(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137584
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】設備の異常診断装置及び異常診断方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20220914BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037126
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井坂 一貴
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】稼働中の設備の異常の有無を診断するに際し、ノイズの影響を低減可能な、設備の異常診断装置及び異常診断方法を提供する。
【解決手段】設備の異常診断装置10は、設備1に設けられたセンサ11により取得された時系列波形データを基に、設備1の異常を診断するものであり、正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算する、異常診断指標値を基に、設備の異常の有無を診断する際に使用する特徴パラメータを選択する、特徴パラメータ選択部15と、診断時の時系列波形データから計算された、特徴パラメータ選択部15によって選択された特徴パラメータの値を基に、異常判断値を計算し、異常判断値を基に、異常の有無を診断する、診断部16と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備に設けられたセンサにより取得された時系列波形データを基に、前記設備の異常を診断する、設備の異常診断装置であって、
正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算する、特徴パラメータ計算部と、
前記第1特徴パラメータ群の中の前記特徴パラメータの各々に対し、前記正常時の時系列波形データと前記異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータの値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し、当該異常診断指標値を基に、前記設備の異常の有無を診断する際に使用する前記特徴パラメータを選択する、特徴パラメータ選択部と、
前記診断時の時系列波形データから計算された、前記特徴パラメータ選択部によって選択された前記特徴パラメータの値を基に、異常判断値を計算し、当該異常判断値を基に、異常の有無を診断する、診断部と、
を備えている、設備の異常診断装置。
【請求項2】
前記特徴パラメータ選択部は、複数の前記特徴パラメータを選択し、
前記診断部は、前記診断時の時系列波形データから計算された、前記特徴パラメータ選択部によって選択された複数の前記特徴パラメータの値を基に、前記異常判断値を計算する、請求項1に記載の設備の異常診断装置。
【請求項3】
前記異常診断指標値は、DI値である、請求項1または2に記載の設備の異常診断装置。
【請求項4】
前記特徴パラメータ計算部は、診断時の時系列波形データに対し、前記第1特徴パラメータ群とは異なる第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算し、
前記診断部は、前記診断時の時系列波形データから計算された、前記特徴パラメータ選択部によって前記第1特徴パラメータ群の中から選択された前記特徴パラメータと、前記第2特徴パラメータ群の中の任意の特徴パラメータの双方の値を基に前記異常判断値を計算し、
前記第1特徴パラメータ群の中の、前記特徴パラメータの各々は、波形の形状を表現するものであり、
前記第2特徴パラメータ群の中の、前記特徴パラメータの各々は、波形の大きさを表現するものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の設備の異常診断装置。
【請求項5】
前記特徴パラメータ計算部は、前記正常時の時系列波形データ、前記異常時の時系列波形データ、及び前記診断時の時系列波形データの各々を、フィルタ処理により複数の周波数帯域に分割し、複数の前記周波数帯域の各々において、前記第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算し、
前記特徴パラメータ選択部は、複数の前記周波数帯域の各々において、前記第1特徴パラメータ群の中の前記特徴パラメータの各々に対し、前記正常時の時系列波形データと前記異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータの値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し、当該異常診断指標値を基に、前記設備の異常の有無を診断する際に使用する前記周波数帯域を、前記特徴パラメータとともに選択し、
