(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137476
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】乾燥装置の制御システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/13 20190101AFI20220914BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20220914BHJP
F26B 17/20 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C02F11/13 ZAB
F26B25/00 A
F26B17/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036991
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美有
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 智弘
【テーマコード(参考)】
3L113
4D059
【Fターム(参考)】
3L113AA09
3L113AB05
3L113AC40
3L113AC58
3L113BA37
3L113CA02
3L113DA07
3L113DA24
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA30
4D059BD01
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4D059BE07
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4D059BE16
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4D059BJ03
4D059BJ07
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4D059EA01
4D059EA02
4D059EA05
4D059EA06
4D059EA08
4D059EA10
4D059EA15
4D059EB01
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】より運転管理や省力化、安定運転の向上することが可能となる乾燥装置の制御システムを提供する。
【解決手段】汚泥を乾燥するための乾燥装置5の制御システム10は、乾燥装置5の運転パラメータ、および乾燥装置5の状態データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築されたモデルを備え、制御システム10は、運転パラメータおよび状態データをモデルに入力し、乾燥装置5から排出される乾燥汚泥の含水率の予測値をモデルに従って算定し、さらに含水率を目標範囲内に収めることができる運転パラメータの最適値を決定するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を乾燥するための乾燥装置の制御システムであって、
前記乾燥装置の運転パラメータ、および前記乾燥装置の状態データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築されたモデルを備え、
前記制御システムは、前記運転パラメータおよび前記状態データを前記モデルに入力し、前記乾燥装置から排出される乾燥汚泥の含水率の予測値を前記モデルに従って算定し、さらに前記含水率を目標範囲内に収めることができる前記運転パラメータの最適値を決定するように構成されていることを特徴とする乾燥装置の制御システム。
【請求項2】
前記乾燥装置の運転調整に際して、調整すべき前記運転パラメータの優先順位が予め定められていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項3】
前記制御システムは、前記優先順位を、前記機械学習時に算出される特徴量の重要度に従って決定するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項4】
前記制御システムは、前記運転パラメータの現在の数値と前記最適値との差が所定の調整幅より大きい場合、前記運転パラメータを段階的に調整するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項5】
前記状態データは、前記乾燥装置の前段に設置される脱水システムの運転パラメータおよび状態データと、前記脱水システムに組み込まれた学習済みモデルに従って算定された脱水汚泥の含水率の推定値のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項6】
前記モデルは、
前記運転パラメータを含み、前記状態データを含まない訓練データを用いて機械学習により構築された第1モデルと、
前記運転パラメータおよび前記状態データの両方を含む訓練データを用いて機械学習により構築された第2モデルを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項7】
前記第1モデルは、前記運転パラメータの最適値の決定に使用され、
前記第2モデルは、前記含水率の予測値の算定に使用されることを特徴とする請求項6に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項8】
前記制御システムは、前記第1モデルに従って算定された前記含水率の予測値と、前記第2モデルに従って算定された前記含水率との差が所定の許容値を超えた場合は、前記第1モデルのための機械学習を再度行い、前記第1モデルを更新するように構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項9】
前記訓練データに含まれる前記運転パラメータの数値は、前記乾燥装置の通常運転時よりも広い範囲内で分散していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項10】
前記制御システムは、前記機械学習を定期的または不定期に実行して前記モデルを更新するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項11】
前記制御システムは、Webアプリケーションを用いて、前記乾燥装置から取得されるデータの表示、前記乾燥装置の運転操作、前記モデルの更新を実行するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の乾燥装置の制御システム。
【請求項12】
前記訓練データは、前記運転パラメータおよび前記状態データに加え、汚泥の画像データ、汚泥の音データ、および汚泥に起因して発生する振動データのうちの少なくとも1つを含み、
前記制御システムは、前記運転パラメータおよび前記状態データと、汚泥の画像データ、汚泥の音データ、および汚泥の振動データのうちの少なくとも1つを前記モデルに入力し、前記乾燥装置から排出される乾燥汚泥の含水率の予測値を前記モデルに従って算定するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の乾燥装置の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥物を攪拌しながら乾燥させる乾燥システムに関し、特に最適な自動運転や作業員の運転サポートをすることができる乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水処理等で排出された汚泥物を攪拌しながら搬送して乾燥させる乾燥装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の乾燥装置では、汚泥物の攪拌および搬送のために、複数列の羽根(パドル)が設けられたシャフトが利用される。シャフトが回転することによって、シャフトに設けられた羽根もシャフト周りに回転し、それによって、シャフトの一端側に供給された汚泥物は、攪拌されながらシャフトの他端側に搬送される。この攪拌、搬送の間に、汚泥物は加熱されて乾燥する。
【0003】
この種の乾燥装置では、2本のシャフトにそれぞれ固定された羽根を互いにオーバーラップさせることで、攪拌効果を高めている。乾燥装置においては、乾燥後の汚泥物の含水率が安定し、且つ汚泥物の分散不良や過乾燥の防止を確実に行うことができるといった運転管理の容易性が求められているとともに、イニシャルコストを低減することのできる新規な乾燥装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-131784号公報
【特許文献2】特開2020-114569号公報
【特許文献3】特開2020-113151号公報
【特許文献4】特開2019-051458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、汚泥を撹拌及び搬送しながら乾燥する汚泥乾燥装置及びそれを含む汚泥乾燥システムを開示する。汚泥物の含水率は、被処理汚泥や乾燥装置の運転状態等の様々な要因により変動し、目標含水率におさめるために運転員が目視や経験に基づいて運転制御をする必要がある。しかし、運転員の経験やノウハウを必要とすること、運転員によって運転状態が異なることなど、安定運転は難しい。
【0006】
上記特許文献2は、脱水機から排出される脱水ケーキの含水率を推定する方法を開示する。しかし、該当特許文献2では、含水率を予測したうえで、含水率を目標範囲内におさめるように運転パラメータを調整することは提案されていない。
【0007】
上記特許文献3は、誤差が閾値を超えた場合にモデルを更新することを開示する。しかし、予測対象である含水率を実測しない場合は、予測値と実測値の誤差を把握することができない。
【0008】
上記特許文献4は、脱水システムから排出される濁質残渣の状態予測値を算出し、予測値を目標範囲内におさめるような運転パラメータを出力する技術を開示する。しかし、運転パラメータの出力に際して、安定運転、効率化などに着目した場合、更なる改善が求められる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、より運転管理や省力化、安定運転の向上することが可能となる乾燥装置の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、汚泥を乾燥するための乾燥装置の制御システムであって、前記乾燥装置の運転パラメータ、および前記乾燥装置の状態データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築されたモデルを備え、前記制御システムは、前記運転パラメータおよび前記状態データを前記モデルに入力し、前記乾燥装置から排出される乾燥汚泥の含水率の予測値を前記モデルに従って算定し、さらに前記含水率を目標範囲内に収めることができる前記運転パラメータの最適値を決定するように構成されている乾燥装置の制御システムが提供される。
