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特開2022-13740過電流保護のためのディプリーションモードMOSFET
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013740
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】過電流保護のためのディプリーションモードMOSFET
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/02 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
H02H9/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021096991
(22)【出願日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】16/916,684
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ チン
(72)【発明者】
【氏名】ニール レジューン
(72)【発明者】
【氏名】オルウェア リウ
(72)【発明者】
【氏名】テディ トー
【テーマコード(参考)】
5G013
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013BA01
5G013CA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】過電流保護のためのディプリーションモードMOSFETを提供する。
【解決手段】回路700は、好ましくは正温度係数(Positive Temperature Coefficient(PTC))デバイスである抵抗素子に接続されたディプリーションモードMOSFETを特徴とし、PTCデバイス608にかかる電圧が、MOSFET606のゲートソース間電圧と同一となるように構成し、過電流イベント時に、MOSFETのドレインソース間電圧をクランプするためのTVSダイオード710を使用する。MOSFETとPTCデバイスとの間の伝熱が、過電流保護を促進する。ディプリーションモードMOSFET、PTCデバイス、及びTVSダイオードを含む二端子デバイスは、別の回路に過電流保護を提供する。PTCの両側に配置された2つのMOSFETを含む双方向回路も、AC電圧過電流保護用に検討される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電流保護を提供するために動作可能な回路であって、前記回路は、
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET))と、
2つの端子を有する抵抗デバイスであって、一方の端子は前記MOSFETのソースに接続され、第2の端子は前記MOSFETのゲートに接続された、抵抗デバイスと
を備え、
前記MOSFETおよび前記抵抗デバイスは、過電流イベント時に前記回路を保護する
回路。
【請求項2】
前記抵抗デバイスは、正温度係数(Positive Temperature Coefficient(PTC))デバイスである、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記MOSFETは、ディプリーションモードMOSFETである、請求項1または2に記載の回路。
【請求項4】
前記MOSFETは、NチャネルディプリーションモードMOSFETである、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記抵抗デバイスの前記第2の端子と接地との間に接続されるダイオードをさらに備え、前記ダイオードは、前記過電流イベント時に前記MOSFETのドレインソース間電圧をクランプする、請求項1から4のいずれか一項に記載の回路。
【請求項6】
前記ダイオードは、過渡電圧抑制(Transient Voltage Suppression(TVS))ダイオードである、請求項5に記載の回路。
【請求項7】
前記MOSFETは、前記抵抗デバイスに熱的に接続され、前記回路がサージ電流を受けたことに反応して、前記MOSFETは前記抵抗デバイスを加熱する、請求項1から6のいずれか一項に記載の回路。
【請求項8】
前記回路がサージ電流を受けたことに反応して、前記MOSFETのドレインソース間電圧VDSの上昇が前記MOSFETのゲートソース間電圧VGSの低下に連動している、請求項1から6のいずれか一項に記載の回路。
【請求項9】
前記PTCデバイスはサージ電流をクランプダウンし、前記PTCデバイスの抵抗の上昇が前記MOSFETのブロック性能をスピードアップする、請求項2に記載の回路。
【請求項10】
前記MOSFETは最大ゲートソース間電圧を有し、前記PTCデバイスは最大動作電圧を有し、前記最大動作電圧は前記最大ゲートソース間電圧を超えない、請求項2に記載の回路。
【請求項11】
回路に接続されるデバイスであって、前記デバイスは前記回路に過電流保護を提供するために動作可能であり、前記デバイスは、
ディプリーションモード金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET))と、
前記MOSFETのソースと前記MOSFETのゲートとの間に接続された正温度係数(Positive Temperature Coefficient(PTC))デバイスと
を備え、
前記PTCデバイスを通過する電流が、前記MOSFETのゲートソース間電圧と同等の前記PTCデバイスにかかる電圧を生じさせ、
前記MOSFETおよび前記PTCデバイスは、過電流イベント時に前記回路を保護する
デバイス。
【請求項12】
前記回路の電圧源に接続するための第1の端子と、
前記過電流イベントから保護されるべき前記回路の一部に接続するための第2の端子と
をさらに備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記過電流保護時に前記MOSFETのドレインソース間電圧VDSをクランプするためのダイオードをさらに備える、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記MOSFETは最大ゲートソース間電圧を有し、前記PTCデバイスは最大動作電圧を有し、前記最大動作電圧は前記最大ゲートソース間電圧を超えない、請求項11から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