前記診断部は、前記診断時の時系列波形データから計算された、前記特徴パラメータ選択部によって選択された前記周波数帯域における前記特徴パラメータの値を基に、前記異常判断値を計算する、請求項1から4のいずれか一項に記載の設備の異常診断装置。
【請求項6】
前記設備は回転機であり、前記センサは振動センサであり、前記時系列波形データは振動波形データである、請求項1から4のいずれか一項に記載の設備の異常診断装置。
【請求項7】
設備に設けられたセンサにより取得された時系列波形データを基に、前記設備の異常を診断する、設備の異常診断方法であって、
正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算し、
前記第1特徴パラメータ群の中の前記特徴パラメータの各々に対し、前記正常時の時系列波形データと前記異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータの値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し、当該異常診断指標値を基に、前記設備の異常の有無を診断する際に使用する前記特徴パラメータを選択し、
前記診断時の時系列波形データから計算された、選択された前記特徴パラメータの値を基に、異常判断値を計算し、当該異常判断値を基に、異常の有無を診断する、設備の異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備の異常診断装置及び異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業や社会インフラ等の分野において使用される設備は、長期間継続的に稼働される場合が多い。したがって、定期的な、または常時監視による異常診断が必須である。上記のような設備は容易に停止できない場合が多いため、設備を定期的に停止させて点検するよりも、設備を常時監視下において、稼働中の設備を異常診断することが望まれている。
【0003】
上記のような、様々な分野で広く使用される設備として、例えば、滑り軸受、転がり軸受、磁気軸受等の回転機が挙げられる。一般に、稼働中の回転機の異常は、音響診断、油分析診断等により診断されることもあるが、特に、振動センサにより収集した振動波形データを処理し、異常の予兆を検出する振動診断が多用されている。
例えば、特許文献1には、振動診断による回転機械の診断方法が開示されている。
特許文献1の診断方法においては、回転機械の振動情報から算出した複数の有次元振動パラメータから、主成分分析法で状態評価指数を算出し、状態評価指数に基づき回転機械の良否判定を行っている。
【0004】
上記の特許文献1のように、回転機の異常の有無を診断する際には、振動波形データから計算される、様々なパラメータを基に行われることがある。特許文献1においては、上記のように、複数の有次元振動パラメータから状態評価指数を算出し、これを基に回転機械の良否判定が行われている。これに替えて、異常診断を行う際に、複数のパラメータに対して、DI値を算出し、DI値が高いパラメータを選択して、これを基に異常を診断することがある。DI値は一種の識別指標であり、比較対象となる2者間の差が大きいほど、値が大きくなるという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転機が使用される環境においては、診断時の振動波形データにノイズが多く含まれることがある。
特許文献1の方法においては、このような場合にノイズを考慮できず、診断精度が低下する可能性がある。
また、異常診断を行う際に、複数のパラメータに対して、識別指標であるDI値を算出し、DI値が高いパラメータを選択して、これを基に異常を診断する場合においても、診断時の振動波形データにノイズが多く含まれると、診断精度が低下する可能性がある。これは、パラメータによっては、ノイズの有無によりその値が大きく変わるものがあることに起因する。パラメータの値が変わると、DI値の値も変わる。このため、ノイズが大きくなって大きな値を有するパラメータがあると、回転機に異常が無くとも、異常診断時に当該パラメータが選択されて、異常が有ると診断されてしまうことがある。
稼働中の設備の異常の有無を診断するに際し、ノイズの影響を低減することが望まれている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、稼働中の設備の異常の有無を診断するに際し、ノイズの影響を低減可能な、設備の異常診断装置及び異常診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、設備に設けられたセンサにより取得された時系列波形データを基に、前記設備の異常を診断する、設備の異常診断装置であって、正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算する、特徴パラメータ計算部と、前記第1特徴パラメータ群の中の前記特徴パラメータの各々に対し、前記正常時の時系列波形データと前記異