【0011】
一態様では、前記乾燥装置の運転調整に際して、調整すべき前記運転パラメータの優先順位が予め定められていることを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記優先順位を、前記機械学習時に算出される特徴量の重要度に従って決定するように構成されていることを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記運転パラメータの現在の数値と前記最適値との差が所定の調整幅より大きい場合、前記運転パラメータを段階的に調整するように構成されていることを特徴とする。
一態様では、前記状態データは、前記乾燥装置の前段に設置される脱水システムの運転パラメータおよび状態データと、前記脱水システムに組み込まれた学習済みモデルに従って算定された脱水汚泥の含水率の推定値のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0012】
一態様では、前記モデルは、前記運転パラメータを含み、前記状態データを含まない訓練データを用いて機械学習により構築された第1モデルと、前記運転パラメータおよび前記状態データの両方を含む訓練データを用いて機械学習により構築された第2モデルを含むことを特徴とする。
一態様では、前記第1モデルは、前記運転パラメータの最適値の決定に使用され、前記第2モデルは、前記含水率の予測値の算定に使用されることを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記第1モデルに従って算定された前記含水率の予測値と、前記第2モデルに従って算定された前記含水率との差が所定の許容値を超えた場合は、前記第1モデルのための機械学習を再度行い、前記第1モデルを更新するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
一態様では、前記訓練データに含まれる前記運転パラメータの数値は、前記乾燥装置の通常運転時よりも広い範囲内で分散していることを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記機械学習を定期的または不定期に実行して前記モデルを更新するように構成されていることを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、Webアプリケーションを用いて、前記乾燥装置から取得されるデータの表示、前記乾燥装置の運転操作、前記モデルの更新を実行するように構成されていることを特徴とする。
一態様では、前記訓練データは、前記運転パラメータおよび前記状態データに加え、汚泥の画像データ、汚泥の音データ、および汚泥に起因して発生する振動データのうちの少なくとも1つを含み、前記制御システムは、前記運転パラメータおよび前記状態データと、汚泥の画像データ、汚泥の音データ、および汚泥の振動データのうちの少なくとも1つを前記モデルに入力し、前記乾燥装置から排出される乾燥汚泥の含水率の予測値を前記モデルに従って算定するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
運転パラメータおよび状態データに基づき乾燥汚泥の含水率を推定し、含水率を目標範囲内に収めるような最適な運転パラメータを決定することにより、安定運転を実現し、技術未熟者でも運転可能にする。
含水率に影響が大きい運転パラメータを優先的に調整することにより、効率的に含水率を目標範囲内に収めることができる。
乾燥装置は脱水システムと併せて使用される場合が多く、脱水システムのデータを取り入れることにより、前段までの運転状態及び汚泥状態をモデルに反映することができ、より精度の高い含水率推定が可能となる。
段階的に運転パラメータを調整することにより、安定した運転を実現し、より効率的かつ正確に含水率を目標範囲内に収めることができる。
複数の学習済みモデルによる出力を比較することで、学習済みモデルの精度低下を検出できる。さらに、含水率を実測しない場合においても、予測精度をモニタリングすることができる。
通常運転時よりも多様な数値を取り、広い範囲で分散するデータを含む訓練データを作成することにより、モデルの適用範囲が広がり、より精度の高いモデルを構築することができる。
Webアプリケーションを用いることで、遠隔監視、遠隔からのモデルの更新や乾燥装置の運転制御を可能にし、効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】汚泥を乾燥させる乾燥装置と、当該乾燥装置の制御するための制御システムを備えた乾燥システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図3】パドルをシャフトの軸方向から見た図である。
【
図5】脱水システムの他の実施形態を示す図である。
【
図6】脱水システムのさらに他の実施形態を示す図である。
【
図7】訓練データを用いて機械学習によりモデルを作成し、学習済みのモデルを使用して含水率の予測値を算出するフローを説明する図である。
【
図9】運転パラメータの重要度を示すグラフである。
【
図10】画像データを取得するための構成を備えた乾燥システムの実施形態を示す模式図である。
【
図11】音データを取得するための構成を備えた乾燥システムの実施形態を示す模式図である。
【
図12】振動データを取得するための構成を備えた乾燥システムの実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、汚泥を乾燥させる乾燥装置と、当該乾燥装置の制御するための制御システムを備えた乾燥システムの一実施形態を示す模式図である。この乾燥システムは、汚泥やスラリーなどの懸濁液を脱水することで得られた濁質残渣を乾燥させるのに適したシステムである。特に、乾燥システムは、スクリュープレス装置などの脱水装置から排出された脱水ケーキを乾燥させる用途に好適に使用される。以下に説明する実施形態で乾燥装置によって乾燥される対象の汚泥の例には、そのような濁質残渣や脱水ケーキが含まれる。
【0017】
乾燥システムは、脱水された濁質残渣などの汚泥を乾燥する乾燥装置5と、乾燥装置5によって乾燥された汚泥の含水率の予測値を算定する制御システム10を備えている。乾燥装置5は、汚泥を搬送する投入コンベヤ1と、投入コンベヤ1によって搬送された汚泥を受け入れる乾燥室14が内部に形成されたハウジング15と、乾燥室14内の汚泥を攪拌するための攪拌ロータ17と、攪拌ロータ17を回転させる電動機18を備えている。本実施形態では、2つの攪拌ロータ17が設けられているが、
図1では1つの攪拌ロータ17のみが図示されている。
【0018】
乾燥装置5に投入される汚泥は、含水率の多い汚泥またはスラリーなどの懸濁液を脱水装置(例えばスクリュープレス装置またはベルトプレス装置)によって脱水した後に残る低含水率の濁質残渣である。この濁質残渣は、一般に、脱水ケーキと呼ばれる。懸濁液の具体例としては、下水またはし尿、工場排水の処理時に発生する汚泥、食料品、化粧品、紙などの工業製品の製造時に発生する産業廃棄物、またはスラリーが挙げられる。
【0019】
図2は、
図1に示す乾燥装置5の上面図である。
図2に示すように、各攪拌ロータ17は、シャフト17Aと、シャフト17Aに固定された複数のパドル17Bを備えている。シャフト17Aの両端はハウジング15を貫通して延びており、図示しない軸受によって回転可能に支持されている。パドル17Bは、乾燥室14内に配置されている。パドル17Bは、シャフト17Aの軸方向に沿って配列されている。
【0020】
各パドル17Bは、シャフト17Aの軸方向に垂直な方向に対して傾いている。さらに、全パドル17Bのうちの半分の傾き角度は、他の半分のパドル17Bの傾き角度とは異なっている。傾き角度の異なるこれらのパドル17Bは、シャフト17Aの軸方向に沿って交互に配置されている。
【0021】
図3は、パドル17Bをシャフト17Aの軸方向から見た図である。
図3に示すように、パドル17Bは扇形状を有している。各パドル17Bは、シャフト17Aの外周面に固定されており、2つのパドル17Bが1組となって、シャフト17Aの外周面を囲んでいる。シャフト17Aの軸方向から見たときに、一方のシャフト17Aに固定されたパドル17Bの最外縁は、他方のシャフト17Aに固定されたパドル17Bの最外縁に重なっている。このようなオーバーラップ配置により、汚泥の攪拌効率が向上される。実際には、一方のシャフト17Aに固定されたパドル17Bは、他方のシャフト17Aに固定されたパドル17Bに非接触である。
【0022】
図2に示すように、2つのシャフト17Aには2つのギヤ20がそれぞれ固定されている。これらギヤ20は互いに噛み合っている。したがって、2つのシャフト17A、すなわち2つの攪拌ロータ17は、互いに反対方向に回転する。電動機18は、トルク伝達機構22を介して2つのシャフト17Aのうちの一方に連結されている。トルク伝達機構22は、スプロケットとチェーンとの組み合わせ、またはプーリとベルトとの組み合わせなどから構成されている。電動機18が作動すると、2つの攪拌ロータ17は反対方向に回転する。電動機18には、インバータ(図示せず)が内蔵されている。電動機18は制御システム10に接続されており、電動機18の動作、すなわち攪拌ロータ17の回転速度は、制御システム10によって制御される。
【0023】
2つのシャフト17Aは中空シャフトであり、各パドル17Bも中空パドルである。すなわち、各シャフト17A内には、その軸方向に延びる空間が形成されており、各パドル17Bの内部にも空間が形成されている。シャフト17A内の空間と、パドル17B内の空間は互いに連通している。乾燥装置5は、2つのシャフト17Aの一端にそれぞれ連結された2つの蒸気供給ライン50を備えている。蒸気は、蒸気供給ライン50からシャフト17A内に供給され、シャフト17A内の空間およびパドル17B内の空間を流れ、そして、シャフト17Aの他端から排出される。この蒸気により、シャフト17Aおよびパドル17Bは加熱され、その表面は高温となる。
【0024】
