IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー・ファインケム株式会社の特許一覧

特開2022-137478含フッ素スチレン誘導体及びその重合体並びにその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137478
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】含フッ素スチレン誘導体及びその重合体並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 23/18 20060101AFI20220914BHJP
   C07C 17/35 20060101ALI20220914BHJP
   C08F 12/20 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C07C23/18 CSP
C07C17/35
C08F12/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036994
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 友宏
(72)【発明者】
【氏名】福元 博基
(72)【発明者】
【氏名】菅野 康徳
(72)【発明者】
【氏名】比佐 達郎
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC13
4H006AD17
4H006BB11
4H006BC10
4J100AB07P
4J100BB12P
4J100BC02P
4J100BC03P
4J100BC12P
4J100CA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100FA03
4J100FA28
4J100JA01
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】優れた耐熱性等を示す新規な含フッ素スチレン誘導体及びその重合体、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体とその製造方法並びにこれに由来する含フッ素重合体を用いる。

(式(1)中、nは2~4の整数であり、R~Rのうち一つはビニル基であり、残りは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される、含フッ素スチレン誘導体。
【化22】
(式(1)中、
nは2~4の整数であり、
~Rにおいて、いずれか一つはビニル基であり、他の三つは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる)
【請求項2】
一般式(1)において、nが4である、請求項1に記載の含フッ素スチレン誘導体。
【請求項3】
一般式(1)において、nが4であり、Rがビニル基であり、R、R及びRが水素原子である、請求項1または請求項2に記載の含フッ素スチレン誘導体。
【請求項4】
下記一般式(2)で示される構造単位を含む、含フッ素重合体。
【化23】
(式(2)中、Yは下記一般式(3)で示される)
【化24】
(式(3)中、
nは2~4の整数であり、
~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる)
【請求項5】
一般式(3)において、nが4である、請求項4に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
下記一般式(4)で示される構造単位を含む、含フッ素重合体。
【化25】
【請求項7】
下記一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体の製造方法であって、
下記一般式(5)で示される化合物と下記一般式(6)で示されるジヨードパーフルオロアルカンを銅粉の存在下反応させて下記一般式(7)で示される化合物を得る工程、
下記一般式(7)で示される化合物を還元して下記一般式(8)で示される化合物を得る工程、及び
下記一般式(8)で示される化合物を分子内脱水する工程を含む、含フッ素スチレン誘導体の製造方法。
【化26】
(上記式(1)は、請求項1における式(1)と同じである。)
【化27】
(式(5)中、
及びXは各々独立して、臭素原子またはヨウ素原子であり、
~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。)
I-(CF-I (6)
(式(6)中、nは2~4の整数である。)
【化28】
(式(7)中、nは2~4の整数であり、上記式(5)と同じである。)
【化29】
(式(8)中、nは2~4の整数であり、上記式(5)と同じである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素スチレン誘導体及びその重合体並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素重合体は、炭素-フッ素結合の性質に起因して、耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、低摩擦性、低屈折率、低誘電率等の優れた機能を示す。特に、パーフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体が撥水撥油剤や光学部材等として工業的に使用されている(特許文献1)。しかし、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体は分子内のエステル結合部位が加水分解を受けやすく、耐熱性、耐薬品性に課題があった。
【0003】
このため、分子内にエステル結合を有さない含フッ素スチレン誘導体を単量体とする重合体が報告されている。特許文献2には、パーフルオロポリエーテル鎖を有する含フッ素スチレン誘導体が開示されており、特許文献3には及びパーフルオロポリエーテル鎖を有する含フッ素スチレン共重合体を用いた塗料が開示されている。また、特許文献4には、分岐状パーフルオロアルケニル基を有する含フッ素スチレン誘導体及びその重合体が開示されている。
