(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137343
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】枝管接続部材
(51)【国際特許分類】
F16L 41/02 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
F16L41/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036824
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄大
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019BA04
3H019BB02
3H019BB04
3H019BD05
(57)【要約】
【課題】特別な治具等を用いることなく、枝管の取付対象となる本管に対して取付施工可能でありつつ、高さ方向にコンパクトな構成の枝管接続部材を提供することを目的とする。
【解決手段】枝管接続部材10は、枝管5を接続可能な外周部材20と、本管1の内周側に装着される内周部材80と、内周部材80及び外周部材20を連結する線状部材100と、を有し、外周部材20が、外筒部22yと、外筒部22yの軸線方向に移動可能とされた移動部40と、移動部40に対して外筒部22yの径方向外側に外れた位置において回動操作可能な操作部62と、操作部62を回動操作することにより発生する回動力を移動部40に伝達し、移動部40を軸線方向に移動させる動力伝達機構60と、を有し、線状部材100の外周部材20側の連結部が、移動部40に連動して軸線方向に移動可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管に対する枝管の接続に用いられる枝管接続部材であって、
前記本管の外側に配され、前記枝管を接続可能な外周部材と、
前記本管の内部に導入され、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の内周側に装着される内周部材と、
前記内周部材及び前記外周部材を連結する線状部材と、を有し、
前記外周部材が、
軸線方向が前記本管に対して交差するように配される外筒部と、
前記外筒部の軸線方向に移動可能とされた移動部と、
前記移動部に対して前記外筒部の径方向外側に外れた位置において回動操作可能な操作部と、
前記操作部を回動操作することにより発生する回動力を前記移動部に伝達し、前記移動部を軸線方向に移動させる動力伝達機構と、を有し、
前記線状部材の前記外周部材側の連結部が、前記移動部に連動して軸線方向に移動可能であること、を特徴とする枝管接続部材。
【請求項2】
前記外筒部の軸心位置を中心に回動して前記線状部材を巻き付け可能な巻付部を有し、
前記線状部材の前記外周部材側における連結部が、前記巻付部に連結されており、
前記巻付部が、前記移動部と共に軸線方向に移動可能であること、を特徴とする請求項1に記載の枝管接続部材。
【請求項3】
前記移動部が、前記外筒部の軸心周り方向への回動が制限されたものであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の枝管接続部材。
【請求項4】
前記移動部が、前記外筒部の軸心周り方向への回動が制限されたものであり、
前記巻付部が前記移動部に対して回動不能に連結された回動ロック状態、及び前記巻付部が前記移動部に対して回動可能とされた回動フリー状態に切り替え可能な切替機構を有すること、を特徴とする請求項2に記載の枝管接続部材。
【請求項5】
前記外筒部の軸心位置を中心に回動して前記線状部材を巻き付け可能な巻付部と、
前記巻付部に対して前記外筒部の軸心位置を中心とする回動力を作用させることができる巻付回動力作用部を有し、
前記動力伝達機構が、前記巻付回動力作用部よりも前記外筒部の軸心位置から離れた位置において前記移動部に対して回動力を伝達可能であること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の枝管接続部材。
【請求項6】
前記外筒部の軸心位置を中心に回動して前記線状部材を巻き付け可能な巻付部と、
前記巻付部に対して前記外筒部の軸心位置を中心とする回動力を作用させることが可能な巻付回動力作用部を有し、
前記巻付回動力作用部が、前記巻付部に対して径方向外側に突出した突出部を有すること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の枝管接続部材。
【請求項7】
前記突出部に、前記巻付部の回動接線方向に軸体を挿入可能な軸挿入部が設けられていること、を特徴とする請求項6に記載の枝管接続部材。
【請求項8】
前記切替機構が、
前記移動部に設けられた第一被係合部と、
前記巻付部側に設けられた第二被係合部と、
前記第一被係合部及び前記第二被係合部の双方に対して係脱可能な係合体と、
を有し、
前記係合体を前記第一被係合部及び前記第二被係合部の双方に対して係合させることにより、前記回動ロック状態とし、
前記係合体を前記第一被係合部及び前記第二被係合部の少なくとも一方と非係合とすることにより、前記回動フリー状態とすることができること、を特徴とする請求項4に記載の枝管接続部材。
【請求項9】
前記係合体が、前記移動部及び前記巻付部の周面に沿ってスライド移動可能であり、
前記係合体をスライド移動させることにより、前記第一被係合部及び前記第二被係合部に対し、前記係合体を係脱可能であること、を特徴とする請求項8に記載の枝管接続部材。
【請求項10】
前記係合体が、前記第一被係合部に対して係合させた状態において、前記巻付部に対して前記外筒部の軸心位置を中心とする回動力を付与するための巻付回動力作用部として機能すること、を特徴とする請求項8又は9に記載の枝管接続部材。
【請求項11】
前記操作部が、前記移動部に対して外周側において、前記外筒部の軸心位置を中心に回動可能であると共に、前記外筒部に対する軸線方向への移動が規制されたものであり、
前記動力伝達機構が、
前記移動部の外周面に螺旋状に形成された移動部側ネジ部と、前記操作部の内周面に螺旋状に形成された操作部側ネジ部とを螺合させることにより形成され、
前記操作部を回動させることにより、前記移動部を軸線方向に移動可能であること、を特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の枝管接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝管接続部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既設の下水道等の主管(本管)に対して枝管を接続するための枝管接続部材の施工用の治具として、例えば下記特許文献1の分岐管取付用治具のような枝管接続部材が提供されている。
【0003】
上記特許文献1の分岐管取付用治具は、枝管の接続対象となる主管に形成された開口部に対し、主管の内面側に係止可能な内面側係止部材と、主管の外面側から内面側係止部材に接続可能な外面側接続部材とを組付けて、枝管を接続可能な分岐管部を形成するためのものである。特許文献1の分岐管取付用治具は、主管への組み付けに際し、主管の内部において内面側係止部材を仮保持できる分岐管取付治具本体を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術においては、上記特許文献1の分岐管取付用治具のような枝管接続部材が、分岐管の取り付け施工に用いられている。しかしながら、従来技術においては、上述した分岐管取付用治具のような治具を取り揃えたり、このような治具を用いて所定箇所に設置したりするために、相応の手間や時間、労力等を有する。また、従来技術においては、分岐管を取り付ける際に、冶具を取り外さなければ分岐管を接続できないという手間もある。
【0006】
ここで、本発明者らが鋭意検討したところ、地表面から主管までの深さ(主管が埋設されている位置と地表面との距離)に対して枝管接続部材の高さが低いものでなければ、主管に対する枝管接続部材の取り付けに手間を要したり、主管に対して枝管接続部材を取り付けられなかったりするという問題が生じうるとの知見が得られた。かかる知見に基づけば、枝管接続部材の高さを抑制した構成とすることにより、枝管接続部材を用いて主管に対して枝管を接続するために、高さ方向(深さ方向)にスペースを大きく確保出来ない場合であっても、枝管接続部材を用いて枝管を主管に対して接続できるようになると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、特別な治具等を用いることなく、枝管の取付対象となる本管に対して取付施工可能でありつつ、高さ方向にコンパクトな構成の枝管接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の枝管接続部材は、本管に対する枝管の接続に用いられるものであって、前記本管の外側に配され、前記枝管を接続可能な外周部材と、前記本管の内部に導入され、前記本管に穿孔された開口の周辺部において前記本管の内周側に装着される内周部材と、前記内周部材及び外周部材を連結する線状部材と、を有し、前記外周部材が、軸線方向が前記本管に対して交差するように配される外筒部と、前記外筒部の軸線方向に移動可能とされた移動部と、前記移動部に対して前記外筒部の径方向外側に外れた位置において回動操作可能な操作部と、前記操作部を回動操作することにより発生する回動力を前記移動部に伝達し、前記移動部を軸線方向に移動させる動力伝達機構と、を有し、前記線状部材の前記外周部材側の連結部が、前記移動部に連動して軸線方向に移動可能であること、を特徴とするものである。