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータの値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し、当該異常診断指標値を基に、前記設備の異常の有無を診断する際に使用する前記特徴パラメータを選択する、特徴パラメータ選択部と、前記診断時の時系列波形データから計算された、前記特徴パラメータ選択部によって選択された前記特徴パラメータの値を基に、異常判断値を計算し、当該異常判断値を基に、異常の有無を診断する、診断部と、を備えている、設備の異常診断装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、設備に設けられたセンサにより取得された時系列波形データを基に、前記設備の異常を診断する、設備の異常診断方法であって、正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算し、前記第1特徴パラメータ群の中の前記特徴パラメータの各々に対し、前記正常時の時系列波形データと前記異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータの値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し、当該異常診断指標値を基に、前記設備の異常の有無を診断する際に使用する前記特徴パラメータを選択し、前記診断時の時系列波形データから計算された、選択された前記特徴パラメータの値を基に、異常判断値を計算し、当該異常判断値を基に、異常の有無を診断する、設備の異常診断方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、稼働中の設備の異常の有無を診断するに際し、ノイズの影響を低減可能な、設備の異常診断装置及び異常診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態における設備の異常診断装置のブロック図である。
【
図2】前記実施形態における設備の異常診断装置の、異常診断指標値の説明図である。
【
図3】前記実施形態における設備の異常診断方法の、前準備処理のフローチャートである。
【
図4】前記実施形態における設備の異常診断方法の、診断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、設備の異常診断装置のブロック図である。設備1は、後に説明する、設備の異常診断装置によって、異常の有無が診断される。本実施形態においては、設備1は、水処理場に設けられたポンプに使用された、滑り軸受、すなわち回転機であるが、これに限られない。設備1は、他の用途に使用されていてもよい。また、設備1が回転機であったとしても、転がり軸受、磁気軸受等、滑り軸受以外のものであっても構わない。
設備1は、回転軸1aと、回転軸1aを回転自在に支持する支持部1bを備えている。
図1においては、回転軸1aは紙面水平方向に延在しており、方向Rに回転するように示されている。
【0013】
異常診断装置10は、設備1の異常を診断するものである。異常の原因としては、例えば、滑り軸受中のオイルに気泡が混入した状態となったオイルウィップ、回転軸1aが偏心している状態となったアンバランス、回転軸1aに何らかの部材が接触し回転軸1aが正常に回転しない状態となった接触異常等が考えられる。
【0014】
異常診断装置10は、センサ11と、制御端末12を備えている。
センサ11は、設備1に設けられて、時系列波形データとなるセンサ値を取得する。本実施形態においては、センサ11は振動センサである。したがって、時系列波形データは、振動波形データである。すなわち、本実施形態においては、センサ11は、設備1の支持部1bに接触して設けられて、稼働中の設備1の振動状況を所定の時間計測し、時系列波形データとなるセンサ値を取得する。
センサ11は、取得したセンサ値を、制御端末12へ送信する。
【0015】
制御端末12は情報処理機器であり、内部に、データ収集部13、特徴パラメータ計算部14、特徴パラメータ選択部15、及び診断部16を備えている。
以下に説明するように、制御端末12は、設備1の診断のための前準備に相当する処理と、実際の設備1の診断処理とを実行する。前準備処理は、データ収集部13、特徴パラメータ計算部14、及び特徴パラメータ選択部15によって実行される。診断処理は、データ収集部13、特徴パラメータ計算部14、及び診断部16によって実行される。
ここではまず、前準備処理に関する各構成要素の機能を説明し、その後に、診断処理に関する各構成要素の機能を説明する。双方に関連するデータ収集部13及び特徴パラメータ計算部14についても、これら処理の各々で個別に、関連する処理内容を説明する。
【0016】
データ収集部13は、センサ11から、設備1の時系列波形データとなるセンサ値を受信する。
データ収集部13は、受信したセンサ値を、例えば50KHzのサンプリング周波数によりデジタルサンプリングし、時系列波形データを生成する。
【0017】