しかし、上記の含フッ素スチレン誘導体は、スチレンの芳香環にエーテル結合を介して含フッ素置換基が結合しているため、依然として耐熱性、化学的安定性に課題があった。
【0004】
非特許文献1には、芳香環にパーフルオロアルキル基が直接結合した含フッ素スチレン誘導体及びその重合体が記載されている。しかし、重合体の10%分解温度(Td10%)は305℃と、耐熱性にさらなる改善の余地があった。また、環状パーフルオロアルキレン基を有するスチレン誘導体はこれまでに報告例がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-29916号公報
【特許文献2】特開平3-112938号公報
【特許文献3】特開2017-74777号公報
【特許文献4】特開2007-9163号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Polym.Sci.,PartA:Polym.Chem.,2013年,第51巻,項3202-3212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた耐熱性等を示す新規な含フッ素スチレン誘導体及びその重合体、並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、以下に示す含フッ素スチレン誘導体を重合単位として含む含フッ素重合体が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下に係る。
[1] 下記一般式(1)で示される、含フッ素スチレン誘導体。
【化1】
(式(1)中、
nは2~4の整数であり、
~Rにおいて、いずれか一つはビニル基であり、他の三つは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる、すなわちR~Rの内の一つの置換基はビニル基であり、他の三つの置換基は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであって、相互に同一でも異なっていてもよい。)
[2] 一般式(1)において、nが4である、[1]に記載の含フッ素スチレン誘導体。
[3] 一般式(1)において、nが4であり、Rがビニル基であり、R、R及びRが水素原子である、[1]または[2]に記載の含フッ素スチレン誘導体。
[4] 下記一般式(2)で示される構造単位を含む、含フッ素重合体。
【化2】
(式(2)中、Yは下記一般式(3)で示される)
【化3】
(式(3)中、
nは2~4の整数であり、
~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる、すなわちR~Rの各々の置換基は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであって、相互に同一でも異なっていてもよい。)
上記一般式(2)に示すYは一般式(3)の芳香環と結合する。
[5] 一般式(3)において、nが4である、[4]に記載の含フッ素重合体。
[6] 下記一般式(4)で示される構造単位を含む、含フッ素重合体。
【化4】
[7] 下記一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体の製造方法であって、
下記一般式(5)で示される化合物と下記一般式(6)で示されるジヨードパーフルオロアルカンを銅粉の存在下反応させて下記一般式(7)で示される化合物を得る工程、
下記一般式(7)で示される化合物を還元して下記一般式(8)で示される化合物を得る工程、及び
下記一般式(8)で示される化合物を分子内脱水する工程を含む、含フッ素スチレン誘導体の製造方法。
【化5】
(上記式(1)は、上記[1]における式(1)と同じである、すなわち式(1)中、
nは2~4の整数であり、R~Rにおいて、いずれか一つはビニル基であり、他の三つは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。)
【化6】
(式(5)中、
及びXは各々独立して、臭素原子またはヨウ素原子であり、
~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる、すなわちR~Rの各々の置換基は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであって、相互に同一でも異なっていてもよい。)
I-(CF-I (6)
(式(6)中、nは2~4の整数である。)
【化7】
(式(7)中、
nは2~4の整数であり、
~Rは上記式(5)と同じである、すなわちR~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。)
【化8】
(式(8)中、
nは2~4の整数であり、
~Rは上記式(5)と同じである、すなわちR~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。)
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体において、nは2~4の整数であり、製造が容易であることから特にnが4であることが好ましい。
【0011】
本発明の一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体において、R~Rのうち一つはビニル基であり、残りは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
炭素数1~4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。炭素数1~4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。これらの中でも、合成が簡便であることからRがビニル基であり、R、R及びRが水素原子であることが好ましい。
【0012】
本発明は、下記一般式(2)で示される構造単位を含む、含フッ素重合体を提供する。
【化9】
ここで一般式(2)におけるYは上記一般式(3)で示される、すなわちYは一般式(3)の芳香環と結合し、下記一般式(4)で示される構造を例示できる。
【0013】