【0009】
本発明の枝管接続部材は、操作部を回動操作することにより発生する回動力を移動部に伝達し、移動部を軸線方向に移動させる動力伝達機構を備えている。また、本発明の枝管接続部材は、内周部材及び外周部材を連結する線状部材を有し、線状部材の外周部材側の連結部が移動部に連動して軸線方向に移動可能とされている。そのため、本発明の枝管接続部材は、操作部を回動させるのに伴い、移動部と共に線状部材を軸線方向に移動させ、内周部材を外周部材側に引き寄せることができる。そのため、本発明の枝管接続部材は、本管に穿孔された開口から内周部材を本管内に導入し、本管の外周に外周部材を配した状態において、操作部を回動させて移動部を軸線方向に移動させることにより、内周部材を本管の内周面に近接する方向に移動させることができる。これにより、本管に対して内周部材を圧着させ、枝管接続部材を強固に接続できる。従って、本発明によれば、特別な治具等を用いることなく、本管に対して強固に取付施工可能な枝管接続部材を提供することができる。
【0010】
また、本発明の枝管接続部材は、外筒部に対して径方向外側において操作部を回動操作することにより、動力伝達機構を介して移動部に径方向外側から回動力を伝達可能なものとされている。このように、本発明の枝管接続部材は、外筒部の軸線方向(高さ方向)ではなく、外筒部に対して径方向外側の位置に操作部や動力伝達機構が配され、高さ方向にコンパクトな構成とされている。従って、本発明によれば、主管に対して枝管接続部材を取り付けるために、高さ方向(深さ方向)にスペースを大きく確保出来ない場合等であっても、枝管を主管に対して接続するのに活用可能な枝管接続部材を提供できる。
【0011】
なお、本発明の枝管接続部材を本管に対して取り付ける場合には、外周部材を適宜、接着剤や接合剤等によって本管に固定すると良い。この場合、接着剤や接合剤等の材質は、固定される本管、及び外周部材の材質に応じて適正なものを選択すると良い。また、本発明の枝管接続部材を本管に対して取り付ける場合、線状部材によって内周部材を本管の内壁(内周面)に引き寄せ、当接させる際に、内周部材を接着剤や接合剤、水膨張性ゴム等によって本管に対して固定すると良い。この場合、接着剤や接合剤等の材質は、固定される本管、及び内周部材の材質に応じて適正なものを選択すると良い。
【0012】
(2)上述した枝管接続部材は、前記外筒部の軸心位置を中心に回動して前記線状部材を巻き付け可能な巻付部を有し、前記線状部材の前記外周部材側における連結部が、前記巻付部に連結されており、前記巻付部が、前記移動部と共に軸線方向に移動可能であると良い。
【0013】
かかる構成とした場合、巻付部を回動させることにより、線状部材を巻付部に巻き付け、巻付部に巻き付けられた線状部材の長さに相当する分だけ内周部材を内周面に近接する方向に引き寄せることができる。また、上述した枝管接続部材は、巻付部を移動部と共に軸線方向に移動させることができる。そのため、上述した枝管接続部材は、例えば、先ず巻付部を回動させて内周部材を内周面に近接する方向に引き寄せた後、操作部を回動操作することにより移動部を巻付部と共に軸線方向に移動させることにより、本管に対する内周部材の圧着度を向上させ、枝管接続部材を強固に接続できる。
【0014】
ここで、上述した枝管接続部材において、移動部が軸線方向だけでなく、周方向にも動作可能なものであると、動力伝達機構により伝達される動力の一部が移動部の周方向への移動に使われる可能性がある。そのため、上述した枝管接続部材は、移動部の周方向への動作(回動)を制限することにより、動力伝達機構によって伝達される動力を移動部の軸線方向への移動に効率的に活用できるようになると考えられる。
【0015】
(3)かかる知見に基づけば、上述した枝管接続部材は、前記移動部が、前記外筒部の軸心周り方向への回動が制限されたものであると良い。
【0016】
かかる構成によれば、動力伝達機構により伝達される動力を、移動部の軸線方向への移動に効率的に利用することができる。これにより、移動部を軸線方向に移動させるために必要な操作部の回動操作量を抑制し、枝管接続部材の取り付け作業を効率的に行えるようになる。
【0017】
(4)上述した枝管接続部材は、前記移動部が、前記外筒部の軸心周り方向への回動が制限されたものとされており、前記巻付部が前記移動部に対して回動不能に連結された回動ロック状態、及び前記巻付部が前記移動部に対して回動可能とされた回動フリー状態に切り替え可能な切替機構を有するものであると良い。
【0018】
かかる構成によれば、回動フリー状態において巻付部を回動させて線状部材を巻き付けて内周部材を外周部材側に引き寄せた後、回動ロック状態として巻付部に巻き付けられた線状部材が巻き解かれてしまわないように維持することができる。
【0019】
ここで、本発明の枝管接続部材において、回動フリー状態において巻付部に対して線状部材を巻き付ける操作(独立回動操作)を行った後、回動ロック状態において移動部を回動させる操作(一体回動操作)によって移動部と共に巻付部を軸線方向に移動させ、本管に対して内周部材を圧着させる作業を行う場合、一体回動操作に際し、独立回動操作を行う場合よりも大きなトルクを作用させる必要がある。その一方で、枝管を主管に対して接続する作業を行う作業現場は、主管が埋設されている土壌を掘り返すなどして作業性の悪い場所である。そのため、上述した枝管接続部材は、一体回動操作を行う際に、大きな力を作用させなくても、大きなトルクを移動部に作用させることができる構成であると良い。
【0020】
(5)かかる知見に基づいて提供される本発明の枝管接続部材は、前記巻付部に対して前記外筒部の軸心位置を中心とする回動力を作用させることができる巻付回動力作用部を有し、前記動力伝達機構が、前記巻付回動力作用部よりも前記外筒部の軸心位置から離れた位置において前記移動部に対して回動力を伝達可能であること、を特徴とするものである。
【0021】
本発明の枝管接続部材は、巻付回動力作用部に対して回動力を作用させることにより、巻付部に回動力を伝達させることができる。そのため、本発明の枝管接続部材は、巻付力作用部に回動力を作用させることにより、巻付部に対して線状部材を巻き付けて、内周部材を本管の内周面に向けて引き寄せることができる。また、本発明の枝管接続部材においては、動力伝達機構が、巻付回動力作用部よりも外筒部の軸心位置から離れた位置において巻付部に対して回動力を伝達可能とされている。従って、上述した構成によれば、大きな力を作用させなくても、大きなトルクを巻付部に作用させ、巻付部に対して線状部材を巻き付ける作業を軽快に行える枝管接続部材を提供できる。
【0022】
(6)本発明の枝管接続部材は、前記巻付部に対して前記外筒部の軸心位置を中心とする回動力を付与する巻付回動力作用部を有し、前記巻付回動力作用部が、前記巻付部に対して径方向外側に突出した突出部を有すること、を特徴とするものであると良い。
【0023】
このように巻付回動力作用部の突出部が巻付部に対して径方向外側に突出した構成とすれば、突出部において回動力を付与することにより、巻付部を軽快に回動させることが可能となる。
【0024】
(7)本発明の枝管接続部材は、前記突出部に、前記巻付部の回動接線方向に軸体を挿入可能な軸挿入部が設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0025】
かかる構成によれば、軸挿入部に軸体を挿入することにより、軸体を介して巻付部に回動力を付与することが可能となる。軸挿入部に挿入する軸体は、例えばドライバーなどのように軸状の部分を有する工具等とすることができる。このような構成とすることにより、巻付部に対して回動力を作用させる作業を、特別な工具等を用いることなく行える枝管接続部材を提供できる。
【0026】
(8)本発明の枝管接続部材は、前記切替機構が、前記移動部に設けられた第一被係合部と、前記巻付部側に設けられた第二被係合部と、前記第一被係合部及び前記第二被係合部の双方に対して係脱可能な係合体と、を有し、前記係合体を前記第一被係合部及び前記第二被係合部の双方に対して係合させることにより、前記回動ロック状態とし、前記係合体を前記第一被係合部及び前記第二被係合部の少なくとも一方と非係合とすることにより、前記回動フリー状態とすることができること、を特徴とするものであると良い。
