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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137336
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20220914BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20220914BHJP
   F16B 2/24 20060101ALI20220914BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B60K15/04 D
F16B2/22 C
F16B2/24 B
F16L3/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036815
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智
(72)【発明者】
【氏名】北村 洋輔
【テーマコード(参考)】
3D038
3H023
3J022
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CA18
3D038CA19
3D038CA20
3D038CA21
3D038CA22
3D038CA37
3D038CB01
3D038CC03
3D038CC14
3D038CD12
3H023AA05
3H023AB01
3H023AC35
3H023AD02
3J022DA30
3J022EA33
3J022EA42
3J022EC17
3J022ED29
3J022FA01
3J022FA05
3J022HA10
3J022HB06
(57)【要約】
【課題】車両と保持装置との締結が外れた場合に締結部材による管状体の損傷の発生を抑制する。
【解決手段】車両に締結して用いられ、管状体(10、20)を保持する保持装置(100)は、管状体を管状体の周方向に保持する平面視円弧状または環状の保持部(110)と、車両に取り付けられた締結部材(60)により車両に締結される被締結部(140)と、脆弱部(C1)を有し、保持部(110)と被締結部(140)とを連結する連結部(150)と、を備える。脆弱部(C1)は、保持部(110)の軸方向に沿った剛性が保持部(110)の径方向に沿った剛性よりも低く構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に締結して用いられ、管状体を保持する保持装置であって、
前記管状体を前記管状体の周方向に保持する平面視円弧状または環状の保持部と、
前記車両に取り付けられた締結部材により前記車両に締結される被締結部と、
脆弱部を有し、前記保持部と前記被締結部とを連結する連結部と、
を備え、
前記脆弱部は、前記保持部の軸方向に沿った剛性が前記保持部の径方向に沿った剛性よりも低く構成されている、保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記被締結部は、前記締結部材を収容する筐体部と、前記筐体部内に配置されて前記締結部材と接続する接続部と、を有する、保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、
前記被締結部は、前記脆弱部側の面に補強部を有する、保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記脆弱部は、2つのスリットに挟まれた薄肉部を含む、保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に締結して用いられ管状体を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における給油管等の管状体を保持するために、種々の保持装置が提案されている。例えば、特許文献1には、屈曲した平板状の保持装置であって、一端がボルトにより車両(リアサイドメンバ)に締結され、他端において給油管を保持する保持装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-121661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の保持装置では、車両の衝突が発生した際に衝突エネルギーが大きい場合には、車両と保持装置との締結が外れ、ボルトが剥き出しとなるおそれがある。そして、このような場合には、管状体も保持装置から外れて揺動し、剥き出しとなったボルトに接触して損傷するおそれがある。