(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137566
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20220914BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61M25/14 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037104
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA15
4C267BB06
4C267BB07
4C267BB08
4C267BB09
4C267BB16
4C267BB63
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】良好な操作性を実現することが可能な医療機器を提供する。
【解決手段】医療機器100は、長尺な医療機器本体10を備え、医療機器本体10は、当該医療機器本体10の先端と基端においてそれぞれ開口しているルーメン20と、当該医療機器本体10の先端部10aにおいて閉塞しており、当該医療機器本体10の基端部10bの注入ポート41において開口している空洞部30と、を有する。注入ポート41から空洞部30に流動体60が注入されることにより、医療機器本体10の曲げ剛性が増大する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な医療機器本体を備え、
前記医療機器本体は、
当該医療機器本体の先端と基端においてそれぞれ開口しているルーメンと、
当該医療機器本体の先端部において閉塞しており、当該医療機器本体の基端部の注入ポートにおいて開口している空洞部と、
を有し、
前記注入ポートから前記空洞部に流動体が注入されることにより、前記医療機器本体の曲げ剛性が増大する医療機器。
【請求項2】
前記医療機器本体は、内管と、前記内管の周囲を覆っている外管と、を有する二重管構造であり、
前記内管の内腔が前記ルーメンであり、
前記内管の外周面と前記外管の内周面との間の筒状の間隙が前記空洞部を構成している請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記空洞部には、液体を吸収することにより膨潤する膨潤体が配設されている請求項1又は2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記内管の周囲に巻回されたコイル状の膨潤体が、前記空洞部に配設されており、
前記流動体として液体が前記空洞部に注入されることにより、前記膨潤体が膨潤し、前記膨潤体の巻回部どうしの間隙が縮小する請求項2に記載の医療機器。
【請求項5】
前記膨潤体は、前記液体を吸収することにより膨潤する材料により構成されたコイル状の線材により構成されている請求項4に記載の医療機器。
【請求項6】
前記膨潤体は、コイル状の線材と、前記線材にコーティングされていて前記液体を吸収することにより膨潤する膨潤材と、を有する請求項4に記載の医療機器。
【請求項7】
前記注入ポートは、前記医療機器本体の側方に向けて開口している請求項1から6のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項8】
前記医療機器本体の先端部に埋設されているマーカー部材を備え、
前記空洞部の先端は、前記マーカー部材の先端と同じ位置か、又は、前記マーカー部材の先端よりも基端側の位置において、終端している請求項1から7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項9】
当該医療機器は、前記ルーメンにカテーテルが挿通される親カテーテルである請求項1から8のいずれか一項に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器としては、体腔内に挿入されるとともに、当該体腔内における所望の部位にカテーテルやガイドワイヤ等を送り込むために用いられるタイプのものがある。このような医療機器としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の医療機器(同文献には、ガイディングカテーテルと記載)は、長尺な管状部材である医療機器本体(同文献には、管状部と記載)と、医療機器本体の内腔によって構成されているルーメンと、を備えて構成されており、ルーメンに沿ってカテーテルやガイドワイヤ等を軸方向に案内(ガイド)可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1の医療機器の構造では、医療機器の操作性について、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、良好な操作性を実現することが可能な医療機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、長尺な医療機器本体を備え、
