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  • 特開-センサカバーの発熱構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137367
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】センサカバーの発熱構造
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20220914BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20220914BHJP
   H05B 3/20 20060101ALN20220914BHJP
   H05B 3/84 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/03
H05B3/20 346
H05B3/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036862
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA12
3K034AA35
3K034BB08
3K034CA02
3K034CA24
3K034HA09
3K034JA06
3K034JA10
3K092PP15
3K092PP20
3K092QA03
3K092QB02
3K092QB49
3K092QB78
3K092QC02
3K092QC16
3K092QC53
3K092RF14
3K092VV33
(57)【要約】
【課題】センサカバーにヒータ線を設ける方法が制限されることを抑制できるセンサカバーの発熱構造を提供する。
【解決手段】センサカバーの発熱構造は、車外の物体を検出するための電磁波を送受信する車載センサのセンサカバーに適用される。上記発熱構造は、車載センサの電磁波の送信方向の前方に位置するセンサカバーに設けられたヒータ線8を備える。上記発熱構造では、ヒータ線8に対する通電によって同ヒータ線8が発熱する。上記ヒータ線8は、二つの電極部11と複数の並列部12とを備えている。上記二つの電極部11は、定められた長さを有し、且つ、互いに距離をおいて配置されている。上記複数の並列部12は、二つの電極部11を繋ぐように互いに平行に延びている。上記電極部11の線幅は、複数の並列部12の線幅の合計値以上とされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の物体を検出するための電磁波を送受信する車載センサのセンサカバーに適用され、前記車載センサの電磁波の送信方向の前方に位置する前記センサカバーに設けられたヒータ線を備え、そのヒータ線に対する通電によって同ヒータ線が発熱するセンサカバーの発熱構造において、
前記ヒータ線は、二つの電極部と複数の並列部とを備えており、
前記二つの電極部は、定められた長さを有し、且つ、互いに距離をおいて配置されており、
前記複数の並列部は、前記二つの電極部を繋ぐように互いに平行に延びており、
前記電極部の線幅は、前記複数の並列部の線幅の合計値以上とされているセンサカバーの発熱構造。
【請求項2】
前記電極部は、前記車載センサから送信される電磁波と干渉しない位置に配置されている請求項1に記載のセンサカバーの発熱構造。
【請求項3】
前記車載センサは、定められた角度領域で電磁波を送信するものであり、
前記複数の並列部は、前記角度領域と平行になるように延びている請求項1又は2に記載のセンサカバーの発熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサカバーの発熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車外の物体を検出するための電磁波を送受信する車載センサが搭載されている。車載センサにおける電磁波の送信方向の前方にはセンサカバーが配置されている。センサカバーは、車外から車載センサを見えにくくするためのものである。センサカバーは、電磁波を透過させることが可能となっている。ただし、センサカバーに対する氷雪の付着に伴い、センサカバーにおける電磁波の透過性が低下する。このため、センサカバーに特許文献1に示されるようにヒータ線を設けることが考えられる。この場合、ヒータ線に対する通電によって同ヒータ線を発熱させると、センサカバーに付着した氷雪が融解する。これにより、氷雪の付着によってセンサカバーの電磁波の透過性が低下することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-145498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、センサカバーの加熱したい箇所全体に亘るように一つのヒータ線を長く延ばして配置している。