【0027】
かかる構成によれば、第一被係合部及び第二被係合部に対する係合体の係合状態を切り替えることにより、回動ロック状態と回動フリー状態とに切り替え可能とすることができる。
【0028】
(9)本発明の枝管接続部材は、前記係合体が、前記移動部及び前記巻付部の周面に沿ってスライド移動可能であり、前記係合体をスライド移動させることにより、前記第一被係合部及び前記第二被係合部に対し、前記係合体を係脱可能であること、を特徴とするものであると良い。
【0029】
かかる構成によれば、係合体をスライド移動させる操作を行い、第一被係合部及び第二被係合部に対する係合体の係合状態を切り替えることにより、回動ロック状態と回動フリー状態とに切り替え可能とすることができる。
【0030】
(10)本発明の枝管接続部材は、前記係合体が、前記第一被係合部に対して係合させた状態において、前記巻付部に対して前記外筒部の軸心位置を中心とする回動力を付与するための巻付回動力作用部として機能すること、を特徴とするものであると良い。
【0031】
かかる構成によれば、係合体を巻付回動力作用部としても活用でき、その分だけ枝管接続部材の構成を簡素化できる。
【0032】
(11)本発明の枝管接続部材は、前記操作部が、前記移動部に対して外周側において、前記外筒部の軸心位置を中心に回動可能であると共に、前記外筒部に対する軸線方向への移動が規制されたものであり、前記動力伝達機構が、前記移動部の外周面に螺旋状に形成された移動部側ネジ部と、前記操作部の内周面に螺旋状に形成された操作部側ネジ部とを螺合させることにより形成され、前記操作部を回動させることにより、前記移動部を軸線方向に移動可能であること、を特徴とするものであると良い。
【0033】
かかる構成によれば、操作部を回動させることにより、移動部を軸線方向に移動させることができる。また、上述したように、移動部に対して外周側に操作部を配した構成とすることにより、枝管接続部材の高さを抑制しつつ、操作部に対して適度な力を作用させることにより十分なトルクを操作部に作用させ、移動部をスムーズに軸線方向に移動させることができる。
【0034】
ここで、上述したような構成とする場合、線状部材が絡まる等すると、巻付部を回動させて内周部材を本管の内周面に引き寄せる作業に支障が生じる可能性がある。
【0035】
(12)かかる知見に基づけば、上述した枝管接続部材は、前記線状部材をガイドするガイド部を有し、前記ガイド部が、前記巻付部よりも前記内周部材側において、前記線状部材を前記軸線方向に案内するものであると良い。
【0036】
かかる構成によれば、ガイド部によって線状部材を軸線方向に案内しつつ、巻付部に対して整然と巻き付けることができる。そのため、上述した構成によれば、巻付部を回動させて線状部材を巻付部に巻き付けることにより内周部材を本管の内周面に引き寄せる作業を、スムーズに行える枝管接続部材を提供できる。
【0037】
(13)上述した枝管接続部材は、前記巻付部が、前記線状部材が収まる巻付溝を、前記軸線方向にらせん状に形成したものであると良い。
【0038】
かかる構成によれば、巻付部を回動することにより、巻付部に設けられた巻付溝に沿って線状部材を整然と巻き付けることが可能となる。従って、上述した構成によれば、巻付部を回動させて内周部材を本管の内周面に引き寄せる作業を、より一層スムーズに行える枝管接続部材を提供できる。
【0039】
(14)上述した枝管接続部材は、前記内周部材が、第一内周片及び第二内周片を備えたものであり、前記線状部材が、前記第一内周片に繋がる第一線状部材、及び前記第二内周片に繋がる第二線状部材を有し、前記巻付溝が、前記第一線状部材が収まる第一巻付溝をなす螺旋状の溝、及び前記第二線状部材が収まる第二巻付溝をなす螺旋状の溝からなる二条の螺旋溝によって構成されているものであると良い。
【0040】
上述したように巻付溝を二条の螺旋溝によって構成すれば、巻付部の回動量に対する内周部材の移動量を大きくとることができる。また、上述したように二条の螺旋溝を設ければ、第一線状部材及び第二線状部材を略均等に巻付部に巻き付け、内周部材をバランスよく本管側に引き寄せることができる。従って、上述した構成によれば、巻付部を回動させて内周部材を本管の内周面に引き寄せる引き寄せ操作の作業効率を向上させることができる。
【0041】
(15)上述した枝管接続部材は、前記内周部材が、前記本管の前記内周面に当接する複数の内周片を複数、屈曲伸長可能に接続したものであって、複数の前記内周片を屈曲させることにより前記本管の前記開口を介して前記本管の外側から内側に導入可能な屈曲状態となり、複数の前記内周片を前記本管の内部で伸長させることにより前記本管の前記開口から前記本管の外部に離脱不能な伸長状態になるものであり、前記屈曲状態において前記巻付部を回動させ、前記巻付部に前記線状部材を巻き付けることにより、前記内周部材を前記内周面に近接させつつ前記伸長状態とすることができるものであると良い。
【0042】
上述した枝管接続部材は、内周部材が内周片を複数、屈曲伸長可能に接続したものとされている。また、内周部材は、屈曲状態とすることにより本管に設けられた開口を介して本管の内部に導入可能な程度にコンパクトな状態とすることができる。そのため、上述した枝管接続部材は、内周部材を本管の内部に導入する作業を容易かつスムーズに行うことができる。
【0043】
また、上述した枝管接続部材において、内周部材は、複数の内周片を本管の内部で伸長させることにより、本管の開口から前記本管の外部に離脱不能な状態(伸長状態)とすることができる。また、巻付部を回動させて巻付部に線状部材を巻き付けることにより、内周部材が本管の内周部に引き寄せられる過程において、内周部材を屈曲状態から伸長状態に変化させることができる。そのため、本発明の枝管接続部材は、本管内部への内周部材の導入後、巻付部を回動させて引き寄せ操作を行えば、開口を介して離脱しないように内周部材を本管の内周部に装着することができる。
【0044】
(16)上述した枝管接続部材は、前記内周部材が、所定の屈曲軸心を中心に複数の前記内周片を屈曲伸長可能に連結する連結部を有し、前記線状部材が、前記屈曲軸心から外れた位置において前記巻付部の回動に伴う力が作用するように接続されているものであると良い。
【0045】
上述した枝管接続部材においては、内周部材をなす複数の内周片が、連結部を介して所定の屈曲軸心を中心に屈曲伸展可能なように連結されている。そのため、屈曲軸心から外れた位置において内周片に対して引っ張り力を作用させることにより、屈曲軸心を中心として内周片を屈曲させたり伸展させたりすることができる。上述した枝管接続部材においては、操作部材が内周片に接続されており、引き寄せ操作を行うことにより、屈曲軸心から外れた位置において内周片に操作力を作用させることができるものとされている。従って、上述した枝管接続部材では、操作部材による引き寄せ操作により、屈曲軸心を中心として内周片を伸展させ、伸長状態に状態変化させることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、特別な治具等を用いることなく、枝管の取付対象となる本管に対して取付施工可能でありつつ、高さ方向にコンパクトな構成の枝管接続部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材を本管に対して接続した状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材を本管に対して接続した状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る枝管接続部材の要部に係る分解斜視図である。
【
図7】(a)は巻付部を示す斜視図、(b)は巻付部を示す側面図である。
【
図13】伸展状態とした内周部材を示す斜視図である。
【
図14】屈曲状態とした内周部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の一実施形態に係る枝管接続部材10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において上下左右等の方向や表裏、前後等の表現については、特に断りのない限り、
図1等に示すような姿勢で枝管接続部材10を本管1に対して取り付けた状態を基準として説明する。また、以下の説明においては、先ず枝管接続部材10の構成について説明した後、枝管接続部材10を用いて本管1に枝管5を接続する施工方法について説明する。
【0049】
≪枝管接続部材10の構成について≫
図1~
図4等に示すように、枝管接続部材10は、例えば下水道管等の既設の本管1に新たに穿孔して形成された開口3に対し、枝管5を接続するために用いられるものである。本管1は、例えば、コンクリート管やヒューム管、塩化ビニル等の樹脂により形成された樹脂管等とすることができる。
図1~
図6等に示すように、枝管接続部材10は、外周部材20、内周部材80、線状部材100を備えている。
【0050】
