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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137337
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/18 20060101AFI20220914BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01L25/04 Z
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036816
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】河崎 一茂
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正幸
(72)【発明者】
【氏名】向田 秀子
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109DA07
4M109EC06
(57)【要約】
【課題】本発明の実施形態は、安定性が向上した半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、第1面と第1面とは反対側に第2面を有する配線基板と、配線基板の第1面上に第1半導体素子と、配線基板の第1面上に第2半導体素子と、少なくとも第2半導体素子を封止する第1封止材と、を有し、第1半導体素子と第2半導体の間の第1封止材にはスリットが形成され、第1半導体素子上の第1封止材の厚さをt1とし、第2半導体素子上の第1封止材の厚さをt2とするとき、t1とt2は、0≦t1<t2の関係を満たす。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面とは反対側に第2面を有する配線基板と、
前記配線基板の第1面上に第1半導体素子と、
前記配線基板の第1面上に第2半導体素子と、
少なくとも前記第2半導体素子を封止する第1封止材と、を有し、
前記第1半導体素子と前記第2半導体の間の前記第1封止材にはスリットが形成され、
前記第1半導体素子上の前記第1封止材の厚さをt1とし、前記第2半導体素子上の前記第1封止材の厚さをt2とするとき、t1とt2は、0≦t1<t2の関係を満たす半導体装置。
【請求項2】
前記配線基板の面内方向を第1方向とし、
前記第1方向と直交する前記配線基板の面内方向を第2方向とし、
前記第2方向に前記スリットが延在し、
前記第1半導体素子の前記第2方向の長さをL1とし、
前記第2半導体素子の前記第2方向の長さをL2とするとき、
L1<L2を満たす請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記スリットの前記第2方向の長さをL3とするとき、
L1<L3及びL2<L3を満たす請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線基板の面内方向を第1方向とし、
前記第1方向と直交する前記配線基板の面内方向を第2方向とし、
前記第1方向及び前記第2方向と直交する方向を第3方向とし、
前記第1半導体素子の前記第3方向の長さをHとしたとき、
前記スリットの底部の位置は、前記配線基板の前記第1面から0.5×H以下である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記t1とt2は、t1<0.5×t2を満たす請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体素子が前記第2半導体素子側を向く面の面積をS1とし、
前記第2半導体素子が前記第1半導体素子側を向く面の面積をS2とし、
前記スリットが前記第1半導体素子側を向く面の面積をS3とするとき、
S1、S2及びS3は、S1<S3及びS2<S3を満たす請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体素子の側面の一部が前記第1封止材から露出している請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記スリットは、前記第1半導体素子を囲む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1半導体素子は、第2封止材で封止されているコントローラチップであり、
前記第2半導体素子は、半導体メモリチップを含み、
