(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137303
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20220913BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20220913BHJP
H01L 21/365 20060101ALI20220913BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301P
H01L29/86 301M
H01L21/365
H01L21/368 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117568
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2017193706の分割
【原出願日】2017-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2016196066
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016196067
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017022692
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】織田 真也
(72)【発明者】
【氏名】徳田 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】神原 仁志
(72)【発明者】
【氏名】河原 克明
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
(57)【要約】
【課題】半導体特性およびショットキー特性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】第1の半導体層と、第2の半導体層と、第1の半導体層上に設けられているショットキー電極とを少なくとも備え、第1の半導体層及び第2の半導体層が、それぞれガリウムを含有する結晶性酸化物半導体を主成分として含み、第1の半導体層のキャリア密度が、第2の半導体層のキャリア密度よりも小さい半導体装置において、第1の半導体層および第2の半導体層のそれぞれの表面積が3mm2以下である小型の半導体装置を製造し、得られた半導体装置をパワーデバイス等に用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と電極とを少なくとも備える半導体装置であって、前記半導体層が、ガリウムを含有しコランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を含み、前記半導体層の膜厚が40μm以下であり、耐圧が531V以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体層と電極とを少なくとも備える半導体装置であって、前記半導体層が、ガリウムを含有しコランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を含み、前記半導体層が、第1の半導体層と、該第1の半導体層よりもキャリア密度の大きい第2の半導体層とを含み、前記第1の半導体層のキャリア密度が1.0×1017/cm3以上であり、耐圧が531V以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
半導体層と電極とを少なくとも備える半導体装置であって、前記半導体層が、ガリウムを含有しコランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を含み、前記半導体層が、第1の半導体層と、該第1の半導体層よりもキャリア密度の大きい第2の半導体層とを含み、前記第1の半導体層のキャリア密度が1.0×1017/cm3以上であり、前記半導体層の絶縁破壊電界が、6MV/cm以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層の絶縁破壊電界が8MV/cm以上である請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層の絶縁破壊電界が10MV/cm以上である請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電極が、ショットキー電極である請求項1~5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ショットキー電極が、周期律表第4族~第9族から選ばれる少なくとも1種の金属を含む請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ショットキー電極の面積が1mm2以下である請求項1~7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記結晶性酸化物半導体が、α-Ga2O3またはその混晶である請求項1~8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
さらに、オーミック電極を備えており、前記オーミック電極が、周期律表第4族または第11族の金属を含む請求項1~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記オーミック電極が、Tiまたは/およびAuを含む請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
1MHzで測定したときのキャパシタンスが0Vバイアスで1000pF以下である請求項1~11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体層が、第1の半導体層および第2の半導体層を含む請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との合計厚さが40μm以下である請求項13記載の半導体装置。
【請求項15】
ダイオードである請求項1~14のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項16】
トランジスタである請求項1~14のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項17】
半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、請求項1~16のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にパワーデバイスに有用な半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ガリウム(Ga2O3)は、室温において4.8-5.3eVという広いバンドギャップを持ち、可視光及び紫外光をほとんど吸収しない透明半導体である。そのため、特に、深紫外線領域で動作する光・電子デバイスや透明エレクトロニクスにおいて使用するための有望な材料であり、近年においては、酸化ガリウム(Ga2O3)を基にした、光検知器、発光ダイオード(LED)及びトランジスタの開発が行われている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、酸化ガリウム(Ga2O3)には、α、β、γ、σ、εの5つの結晶構造が存在し、一般的に最も安定な構造は、β-Ga2O3である。しかしながら、β-Ga2O3はβガリア構造であるので、一般に電子材料等で利用する結晶系とは異なり、半導体装置への利用は必ずしも好適ではない。また、β-Ga2O3薄膜の成長は高い基板温度や高い真空度を必要とするので、製造コストも増大するといった問題もある。また、非特許文献2にも記載されているように、β-Ga2O3では、高濃度(例えば1×1019/cm3以上)のドーパント(Si)でさえも、イオン注入後、800℃~1100℃の高温にてアニール処理を施さなければドナーとして使えなかった。