図2に示すように、外周部材20は、本管1に穿孔された開口3の周辺部において本管1の外周面7に装着される部材である。
図1~
図5に示すように、外周部材20は、外周固定部22、枝管接続部24、巻付部26、ガイド部30、移動部40、操作部62等を備えている。また、外周部材20を構成する各部の組み合わせにより、切替機構50、動力伝達機構60等が外周部材20に設けられている。
【0051】
外周固定部22は、本管1の外周面7に対して当接するように取り付けられる部分である。
図6に示すように、外周固定部22は、外周当接部22x、及び外筒部22yを有する。外周当接部22xは、外周面7と同等の曲率で湾曲した円弧状の断面形状を有し、平面視で略矩形の形状を有する部材である。外周当接部22xは、長手方向(母線方向)に所定の長さを有し、長手方向の略中央部に表面22aから裏面22bに向けて貫通するように設けられた貫通孔22cを備えている。
【0052】
外筒部22yは、貫通孔22cを取り囲むように形成された円筒状の部分である。外筒部22yには、操作部被係合部22d、移動部案内部22e、及びガイド部被係合部22f等が設けられている。
【0053】
操作部被係合部22dは、後に詳述する操作部62の操作部係合部68bが係合する部分である。外筒部22yは、操作部被係合部22dが形成された部分において、外筒部22yの径方向外側に膨出している。そのため、外筒部22yは、操作部被係合部22dが設けられた部分において段状に形成されている。操作部被係合部22dは、外筒部22yの周方向に延びる溝とされている。操作部被係合部22dは、これをなす溝に係合した操作部62を、回動可能かつ軸線方向への移動を規制するよう支持することができる。
【0054】
移動部案内部22eは、操作部被係合部22dよりも上方側に設けられている。移動部案内部22eは、後に詳述する移動部40に設けられた移動部被案内部40dと係合するように形成された突条である。移動部案内部22eは、移動部被案内部40dとの組み合わせにより、移動部40を外筒部22yの軸線方向に向けて上下方向に移動可能としつつ、外筒部22yの周方向への移動を規制するように、移動部40を案内するものである。本実施形態では、移動部案内部22eは、外筒部22yの外周面から径方向外側に膨出し、軸線方向(上下方向)に延びるように形成された突条によって構成されている。移動部案内部22eをなす突条は、外筒部22yの周方向に複数箇所(本実施形態では2箇所)に設けられている。また、移動部案内部22eをなす突条の外筒部22yの表面からの突出量は、上述した操作部被係合部22dをなす部分の突出量よりも小さい。
【0055】
ガイド部被係合部22fは、外筒部22yの内周面に設けられている。ガイド部被係合部22fは、後に詳述するガイド部30のガイド部係合部30eが係合する部分である。ガイド部被係合部22fにガイド部係合部30eが係合することにより、ガイド部30の軸線方向への移動を許容しつつ、周方向への移動を規制できる。ガイド部被係合部22fは、外筒部22yの軸線方向中間部から下端側に向かう部分であって、外筒部22yの内周面が径方向内側に膨出するように形成された部分である内側膨出部22gに設けられている。ガイド部被係合部22fは、内側膨出部22gの上端側から軸線方向中間部まで、下方に向けて形成された溝によって構成されている。
【0056】
図1~
図4に示すように、枝管接続部24は、上下方向に貫通した筒状の部材である。枝管接続部24は、枝管5が接続される受口として機能する部分である。枝管接続部24は、例えば樹脂や、ゴム等の弾性を有する素材等によって形成される。枝管接続部24は、下端部を後に詳述する巻付部26に対して差し込んで接続可能とされている。
【0057】
巻付部26は、枝管接続部材10を本管1に対して取り付ける際に、回動操作によって外周部材20と内周部材80とを繋ぐ線状部材100を巻き上げる作業を行うためのものである。
図5や
図7等に示すように、巻付部26は、略筒状の外観形状を有するものである。巻付部26は、設置状態において上端側となる部分から、軸線方向に巻付部第一領域34、巻付部第二領域35、及び巻付部第三領域36の3つの領域を有する。
【0058】
巻付部第一領域34は、巻付部26において軸線方向一方側(上端側)の部分をなす領域である。巻付部第一領域34は、巻付部26を構成する3つの領域のうち、一番径方向外側に膨出した形状とされている。巻付部第一領域34の外径は、上述した外筒部22yの内径よりも大きい。巻付部26は、巻付部第一領域34の外周部に、第二被係合部26aを有する。第二被係合部26aは、後に詳述する切替機構50の係合体52が係脱する部分である。第二被係合部26aは、巻付部26の軸線方向(上下方向)に延びる突条によって構成されている。また、第二被係合部26aは、巻付部第一領域34の周方向に所定の間隔毎に複数(本実施形態では略90度毎に4つ)設けられている。
【0059】
巻付部第二領域35は、巻付部26の軸線方向中間部をなす部分である。巻付部26は、巻付部第二領域35が設けられた部分において、巻付部第一領域34よりも縮径した形状とされている。本実施形態では、巻付部26は、巻付部第二領域35から巻付部第三領域36に亘って外筒部22yの内径以下とされている。巻付部第二領域35は、枝管接続部材10の組み立て状態において、移動部被係合部35aよりも軸線方向下方側の部分が、外筒部22yの内側に挿入される。巻付部第二領域35には、移動部被係合部35a、及びシール溝35bが設けられている。
【0060】
移動部被係合部35aは、後に詳述する移動部40の移動部係合部40bをなす凸部が係合する部分である。移動部被係合部35aは、巻付部第一領域34の下端側において、周方向に延びるように形成された溝によって構成されている。また、シール溝35bは、枝管接続部材10の組立状態において外筒部22yの内周面と、巻付部26との間をシールする環状のシール部材35cが装着される部分である。シール溝35bは、移動部被係合部35aに対して軸線方向下方側に外れた位置に設けられている。
【0061】
巻付部第三領域36は、上述した巻付部第二領域35に対して巻付部26の軸線方向他方側(図示状態において下方側)に外れた位置に設けられている。巻付部第三領域36は、巻付部26が回動することにより線状部材100が巻き付けられる部分である。本実施形態では、巻付部第三領域36の外周面に、線状部材100が収まる巻付溝38が、巻付部26の軸線方向にらせん状に形成されている。巻付溝38は、第一巻付溝38a、及び第二巻付溝38bを有する。巻付溝38は、第一巻付溝38a、及び第二巻付溝38bが巻付部26の軸線方向に交互に並ぶ、二条の螺旋溝とされている。第一巻付溝38a及び第二巻付溝38bは、それぞれ線状部材100をなす第一線状部材100a、及び第二線状部材100bが収まるものとされている。
【0062】
また、
図2、
図3、
図5等に示すように、巻付部第三領域36において、巻付溝38が設けられた部分には、ガイド部30が設けられている。ガイド部30は、線状部材100を案内するガイドとしての機能を発揮するものである。ガイド部30は、外筒部22yの内周面と、巻付部第三領域36の外周面との間に配される筒状の部材である。
図8等に示すように、ガイド部30は、周面にガイド溝30aを有する。ガイド溝30aは、ガイド部30の周方向に2箇所設けられている。ガイド溝30aは、立上部30bと、周溝部30cとを有する。立上部30bは、図示状態においてガイド部30の下端側の位置から、軸線方向(高さ方向)の中間部まで上下方向に立ち上がるように形成された溝である。また、周溝部30cは、ガイド部30の軸線方向中間部において立上部30bに対して連続し、ガイド部30の周方向に延びる溝である。周溝部30cは、ガイド部30の周面を正面視した状態において片テーパー状の形状を有する溝である。周溝部30cは、立上部30bと連続する部分から周方向に離れるにつれて上辺側が上方側に傾斜し、溝幅(上下方向の長さ)が拡大するように形成されている。また、ガイド部30は、周溝部30cの終端側に連通部30dを有する。連通部30dは、ガイド部30の軸線方向(図示状態において上下方向)に延びる開口によって構成されている。そのため、ガイド部30は、連通部30dを介して外周側と内周側とが連通している。
【0063】
ガイド部30は、外周面にガイド部係合部30eを有する。ガイド部係合部30eは、ガイド部30の径方向外側に突出した突出部によって構成されている。ガイド部係合部30eは、ガイド部30の周方向複数箇所(本実施形態では2箇所)に設けられている。ガイド部係合部30e,30eは、ガイド部30の周方向に2つ設けられているガイド溝30a,30aの中間にそれぞれ設けられている。ガイド部30は、上述した外筒部22yの内側に内挿されると共に、外筒部22yの内周面に設けられたガイド部被係合部22fに対してガイド部係合部30e,30eを係合させた状態となるように配される。これにより、ガイド部30は、外筒部22yに対して周方向に位置決めされる。また、ガイド部30を外筒部22yの内側に配することにより、ガイド溝30a,30aによって形成された2系統の経路が線状部材100を通過可能なように形成される。