前記半導体メモリチップが前記第1封止材で封止されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを含んだ半導体装置において、発熱によって半導体チップが高温になることがある。温度が高くなると、半導体チップの動作速度を落として半導体チップを保護することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許登録公開第6473310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、安定性が向上した半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、第1面と第1面とは反対側に第2面を有する配線基板と、配線基板の第1面上に第1半導体素子と、配線基板の第1面上に第2半導体素子と、少なくとも第2半導体素子を封止する第1封止材と、を有し、第1半導体素子と第2半導体の間の第1封止材にはスリットが形成され、第1半導体素子上の第1封止材の厚さをt1とし、第2半導体素子上の第1封止材の厚さをt2とするとき、t1とt2は、0≦t1<t2の関係を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図3】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図8】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図10】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図11】第1実施形態に係る半導体装置の断面概念図。
図12】第1実施形態に係るメモリシステムのブロック図。
図13】第2実施形態に係る装置の断面概念図。
図14】第3実施形態に係る半導体パッケージの断面概念図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、複数の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0008】
本明細書では、いくつかの要素に複数の表現の例を付している。なおこれら表現の例はあくまで例示であり、上記要素が他の表現で表現されることを否定するものではない。また、複数の表現が付されていない要素についても、別の表現で表現されてもよい。
【0009】
また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係や各層の厚みの比率などは現実のものと異なることがある。また、図面相互間において互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることもある。また、図面において、一部の符号を省略している。
【0010】
(第1実施形態)
図1図2に半導体装置100の断面概念図を示す。図1は、図2のB-B’線に沿って半導体装置100を切断した断面概念図である。図2は、図1のA-A’線に沿って半導体装置100を切断した断面概念図である。半導体装置100は、より具体的には、NANDフラッシュメモリチップ等の半導体素子を搭載した半導体装置である。半導体装置に搭載される半導体素子は、NANDフラッシュメモリやDRAM等のメモリチップ、CPU等のコントローラチップ等、どのようなものでも構わない。半導体装置100は、半導体メモリチップを有する半導体記憶装置であることが好ましい。
【0011】
図1の半導体装置100は、記憶装置の一例である。半導体装置100は、配線基板40と、第1半導体素子10と、第2半導体素子20と、第3半導体素子30と、第1封止材50とを有する。図1等において、第3半導体素子30を含み、第1半導体素子10を第2半導体素子20と第3半導体素子30で挟む構成であるが、第3半導体素子30を省略した構成を採用することもできる。
【0012】
配線基板40は、第1半導体素子10、第2半導体素子20及び第3半導体素子30の支持基板である。配線基板40はより具体的には、多層の配線基板である。配線基板40は第1面とその反対側の第2面を有する。配線基板40の第1面側に第1半導体素子10、第2半導体素子20及び第3半導体素子30が設けられている。配線基板40の第2面側には略柱状や半球状の電極41が設けられている。配線基板40の第1面には第1半導体素子10、第2半導体素子20及び第3半導体素子30と電気的に接続する図示しない電極(パッド)が設けられている。ここで、X方向(第1方向)及びY方向(第2方向)は配線基板40の第1面内にあり互いに直交する方向である。Z方向(第3方向)はX方向及びY方向と直交する方向である。配線基板40の第2面から第1面に向かう方向を上方向とし、その反対方向を下方向とする。