このような問題は、給油管に限らず、ブリーザパイプや、冷却媒体や作動油の供給または排出用の管など、車両に搭載される任意の種類の管状体において共通する。また、締結部材が特許文献1のボルトに限らず、スタッドボルトなど締結用の任意の種類の部材を用いる構成においても共通する。そこで、車両と保持装置との締結が外れた場合に締結部材による管状体の損傷を抑制可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、車両に締結して用いられ、管状体を保持する保持装置が提供される。この保持装置は、前記管状体を前記管状体の周方向に保持する平面視円弧状または環状の保持部と、前記車両に取り付けられた締結部材により締結される被締結部と、脆弱部を有し、前記保持部と前記被締結部とを連結する連結部と、を備えている。前記脆弱部は、前記保持部の軸方向に沿った剛性が前記保持部の径方向に沿った剛性よりも低く構成されている。
【0007】
この形態の接続構造体によれば、連結部に脆弱部が設けられており、かかる脆弱部の軸方向に沿った剛性が保持部の径方向に沿った剛性よりも低く形成されているので、保持装置に対して軸方向に衝撃(応力)が入力された際に、脆弱部を積極的に破損させることができる。このため、脆弱部の破損により応力を吸収して被締結部の損傷を抑制でき、これにより締結部材の露出を抑制できる。したがって、車両と保持装置との締結が外れた場合に締結部材が管状体に接触することを抑制でき、締結部材による管状体の損傷の発生を抑制できる。加えて、脆弱部の径方向に沿った剛性は、軸方向に沿った剛性よりも高いので、保持部に管状体を取り付ける際の応力や、車両の揺れに伴う応力など、平常時に想定される径方向の応力が保持装置に入力された場合に脆弱部が損傷してしまうことを抑制できる。
【0008】
本開示は、接続構造体以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、保持装置を備えた燃料供給装置や、管状体の保持方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態としての保持装置を適用した燃料供給装置を示す概略構成図である。
図2】燃料供給装置における保持装置の近傍の構成を拡大して示す外観斜視図である。
図3】保持装置の詳細構成を示す斜視図である。
図4】保持装置の詳細構成を示す斜視図である。
図5】保持装置の詳細構成を示す上面図である。
図6】保持装置の詳細構成を示す正面図である。
図7】保持装置の詳細構成を示す側面図である。
図8】保持装置の模式断面図である。
図9】保持装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.実施形態:
図1は、本開示の一実施形態としての保持装置100を適用した燃料供給装置200を示す概略構成図である。図2は、燃料供給装置200における保持装置100の近傍の構成を拡大して示す外観斜視図である。燃料供給装置200は、車両に搭載され、自身に挿入された図示しない燃料ガンから吐出される燃料を、図示しない燃料タンクへと供給する。
【0011】
なお、図2には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が表されている。本実施形態では、XY平面が水平面と平行となるように、また、Z軸が鉛直方向となるように燃料供給装置200は車両に取り付けられる。本実施形態において「X軸方向」とは、+X方向および-X方向の総称である。同様に、「Y軸方向」とは+Y方向および-Y方向の総称であり、「Z軸方向」とは+Z方向および-Z方向の総称である。+X方向は、車両後方から前方に向かう方向に一致する。+Z方向は鉛直上方に相当する。図2におけるX軸、Y軸およびZ軸は、他の図面におけるX軸、Y軸およびZ軸に対応する。
【0012】
図1に示すように、燃料供給装置200は燃料パイプ10、第1ブリーザパイプ20、第2ブリーザパイプ30、フィラーネック40、タンク取付部50、および保持装置100を備える。燃料パイプ10は、樹脂製の管状体であり、フィラーネック40から流入する燃料を、燃料タンクへと導く。2つのブリーザパイプ20、30は、いずれも燃料パイプ10と同様に樹脂製の管状体であり、タンク内の燃料蒸気をフィラーネック40まで戻してタンクに供給される燃料として再利用するために用いられる。本実施形態において、燃料パイプ10、第1ブリーザパイプ20および第2ブリーザパイプ30は、ポリエチレン(PE)により形成されている。なお、燃料パイプ10、第1ブリーザパイプ20および第2ブリーザパイプ30は、ポリエチレンに代えて、他の種類の樹脂や、金属により構成されてもよい。
【0013】