本発明の含フッ素重合体は、一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体を単独重合させて得られた単独重合体であってもよく、一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体と他の単量体を共重合させて得られた共重合体であってもよい。
本発明の一般式(2)で示される構造単位を含む含フッ素重合体において、nは2~4の整数であり、製造が容易であることから特にnが4であることが好ましい。
【0014】
本発明の一般式(2)で示される構造単位を含む含フッ素重合体として、下記一般式(4)で示される構造単位を含む含フッ素重合体が例示できる。
【化10】
【0015】
他の単量体としては、一般式(1)で示される含フッ素化合物と共重合しうる単量体であれば特に限定されないが、(メタ)アクリル酸もしくはそのエステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類、ハロゲン化ビニルまたはビニリデン類、脂肪酸アリルエステル類、アクリルアミド類等が挙げられる。
具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、ベヘニル、β-ヒドロキシエチル、グリシジル、フェニル、ベンジル、4-シアノフェニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ペンタフルオロブチル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロオクチル、ヘプタデカフルオロデシルエステル類、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレン、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル、N-メチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。これらの他の単量体は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明の含フッ素重合体は、一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体単独または一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体と他の単量体を用いて、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等により製造できる。これらの重合においては、重合開始剤を用いることにより、重合反応を進行させることができる。
【0017】
本発明の含フッ素重合体の製造に用いられる重合開始剤は、特に限定されない。
具体的には、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ラウリルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明の含フッ素重合体の製造に用いられる重合開始剤の量は、重合反応に具する単量体の総量に対し、好ましくは0.001重量%~50重量%、さらに好ましくは0.005重量%~20重量%、特に好ましくは0.01重量%~10重量%である。
【0018】
本発明の含フッ素重合体の溶液重合による製造に用いられる溶媒は、特に限定されない。
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン等の複素環式化合物系溶媒、トリフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、ヘキサフルオロベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7100)、エチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7200)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン(HFE7300)等のハイドロフルオロエーテル類等のフッ素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
溶液重合において用いられる溶媒の量は、重合反応に具する単量体の総量に対し、好ましくは1重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは2重量倍量~10重量倍量である。
【0019】
本発明の含フッ素重合体は、例えば水を分散媒とし、界面活性剤を含む混合物中で懸濁重合、乳化重合により製造してもよい。
【0020】
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。重合反応の温度は、好ましくは40℃~150℃、さらに好ましくは40℃~100℃である。これらの反応温度及び反応時間の条件は、単量体の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量に応じて適宜調整することでよい。
【0021】
重合反応の終了後、得られた含フッ素重合体を任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から重合体を回収する方法としては、濃縮、再沈殿等公知の方法が利用できる。
【0022】
得られた含フッ素ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000~1,000,000、さらに好ましくは3,000~500,000である。
【0023】
本発明の下記一般式(1)で示される含フッ素スチレン誘導体の好ましい製造方法は、一般式(5)で示される化合物と一般式(6)で示されるジヨードパーフルオロアルカンを銅粉の存在下反応させて一般式(7)で示される化合物を得る工程、一般式(7)で示される化合物を還元して一般式(8)で示される化合物を得る工程、及び一般式(8)で示される化合物を分子内脱水する工程を含むことを特徴とする。
【0024】
【化11】
(式(1)中、
nは2~4の整数であり、