一方、α-Ga2O3は、既に汎用に販売されているサファイア基板と同じ結晶構造を有するため、光・電子デバイスへの利用には好適であり、さらに、β-Ga2O3よりも広いバンドギャップをもつため、パワーデバイスに特に有用であり、そのため、α-Ga2O3を半導体として用いた半導体装置が待ち望まれている状況である。
【0004】
特許文献1および2には、β-Ga2O3を半導体として用い、これに適合したオーミック特性が得られる電極として、Ti層およびAu層からなる2層、Ti層、Al層およびAu層からなる3層、またはTi層、Al層、Ni層およびAu層からなる4層を用いた半導体装置が記載されている。
また、特許文献3には、β-Ga2O3を半導体として用い、これに適合したショットキー特性が得られる電極として、Au、Pt、あるいはNiおよびAuの積層体のいずれかを用いた半導体装置が記載されている。
しかしながら、特許文献1~3の記載の電極を用いた場合でも、ショットキー電極やオーミック電極として十分に機能しなかったり、電極が膜につかなかったり、半導体特性が損なわれたりするなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-260101号公報
【特許文献2】特開2009-81468号公報
【特許文献3】特開2013-12760号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jun Liang Zhao et al, “UV and Visible Electroluminescence From a Sn:Ga2O3/n+‐Si Heterojunction by Metal‐Organic Chemical Vapor Deposition”, IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 58, NO.5 MAY 2011
【非特許文献2】Kohei Sasaki et al, “Si‐Ion Implantation Doping in β‐Ga2O3 and Its Application to Fabrication of Low‐Resistance Ohmic Contacts”, Applied Physics Express 6 (2013) 086502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体特性およびショットキー特性に優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、酸化ガリウム半導体を用いた半導体装置の研究開発を進めたところ、絶縁破壊電界が6MV/cm以上である酸化物半導体膜の創製に成功し、得られた半導体装置が小面積(例えば半導体膜の表面積が3mm2以下)であってもパワーデバイスとして適用可能なほどに半導体特性が優れていることを知見し、このような半導体装置が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。また、本発明者らは、このような半導体装置のショットキー電極に、周期律表第4族~第9族の金属を用いたところ、驚くべきことに、作製した半導体装置が、スイッチング特性等の半導体特性に優れており、さらに、密着性にも優れ、ショットキー電極と半導体層との界面も良好であり、ショットキー特性も良好に発現できることを知見し、また、小型でも半導体特性を実現できるものであることを種々見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 第1の半導体層と、第2の半導体層と、第1の半導体層上に設けられているショットキー電極とを少なくとも備え、第1の半導体層及び第2の半導体層が、それぞれガリウムを含有する結晶性酸化物半導体を主成分として含み、第1の半導体層のキャリア密度が、第2の半導体層のキャリア密度よりも小さい半導体装置であって、第1の半導体層および第2の半導体層のそれぞれの表面積が3mm2以下であることを特徴とする半導体装置。
[2] 第1の半導体層および第2の半導体層のそれぞれの表面積が1mm2以下である前記[1]記載の半導体装置。
[3] 第1の半導体層または第2の半導体層が、絶縁破壊電界が6MV/cm以上である半導体膜からなる前記[1]または[2]に記載の半導体装置。
[4] 絶縁破壊電界が10MV/cm以上である前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体装置。
[5] 前記ショットキー電極が、周期律表第4族~第9族から選ばれる少なくとも1種の金属を含む前記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体装置。
[6] ショットキー電極の面積が1mm2以下である前記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体装置。
[7] 前記結晶性酸化物半導体がコランダム構造を有する前記[1]~[6]のいずれかに記載の半導体装置。
[8] 前記結晶性酸化物半導体が、α-Ga2O3またはその混晶である前記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体装置。
[9] さらに、オーミック電極を備えており、前記オーミック電極が、周期律表第4族または第11族の金属を含む前記[1]~[8]のいずれかに記載の半導体装置。
[10] 前記オーミック電極が、Tiまたは/およびAuを含む前記[9]記載の半導体装置。
[11] 1MHzで測定したときのキャパシタンスが0Vバイアスで1000pF以下である前記[1]~[10]のいずれかに記載の半導体装置。
[12] 第1の半導体層と第2の半導体層との合計厚さが40μm以下である前記[1]~[11]のいずれかに記載の半導体装置。
[13] ショットキー電極が形成されている半導体層を含む半導体装置であって、半導体層がガリウムを含有する結晶性酸化物半導体を含み、半導体層の表面積が3mm2以下であることを特徴とする半導体装置。
[14] 半導体層の絶縁破壊電界が6MV/cm以上である前記[13]記載の半導体装置。
[15] 1A以上の電流が流れる前記[1]~[14]のいずれかに記載の半導体装置。
[16] ダイオードである前記[1]~[15]のいずれかに記載の半導体装置。
[17] トランジスタである前記[1]~[15]のいずれかに記載の半導体装置。
[18] パワーデバイスである前記[1]~[17]のいずれかに記載の半導体装置。
[19] パワーモジュール、インバータまたはコンバータである前記[1]~[15]のいずれかに記載の半導体装置。
[20] 半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、前記[1]~[19]のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置は、半導体特性およびショットキー特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明のショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明に用いられる第1の金属層の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図4】本発明に用いられる第2の金属層の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図5】実施例で用いたミストCVD装置の概略構成図である。