2つの蒸気供給ライン50はボイラー51に連結されている。蒸気供給ライン50を流れる蒸気の圧力および流量は、蒸気供給ライン50に設置された蒸気圧力調節弁52によって制御される。蒸気圧力調節弁52は制御システム10に接続されており、蒸気圧力調節弁52は制御システム10によって制御される。より具体的には、攪拌ロータ17内に供給される蒸気の圧力は蒸気圧力調節弁52を介して制御システム10によって制御される。
【0025】
図1に戻り、ハウジング15は、汚泥が投入される投入口25と、乾燥された汚泥が排出される排出口26を備えている。乾燥装置5は、ハウジング15に連結された乾燥気体供給ライン30と、乾燥気体排出ライン31を備えている。乾燥気体は、乾燥気体供給ライン30を通ってハウジング15内に供給され、ハウジング15内の汚泥に接触し、そして、乾燥気体排出ライン31を通ってハウジング15から排出される。乾燥気体供給ライン30から供給される乾燥気体は、予め除湿された高温の気体であり、蒸気またはヒーターなどの熱源(図示せず)により予め加熱されている。
【0026】
乾燥気体供給ライン30には、温度測定器32と流量測定器33が取り付けられている。温度測定器32は、乾燥気体供給ライン30を流れる乾燥気体の温度を測定するように構成されており、流量測定器33は、乾燥気体供給ライン30を流れる乾燥気体の流量を測定するように構成されている。さらに、乾燥気体排出ライン31にも、該乾燥気体排出ライン31を流れる乾燥気体の温度を測定する温度測定器35が取り付けられている。温度測定器32、流量測定器33、および温度測定器35は、制御システム10に接続されており、ハウジング15内に供給される乾燥気体の温度および流量の測定値、およびハウジング15から排出された乾燥気体の温度の測定値は、制御システム10に送られるようになっている。
【0027】
乾燥装置5は、ハウジング15の表面温度を測定する温度測定器40と、ハウジング15内の圧力を測定する圧力測定器41を備えている。温度測定器40および圧力測定器41は、制御システム10に接続されており、ハウジング15の表面温度の測定値およびハウジング15内の圧力の測定値は、制御システム10に送られるようになっている。
【0028】
乾燥装置5は、ハウジング15内に配置された堰56と、堰56を上下動させる上下動装置58を備えている。堰56は、ハウジング15内に配置されており、汚泥の流れ方向において、パドル17Bの下流側に位置している。ハウジング15の内部は、堰56によって乾燥室14と排出室60に区画される。排出口26は排出室60の下方に位置している。乾燥室14内の汚泥は、堰56の上縁を越えて排出室60に移動される。堰56は、乾燥室14内の汚泥の滞留量および滞留時間を制御する機能を有する。すなわち、堰56を上方に移動させると(堰56の高さを上げると)、乾燥室14内に滞留する汚泥の量および時間が増加し、結果として汚泥がより乾燥される。上下動装置58は、制御システム10に接続されており、上下動装置58の動作、すなわち堰56の高さ(堰56の上下方向の位置)は制御システム10によって制御される。
【0029】
乾燥装置5の動作は次の通りである。電動機18は、2つの攪拌ロータ17を反対方向に回転させながら、蒸気が蒸気供給ライン50から攪拌ロータ17内に供給される。攪拌ロータ17は蒸気によって加熱され、攪拌ロータ17の表面は高温になる。さらに、乾燥気体が乾燥気体供給ライン30を通って乾燥室14内に流入し、乾燥室14内を流れ、乾燥気体排出ライン31を通って排出される。汚泥は、投入口25を通って乾燥室14内に投入される。汚泥は、回転する攪拌ロータ17のパドル17Bによって少しずつ排出室60に向かって移動される。攪拌ロータ17によって移動される間、汚泥は、高温の攪拌ロータ17との接触、および乾燥気体との接触により乾燥される。乾燥された汚泥は、堰56を乗り越えて排出室60内に移動し、排出口26を通って乾燥装置5から排出される。排出口26の下方には排出コンベヤ64が配置されており、乾燥された汚泥は、排出口26を通って排出コンベヤ64上に落下し、排出コンベヤ64によって搬送される。
【0030】
乾燥装置5は、その乾燥動作を制御する制御システム10に連結されている。この制御システム10は、後述する機械学習を実行してモデルを作成し、そのモデルを使用するためのプログラムが格納された記憶装置10aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置10bを備えている。記憶装置10aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置10bの例としては、CPU(中央演算装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、制御システム10の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0031】
制御システム10は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。制御システム10は、乾燥装置5に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークによって乾燥装置5に接続されたクラウドサーバまたはフォグサーバであってもよい。制御システム10は、ゲートウェイ、ルーターなどの中に配置されてもよい。
【0032】
制御システム10は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより接続された複数のサーバであってもよい。例えば、制御システム10は、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。記憶装置10aと演算装置10bは、別々の場所に設置された複数のコンピュータ内にそれぞれ配置されてもよい。
【0033】
次に、制御システム10の機能について説明する。制御システム10は、乾燥装置5から排出される乾燥汚泥の含水率の予測値を、機械学習により構築されたモデル(すなわち学習済みモデル)を用いて算定するように構成されている。モデルは、記憶装置10a内に格納されている。制御システム10の演算装置10bは、後述する乾燥装置5の状態データを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルのアルゴリズムに従って乾燥汚泥の含水率の予測値を算定するように構成される。
【0034】
学習済みモデルは、訓練データを用いた機械学習によって作成される。モデルには、説明変数が入力され、モデルからは目的変数が出力される。
説明変数:予測したい変数(目的変数)を導出するため変数。
目的変数:予測したい変数。本実施形態では、乾燥装置5から排出される乾燥汚泥の含水率が目的変数である。
【0035】
訓練データに含まれる説明変数は、過去の乾燥運転時に使用された乾燥装置5の運転パラメータのみならず、後述する乾燥装置5の状態データ(例えば、乾燥装置5に投入される汚泥の含水率)を含む。目的変数は、運転パラメータおよび状態データに対応する乾燥汚泥の含水率である。制御システム10は、上記説明変数および上記目的変数を含む訓練データを用いて、モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。モデルは回帰モデル、分類モデルのいずれであってもよい。
【0036】
機械学習アルゴリズムの例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法(深層学習法)、ランダムフォレスト法、または決定木法などが挙げられる。本実施形態では、機械学習にランダムフォレスト法が採用されるが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
上記モデルの機械学習に用いられる訓練データは、乾燥装置5の運転パラメータと、乾燥装置5の状態データと、対応する乾燥汚泥の含水率の実測データを含む。
乾燥装置5の運転パラメータは以下の通りである。
・乾燥装置5に投入される汚泥の流量(投入コンベヤ1の搬送速度)
・乾燥装置5の攪拌ロータ17の回転速度(電動機18の回転速度)
・乾燥装置5の電動機18のトルク電流値
・堰56の高さ(上下動装置58の設定値)
・攪拌ロータ17に注入される蒸気の圧力(蒸気圧力調節弁52の開度)
・ハウジング15に供給される乾燥気体の温度(温度測定器32によって測定される)
・ハウジング15に供給される乾燥気体の流量(流量測定器33によって測定される)
【0038】
乾燥装置5の状態データの具体例は、次の通りである。
・乾燥装置5に投入される汚泥の種類(例えば、水処理においては消化汚泥、混合生汚泥等、汚泥が発生した処理場)
・乾燥装置5に投入される汚泥の温度(図示しない測定装置によって測定される)
・乾燥装置5に投入される汚泥の含水率(図示しない測定装置によって測定される)
・乾燥装置5の表面温度(温度測定器40によって測定される)
・乾燥装置5内の圧力(圧力測定器41によって測定される)
・攪拌ロータ17に注入される蒸気の流量(蒸気圧力調節弁52の開度)
・ハウジング15から排出された乾燥気体の温度(温度測定器35によって測定される)
・蒸気供給ライン50から排出された蒸気が凝縮したドレン量(図示しない測定装置によって測定される)
【0039】
上述した運転パラメータおよび状態データの項目は例であり、運転パラメータおよび状態データは、上記項目のうちのいずれかのみであってもよい。
【0040】
本実施形態では、乾燥装置5の運転パラメータを、乾燥装置5の通常運転時よりも多様な数値を取り、広い範囲内で少しずつ変化させながら、汚泥の乾燥を実行し、含水率の実測値を取得する。制御システム10は、このようにして得られた、通常運転時よりも広い範囲内で数値が分散した運転パラメータと、上記状態データと、対応する含水率の実測値を含む訓練データを用いて機械学習を実行する。さらに、制御システム10は、上述のようにして訓練データを定期的または不定期に取得し、得られた訓練データを用いて機械学習を実行し、モデルを更新する。
【0041】
一実施形態では、乾燥装置5の状態データには、乾燥装置5の前段に設置される脱水システムの運転パラメータおよび状態データ、脱水システムに組み込まれた学習済みモデルに従って算定された脱水汚泥の含水率の推定値などの出力値が含まれてもよい。以下、脱水システムの具体例について説明する。
【0042】
脱水システムは、
図1の投入コンベヤ1の上流側に配置され、汚泥などの懸濁液を脱水するように構成される。