データ収集部13は、前準備処理においては、正常時の時系列波形データと、想定される異常に対応する、異常時の時系列波形データを生成する。
データ収集部13は、設備1が正常に稼働している際の時系列波形データを、正常時の時系列波形データとして取得する。
異常時の時系列波形データに関しては、設備1において実際に異常を再現することにより取得するか、または、過去に異常が発生した際にデータ収集部13によって取得された時系列波形データがあれば、それを使用するのが望ましい。異常時の時系列波形データの取得が難しければ、設備1の仕様や設置状況に基づいて異常を再現するシミュレーションを機械的に実行し、その結果として取得された時系列波形データを、データ収集部13内に取り込むことで用意しても構わない。
【0018】
データ収集部13は、正常時の時系列波形データと、異常時の時系列波形データを、特徴パラメータ計算部14へ送信する。
【0019】
特徴パラメータ計算部14は、データ収集部13から、正常時の時系列波形データと、異常時の時系列波形データを受信する。
特徴パラメータ計算部14は、受信した各時系列波形データを、時間軸において、所定の分割数D、例えば8等の数に分割する。この分割数Dは、時系列波形データの長さや、波形の周期の長さによって適切に決定される。
この、各時系列波形データの分割は、時系列的に前後するデータの各々が、互いに共通の時間を有してオーバーラップするように、元となる時系列波形データから切り出すことによって、行われても構わない。
【0020】
特徴パラメータ計算部14は、分割されて複数となった、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算する。
本実施形態においては、診断の指標となる第1特徴パラメータ群として、次に説明する、第1特徴パラメータから第24特徴パラメータまでの、24種類の特徴パラメータを使用している。ここで、特徴パラメータを計算する対象となる(分割された)時系列波形データをx
i(1≦i≦N)とし、X
a、σ、x
aを次のように定義する。ここで、Nはデータ総数である。
【数1】
【0021】
第1特徴パラメータである変動率p
1は、次式のように定義される。変動率は、波形のバラツキを表す特徴パラメータである。
【数2】
【0022】
第2特徴パラメータである歪度p
2は、次式のように定義される。歪度は、波形の非対称性を表す特徴パラメータである。
【数3】
【0023】
第3特徴パラメータである尖度p
3は、次式のように定義される。尖度は、波形確率密度関数の尖りの程度を表す特徴パラメータである。
【数4】
【0024】
第4特徴パラメータである波高率p
4は、次式のように定義される。波高率は、波形の衝撃性を表す特徴パラメータである。次式において、X
max,aは、時系列波形データの絶対値である|x
i|の10個の最大値の平均値である。
【数5】
【0025】
第5特徴パラメータである波形率p
5は、次式のように定義される。波形率は、波形の変動性を表す特徴パラメータである。
【数6】
【0026】
第6特徴パラメータである絶対値の極大値の変動率p
6は、次式のように定義される。次式において、X
P,aは、時系列波形データの絶対値である|x
i|の、ピーク値の平均値であり、σ
Pは、|x
i|のピーク値の標準偏差値である。
【数7】
【0027】
第7特徴パラメータである絶対値の極大値の歪度p
7は、次式のように定義される。次式において、N
Pは、時系列波形データの絶対値である|x
i|のピーク値の総数であり、x
Pi(1≦i≦N
P)は、ピーク値である。
【数8】
【0028】
第8特徴パラメータである絶対値の極大値の尖度p
8は、次式のように定義される。
【数9】
【0029】
第9特徴パラメータである極大値の変動率p
9は、次式のように定義される。次式において、X
p,aは、時系列波形データx
iのピーク値の平均値であり、σ
pは標準偏差値である。
【数10】
【0030】
第10特徴パラメータである極大値の歪度p
10は、次式のように定義される。次式において、N
pは、時系列波形データx
iのピーク値の総数であり、x
pi(1≦i≦N
p)は、ピーク値である。
【数11】
【0031】
第11特徴パラメータである極大値の尖度p
11は、次式のように定義される。
【数12】
【0032】
第12特徴パラメータである0値通過頻度と絶対値の極大値頻度の比p
12は、次式のように定義される。次式において、N
0は、時系列波形データx
iが値0を通過する回数である。
【数13】
【0033】
第13特徴パラメータである0値通過頻度と極大値頻度の比p
13は、次式のように定義される。
【数14】
【0034】
第14特徴パラメータである絶対値の極大値頻度と極大値頻度の比p
14は、次式のように定義される。
【数15】
【0035】
第15特徴パラメータである平方和平均値と平方標準偏差の比p
15は、次式のように定義される。
【数16】
【0036】
第16特徴パラメータである二乗和平均値と二乗標準偏差の比p
16は、次式のように定義される。