【
図6】実施例で用いたミストCVD装置の概略構成図である。
【
図11】実施例4のスイッチング特性測定の結果を示す図である。縦軸が電流(A)であり、横軸が時間(秒)である。
【
図12】電源システムの好適な一例を模式的に示す図である。
【
図13】システム装置の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図14】電源装置の電源回路図の好適な一例を模式的に示す図である。
【
図15】実施例6のCV測定の結果を示す図である。
【
図16】実施例6及び実施例7の順方向JV測定の結果を示す図である。
【
図17】実施例6の逆方向JV測定の結果を示す図である。
【
図18】実施例7の半導体膜の過剰ドナー濃度(ドナー濃度とアクセプタ濃度との差)と膜厚との関係を示す図である。
【
図19】実施例7の逆方向JV測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の半導体装置は、ショットキー電極が形成されている半導体層を含む半導体装置であって、半導体層がガリウムを含有する結晶性酸化物半導体を含み、半導体層の表面積が3mm2以下であることを特長とする。また、本発明は、第1の半導体層と、第2の半導体層と、第1の半導体層上に設けられているショットキー電極とを少なくとも備え、第1の半導体層及び第2の半導体層が、それぞれガリウムを含有する結晶性酸化物半導体を主成分として含み、第1の半導体層のキャリア密度が、第2の半導体層のキャリア密度よりも小さい半導体装置であって、第1の半導体層および第2の半導体層のそれぞれの表面積が3mm2以下であることを特長とする。本発明においては、前記表面積が1mm2以下であるのが好ましく、1mm角以下がより好ましい。
【0013】
前記ショットキー電極は、周期律表第4族~第9族から選ばれる少なくとも1種の金属を含むのが好ましい。なお、前記金属は、周期律表第4族~第6族から選ばれる少なくとも1種の金属であるのが好ましい。このようにして前記ショットキー電極の金属材料と、第1の半導体層および第2の半導体とを組み合わせることにより、半導体特性に優れた半導体装置を得ることができる。従来より、β-Ga2O3を半導体として用いる場合には、Au、Pt、Niなどの周期律表第10族以上の金属をショットキー電極に用いることが適していることが知られていたが、周期律表第10族以上の金属を用いなくても、例えばα-Ga2O3等の結晶性酸化物半導体を第1の半導体層および第2の半導体層にそれぞれ用いる場合には、第1の半導体層のキャリア密度を、第2の半導体層のキャリア密度よりも小さくし、さらに、前記ショットキー電極に、周期律表第4族~第9族から選ばれる少なくとも1種の金属を用いることにより、半導体特性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0014】
第1の半導体層及び第2の半導体層(以下、まとめて「前記半導体層」ともいう)は、それぞれガリウムを含有する結晶性酸化物半導体を主成分として含み、第1の半導体層のキャリア密度が、第2の半導体層のキャリア密度よりも小さければ特に限定されない。前記結晶性酸化物半導体の結晶構造も特に限定されないが、コランダム構造またはβガリア構造であるのが好ましく、コランダム構造であるのがより好ましい。本発明においては、前記半導体層(以下、「結晶性酸化物半導体膜」ともいう)が、InAlGaO系半導体を主成分とするのが好ましく、ガリウムを少なくとも含むのがより好ましく、α-Ga2O3またはその混晶であるのが最も好ましい。なお、「主成分」とは、例えば結晶性酸化物半導体がα-Ga2O3である場合、膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でα-Ga2O3が含まれていればそれでよい。本発明においては、前記膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。また、第1の半導体層と第2の半導体層とは、本発明の目的を阻害しない限り、それぞれ互いに主成分が同一であってもよいし、異なっていてもよいが、本発明においては、同一であるのが好ましい。また、本発明においては、前記半導体層を構成する半導体膜の絶縁破壊電界が6MV/cm以上であるのが好ましく、10MV/cm以上であるのがより好ましい。このような絶縁破壊特性を有することによって、小面積でも優れた半導体特性を発揮することができる。なお、前記絶縁破壊電界は、例えば、JIS C2110-2に規定する絶縁破壊の強さの算出方法に準じて測定される。また、結晶性酸化物半導体膜の厚さは、特に限定されず、1μm以下であってもよいし、1μm以上であってもよいが、本発明においては、40μm以下であるのが好ましく、25μm以下であるのがより好ましく、12μm以下であるのがさらにより好ましく、8μm以下であるのが最も好ましい。また、本発明の半導体装置は、下記の熱抵抗算出評価の結果からも明らかなとおり、小型化しても半導体装置として優れた性能を発揮する。例えば、結晶性酸化物半導体膜の膜厚が12μm以下で、かつ表面積が1mm2以下であっても、1A以上(好ましくは10A以上)の電流が流れる半導体装置が得られる。なお、前記結晶性酸化物半導体膜は、通常、単結晶であるが、多結晶であってもよい。
【0015】
前記結晶性酸化物半導体膜は、ドーパントが含まれているのが好ましく、第2の半導体層には、通常、ドーパントが含まれている。前記ドーパントは、特に限定されず、公知のものであってよい。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。例えば、第1の半導体層に前記ドーパントが含まれる場合には、該ドーパントの含有量は、第1の半導体層の組成中、0.0000000001原子%以上であるのが好ましく、0.0000000001原子%~20原子%であるのがより好ましく、0.0000000001原子%~1原子%であるのが最も好ましい。また、例えば、第2の半導体層に前記ドーパントが含まれる場合には、該ドーパントの含有量は、第2の半導体層の組成中、0.0000001原子%以上であるのが好ましく、0.0000001原子%~20原子%であるのがより好ましく、0.0000001原子%~10原子%であるのが最も好ましい。本発明においては、前記ドーパントが、SnまたはGeであるのが好ましい。SnまたはGeの含有量は、前記結晶性酸化物半導体膜の組成中、0.00001原子%以上であるのが好ましく、0.00001原子%~20原子%であるのがより好ましく、0.00001原子%~10原子%であるのが最も好ましい。なお、前記結晶性酸化物半導体膜のキャリア密度は、ドーピング量を調節することにより、適宜設定することができる。
【0016】
前記結晶性酸化物半導体膜は、例えば、原料溶液を霧化または液滴化し(霧化・液滴化工程)、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって基体上まで搬送し(搬送工程)、ついで、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、基体上に結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜を積層する(成膜工程)ことにより好適に得られる。
【0017】
(霧化・液滴化工程)
霧化・液滴化工程は、前記原料溶液を霧化または液滴化する。前記原料溶液の霧化手段または液滴化手段は、前記原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは100nm~10μmである。
【0018】
(原料溶液)