過電流保護を提供するために動作可能な回路であって、前記回路は、
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET))と、
2つの端子を有する抵抗デバイスであって、第1の端子は前記MOSFETのソースに接続され、第2の端子は前記MOSFETのゲートに接続された、抵抗デバイスと、
前記抵抗デバイスに接続された第2のMOSFETと
を備え、
前記第2のMOSFETのゲートが前記第1の端子に接続され、前記第2のMOSFETのソースが前記第2の端子に接続された、
回路。
【請求項16】
前記抵抗デバイスは、正温度係数(Positive Temperature Coefficient(PTC))デバイスである、請求項15に記載の回路。
【請求項17】
前記第2のMOSFETを通したドレインソース間電圧VDSをクランプダウンするためのクランピングダイオードをさらに備える、請求項15または16に記載の回路。
【請求項18】
電圧源をさらに備え、前記電圧源はAC電圧源である、請求項15から17のいずれか一項に記載の回路。
【請求項19】
各MOSFETはさらに内部ダイオードを有し、前記MOSFETまたは前記第2のMOSFETのいずれかは、反転モードでそのそれぞれの内部ダイオードと導通する、請求項18に記載の回路。
【請求項20】
前記MOSFETおよび前記第2のMOSFETは、NチャネルディプリーションモードMOSFETである、請求項15から19のいずれか一項に記載の回路。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
過電流、即ち過剰電流は、回路に想定を超える電流が流れる状態である。過電流は、本質的に継続的であるか、過渡的であり得る。電圧過渡現象、即ち電気エネルギーの短期間のサージは、あらかじめ保存されていた、または大きな誘導負荷もしくは雷など別の手段により誘発された突然のエネルギーの解放の結果である。モータ、発電機の操作、またはリアクタンス回路コンポーネントの切り替えにより、繰り返しの過渡現象が生じることが多い。雷や、静電気(Electrostatic Discharge(ESD))により、散発的な過渡現象が生じ得る。
【0002】
コンポーネントの小型化が進んだことで、電気的ストレスに対する感度が増している。例えばマイクロプロセッサは、ESD過渡現象からの高電流に対処できない構造および導電路を有する。このようなコンポーネントは、極めて低電圧で動作するため、デバイスの中断および潜在的または致命的故障を防ぐように、電圧じょう乱制御に対する優先順位が高い。
【0003】
本改善が有用であり得るのは、これらおよび他の考慮事項に対してである。
【発明の概要】
【0004】
この概要は、発明を実施するための形態において以下で更に説明する概念の選択を簡略化された形態で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定するように意図されるわけでも、特許請求される主題の範囲の決定を助けるものとして意図されるわけでもない。
【0005】
過電流保護を提供するための回路の例示的実施形態が開示される。上記回路は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET))と、2つの端子を有する抵抗デバイスであって、一方の端子は上記MOSFETのソースに接続され、第2の端子は上記MOSFETのゲートに接続された、抵抗デバイスとを備え、上記MOSFETおよび抵抗デバイスは、過電流イベント時に上記回路を保護する。一実施形態において、上記抵抗デバイスは、正温度係数(Positive Temperature Coefficient(PTC))デバイスである。一実施形態において、上記MOSFETは、ディプリーションモードMOSFETである。一実施形態において、上記MOSFETは、NチャネルディプリーションモードMOSFETである。一実施形態において、上記回路は、上記抵抗デバイスの上記第2の端子と接地との間に接続されるダイオードをさらに備え、上記ダイオードは、上記過電流イベント時に上記MOSFETのドレインソース間電圧をクランプする。一実施形態において、上記ダイオードは、過渡電圧抑制(Transient Voltage Suppression(TVS))ダイオードである。一実施形態において、上記MOSFETは、上記抵抗デバイスに熱的に接続され、上記回路がサージ電流を受けたことに反応して、上記MOSFETは上記抵抗デバイスを加熱する。一実施形態において、上記回路がサージ電流を受けたことに反応して、上記MOSFETのドレインソース間電圧VDSのほぼ瞬間的上昇が上記MOSFETのゲートソース間電圧VGSのほぼ瞬間的低下に一致している。一実施形態において、上記PTCはサージ電流をクランプダウンし、上記PTCの抵抗の上昇が上記MOSFETのブロック性能をスピードアップする。一実施形態において、上記MOSFETは最大ゲートソース間電圧を有し、上記PTCは最大動作電圧を有し、上記最大動作電圧は上記最大ゲートソース間電圧を超えない。
【0006】
回路に過電流保護を提供するための、上記回路に接続されるデバイスの例示的実施形態も開示される。上記デバイスは、ディプリーションモードMOSFETと、上記MOSFETのソースと上記MOSFETのゲートとの間に接続された抵抗デバイスとを備え、上記デバイスを通過する電流が、上記MOSFETのゲートソース間電圧と同等の上記抵抗デバイスにかかる電圧を生じさせ、これによって上記MOSFETおよび上記抵抗デバイスは、過電流イベント時に上記回路を保護する。一実施形態において、上記デバイスは、上記回路の電圧源に接続するための第1の端子と、上記過電流イベントから保護されるべき上記回路の一部に接続するための第2の端子とをさらに備える。一実施形態において、上記抵抗デバイスはPTCデバイスである。一実施形態において、上記デバイスは、上記過電流保護時に上記MOSFETのドレインソース間電圧VDSをクランプするためのダイオードを備える。一実施形態において、上記MOSFETは最大ゲートソース間電圧を有し、上記PTCデバイスは最大動作電圧を有し、上記最大動作電圧は上記最大ゲートソース間電圧を超えない。一実施形態において、上記PTCの抵抗にかかる電圧は、上記MOSFETのゲートソース間電圧VGSに等しい。
【0007】