~Rにおいて、いずれか一つはビニル基であり、他の三つは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる)
【化12】
(式(5)中、
及びXは各々独立して、臭素原子またはヨウ素原子であり、
~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。)
I-(CF-I (6)
(式(6)中、nは2~4の整数である)
【0025】
【化13】
(式(7)中、
nは2~4の整数であり、
~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。)
【0026】
【化14】
(式(8)中、
nは2~4の整数であり、
~Rは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる。)
【0027】
本発明の一般式(5)で示される化合物において、X及びXは臭素原子またはヨウ素原子であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R~Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。中でも、R~Rが全て水素原子であることが好ましい。
【0028】
本発明の一般式(6)で示されるジヨードパーフルオロアルカンにおいて、nは2~4の整数であり、中でもnが4であることが好ましい。
【0029】
本発明の一般式(7)で示される化合物において、nは2~4の整数であり、R~Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。中でも、nが4であることが好ましい。中でも、R~Rが全て水素原子であることが好ましい。
【0030】
本発明の一般式(8)で示される化合物において、nは2~4の整数であり、R~Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、トリフルオロメチル基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。中でも、nが4であることが好ましい。中でも、R~Rが全て水素原子であることが好ましい。
【0031】
本発明の一般式(7)で示される化合物は、一般式(5)で示される化合物と一般式(6)で示されるジヨードパーフルオロアルカンを銅粉の存在下反応させることにより得られる。
【0032】
一般式(7)で示される化合物を得る反応に適用可能な溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等の(ハロゲン化)炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性溶媒など、反応に不活性な溶媒であればあらゆるものが使用できる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。溶媒は反応に具する一般式(5)で示される化合物に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは3重量倍量~10重量倍量使用する。
一般式(7)で示される化合物を得る反応に用いられる銅粉の量は、反応に具する一般式(5)で示される化合物に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量である。
一般式(7)で示される化合物を得る反応に用いられる、一般式(6)で示されるジヨードパーフルオロアルカンの量は、反応に具する一般式(5)で示される化合物に対して、好ましくは0.5~10当量、より好ましくは1~5当量である。
一般式(7)で示される化合物を得る反応の温度は、好ましくは室温~150℃の範囲で、より好ましくは40℃~120℃の範囲である。
一般式(7)で示される化合物を得る反応の反応時間は、好ましくは1時間~48時間の範囲で、より好ましくは2時間~24時間の範囲である。
一般式(7)で示される化合物の精製方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、中和、溶媒抽出、乾燥、ろ過、濃縮、蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等を用いることができる。
【0033】
本発明の一般式(8)で示される化合物は、一般式(7)で示される化合物を還元することにより得られる。
一般式(8)で示される化合物を得る反応に適用可能な還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウム、ボラン-ジメチルスルフィド錯体、ボラン-テトラヒドロフラン錯体等が挙げられる。中でも、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
一般式(8)で示される化合物を得る反応に適用可能な溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等の(ハロゲン化)炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性非プロトン性溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール類等、反応に不活性な溶媒であればあらゆるものが使用できる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。溶媒は反応に具する一般式(7)で示される化合物に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは3重量倍量~10重量倍量使用する。
一般式(8)で示される化合物を得る反応に用いられる還元剤の量は、反応に具する一般式(7)で示される化合物に対して、好ましくは1~10当量、より好ましくは1~2当量である。
一般式(8)で示される化合物を得る反応の温度は、好ましくは0℃~60℃の範囲で、より好ましくは0℃~40℃の範囲である。
一般式(8)で示される化合物を得る反応の反応時間は、好ましくは1時間~48時間の範囲で、より好ましくは2時間~24時間の範囲である。