前記原料溶液は、霧化または液滴化が可能な材料を含んでおり、重水素を含有していれば特に限定されず、無機材料であっても、有機材料であってもよいが、本発明においては、金属または金属化合物であるのが好ましく、ガリウム、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、シリコン、イットリウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含むのがより好ましい。
【0019】
本発明においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
【0020】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合するのが好ましい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、中でも、より良質な膜が得られるとの理由から、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化バリウム(BaO2)、過酸化ベンゾイル(C6H5CO)2O2等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0021】
前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。原料溶液にドーパントを含ませることで、ドーピングを良好に行うことができる。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、通常、約1×1016/cm3~1×1022/cm3であってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm3以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm3以上の高濃度で含有させてもよい。本発明においては、1×1017/cm3以上のキャリア濃度で含有させるのが好ましい。
【0022】
原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましい。
【0023】
(搬送工程)
搬送工程では、キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を成膜室内に搬送する。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~2L/分であるのが好ましく、0.1~1L/分であるのがより好ましい。
【0024】
(成膜工程)
成膜工程では、成膜室内で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、基体上に、結晶性酸化物半導体膜を成膜する。熱反応は、熱でもって前記ミストまたは液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、650℃以下がより好ましく、300℃~650℃が最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよいが、非酸素雰囲気下または酸素雰囲気下で行われるのが好ましい。また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0025】
(基体)
前記基体は、前記結晶性酸化物半導体膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されない。
【0026】
前記基板は、板状であって、前記結晶性酸化物半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、金属基板や導電性基板であってもよいが、前記基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、また、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。なお、前記金属膜は多層膜が好ましい。前記基板としては、例えば、コランダム構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、またはβ-ガリア構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、六方晶構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、前記特定の結晶構造を有する基板材料が、原子比で、基板材料の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよい。
【0027】
基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料としては、例えば、α-Al2O3(サファイア基板)またはα-Ga2O3が好適に挙げられ、a面サファイア基板、m面サファイア基板、r面サファイア基板、c面サファイア基板や、α型酸化ガリウム基板(a面、m面またはr面)などがより好適な例として挙げられる。β-ガリア構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えばβ-Ga2O3基板、又はGa2O3とAl2O3とを含みAl2O3が0wt%より多くかつ60wt%以下である混晶体基板などが挙げられる。また、六方晶構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えば、SiC基板、ZnO基板、GaN基板などが挙げられる。基板材料に用いられる金属としては、特に限定されないが、第1の金属層または第2の金属層に用いられる金属が好ましい。
【0028】
本発明においては、前記基体が、表面の一部または全部に、金属またはコランダム構造を有するのが好ましい。また、基体がコランダム構造を有する場合には、コランダム構造を有する基板材料を主成分とする下地基板であるのがより好ましく、サファイア基板またはα型酸化ガリウム基板であるのが最も好ましい。また、前記基体は、アルミニウムを含んでいてもよく、この場合、コランダム構造を有するアルミニウム含有基板材料を主成分とする下地基板であるのが好ましく、サファイア基板(好ましくはc面サファイア基板、a面サファイア基板、m面サファイア基板、r面サファイア基板)であるのがより好ましい。また、前記基体は、酸化物を含むのも好ましく、前記酸化物としては、例えば、YSZ基板、MgAl2O4基板、ZnO基板、MgO基板、SrTiO3基板、Al2O3基板、石英基板、ガラス基板、β型酸化ガリウム基板、チタン酸バリウム基板、チタン酸ストロンチウム基板、酸化コバルト基板、酸化銅基板、酸化クロム基板、酸化鉄基板、Gd3Ga5O12基板、タンタル酸カリウム基板、アルミン酸ランタン基板、ランタンストロンチウムアルミネート基板、ランタンストロンチウムガレート基板、ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リチウム基板、アルミニウムタンタル酸ランタンストロンチウム、酸化マンガン基板、ネオジウムガレード基板、酸化ニッケル基板、スカンジウムマグネシウムアルミネート基板、酸化ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム基板、酸化スズ基板、酸化テルル基板、酸化チタン基板、YAG基板、イットリウム・アルミネート基板、リチウム・アルミネート基板、リチウム・ガレート基板、LAST基板、ネオジムガレート基板、イットリウム・オルトバナデイト基板などが挙げられる。
本発明においては、前記基板が3mm2以下のピッチ間隔で所定の形状に溝入れ加工されたものを用いるのが好ましい。このような基板を用いることによって、前記半導体層の表面積を3mm2以下にすることがより容易になるだけでなく、結晶成長においてより優れた応力の緩和も実現することができ、より高品質でかつ小面積でもより優れた半導体特性を実現することが可能な酸化ガリウム結晶またはその混晶を得ることができる。