過電流保護を提供するための別の回路の例示的実施形態も開示される。上記回路は、MOSFETと、2つの端子を有する抵抗デバイスであって、第1の端子は上記MOSFETのソースに接続され、第2の端子は上記MOSFETのゲートに接続された、抵抗デバイスと、上記抵抗デバイスに接続された第2のMOSFETとを備え、上記第2のMOSFETのゲートが上記第1の端子に接続され、上記第2のMOSFETのソースが上記第2の端子に接続されている。一実施形態において、上記抵抗デバイスはPTCデバイスである。一実施形態において、上記回路は、上記第2のMOSFETを通したドレインソース間電圧VDSをクランプダウンするためのクランピングダイオードをさらに備える。一実施形態において、上記回路は、AC電圧源をさらに備える。一実施形態において、上記回路の各MOSFETは内部ダイオードを有し、これによって上記MOSFETのいずれかは、反転モードでそのそれぞれの内部ダイオードと導通する。一実施形態において、上記MOSFETおよび上記第2のMOSFETは、NチャネルディプリーションモードMOSFETである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための回路を示す図である。
【0009】
図2】例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための回路を示す図である。
【0010】
図3】例示的実施形態に係る、図1および図2の回路に対するテストの結果である波形である。
図4】例示的実施形態に係る、図1および図2の回路に対するテストの結果である波形である。
図5】例示的実施形態に係る、図1および図2の回路に対するテストの結果である波形である。
【0011】
図6】例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための回路を示す図である。
【0012】
図7】例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための回路を示す図である。
【0013】
図8】例示的実施形態に係る、図7の回路に対するテストの結果である2つの表を特徴とする。
【0014】
図9】例示的実施形態に係る、図6および図7の回路に対するテストの結果である波形である。
図10】例示的実施形態に係る、図6および図7の回路に対するテストの結果である波形である。
【0015】
図11】例示的実施形態に係る、図6および図7の回路に対するテストの結果である波形である。
図12】例示的実施形態に係る、図6および図7の回路に対するテストの結果である波形である。
【0016】
図13】例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための二端子デバイスを示す図である。
【0017】
図14】例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための双方向MOSFET回路構成を示す図である。
【0018】
図15】例示的実施形態に係る、図14の回路に対するテストの結果である波形である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、過電流保護を提供するためのいくつかの回路が開示される。回路は、正温度係数(Positive Temperature Coefficient(PTC))デバイスを含む抵抗素子に接続されたディプリーションモードMOSFETを特徴とし、PTCデバイスにかかる電圧が、MOSFETのゲートソース間電圧と同一となるように構成される。回路はさらに、過電流イベント時に、MOSFETのドレインソース間電圧をクランプするための過渡電圧抑制(Transient Voltage Suppression(TVS))ダイオードを使用して構成され得る。MOSFETとPTCデバイスとの間の伝熱が、過電流保護を促進する。ディプリーションモードMOSFET、PTCデバイス、およびTVSダイオードを含む二端子デバイスは、別の回路に過電流保護を提供し得る。PTCの両側に配置された2つのMOSFETを含む双方向回路も、AC電圧過電流保護用に検討される。例示的実施形態において、回路内にPTCとディプリーションモードMOSFETとの組合せが、電流固定部そしてストッパとして互いを保護するように含まれる。
【0020】
MOSFETとして知られる金属酸化膜半導体電界効果トランジスタデバイスは、電子デバイスにおける電子信号の切り替えおよび増幅に使用される半導体デバイスである。そのゲートの電圧を調整することで、MOSFETのソースとドレインとの間に配置されたチャネルの幅が変更される。MOSFETは、それがN型基板で構築されたPチャネルデバイスであるか、P型基板で構築されたNチャネルデバイスであるか、縦配置された半導体であるか、横配置された半導体であるか、ディプリーションモードか、エンハンスメントモードかに応じて、様々な構成をとる。
【0021】
ゲートを通じて電圧をかけることで起動するエンハンスメントモードMOSFETと異なり、ディプリーションモードMOSFETは、ゲート端子が0ボルト(VGS=0V)であっても「ノーマリーオン」デバイスとして知られている。ソースおよびドレイン領域間に設けられた薄いゲート酸化膜を有することに加えて、イオン注入により、ゲート酸化層の下、およびソースおよびドレイン領域間に導電性チャネルが形成される。基板-チャネル領域における活性ドーパントの濃度を利用して、MOSFETの閾値電圧(VTH)を所望の値に調整する。その名に違い、多くの最新のMOSFETは、絶縁性ゲート酸化膜上には、金属ではなく、ポリシリコンゲートが設けられて製造され得る。
【0022】
正温度係数(PTC)デバイスは、温度に反応する初期抵抗を有する材料で作られる。PTCデバイスの温度が上昇するにつれて、抵抗も増加する。PTC素子を通過する電流が所定の制限を超えて増加すると、PTC素子が熱くなることで、PTC素子の抵抗が増加し、その抵抗により、保護されたデバイスを通る電流の流れが劇的に低減または阻止され得る。それにより、回路を流れる軽減されていない故障電流にさもなければ起因するであろう損傷が防止される。PTCは、故障電流が落ち着くと、その低抵抗状態に戻る。したがって、PTCデバイスは復帰型ヒューズとも称される場合がある。高分子PTCデバイスは、ポリマーを使用して制作された、特定のクラスのデバイスである。
【0023】
過渡電圧抑制回路(TVS)およびツェナーダイオードの両方が、デバイスのクランピング電圧を超えて、電圧レベルがスパイクした場合に、過剰なエネルギーを吸収するのに使用される。ツェナーダイオードは電圧をより安定するように設計される一方、TVSダイオードはサージおよびESDイベントなどの高電圧過渡現象を防止する。TVSダイオードは、ナノ秒単位でツェナーダイオードよりも反応が速く、より高いサージ電流を吸収可能である。TVSダイオードを使用して回路を保護する場合、その回路の下流コンポーネントが高ピーク電圧で損傷するのを防ぐため、過渡電圧をクランプして固定値まで低下させる。