図4は、脱水システムの一実施形態を示す模式図である。脱水システムは、懸濁液を貯留する懸濁液貯留槽101と、凝集剤を懸濁液に注入し、凝集剤と懸濁液を攪拌することにより凝集物を形成する凝集装置103と、凝集物から液体を除去し、濃縮物を形成する濃縮装置104と、濃縮された凝集物からなる濃縮物から液体をさらに除去して濁質残渣を形成する脱水装置105を備えている。濃縮装置104は、凝集装置103によって形成された凝集物から液体を除去し、濃度3~15wt%の濃縮物を形成する装置であり、脱水装置105は、凝集装置103によって形成された凝集物、または濃縮装置104によって形成された濃縮物から液体を除去し、濃度3~50wt%の濁質残渣を形成する装置である。
【0043】
濁質残渣は、懸濁液から液体を除去した後に残る低含水率の物質である。脱水装置105によって懸濁液から液体を除去した後に残る濁質残渣は、一般に、ケーキと呼ばれる。以下の説明では、懸濁液を汚泥と呼び、濁質残渣をケーキと呼ぶ。汚泥の具体例としては、下水またはし尿、工場排水の処理時に発生する汚泥が挙げられる。また、汚泥以外の懸濁液の例としては、食料品、化粧品、紙などの工業製品の製造時に発生する産業廃棄物、またはスラリーが挙げられる。
【0044】
本実施形態では、濃縮装置104は、回転円板式脱液装置(例えば株式会社研電社製のスリットセーバー)である。このタイプの濃縮装置104は、濃縮汚泥の状態変化が把握しやすいために好ましいが、濃縮装置104のタイプは特に限定されない。例えば、濃縮装置104は、ドラム式、スクリュー式、またはベルト式であってもよい。本実施形態の脱水装置105は、汚泥を加圧して脱水するスクリュープレスから構成される。スクリュープレスは、汚泥を脱水する加圧脱水機の一例である。スクリュープレスは圧入式、軸摺動式、2段式を使用することができる。
図4に示す脱水装置105は、軸摺動式のスクリュープレスである。また、加圧脱水機として、スクリュープレス以外にも、フィルタープレス、遠心分離機などの他のタイプのものを使用することもできる。
【0045】
図4に示すように、凝集装置103は、汚泥を収容し、汚泥を凝集剤と混合する凝集混和槽107と、凝集混和槽107内の汚泥を攪拌するための攪拌機108と、凝集混和槽107に接続された汚泥導入管(懸濁液導入管)114と、汚泥導入管114に設けられたポンプ112を備えている。攪拌機108は、凝集混和槽107内に配置された攪拌羽根109と、攪拌羽根109に連結された攪拌モータ110を備えている。懸濁液貯留槽101は、汚泥導入管114によって凝集混和槽107に接続されている。汚泥は、ポンプ112により汚泥導入管114を通じて懸濁液貯留槽101から凝集混和槽107に移送される。凝集混和槽107への汚泥の流量は、ポンプ112の運転によって調整することが可能である。
【0046】
汚泥導入管114には温度センサ122が取り付けられている。この温度センサ122は、凝集混和槽107に導入される汚泥の温度を測定するように構成されている。さらに、汚泥導入管114には汚泥濃度計(懸濁液濃度計)124が取り付けられており、凝集混和槽107に導入される汚泥中の懸濁物質の濃度は汚泥濃度計124によって測定される。
【0047】
凝集装置103は、凝集混和槽107に接続された水供給ライン126と、水供給ライン126に取り付けられた流量制御弁127をさらに備えている。水供給ライン126は、水を凝集混和槽107内に供給し、凝集混和槽107内の汚泥を希釈する。水供給ライン126を通って凝集混和槽107に供給される水の流量は流量制御弁127によって調整される。一実施形態では、水供給ライン126を汚泥導入管114に接続し、水を汚泥導入管114に直接供給してもよい。
【0048】
凝集装置103は、凝集混和槽107に接続された凝集剤供給装置128をさらに備えている。この凝集剤供給装置128は、凝集剤を予め定められた流量で凝集混和槽107内の汚泥に注入するように構成されている。凝集混和槽107内の汚泥に注入される凝集剤の流量は、凝集剤供給装置128によって調整される。汚泥は凝集剤とともに攪拌機108によって攪拌される。凝集混和槽107内で凝集剤と汚泥を攪拌することにより、汚泥内の懸濁物質が集合した凝集物が形成される。凝集混和槽107内で形成される凝集物は、一般に、凝集フロックと呼ばれる。
【0049】
図4に示される凝集混和槽107は単段の槽であるが、凝集混和槽107は、複数段の槽であってもよい。汚泥の攪拌強度は、攪拌機108の回転速度によって調整することができる。凝集混和槽107は、その内部の凝集物の状態を観察できるように、サイドグラスが設置されてもよい。
【0050】
凝集混和槽107は、汚泥移送管118によって濃縮装置104に連結されている。濃縮装置104は、凝集装置103と脱水装置105との間に配置されている。凝集装置103によって形成された凝集物からなる汚泥は、汚泥移送管118を通って濃縮装置104に移送される。凝集物は、濃縮装置104によって濃縮され、脱水される。濃縮装置104の一例としては、回転円板式脱液装置が挙げられる。
【0051】
濃縮装置104の出口は、脱水装置105の投入口135の上方に配置されており、濃縮装置104によって形成された濃縮物からなる汚泥は、脱水装置105の投入口135に投入される。本実施形態では、脱水装置105は、スクリュープレスである。スクリュープレスとしての脱水装置105は、ろ過筒136と、ろ過筒136内に同心状に配置されたスクリュー軸137と、スクリュー軸137の外面に固定されたスクリュー羽根138と、スクリュー軸137およびスクリュー羽根138を回転させて汚泥を排出室141に向かって送るスクリューモータ140と、スクリューモータ140に連結された軸摺動アクチュエータ142を備えている。
【0052】
ろ過筒136は、パンチングメタルなどの多孔板から構成されている。ろ過筒136の一端は閉塞壁144によって密封されており、ろ過筒136の他端は排出室141に接続されている。投入口135はろ過筒136に形成されており、かつ閉塞壁144に隣接している。
【0053】
スクリュー軸137は、ろ過筒136内を貫通して延びている。スクリュー軸137は、下流側に向かってその径が徐々に大きくなる円錐台形状を有している。スクリュー軸137は閉塞壁144を貫通して延びており、スクリュー軸137の端部はスクリューモータ140に連結されている。スクリューモータ140には、インバータ(図示せず)が内蔵されている。
【0054】
スクリュー羽根138は、スクリュー軸137の長手方向に沿って螺旋状に延びる一枚羽根である。ろ過筒136の内面とスクリュー羽根138との間には微小な隙間が形成されており、スクリュー羽根138はろ過筒136に接触することなく回転することができる。投入口135からろ過筒136内に投入された汚泥は、回転するスクリュー羽根138によりろ過筒136内を排出室141に向かって移送される。
【0055】
汚泥がろ過筒136内で移送される空間は、ろ過筒136の内面と、スクリュー羽根138と、スクリュー軸137とによって形成される。この空間の容積は、汚泥の進行方向に沿って漸次減少する。したがって、この空間をスクリュー羽根138によって移動されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。ろ過筒136を通過したろ液は、ろ過筒136の下方に配置されたろ液受け145によって回収された後に、ドレン146を通じて排出される。
【0056】
ろ過筒136の下流側端部に対向して環状の背圧板150が配置されている。この背圧板150は、ろ過筒136内を移送された脱水汚泥を受けるためのテーパー面を有する円錐台の形状を有している。背圧板150の中央部には、スクリュー軸137が貫通する貫通孔が形成されており、背圧板150はスクリュー軸137と同心状に配置されている。背圧板150はスクリュー軸137に固定されておらず、背圧板150は回転しない。
【0057】
背圧板150は、背圧板駆動装置151に連結されている。この背圧板駆動装置151は、背圧板150を、スクリュー軸137の軸方向に移動させるように構成されている。背圧板150とろ過筒136の下流側端部との間の隙間は、背圧板駆動装置151によって調整される。背圧板駆動装置151は、例えば油圧シリンダーまたは電動シリンダーなどから構成されている。
【0058】
軸摺動アクチュエータ142は、スクリューモータ140をスクリュー軸137の軸方向に移動させるように構成されている。軸摺動アクチュエータ142がスクリューモータ140を軸方向に移動させると、スクリューモータ140に連結されたスクリュー軸137およびスクリュー羽根138は、ろ過筒136内でスクリュー軸137の軸方向に移動される。
【0059】
次に、脱水装置105の動作について説明する。濃縮装置104によって形成された濃縮物からなる汚泥は、投入口135からろ過筒136内に投入される。汚泥は、回転するスクリュー羽根138によりろ過筒136内を排出室141に向かって移送される。ろ過筒136内を移動されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。ろ過筒136を通過したろ液は、ろ液受け145によって回収され、ドレン146を通じて排出される。汚泥は、ろ過筒136内で脱水されてケーキを形成する。洗浄装置155は、予め設定された時間間隔で、ろ過筒136の外周面に洗浄液を供給する。
【0060】
ろ過筒136内を移動してきたケーキは、背圧板150に押し付けられる。ケーキは、その移動を背圧板150によって妨げられることで圧縮される。この圧縮されたケーキは、ろ過筒136の下流側端部をシールするプラグ152を形成する。プラグ152は、後続のケーキに背圧を加えることにより、ろ過筒136内のケーキの含水率を低下させる。ケーキは、ろ過筒136内でプラグ152を形成しながら、後続のケーキにより押されて背圧板150とろ過筒136の下流側端部との間の隙間を通過して、少しずつ排出室141に排出される。ケーキは、排出室141の下部に設けられた排出口153を通って排出室141から排出される。このようにして、汚泥から液体が除去されて、低含水率のケーキが形成される。ケーキは、
図1に示す投入コンベヤ1によって乾燥装置5の投入口25に搬送される。
【0061】
背圧板150の軸方向の位置によって背圧板150とろ過筒136の下流側端部との間の隙間が変わり、結果として、ろ過筒136内の汚泥に加わる圧縮力が変わる。より具体的には、背圧板150とろ過筒136の下流側端部との間の隙間が小さくなると、プラグ152を押し出すのにより大きな力が必要となるので、ろ過筒136内の汚泥に加わる圧縮力が増加する。よって、スクリュー羽根138の回転速度のみならず、背圧板150の位置によっても、汚泥に加わる圧縮力を調整することができる。ろ過筒136内には圧力センサ161が配置されており、ろ過筒136内の汚泥の圧力は、圧力センサ161によって測定される。圧力センサ161の位置はろ過筒136内であれば特に限定されず、ろ過筒136内の前段、中段、または後段のいずれであってもよく、複数の圧力センサ161をろ過筒136内に配置してもよい。