【0029】
本発明においては、前記成膜工程の後、アニール処理を行ってもよい。アニールの処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、通常、300℃~650℃であり、好ましくは350℃~550℃である。また、アニールの処理時間は、通常、1分間~48時間であり、好ましくは10分間~24時間であり、より好ましくは30分間~12時間である。なお、アニール処理は、本発明の目的を阻害しない限り、どのような雰囲気下で行われてもよいが、好ましくは非酸素雰囲気下であり、より好ましくは窒素雰囲気下である。
【0030】
また、本発明においては、前記基体上に、直接、結晶性酸化物半導体膜を設けてもよいし、バッファ層(緩衝層)や応力緩和層等の他の層を介して結晶性酸化物半導体膜を設けてもよい。各層の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、ミストCVD法が好ましい。
【0031】
本発明においては、前記結晶性酸化物半導体膜を、前記基体等から剥離する等の公知の手段を用いた後に、半導体層として半導体装置に用いてもよいし、そのまま半導体層として半導体装置に用いてもよい。
【0032】
前記半導体装置は、前記半導体層と、前記半導体層(第1の半導体層)上にショットキー電極とを少なくとも備える。前記ショットキー電極は、周期律表第4族~第9族から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいるのが好ましい。周期律表第4族の金属としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられるが、中でもTiが好ましい。周期律表第5族の金属としては、例えば、バナジウム(V)、ジルコニウム)Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられる。周期律表第6族の金属としては、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)等から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられるが、本発明においては、よりスイッチング特性等の半導体特性を良好なものとなるのでCrが好ましい。周期律表第7族の金属としては、例えば、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)などが挙げられる。周期律表第8族の金属としては、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などが挙げられる。周期律表第9族の金属としては、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)などが挙げられる。また、本発明においては、前記ショットキー電極が、本発明の目的を阻害しない限り、さらに周期律表第10族または第11族の金属を含んでいてもよい。周期律表第10族の金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などが挙げられるが、中でもPtが好ましい。周期律表第11族の金属としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などが挙げられるが、中でもAuが好ましい。
本発明においては、スイッチング特性等の半導体特性をさらにより良好なものとするため、前記ショットキー電極が周期律表第4族~第6族から選ばれる少なくとも1種の金属または周期律表第4族~第9族から選ばれる少なくとも1種の金属であって、周期律表第4周期の遷移金属を含むのが好ましく、周期律表第4族もしくは第6族の金属または周期律表第4族~第6族から選ばれる少なくとも1種の金属であって、周期律表第4周期の遷移金属を含むのがより好ましい。
【0033】
また、ショットキー電極は単層の金属層であってもよいし、2以上の金属膜を含んでいてもよい。前記金属層や金属膜の積層手段としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の手段などが挙げられる。また、ショットキー電極を構成する金属は、合金であってもよい。本発明においては、第1の金属層が、Tiを含むのが好ましく、さらに、Auまたは/およびPtを含むのが最も好ましい。このような好ましい金属を用いることで、コランダム構造を有する半導体の半導体特性(例えば、耐久性、絶縁破壊電圧、耐圧、オン抵抗、安定性など)をより良好なものとすることができ、ショットキー特性も良好に発揮することができる。
また、本発明においては、ショットキー電極の面積が1mm2以下であるのが好ましく、0.8mm2以下であるのがより好ましい。
【0034】
また、本発明の半導体装置は、通常、オーミック電極を備える。オーミック電極は、周期律表第4族または第11族の金属を含むのが好ましい。オーミック電極に用いられる好適な周期律表第4族または第11族の金属は、前記ショットキー電極に含まれる金属と同様であってよい。また、オーミック電極は単層の金属層であってもよいし、2以上の金属層を含んでいてもよい。金属層の積層手段としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の手段などが挙げられる。また、オーミック電極を構成する金属は、合金であってもよい。本発明においては、オーミック電極が、Tiまたは/およびAuを含むのが好ましく、TiおよびAuを含むのがより好ましい。
【0035】
前記半導体装置は、とりわけ、パワーデバイスに有用である。前記半導体装置としては、例えば、半導体レーザ、ダイオードまたはトランジスタ(例えば、MESFET等)などが挙げられるが、中でもダイオードが好ましく、ショットキーバリアダイオードがより好ましい。
【0036】
(SBD)
図1は、本発明に係るショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な一例を示している。
図1のSBDは、n-型半導体層101a、n+型半導体層101b、ショットキー電極105aおよびオーミック電極105bを備えている。
ショットキー電極およびオーミック電極の形成は、例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法などの公知の手段により行うことができる。より具体的に例えば、ショットキー電極を形成する場合、第1の金属層を積層させ、第1の金属層に対して、フォトリソグラフィの手法を利用したパターニングを施すことにより行うことができる。
以下、ショットキー電極105aとして第1の金属層を用い、オーミック電極105bとして、第2の金属層を用いる場合のそれぞれの態様について説明する。
【0037】
図3は、本発明に用いられる好ましい第1の金属層の一例を示している。第1の金属層50aは、Au層51、Ti層52およびPt層53からなる。各層の金属膜の膜厚は特に限定されないが、Au層は、0.1nm~10μmが好ましく、5nm~200nmがより好ましく、10nm~100nmが最も好ましい。周期律表第4族の金属(例えばTi等)層は1nm~500μmが好ましく、1nm~100μmがより好ましく、5nm~20nmもしくは1μm~100μmが最も好ましい。周期律表第10族の金属(例えばPt等)層は、例えば、1nm~10μmが好ましい。なお、周期律表第11族の金属として、Agを用いる場合には、Ag膜の膜厚が、5μm~100μmが好ましく、10μm~80μmがより好ましく、20μm~60μmが最も好ましい。なお、周期律表第11族の金属として、Cuを用いる場合には、Cu膜の膜厚が、1nm~500μmが好ましく、1nm~~100μmがより好ましく、0.5μm~5μmが最も好ましい。