【0024】
本明細書に記載の例示的実施形態は、これら3つのデバイス、即ちMOSFET、PTC、およびダイオードを念頭に検討される。
【0025】
MOSFETのゲートとソースとの間に接続された抵抗器を有する回路
図1は、例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための回路100の代表図である。回路100は、電圧源102と、スイッチ104と、ディプリーションモードMOSFET106と、抵抗器108と、CKT110で示す保護対象回路とを備える。スイッチ104が閉じると、イオン注入により形成されたチャネルを通じて、電流がMOSFET104のドレイン(D)からソース(S)に流れる。ディプリーションモードMOSFETであることから、MOSFET106(VGS=0V)を通じて電流を流すことができるようにするのに、ゲート電圧は不要である。一実施形態において、MOSFET106はNチャネルディプリーションモードMOSFETである。別の実施形態において、MOSFET106はPチャネルディプリーションモードMOSFETである。PチャネルディプリーションモードMOSFETは、チャネルに流れる電流をピンチオフするため、バイアスVGSがNチャネルMOSFETと逆方向になっている点を除いては、NチャネルMOSFETと同様である。
【0026】
ディプリーションモードMOSFET106は、抵抗器108と直列接続されており、抵抗器の一方側(端子)がMOSFETのソース(S)に接続され、抵抗器の他方側(端子)がMOSFETのゲート(G)に接続されている。したがって、抵抗器108にかかる電圧は、MOSFET106のゲートソース間電圧(VGS)に等しい。CKT110は、抵抗器108と接地との間に直列接続される。
【0027】
図2は、例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための回路200の代表図である。回路100と同様に、回路200は、電圧源102と、スイッチ104と、ディプリーションモードMOSFET106と、抵抗器108とを備える。回路200においては、TVSダイオード210が保護対象回路であるCKT110に代えて、または加えて設けられる。一実施形態において、MOSFET206はNチャネルディプリーションモードMOSFETである。
【0028】
ディプリーションモードデバイスであるため、MOSFET106は負の閾値電圧VTHを有する。ディプリーションモードMOSFETについて、チャネルは完全に導電性であり、ゲート端子が0ボルト(VGS=0ボルト)であれば、強い電流がドレインとソースとの間に流れる。NチャネルMOSFETのゲートでのバイアスがますます負に傾くと、チャネルの導電性は減少し、最終的に-VGS(オフ)となるまでデバイスの閾値電圧VTHに到達し、MOSFETは非導電性となる。
【0029】
これら2つの期間(VGS=0ボルトの期間とVGS=-VTHの期間)の間で、MOSFET106のチャネルを通じた抵抗が増加する。蓄積したサージ電流が増加すると、MOSFET106は極めて急速にサチュレーションモードに移行する。この結果、MOSFET内の熱放散が生じる。
【0030】
1)過渡過電流、および2)継続的過電流という2種類の過電流保護について、両回路100および200を分析する。例示的実施形態において、ディプリーションモードMOSFET106のゲートとソースとの間の抵抗器108の直列接続が、過電流状態においてディプリーションモードMOSFETの電力散逸の一部を解放するように、過電流レベルを低減し得るかを判定するため、過渡および継続的過電流テストが実施される。
【0031】
過渡過電流をテストするため、Y/ZμsのサージでのXボルトとして、入力電圧102であるVinが指定される。X、Y、Zは整数である。例えば、落雷により生成される過電圧を1.2/50μs電圧波により特徴付ける。即ち、1.2μs内で電圧が最大電圧(Xボルト)に達し、50μs後に最大電圧の50%(0.5Xボルト)にまで減衰する。一実施形態において、回路100および200をX=100、Y=1.2、Z=50、または1.2/50μsのサージでの100Vの過渡過電流についてテストされる。あるいは、継続的過電流をテストするため、Wボルトの入力電圧Vinが回路100および200に供給される。Wは整数である。一実施形態において、W=48または48Vの入力電圧Vinについて、回路100および200を継続的過電流に関してテストする。
【0032】
サージ電流条件に関して、例示的実施形態においては、開回路電圧は100Vに設定され、サージ発生器内の仮想インピーダンスは2オームである。これにより、ピークでのサージ電流は100V/2=50Aとなる。この実施形態において、サージ電圧は意図的に100Vに維持された。これにより、サージをクランプダウンするための別のTVSダイオードの使用が避けられる。さらに、ディプリーションモードMOSFETの、超高電圧で回路をサージするのではなく、電流制限機能を検証するようにテストは指定される。この実施形態では、リテルヒューズ(登録商標)製のIXTH16N10D2ディプリーションモードMOSFET(VDS=100V、ID(on)=16A、RDS(on)=6.4mオーム)を使用する。
【0033】
2つの回路100および200に対する経験的テストの結果を、例示的実施形態に係る図3図4、および図5において、それぞれ2つの波形で示す。2つの波形それぞれにおいて、3つのパラメータがプロットされる。即ち、入力電圧Vinの結果としての、MOSFETのドレインソース間電圧(VDS)と、MOSFET106のゲートソース間電圧(VGS)と、サージ電流Iである。言い換えると、サージ電流Iの結果としての、MOSFET106にかかる電圧(VDS)と、抵抗器108にかかる電圧(VGS)とが測定される。さらに、過渡過電流をテストするため、回路100および200には、それぞれ1.2/50μsのサージを伴う、100Vの入力電圧Vinを受ける。本明細書に開示の全波形図に示すように、VGSおよびVDSは電圧波形で、一方、サージ電流Iは電流波形である。本明細書に示す波形はそれぞれ、20μs間隔で大まかに分割される。
【0034】
図3において、波形300は、抵抗器108の抵抗が1オームである回路100(図1)上の、結果としての過渡的サージIを示す。まずは波形300を見てみると、サージ電流IはトリガポイントT(0μs)で生じる。電圧VDSは即増加し(1μs以内)、その後約80μs掛けて減衰する。電圧VGSは即低下し、その後増加に転じ、約85μsで元の位置に戻る。波形300において、サージ電流Iは約87μs間続く。
