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特開2022-137301血中尿酸値低下剤及び血中尿酸値低下用飲食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137301
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】血中尿酸値低下剤及び血中尿酸値低下用飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20220913BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20220913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/122
A61P19/06
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117307
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2018071570の分割
【原出願日】2018-04-03
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 愛美
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓
(72)【発明者】
【氏名】小倉 正恒
(72)【発明者】
【氏名】斯波 真理子
(57)【要約】
【課題】新規な血中尿酸値低下剤を提供すること。
【解決手段】α酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、血中尿酸値低下剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中尿酸値低下剤及び血中尿酸値低下用飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高尿酸血症は、血中尿酸濃度が高い状態を指す。痛風の原因である高尿酸血症の予防を目的として、食品素材による生体の血中尿酸値を低下させることが検討されている。例えば、特許文献1には、レモンポリフェノールを含むレモン抽出物がマウス及びヒトで血中尿酸値を低下させ得ることが開示されている。また、特許文献2には、シークヮーサー果皮の圧搾液を有効成分とする尿酸排泄促進組成物が血中尿酸値を低下させ得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5545692号公報
【特許文献2】特開2016-155825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な血中尿酸値低下剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、古くから食経験があるホップに由来する成分であり、安全性の高いことで知られるα酸、イソα酸及びβ酸が、血中尿酸値を低減させることを新たに見出した。本発明はこの新規な知見に基づくものである。
【0006】
本発明の血中尿酸値低下剤は、α酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。本発明は、α酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を含むことにより、血中の尿酸値を低下させることができる。
【0007】
上記血中尿酸値低下剤は、尿酸排泄促進作用に基づくものであってよく、URAT1阻害作用に基づくものであってもよい。
【0008】
本発明はまた、α酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、血中尿酸値低下用飲食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、新規な血中尿酸値低下剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、α酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0012】
α酸、イソα酸及びβ酸は、薬学的に許容可能な塩として血中尿酸低下剤に含まれていてもよい。このような薬学的に許容可能な塩は、α酸、イソα酸又はβ酸と無毒な塩を形成する塩基とにより形成されるものである。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0013】
α酸は、下記一般式(1)で表される化合物である。一般式(1)中、Rは、2-メチルプロピル基(-CHCH(CH)、メチルエチル基(-CH(CH)、1-メチルプロピル基(-CH(CH)CHCH)、エチル基(-CHCH)、3-メチルブチル基(-CHCHCH(CH)等から選択される基である。α酸としては、例えば、フムロン、コフムロン、アドフムロン、ポストフムロン、プレフムロンが挙げられる。フムロン、コフムロン、アドフムロン、ポストフムロン及びプレフムロンは、それぞれ、一般式(1)で表される化合物のうち、Rが2-メチルプロピル基、メチルエチル基、1-メチルプロピル基、エチル基、及び3-メチルブチル基である化合物である。α酸は、フムロン、コフムロン、アドフムロンであることが好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
イソα酸は、下記一般式(2)で表される化合物である。一般式(2)中、Rは、2-メチルプロピル基、メチルエチル基、1-メチルプロピル基、エチル基、3-メチルブチル基等から選択される基である。イソα酸としては、例えば、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロンが挙げられる。イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン及びイソプレフムロンは、それぞれ、一般式(2)で表される化合物のうち、Rが2-メチルプロピル基、メチルエチル基、1-メチルプロピル基、エチル基及び3-メチルブチル基である化合物である。イソα酸には、シス体及びトランス体の立体異性体が存在するが、特に断りのない限り両者を含む意味で用いられる。
【0016】
【化2】
【0017】