【0038】
図4は、本発明に用いられる好ましい第2の金属層の一例を示している。第2の金属層50bは、Ti層54およびAu層55からなる。各層の金属膜の膜厚は特に限定されないが、Ti層54の場合は、1nm~500μmが好ましく、1nm~100μmがより好ましく、5nm~20nmもしくは1μm~100μmが最も好ましい。Au層55の場合は、0.1nm~10μmが好ましく、5nm~200nmがより好ましく、10nm~100nmが最も好ましい。
【0039】
図1のSBDに逆バイアスが印加された場合には、空乏層(図示せず)がn型半導体層101aの中に広がるため、高耐圧のSBDとなる。また、順バイアスが印加された場合には、オーミック電極105bからショットキー電極105aへ電子が流れる。このようなSBDは、高耐圧・大電流用に優れており、ショットキー特性も良好で、スイッチング速度も速く、耐圧性・信頼性にも優れている。
【0040】
図2は、本発明に係るショットキーバリアダイオード(SBD)の好適な他の一例を示している。
図2のSBDは、
図1のSBDの構成に加え、さらに絶縁体層104を備えている。より具体的には、n-型半導体層101a、n+型半導体層101b、ショットキー電極105a、オーミック電極105bおよび絶縁体層104を備えている。
【0041】
絶縁体層104の材料としては、例えば、GaO、AlGaO、InAlGaO、AlInZnGaO
4、AlN、Hf
2O
3、SiN、SiON、Al
2O
3、MgO、GdO、SiO
2またはSi
3N
4などが挙げられるが、本発明においては、コランダム構造を有するものであるのが好ましい。コランダム構造を有する絶縁体を絶縁体層に用いることで、界面における半導体特性の機能を良好に発現させることができる。絶縁体層104は、n-型半導体層101とショットキー電極105aとの間に設けられている。絶縁体層の形成は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法などの公知の手段により行うことができる。
その他の構成等については、上記
図1のSBDの場合と同様である。
図2のSBDは、
図1のSBDに比べ、さらに絶縁特性に優れており、より高い電流制御性を有する。
【0042】
上記のようにして得られた半導体装置は、通常、1MHzで測定したときのキャパシタンスが0Vバイアスで1000pF以下となり、好ましくは500pF以下となり、より好ましくは150pF以下となり、このような半導体装置も本発明に含まれる。
【0043】
本発明の半導体装置は、上記した事項に加え、さらに公知の手段を用いて、パワーモジュール、インバータまたはコンバータとして好適に用いられ、さらには、例えば電源装置を用いた半導体システム等に好適に用いられる。前記電源装置は、公知の手段を用いて、配線パターン等に接続するなどすることにより、前記半導体装置からまたは前記半導体装置として作製することができる。
図12に電源システムの例を示す。
図12は、複数の前記電源装置と制御回路を用いて電源システムを構成している。前記電源システムは、
図13に示すように、電子回路と組み合わせてシステム装置に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を
図14に示す。
図14は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ(MOSFETA~Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランスで絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFET(A~B’)で整流後、DCL(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路でインバータ及び整流MOSFETを制御する。
【実施例0044】
(実施例1)
1.n+型半導体層の形成
1-1.成膜装置
図5を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置1を説明する。ミストCVD装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排出する排気口11とを備えている。なお、ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
【0045】
1-2.原料溶液の作製
0.1M臭化ガリウム水溶液に臭化スズを混合し、ガリウムに対するスズの原子比が1:0.08となるように水溶液を調整し、この際、臭化重水素酸を体積比で10%を含有させ、これを原料溶液とした。
【0046】
1-3.成膜準備
上記1-2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、サファイア基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて成膜室7内の温度を470℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a、3bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2a、2bからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0047】
1-4.結晶性酸化物半導体膜の形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に導入され、大気圧下、470℃にて、成膜室7内でミストが熱反応して、基板10上に膜が形成された。なお、膜厚は7.5μmであり、成膜時間は180分間であった。
【0048】
1-5.評価
XRD回折装置を用いて、上記1-4.にて得られた膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Ga2O3であった。
【0049】
2.n-型半導体層の形成
2-1.成膜装置
図6を用いて、実施例で用いたミストCVD装置19を説明する。ミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0050】
2-2.原料溶液の作製
0.1M臭化ガリウム水溶液に臭化重水素酸を体積比で20%を含有させ、これを原料溶液とした。
【0051】
2-3.成膜準備
上記2-2.で得られた原料溶液24aをミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、サファイア基板から剥離したn+型半導体膜をサセプタ21上に設置し、ヒーター28を作動させて成膜室27内の温度を510℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを成膜室27内に供給し、成膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして酸素を用いた。
【0052】
2-4.半導体膜形成
次に、超音波振動子26を2.4MHzで振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを霧化させてミストを生成した。このミストが、キャリアガスによって成膜室27内に導入され、大気圧下、510℃にて、成膜室27内でミストが反応して、基板20上に半導体膜が形成された。なお、膜厚は3.6μmであり、成膜時間は120分間であった。
【0053】
2-5.評価
XRD回折装置を用いて、上記2-4.にて得られた膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Ga2O3であった。
【0054】
3.第1の金属層(ショットキー電極)の形成