ここで、通電時のヒータ線の発熱量は、そのヒータ線の抵抗値Rによって決まる。ヒータ線の抵抗値Rは、ヒータ線の比抵抗ρ、長さL及び、断面積Sに基づき、次の式「R=ρ・L/S」のように定められる。この式から分かるように、ヒータ線の長さLが長くなるほど抵抗値Rが大きくなることから、長さLの長いヒータ線の発熱量を望む値に抑えるためには、ヒータ線の断面積Sを大きくしなければならない。
【0005】
ヒータ線が薄膜状である場合、ヒータ線の断面積Sは線幅wと厚さtとの積である。このため、上記式は「R=ρ・L/(w・t)」となる。この場合、長さLの長いヒータ線の発熱量を望む値に抑えるためには、ヒータ線の線幅wと厚さtとの少なくとも一方を大きくしなければならないことが分かる。しかし、ヒータ線の線幅wを大きくし過ぎると、ヒータ線が原因となってセンサカバーにおける電磁波の透過性が低下する。
【0006】
ヒータ線が薄膜状である場合、線幅wについては、センサカバーにおける電磁波の透過性を確保可能な最大値以上にすることはできない。このため、長さLが長くなることによるヒータ線の発熱量の増大を抑えるためには、ヒータ線の厚さtを大きくしなければならなくなる。従って、ヒータ線をセンサカバーに設ける方法として、例えばスパッタといったヒータ線の厚さtをあまり小さくできない方法を採用することは困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するセンサカバーの発熱構造は、車外の物体を検出するための電磁波を送受信する車載センサのセンサカバーに適用される。上記発熱構造は、車載センサの電磁波の送信方向の前方に位置する前記センサカバーに設けられたヒータ線を備える。上記発熱構造では、ヒータ線に対する通電によって同ヒータ線が発熱する。上記ヒータ線は、二つの電極部と複数の並列部とを備えている。上記二つの電極部は、定められた長さを有し、且つ、互いに距離をおいて配置されている。上記複数の並列部は、二つの電極部を繋ぐように互いに平行に延びている。上記電極部の線幅は、複数の並列部の線幅の合計値以上とされている。
【0008】
上記構成によれば、複数の並列部における各々の並列部の抵抗値を大きくしても、複数の並列部の合成抵抗値に関しては小さく抑えることができる。このため、ヒータ線を薄膜状とした場合、ヒータ線の並列部の線幅をセンサカバーにおける電磁波の透過性を確保可能な最大値未満に定めたとき、並列部の厚さを小さくしても、複数の並列部の合成抵抗値を小さく抑えることができる。これにより、ヒータ線の抵抗値、すなわちヒータ線の発熱量を望む値に抑えるために並列部の厚さを大きくする必要がなくなる。その結果、ヒータ線をセンサカバーに設ける方法として、例えばスパッタといったヒータ線の厚さtをあまり小さくできない方法を採用することが可能になり、センサカバーにヒータ線を設ける方法が制限されることを抑制できる。
【0009】
また、電極部の線幅が複数の並列部の線幅の合計値以上とされていることにより、複数の並列部が繋がる電極部の電流密度を小さく抑えることができる。その結果、電極部の発熱量が多くなることを抑制でき、電極部での発熱が多くなることに伴って、電極部及び複数の並列部を含むヒータ線での発熱の偏りが生じることを抑制できる。
【0010】
上記電極部は、車載センサから送信される電磁波と干渉しない位置に配置されるものとすることが考えられる。
上記電極部の線幅は並列部の線幅よりも大きい。このため、電極部は、車載センサから送信される電磁波を遮りやすい。しかし、上記構成によれば、電極部が車載センサから送信される電磁波と干渉しない位置に配置されるため、その電磁波が電極部で遮られることによって電磁波による車外の物体の検出精度が低下することを抑制できる。
【0011】
上記車載センサは、定められた角度領域で電磁波を送信するものであり、上記複数の並列部は、上記角度領域に対して平行となるように延びているものとすることが考えられる。
【0012】
この構成によれば、定められた角度領域内で車載センサから電磁波が送信されるとき、その電磁波と複数の並列部とが干渉しにくくなる。従って、電磁波による車外の物体の検出精度が複数の並列部によって低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は車載センサ、ケース、及びセンサカバーを示す模式図、(b)は(a)のセンサカバーにおける二点鎖線で囲んだ部分を示す拡大断面図。