フィラーネック40は、筒状の外観形状を有し、燃料パイプ10の一端に接続されている。フィラーネック40において、燃料パイプ10に接続されている端部とは反対側の端部には、開口41が形成されており、かかる開口41に給油ガンが挿入される。タンク取付部50は、燃料パイプ10の一端をタンクに連通させる。タンク取付部50の端面は、図示しない燃料タンクに溶着されている。図1および図2に示すように、保持装置100は、燃料パイプ10および第1ブリーザパイプ20を保持する。保持装置100は、図示しない締結部材により車両に固定されている。これにより、燃料パイプ10および第1ブリーザパイプ20は、保持装置100を介して車両に固定される。
【0014】
図3は、保持装置100の詳細構成を示す斜視図である。図4は、保持装置100の詳細構成を示す斜視図である。図5は、保持装置100の詳細構成を示す上面図である。図6は、保持装置100の詳細構成を示す正面図である。図7は、保持装置100の詳細構成を示す側面図である。
【0015】
保持装置100は、第1保持部110と、第2保持部120と、第3保持部130と、被締結部140と、連結部150と、補強部160とを備え、これらが一体形成された構成を備える。本実施形態において、保持装置100は、ポリアセタール(POM)により形成されている。なお、ポリアセタールに限らず、ポリカーボネートやポリアミド等の他の種類の樹脂や、金属により形成されてもよい。
【0016】
図2に示すように、第1保持部110は、燃料パイプ10における燃料タンク側の一部分を周方向に保持する。第1保持部110は、半円弧状の平面視(正面視)形状を有する。図3に示すように、第1保持部110は円弧板部111を有する。図2に示すように、円弧板部111は、燃料パイプ10における燃料タンク側の一部分の周方向のうちの上方側の一部を除く他の全ての部分を覆う。本実施形態では、第1保持部110の軸方向は、X軸方向に一致する。
【0017】
図2に示すように、第2保持部120は、第1ブリーザパイプ20における燃料タンク側の一部分を周方向に保持する。第2保持部120は、半円弧状の平面視(正面視)形状を有し、第1ブリーザパイプ20における燃料タンク側の一部分の周方向のうちの上方側の一部を除く他の全ての部分を覆う。本実施形態では、第2保持部120の軸方向は、X軸方向に一致する。
【0018】
図2、4~7に示すように、第3保持部130は、本実施形態では、予備の保持部として設けられている。例えば、他の種類車両に保持装置100が用いられる場合、かかる車両に搭載されている燃料パイプおよびブリーザパイプとは異なる他の管状体を保持するのに用いられる。第3保持部130は、第1保持部110および第2保持部120と同様に、半円弧状の平面視(正面視)形状を有する。
【0019】
被締結部140は、車両に取り付けられている締結部材により締結される。本実施形態において、かかる締結部は、車体、例えば、サイドメンバやクロスメンバに固定されているスタッドボルトである。被締結部140は、接続部141と、筐体部142とを備える。
【0020】
接続部141は、スタッドボルトを囲むように配置され、それぞれスタッドボルトの外周面の螺合溝と係合する4つの爪部から成る。筐体部142は、本実施形態では、中空の立方体に近似する外観形状を有する。筐体部142の鉛直上方の壁には、平面視略円形状の第1開口h1が形成されている。図5に示すように、鉛直上方から見て、第1開口h1からは4つの爪部の先端部が露呈している。第1開口h1には、鉛直上方からスタッドボルトが挿入され、スタッドボルトに4つの爪部が係合することにより、被締結部140は、締結部であるスタッドボルトを介して車両に締結される。図3および図4に示すように、被締結部140における+X方向(車両前方)の端面S1には、第2開口h2が形成されている。これにより、保持装置100の軽量化が図られている。図5に示すように、被締結部140の平面視(上面視)形状は、長方形であり、長辺がX軸方向と平行となり、短辺がY軸方向と平行となるように、被締結部140は配置されている。そして、第1保持部110、第2保持部120、および第3保持部130は、後述の連結部150を介して被締結部140における-X方向の端部に接続されている。このため、図5に示すように、被締結部140は、3つの保持部110、120、130に対して+X方向に突出している。そして、Z軸方向に見てスタッドボルトと接続部141との係合(締結)部分は、3つの保持部110、120、130と重複しない位置に位置している。筐体部142の上面S3には、第4開口h4が形成されている。かかる第4開口h4は、第1開口h1よりも-X方向、換言すると、Z軸方向に見て締結部材と接続部141とが係合する部位よりも連結部150に近い側に位置している。第4開口h4は、長手方向がY軸方向と平行し、角がR形状の略長方形の平面視形状を有する。第4開口h4は、車両の衝突時に連結部150を介して被締結部140に応力が入力された場合に、第4開口h4の近傍の部位を破損させて衝撃を吸収することにより、スタッドボルトと接続部141との係合が解除されないようにするために設けられている。