図3に示されるように、n-型半導体層上に、Pt層、Ti層およびAu層をそれぞれ電子ビーム蒸着にて積層した。なお、Pt層の厚さは10nmであり、Ti層の厚さは4nmであり、Au層の厚さは175nmであった。
【0055】
4.第2の金属層(オーミック電極)の形成
図4に示されるように、n+型半導体層上に、Ti層およびAu層をそれぞれ電子ビーム蒸着にて積層した。なお、Ti層の厚さは35nmであり、Au層の厚さは175nmであった。
【0056】
5.IV測定
以上のようにして表面積が1mm角の半導体装置を得て、得られた半導体装置につき、IV測定を実施した。結果を
図7に示す。また、耐圧を調べたところ、855Vであった。これらの結果から、実施例1の半導体装置が半導体特性およびショットキー特性に優れていることがわかる。
【0057】
(実施例2)
n-型半導体層の形成において、成膜温度を525℃とし、成膜時間を20分間としたこと以外は、実施例1と同様にして表面積が1mm角の半導体装置を得た。なお、n-型半導体層の厚さは、0.5μmであった。得られた半導体装置につき、IV測定を実施した。結果を
図8に示す。また、オン抵抗(微分抵抗)を調べたところ、0.11mΩcm
2であった。
【0058】
(実施例3)
(1)n+型半導体層の形成の際に、原料溶液の臭化重水素酸を体積比で15%を含有させたこと、および成膜時間を8時間としたこと、(2)n-型半導体層の形成の際に、成膜温度を500℃としたこと、および成膜時間を110分としたこと、ならびに(3)第1の金属層(ショットキー電極)の形成の際に、n-型半導体層上に、Ti層およびAu層をそれぞれ電子ビーム蒸着にて積層したこと以外は、実施例1と同様にして表面積が1mm角の半導体装置を得た。得られた半導体装置につき、IV測定を実施例した。結果を
図9に示す。
図9からも明らかなとおり、良好な半導体特性およびショットキー特性を示していることがわかる。
【0059】
(比較例)
参考までに、ショットキー電極にPtを用いた場合のIV測定結果を
図10に示す。
図10からも明らかなとおり、半導体特性やショットキー特性が大幅に損なわれることがわかる。
【0060】
(実施例4)
1.n-型半導体層の形成
1-1.成膜装置
図5を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置1を説明する。ミストCVD装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排出する排気口11とを備えている。なお、ホットプレート8上には、基板10が設置されており、本実施例においては、基板10として、Snがドーピングされているα-Ga
2O
3膜がバッファ層として表面に形成されているサファイア基板を用いた。なお、サファイア基板はYVO4レーザ(波長532nm、平均出力4W)のレーザ加工機を用いて、1mmのピッチ間隔で正方形格子状に溝入れ加工(溝の深さ30μm)されたものを用いた。
【0061】
1-2.原料溶液の作製
0.1M臭化ガリウム水溶液に臭化水素酸を体積比で10%を含有させ、これを原料溶液とした。
【0062】
1-3.成膜準備
上記1-2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、バッファ層付きサファイア基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて成膜室7内の温度を470℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a、3bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2a、2bからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を2.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして酸素を用いた。
【0063】
1-4.結晶性酸化物半導体膜の形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に導入され、大気圧下、470℃にて、成膜室7内でミストが熱反応して、基板10上に膜が形成された。なお、膜厚は約5μmであり、成膜時間は135分間であった。
【0064】
1-5.評価
XRD回折装置を用いて、上記1-4.にて得られた膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Ga2O3であった。
【0065】
2.n+型半導体層の形成
2-1.成膜装置
上記1-1で用いた成膜装置と同じものを用いた。なお、基板10として、上記1-4で得られた積層体を用いて、n-型半導体層上にn+型半導体層を積層した。
【0066】
2-2.原料溶液の作製
0.1M臭化ガリウム水溶液に臭化スズを混合し、ガリウムに対するスズの原子比が1:0.08となるように水溶液を調整し、この際、臭化水素酸を体積比で10%を含有させ、これを原料溶液とした。
【0067】
2-3.成膜準備
上記2-2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、バッファ層付きサファイア基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて成膜室7内の温度を450℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a、3bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2a、2bからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を2.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0068】
2-4.結晶性酸化物半導体膜の形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に導入され、大気圧下、450℃にて、成膜室7内でミストが熱反応して、基板10上に膜が形成された。なお、膜厚は約2.9μmであり、成膜時間は120分間であった。
【0069】
2-5.評価
XRD回折装置を用いて、上記2-4.にて得られた膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Ga2O3であった。
【0070】
3.オーミック電極の形成
上記2-4.で得られた積層体のn+型半導体層上に、スパッタにより、Ti膜(厚さ70nm)及びAu膜(厚さ30nm)をそれぞれ形成し、オーミック電極とした。
【0071】
4.基板除去
上記3.で得られた積層体のオーミック電極上に、仮ウエハーを一時的に接合し、ついで、グラインダーおよびCMP装置を用いて、基板10を研磨し、上記サファイア基板と上記バッファ層とを除去した。
【0072】
5.ショットキー電極の形成
上記4.で得られた積層体のn-型半導体層上に、EB蒸着により、Cr膜(厚さ50nm)およびAl膜(厚さ5000nm)をそれぞれ形成し、ショットキー電極(直径300μm)とした。その後、表面積を1mm角にダイシングし、ついで、TO220にパッケージングし、実装済みのSBDを得た。
【0073】
6.半導体特性の評価
(スイッチング特性評価)
上記5.で得られたSBDのスイッチング特性を評価した。結果を
図11に示す。また、SiCを半導体として用いた場合と、Siを半導体として用いた場合のスイッチング特性もあわせて
図11に示す。
図11から明らかなとおり、本発明品は、他のものに比べ、波形が良好であり、スイッチング特性に優れていることがわかる。
【0074】
(熱抵抗特性評価)