【0064】
図1~
図5に示すように、移動部40は、外筒部22yの外周側に配置される筒状の部材である。
図9に示すように、移動部40は、移動部側ネジ部40a、移動部係合部40b、第一被係合部40c、及び移動部被案内部40dを有する。
【0065】
移動部側ネジ部40aは、移動部40の外周部において、移動部40の軸心位置を中心として螺旋状にネジが形成された部分である。移動部側ネジ部40aは、後に詳述する動力伝達機構60の一部を構成するものである。また、移動部係合部40bは、巻付部26に設けられた第二被係合部26aに対して係合するものである。移動部係合部40bは、枝管接続部材10の組立状態において移動部40の上端側となる位置において、移動部40の径方向内側に向けて突出するように形成されている。
【0066】
具体的には、移動部40は、外筒部22yに対して外挿された状態において、外周部材20において操作部被係合部22dをなす膨出部分(段部)の上に立設された状態になる。この状態において、移動部係合部40bは、外筒部22yの上端部よりも上側の位置において、外筒部22yの径方向内側に向けて突出し、巻付部26の巻付部第二領域35に設けられた移動部被係合部35aまで到達するように形成されている。上述したように、移動部被係合部35aは巻付部26の周方向に延びる溝とされている。そのため、移動部係合部40bを移動部被係合部35aに対して係合させることにより、巻付部26は、移動部40に対して回動可能でありつつ、移動部40に対して軸線方向への移動が規制された状態になる。
【0067】
第一被係合部40cは、移動部40の外周面に設けられた凸状の部分である。具体的には、第一被係合部40cは、枝管接続部材10の組み立て状態において、軸線方向一方側(移動部係合部40bが形成された側)であって、巻付部26の巻付部第一領域34の下方に連続する位置に設けられている。第一被係合部40cは、後に詳述する切替機構50の一部をなすものであり、切替機構50の係合体52が係脱可能なものとされている。
【0068】
移動部被案内部40dは、移動部40の内周面において、軸線方向に延びるように形成された凹状の部分である。移動部被案内部40dは、枝管接続部材10の組立状態において、外筒部22yに設けられた移動部案内部22eと係合するものである。移動部被案内部40dは、移動部案内部22eとの組み合わせにより、移動部40を外筒部22yの軸線方向に向けて上下方向に移動可能としつつ、外筒部22yの周方向への移動を規制するように、移動部40を案内することができる。
【0069】
切替機構50は、巻付部26が移動部40に対して回動不能に連結された状態(回動ロック状態)、及び巻付部26が移動部40に対して回動可能とされた状態(回動フリー状態)に切り替えるための機構である。切替機構50は、上述した第二被係合部26a及び第一被係合部40cに加え、係合体52によって構成される。第二被係合部26aは、上述したように、巻付部26を構成する巻付部第一領域34の外周部に設けられた突条である。また、第一被係合部40cは、移動部40の外周面に設けられた突条である。
【0070】
係合体52は、第二被係合部26a及び第一被係合部40cの双方に対して係脱可能なものとされている。
図10に示すように、本実施形態では、係合体52は、環状に形成された係合体本体54に対して、突出部56及び軸挿入部58を設けたものとされている。係合体本体54は、その内径が巻付部第一領域34において第二被係合部26aが設けられた部分の外径、及び移動部40において第一被係合部40cが設けられた部分の外径と略同一とされている。これにより、係合体本体54は、巻付部26及び移動部40の外周面に沿ってスライド移動可能とされている。また、係合体本体54の内周面には、周方向に多数の係合溝54aが設けられている。係合溝54aは、係合体52の軸線方向に向けて延びるように形成されている。これにより、係合体52は、巻付部26及び移動部40の外周側において係合体本体54を軸線方向にスライド移動させることにより、第二被係合部26a及び第一被係合部40cをなす突条に対して係合溝54aを係脱可能とされている。
【0071】
係合体52は、係合体本体54を巻付部26側に移動させることにより、係合体本体54に設けられた係合溝54aが巻付部26の第二被係合部26aに対して係合し、第一被係合部40cには係合しない状態とすることができる。このような状態とすることにより、移動部40に対して巻付部26が独立して回動可能な状態(回動フリー状態)とすることができる。ここで、係合体52は、係合体本体54の外周部から、径方向外側に突出するように形成された突出部56を有する。さらに、突出部56には、軸挿入部58が設けられており、突出部56に対して巻付部26の回動接線方向に軸体を挿入可能とされている。そのため、回動フリー状態において軸挿入部58に対してドライバーなどの軸体を差し込むなどして、突出部56に対して巻付部26の周方向に外力を加えることにより、巻付部26を回動させることができる。このように、係合体52は、回動フリー状態において、巻付部26に対して外筒部22yの軸心位置を中心とする回動力を付与するための巻付回動力作用部として機能させることができる。
【0072】
また、係合体52は、係合体本体54を巻付部26及び移動部40に跨がる位置に移動させると、係合溝54aが第二被係合部26a及び第一被係合部40cの双方に対して係合した状態になる。これにより、巻付部26が移動部40に対して回動不能に連結された状態(回動ロック状態)になる。このように、切替機構50は、係合体52を軸線方向に移動させることにより、回動フリー状態と回動ロック状態とに切り替えることができる。
【0073】
動力伝達機構60は、回動ロック状態において、操作部62の回動操作によって発生する回動力により、移動部40を軸線方向に移動可能とする機構である。すなわち、動力伝達機構60は、操作部62を回動操作することにより発生する回動力を、外筒部22yの軸線方向への移動力に変換して移動部40を移動させるための機構である。
図2~
図4等に示すように、動力伝達機構60は、上述した係合体52(巻付回動力作用部)よりも径方向外側において、操作部62に対して回動力を伝達可能とされている。動力伝達機構60は、操作部62に設けられた操作部側ネジ部68cと、移動部40に設けられた移動部側ネジ部40aとを螺合させることにより、操作部62に付与された回動力を伝達可能とされている。また、動力伝達機構60は、移動部40に設けられた移動部被案内部40dと、外筒部22yに設けられた移動部案内部22eとの組み合わせにより、操作部62から伝達された回動力を利用して、移動部40を軸線方向に移動させることができる。
【0074】
さらに具体的に説明すると、操作部62は、移動部40に対して外周側において、外筒部22yの軸心位置を中心に回動可能であると共に、外筒部22yの軸線方向への移動が規制された筒体である。操作部62は、単体の筒体によって構成することも可能であるが、
図11及び
図12に示すように、本実施形態では操作外筒66、及び操作内筒68からなる2つの筒を有し、操作外筒66に対して操作内筒68を内挿して一体化したものとされている。
【0075】
操作外筒66は、操作部62の外周をなす筒体である。操作外筒66の外周部には、操作ハンドル64が複数設けられている。本実施形態では、2つの操作ハンドル64,64が、周方向に略180度の間隔を開けて配置されている。操作ハンドル64,64は、それぞれ折り畳み式のものとされている。具体的には、操作ハンドル64,64は、基端側に設けられたヒンジを支点として回動させることにより、操作外筒66の外周面に沿うように折り畳まれた姿勢と、操作外筒66の径方向外側に向けて突出した姿勢とに切り替え可能とされている。操作部62は、操作ハンドル64,64を径方向外側に向けて突出された状態とすることにより、操作部62の回動操作を行うための把持部として機能させることができる。また、操作外筒66の内周面には、外筒係合部66aが設けられている。外筒係合部66aは、操作外筒66の下端部から軸線方向に延びる溝状の形状とされている。外筒係合部66aをなす溝は、操作外筒66の周方向に複数(本実施形態では2つ)、周方向に所定の角度(本実施形態では約180度)だけ離れた位置に形成されている。
【0076】
操作内筒68は、操作外筒66に内挿され、操作外筒66と一体化される筒体である。操作内筒68は、外径が操作外筒66の内径と略同一とされている。また、操作内筒68の外周面には、内筒係合部68aが設けられている。内筒係合部68aは、上述した操作外筒66に形成された外筒係合部66aに対応する位置に設けられている。また、内筒係合部68aは、操作内筒68の径方向外側に突出し、操作内筒68の軸線方向に延びるように形成されている。操作内筒68は、内筒係合部68aと外筒係合部66aとを位置合わせした状態において、操作外筒66に対して内挿されている。これにより、操作内筒68は、操作外筒66に対して周方向に位置決めされた状態で一体化され、操作部62を構成する。