【0021】
図3図7に示すように、連結部150は、3つの保持部110、120、130と、被締結部140とを連結する。連結部150は、第1保持部110および第3保持部130に連なっている。連結部150は、Z軸方向を長手方向する形状を有する。連結部150の+X方向の面および-X方向の面には、複数の肉盗みと、肉盗み同士を区画するリブとが形成されている。連結部150の+Z方向の端部は、被締結部140の-X方向且つ-Z方向の端部に連続している。また、連結部150の-Y方向の端部は第1保持部110に連続している。したがって、上述した第1保持部110の円弧板部111における+Y方向側の一部は、連結部150の-Y方向側の一部を兼ねている。
【0022】
連結部150は、脆弱部C1を備える。脆弱部C1は、連結部150における他の部位よりも剛性が低い。本実施形態において脆弱部C1は、図3、4および6に示す一対のスリットSL1と、図4、6、7に示す一対のスリットSL2と、図6に示す第3開口h3とにより挟まれた薄肉部により構成されている。図3に示すように、一対のスリットSL1は、円弧板部111における+Y方向側(連結部150側)且つ+Z方向側(上方側)において、互いに所定の距離だけ開けてX軸方向に並んで形成されている。これにより、一対のスリットSL1に挟まれた部分は薄肉に形成されている。図6および7に示すように、一対のスリットSL2は、連結部150の+Y方向の端部に該当する板部W1における+Z方向側(上方側)において、互いに所定の距離だけ開けてX軸方向に並んで形成されている。これにより、図7に示すように、一対のスリットSL2に挟まれた部分は薄肉に形成されている。図6に示すように、第3開口h3は、連結部150における+Z方向側(上方側)の肉盗み部において厚さ方向(X軸方向)を貫く貫通孔として形成されている。第3開口h3は、Y軸方向に対して若干傾斜した方向を長手方向とし、角がR形状の略長方形の平面視形状を有する。したがって、第3開口h3に対して略+Y方向側に隣接する部分、および略-Y方向側に隣接する部分は薄肉に形成されている。
【0023】
図6に示すように、X軸方向に見て、一対のスリットSL1、一対のスリットSL2、及び第3開口h3は、仮想直線上に並ぶように配置されている。そして、かかる仮想直線は、第1保持部110の中心軸、すなわち、第1保持部110に保持される保持装置100の中心軸を通る。言い換えると、一対のスリットSL1、一対のスリットSL2、及び第3開口h3は、X軸方向に見て第1保持部110の径方向に並んで配置されている。
【0024】
図3図6に示すように、連結部150は、円弧板部111の+Y方向且つ+Z方向側の周方向端部と、被締結部140とを接続する接続壁部151を備える。接続壁部151の-Y方向且つ-Z方向側の部分は、円弧板部111のうちの一対のスリットSL1よりも上方側の上端部112に接続されている。他方、接続壁部151の+Y方向且つ+Z方向端部は、被締結部140の上面S3における-X方向且つ-Y方向端部に接続されている。接続壁部151の幅d1、すなわち、X軸方向に沿った寸法は、円弧板部111の上端部112における幅(X軸方向に沿った寸法)よりも小さく構成されている。かかる構成により、車両の衝突が発生した際に、仮に脆弱部C1が破損せずに、燃料パイプ10を介して入力される衝突時の衝撃が上端部112に伝わったとしても、接続壁部151の幅d1が狭いために、かかる衝撃が被締結部140に伝わることを抑制できる。したがって、被締結部140が衝撃により損傷することを抑制できる。
【0025】
図4に示すように、補強部160は、筐体部142の底面S4に配置されている。すなわち、補強部160は、被締結部140において脆弱部C1側の面である底面S4に形成されている。補強部160は、板状の外観形状を有し、厚さ方向がZ軸方向と一致するように配置されている。補強部160の存在によって筐体部142の底面の剛性は高められている。これにより、車両の衝突時に被締結部140に応力が入力した場合であっても筐体部142が損傷することを抑制できると共に、相対的に脆弱部C1をより損傷し易くできる。
【0026】