図2】ヒータ線を示す略図。
図3】車載センサから送信される電磁波に対する電極部及び並列部の位置関係を示す略図。
図4】センサカバーの他の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、センサカバーの発熱構造の一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
図1(a)は、車載センサ1、ケース2、及びセンサカバー4を示している。車載センサ1は、車外の物体を検出するための電磁波を送受信するものであり、例えば赤外線センサを採用することが考えられる。赤外線センサは、上記電磁波として赤外線を車外(図1の左側)に向けて送信する一方、車外の物体に当たって反射した上記赤外線を受信し、そうした赤外線の送受信を通じて車外の物体を検知する。
【0015】
車載センサ1は、車両に搭載されたケース2内に収容されている。ケース2は、車載センサ1における電磁波の送信方向の前方(図1の左方)に向けて開口している。このケース2の開口部には、車載センサ1が車外から直接的に見えないようにするためのセンサカバー4が取り付けられている。
【0016】
図1(b)は、センサカバー4における図1(a)の二点鎖線で囲んだ部分の断面を拡大して示している。図1(b)に示されるセンサカバー4のカバー基材5は、ベース層6と透明フィルム7とを備えている。ベース層6は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明樹脂によって形成されている。透明フィルム7は、ベース層6における車載センサ1と反対側の面(図1(b)の左側の面)を覆っている。カバー基材5は、車載センサ1(図1(a))によって送受信される電磁波の経路上に位置している。センサカバー4におけるカバー基材5は、車載センサ1によって送受信される電磁波を透過させることが可能となっている。
【0017】
センサカバー4は、ヒータ線8、保護層9、及びARコート層10を備えている。ヒータ線8は、銅等の金属製であって通電により発熱する。ヒータ線8は、カバー基材5(透明フィルム7)における車載センサ1と反対側の表面に配置されている。保護層9は、ヒータ線8及び透明フィルム7を覆うものであって、PET等の透明樹脂によって形成されている。ARコート層10は、保護層9における車載センサ1と反対側の面に、反射防止コーティングによって形成されている。センサカバー4における保護層9及びARコート層10も、車載センサ1によって送受信される電磁波を透過させることが可能となっている。
【0018】
次に、ヒータ線8について詳しく説明する。
センサカバー4に付着した氷雪は、ヒータ線8の通電による発熱を通じて融解される。これにより、氷雪の付着によってセンサカバー4に対する電磁波の透過が妨げられることは抑制される。
【0019】
図2に示すように、ヒータ線8は、二つの電極部11と複数の並列部12とを備えている。電極部11及び並列部12はいずれも薄膜状とされている。二つの電極部11は、定められた長さを有しており、且つ、互いに距離をおいて配置されている。複数の並列部12は、二つの電極部11を繋ぐように互いに平行に延びている。電極部11の線幅は、複数の並列部12の線幅の合計値以上とされている。そして、電極部11に対する電圧の印加により、ヒータ線8の電極部11及び複数の並列部12に対する通電が行われ、ヒータ線8が発熱するようになる。
【0020】
図3は、車載センサ1から送信される電磁波に対する電極部11及び並列部12の位置関係を示している。車載センサ1は、定められた角度領域Aで電磁波を送信するものとされている。上記角度領域Aは、ほぼ水平に広がっている。ヒータ線8の電極部11は、車載センサ1から送信される電磁波と干渉しない位置、言い換えれば上記角度領域Aと重ならない位置に配置されている。ヒータ線8における複数の並列部12は、上記角度領域Aに対して平行となるように延びている。この例では、複数の並列部12がほぼ水平方向に延びている。
【0021】
ヒータ線8における複数の並列部12の線幅wは、センサカバー4における電磁波の透過性を確保可能な最大値未満の値とされる。こうした線幅wの最大値としては、例えば100μmがあげられる。また、電極部11及び複数の並列部12を含むヒータ線8は、薄膜状となるようにセンサカバー4に設けることの可能な方法、例えばスパッタによってセンサカバー4に設けられる。なお、ヒータ線8は、薄膜状となるようにセンサカバー4に設けることの可能な方法であってスパッタ以外の方法、例えば蒸着といった乾式めっきによって、あるいは電気めっき及び無電解めっきといった湿式めっきによってセンサカバー4に設けられていてもよい。