【0013】
第1半導体素子10は、配線基板40の第1面に設けられている。第1半導体素子10は、Z方向において、第2半導体素子20及び第3半導体素子30よりも高さの高い半導体素子である。第3半導体素子30、第1半導体素子10と第2半導体素子20は、X方向に沿って並んで配置されている。第1半導体素子10は、第2半導体素子20及び第3半導体素子30よりも消費電力が大きく発熱量が大きな半導体素子である。第1半導体素子10は、例えば、第2半導体素子20、第3半導体素子30を制御するコントローラチップである。第1半導体素子10は、例えばフリップチップ接続により配線基板40に接続されている。第1半導体素子10の第1面に向いた面に設けられた電極が、配線基板40の第1面に設けられた電極と電気的に接続している。第1半導体素子10は、ベアチップでもよい。あるいは、第1半導体素子10は第2封止材で封止された半導体パッケージであってもよい。第2封止材は、モールド樹脂であって、絶縁性の樹脂とフィラーを含む。また、第1半導体素子10は、第2半導体素子20及び第3半導体素子30と外部機器との中間にあるインターフェースチップでもよい。
【0014】
第2半導体素子20は、配線基板40の第1面に設けられている。第2半導体素子20は、例えば、データの読み・書き・消去をする1以上の半導体メモリチップを含む。第2半導体素子20は、ベアチップである半導体メモリチップが接着層を間に挟んでZ方向に沿って積層している。これらの半導体メモリチップは第1封止材50で封止されている。半導体メモリチップとしては、不揮発性メモリチップ又は揮発性メモリチップを用いることができる。不揮発性メモリチップとしては、NANDメモリチップ、相変化メモリチップ、抵抗変化メモリチップ、強誘電体メモリチップ、磁気メモリチップ等を用いることができる。揮発性メモリチップとしては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等を用いることができる。第1半導体素子10によって、半導体メモリチップのデータの読み・書き・消去が制御される。
【0015】
半導体装置100では、半導体メモリチップ21Aと半導体メモリチップ21Bが積層している。複数の半導体メモリチップ21A、21Bは、個体差を除き同一回路を有する同一構造の半導体チップであって、例えば、Z方向に沿って積層されている。複数の半導体メモリチップ21A、21Bは、X方向及び/又はY方向にずれながらZ方向に沿って積層していてもよい。半導体メモリチップ21A、21Bは、ボンディングワイヤ23A、23Bを介して配線基板40と電気的に接続している。図1では、半導体メモリチップ21Aと21Bとの間は接続されていないが、別の配線形態として、半導体メモリチップ21Aと21Bとの間を図示しないボンディングワイヤで電気的に接続し、さらに、最下段の半導体メモリチップ21Aが配線基板40とボンディングワイヤで接続してもよい。
【0016】
半導体メモリチップ21Aと配線基板40の間にはダイアタッチフィルム(DAF)等の接着層22Aが設けられていて、配線基板40上に半導体メモリチップ21Aが固定されている。また、半導体メモリチップ21Aと半導体メモリチップ21Bの間にはダイアタッチフィルム22B等の接着層が設けられていて、半導体メモリチップ21A上に半導体メモリチップ21Bが固定されている。
【0017】
第3半導体素子30は、配線基板40の第1面に設けられている。第3半導体素子30は、例えば、データの読み・書き・消去をする1以上の半導体メモリチップを含む。第3半導体素子30は、ベアチップである半導体メモリチップが接着層を間に挟んでZ方向に沿って積層している。これらの半導体メモリチップは第1封止材50で封止されている。半導体メモリチップとしては、不揮発性メモリチップ又は揮発性メモリチップを用いることができる。不揮発性メモリチップとしては、NANDメモリチップ、相変化メモリチップ、抵抗変化メモリチップ、強誘電体メモリチップ、磁気メモリチップ等を用いることができる。揮発性メモリチップとしては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等を用いることができる。第1半導体素子10によって、半導体メモリチップのデータの読み・書き・消去が制御される。
【0018】