【0062】
プラグ152は、低含水率のケーキから形成されている。プラグ152を形成しているケーキの含水率が低下すると、プラグ152が硬くなり、ろ過筒136の下流側端部を閉塞してしまうことがある。このような場合は、軸摺動アクチュエータ142は、スクリュー軸137およびスクリュー羽根138を軸方向に移動させることで、硬い低含水率のケーキを強制的に排出することができる。結果として、脱水装置105は、安定した連続運転が可能となる。
【0063】
脱水システムの運転パラメータおよび状態データの具体例は、次の通りである。
・汚泥の温度(温度センサ122によって測定される)
・凝集混和槽107への汚泥の流量(ポンプ112の回転速度から推定される)
・汚泥の性状(pH、アルカリ度、TS、VTS、SS、VSS、浮遊物質量)
・凝集剤の物性(カチオン度、分子量)
・凝集剤の流量(凝集剤供給装置128の運転速度)
・攪拌機108の攪拌速度(攪拌モータ110の回転速度)
・凝集混和槽107への水の流量(流量制御弁127の開度)
・濃縮装置104の運転速度(濃縮装置104の駆動モータの回転速度)
・濃縮装置104の運転トルク(濃縮装置104の駆動モータへの電流値)
・濃縮装置104によって分離された液体の流量(図示しない流量計によって測定される)
・濃縮装置104によって濃縮された汚泥濃度(図示しない濃度センサによって測定される)
・スクリュー軸137の回転速度
・スクリューモータ140への電流値(トルク値)
・ろ過筒136内の汚泥の圧力(圧力センサ161によって測定される)
・背圧板150の開度(背圧板駆動装置151の設定値)
・背圧板150の圧力(図示しない圧力センサによって測定される)
・ケーキ含水率の測定値(図示しない測定装置または手動によって測定される)
【0064】
上述した脱水システムの運転パラメータおよび状態データの項目は例であり、脱水システムの運転パラメータおよび状態データは、上記項目のうちのいずれかのみであってもよい。
【0065】
図5は、脱水システムの他の実施形態を示す図である。
図5に示す脱水システムは、脱水装置105として二段式スクリュープレスを採用している点で、軸摺動型のスクリュープレスを採用している
図4の実施形態と相違する。本実施形態では、
図4に示す軸摺動アクチュエータ142は設けられていない。特に説明しない実施形態の構成および動作は、
図4に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0066】
二段式スクリュープレスから構成された脱水装置105は、ろ過筒136と、ろ過筒136内で、該ろ過筒136と同心状に配置され、汚泥を移送する第1スクリュー171および第2スクリュー172と、第1スクリュー171を回転させる第1スクリューモータ175と、第1スクリュー171とは独立に第2スクリュー172を回転させる第2スクリューモータ176を備えている。
【0067】
第1スクリューモータ175および第2スクリューモータ176は、第1スクリュー171および第2スクリュー172にそれぞれ直接連結されてもよいし、またはチェーンおよびスプロケットなどから構成されるトルク伝達機構を介して第1スクリュー171および第2スクリュー172にそれぞれ連結されてもよい。
【0068】
ろ過筒136は、パンチングメタルなどのスクリーン(多孔板)から形成されている。ろ過筒136の上流側端部には、投入口135が形成されている。投入口135からろ過筒136に投入された汚泥は、回転する第1スクリュー171および第2スクリュー172によりろ過筒136内で所定の移送方向に移送される。ろ過筒136の下流側端部は排出室141に接続されている。
【0069】
第2スクリュー172は、第1スクリュー171とは独立に回転可能なように、第1スクリュー171に連結されている。第1スクリュー171および第2スクリュー172は、ろ過筒136および排出室141をそれぞれ貫通して延びている。排出室141は、ろ過筒136に接続されている。この排出室141に、ケーキから構成されたプラグ177がろ過筒136から排出される。第2スクリュー172の軸方向の長さは、第1スクリュー171の軸方向の長さよりも短い。第1スクリュー171は、汚泥の移送方向に沿ってその径が徐々に大きくなる円錐台形状の第1スクリュー軸171Aと、第1スクリュー軸171Aの外面に固定された第1スクリュー羽根171Bとを有している。第2スクリュー172は、円筒形状の第2スクリュー軸172Aと、第2スクリュー軸172Aの外面に固定された第2スクリュー羽根172Bとを有している。
【0070】
ろ過筒136の上流側端部は閉塞壁144によって密封されている。第1スクリュー軸171Aの上流側端部はこの閉塞壁144を貫通して延び、第1スクリュー171を回転させるための第1スクリューモータ175に連結されている。第2スクリュー172の第2スクリュー軸172Aは、第1スクリュー軸171Aと同心状に配置される。第2スクリュー軸172Aの外径は第1スクリュー軸171Aの最大径と同一である。第2スクリュー軸172Aの下流側端部は、排出室141を構成する壁141Aを貫通して延び、第2スクリュー172を回転させるための第2スクリューモータ176に連結されている。排出室141の下部は、排出口153に接続されている。
【0071】
第1スクリューモータ175には、インバータ(図示せず)が内蔵されており、モータ制御部106は、インバータを介して第1スクリューモータ175の動作を制御することができるように構成されている。すなわち、モータ制御部106は、インバータを介して第1スクリューモータ175の回転速度および回転方向を制御することができる。モータ制御部106は、第1スクリューモータ175に指令を発して、第1スクリュー171を第2スクリュー172とは独立して回転させることが可能である。
【0072】
第2スクリューモータ176も、モータ制御部106に接続されている。第2スクリューモータ176には、インバータ(図示せず)が内蔵されており、モータ制御部106は、インバータを介して第2スクリューモータ176の動作を制御することができるように構成されている。すなわち、モータ制御部106は、インバータを介して第2スクリューモータ176の回転速度および回転方向を制御することができる。モータ制御部106は第2スクリューモータ176に指令を発して、第2スクリュー172を第1スクリュー171とは独立して回転させることが可能である。
【0073】
第1スクリュー羽根171Bは、第1スクリュー軸171Aの軸方向に沿って螺旋状に延びており、第2スクリュー羽根172Bは、第2スクリュー軸172Aの軸方向に沿って螺旋状に延びている。第1スクリュー羽根171Bが固定されている第1スクリュー171の部分と、第2スクリュー羽根172Bが固定されている第2スクリュー172の部分を合計した長さは、ろ過筒136の軸方向の長さと同一か、または長い。
【0074】
ろ過筒136の内面と第1スクリュー羽根171Bとの間には微小な隙間が形成されており、第1スクリュー羽根171Bはろ過筒136に接触することなく回転することができるようになっている。同様に、ろ過筒136の内面と第2スクリュー羽根172Bとの間には微小な隙間が形成されており、第2スクリュー羽根172Bはろ過筒136に接触することなく回転することができるようになっている。ろ過筒136の上流側端部に形成された投入口135からろ過筒136に投入された汚泥を、回転する第1スクリュー羽根171Bおよび第2スクリュー羽根172Bによって排出室141に向かって移送することができる。
【0075】
第2スクリュー羽根172Bのピッチは、第1スクリュー羽根171Bのピッチよりも小さい。さらに、第2スクリュー羽根172Bは、その巻数が3巻き未満である。本実施形態では、第2スクリュー羽根172Bの巻き方向(すなわち、螺旋方向)は、第1スクリュー羽根171Bの巻き方向とは逆である。したがって、投入口135から投入された汚泥を、排出室141へ送り出すときは、
図5に示されるように、第2スクリュー172を第1スクリュー171とは逆方向に回転させる。
【0076】
第2スクリュー羽根172Bの巻き方向を、第1スクリュー羽根171Bの巻き方向と同一にしてもよい。この場合、投入口135から投入された汚泥を、排出室141へ送り出すときは、第2スクリュー172を第1スクリュー171と同方向に回転させる。
【0077】
ろ過筒136は、第1スクリュー171が配置された脱水領域1Aと、第2スクリュー172が配置されたプラグ形成領域1Bとに分割される。脱水領域1Aで汚泥が移送される空間は、ろ過筒136の内面と、第1スクリュー羽根171Bと、第1スクリュー軸171Aとによって形成される。この移送空間の断面積は、
図5に示すように、汚泥の移送方向に沿って漸次減少する。したがって、投入口135から投入された汚泥がこの移送空間を第1スクリュー羽根171Bによって移送されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。ろ過筒136を通過したろ液は、ろ過筒136の下方に配置されたろ液受け145によって回収される。ろ液受け145には、ドレン146が接続されており、ろ液受け145によって回収されたろ液は、ドレン146を介して脱水装置105から排出される。
【0078】
プラグ形成領域1Bで汚泥が移送される空間は、ろ過筒136の内面と、第2スクリュー羽根172Bと、第2スクリュー軸172Aとによって形成される。
図5に示すように、この移送空間の断面積は一定である。プラグ形成領域1Bでは、脱水領域1Aで脱水された汚泥(すなわち、ケーキ)によって、プラグ177が形成される。プラグ177は、後続のケーキに背圧を加えることにより、ろ過筒136内のケーキの含水率を低下させる。ケーキは、プラグ形成領域1B内でプラグ177を形成しながら、後続のケーキにより押されて、少しずつ排出室141に排出される。ケーキは、排出室141の下部に設けられた排出口153を通って排出室141から排出される。このようにして、汚泥から液体が除去されて、低含水率のケーキが形成される。ケーキは、
図1に示す投入コンベヤ1によって乾燥装置5の投入口25に搬送される。
【0079】
本実施形態の脱水システムの運転パラメータおよび状態データの具体例は、次の通りである。
・汚泥の温度(温度センサ122によって測定される)
・凝集混和槽107への汚泥の流量(ポンプ112の回転速度)
・汚泥の性状(pH、アルカリ度、TS、VTS、SS、VSS、浮遊物質量)
・凝集剤の物性(カチオン度、分子量)
・凝集剤の流量(凝集剤供給装置128の運転速度)