【0077】
操作内筒68の内周面には、操作部係合部68b、及び操作部側ネジ部68cが設けられている。操作部係合部68bは、上述した外周部材20の外筒部22yに設けられた操作部被係合部22dと係合する部分である。操作部係合部68bは、操作内筒68の周方向に亘って凹凸形状に形成されている。また、操作部側ネジ部68cは、操作部係合部68bに対し、操作内筒68の軸線方向に外れた位置に設けられている。操作部側ネジ部68cは、螺旋状に形成されたネジによって構成されている。
【0078】
動力伝達機構60においては、操作部62に設けられた操作部側ネジ部68cと、移動部40に設けられた移動部側ネジ部40aとが螺合している。また、操作部62は、操作部係合部68bが外筒部22yの操作部被係合部22dと係合することにより、軸線方向への移動が規制されている。さらに、移動部40は、移動部被案内部40dと、外筒部22yに設けられた移動部案内部22eとが係合することにより、外筒部22yの軸線方向に向けて上下方向に移動可能でありつつ、外筒部22yの周方向への移動が規制されている。そのため、操作部62に対して回動力を付与することにより、その回動力を操作部側ネジ部68c及び移動部側ネジ部40aを介して移動部40に伝達させ、移動部被案内部40d及び移動部案内部22eによって移動部40を軸線方向に移動させることができる。このように、動力伝達機構60を構成する各部の機能により、操作部62に対して付与された回動力を軸線方向への移動力に変換し、移動部40を軸線方向に移動させることができる。
【0079】
図2や
図3等に示すように、内周部材80は、本管1に穿孔された開口3の周辺部において、本管1の内周面9に対して固定される部分である。
図13及び
図14等に示すように、内周部材80は、複数(本実施形態では2つ)の湾曲片82と、連結片84と、内周筒部86を有する。
【0080】
湾曲片82は、側面視した状態において本管1の内周面9に沿うように円弧状に湾曲した片状の部材である。すなわち、湾曲片82の曲率は、本管1の内周面9の曲率と略同一とされている。湾曲片82は、後に詳述する連結片84を介して並列配置した状態で、互いに回動可能なように連結されている。
【0081】
内周部材80は、隣接する湾曲片82,82の裏面同士が離反するように回動させることにより、隣接する湾曲片82,82が突き合わせられ、表面同士が連続した状態になる。これにより、内周部材80は、全体として伸長した状態(伸長状態)になる。また、伸長状態にすると、内周部材80は、略鞍状の外観形状になる。このように、湾曲片82は、伸長状態において隣接する他の湾曲片82と突き合わせられる部分(合わせ部82x)を有する。
【0082】
また、内周部材80は、連結片84において隣接する湾曲片82,82の裏面同士が近接するように折り畳むことにより、隣接する湾曲片82,82の表面同士の間に非連続部分が形成され、屈曲した状態(変形状態)にすることができる。
【0083】
連結片84は、湾曲片82の母線方向に延びる所定の回動軸心Cを中心に、複数(本実施形態では2つ)の湾曲片82を回動可能に連結するものである。回動軸心Cは、並べて配置された湾曲片82,82の境界をなす合わせ部82x側の位置に存在している。
【0084】
内周筒部86は、本管1に穿孔された開口3の内側に差し込まれる筒状の部分である。内周筒部86は、湾曲片82,82の回動に連動して集合分離可能とされた複数(本実施形態では2つ)の筒構成部88の組み合わせによって構成されている。内周筒部86は、内周部材80が伸長状態とされた状態において、筒構成部88,88が集合することにより形成される。筒構成部88,88は、それぞれ湾曲片82,82に対して一体的に設けられている。筒構成部88,88は、湾曲片82,82の表面側から上方に向けて突出している。筒構成部88,88は、それぞれ湾曲片82,82の長手方向(母線方向)の略中央部に設けられている。湾曲片82,82において、筒構成部88,88の基端(下端)側の部分は、湾曲片82,82の形状に合わせて半円状に切りかかれている。
【0085】
また、内周筒部86を構成する筒構成部88,88の外周面には、線状部材100を固定するための固定部90,90が設けられている。固定部90,90は、内周筒部86の基端側(湾曲片82,82の表面側)から内周筒部86の軸線方向(図示状態においては上下方向)に延びるように形成された固定溝90a,90aを有する。固定溝90a,90aは、線状部材100を嵌め込んで固定可能な溝とされている。また、固定溝90a,90aは、基端側において略「コ」字状に折れ曲がると共に、線状部材100の終端部を接続可能とされている。
【0086】
線状部材100は、本管1の内側に導入された内周部材80を、本管1の外側からの操作(引き寄せ操作)により、内周部材80を本管1の内周面9に近接する方向に引き寄せるための部材である。線状部材100は、金属や樹脂等の素材によって形成された線材によって構成されている。本実施形態では、
図5に示すように、線状部材100として、湾曲片82,82のうち一方(以下、「第一内周片82a」とも称す)に接続される第一線状部材100aと、他方(以下、「第二内周片82b」とも称す)に接続される第二線状部材100bとが設けられている。
【0087】
線状部材100をなす第一線状部材100a及び第二線状部材100bは、それぞれ内周部材80をなす第一内周片82a及び第二内周片82bの回動軸心Cから外れた位置において引き寄せ操作に伴う操作力が作用するように接続されている。
【0088】
具体的には、第一線状部材100aの一端側は、第一内周片82aを構成する筒構成部88の外周に設けられた固定溝90aに嵌め込み、終端部を接続することにより、内周部材80に対して接続されている。また、
図5に示すように、第一線状部材100aは、ガイド部30において、外筒部22yとガイド部30との間に設けられた2系統の経路のうちの一方を介してガイド部30の内側に導入されている。さらに、第一線状部材100aは、巻付部26に対して接続されている。これにより、第一線状部材100aは、巻付部26を回動させることで、第一巻付溝38aに対して巻き付け可能とされている。
【0089】
同様に、第二線状部材100bの一端側は、第二内周片82bを構成する筒構成部88の外周に設けられた固定溝90aに嵌め込み、終端部を固定溝90aに係合させて接続することにより、内周部材80に対して接続されている。また、第二線状部材100bは、ガイド部30において、外筒部22yとガイド部30との間に設けられた経路を介してガイド部30の内側に導入されている。さらに、第二線状部材100bは、巻付部26に対して接続されている。これにより、第二線状部材100bは、巻付部26を回動させることで、第二巻付溝38bに対して巻き付け可能とされている。
【0090】
≪枝管接続部材10を用いた施工方法について≫
続いて、枝管接続部材10を用い、本管1に穿孔された開口3に対して枝管5を接続する施工方法について説明する。
【0091】
本管1に対する枝管5の接続施工に際し、枝管接続部材10は、先ず外周部材20が組み立てられた状態として準備されると共に、外周部材20の巻付部26と、内周部材80とを線状部材100によって繋いだ状態で準備される。この際、巻付部26に線状部材100が殆ど巻き付けられておらず、外周部材20と内周部材80とが十分に離れた状態で準備される。このようにして枝管接続部材10を準備した状態において、内周部材80をなす湾曲片82,82を連結片84において屈曲させ、折り畳んだ状態(変形状態)にする。この状態において、内周部材80は、変形状態で本管1の開口3から内部に導入される。
【0092】
上述したようにして内周部材80が本管1の内部に導入されると、外周固定部22の外周当接部22xを本管1の外周面7に沿うようにあてがうと共に、外周固定部22に設けられた貫通孔22cが本管1の開口3に相当する位置に到来するように外周部材20の位置調整を行う。このようにして、外周部材20の配置が完了すると、切替機構50により枝管接続部材10を回動フリー状態にする。具体的には、切替機構50の係合体52(係合体本体54)を巻付部26側に移動させ、係合溝54aが巻付部26の第二被係合部26aに対して係合し、第一被係合部40cには係合しない状態とすることにより、回動フリー状態にする。この状態において、係合体本体54から径方向外側に突出した突出部56の軸挿入部58にドライバーなどの軸体を挿入して突出部56に対して外力を作用させ、係合体本体54を周方向に回動させる。これに連動して、係合体本体54と係合している巻付部26が、移動部40に対して独立的に回動する。その結果、巻付部26の巻付溝38に対し、内周部材80をなす湾曲片82,82に接続された線状部材100.100が巻き付けられる。
【0093】
上述したようにして、枝管接続部材10を回動フリー状態において、巻付部26の正方向への回動を継続すると、内周部材80が本管1の内周面9に近接すると共に、内周部材80(第一内周片82a及び第二内周片82b)が本管1の内部において変形状態から伸長状態に状態変化する。内周部材80が内周面9に当接するまで引き寄せられると、内周部材80は伸長状態となって内周面9に対して近接した状態となる。