上記5.で得られたSBDにつき、熱抵抗測定を実施した。その結果、本発明品のRjCは13.9℃/Wであり、SiCを半導体として用いたもの(RjC=12.5℃/W)と同等以上の性能であった。また、単位面積の熱抵抗を考慮すると、SiCを半導体として用いたものに比べ、チップサイズが6割程度の小さいもので同等の性能を発揮できることがわかった。
【0075】
(キャパシタンス測定)
上記5.で得られたSBDにつき、CV測定(1MHz、50mV)を実施した。その結果、0Vバイアスで130pFであった。このことから、SiCを半導体として用いたものよりもキャパシタンスが小さいので、本発明品はスイッチング特性が良好であることがわかる。
【0076】
(熱抵抗算出評価)
上記5.で得られたSBDにつき、パッケージ(エポキシ)部分の熱抵抗を理論的に概算したところ、15.6(K/W)程度と評価された。そして、半導体層にβ-Ga2O3を用いた場合(比較例2)やSiCを用いた場合(比較例3)と、本発明の場合(実施例4)について半導体層の熱抵抗を理論的に概算したところ。比較例2については1.5(K/W)以上となるが、比較例3と実施例4については1.5(K/W)未満となり、パッケージ部分の熱抵抗より十分小さいことがわかった。結果を表1に示す。表1から明らかなとおり、本発明品は、比較例品に比べ半導体層の表面積が小さくても、パッケージ部分より十分小さい熱抵抗を示しており、半導体装置の小型化ができることがわかる。
【0077】
【0078】
(実施例5)
ショットキー電極を直径300μmのものに代えて直径500μmのものを用いたこと以外、実施例4と同様にして、表面積が1mm角のSBDを得た。得られたSBDのスイッチング特性を評価したところ、実施例4と同様の波形が確認され、良好なスイッチング特性であることがわかった。
【0079】
(実施例6)
1.n+型半導体層の形成
1-1.成膜装置
図5を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置1を説明する。ミストCVD装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排出する排気口11とを備えている。なお、ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
【0080】
1-2.原料溶液の作製
0.1M臭化ガリウム水溶液に臭化スズを混合し、ガリウムに対するスズの原子比が1:0.08となるように水溶液を調整し、この際、臭化重水素酸を体積比で10%を含有させ、これを原料溶液とした。
【0081】
1-3.成膜準備
上記1-2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、サファイア基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて成膜室7内の温度を525℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a、3bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2a、2bからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0082】
1-4.結晶性酸化物半導体膜の形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に導入され、大気圧下、525℃にて、成膜室7内でミストが熱反応して、基板10上に膜が形成された。なお、膜厚は0.5μmであり、成膜時間は20分間であった。
【0083】
1-5.評価
XRD回折装置を用いて、上記1-4.にて得られた膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Ga2O3であった。
【0084】
2.n-型半導体層の形成
2-1.成膜装置
図6を用いて、実施例で用いたミストCVD装置19を説明する。ミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0085】
2-2.原料溶液の作製
0.1M臭化ガリウム水溶液に臭化重水素酸を体積比で20%を含有させ、これを原料溶液とした。
【0086】
2-3.成膜準備
上記2-2.で得られた原料溶液24aをミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、サファイア基板から剥離したn+型半導体膜をサセプタ21上に設置し、ヒーター28を作動させて成膜室27内の温度を510℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを成膜室27内に供給し、成膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして酸素を用いた。
【0087】
2-4.半導体膜形成
次に、超音波振動子26を2.4MHzで振動させ、その振動を、水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを霧化させてミストを生成した。このミストが、キャリアガスによって成膜室27内に導入され、大気圧下、510℃にて、成膜室27内でミストが反応して、基板20上に半導体膜が形成された。なお、膜厚は0.4μmであり、成膜時間は20分間であった。
【0088】
2-5.評価
XRD回折装置を用いて、上記2-4.にて得られた膜の相の同定を行ったところ、得られた膜はα-Ga2O3であった。
【0089】
3.ショットキー電極の形成
n-型半導体層上に、Pt層、Ti層およびAu層をそれぞれ電子ビーム蒸着にて積層した。なお、Pt層の厚さは10nmであり、Ti層の厚さは4nmであり、Au層の厚さは175nmであった。
【0090】
4.オーミック電極の形成
n+型半導体層上に、Ti層およびAu層をそれぞれ電子ビーム蒸着にて積層した。なお、Ti層の厚さは35nmであり、Au層の厚さは175nmであった。
【0091】
5.評価
以上のようにして表面積が1mm角の半導体装置を得て、得られた半導体装置につき、CV測定を実施した。結果を
図15に示す。測定値から算出された過剰ドナー濃度(ドナー濃度とアクセプタ濃度の差)は、3×10
17/cm
3であった。また、順方向JV測定を実施した。結果を
図16に示す。立ち上がり電圧は1.5Vであり、また、オン抵抗(微分抵抗)を調べたところ、0.1mΩcm
2であり、非常に低い値であった。また。逆方向JV測定も実施し、その結果を
図17に示す。
図17から明らかなように、531Vまで絶縁破壊が発生しなかった。上記にて得られた過剰ドナー濃度と絶縁破壊電圧から半導体膜の絶縁破壊電界は、11.0MV/cmと算出された。これらの結果から、実施例1の半導体装置が半導体特性およびショットキー特性に優れていることがわかる。
【0092】
(実施例7)
n‐型半導体層において、成膜時間を120分間としたこと以外は、実施例6と同様にして表面積が1mm角の半導体装置を得た。なお、n‐型半導体層の厚さは3.6μmであった。得られた半導体装置につき、実施例6と同様にして、CV測定を実施したところ、過剰ドナー濃度は4~5×10
17/cm
3と算出された。参考までに、算出された過剰ドナー濃度の深さ方向分布を
図18に示す。また、順方向JV測定を実施した。結果を
図16に示す。オン抵抗は0.4mΩcm
2であった。また、逆方向JV測定の結果については、
図19に示す。
図19から明らかなように、855Vまで絶縁破壊しなかった。また、実施例6と同様にして、半導体膜の絶縁破壊電界を評価したところ、11.1MV/cm以上と算出された。
【0093】
以上のとおり、本発明の半導体装置は、半導体特性およびショットキー特性に優れていることがわかる。
本発明の半導体装置は、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材などあらゆる分野に用いることができるが、とりわけ、パワーデバイスに有用である。