前記医療機器本体は、
当該医療機器本体の先端と基端においてそれぞれ開口しているルーメンと、
当該医療機器本体の先端部において閉塞しており、当該医療機器本体の基端部の注入ポートにおいて開口している空洞部と、
を有し、
前記注入ポートから前記空洞部に流動体が注入されることにより、前記医療機器本体の曲げ剛性が増大する医療機器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、医療機器の良好な操作性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る医療機器の全体構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る医療機器の縦断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る医療機器の縦断面図であり、空洞部に流動体が注入された状態を示している。
【
図5】第2実施形態に係る医療機器の縦断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る医療機器の縦断面図であり、空洞部に流動体が注入された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、
図1から
図7を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。なお、
図2及び
図4は、
図3に示すA-A線に沿った断面図である。また、
図5及び
図7は、
図6に示すA-A線に沿った断面図である。
【0010】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更又は改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。
なお、本発明の医療機器100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、以下において、医療機器100の遠位側を先端側、その近位側を基端側ともいう。また、先端部は、遠位端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、近位端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味するものとする。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1から
図4を用いて第1実施形態を説明する。
図1から
図3のいずれかに示すように、本実施形態に係る医療機器100は、長尺な医療機器本体10を備え、医療機器本体10は、当該医療機器本体10の先端と基端においてそれぞれ開口しているルーメン20と、当該医療機器本体10の先端部10aにおいて閉塞しており、当該医療機器本体10の基端部10bの注入ポート41において開口している空洞部30と、を有する。
注入ポート41から空洞部30に流動体60(
図4参照)が注入されることにより、医療機器本体10の曲げ剛性が増大する。
【0012】
本実施形態によれば、空洞部30に流動体60が注入されている状態においては、医療機器本体10の曲げ剛性が増大する。このため、医療機器100を体腔内に配置した後、当該医療機器100を介してガイドワイヤ(不図示)やカテーテル(不図示)を体腔内における所望の位置に送り込む際に、医療機器本体10の十分な曲げ剛性を確保することができる。よって、ルーメン20に沿ってカテーテルやガイドワイヤをスムーズに当該所望の位置まで案内(ガイド)することができる。また、ルーメン20に沿ってカテーテルやガイドワイヤを先端側に摺動させる際のプッシャビリティ(先端側に移動させる力の伝達性)が良好となる。
また、本実施形態によれば、空洞部30に流動体60が注入されていない状態においては、医療機器本体10の十分な柔軟性を確保することができる。よって、医療機器100を体腔内に挿入する際、又は医療機器100を体腔内から抜去する際に、医療機器本体10を体腔の屈曲形状に良好に追従させることができる。
このように、本実施形態によれば、医療機器100を用いた手技の各段階に応じて医療機器本体10の曲げ剛性を変更することができるので、医療機器100の良好な操作性を実現することができる。
【0013】
本実施形態の場合、医療機器100は、ルーメン20にカテーテル(例えば、図示しないマイクロカテーテル)が挿通される親カテーテルである。医療機器本体10が体腔内における所望の位置まで挿入された状態において、ルーメン20にカテーテルが挿通されることによって、当該カテーテルは医療機器本体10の軸方向に沿って当該所望の位置まで案内される。
【0014】
医療機器本体10は、長尺な中空の管状部材である。
図2及び