【0035】
図3の第2波形350は、抵抗器108が1オームの抵抗を有し、TVSダイオード210がリテルヒューズ(登録商標)製の30KPA30CAダイオードである回路200(図2)上の、結果的としての過渡的サージIを示す。30KPA30CA TVSダイオードは、最大クランプ電圧Vが55.2Vである。サージ電流IはトリガポイントT(0μs)で開始し、VDSの増加とVGSの低下も生じる。電流サージIは約72μs間持続する。この時、ドレインソース間電圧VDSはTVSダイオード210によりクランプされる。TVSダイオード210の存在も、サージ電流Iに影響を及ぼす。
【0036】
続いて図4において、波形400は、抵抗器108の抵抗が0.5オームである回路100の過渡的サージの結果を示す。前述のとおりに、ドレインとソースとの間の電圧VDSは即上昇し、一方、ゲートソース間電圧VGSは低下する。サージ電流IはトリガポイントTで開始し、ここでも約80μs間持続する。波形450は、抵抗器108の抵抗が0.5オームであり、30KPA30CA TVSダイオード210が使用される回路200の過渡的サージの結果を示す。ここでも、TVSダイオード210は、電圧VDSをクランプダウンする。しかし、このTVSダイオード210の存在によって、約85μs間持続するサージ電流Iの持続時間が短縮されることはない。
【0037】
図5の波形500に関して、抵抗器108が回路100から除去されている(R=0オーム)。回路100の抵抗器は、MOSFET106のソースとゲートとの間に接続されている。これは、ソースとゲートとの間に電位差がないことを意味する。即ち、VGS=0である。したがって、波形500において、前述のとおりにドレインソース間電圧VDS(MOSFET106にかかる電圧)は上昇するが、ゲートソース間電圧VGSは変化しない。サージ電流IはトリガポイントTで開始し、持続期間は約82μsである。波形550は、抵抗器108がなく、30KPA30CA TVSダイオード210が使用される回路200の過渡的サージの結果を示す。ここで、サージ電流Iの持続期間は約62μsまで大幅に短縮される。その後小さなアーティファクトサージが生じる。
【0038】
上述の結果により、回路100および200は、入力電圧Vinが1.2/50μsのサージを伴う100Vである、電流スパイクなどの過渡過電流を受けることを示す。回路100および200は同様に、入力電圧Vinが48Vである継続的過電流に関してもテストされ得る。図3図4、および図5の経験的結果は、過電流抑制を提供する回路を構築するためのガイダンスを提供する。
【0039】
MOSFETのゲートとソースとの間にPTCが接続された回路
図6および図7は、例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するためのそれぞれ回路600および700の代表図である。回路600は、抵抗器108が正温度係数(PTC)デバイス608に置き換えられている点を除いては、回路100(図1)と同じである。同様に、回路700は、抵抗器108がPTCデバイス608に置き換えられている点を除いては、回路200(図2)と同じである。ここでも、PTCデバイス608の一方側(端子)はMOSFET606のソースに接続され、PTCデバイスの他方側(端子)はMOSFETのゲートに接続される。例示的実施形態において、PTCデバイス608は、高分子PTC(PPTC)デバイスである。
【0040】
回路100および200と同様に、回路600または700にサージ電流が印加されると、MOSFET606は急速に加熱される。同様に、PTCデバイス608は加熱されるとともに抵抗が増すように設計される。PTCデバイス608に電流が通過すると、PTCデバイスの温度は、トリップ点またはトリップ状態として知られる、あらかじめ設定された限界を超えて上昇する。これにより、PTCデバイス608の抵抗が大幅に上昇し、PTCを通じた電流の流れが低減するか停止する。
【0041】
さらに、MOSFET606とPTCデバイス608とを互いに隣接配置することは、サージ電流を受けるとMOSFETが加熱され、MOSFETがない場合よりも速くPTCデバイスを加熱することを意味する。したがって、いくつかの実施形態において、MOSFET606からPTC608への伝熱が生じ、これによりサージイベントに対する両デバイスの反応を加速する。
【0042】
PTC608は加熱されると、より抵抗が増す。PTC608は、保持電流Iおよびトリップ電流Iの2つのパラメータを有する。PTC608に流れる電流が保持電流を超えない限り、トリップ状態(抵抗が大幅に上昇する)とはならない。一方、PTC608に流れる電流がそのトリップ電流値を超えると、さらに電流をブロックするように、PTC608の抵抗が急速に上昇する。この上昇は、PTCのトリップ状態を維持するように微小な電流が流れる定常状態となるまで続く。PTCは、故障電流がなくなった後にのみ、低抵抗状態にリセットする。
【0043】
図8は、例示的実施形態に係る、回路700(図7)にテストを実行した結果を示すのに使用される2つの表800および850を含む。この例では、回路700は、TVSダイオード710だけでなく、MOSFET706のソースとゲートとの間に接続されたPTCデバイス708を備える。両表は、1)PTC708がリテルヒューズ(登録商標)製のRXEF375 PTCデバイスである(条件1)、および2)PTC708が回路700から除去される(条件2)の2条件についてのパラメータを提供する。これは、PTC708を0オーム抵抗器に置き換えることに等しい。言い換えると、第2条件は、単純にPTC708を除去し、MOSFET706のソースをゲートに接続することである。
【0044】
この実施形態において、MOSFET706およびTVSダイオード710は、それぞれリテルヒューズ(登録商標)製のIXTH16N10D2 D-MOSFETおよび30KPA30A TVSダイオードである。さらに、回路700は、1.2/50μsのサージを伴う130Vの入力電圧Vinを受ける。IXTH16N10D2 MOSFETのデータシートを参照すると、VDSおよびVDGのそれぞれに対するその最大定格電圧は100Vであり、電圧VGSに対するその最大定格は+/-20Vである。したがって、ピーク電圧値が130Vの1.2/50μsの過渡的波形の場合、MOSFETはサージエネルギーを吸収し、一部の通過電圧が流れることが可能となる。サージエネルギーをさらにクランプダウンするのに、TVSダイオードが必要となる。
【0045】