一般式(8)で示される化合物の精製方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、中和、溶媒抽出、乾燥、ろ過、濃縮、蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等を用いることができる。
【0034】
本発明の一般式(1)で示される化合物は、一般式(8)で示される化合物を分子内脱水することにより得られる。
一般式(1)で示される化合物を得る反応に適用可能な脱水剤としては、硫酸、硫酸水素カリウム、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、塩化チオニル、塩化ホスホリル、五酸化二リン等が挙げられる。
一般式(1)で示される化合物を得る反応に適用可能な溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等の(ハロゲン化)炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の極性非プロトン性溶媒など、反応に不活性な溶媒であればあらゆるものが使用できる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。溶媒は反応に具する一般式(8)で示される化合物に対して、好ましくは2重量倍量~100重量倍量、さらに好ましくは3重量倍量~50重量倍量使用する。
一般式(1)で示される化合物を得る反応に用いられる還元剤の量は、反応に具する一般式(8)で示される化合物に対して、好ましくは0.5~5当量、より好ましくは1~2当量である。
一般式(1)で示される化合物を得る反応の温度は、好ましくは室温~180℃の範囲で、より好ましくは40℃~120℃の範囲である。
一般式(1)で示される化合物を得る反応の反応時間は、好ましくは1時間~48時間の範囲で、より好ましくは2時間~24時間の範囲である。
一般式(1)で示される化合物の精製方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、中和、溶媒抽出、乾燥、ろ過、濃縮、蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等を用いることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、新規含フッ素スチレン誘導体及びその重合体が提供できる。重合体は高い耐熱性等を有し、撥水撥油剤、表面改質剤、コーティング剤、光学材料等の機能性材料として利用可能である。
【実施例0036】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
結果の解析に当たっては、下記機器を使用した。
H NMR、19F NMR、13C NMR:ブルカー・バイオスピン株式会社製AVANCE-III NMR分光計
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):
装置:東ソー製HLC-8320GPC
カラム:東ソー製TSKgel G4000HXL,G3000HXL,G2500HXL,G2000HXL
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1mL/min
検出器:UV(254nm)
熱重量示唆熱分析(TG-DTA):リガク製Thermo plus EVO高分解能作動型熱分解装置
示差走査熱量測定(DSC):TA Instruments製DSC Q2000
【0037】
合成例1
1-(4-アミノ-3-ブロモフェニル)エタン-1-オン(a)の合成
【0038】
【化15】
非特許文献2(Chem.Eur.J.2017年,第23巻,17463-17468.)に記載の方法に基づいて合成し、化合物(a)8.2g(38mmol)茶色の固体として得た。収率は96%であった。
【0039】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.05(d,J=2.0Hz,1H),7.73(dd,J=8.4Hz,J=2.0Hz,1H),6.74(d,J=8.4Hz,1H),4.57(brs,2H),2.49(s,3H)
【0040】
合成例2
1-(3-ブロモ-4-ヨードフェニル)エタン-1-オン(a)の合成
【化16】
非特許文献2(Chem.Eur.J.2017年,第23巻,17463-17468.)に記載の方法に基づいて合成し、化合物(a)黄色の固体として1.2g(3.7mmol)黄色の固体として得た。収率は37%であった。
【0041】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.15(d,J=2.0Hz,1H),7.98(d,J=8.2Hz,1H),7.53(dd,J=8.2Hz,J=2.0Hz,1H),2.57(s,3H)
【0042】
実施例1
1-(5,5,6,6,7,7,8,8-オクタフルオロ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン(b)の合成
【化17】
150℃、0.1mmHgで30分間乾燥させた銅粉1.9g(30mmol) を20mL三ツ口フラスコに入れ、1-(3-ブロモ-4-ヨードフェニル)エタン-1-オン 0.98g(3.0mmol)、オクタフルオロ-1,4-ジヨードブタン1.7mL(9.0mmol)、無水ジメチルスルホキシド10mLを加え、窒素雰囲気下110℃で24時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後、酢酸エチルを用いてセライトろ過を行った。ろ液の水層を酢酸エチルで3回抽出し、有機層を蒸留水で5回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮して得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)により精製し、化合物(b)0.55 g(1.7mmol)を茶色の液体として得た。収率は58%であった。
【0043】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.41(s,1H),8.34(d,J=8.2Hz,1H),8.01(d,J=8.3Hz,1H),2.71(s,3H)