・攪拌機108の攪拌速度(攪拌モータ110の回転速度)
・凝集混和槽107への水の流量(流量制御弁127の開度)
・濃縮装置104の運転速度(駆動モータの回転速度)
・濃縮装置104の運転トルク(駆動モータへの電流値)
・濃縮装置104によって分離された液体の流量(図示しない流量計によって測定される)
・濃縮装置104によって濃縮された汚泥濃度(図示しない濃度センサによって測定される)
・第1スクリュー171の回転速度
・第1スクリューモータ175への電流値(トルク値)
・第2スクリュー172の回転速度
・第2スクリューモータ176への電流値(トルク値)
・ろ過筒136内の汚泥の圧力(圧力センサ161によって測定される)
・ケーキ含水率の測定値(図示しない測定装置または手動によって測定される)
【0080】
上述した脱水システムの運転パラメータおよび状態データの項目は例であり、脱水システムの運転パラメータおよび状態データは、上記項目のうちのいずれかのみであってもよい。
【0081】
図4および
図5に示す実施形態では、脱水システムは濃縮装置104を備えているが、一実施形態では、濃縮装置104を省略してもよい。この場合は、凝集装置103で形成された凝集物(凝集フロック)は、汚泥移送管118を通って脱水装置105の投入口135に移送される。
【0082】
図6は、脱水システムのさらに他の実施形態を示す図である。
図6に示す脱水システムにおいては、脱水装置105としてベルトプレス型脱水装置が採用されている。上述した濃縮装置104は設けられていない。特に説明しない実施形態の構成および動作は、
図4に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0083】
凝集装置103は、汚泥を収容する造粒槽180と、造粒槽180内の汚泥を攪拌するための攪拌機108と、造粒槽180に接続された汚泥導入管114と、汚泥導入管114に設けられたポンプ112を備えている。攪拌機108は、造粒槽180内に配置された攪拌羽根109と、攪拌羽根109に連結された攪拌モータ110を備えている。懸濁液貯留槽101は、汚泥導入管114によって凝造粒槽180に接続されている。汚泥はポンプ112により汚泥導入管114を通じて懸濁液貯留槽101から造粒槽180に移送される。造粒槽180への汚泥の流量は、ポンプ112の運転によって調整することが可能である。
【0084】
汚泥導入管114には温度センサ122が取り付けられている。この温度センサ122は、造粒槽180に導入される汚泥の温度を測定するように構成されている。さらに、汚泥導入管114には汚泥濃度計(懸濁液濃度計)124が取り付けられており、造粒槽180に導入される汚泥中の懸濁物質の濃度は汚泥濃度計124によって測定される。
【0085】
凝集装置103は、造粒槽180に接続された凝集剤供給装置128をさらに備えている。この凝集剤供給装置128は、凝集剤を予め定められた流量で造粒槽180内の汚泥に注入するように構成されている。造粒槽180内の汚泥に注入される凝集剤の流量は、凝集剤供給装置128によって調整される。汚泥は凝集剤とともに攪拌機108の攪拌羽根109によって攪拌される。造粒槽180内で凝集剤と汚泥を攪拌することにより、汚泥内の懸濁物質が集合した凝集物が形成される。造粒槽180内で形成される凝集物は、一般に、ペレットと呼ばれる。汚泥の攪拌強度は、攪拌機108の回転速度によって調整することができる。
【0086】
造粒槽180は、汚泥移送管118によってベルトプレス型脱水装置105に連結されている。脱水装置105は、無端状の前処理ろ布ベルト182と、前処理ろ布ベルト182を支持する複数の支持ローラ183a~183cと、無端状の第1ろ布ベルト186と、第1ろ布ベルト186を支持する第1ガイドローラ188a~188eと、無端状の第2ろ布ベルト190と、第2ろ布ベルト190を支持する第2ガイドローラ191a~191fと、第1ろ布ベルト186および第2ろ布ベルト190を支持する複数の圧搾ローラ195A~195Eと、第1ろ布ベルト186および第2ろ布ベルト190を移動させる駆動装置198を備えている。
【0087】
前処理ろ布ベルト182は、汚泥の移送方向において、圧搾ローラ195A~195Eの上流側に配置されている。前処理ろ布ベルト182の一部は、汚泥の移送方向に沿って上方に傾斜した傾斜部182Aを形成するように、支持ローラ183a,183bによって支持されている。支持ローラ183aは、電動機200の駆動軸に連結されている。電動機200が支持ローラ183aを回転させると、前処理ろ布ベルト182は、傾斜部182A上の汚泥が上昇する方向に移動する。
【0088】
駆動装置198は、電動機198Aと、電動機198Aの駆動軸に固定された駆動ホイール198Bと、駆動ホイール198Bに支持された駆動力伝達部材としてのベルト198Cを備えている。ベルト198Cに代えてチェーンが用いられてもよい。ベルト198Cは、第1ガイドローラ188cに連結され、さらに第2ガイドローラ191fに連結されている。電動機198Aが駆動ホイール198Bを回転させると、駆動ホイール198Bの回転はベルト198Cによって第1ガイドローラ188cおよび第2ガイドローラ191fに伝達される。第1ガイドローラ188cおよび第2ガイドローラ191fは同じ速度で回転し、これにより第1ろ布ベルト186および第2ろ布ベルト190は同じ方向に同じ速度で進む。
【0089】
第1ろ布ベルト186は、第1ガイドローラ188a~188eと、複数の圧搾ローラ195A~195Eとにより支持されている。第1ガイドローラ188dは、第1ろ布緊張装置201に連結されている。この第1ろ布緊張装置201は、第1ガイドローラ188dの位置を移動させることで、第1ろ布ベルト186の緊張を調整するように構成されている。
【0090】
第2ろ布ベルト190は、第2ガイドローラ191a~191fと、複数の圧搾ローラ195A~195Eとにより支持されている。第2ガイドローラ191aは、第2ろ布緊張装置202に連結されている。この第2ろ布緊張装置202は、第2ガイドローラ191aの位置を移動させることで、第2ろ布ベルト190の緊張を調整するように構成されている。
【0091】
凝集装置103によって形成された凝集物(ペレット)からなる汚泥は、汚泥移送管118を通って前処理ろ布ベルト182上に移送される。汚泥は、前処理ろ布ベルト182の傾斜部182Aを上昇しながら、重力により汚泥中の液体が落下する。この工程は、重力脱水工程である。
【0092】
前処理ろ布ベルト182の移動により、前処理ろ布ベルト182上の汚泥は、第1ろ布ベルト186上に移される。複数の圧搾ローラ195A~195Eの間を延びる第1ろ布ベルト186および第2ろ布ベルト190は、互いに対向している。第1ろ布ベルト186が移動されるにつれて、汚泥は第1ろ布ベルト186と第2ろ布ベルト190との間に挟まれる。第1ろ布ベルト186および第2ろ布ベルト190は圧搾ローラ195A~195Eに巻きつけられながら、汚泥は第1ろ布ベルト186と第2ろ布ベルト190との間に挟まれ、圧搾される。その結果、汚泥は低含水率のケーキ(濁質残渣)となる。低含水率のケーキは、排出口153から排出される。ケーキは、
図1に示す投入コンベヤ1によって乾燥装置5の投入口25に搬送される。
【0093】
圧搾ローラ195A~195Eの下方には、ろ液受け145が配置されている。汚泥から除去されたろ液は、ろ液受け145によって回収される。ろ液受け145には、ドレン146が接続されており、ろ液受け145によって回収されたろ液は、ドレン146を介して脱水装置105から排出される。
【0094】
本実施形態の脱水システムの運転パラメータおよび状態データの具体例は、次の通りである。
・汚泥の温度(温度センサ122によって測定される)
・造粒槽180への汚泥の流量(ポンプ112の回転速度)
・汚泥の性状(pH、アルカリ度、TS、VTS、SS、VSS、浮遊物質量)
・凝集剤の物性(カチオン度、分子量)
・凝集剤の流量(凝集剤供給装置128の運転速度)
・攪拌機108の攪拌速度(攪拌モータ110の回転速度)
・第1ろ布ベルト186および第2ろ布ベルト190の移動速度(電動機198Aの回転速度)
・ガイドローラ188d,191aの位置
【0095】
上述した脱水システムの運転パラメータおよび状態データの項目は例であり、脱水システムの運転パラメータおよび状態データは、上記項目のうちのいずれかのみであってもよい。
【0096】
図7は、訓練データを用いて機械学習によりモデルを作成し、学習済みのモデルを使用して含水率の予測値を算出するフローを説明する図である。制御システム10の演算装置10bは、記憶装置10aに格納されているプログラムに含まれる命令に従って、訓練データを用いた機械学習を実行し、モデルを構築する。得られたモデルは記憶装置10a内に格納される。予め構築した学習済みモデルを記憶装置10aに格納してもよい。制御システム10は、乾燥装置5の運転パラメータおよび状態データを、学習済みのモデルに入力し、乾燥汚泥の含水率の予測値をモデルに従って算定する。
【0097】
制御システム10は、乾燥装置5から離れた遠隔地に設置されてもよい。例えば、制御システム10は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークによって乾燥装置5に接続され、複数の乾燥装置を監視する遠隔監視室内に配置されてもよい。一実施形態では、制御システム10は、Webアプリケーションを備えており、Webアプリケーションを用いて、乾燥装置5から取得されるデータの表示、乾燥装置5の運転操作、データの送受信、モデルの機械学習、モデルの更新を実行してもよい。さらに、
図7に示すように、制御システム10は、学習済みモデルに従って算定された乾燥汚泥の含水率の予測値、現在の運転パラメータ、および現在の状態データを報知するための表示部46を備えてもよい。表示部46は、乾燥装置5から離れた遠隔地に設置されてもよい。例えば、複数の乾燥装置5を監視する遠隔監視室内に表示部46が配置されてもよい。
図8は表示部46の一具体例を示している。尚、
図8では、報知の具体的一例として表示部46を示したが、これに限らず、音声で報知する様にしてもよい。
【0098】
図7に示すように、制御システム10は、乾燥汚泥の含水率を所定の目標範囲内に収めることができる乾燥装置5の運転パラメータの最適値を探索し、決定された運転パラメータの最適値を出力するように構成されている。より具体的には、制御システム10の演算装置10bは、記憶装置10aに格納されているプログラムに含まれる命令に従って、運転パラメータの複数の数値セットから1つの数値セットを選択し、選択された1つの数値セットを、学習済みモデルに入力し、学習済みモデルに従って算定される含水率の予測値が目標範囲内に収まるか否かを判定し、含水率の予測値が標範囲内に収まることができる運転パラメータの最適値を決定する。