表800は、PTCと非PTC条件に対して、TVSダイオード710のドレインソース間電圧VDS、ゲートソース間電圧VGS、サージ電流I、および最大クランプ電圧Vをプロットする。表850は、PTCと非PTC条件に対して、ドレインソース間電圧VDS、サージ電流I、およびMOSFET電力をプロットする。表800、850は、MOSFET706に対して直列のPTC708と、MOSFETのソースとゲートとの間に接続されたPTCを適用したサージテストでは、MOSFETのソースに直接ゲートを接続した場合(条件2)と比較し、PTCがサージレベルをクランプダウンし、MOSFETに対してサージ電力散逸を低減する(条件1)ことを示す。したがって、PTCは、熱放散により、サージレベルの一部のクランプダウンに寄与し、ディプリーションモードMOSFETを流れる電流をさらにブロックするため、負のゲートソース間電圧(VGS=-0.5V)をより生成する。
【0046】
図8の結果は、過渡電圧が印加されると、回路700の動作に関するデータを提供する。例示的実施形態においては、図7の回路700は継続的過電流をテストするためにも使用される。表800および850は、PTC608を定位置に有してゼロオーム抵抗を置き換えることにより、TVSダイオード710のクランプ電圧レベルVを低減することに寄与することを示している。さらに、PTC608の存在によってVDSが増加する一方、消費されたMOSFET電力と同様に、VGSおよびIも低減される。過渡または継続的過電流保護を提供するために、これらは有望な結果である。
【0047】
異なるPTCデバイスを有する回路600および700に対する追加の経験的テストの結果を、例示的実施形態に係る図9および図10において、それぞれ2つの波形で示す。各回路600および700には、1.2/50μsのサージを伴う130Vの入力電圧Vinを受ける。波形900は、PTC608がこれもリテルヒューズ(登録商標)製のRXEF375 PTCデバイスである回路600の過渡的サージの印加の結果を示す。RXEF375デバイスは、7.50Aのトリップ電流I、0.03オームの最小抵抗RMIN、0.05オームの最大抵抗RMAXを有する。前述のとおりに、ドレインとソースとの間の電圧VDSは即上昇して、MOSFET606を加熱し、一方、ゲートソース間電圧VGSは低下する。この例では、サージ電流は約50μs間続く。波形950は、PTC708がRXEF375 PTCであり、30KPA30CA TVSダイオード710が使用される回路700の過渡的サージの結果を示す。ここでも、サージ電流の持続時間は約50μsであり、予期されたように、MOSFETチャネルのドレインソース間電圧VDSをTVSダイオード710によってクランプダウンさせる。RXEF375 PTC708が寄与して、電流は約13.57Aにクランプされる。サージ波形は、130Vのピーク電圧および130V/2オーム=65Aのピーク電流を有する1.2/50μs波として特徴付けられる(2オームは、1.2/50μs波形についてのサージ発生器ネットワークの仮想インピーダンスである)。RXEF375 PTC708が寄与して、電流は約13.75Aにクランプされる。前述のとおりに、MOSFETと2つの回路内の各PTCとの間の熱的効果が、例示的実施形態において、回路をサージ電流によりよく反応させることに寄与する。
【0048】
続いて図10において、波形1000は、PTC608が除去されている(R=0オーム)回路600の過渡的サージの印加の結果を示す。ドレインとソースとの間の電圧VDSは即上昇し、一方、ゲートソース間電圧VGSは変化しない。サージ電流Iは約40μs間持続する。波形1050は、PTC708が除去され、30KPA30CA TVSダイオード710が使用される回路700の過渡的サージの結果を示す。サージ電流Iの持続時間は約40μsであり続け、MOSFETチャネルのドレインソース間電圧VDSをクランプダウンさせる。MOSFET706のゲートソース間電圧VGSが短絡されることにより、電流は約26.36Aでクランプされ、これはゲートとソースとの間に直列のPTCよりも大きい(図9)。したがって、PTCは2つの効果を有する。第一に、サージに反応してその抵抗を増加させることであり、第二に、ゲートソース間電圧VGSをよりマイナスのレベルに増加させ、これによってMOSFETの抵抗を引き上げることである。これによって、ゲートソース端子間を単に接続するよりも、MOSFETのゲートとソースとの間にPTCを使用する効果が示される。ここでも、MOSFETとPTCとの間の熱的効果が回路600および700の両方で観察される。上記回路は、その他の入力電圧、MOSFET、PTCデバイス、およびTVSダイオードと共にテストされ得る。
【0049】
2つの回路600および700に対する経験的テストの結果を、例示的実施形態に係る図11および図12において、それぞれ2つの波形で示す。2つの波形それぞれにおいて、3つのパラメータが特徴とされる。即ち、入力電圧Vinの結果としての、MOSFET606のゲートソース間電圧(VGS)と、MOSFETのドレインソース間電圧(VDS)と、サージ電流Iである。言い換えると、サージ電流Iの結果としての、MOSFET606にかかる電圧(VDS)と、PTC608にかかる電圧(VGS)とが測定される。回路600および700の両方には、1.2/50μsのサージを伴う100Vの入力電圧Vinを受ける。
【0050】
図11において、波形1100は、PTC608がリテルヒューズ(登録商標)製のRXEF030 PTCデバイスである回路600(図6)への過渡的サージの印加の結果を示す。RXEF030デバイスは、0.60Aのトリップ電流I、0.88オームの最小抵抗RMIN、1.33オームの最大抵抗RMAXを有する。回路600は、トリガポイントT(0μs)でサージ電流Iを受ける。ドレインとソースとの間の電圧VDSは即上昇し、その後、約60μsかけて減衰する。一方、ゲートソース間電圧VGSは、これも非常に急速に約20V低下する。波形1100において、サージ電流Iは約67μs間持続し、これは波形300、400、および500に対するものより大幅に短い。
【0051】
図11の第2の波形1150は、PTC708がこれもRXEF030 PTCデバイスであり、TVSダイオード710が30KPA30CAダイオードである回路700(図7)の過渡的サージの印加の結果を示す。ここで、TVSダイオード710は、MOSFETチャネルを介した電圧VDSを40V未満までクランプする。サージ電流Iの持続時間は、波形1100のものよりもわずかに短く、約65μsである。したがって、クランプするVDSに加えて、TVSダイオード612も、波形1100において示されたものに対してサージ電流Iの持続時間を減少させることによってプラスの効果を有する。
【0052】