図3に示すように、医療機器本体10は、例えば、内管12と、内管12の周囲を覆っている外管18と、を有する二重管構造である。
内管12は、長尺な中空の管状部材であり、内管12の内腔がルーメン20の軸方向における一部分を構成している。内管12は、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定に形成されている。より詳細には、内管12は、例えば、内層13と、内層13の周囲に設けられた外層14と、を備える二層構造であり、内管12の軸心側から、内層13と外層14との順に積層されて構成されている。軸方向におけるルーメン20の一部分は、内層13の内周面によって画定されている。
内層13は、内管12の最内層であり、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。内層13は、内管12の先端と基端との両端において開口している。
内層13は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー樹脂により構成されている。フッ素系の熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などとすることができる。内層13をこのようなフッ素系ポリマー材料で構成することにより、カテーテルやガイドワイヤがルーメン20内で摺動する際の摺動抵抗が低減される。
外層14は内管12の最外層である。例えば、内管12の肉厚の大部分(過半部)は、外層14の肉厚によって占められている。外層14は、例えば、その肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。
【0015】
図2に示すように、外管18は、長尺な中空の管状部材である。外管18は、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず略一定に形成されている(ただし、後述する閉塞部19は除く)。外管18の内径は、内管12の外径よりも大径となっている。外管18の全長は、例えば、内管12の全長と略同等の寸法に設定されており、内管12は、外管18の内腔の先端から基端に亘って挿通されている。また、外管18は、内管12と同軸に配置されている。
ここで、本実施形態の場合、内管12の外周面(外層14の外周面)と外管18の内周面との間の筒状の間隙が空洞部30を構成している。
これにより、
図2及び
図3に示すように、空洞部30が、医療機器本体10の先端部10aから基端部10bに亘って形成されているとともに、医療機器本体10の全周に亘って形成されている構成となるので、空洞部30に流動体60を注入した際に、医療機器本体10の先端部10aから基端部10bに亘る範囲において、曲げ剛性を増大させることができる。
より詳細には、本実施形態の場合、内管12の外周面と外管18の内周面との間の筒状の間隙が、軸方向における空洞部30の大部分を構成している。また、
図2に示すように、外管18の先端部には、空洞部30の先端側を閉塞している閉塞部19が形成されている。閉塞部19は、外管18の外周面から径方向内側に周回状に張り出している。閉塞部19の内周面は、内管12の外層14の外周面に対して周回状に密着しており、例えば、閉塞部19は内管12の先端部に対して接着剤(不図示)や熱融着等によって固定されている。このようにして、内管12は、当該内管12の先端部が閉塞部19の内腔に嵌入した状態で、外管18に対して固定されている。そして、閉塞部19の基端側の端面が、空洞部30の先端を画定している(内管12の外周面と外管18の内周面との間の筒状の間隙の先端側を閉塞している)。
また、内管12の先端側の端面と外管18の先端側の端面とは、互いに面一に配置されている。
【0016】
外管18の外周面には、例えば、親水層(不図示)が形成されていることも好ましい。これにより、医療機器本体10が体腔に挿入される際の摺動抵抗を低減することができる。
親水層は、外管18の全長に亘って形成されていてもよく、または外管18の先端側における一部の長さの区間に形成されていてもよい。
親水層の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの無水マレイン酸系ポリマーやその共重合体、ポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料であることが挙げられる。
【0017】
内管12の外径は、特に限定されないが、2.0mm以上2.2mm以下であることが好ましい。内管12の内径は、特に限定されないが、1.8mm以上2.0mm以下であることが好ましい。また、内管12の全長は、特に限定されないが、700mm以上1000mm以下であることが好ましい。
外管18の外径は、特に限定されないが、2.6mm以上2.8mm以下であることが好ましい。外管18の内径は、特に限定されないが、2.4mm以上2.6mm以下であることが好ましい。また、外管18の全長は、特に限定されないが、700mm以上1000mm以下であることが好ましい。