【0022】
次に、本実施形態におけるセンサカバー4の発熱構造の作用について説明する。
ヒータ線8の発熱量はヒータ線8全体の抵抗値Rによって決まり、その抵抗値Rはヒータ線8の長さL及び断面積Sによって決まる。ヒータ線8が薄膜状である場合、断面積Sはヒータ線8の線幅wと厚さtとの積である。ヒータ線8における複数の並列部12では、線幅wを上述した最大値未満としなければならないことから、並列部12での発熱量を望む値に抑えるための断面積Sの増大を、厚さtの調節によって実現しなければならなくなる。
【0023】
しかし、厚さtを例えば3μm以上と大きく設定すると、電極部11及び複数の並列部12を含むヒータ線8をセンサカバー4に設ける方法としてスパッタ等を採用した場合、厚さtが大きすぎてヒータ線8が剥がれるおそれがある。この点、ヒータ線8においては、複数の並列部12がそれぞれ二つの電極部11を繋ぐように同電極部11に対し接続されている。この場合、複数の並列部12における各々の厚さtが小さいことにより、並列部12の断面積Sの増大が制限され、各々の並列部12の抵抗値が大きくなるとしても、複数の並列部12の合計抵抗値に関しては小さく抑えられる。
【0024】
このため、ヒータ線8の発熱量(抵抗値に対応)を望む値に抑えるため、並列部12の厚さtを大きくする必要がなくなる。その結果、ヒータ線8をセンサカバー4に設ける方法として、例えばスパッタといったヒータ線8の厚さtをあまり小さくできない方法を採用することが可能になり、センサカバー4にヒータ線8を設ける方法が制限されることを抑制できる。
【0025】
また、ヒータ線8においては、電極部11の線幅が複数の並列部12の線幅の合計値以上とされている。これにより、複数の並列部12が繋がる電極部11の電流密度を小さく抑えることができる。その結果、電極部11の発熱量が多くなることを抑制でき、電極部11での発熱が多くなることに伴って、電極部11及び複数の並列部12を含むヒータ線8での発熱の偏りが生じることを抑制できる。
【0026】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)センサカバー4にヒータ線8を設ける方法が制限されることを抑制できる。
(2)ヒータ線8での発熱の偏りを抑制できる。
【0027】
(3)電極部11の線幅は並列部12の線幅よりも大きい。このため、電極部11は、車載センサ1から送信される電磁波を遮りやすい。しかし、電極部11が車載センサ1から送信される電磁波と干渉しない位置に配置されるため、その電磁波が電極部11で遮られることによって電磁波による車外の物体の検出精度が低下することを抑制できる。
【0028】
(4)車載センサ1は、定められた角度領域Aで電磁波を送信する。複数の並列部12は、上記角度領域Aに対して平行となるように延びている。このため、定められた角度領域A内で車載センサ1から電磁波が送信されるとき、その電磁波と複数の並列部12とが干渉しにくくなる。従って、電磁波による車外の物体の検出精度が複数の並列部12によって低下することを抑制できる。
【0029】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・センサカバー4としてケース2に取り付けられるものを例示したが、図4に示すようにケース2とは別に設けられるものであってもよい。この場合、ケース2には、その開口部を塞ぐための別のカバー13が取り付けられる。
【0030】
・車載センサ1からの電磁波が送信される角度領域Aは必ずしも水平に広がっている必要はない。
・ヒータ線8の二つの電極部11は、車載センサ1から送信される電磁波と干渉する位置、言い換えれば上記角度領域Aと重なる位置に配置されていてもよい。この場合、二つの電極部11の位置調整によって上記角度領域Aを制限するようにしてもよい。
【0031】
・ヒータ線8を金属ペーストのディスペンスもしくは印刷という方法でセンサカバー4に設けることも可能である。
・電磁波を送受信する車載センサ1として赤外線センサを例示したが、車載センサ1は電磁波としてミリ波を送受信するミリ波レーダであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…車載センサ
2…ケース
4…センサカバー
5…カバー基材
6…ベース層
7…透明フィルム
8…ヒータ線
9…保護層
10…ARコート層
11…電極部
12…並列部
13…カバー
図1
図2
図3
図4