【0094】
上記したようにして、回動フリー状態において巻付部26を回動させ、本管1の内周面9に対して内周部材80を近接させた状態において、枝管接続部材10を回動ロック状態とすると、巻付部26の回動がロックされた状態になる。具体的には、切替機構50の係合体52(係合体本体54)を軸線方向にスライドさせ、巻付部26及び移動部40に跨がる位置まで移動させる。これにより、係合体本体54の係合溝54aが、巻付部26の第二被係合部26a、及び移動部40の第一被係合部40cの双方に対して係合した状態になる。これにより、枝管接続部材10が、回動フリー状態から回動ロック状態に切り替わる。これにより、巻付部26に巻き付けられた線状部材100.100が予期せず巻き解かれるのを防止できる。
【0095】
上述したようにして本管1の内周面9に対して内周部材80を近接させた状態において、さらに内周部材80を内周面9に密接させる場合には、操作部62に設けられた操作ハンドル64,64を把持するなどして、操作部62を正方向に回動させる。これにより、操作部62の操作部側ネジ部68cに対し、移動部側ネジ部40aを介して螺合した移動部40を軸線方向上方側に向けて移動させることができる。その結果、内周面9に近接する位置にあった内周部材80がさらに内周面9に近接して密着した状態になる。これにより、本管1に対する枝管接続部材10の取り付けが完了する。また、本管1に枝管接続部材10が取り付けられると、枝管接続部24に対して枝管5が差し込まれて接続される。これにより、枝管接続部材10を用いた本管1への枝管5の取付施工が完了する。
【0096】
≪枝管接続部材10による作用効果≫
上述した枝管接続部材10によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0097】
本実施形態の枝管接続部材10は、操作部62を回動操作することにより発生する回動力を移動部40に伝達し、移動部40を軸線方向に移動させる動力伝達機構60を備えている。また、本実施形態の枝管接続部材10は、内周部材80及び外周部材20を連結する線状部材100を有し、線状部材100の外周部材20側の連結部が移動部40に連動して軸線方向に移動可能とされている。そのため、本実施形態の枝管接続部材10は、操作部62を回動させるのに伴い、移動部40と共に線状部材100を軸線方向に移動させ、内周部材80を外周部材20側に引き寄せることができる。そのため、本実施形態の枝管接続部材10は、本管1に穿孔された開口3から内周部材80を本管1内に導入し、本管1の外周に外周部材20を配した状態において、操作部62を回動させて移動部40を軸線方向に移動させることにより、内周部材80を本管1の内周面に近接する方向に移動させることができる。これにより、本管1に対して内周部材80を圧着させ、枝管接続部材10を強固に接続できる。従って、本実施形態によれば、特別な治具等を用いることなく、本管1に対して強固に取付施工可能な枝管接続部材10を提供することができる。
【0098】
また、本実施形態の枝管接続部材10は、外筒部22yに対して径方向外側において操作部62を回動操作することにより、動力伝達機構60を介して移動部40に径方向外側から回動力を伝達可能なものとされている。このように、本実施形態の枝管接続部材10は、外筒部22yの軸線方向(高さ方向)ではなく、外筒部22yに対して径方向外側の位置に操作部62や動力伝達機構60が配され、高さ方向にコンパクトな構成とされている。従って、本実施形態によれば、主管に対して枝管接続部材10を取り付けるために、高さ方向(深さ方向)にスペースを大きく確保出来ない場合等であっても、枝管5を主管に対して接続するのに活用可能な枝管接続部材10を提供できる。
【0099】
また、上述した枝管接続部材10は、外筒部22yの軸心位置を中心に回動して線状部材100を巻き付け可能な巻付部26を有し、線状部材100の外周部材20側における連結部が、巻付部26に連結されており、巻付部26が、移動部40と共に軸線方向に移動可能とされている。そのため、枝管接続部材10は、巻付部26を回動させることにより、線状部材100を巻付部26に巻き付け、巻付部26に巻き付けられた線状部材100の長さに相当する分だけ内周部材80を内周面に近接する方向に引き寄せることができる。また、上述した枝管接続部材10は、巻付部26を移動部40と共に軸線方向に移動させることができる。そのため、上述した枝管接続部材10は、例えば、先ず巻付部26を回動させて内周部材80を内周面に近接する方向に引き寄せた後、操作部62を回動操作することにより移動部40を巻付部26と共に軸線方向に移動させることにより、本管1に対する内周部材80の圧着度を向上させ、枝管接続部材10を強固に接続できる。
【0100】
なお、上述した枝管接続部材10を本管1に対して取り付ける場合には、外周部材20を適宜、接着剤や接合剤等によって本管に固定すると良い。この場合、接着剤や接合剤等の材質は、固定される本管1、及び外周部材20の材質に応じて適正なものを選択すると良い。また、枝管接続部材10を本管1に対して取り付ける場合、線状部材100によって内周部材80を本管1の内周面9に引き寄せて当接させる際に、内周部材80を接着剤や接合剤、水膨張性ゴム等によって本管1に対して固定すると良い。この場合、接着剤や接合剤等の材質は、固定される本管1、及び内周部材80の材質に応じて適正なものを選択すると良い。
【0101】
上述した枝管接続部材10は、移動部40が、外筒部22yの軸心周り方向への回動が制限されたものとされている。そのため、枝管接続部材10は、動力伝達機構60により伝達される動力を、移動部40の軸線方向への移動に効率的に利用することができる。従って、枝管接続部材10は、移動部40を軸線方向に移動させるために必要な操作部62の回動操作量を抑制し、本管1に対する取り付け作業を効率的に行える。
【0102】
なお、本実施形態では、移動部40の移動部被案内部40dと、外筒部22yの移動部案内部22eとを係合させることにより、外筒部22yの軸心周り方向への移動部40の回動が制限されたものとした例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、移動部40は、軸線周り方向への回動を伴いつつ、軸線方向への移動も可能な構成等としても良い。
【0103】
上述した枝管接続部材10は、移動部40が、外筒部22yの軸心周り方向への回動が制限されたものとされており、巻付部26が移動部40に対して回動不能に連結された回動ロック状態、及び巻付部26が移動部40に対して回動可能とされた回動フリー状態に切り替え可能な切替機構50を有するものとされている。これにより、枝管接続部材10は、回動フリー状態において巻付部26を回動させて線状部材100を巻き付けて内周部材80を外周部材20側に引き寄せた後、回動ロック状態として巻付部26に巻き付けられた線状部材100が巻き解かれてしまわないように維持することができる。
【0104】
なお、本実施形態では、切替機構50を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、枝管接続部材10は、切替機構50を備えていないものであっても良い。また、切替機構50は、上述した構成のものに限られず、他の構成のもので同様の効果が得られるものであっても良い。
【0105】
また、本実施形態の枝管接続部材10は、巻付部26に対して外筒部22yの軸心位置を中心とする回動力を作用させることができる巻付回動力作用部として機能する係合体52を備えている。そのため、本実施形態の枝管接続部材10は、係合体52に回動力を作用させることにより、巻付部26に対して線状部材100を巻き付けて、内周部材80を本管1の内周面に向けて引き寄せることができる。また、本実施形態の枝管接続部材10においては、動力伝達機構60が、係合体52(巻付回動力作用部)よりも外筒部22yの軸心位置から離れた位置において移動部40に対して回動力を伝達可能とされている。従って、上述した構成によれば、係合体52に回動力を作用させることにより、大きなトルクを巻付部26に作用させ、線状部材100を巻き付ける作業を軽快に行うことができる。
【0106】
なお、本実施形態では、巻付回動力作用部として係合体52を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、巻付回動力作用部として機能する部材を設けない構成としたり、巻付回動力作用部として機能する部材を係合体52とは別に設けた構成としたりしても良い。
【0107】