外管18の内径と内管12の外径との差分は、特に限定されないが、0.2mm以上0.6mm以下であることが好ましい。
【0018】
更に、医療機器本体10は、例えば、編組された金属ワイヤにより網目状に構成された補強層16(
図2及び
図3等参照)を含む。
補強層16は、例えば、内管12の外層14に埋設されており、内層13の周囲に配置されている。
補強層16は、例えば、内管12の先端から基端に亘って配設されている。医療機器本体10は、補強層16によってその全体が補強されている。
なお、補強層16は、例えば、コイル状に巻回された金属ワイヤによって構成されたものであってもよい。また、補強層16は、例えば、内管12の軸方向における一部分に配設されていてもよい。
【0019】
ここで、本実施形態の場合、医療機器100は、医療機器本体10の先端部10aに埋設されているマーカー部材11(
図2参照)を備え、空洞部30の先端は、マーカー部材11の先端と同じ位置か、又は、マーカー部材11の先端よりも基端側の位置において、終端している。
これにより、医療機器本体10における、基端部10bからマーカー部材11の配置領域に亘って曲げ剛性を増大させることができる。
より詳細には、
図2に示すように、マーカー部材11は、例えば、内管12の外層14の先端部に埋設されている、閉塞部19の基端側の面は、マーカー部材11の先端よりも基端側に配置されている。また、マーカー部材11の基端は、閉塞部19の基端側の面よりも基端側に配置されている。
マーカー部材11は、例えば、白金やタングステンなどのX線不透過性の材料によって構成されている筒状の部材である。マーカー部材11の位置を指標とすることにより、X線(放射線)観察下において体腔内における医療機器本体10の先端部10aの位置を適確に認識することができる
【0020】
また、
図1及び
図2に示すように、医療機器本体10の基端部10bの基端側の部分(最基端部)は、例えば、略円筒状の連結部40によって構成されている。
連結部は、例えば、流動体60が注入される注入ポート41と、カテーテルやガイドワイヤが挿入される挿入ポート46と、を有する。
挿入ポート46は、例えば、内管12及び外管18の延長上に配置されており、注入ポート41は、例えば、挿入ポート46の基端部から側方に延出している。
また、連結部40の内部には、挿入ポート46の先端から注入ポート41の基端に亘って延在している第1貫通孔40aと、挿入ポート46の先端から基端に亘って延在している第2貫通孔40bと、がそれぞれ形成されている。
第1貫通孔40aの先端は、例えば、内管12の外周面と外管18の内周面との間の筒状の間隙の基端側と連通しており、第1貫通孔40aと当該間隙とが、空洞部30を構成している。すなわち、空洞部30の基端側の開口は、注入ポート41の基端側の開口によって構成されている。
また、第2貫通孔40bの先端は、内管12の内腔の基端と接続されており、第2貫通孔40bの内腔と内管12の内腔とが、医療機器本体10のルーメン20を構成している。すなわち、ルーメン20の基端側の開口は、挿入ポート46の基端側の開口によって構成されている。
より詳細には、
図2に示すように、連結部40の先端は、例えば、内管12及び外管18の基端と接続されており、内管12の外周面と外管18の内周面との間の筒状の間隙(ただし、第1貫通孔40aと連通している箇所を除く)を閉塞している。連結部40は、例えば、内管12及び外管18に対して、接着剤(不図示)や熱融着によって固定されている。
【0021】
ここで、本実施形態の場合、注入ポート41は、医療機器本体10の側方に向けて開口している。
より詳細には、注入ポート41は、医療機器本体10の径方向の成分と軸方向の成分とを持つ方向に延在しており、挿入ポート46の基端から遠ざかるにつれて、径方向外側に変位している。したがって、注入ポート41の基端は、挿入ポート46の径方向の成分と軸方向の成分とを持つ方向に向けて開口している。すなわち、空洞部30は、挿入ポート46の径方向の成分と軸方向の成分とを持つ方向に向けて開口している。
【0022】
図1に示すように、注入ポート41の基端側には、例えば、注入ポート用枝管42が接続されている。注入ポート用枝管42の基端側には、注入ポート用コネクタ42aが設けられている。よって、空洞部30と注入ポート用コネクタ42aとは、注入ポート用枝管42を介して互いに連通している。注入ポート用コネクタ42aには、送液用シリンジ(不図示)が装着される。
挿入ポート46の基端側には、例えば、挿入ポート用枝管47が接続されている。挿入ポート用枝管47の基端側には、挿入ポート用コネクタ47a(
図1参照)が設けられている。よって、ルーメン20と挿入ポート用コネクタ47aとは、挿入ポート用枝管47を介して互いに連通している。挿入ポート用コネクタ47aの基端側の開口を介して、ルーメン20にカテーテルやガイドワイヤが挿入される。