半導体装置100では、半導体メモリチップ31Aと半導体メモリチップ31Bが積層している。複数の半導体メモリチップ31A、31Bは、個体差を除き同一回路を有する同一構造の半導体チップであって、例えば、Z方向に沿って積層されている。複数の半導体メモリチップ31A、31Bは、X方向及び/又はY方向にずれながらZ方向に沿って積層していてもよい。半導体メモリチップ31A、31Bは、ボンディングワイヤ33A、33Bを介して配線基板40と電気的に接続している。図1では、半導体メモリチップ31Aと31Bとの間は接続されていないが、別の配線形態として、半導体メモリチップ31Aと31Bとの間を図示しないボンディングワイヤで電気的に接続し、さらに、最下段の半導体メモリチップ31Aが配線基板40とボンディングワイヤで接続してもよい。
【0019】
半導体メモリチップ31Aと配線基板40の間にはダイアタッチフィルム等の接着層32Aが設けられていて、配線基板40上に半導体メモリチップ31Aが固定されている。また、半導体メモリチップ31Aと半導体メモリチップ31Bの間にはダイアタッチフィルム32B等の接着層が設けられていて、半導体メモリチップ31A上に半導体メモリチップ31Bが固定されている。
【0020】
第2半導体素子20と第3半導体素子30は、第1半導体素子10を中心に対象に配置され、個体差を除き同一の回路及び配線を有する半導体であってもよい。第2半導体素子20と第2半導体素子30は、個体差を除き同一回路を有する同一構造を有する半導体メモリチップを有してもよい。第2半導体素子20内の配線と第3半導体素子30内の配線は実質的に同一であってもよい。第2半導体素子20と配線基板40との配線は、第3半導体素子30と配線基板40との配線と実質的に同一であってもよい。
【0021】
第1封止材50は、第2半導体素子20を覆う。第1封止材50は、モールド樹脂であって、絶縁性の樹脂とフィラーを含む。第3半導体素子30が半導体装置100に含まれる場合は、第1封止材50は、第3半導体素子30を覆う。第1封止材50の上面と第1半導体素子10の上面とは略同一面を形成している。第1封止材50を形成後、第1封止材50を研磨、研削することで同一面が得られる。
【0022】
第1半導体素子10と第2半導体素子20の間と第1半導体素子10と第3半導体素子30の間の第1封止材50にはスリット51A、51Bが設けられている。スリット51A、51Bは、Y方向に沿って延在している。スリット51A、51Bは、第1封止材50の配線基板40側とは反対側の面から配線基板40側に向かって設けられている。スリット51A、51Bは、ブレードダイシング、レーザー加工により形成される。また、第1封止材50を形成する際に用いる鋳型にスリット51A、51Bが形成される形状を採用するなどして加工することで形成される。
【0023】
半導体装置100の高性能化に伴い半導体装置100内の素子密度が高まっているため、半導体装置100の発熱による半導体装置100の動作への影響が顕在化しやすくなっている。スリット51A、51Bがない場合、第1半導体素子10が発した熱が第1封止材50を介して第2半導体素子20と第3半導体素子30とに伝わり、第2半導体素子20及び第3半導体素子30の温度が上昇する。第2半導体素子20及び第3半導体素子30の温度が上昇すると、第2半導体素子20及び第3半導体素子30の動作速度の低下や故障の原因になりうる。しかし、スリット51A、51Bによって、第1半導体素子10が発した熱が第1封止材50を介して周辺に伝わることが阻害される。第2半導体素子20と第3半導体素子30とに伝わる熱が少なくなり、第2半導体素子20及び第3半導体素子30の温度上昇を緩和することができる。
【0024】
図2の断面概念図には、Y方向における第1半導体素子10の長さL1、第2半導体素子20の長さ(第3半導体素子30の長さ)L2、スリット51A、51Bの長さL3と半導体装置100の長さ(第1封止材50の長さ)L4が示されている。スリット51A、51Bによる第1半導体素子10と第2半導体素子20(第3半導体素子30)間の熱伝導を低減する観点から、L1<L3及びL2<L3を満たすことが好ましく、1.1×L1<L3、1.1×L2<L3を満たすことがより好ましい、スリット51A、51Bの長さL3が第1半導体素子10の長さL1及び第2半導体素子20(第3半導体素子30)L2よりも短いとスリット51A、51Bによる熱伝導を低減する効果が少なくなる。スリット51A、51Bは長さL3が長くなるほど半導体装置100の機械的強度が低下し易いがスリット51A、51Bの長さL3は、半導体装置100の長さL4以下であればよい。また、Y方向における第1半導体素子10の長さL1、第2半導体素子20の長さ(第3半導体素子30の長さ)L2は、L1<L2を満たすことが好ましい。スリット51A、51Bによる熱伝導の低減をより効果的にする観点から、L1<L3及びL2<L3に加え、L1<L2を満たすことがより好ましい。