β酸は、下記一般式(3)で表される化合物である。一般式(3)中、Rは、2-メチルプロピル基、メチルエチル基、1-メチルプロピル基、エチル基、3-メチルブチル基である。β酸としては、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、ポストルプロン及びプレルプロンが挙げられる。ルプロン、コルプロン、アドルプロン、ポストルプロン及びプレルプロンは、それぞれ、一般式(3)で表される化合物のうち、Rが2-メチルプロピル基、メチルエチル基、1-メチルプロピル基、エチル基及び3-メチルブチル基である化合物である。
【0018】
【化3】
【0019】
α酸、イソα酸、又はβ酸としては、天然物(植物、微生物等)に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。
【0020】
例えば、α酸、イソα酸及びβ酸は、ホップ抽出物を分画又は精製することによって得ることができる。ホップ抽出物としては、例えば、市販のホップエキスを使用してもよい。例えば、イソアルファ酸は、アルファ酸(又はその含有物)をアルカリ条件下で加熱することにより得ることもできる。
【0021】
ホップからの抽出を行う場合、抽出に供するホップ組織としては、毬花が好ましい。ホップは、乾燥、凍結、加工、粉砕、選別等の処理が施されたものであってもよく、例えば、ホップペレットを使用してもよい。
【0022】
ホップの品種は特に制限されず、既存の品種(例えば、チェコ産ザーツ種、ドイツ産ハラタウ・マグナム種、ドイツ産ハラタウ・トラディション種、ドイツ産ペルレ種)のいずれでもよい。1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
ホップからの抽出は、例えば、ホップを溶媒に浸漬し、これを濾過することによって行うことができる。溶媒としては、例えば、水、食塩水、アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、二酸化炭素等を用いることができ、エタノール、メタノール等のアルコール、又はアルコールと水の混合溶液が好適である。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。浸漬の際には超音波処理を行ってもよい。
【0024】
得られた化合物がα酸、β酸又はイソα酸であるかどうかは、公知の方法(例えば、質量分析、元素分析、核磁気共鳴分光法、紫外分光法、赤外分光法)により確認することができる。
【0025】
α酸源、イソα酸源及びβ酸源としては、ホップ抽出物をそのまま用いてもよく、濾過、濃縮、乾燥等の処理を行った処理物を用いてもよく、ホップ抽出物から更に分画、精製を行ったものを用いてもよい。処理物は液状であってもよく、乾燥等により粉末状にしたものであってもよい。濃縮は公知の方法(例えば、減圧濃縮、凍結乾燥)により行うことができる。
【0026】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、有効成分としてα酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有するため、当該血中尿酸値低下剤を摂取することによって、血中の尿酸値を低下させることができる。また、血中尿酸値濃度が高い状態が持続すると痛風の原因となるが、血中尿酸値濃度を低く保つことによって、痛風を予防することができる。したがって本発明の血中尿酸値低下剤は、痛風発症及び再発の予防のために用いることができる。
【0027】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。また、α酸、イソα酸若しくはβ酸又はその薬学的に許容可能な塩のみからなっていてもよい。
【0028】
上述の各種製剤は、α酸、イソα酸若しくはβ酸又はこれらの薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)と、を混和することによって調製することができる。
【0029】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、URAT1阻害作用に基づくものであってよい。「URAT1」は、腎臓に発現するトランスポーターであり、RST、OAT4L、SLC22A12等の別名がつけられているトランスポーターをも包含する。ヒト由来のURAT1の典型的な塩基配列及びアミノ酸配列は、GenBank(AB071863)に開示されている。
【0031】
すなわち、本実施形態の血中尿酸値低下剤は、URAT1阻害剤と言い換えることもできる。また、URAT1は、管腔側で尿酸再吸収を担うトランスポーターであり、URAT1を阻害することにより、尿酸排泄が促進されることとなる。本実施形態の尿酸値低下剤は、尿酸排泄促進作用に基づくものであってよく、この場合、尿酸排泄促進剤ということもできる。
【0032】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品組成物、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。飲食品組成物には、飲食品(飲料、食品)、飲食品添加物、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。
【0033】
本実施形態の血中尿酸値低下剤からなる、又は血中尿酸値低下剤を含む上記製品は、血中尿酸値低下用、尿酸排泄促進用、URAT1阻害用であってよい。上記製品には、「血中尿酸値を改善する」、「血中尿酸値を制御する」、「血中尿酸値の上昇を抑制する」、「血中尿酸値を低下させる」、「血中尿酸値を適正化する」、「食事のプリン体が気になる方へ」、「お酒やおいしいものが好きな方へ」等の表示が付されていてもよい。
【0034】
本実施形態の血中尿酸値低下剤を使用した上記製品(医薬品、医薬部外品、飲食品組成物、飼料、飼料添加物等)の製造方法は特に制限されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、上記製品の製造工程における中間製品又は最終製品に、本実施形態の血中尿酸値低下剤を混合等して、血中尿酸値低下用に用いられる上記製品を得ることができる。
【0035】
上述のとおり、α酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含む血中尿酸値低下剤は、飲食品、又は飲食品添加物の成分として使用することが可能である。よって、本発明の一実施形態として、α酸、イソα酸及びβ酸並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含む、血中尿酸値低下用飲食品組成物が提供される。
