライドさせるという簡単な操作で、止水板3Bを支持体2L,2Rに確実に接続できるとともに、止水板3Bの上向き移動が規制されて、止水板3Bの浮き上がりを防止できる。
【0088】
また、止水板3Bの係止突起部32の頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、止水板3Bの下側の前後方向パッキン部材35及び水平面部パッキン部材36と、止水板3Aの上側の前後方向パッキン部材35及び水平面部パッキン部材36とが、互いに着当接するとともに押圧変形する。これにより、止水板3Aと止水板3Bとの間に高い水密性を確保できる。
【0089】
また、止水板3Bの下側のストッパ突起部37の先端側が止水板3Aの上側のストッパ受け凹部38に挿入されるとともに、止水板3Aの上側のストッパ突起部37の先端側が止水板3Bの下側のストッパ受け凹部38に挿入される。これにより、水圧に起因する止水板3A、3Bの湾曲を低減でき、止水板3A,3Bの湾曲に起因する水密性の低下や止水板3Aの破損を防止できる。
【0090】
次に、図16を参照しながら、支持体2L,2Rに取り付けられた止水板3A,3Bの取外し操作について説明する。なお、図16では支持体2L,2Rのうち支持体2Lを図示しているが、上述のように支持体2L,2Rは左右対称に設けられるので、支持体2Rについても同様の取り外し操作が行われる。
【0091】
まず、支持体2Lのカバー部25を開いて、解除装置41を操作可能な状態にする。上下2つの解除装置41のうち上側の解除装置41の操作ハンドル42の把持部42aを握り、把持部42aを手前側(止水板取付け面部21とは反対側)に引いて下向き回動させる。把持部42aの下向き回動にともなって、操作ハンドル42の作用部42bが上向き回動してハンドル固定部材44から外れる。
【0092】
把持部42aをさらに下向き回動させると、作用部42bは、さらに上向き回動して、止水板3Bの係止突起部32の頭部32aに下方から当接し、頭部32aを押し上げる。頭部32aは頭部保持部30の頭部保持凹部30bから外れて、頭部スライド面30aの下端部位へ移動し、係止突起部32の頭部32aと頭部保持部30の頭部保持凹部30bとの係合が解除される(図16(A)参照)。
【0093】
頭部32aと頭部保持凹部30bとの係合が解除された状態で、係止突起部32の頭部32aは、起立面部31と止水板取付け面部21との間の起立面部パッキン部材33の復元力によって、頭部スライド面30aに押し付けられる。これにより、操作ハンドル42の作用部42bが係止突起部32の頭部32aから離れても、頭部32aが頭部保持部30の頭部保持凹部30bに再び嵌り込まないように構成されている。
【0094】
また、頭部32aと頭部保持凹部30bとの係合が解除されたときに、係止突起部32の頭部32aが頭部保持部30の頭部スライド面30aに接触するようにされていることで、頭部32aが係止穴22から抜けないように構成されている。これにより、作業者が操作ハンドル42を操作したときに、止水板3Bが支持体2L,2Rから不意に外れるのを防止でき、止水板3Bの落下や転倒に起因する事故を防止して止水板取外し作業の安全性を向上できるとともに、止水板3Bの損傷を防止できる。
【0095】
作業者は、左右の支持体2L,2Rについて、上側の解除装置41の操作ハンドル42を操作して、止水板3Bの係止突起部32頭部32aと頭部保持部30の頭部保持凹部30bとの係合を解除する。この状態で、作業者が係止突起部32を係止穴22から引き抜くように止水板3Bを斜め上方へ向けて持ち上げることで、止水板3Bが支持体2L,2Rから取り外される。
【0096】
止水板3Bを取り外した後、左右の支持体2L,2Rについて、下側の解除装置41の操作ハンドル42を上側の解除装置41の解除操作と同様に操作して、止水板3Aの係止突起部32頭部32aと頭部保持部30の頭部保持凹部30bとの係合を解除する(図16(B)参照)。そして、作業者が係止突起部32を係止穴22から引き抜くように止水板3Bを斜め上方へ向けて持ち上げることで、止水板3Bが支持体2L,2Rから取り外される。
【0097】
このときも、止水板3Bの係合解除操作時と同様に、止水板3Aの係止突起部32の頭部32aが頭部スライド面30aに接触するように構成されているので、頭部32aが頭部保持凹部30bに再び嵌り込むのを防止できるとともに、止水板3Aの不意な転倒に起因する事故等を防止できる。
【0098】
このように、作業者は、一人で止水板3A,3Bを支持体2L,2Rから安全かつ容易に取り外すことができる。なお、係止突起部32の頭部32aと頭部保持部30の頭部保持凹部30bとの係合が解除された後、解除装置41の操作ハンドル42が垂直位置に戻されて、作用部42bがハンドル固定部材44に係止される。そして、上下の解除装置41の操作ハンドル42が垂直位置に戻された後、カバー部25が閉じられる。