【0025】
ここで図3から図11を参照して、スリットについてさらに説明する。
【0026】
図3は、半導体装置101の断面概念図である。半導体装置101は、第1半導体素子10を囲んだスリット51Cが設けられている。スリット51Cの外側には、第2半導体素子20及び第3半導体素子30が配置されている。X方向に沿って、第3半導体素子30、第1半導体素子10、第2半導体素子20が並んでいる。半導体装置101では、第1半導体素子10がスリット51Cで囲まれているため、第1半導体素子10が発した熱がY方向から第2半導体素子20や第3半導体素子30へ伝わり難い。
【0027】
図4図5は、半導体装置102の断面概念図である。図4は、図5のD-D’線に沿って半導体装置102を切断した断面概念図である。図5は、図4のC-C’線に沿って半導体装置102を切断した断面概念図である。半導体装置102において、半導体メモリチップ21A,21Bは、半導体メモリチップ21A、21Bを貫通するシリコン貫通ビア(TSV)24で接続されているためボンディングワイヤ23が省略されている。半導体メモリチップ31A、31Bもシリコン貫通ビア34で接続されている。シリコン貫通ビア24、34は、配線基板40と電気的に接続している。第1半導体素子10を囲んだスリット51Dの内側に第1封止材50が存在しない。そのため、スリット51DのX方向及びY方向に沿った幅をスリット51Cよりも大きくできる。そのため、スリット51Cを用いた場合よりも、第1半導体素子10が発した熱が第2半導体素子20や第3半導体素子30に伝わり難い。
【0028】
図6図7は、半導体装置103の断面概念図である。図6は、図7のF-F’線に沿って半導体装置103を切断した断面概念図である。図7は、図6のE-E’線に沿って半導体装置103を切断した断面概念図である。また、半導体装置103のスリット51E、51FのY方向の長さL3は半導体装置103のY方向の長さL4と同じである。半導体装置103のY方向の側面は、スリット51E、51Fの形状に開口している。半導体装置103は、第1半導体素子10の上面に第1封止材50が設けられている。
【0029】
図6には、第1半導体素子10上の第1封止材50の厚さt1と第2半導体素子20上の第1封止材50の厚さ(第3半導体素子30上の第1封止材50の厚さ)t2を示している。第1半導体素子10の高さは第2半導体素子20より高く、第2半導体素子20は第1封止材50で封止されていることから、t1<t2を満たすことが好ましい。また、第1半導体素子10上に第1封止材50を設けない形態もある。ゆえに、t1は0以上である。従って、t1、t2は、0≦t1<t2の関係を満たすことが好ましい。また、半導体装置103の高さを抑えつつ、第2半導体素子20を保護する観点からt1とt2は、t1<0.5×t2を満たすことが好ましい。第1封止材50を形成する際に用いる鋳型の形状を変えたり、第1封止材50の上面側を研磨して除去する厚さを調整したりして、第1半導体素子10上の第1封止材50の厚さを変えることができる。
【0030】
また、第2半導体素子20の側面には、第1封止材50が設けられているため、スリット51Eの幅w1は、第1半導体素子10と第2半導体素子20との距離よりも狭い。スリット51Eの幅w1が広ければ熱伝導を低減する効果が高まるが、半導体装置100の機械的強度が低下する。また、スリット51Eの幅w1が狭いとスリット51Eの加工が困難になり、また、スリット51Eによる熱伝導の低減効果が少なくなる。設計に応じて、スリット51Eの幅w1を適宜選択する。スリット51Fについても同様である。
【0031】
図8は、半導体装置104の断面概念図である。半導体装置104は、スリット51G、51Hに第1封止材50よりも熱伝導率の低い部材52が埋め込まれている。部材52は、第1封止材50よりも熱伝導率が低いことが好ましい。具体的には部材52の熱伝導率[W/(m・K)]は、第1封止材50の熱伝導率の1/2~1/5であることが好ましい。1/5~1/10がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。部材としては、例えば、フェノール樹脂を用いることができる。部材52は、意図しない電気的導通を防ぐために絶縁体であることが好ましい。部材52は、スリット51G、51Hの上面から下面まで埋め込まれていてもよいし、スリット51G、51Hの少なくとも一部に埋め込まれていてもよい。スリット51G、51Hに部材52が埋め込まれたことで、半導体装置104機械的強度を上げることができる。