本実施形態の枝管接続部材10は、巻付部26に対して外筒部22yの軸心位置を中心とする回動力を付与する係合体52(巻付回動力作用部)を有し、係合体52(巻付回動力作用部)が、巻付部26に対して径方向外側に突出した突出部56を有するものとされている。このような構成とすることにより、突出部56において回動力を付与することにより、巻付部26を軽快に回動させることが可能となる。なお、本実施形態では、巻付回動力作用部として機能する部材(本実施形態では係合体52)に突出部56を設けた構成を例示したが、例えば突出部56を設けなくても係合体52に対して容易に回動力を付与できる構成である場合等においては、突出部56を設けない構成としても良い。
【0108】
本実施形態の枝管接続部材10は、突出部56に、巻付部26の回動接線方向に軸体を挿入可能な軸挿入部58を設けたものとされている。そのため、枝管接続部材10は、軸挿入部58に対し、例えばドライバーなどの軸体を挿入することにより、軸体を介して巻付部26に回動力を付与することが可能となる。このような構成とすることにより、巻付部26に対して回動力を作用させる作業を、特別な工具等を用いることなく行える枝管接続部材10を提供できる。なお、本実施形態では、軸挿入部58を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、軸挿入部58を設けない構成としても良い。
【0109】
本実施形態の枝管接続部材10は、切替機構50が、移動部40に設けられた第一被係合部40cと、巻付部26側に設けられた第二被係合部26aと、第一被係合部40c及び第二被係合部26aの双方に対して係脱可能な係合体52とを備えたものとされている。また、枝管接続部材10は、係合体52を第一被係合部40c及び第二被係合部26aの双方に対して係合させることにより回動ロック状態とし、係合体52を第一被係合部40c及び第二被係合部26aの少なくとも一方と非係合とすることにより回動フリー状態とすることができるものとされている。また、本実施形態の枝管接続部材10は、係合体52が、移動部40及び巻付部26の周面に沿ってスライド移動可能なものとされており、係合体52をスライド移動させることにより、第一被係合部40c及び第二被係合部26aに対して係合体52を係脱可能なものとされている。そのため、枝管接続部材10は、第一被係合部40c及び第二被係合部26aに対する係合体52の係合状態を切り替え、回動ロック状態と回動フリー状態とに切り替える作業を、係合体52をスライド移動させる操作によって行うことができる。そのため、枝管接続部材10は、回動ロック状態と回動フリー状態とに切り替える作業を、係合体52をスライドさせる簡単な操作で行うことができる。
【0110】
なお、本実施形態では、係合体52のスライド操作により、回動ロック状態と回動フリー状態とに切り替える作業を行えるようにした切替機構50を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。枝管接続部材10は、例えば、上記したのとは異なる機構等を備えたものを切替機構50に代えて設けたり、切替機構50を省略した構成としたりしても良い。
【0111】
本実施形態の枝管接続部材10は、操作部62が、移動部40に対して外周側において、外筒部22yの軸心位置を中心に回動可能であると共に、外筒部22yに対する軸線方向への移動が規制されたものとされている。また、枝管接続部材10は、動力伝達機構60が、移動部40の外周面に螺旋状に形成された移動部側ネジ部40aと、操作部62の内周面に螺旋状に形成された操作部側ネジ部68cとを螺合させることにより形成され、操作部62を回動させることにより、移動部40を軸線方向に移動可能なものとされている。また、本実施形態の枝管接続部材10は、移動部40に対して外周側に操作部62を配した構成とされている。そのため、上述した枝管接続部材10は、高さを抑制しつつ、操作部62に対して適度な力を作用させることにより十分なトルクを操作部62に作用させ、移動部40をスムーズに軸線方向に移動させることができる。
【0112】
また、上述した枝管接続部材10は、線状部材100をガイドするガイド部30を有し、ガイド部30が、巻付部26よりも内周部材80側において、線状部材100を軸線方向に案内するものとされている。そのため、枝管接続部材10はガイド部30によって線状部材100を軸線方向に案内しつつ、巻付部26に対して整然と巻き付けることができる。従って、枝管接続部材10によれば、巻付部26を回動させて線状部材100を巻き付けることにより内周部材80を本管1の内周面に引き寄せる作業を、スムーズに行うことができる。
【0113】
なお、本実施形態では、線状部材100をガイドするガイド部30を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、枝管接続部材10は、ガイド部30を設けない構成としたり、ガイド部30に代えてあるいはガイド部30に加えて、線状部材100をガイド可能な別の部材等を設けたりした構成としても良い。
【0114】
上述したように、枝管接続部材10は、巻付部26が、線状部材100が収まる巻付溝38を、軸線方向にらせん状に形成したものとされている。このような構成とされているため、巻付部26を回動することにより、巻付部26に設けられた巻付溝38に沿って線状部材100を整然と巻き付けることが可能となる。従って、上述した枝管接続部材10は、線状部材100が絡まる等の不具合が生じることなく、線状部材100を巻付部26に対してスムーズに巻き付けることができる。
【0115】
なお、本実施形態では、巻付部26に巻付溝38を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、枝管接続部材10は、巻付溝38を設けない構成としたり、巻付溝38に代えてあるは巻付溝38に加えて、線状部材100を整然と巻き取るための機構等を別途設けたりしても良い。
【0116】
また、上述した枝管接続部材10は、内周部材80が、第一内周片82a及び第二内周片82bを備えたものとされていることに対応して、線状部材100として第一内周片82aに繋がる第一線状部材100a、及び第二内周片82bに繋がる第二線状部材100bを設けると共に、巻付溝38として、第一線状部材100aのための第一巻付溝38aと、第二線状部材100bのための第二巻付溝38bとからなる二条の螺旋溝を設けたものとしている。そのため、枝管接続部材10は、巻付部26の回動量に対する内周部材80の移動量を大きくとることができる。また、第一巻付溝38a及び第二巻付溝38bを二条の螺旋溝により構成すれば、第一線状部材100a及び第二線状部材100bを略均等に巻き付け、内周部材80をバランスよく本管1側に引き寄せることができる。従って、枝管接続部材10によれば、巻付部26を回動させて内周部材80を本管1の内周面に引き寄せる引き寄せ操作の作業効率を向上させることができる。
【0117】
なお、本実施形態では、内周部材80が、第一内周片82a及び第二内周片82bを備えたものとした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第一内周片82a及び第二内周片82bに相当するものを一体的に形成し、屈曲状態や伸展状態に状態が変化しないものとしたり、第一内周片82a及び第二内周片82bに加えてさらに多数の内周片の組み合わせによって内周部材80が形成されたりするものであっても良い。また、例えば内周部材80の構成を上述したものと相違させる場合等には、線状部材100を第一線状部材100a、及び第二線状部材100bによって構成するのとは異なる構成としても良い。
【0118】
上述した枝管接続部材10は、内周部材80が当接片を複数(本実施形態では2つ)、屈曲伸長可能に接続したものとされている。また、内周部材80は、屈曲状態とすることにより本管1に設けられた開口3を介して本管1の内部に導入可能な程度にコンパクトな状態とすることができる。そのため、上述した枝管接続部材10は、内周部材80を本管1の内部に導入する作業を容易かつスムーズに行うことができる。また、枝管接続部材10は、巻付部26を回動させることにより、巻付部26に線状部材100を巻き付け、内周部材80を本管1の内周部に引き寄せる過程において、内周部材80を屈曲状態から伸長状態に変化させることができる。そのため、枝管接続部材10は、本管1の内部に内周部材80の導入した後、巻付部26を回動させて内周部材80を引き寄せる操作を行えば、本管1に対する装着作業を完了できる。
【0119】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、水道管、下水管、排水管等の各種の配管において、本管に対して枝管を接続するために好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 :本管
3 :開口
5 :枝管
10 :枝管接続部材
20 :外周部材
22y :外筒部
26 :巻付部
26a :第二被係合部
40 :移動部
40a :移動部側ネジ部
40c :第一被係合部
50 :切替機構
52 :係合体(巻付回動力作用部)
56 :突出部
58 :軸挿入部
60 :動力伝達機構
62 :操作部
68c :操作部側ネジ部
80 :内周部材
100 :線状部材