【0023】
本実施形態の場合、送液用シリンジから注入ポート用コネクタ42aに流動体60を供給することによって、注入ポート用枝管42を通じて当該流動体60を空洞部30に注入することができる。より詳細には、流動体60は、注入ポート用コネクタ42aの内腔と、注入ポート用枝管42の内腔と、第1貫通孔40aと、をこの順に流動し内管12の外周面と外管18の内周面との間の筒状の間隙に流入する(
図4参照)。
また、
図1に示すように、注入ポート用枝管42の外周面には、例えば、開閉部材49が装着されている。開閉部材49の開閉操作によって、流動体60の供給と停止との切り替えが可能である。
本実施形態の場合、開閉部材49は、一例として、ロバートクランプである。ただし、開閉部材49は、特に限定されず、例えば、ローラークランプ、ピンチクランプ等であることが挙げられる。
開閉部材49の閉操作が行われると、開閉部材49が注入ポート用枝管42を挟持することにより注入ポート用枝管42の内腔(流路)が閉塞され、流動体60の供給が停止される。
開閉部材49の開操作が行われると、注入ポート用枝管42の内腔(流路)が開通され、流動体60が供給される状態となる。また、空洞部30から流動体60を排出する際には、開閉部材49の開操作によって注入ポート用枝管42の内腔(流路)が開通された状態とし、注入ポート用枝管42と注入ポート41とを通じて流動体60を空洞部30から排出することができる。
【0024】
流動体60は、特に限定されないが、例えば、液体であることが挙げられ、当該液体は、小径の多数のビーズを含む液体であってもよいし、当該ビーズを含まない液体であってもよい。また、流動体60は、例えば、液体ではなく、小径の多数のビーズであってもよい。
なお、流動体60が液体である場合、液体の粘度によって、空洞部30に流動体60が注入された状態における医療機器本体10の曲げ剛性を調整することができる。より詳細には、より粘度の高い流動体60を用いることによって、空洞部30に流動体60が注入された状態における医療機器本体10の曲げ剛性をより増大させることができる一方で、より粘度の低い流動体60を用いることによって、当該医療機器本体10の曲げ剛性の増大量を低減することができる。
このため、医療機器100を用いた手技の各段階に応じて、医療機器本体10の曲げ剛性をより広い範囲において変更することができるので、医療機器100のより良好な操作性を実現することができる。
【0025】
流動体60が液体である場合、この液体は、特に限定されないが、例えば、水、生理食塩水及び造影剤等であることが挙げられる。また、医療機器本体10の良好な操作性を確保する観点から、流動体60(液体)の粘度は、特に限定されないが、例えば、1.0mPa・s以上10.4mPa・s以下であることが好ましい。
また、流動体60が多数のビーズである場合、同様に、医療機器本体10の良好な操作性を確保する観点から、ビーズの外径は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
【0026】
〔第2実施形態〕
次に、
図5から
図7を用いて第2実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0027】
本実施形態の場合、空洞部30には、液体を吸収することにより膨潤する膨潤体50が配設されている。
このため、
図7に示すように、液体を空洞部30に注入し膨潤体50を膨潤させることによって、膨潤体50の曲げ剛性ひいては医療機器本体10の曲げ剛性を増大させることができる。よって、手技の各段階に応じて医療機器本体10の曲げ剛性を変更することができるので、医療機器100の良好な操作性を実現することができる。
【0028】
より詳細には、本実施形態の場合、
図5及び
図6に示すように、内管12の周囲に巻回されたコイル状の膨潤体50が、空洞部30に配設されており、流動体60として液体が空洞部30に注入されることにより、膨潤体50が膨潤し、膨潤体50の巻回部どうしの間隙が縮小する(
図7参照)。
本実施形態によれば、流動体60として液体が空洞部30に注入されることにより、膨潤体50が膨潤し、膨潤体50の巻回部どうしの間隙が縮小する(巻回部のピッチがより密となる)ので、膨潤体50の曲げ剛性ひいては医療機器本体10の曲げ剛性を増大させることができる。
より詳細には、液体を吸収した膨潤体50は十分な粘着性を有しているので、巻回部どうしの接触面積、巻回部と内管12の外周面との接触面積及び巻回部と外管18の内周面との接触面積が、それぞれ増大することとなり、医療機器本体10の曲げ剛性が増大する。
【0029】
膨潤体50は、例えば、液体(流動体60)を吸収することにより膨潤する材料により構成されたコイル状の線材51により構成されていてもよい。
この場合、流動体60として液体が空洞部30に注入された際には、コイル状の線材51が膨潤し、コイル状の線材51の線径が増大することによって、膨潤体50の巻回部どうしの間隙が縮小する。