【0032】
図9は、半導体装置105の断面概念図である。半導体装置105は、スリット51L、51Mの底部が配線基板40の第1面に位置している。スリット51L、51MのXY方向の形状は、図2におけるスリット51A、52Bと同様である。第1半導体素子10の高さ(Z方向の長さ)をHとするとき、スリット51L、51Mの底部の位置は、配線基板40の第1面から0.5×H以下であることが好ましく、0.2×H以下であることがより好ましい。
【0033】
半導体装置105の第1封止材50の上面は、第1半導体素子10の上面よりも配線基板40側に位置している。そのため、第1半導体素子10の上側の側面の一部が第1封止材50から露出している。鋳型を用いて第1封止材50を成形する際に、半導体装置105と鋳型との間にフィルムを設ける。フィルムに第1半導体素子10の上部が一部食い込むようになり、その食い込んだ部分には第1封止材50が形成されない。その食い込んだ部分が、第1半導体素子10が第1封止材50から露出する部分である。フィルムを用いて第1封止材50を成形すると、第1封止材50の表面が凸凹形状になり易い。凹凸を吸収するサーマルインターフェイスマテリアル(TIM)といった第1封止材50よりも熱伝導率の高い材料を第1封止材50上に設け、さらにヒートシンクを設ける。したがって、第1封止材50の表面に凹凸があっても平坦な面であってもどちらでもよい。
【0034】
図10は、半導体装置106の断面概念図である。半導体装置106では、スリットがY方向に分離している。半導体装置106は、図2のスリット51Aがスリット51Nとスリット51Pに分離しているとしてもよい。図2のスリット51Bがスリット51Qとスリット51Rに分離しているとしてもよい。スリットを分離させることで、第1半導体素子10から第2半導体素子20や第3半導体素子30へ伝熱し易くはなるが、スリット51が分離している部分は第1封止材50が残っているため機械的強度が向上する。半導体装置106においては、図2のスリット51A、51Bを3つ以上に分離させてもよい。あるいは、図3のスリット51CのX方向に沿って延びる部分を分離させてもよい。このように、スリットを分離する形態は、図示した物に限られない。スリットが図10の断面概念図に示すように分離している場合、スリット51NのY方向の長さとスリット51PのY方向の長さの和がスリット51Aの長さL3である。
【0035】
図11は、図2のG-G’線に沿って半導体装置100を切断した断面概念図である。図11では、スリット51B(一点長鎖線)の他にG-G’の面から見た第1半導体素子10(実線)、第2半導体素子20(点線)と第1封止材50(破線)も示している。図11ではスリット51Bの形状は半円状である。スリット51Bの形状は矩形、半円状などの円形の一部形状、配線基板40側の角が丸い矩形などが挙げられる。半円状などの円形の一部形状や配線基板40側の角が丸い矩形は、ブレードの形状に応じて形成される。
【0036】
図11には、第1半導体素子10の面積S1、第2半導体素子20の面積S2とスリット51Bの面積S3を示している。第1半導体素子10の面積S1は、第1半導体素子10が第2半導体素子20側を向く面の面積である。第2半導体素子20の面積S2は、第2半導体素子20が第1半導体素子10側を向く面の面積である。スリット51Bの面積S3は、第1半導体素子10側を向く面の面積である。スリット51Bが第1半導体素子10を囲っている場合もスリット51Bの面積S3は、第1半導体素子10側を向く面の面積(第1半導体素子10の直方体であれば、スリット51Bが第1半導体素子10を向く4面の面積の和)である。スリット51Bによる熱伝導の抑制の観点から、S1、S2、S3は、0.5×S1<S3及び0.5×S2<S3を満たすことが好ましく、0.8×S1<S3及び0.8×S2<S3を満たすことがより好ましく、S1<S3及びS2<S3を満たすことがさらにより好ましい。スリット51Aに関しても同様である。
【0037】
例えば、半導体装置100においてスリット51Aはそのままとし、スリット51Bの変わりに、スリット51Fを用いる等をしてもよい。
このように、半導体装置100~107において、各スリットはどのようにも組み合わせてもよい。
【0038】