図8は、図6に示すVIII-VIII断面における保持装置100の模式断面図である。図8では、締結部材であるスタッドボルト60を破線で表している。VIII-VIII断面は、スタッドボルト60および脆弱部C1を通る断面(以下、「脆弱部断面」と呼ぶ)である。図8に示すように、脆弱部C1は、第1部分c11と、第2部分c12とから成る。これら2つの部分c11、c12は、いずれも平面視がT字状の外観形状を有する。2つの部分c11、c12において、第1保持部110の軸方向に沿った方向、すなわちX軸方向に隣接する部分には、それぞれ高さ(Z軸方向の位置)が異なる部位154が存在する。しかし、これらの部位154は、いずれも一端は部分c11または第2部分c12に連続しているものの、他端は開放されている。他方、2つの部分c11、c12において、第1保持部110の径方向に沿った方向、すなわち、図8ではY軸方向に隣接する部分には、それぞれ高さ(Z軸方向の位置)が異なる部位155が存在する。かかる部位155は、図8では、Y軸方向を長手方向とする略矩形の平面視形状を有する。部位155において、一端は第1部分c11に連続し、他端は第2部分c12に連続しており、端部が開放されてはいない。これらのことから、2つの部分c11、c12(脆弱部C1)は、保持部110の軸方向に沿った剛性が保持部110の径方向に沿った剛性よりも低く形成されていることが理解できる。
【0027】
ここで、脆弱部断面の断面係数は、スリットSL1、スリットSL2、および第3開口h3の存在によって断面積が小さく構成されていることにより、これらのスリットL1、L2および第3開口hが形成されていない構成の断面係数に比べて小さくなるように構成されている。そして、スタッドボルト60の中心60cから第1部分c11および第2部分c12までのX軸方向に沿った距離La1と、中心60cから第1部分c11および第2部分c12までのY軸に沿った距離Lb1とがいずれも比較的大きいため、車両の衝突時において、スタッドボルト60を中心とした比較的大きなモーメントが第1部分c11および第2部分c12に生じることとなる。これらのことから、第1部分c11および第2部分c12は、車両の衝突時に損傷し易い。
【0028】
図9は、図5に示すIX-IX断面における保持装置100の模式断面図である。図9では、締結部材であるスタッドボルト60を実線で表している。IX-IX断面は、スタッドボルト60と接続部141とを通る接続(係合)部分の断面(以下、「接続部断面」と呼ぶ)である。図9に示すように、被締結部140において、端面S1を含む+X方向の端部には、X軸方向に厚みが大きな厚肉部145が形成されている。厚肉部145の断面積は比較的大きい。また、厚肉部145の中心と、スタッドボルト60の中心との間のX軸方向の距離La2は、図8に示す距離La1よりも小さい。このため、厚肉部145には、車両の衝突時に比較的小さなモーメントが生じることとなる。これらのことから、厚肉部145は、車両の衝突時に損傷し難い。上述のとおり、本実施形態では、脆弱部断面の断面係数は、接続部断面の断面係数よりも小さくなるように構成されている。すなわち、脆弱部断面は、接続断面に比べてより応力集中が起こることとなる。このため、脆弱部C1を他の部位に比べて損傷し易くできる。本実施形態において、接続部断面の断面係数を基準とする脆弱部断面の断面係数の比率は、0.5以上0.8以下である。かかる比率が0.5未満であると、脆弱部が過度に破損し易くなり、例えば、保持装置100を第1保持部110に保持させようとする際に入力される応力によって保持装置100が損傷してしまうおそれがあり、組み付け性、保守性の低下を招く。他方、かかる比率が0.8よりも大きいと、脆弱部C1への応力集中がなされず、車両の衝突時に脆弱部C1が破損しないおそれがある。したがって、本実施形態では、脆弱部断面の断面係数を基準とする接続部断面の断面係数の比率は、0.5以上0.8以下に設定されている。
【0029】
以上説明した本実施形態の保持装置100によれば、連結部150に脆弱部C1が設けられており、かかる脆弱部C1の軸方向(保持部110の軸方向)に沿った剛性が径方向(保持部110の径方向)に沿った剛性よりも低く形成されているので、保持装置100に対して軸方向に衝撃(応力)が入力された際に、脆弱部C1を積極的に破損させることができる。このため、脆弱部C1の破損により応力を吸収して被締結部140の損傷を抑制でき、これにより締結部材60の露出を抑制できる。したがって、車両と保持装置100との締結が外れた場合に締結部材60が燃料パイプ10や第1ブリーザパイプ20に接触することを抑制でき、締結部材60による燃料パイプ10や第1ブリーザパイプ20の損傷を抑制できる。
【0030】
また、被締結部140は、締結部材60を収容する筐体部142を有するので、車両と保持装置100との締結が外れた場合に締結部材60が燃料パイプ10や第1ブリーザパイプ20に接触することをより抑制できる。
【0031】