19F NMR(376MHz,CDCl):δ-102.94(s,2F),-103.49(s,2F),-134.26(s,4F)
【0044】
実施例2
1-(5,5,6,6,7,7,8,8-オクタフルオロ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オール(b)の合成
【化18】
100mL三ツ口フラスコに、化合物(b)3.6g(11mmol)、水素化ホウ素ナトリウム0.49g(13mmol)、メタノール35mLを加え、窒素雰囲気下室温で16時間撹拌した。反応混合物に蒸留水を加えて反応を停止し、ろ液の水層をジクロロメタンで3回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、化合物(b)3.4 g(10mmol)を茶色の液体として得た。収率は95%であった。
【0045】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ7.89-7.79(m,3H),5.06 (q,J=3.1Hz,1H),1.55(m,3H)
19F NMR(376MHz,CDCl):δ-102.55(s,2F),-102.82 (s,2F),-134.29(s,4F)
【0046】
実施例3
1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-6-ビニル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(b)の合成
【化19】
100mL三ツ口フラスコに、化合物(b)3.4g(10mmol)、五酸化リン1.7g(12 mmol)、無水トルエン60mLを加え、窒素雰囲気下110℃で16時間撹拌した。ジクロロメタンを用いてセライトろ過を行い、ロータリーエバポレーターで濃縮して得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製し、化合物(b)1.2g(3.7mmol)を無色の液体として得た。収率は37%であった。
【0047】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ7.83-7.78(m,3H),6.80 (dd,J=17Hz,J=11Hz,1H),5.97(d,J=18Hz,1H),5.55(d, J=11Hz,1H)
19F NMR(376MHz,CDCl):δ-102.62--102.70(m,2F),-103.14--103.21(m,2F),-134.18--134.39(m,4F)
【0048】
実施例4
重合体(c)の合成
【化20】
20mLネジ口試験管に、化合物(b)0.1g(0.32 mmol)、過酸化ベンゾイル3.9mg(16.2mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃で1時間撹拌した。0.1 g(0.32 mmol)の重合体(c)を無色の固体として得た。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mは10,000、Mは31,000、分散度M/Mは3.1であった。
【0049】
生成物の解析結果を以下に示す。
d5%=336℃
=149℃
【0050】
実施例5
重合体(c)の合成
【化21】
20mL三ツ口フラスコに、化合物(b)0.1g(0.32mmol)、過酸化ベンゾイル 3.9mg(16μmol)、テトラヒドロフラン2.3mLを加え、窒素雰囲気下65℃で20時間撹拌した。ロータリーエバポレーターで濃縮し、メタノールで洗浄し、80mg(0.26mmol)の重合体(c)を白色の固体として得た。収率は80%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mは8,100、Mは14,000、分散度M/Mは1.8であった。
【0051】
生成物の解析結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,THF-d):δ8.30-6.53(brm,3H),2.13-1.51(brm,1H),1.51-1.01(brm,1H),1.01-0.70(brm,1H)
19F NMR(376MHz,THF-d):δ-103.45(brm, 4F),-135.16(brm,4F)
【0052】
以上の実施例3及び実施例4では、重合性の化合物(b)を重合させて単一の構造単位を含む重合体を得た。ここで、重合性化合物を2種以上用いることで、構造単位を2種以上含む共重合体を得ることは言うまでもない。
【0053】
実施例5
重合体(c)の撥水撥油性評価
重合体(c)について、純水及びジヨードメタンの静的接触角(液滴量2μL)、並びに拡張/収縮法による純水の動的接触角を測定した。
測定対象試料である重合体(c)の25mgを、2.5mLのテトラヒドロフランに溶解させた後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過し、重合体溶液を調製した。この重合体溶液を直径50mmの円形ガラス基板上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm10秒間、さらにslope5秒間)により製膜した。
【0054】
スピンコーティングには、アクティブ製マニュアル・スピンコーターACT-300AIIを用い、接触角測定には、協和界面科学製接触角計DMs-401を用いた。
ここで、静的接触角について、ぬれ性の数値化などの測定のために測定する。液滴を固体表面に接触させて着滴したとき,試料面とのなす角度を接触角θとする。本発明では、解析はθ/2法を使用した。静的接触角が大きい方が撥水撥油性に優れる。
また動的接触角について、液除去性の数値化などのために測定する。ぬれが拡がるとき(拡張)の接触角を(動的)前進角、収縮するときの接触角を(動的)後退角とする。 本発明では、拡張/収縮法を使用し、解析は真円フィッティング法を使用した。動的接触角測定で得られる前進接触角と後退接触角の差である接触角ヒステリシスが小さい方が動的撥水性に優れる。
得られた結果を表1に示す。
【0055】
【表1】