波形1100および1150において、(波形1150において電圧はTVSダイオード708によってクランプダウンされるものの)VDSと示されるMOSFET606にかかる電圧は、サージ電流Iを受けると急速に増加する。ドレインとソースとの間のこのほとんど瞬間的な電圧の増加は、MOSFET606が加熱されていることを意味する。一方、VGSと示されるPTC608にかかる電圧は低下する。しかし、電流サージが終わるまでに、波形に示されるようにPTCデバイス608は加熱される。したがって、MOSFET606はPTC608に対して熱的効果を有し、その加熱によって回路600をサージ電流により急速に反応させることができる。
【0053】
続いて図12において、波形1200は、PTC608がこれもリテルヒューズ(登録商標)製のRXEF065 PTCデバイスである回路600の過渡的サージの印加の結果を示す。RXEF065デバイスは、1.30Aのトリップ電流I、0.31オームの最小抵抗RMIN、0.48オームの最大抵抗RMAXを有する。前述のとおりに、ドレインとソースとの間の電圧VDSは即上昇して、一方、ゲートソース間電圧VGSは低下する。サージ電流Iは約65μs間続く。波形1150は、PTC708がRXEF065 PTCであり、30KPA30CA TVSダイオード710が使用される回路700の過渡的サージの結果を示す。今回は、サージ電流Iの持続時間は約65μsであり、MOSFETチャネルのドレインソース間電圧VDSをTVSダイオード710によってクランプダウンさせる。
【0054】
回路600と同様に、波形1200および1250は、回路700においてMOSFET706が電圧VDSにおけるほとんど瞬間的な増加によって加熱されていることを示す。PTC708は最初から加熱されてはいないが、サージ電流Iが低下するにつれてVGSが増加することは、PTC708がMOSFET706に近接していることの熱的効果によって加熱されていることを示す。この熱的効果によって、いくつかの実施形態において、回路700をサージ電流によりよく反応させる。
【0055】
二端子デバイスの用途
図13は、例示的実施形態に係る、過電流保護を提供するための回路1300の代表図を示す。回路1300は、ディプリーションモードMOSFET1304と、正温度係数(Positive Temperature Coefficient(PTC))デバイス1308と、TVSダイオード1312とを特徴とする。上述の回路600および700におけるPTCデバイス608および708と同様に、PTCデバイス1308は、ソースとゲートとの間でMOSFET1304と直列に接続される。したがって、PTCデバイスにかかる電圧は、MOSFET1304のゲートソース間電圧VGSと同じである。一実施形態において、MOSFET1304はNチャネルディプリーションモードMOSFETである。例示的実施形態において、PTCデバイス1308は、高分子PTC(PPTC)デバイスである。
【0056】
ディプリーションモードデバイスであるため、MOSFET1304は負の閾値電圧VTHを有する。ディプリーションモードMOSFETについて、チャネルは完全に導電性であり、ゲート端子が0ボルト(VGS=0ボルト)であれば、強い電流がドレインとソースとの間に流れる。NチャネルMOSFETのゲートでのバイアスがますます負に傾くと、チャネルの導電性は減少し、最終的に-VGS(オフ)となるまでデバイスの閾値電圧VTHに到達し、MOSFETは非導電性となる。
【0057】
これら2つの期間(VGS=0ボルトの期間とVGS=-VTHの期間)の間で、MOSFET1304のチャネルを通じた抵抗が増加する。したがって、回路1300にサージ電流が印加されると、MOSFET1304は急速に加熱される。
【0058】
同様に、PTCデバイス1308は加熱されるとともに抵抗が増すように設計される。PTCデバイス1308に電流が通過すると、PTCデバイスの温度は、切断点として知られる、あらかじめ設定された限界を超えて上昇する。これにより、PTCデバイス1308の抵抗が大幅に上昇し、PTCを通じた電流の流れが低減するか停止する。
【0059】
さらに、MOSFET1304とPTCデバイス1308とを互いに隣接配置することは、サージ電流を受けるとMOSFET1304が加熱され、MOSFETがない場合よりも速くPTCデバイス1308を加熱することを意味する。したがって、いくつかの実施形態において、MOSFET1304からPTC1308への伝熱が生じ、これによりサージイベントに対する両デバイスの反応を加速する。
【0060】
PTC1308は加熱されると、より抵抗が増す。電圧はPTC1308を通じて高まり、ついにはMOSFET1304の閾値電圧VTHを超え、MOSFETをオフにする。
【0061】
ゲートがPTC1308の一方側に接続されていることから、ゲートに対して別途電圧を印加する必要はない。例示的実施形態においては、回路1308は、他の回路における過電流保護として使用される二端子デバイスとしてパッケージされる。したがって、デバイス1300の第1の端子1314が保護対象の回路の電圧源に接続され、一方、第2の端子1316が保護対象の回路の一部(例えば、回路の下流コンポーネント)に接続される。例示的実施形態において、デバイス1300は、継続的過電流および過渡過電流の両方に対して保護する。
【0062】
双方向MOSFET回路
図14は、例示的実施形態に係る、2つのMOSFETの間に配置されPTCデバイスに接続された、双方向保護を提供する一対のMOSFETを含む回路1400を示す代表図である。回路1400は、AC入力である電圧入力1402と、スイッチ1404と、第1のディプリーションモードMOSFET1406と、PTCデバイス1408と、第2のディプリーションモードMOSFET1412と、CKT1410とを備える。一実施形態において、MOSFET1406および1412は、逆並列構成で接続されたNチャネルディプリーションモードMOSFETである。例示的実施形態においては、PTCデバイス1408は、高分子PTC(PPTC)デバイスである。
【0063】