【0099】
次に、図17図19を参照しながら、止水装置1の他の実施形態について説明する。この実施形態では、止水板3A,3Bの係止突起部32の頭部32aの形状と、支持体2L,2Rの頭部保持部30の頭部保持凹部30bの形状とが、図1図16を参照して説明した上記実施形態とは異なっている。この実施形態のその他の構成は、上記実施形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0100】
図17に示すように、止水板3Aにおいて、各係止突起部32の頭部32aは球状の形態を有する。球状の頭部32aの直径は、軸部32bの左右幅寸法よりも大きい。なお、図17は、止水板3A,3Bのうち止水板3Aのみを図示しているが、止水板3Bにおいても、各係止突起部32の頭部32aは球状の形態を有する。
【0101】
図18は、支持体2Lを背面側(カバー部25側)から見た左右方向の縦断面図を示している。上下2つの係止穴22ごとに設けられる、左右一対の頭部保持部30は、それぞれ頭部スライド面30a及び頭部保持凹部30bを備えている。左右一対の頭部保持部30において、各頭部保持凹部30bは、頭部保持部30のうち頭部スライド面30aの下方で互いに対向する角部に設けられている。頭部保持凹部30bは、当該角部を切り欠いて形成されており、凹球面を略半割した形状を有する。左右の頭部保持凹部30bは左右対称に形成されている。
【0102】
図19に示すように、この実施形態の止水板3A,3Bは、上記実施形態と同様にして、支持体2L,2Rに着脱される。止水板3A,3Bが支持体2L,2Rに取り付けられた状態では、係止突起部32の球状の頭部32aの軸部32b寄り部位が、左右の頭部保持部30の頭部保持凹部30bに嵌り込んで固定される。
【0103】
また、支持体2L,2Rから止水板3A,3Bを取り外す際には、図19に示すように、解除装置41の操作ハンドル42を上記実施形態と同様にして操作して、球状の頭部32aと略凹球面状の頭部保持凹部30bとの係合を解除する。
【0104】
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、止水板3Bにおける左右一対のストッパ突起部37は、一方のストッパ突起部37のみが設けられている構成であってもよい。
【0105】
また、本願発明において、左右の支持体に取り付けられる止水板は、2枚に限定されず、1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 止水装置
2 左右
2 前後
2 上下
2L 支持体
2R 支持体
3 左右
3 前後
3A 止水板
3B 止水板
21 止水板取付け面部
22 係止穴
22a 頭部挿通穴
22b 軸部挿通溝
22c 下辺
23 左右外側面部
24 左右内側面部
25 カバー部
26 底面部
27 天面部
28 側面固定ネジ
29 底面固定ネジ
30 頭部保持部
30a 頭部スライド面
31 起立面部
31a 幅方向端部位
31b 手凹部
32 係止突起部
32a 頭部
32b 軸部
32c 取付板部
32d 補強リブ
33 起立面部パッキン部材
33a 水膨張性止水材
33b 耐水性止水材
34 水平面部
35 前後方向パッキン部材
35a 水膨張性止水材
35b 耐水性止水材
36 水平面部パッキン部材
36a 水膨張性止水材
36b 耐水性止水材
37 ストッパ突起部
38 凹部
39 ストッパ配置領域
40 凹部
41 解除装置
42 操作ハンドル
42a 把持部
42b 作用部
43 ベース部材
44 ハンドル固定部材
45 ヒンジ部材
C 左右方向中心線
E 出入口
F 床面
L 距離
W 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて設置された左右の支持体と、左右の前記支持体に着脱可能に取り付けられて立設される止水板とを備えた止水装置であって、
前記止水板は、前記支持体に対して前後方向に移動されるとともに前記支持体に係止されることで前記支持体に接続されるとともに、少なくとも起立面部における前記支持体と当接する領域と、床面に対峙する水平面部とに切れ目なくまたがって連続して設けられた厚み方向に単層のパッキン部材を備えている、止水装置。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて設置された左右の支持体と、左右の前記支持体に着脱可能に取り付けられて立設される止水板とを備えた止水装置であって、
前記止水板は、前記支持体に対して前後方向に移動されるとともに前記支持体に係止されることで前記支持体に接続されるとともに、少なくとも起立面部における前記支持体と対峙する領域と、床面に対峙する水平面部とに切れ目なくまたがって連続して設けられた厚み方向に単層のパッキン部材を備えている、止水装置。