【0099】
制御システム10は、乾燥装置5の運転パラメータの現在の数値が、決定された最適値となるように運転パラメータを調整する。結果として、乾燥装置5は、最適化された運転パラメータで運転され、含水率が目標範囲内に収まる乾燥汚泥を生成することができる。
【0100】
上記探索によって決定された運転パラメータの最適値に基づく乾燥装置5の運転調整は、運転パラメータの予め定められた優先順位に従って行われてもよい。すなわち、制御システム10は、優先順位の最も高い運転パラメータを最初に調整し、その後、次に優先順位の高い運転パラメータを調整する。このように、制御システム10は、予め定められた優先順位に従って運転パラメータを順次調整する。含水率に影響が大きい運転パラメータを優先的に調整することにより、効率的に含水率を目標範囲内に収めることができる。
【0101】
一実施形態では、制御システム10は、運転パラメータの優先順位を、機械学習時に算出される特徴量の重要度に従って決定してもよい。例えば、機械学習のアルゴリズムにランダムフォレストが使用される実施形態では、制御システム10の演算装置10bは、ジニ重要度の減少量に相当する重要度を計算し、得られた重要度に従って運転パラメータの優先順位を決定してもよい。一実施形態では、運転パラメータの優先順位は、作業員によって予め設定されてもよい。
【0102】
制御システム10は、上記決定された最適値に従って運転パラメータを調整する際に、運転パラメータの現在の数値と上記決定された最適値との差が所定の調整幅より大きい場合、運転パラメータを上記調整幅の刻みで段階的に調整することができる。例えば、乾燥装置5に投入される汚泥の流量の現在値と、流量の最適値との差が100であり、所定の調整幅が50である場合、2段階に分けて汚泥の供給流量が調整される。このように、段階的に運転パラメータを調整することにより、安定した運転を実現し、より効率的かつ正確に含水率を目標範囲内に収めることができる。調整幅、或いは段階数は予め設定することができる。
【0103】
制御システム10は、乾燥汚泥の含水率の複数の予測値を算定するための複数のモデルを有してもよい。一実施形態では、上記複数のモデルは、制御可能な説明変数を用いる第1モデルと、制御可能な説明変数および制御不可な説明変数を用いる第2モデルを含む。一例では、第1モデルの構築に使用される制御可能な説明変数は、上述した運転パラメータである。すなわち、第1モデルを構築するための機械学習には、制御可能な説明変数である運転パラメータを含み、制御不可な説明変数である状態データを含まない訓練データが用いられる。第2モデルの機械学習に使用される訓練データは、運転パラメータと状態データの両方を含む。
【0104】
一実施形態では、第1モデルは、上述した、乾燥汚泥の含水率が所定の目標範囲内に収まることができる運転パラメータの最適値の決定に使用され、第2モデルは、より精度の高い含水率の予測に使用される。第1モデルは、第2モデルに比べて、含水率の予測値の精度が低いと予想される。制御システム10は、第1モデルに従って算定された含水率と、第2モデルに従って算定された含水率との差が所定の許容値を超えた場合は、第1モデルのための機械学習を再度行い、第1モデルを更新してもよい。
【0105】
ここで、実際の乾燥システムの一例について説明する。この例では、下水脱水汚泥を乾燥させる乾燥システムが用いられた。乾燥装置5の堰56の高さなどの運転パラメータと、供給汚泥含水率などの過去の状態データを含む訓練データを用い、機械学習アルゴリズムとしてランダムフォレストを用いて、乾燥装置5から排出される汚泥の含水率を推定するモデルを構築した。乾燥装置5の運転中は、訓練データとして用いた運転パラメータおよび状態データの現在の数値が学習済みモデルに入力され、そのときの含水率の予測値が算定された。
【0106】
含水率が目標範囲内に収まるように、運転パラメータをその優先順位に従って調整した。本例において、モデル構築時に算出された各運転パラメータの重要度を
図9に示す。運転パラメータを調整する際の優先順位はこの重要度の大きさに従い、最も重要度が大きい汚泥供給量が最優先で調整された。
【0107】
学習済みモデルに入力された汚泥供給量が800kg/hのとき、含水率の予測値は45%であった。含水率の目標範囲40~42%に収めるための、優先順位1位である汚泥供給量の最適値は700kg/hと算定された。汚泥供給量の調整幅が100以上になったとき、段階的に調整するように設定した。したがって、汚泥供給量を800kg/hから700kg/hに調整した際、2段階で(800kg/hから750kg/h、750kg/hから700kg/h)汚泥供給量を変更した。汚泥供給量を最適値に変更しても乾燥汚泥含水率が目標範囲内に収まらない場合、優先順位が2位の堰56の高さが調整される。
【0108】
一実施形態では、制御システム10は、
図4乃至
図5を参照して説明した脱水システムに電気的に接続されている。脱水システムの運転パラメータおよび状態データ、脱水システムに組み込まれた学習済みモデルに従って算定された脱水汚泥の含水率の推定値(以下、これらを総称して、脱水システムの運転指標データという)は、制御システム10に送信されるようになっている。一実施形態では、乾燥装置5の状態データには、脱水システムの運転指標データが含まれてもよい。制御システム10は、そのような乾燥装置5の状態データ、乾燥装置5の運転パラメータ、および対応する含水率の実測値を含む訓練データを用いて機械学習を実行し、モデルを構築する。得られたモデルは記憶装置10a内に格納される。制御システム10は、乾燥装置5の運転パラメータおよび状態データ(脱水システムの現在の運転指標データを含む)を、学習済みのモデルに入力し、乾燥汚泥の含水率の予測値をモデルに従って算定する。
【0109】
一実施形態では、制御システム10は、乾燥装置5の運転パラメータおよび状態データに加えて、汚泥の画像データ、汚泥の音データ、および汚泥に起因して発生する振動データのうちの少なくとも1つをさらに含む訓練データを用いて、機械学習を実行し、モデルを構築してもよい。画像データは、例えば、乾燥装置5に投入される前の汚泥の画像データ、乾燥装置5内の汚泥の画像データ、乾燥装置5によって乾燥された汚泥の画像データのうちの少なくとも1つである。音データは、例えば、乾燥装置5に投入されたときに発生する汚泥の音のデータ、乾燥装置5の乾燥室14内の汚泥の音のデータ、乾燥装置5の乾燥室14から排出されたときに発生する汚泥の音のデータのうちの少なくとも1つである。振動データは、例えば、乾燥装置5に投入された汚泥が接触する弾性部材の振動データ、および乾燥装置5の乾燥室14から排出された汚泥が接触する弾性部材の振動データのうちの少なくとも1つである。
【0110】
画像データ、音データ、および振動データのうち1つが用いられてもよいし、これらのうちの2つ、またはすべてが用いられてもよい。乾燥装置5の運転中は、学習済みモデルには、機械学習に使用されたデータと同じ種類のデータが入力される。画像データ、音データ、および振動データのうちの少なくとも1つがモデルの機械学習に用いられるので、制御システム10は、学習済みモデルを用いて、より精度の高い含水率の予測値を算定することができる。
【0111】
以下、画像データ、音データ、および振動データを取得するための構成を備えた乾燥システムの実施形態について説明する。
図10は、画像データを取得するための構成を備えた乾燥システムの実施形態を示す模式図である。特に説明しない構成および動作は、
図1乃至
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0112】
図10に示すように、制御システム10は、乾燥装置5に投入される前の汚泥の画像データを生成する撮像装置7を備えている。撮像装置7は、乾燥装置5の投入口25の近傍に配置されており、乾燥される前の汚泥の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、撮像装置7は、投入コンベヤ1上の汚泥の画像データを生成するように配置されてもよいし、あるいは投入コンベヤ1の上流側に配置されている脱水装置(図示せず)の排出口の近傍に配置されてもよい。撮像装置7は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、撮像装置7によって生成された汚泥の画像データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0113】
制御システム10は、乾燥装置5内の汚泥の画像データを生成する撮像装置8をさらに備えている。撮像装置8は、乾燥装置5のハウジング15の上壁に固定されており、乾燥装置5の内部、より具体的には、乾燥室14の内部を向いて配置されている。一実施形態では、複数の撮像装置8が攪拌ロータ17の軸方向に沿って配列されてもよい。撮像装置8は、乾燥されている工程中の汚泥、すなわち攪拌ロータ17によって攪拌されている汚泥の画像データを生成するように配置されている。撮像装置8は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、撮像装置8によって生成された汚泥の画像データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0114】
制御システム10は、乾燥装置5によって乾燥された汚泥の画像データを生成する撮像装置9をさらに備えている。撮像装置9は、乾燥装置5の排出口26の近傍に配置されている。より具体的には、撮像装置9は、排出口26を向いて配置されており、乾燥装置5の乾燥室14から排出された汚泥の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、撮像装置9は、排出室60内または排出室60外に配置されてもよい。さらに、一実施形態では、撮像装置9は、排出コンベヤ64上の汚泥の画像データを生成するように配置されてもよい。撮像装置9は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、撮像装置9によって生成された汚泥の画像データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0115】
撮像装置7、撮像装置8、および撮像装置9は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、撮像装置7、撮像装置8、および撮像装置9のうちの少なくとも1つは、赤外線カメラ、または光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0116】