線材51を構成する膨潤する材料は、特に限定されないが、例えば、ゼラチンや吸水性ゲル等であることが挙げられる。
液体(流動体60)は、特に限定されないが、水、生理食塩水等であることが挙げられる。
【0030】
また、膨潤体50は、例えば、コイル状の線材51と、線材51にコーティングされていて液体を吸収することにより膨潤する膨潤材(不図示)と、を有していてもよい。
この場合、流動体60として液体が空洞部30に注入された際には、膨潤材が膨潤し、膨潤材の厚みが増大することによって、膨潤体50の巻回部どうしの間隙が縮小する。
膨潤材は、特に限定されないが、例えば、ゼラチンや吸水性ゲル等であることが挙げられる。
膨潤材は、例えば、コイル状の線材51の先端から基端に亘ってコーティングされていてもよいし、コイル状の線材51の軸方向における一部分にコーティングされていてもよい。
【0031】
膨潤体50は、例えば、内管12の外周面と外管18の内周面との間の筒状の間隙の先端部から基端部に亘って配設されている。
図5に示すように、コイル状の線材51は、内管12の周囲において、当該線材51を螺旋状に巻回することにより構成されている。
図5に示すように、コイル状の線材51(膨潤体50の巻回部)は、等間隔ピッチで巻回されている。ただし、コイル状の線材51は、例えば、不等間隔ピッチで巻回されていてもよい。この場合、例えば、膨潤体50の先端部において、膨潤体50の巻回部どうしの間隙が、その他の部分の巻回部どうしの間隙よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。このようにすることにより、膨潤体50が膨潤した際に、先端部において、巻回部どうしの接触面積がその他の部分の巻回部どうしの接触面積よりも小さくなるようにできる。よって、医療機器本体10の先端部10aの曲げ剛性を十分に小さくすることができるので、医療機器本体10を体腔に挿入する際に、先端部10aを体腔の屈曲形状に良好に追従させることができる。
【0032】
コイル状の線材51の線径は、例えば、0.01mm以上0.50mm以下であることが好ましい。また、膨潤体50の全長は、例えば、700mm以上1000mm以下であることが好ましい。
【0033】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0034】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)長尺な医療機器本体を備え、
前記医療機器本体は、
当該医療機器本体の先端と基端においてそれぞれ開口しているルーメンと、
当該医療機器本体の先端部において閉塞しており、当該医療機器本体の基端部の注入ポートにおいて開口している空洞部と、
を有し、
前記注入ポートから前記空洞部に流動体が注入されることにより、前記医療機器本体の曲げ剛性が増大する医療機器。
(2)前記医療機器本体は、内管と、前記内管の周囲を覆っている外管と、を有する二重管構造であり、
前記内管の内腔が前記ルーメンであり、
前記内管の外周面と前記外管の内周面との間の筒状の間隙が前記空洞部を構成している(1)に記載の医療機器。
(3)前記空洞部には、液体を吸収することにより膨潤する膨潤体が配設されている(1)又は(2)に記載の医療機器。
(4)前記内管の周囲に巻回されたコイル状の膨潤体が、前記空洞部に配設されており、
前記流動体として液体が前記空洞部に注入されることにより、前記膨潤体が膨潤し、前記膨潤体の巻回部どうしの間隙が縮小する(2)に記載の医療機器。
(5)前記膨潤体は、前記液体を吸収することにより膨潤する材料により構成されたコイル状の線材により構成されている(4)に記載の医療機器。
(6)前記膨潤体は、コイル状の線材と、前記線材にコーティングされていて前記液体を吸収することにより膨潤する膨潤材と、を有する(4)に記載の医療機器。
(7)前記注入ポートは、前記医療機器本体の側方に向けて開口している(1)から(6)のいずれか一項に記載の医療機器。
(8)前記医療機器本体の先端部に埋設されているマーカー部材を備え、
前記空洞部の先端は、前記マーカー部材の先端と同じ位置か、又は、前記マーカー部材の先端よりも基端側の位置において、終端している(1)から(7)のいずれか一項に記載の医療機器。
(9)当該医療機器は、前記ルーメンにカテーテルが挿通される親カテーテルである(1)から(8)のいずれか一項に記載の医療機器。
【符号の説明】
【0035】
10 医療機器本体
10a 先端部
10b 基端部
11 マーカー部材
12 内管
13 内層
14 外層
16 補強層
18 外管
19 閉塞部
20 ルーメン
30 空洞部
40 連結部
40a 第1貫通孔
40b 第2貫通孔
41 注入ポート
42 注入ポート用枝管
42a 注入ポート用コネクタ
46 挿入ポート
47 挿入ポート用枝管
47a 挿入ポート用コネクタ
49 開閉部材
50 膨潤体
51 線材
60 流動体
100 医療機器