図12には、メモリシステム108のブロック図を示す。図12のメモリシステム108は、半導体装置100とホスト60を含む。ホスト60は、CPUやホストインターフェイスなどを含む。ホスト60と第1半導体素子10が接続し、ホスト60からの指示に従って、第1半導体素子10が第2半導体素子20又は第3半導体素子30の半導体メモリチップ21、31に対して読み・書き・消去を行なう。半導体装置100を高速に動作させるなどして第1半導体素子10の温度が上昇しても、実施形態の半導体装置100はスリット51A、51Bを有しているため、第2半導体素子20と第3半導体素子30の温度上昇を抑えることができ、安定して高速動作させることが可能である。半導体装置100に変えて半導体装置101~107を用いても同様の効果を得ることができる。
【0039】
(第2実施形態)
図13に装置200の断面概念図を示す。半導体装置100は、半導体メモリチップを有する半導体記憶装置であることが好ましい。装置200は、複数の半導体装置100、サーマルインターフェイスマテリアル71、伝熱板72及び実装基板73を有する。装置200に用いる半導体装置100の数は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0040】
半導体装置100は、実装基板73に載置されている。装置200がソリッドステートドライブ(SSD)である場合、実装基板73上には、例えば、ホストインターフェイス、SSDコントローラ、DRAMキャッシュなどの図示しない能動素子や受動素子も載置されていてもよい。実装基板73は、例えば、多層基板である。
【0041】
サーマルインターフェイスマテリアル71は、有機樹脂を含む熱伝導率の高い接着剤、グリース、サーマルシリコンパッドや液体金属等からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。サーマルインターフェイスマテリアル71がスリット51A、51Bに少し入り込んでいる。
【0042】
伝熱板72は、装置200の筐体の金属、ヒートスプレッダ、ケースやヒートシンク等の熱伝導率の高い部材である。伝熱板は、サーマルインターフェイスマテリアル71を介して半導体装置100と熱的に接続し、半導体装置100で発した熱を効率良く外部に放熱することができる。半導体装置100において第1半導体素子10が発した熱が第2半導体素子20及び第3半導体素子30に伝わりにくくするスリット51A、51Bが設けられているため、装置200の動作時に、第2半導体素子20と第3半導体素子30の温度上昇を抑えることができ、安定して高速動作させることが可能である。半導体装置100に変えて半導体装置101~107を用いても同様の効果を得ることができる。第1半導体素子10の上面にシリコンがある場合は、シリコンとサーマルインターフェイスマテリアル71が直接接触するので熱を効率よく放熱できる。
【0043】
(第3実施形態)
図14に半導体パッケージ300の断面概念図を示す。図14の半導体パッケージ300は、半導体装置100、サーマルインターフェイスマテリアル71、伝熱板72、実装基板73、電極74、演算装置81及びホストインターフェイス82を有する。半導体パッケージ300は、システムオンチップ(SoC)である。
【0044】
半導体装置100、演算装置81及びホストインターフェイス82は、実装基板73に載置されている。半導体パッケージ300には、図示した以外の受動素子及び能動素子を有していてもよい。
【0045】
演算装置81は、例えば、CPU、GPUやFPGAなどが挙げられる。半導体パッケージ300において、半導体記憶装置である半導体装置100に保存された情報を演算装置81で処理することができる。
【0046】
半導体パッケージ300において、例えば、サーマルスロットリングが機能する程に第2半導体素子20と第3半導体素子30の温度上昇することを抑えることができ、半導体装置100を安定して高速動作させることができる。半導体装置100に変えて半導体装置101~107を用いても同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100~107…半導体装置、10…第1半導体素子、20…第2半導体素子、30…第3半導体素子、40…配線基板、50…第1封止材、51A~51R…スリット、60…ホスト、71…サーマルインターフェイスマテリアル、72…放熱板、73…実装基板、81…演算装置、82…ホストインターフェイス、200…装置、300…半導体パッケージ
図1
図2
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