制御システム10は、撮像装置7、撮像装置8、および撮像装置9によって生成された画像データと、乾燥装置5の運転パラメータと、乾燥装置5の状態データを含む訓練データを用いて、機械学習を実行し、乾燥汚泥の含水率の予測値を算出するモデルを作成する。乾燥装置5の運転中は、制御システム10は、撮像装置7、撮像装置8、および撮像装置9によって生成された画像データと、乾燥装置5の運転パラメータと、乾燥装置5の状態データを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルに従って乾燥汚泥の含水率の予測値を算定する。
【0117】
図11は、音データを取得するための構成を備えた乾燥システムの実施形態を示す模式図である。特に説明しない構成および動作は、
図1乃至
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0118】
図11に示すように、制御システム10は、乾燥装置5に投入されたときに発生する汚泥の音を検出し、音データを生成する音検出器71と、乾燥装置5の乾燥室14内の汚泥の音を検出し、音データを生成する音検出器72と、乾燥装置5の乾燥室14から排出されたときに発生する汚泥の音を検出し、音データを生成する音検出器73を備えている。音検出器71、音検出器72、および音検出器73の具体的構成は、特に限定されないが、本実施形態では、音を電気信号に変換するマイクロフォンが使用されている。音検出器71、音検出器72、および音検出器73によって生成される音データは、音データはデジタル信号からなるデータである。例えば、音データは、振幅と時間との関係を示す音波形データ、または周波数と音の大きさとの関係を示す音波形データである。音データは、汚泥から音が発生した範囲を切り出したデータ、または一定の時間長さのフレームで切り出した時系列データのいずれであってもよい。例えば、音データから抽出した特徴量であるMFCC(メル周波数ケプストラム係数)を学習済みモデルに入力する。例えば、音データの前処理を行い、スペクトログラムを画像データとして学習済みモデルに入力する。
【0119】
音検出器71は、乾燥室14内に配置されている。より具体的には、音検出器71は、ハウジング15の投入口25の下方に配置されており、投入口25を通じて投入された汚泥が、ハウジング15内に既に収容されている汚泥の堆積物上に落下するときに発生する汚泥の音を検出し、音データを生成する。一実施形態では、ハウジング15内であって、かつ投入口25の下方に衝突部材(図示せず)を配置し、音検出器71は、この衝突部材上に落下するときに発生する汚泥の音を検出し、音データを生成してもよい。音検出器71は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、音検出器71によって生成された音データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0120】
音検出器72の少なくとも一部は、乾燥室14の内部に位置している。より具体的には、音検出器72は、ハウジング15の上壁に固定されている。音検出器72は、乾燥装置5(乾燥室14内)内で乾燥されている工程中に発生する汚泥の音、すなわち攪拌ロータ17によって攪拌されているときに発生する汚泥の音を検出し、音データを生成する。音検出器72は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、音検出器72によって生成された音データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0121】
音検出器73は、ハウジング15の排出口26の下方に配置されており、乾燥室14から排出された汚泥が、排出コンベヤ64上に落下するときに発生する音を検出し、音データを生成する。一実施形態では、音検出器73は、排出室60内、または排出口26内に配置されてもよい。さらに、一実施形態では、排出室60内、または排出口26内、または排出口26の下方に衝突部材(図示せず)を配置し、音検出器73は、この衝突部材上に落下するときに発生する汚泥の音を検出し、音データを生成してもよい。音検出器73は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、音検出器73によって生成された音データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0122】
一般に、汚泥の含水率が高いときと低いときでは、汚泥から発生する音が相違する。具体的には、汚泥の含水率が高いときは、湿った音が発生するのに対して、汚泥の含水率が低いときは、乾いた音が発生する。したがって、投入時、乾燥時、および排出時に発生する汚泥の音は、汚泥の含水率に依存して変わる。
【0123】
制御システム10は、音検出器71、音検出器72、および音検出器73によって生成された音データと、乾燥装置5の運転パラメータと、乾燥装置5の状態データを含む訓練データを用いて、機械学習を実行し、乾燥汚泥の含水率の予測値を算出するモデルを作成する。乾燥装置5の運転中は、制御システム10は、音検出器71、音検出器72、および音検出器73によって生成された音データと、乾燥装置5の運転パラメータと、乾燥装置5の状態データを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルに従って乾燥汚泥の含水率の予測値を算定する。
【0124】
図12は、振動データを取得するための構成を備えた乾燥システムの実施形態を示す模式図である。特に説明しない構成および動作は、
図1乃至
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0125】
図12に示すように、制御システム10は、乾燥装置5に投入された汚泥が接触する弾性部材81と、この弾性部材81に固定され、弾性部材81の振動データを生成する振動検出器82と、乾燥装置5の乾燥室14から排出された汚泥が接触する弾性部材85と、この弾性部材85に固定され、弾性部材85の振動データを生成する振動検出器86を備えている。振動検出器82および振動検出器86の具体的構成は、特に限定されないが、本実施形態では、振動を電気信号に変換する振動センサまたは加速度センサが使用されている。
【0126】
振動検出器82は、ハウジング15の投入口25の下方に配置された弾性部材81に固定されている。弾性部材81は、乾燥室14内に配置されている。本実施形態においては、弾性部材81は板状である。弾性部材81の一端は、ハウジング15の側壁に固定されており、振動検出器82は弾性部材81の他端に固定されている。投入口25を通じて投入された汚泥は、弾性部材81上に落下し、振動検出器82は弾性部材81と一体に振動する。振動検出器82は、汚泥が弾性部材81上に落下するときに発生する振動を検出し、振動データを生成する。振動検出器82は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、振動検出器82によって生成された振動データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0127】
振動検出器86は、ハウジング15の排出口26の下方に配置された弾性部材85に固定されている。本実施形態においては、弾性部材85は板状である。弾性部材85の一端は、図示しない固定部材に固定されており、振動検出器86は弾性部材85の他端に固定されている。一実施形態では、弾性部材85および振動検出器86は、排出室60内または排出口26内に配置されてもよい。
【0128】
乾燥室14から排出された汚泥は、弾性部材85上に落下し、振動検出器86は弾性部材85と一体に振動する。振動検出器86は、汚泥が弾性部材85上に落下するときに発生する振動を検出し、振動データを生成する。振動検出器86は、制御システム10の記憶装置10aに接続されており、振動検出器86によって生成された振動データは、記憶装置10a内に格納されるようになっている。
【0129】
振動検出器82および振動検出器86によって生成される振動データは、例えば、振幅と時間との関係を示すデータであり、デジタル信号からなるデータである。一般に、汚泥の含水率が高いときと低いときでは、汚泥が弾性部材81および弾性部材85に衝突したときのこれらの振動の仕方が相違する。具体的には、汚泥の含水率が高いときは、より大きな塊が弾性部材81および弾性部材85に接触し、振動の周期は短くなる傾向にある。これに対し、汚泥の含水率が低いときは、より小さな塊が弾性部材81および弾性部材85に接触し、振動の周期は長くなる傾向にある。したがって、弾性部材81および弾性部材85の振動データは、汚泥の含水率に依存して変わる。
【0130】
制御システム10は、振動検出器82および振動検出器86によって生成された振動データと、乾燥装置5の運転パラメータと、乾燥装置5の状態データを含む訓練データを用いて、機械学習を実行し、乾燥汚泥の含水率の予測値を算出するモデルを作成する。乾燥装置5の運転中は、制御システム10は、振動検出器82および振動検出器86によって生成された振動データと、乾燥装置5の運転パラメータと、乾燥装置5の状態データを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルに従って乾燥汚泥の含水率の予測値を算定する。
【0131】
一実施形態では、撮像装置7,8,9と、音検出器71,72,73と、振動検出器82,86のすべてが設けられてもよい。あるいは、撮像装置7,8,9と、音検出器71,72,73と、振動検出器82,86のうちの2つの組み合わせが設けられてもよい。
【0132】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0133】
1 投入コンベヤ
5 乾燥装置
7 撮像装置
8 撮像装置
9 撮像装置
10 制御システム
10a 記憶装置
10b 処理装置
14 乾燥室
15 ハウジング
17 攪拌ロータ
17A シャフト
17B パドル
18 電動機
20 ギヤ
22 トルク伝達機構
25 投入口
26 排出口
30 乾燥気体供給ライン
31 乾燥気体排出ライン
32 温度測定器
33 流量測定器
35 温度測定器
40 温度測定器
41 圧力測定器
46 表示部
50 蒸気供給ライン
51 ボイラー
52 蒸気圧力調節弁
56 堰
58 上下動装置
60 排出室
64 排出コンベヤ
71 音検出器
72 音検出器
73 音検出器
81 弾性部材
82 振動検出器
85 弾性部材
86 振動検出器