また、被締結部140は、脆弱部C1側の面(底面S4)に補強部160を有するので、被締結部140の剛性を高めて損傷することを抑制し、また、相対的に脆弱部C1の剛性を低くして破損し易くできる。
【0032】
また、脆弱部C1は、2つのスリットSL1と第3開口h3とで挟まれた薄肉部、および2つのスリットSL2と第3開口h3とで挟まれた薄肉部を含むので、脆弱部を簡易に形成できる。
【0033】
また、脆弱部断面の断面係数を基準とする接続部断面の断面係数の比率を、0.5以上0.8以下となるように、脆弱部C1の形状や位置、また、筐体部142(厚肉部145)の形状等を調整しているので、脆弱部C1が過度に損傷し易くなることや、脆弱部C1が損傷し難くなることを抑制できる。
【0034】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、被締結部140は、筐体部142を備えていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、筐体部142に代えて、スタッドボルト60の近傍に位置する1以上の壁状の部材を備える構成であってもよい。かかる構成においても、壁状の部材により、スタッドボルト60が少なくとも一方向において燃料パイプ10および第1ブリーザパイプ20に接触することが抑制できる。
【0035】
(B2)上記実施形態において、補強部160を省略してもよい。また、一対のスリットSL1、一対のスリットSL2、および第3開口h3のうちの一部を省略してもよい。また、第4開口h4を省略してもよい。また、第4開口h4と同様な開口を筐体部142に追加してもよい。例えば、筐体部142における-Y方向の面において、X軸方向の位置が第4開口h4と同じである開口であって、長手方向がZ軸方向と平行となる開口を設けるようにしてもよい。このような構成により、追加した開口および第4開口h4により位置決めされる周方向に沿った位置にて筐体部142を破損させることができる。これにより、車両の衝突時の応力が仮に筐体部142に入力されるような場合であっても、スタッドボルト60と接続部141との係合部分が損傷することを抑制できる。
【0036】
(B3)上記実施形態において、脆弱部C1は、一対のスリットSL1と第3開口h3とで挟まれた第1部分c11と、一対のスリットSL2と第3開口h3とで挟まれた第2部分c12とで構成されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、スリットSL1、SL2に相当する部分の厚さを小さく構成してスリットを設けないようにしてもよい。また、スリットSL1、SL2に相当する部分に、多数の貫通孔を設けてかかる部位の剛性を低減させるようにしてもよい。
【0037】
(B4)上記実施形態において、第1保持部110は、平面視円弧状の形状を有していたが、円弧状に代えて環状の平面視形状を有していてもよい。
【0038】
(B5)上記実施形態において、保持装置100は、燃料パイプ10および第1ブリーザパイプ20を保持していたが、これら2つのパイプのうちの少なくとも一方に代えて、第2ブリーザパイプ30を保持するように構成してもよい。また、保持装置100は、燃料パイプ10、第1ブリーザパイプ20、および第2ブリーザパイプ30のうちの少なくとも1つに代えて、他の任意の種類の管状体を保持するように構成してもよい。例えば、エンジンの冷却媒体を流通させるための管や、エンジンオイルを流通させるための管など、任意の種類の管状体を保持するように構成してもよい。
【0039】
(B6)上記実施形態において、締結部材としてスタッドボルトが用いられていたが、スタッドボルトに代えて、被締結部140を締結可能な他の任意の締結部材または締結構造を用いてもよい。
【0040】
本開示は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…燃料パイプ、20…第1ブリーザパイプ、30…第2ブリーザパイプ、40…フィラーネック、50…タンク取付部、60…スタッドボルト、60c…中心、100…保持装置、110…第1保持部、111…円弧板部、112…上端部、120…第2保持部、130…第3保持部、140…被締結部、141…接続部、142…筐体部、145…厚肉部、150…連結部、151…接続壁部、154…部位、155…部位、160…補強部、200…燃料供給装置、C1…脆弱部、La1…距離、La2…距離、S1…端面、S3…上面、S4…底面、SL1…スリット、SL2…スリット、W1…板部、c11…第1部分、c12…第2部分、cc2…中心、h1…第1開口、h2…第2開口、h3…第3開口、h4…第4開口
図1
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