PTCデバイス1408は、前述のとおりに、第1端でMOSFET1406のソースに接続され、第2端で同じMOSFETのゲートに接続される。第2のMOSFETを導入することで、上記第1端はMOSFET1412のゲートに接続され、上記第2端は第2のMOSFETのソースに接続される。回路1400がAC電圧入力を受けると、いずれかのMOSFETがその内部ダイオードで構成される。正のサイクルAC電流が回路1400に流れ込むと、第1のMOSFET1406およびPTC1408は電流制限器として一緒に動作し、一方、他方のMOSFET1412は、MOSFET1412のボディダイオードのみが導通するように反転モードで機能する。この動作は、AC電流の他方のサイクルが流れるときに反転し、即ち、MOSFET1412およびPTC1408は電流制限器として一緒に動作し、MOSFET1406のダイオードのみが導通する。したがって、この回路1400はAC電流制限保護を提供する。一実施形態において、CKT1410は、MOSFET1412およびMOSFET1406の両方にかかる電圧をクランプダウンするために双方向ダイオードに置き換えられる。第2の実施形態において、ダイオードは双方向TVSダイオードであり、これによって両方向のサージ電流を保護する。さらに、一実施形態において、√2を乗じたRMS電圧はDCピーク電圧であることから、長期過電流PTCトリップの間にゲートソース間電圧VGSが25Vを超えない(17V×1.414=24V)ことを確実とするためにAC RMS電圧は最大で17Vに制限される。
【0064】
回路1400に対する経験的テストの結果を、例示的実施形態に係る図15において、2つの波形で示す。回路1400は、1.2/50μsのサージを伴う90Vの入力電圧Vinを受ける。長期過電流PTCトリップの間に電圧VGSが25Vを超えないことを保証するために、AC RMS電圧は最大で17Vに制限される。MOSFET1406および1412の両方ともリテルヒューズ(登録商標)製のIXTH16N10D2(VDS=100V、ID(on)=16A、締め付けトルクTO-247においてRDS(on)=64mオーム)であり、PTCデバイス1408は最大抵抗RMAXが0.05オームのRXEF375である。
【0065】
波形1500において、3つのパラメータが特徴とされる。即ち、入力電圧Vinの結果としての、MOSFET1306のゲートソース間電圧(VGS)と、MOSFETのドレインソース間電圧(VDS)と、サージ電流Iである。言い換えると、サージ電流Iの結果としての、MOSFET1406にかかる電圧(VDS)と、PTC1408にかかる電圧(VGS)とが測定される。波形1450において、入力電圧Vinの結果としての、MOSFET1412のゲートソース間電圧(VGS)と、MOSFETのドレインソース間電圧(VDS)と、サージ電流Iである。言い換えると、サージ電流Iの結果としての、MOSFET1412にかかる電圧(VDS)と、PTC1408にかかる電圧(VGS)とが測定される。したがって、PTC1408にかかる電圧は、MOSFET1406および1412の両方のゲートソース間電圧である。
【0066】
波形1500および1550はほぼ同一である。したがって、これらはほぼ対称である。これは、回路1400の逆並列MOSFETプラスPTCの構成が、AC電力保護を提供することを示している。
【0067】
上記実施形態は、場合によっては、ディプリーションモードMOSFET、PTCデバイス、およびTVSダイオードの特定のバージョンを検討する。それでも、上記回路の1つ以上において、様々な異なる用途について過電流保護を提供するために、その他のデバイスが使用され得る。いくつかの実施形態において、VDSX=100V、ID(on)≧16A、およびRDS(on)≦64mオームのパラメータを有するNチャネルディプリーションモードMOSFET IXTT16N10D2またはIXTH16N10D2がMOSFETに使用される。いくつかの実施形態において、VDSX=500V、ID(on)≧800mA、およびRDS(on≦4.6オームのパラメータを有する、リテルヒューズ(登録商標)製のNチャネルディプリーションモードMOSFET IXTY08N50D2、IXTA08N50D2、またはIXTP08N50D2がMOSFETに使用される。いくつかの実施形態において、VDSX=500V、ID(on)≧16A、およびRDS(on)≦300mオームのパラメータを有するNチャネルディプリーションモードMOSFET IXTH16N50D2またはIXTT16N50D2がMOSFETに使用される。
【0068】
いくつかの実施形態において、リテルヒューズ(登録商標)製のPoly-Fuse(登録商標)72Rシリーズのラジアルリード復帰型PTCがPTCデバイスに使用される。いくつかの実施形態において、Polyswitch(登録商標)RXEFシリーズのラジアルリード復帰型PPPTがPTCデバイスに使用される。いくつかの実施形態において、リテルヒューズ(登録商標)製の30KPAシリーズのアキシャルリード型過渡電圧抑制ダイオードがTVSダイオードに使用される。リテルヒューズ(登録商標)製または他のデバイスメーカー製のものにかかわらず、他のデバイスの使用が本開示の要旨から逸脱することなく検討され得る。
【0069】
例示的実施形態において、PTCデバイスを導入することで、PTCデバイスに接続されたディプリーションモードMOSFETが、過渡および継続的状況の両方において過電流を制限するために一緒に機能することが示された。一実施形態において、上述したような回路におけるMOSFETとPTCとの組合せは、30V未満で機能する。これがMOSFETの最大ゲートソース間電圧VGSおよび最大PTC動作電圧未満であるためである。別の実施形態において、ディプリーションモードMOSFETへの損傷を防ぐために、入力電圧範囲は、機能的な動作電圧レベルである5から24Vの間に制限される。別の実施形態において、ディプリーションモードMOSFETにヒートシンクを追加することにより、MOSFETの熱性能を延ばすことができる。これは、ヒートシンクの存在により全体の熱インピーダンスが改善するためである。
【0070】
本明細書で使用する場合、単数で記載され「a」または「an」という語に続く要素または段階は、複数の要素または段階を除外するものと明示的に記載されない限り、複数の要素または段階を除外しないものと理解されたい。更に、本開示の「一実施形態」への言及は、記載されている特徴も組み込んだ更なる実施形態の存在を除外するものと解釈されることを意図していない。
【0071】
本開示は特定の実施形態に言及しているが、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本開示の領域および範囲から逸脱することなく、記載されている実施形態に対して数々の修正、改変、および変更を行うことが可能である。従って、本開示は、記載されている実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の文言およびその均等物により定義される完全な範囲を有することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【外国語明細書】