【0036】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。本実施形態の血中尿酸値低下剤の投与量(摂取量)は、有効成分として、成人1日あたり、体重1kgあたり例えば0.1mg~1gであってよく、好ましくは1~500mgであり、より好ましくは、5~200mgである。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0037】
本実施形態の血中尿酸値低下剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。血中尿酸値低下剤は、1日あたりの有効成分量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【実施例0038】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0039】
[試験サンプルの調製]
(α酸)
ホップペレット(フラノ18号)を粉砕機により粉砕し、ヘキサンにより脱脂したのち、ろ紙ろ過によりヘキサン層を回収した。ヘキサン層を濃縮し、ヘキサン及び酢酸エチルにてシリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行った。得られたα酸画分をODSカラムを用いて更に精製し、コフムロン、フムロン、及びアドフムロンを得た。
【0040】
(イソα酸)
ホップエキストラクトNo.102536(三栄源社製)1Lをエバポレーターにて減圧濃縮し、エタノールを留去した後、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、1N HCl 500mLを加えて懸濁後、ヘキサン500mLを加えて水層とヘキサン層に分配した。このヘキサン層を回収し、エバポレーターでヘキサンを留去することで、イソα酸を高濃度に含むエキスを調製した。
【0041】
(β酸)
β-iso(Hop steiner社製)に硫酸を加え酸性にした後、水及びクロロホルムにて分配した。クロロホルム層を濃縮し、ヘキサン及び酢酸エチルにてシリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行った。得られた画分をさらに水及びメタノールにてC18カラムを用いた逆相クロマトグラフィーにより精製し、β酸を得た。
【0042】
[試験例1:ヒトURAT1発現細胞を用いた尿酸輸送阻害試験]
(1)試験サンプル溶液の調製
α酸として、コフムロン、フムロン及びアドフムロン、イソα酸混合物、β酸、並びに陽性対照として、ベンズブロマロン(benzbromarone)(Sigma社製)をDMSOに溶解し、目的濃度の1000倍となるようにDMSOを用いて希釈した。14Cで標識された尿酸(URIC ACID)[8-14C](ARC0513、American Radiolabeled Chemicals,Inc製)は、125mMグルコン酸ナトリウム、4.8mMグルコン酸カリウム、1.2mM硫酸マグネシウム、1.3mMグルコン酸カルシウム、1.2mMリン酸2水素カリウム、25mMヘペス及び5mMグルコース(pH7.4)より構成され、Clを含まないHanks平衡塩溶液(以下、HBSS(Cl-)とする)を用いて希釈し、最終濃度2μMとなるように調製した。この14C標識尿酸溶液を用いて試験サンプルを1000倍希釈し、目的濃度となるように調製したものをサンプル溶液とした。なお、試験サンプルを含まない0.1%DMSO溶液をコントロールとした。
【0043】
(2)ヒトURAT1一過性発現細胞の調製
胎児腎細胞由来HEK293細胞(JCRB9068、JCRB Cell Bank)3.5×10cells/mLを10%ウシ胎児血清を含むD-MEM培地(Sigma社製)に懸濁し、12ウェルプレートに1mL/well播種したのち、37℃の5%COインキュベータ内で1日間培養した。滅菌MilliQにより1mg/mLに調整したポリエチレンイミン“MAX”(PSI)を1ウェルあたり3.75μLとり、50μLのDMEMで希釈したのち室温で5分間静置した(以下、「PEI-DMEM」とする。)。1ウェルあたり0.75μgのヒトURAT1発現ベクター及びヒトURAT1の導入されていないコントロールベクターを50μLのDMEMで希釈し、室温で5分間静置した(以下、「Plasmid-DMEM」とする。)。Plasmid-DMEM及びPEI-DMEMを混合し、室温にて20分以上放置したのち、1ウェルあたり104μLずつHEK293細胞に添加した。HEK293細胞は37℃の5%COインキュベータ内で2日間培養し、尿酸取り込み阻害活性試験に供した。
【0044】
(3)尿酸取り込み阻害活性試験
以下の試験は37℃に加温したホットプレート上にて行った。各ウェルから培地を吸引除去した後、500μLのHBSS(Cl-)を用いて各ウェルを2回洗ったのち、500μLのHBSS(Cl-)で置換し、37℃の5%COインキュベータ内で約15分間プレインキュベーションした。HBSS(Cl-)を吸引除去した後、予め37℃に加温した(1)のサンプル溶液を500μL添加し、30秒間取り込み反応を行った。反応終了後、サンプル溶液を直ちに吸引除去し、氷冷した500μLのHBSS(Cl-)で2回洗浄した。細胞を1ウェルあたり120μLのRIPA buffer(Sigma社製)にて溶解し、液体シンチレーション計測用バイアル(PerkinElmer社製)にうつした。4mLのULTIMA GOLD(PerkinElmer社製)を加えて混合したのち、液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer社製)にて放射活性を測定した。URAT1特異的尿酸取り込み阻害活性は下記のように算出した。
阻害率(%)=[1-(A-C/B-C)]×100
A:ヒトURAT1一過性発現細胞にサンプル溶液を添加した場合の放射活性
B:ヒトURAT1一過性発現細胞に0.1%DMSO溶液を添加した場合の放射活性
C:コントロールベクターを導入した細胞に0.1%DMSO溶液を添加した場合の放射活性
【0045】
表1に各種α酸(コフムロン、フムロン、又はアドフムロン)のURAT1阻害活性の測定結果を示す。表2にβ酸のURAT1阻害活性の測定結果を示す。表3にイソα酸(イソα酸混合物)のURAT1阻害活性を示す。なお、ベンズブロマロンは、ポジティブコントロールとして使用した。また、表2中の濃度は、β酸中のルプロンの比率を100%と仮定したときの濃度を、表3中の濃度は、イソα酸混合物中のイソフムロンの比率を100%と仮定したときの濃度を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表1~3に示すとおり、α酸、イソα酸及びβ酸はURAT1阻害作用を有していた。