【数17】
【0037】
第17特徴パラメータである対数和平均値と対数標準偏差の比p
17は、次式のように定義される。
【数18】
【0038】
第18~第24特徴パラメータは、周波数領域の特徴パラメータである。これらは、時系列波形データをフーリエ変換で周波数スペクトルに変換した後に計算される。以下において、周波数fj(1≦j≦J)における周波数成分をF(fj)とする。
【0039】
第18特徴パラメータである平均特徴周波数p
18は、次式のように定義される。
【数19】
【0040】
第19特徴パラメータである単位時間あたりに時間平均をクロースする頻度p
19は、次式のように定義される。
【数20】
【0041】
第20特徴パラメータである波形の安定指数p
20は、次式のように定義される。
【数21】
【0042】
第21特徴パラメータである周波数領域における変動率p
21は、次式のように定義される。
【数22】
上式において、σ
fは、時系列波形データx
iが値0を通過する回数である。
【0043】
第22特徴パラメータである周波数領域における歪度p
22は、次式のように定義される。
【数23】
【0044】
第23特徴パラメータである周波数領域における尖度p
23は、次式のように定義される。
【数24】
【0045】
第24特徴パラメータである周波数領域におけるルート平均p
24は、次式のように定義される。
【数25】
【0046】
上記の、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp1~p24は、無次元特徴パラメータであり、波形の形状を表現するものである。第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp1~p24は、設備の大きさや回転数の変化に影響されにくい。
特徴パラメータ計算部14は、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp1~p24の各々を、データ収集部13によって取得されて特徴パラメータ計算部14に送信された時系列波形データの数と、分割数Dを乗算した数だけ計算する。
特徴パラメータ計算部14は、全ての(分割された)時系列波形データに対して計算した特徴パラメータp1~p24を、特徴パラメータ選択部15に送信する。
【0047】
特徴パラメータ選択部15は、特徴パラメータ計算部14から、全ての(分割された)時系列波形データに対して計算された特徴パラメータp
1~p
24を受信する。
特徴パラメータ選択部15は、第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp
1~p
24の各々に対し、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータp
1~p
24の値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算する。
本実施形態においては、異常診断指標値は、DI値である。
より具体的には、x番目の特徴パラメータをp
x(1≦x≦24)とする。また、各特徴パラメータp
xに対し、正常時の時系列波形データから計算された特徴パラメータp
xの平均値をμ
nxとし、標準偏差をσ
nxとする。同様に、各特徴パラメータp
xに対し、異常時の時系列波形データから計算された特徴パラメータp
xの平均値をμ
axとし、標準偏差をσ
axとする。
このとき、特徴パラメータ選択部15は、特徴パラメータp
xのDI値を、次式(1)により計算する。
【数26】
【0048】
図2は、異常診断指標値の説明図である。
図2には、値μ
nxを平均値とした確率密度関数(正常時の時系列波形データに相当)と、値μ
axを平均値とした確率密度関数(異常時の時系列波形データに相当)が示されている。上式(1)で表されるDI値は、これら2つの確率密度関数の重なった部分R1が小さくなり、平均値の差が大きくなるほど、高くなる。換言すれば、DI値が大きければそれほど、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データの間で特徴パラメータp
xの値に差が大きいということであり、当該特徴パラメータp
xは正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データを識別するのに適切なものであると考えることができる。
【0049】
特徴パラメータ選択部15は、各特徴パラメータpxに対して、計算されたDI値を判定閾値と比較し、DI値が判定閾値よりも大きい場合に、当該特徴パラメータpxを、設備1の異常の有無を診断する際に使用する特徴パラメータpxとして選択する。
判定閾値は、例えば1.5とするのが好ましい。判定閾値は、2.0等と、より大きい値とするのがより好ましい。
特徴パラメータ選択部15は、判定閾値よりもDI値が大きな特徴パラメータpxが複数存在する場合には、複数の、すなわちこれら全ての特徴パラメータpxを、設備1の異常の有無を診断する際に使用する特徴パラメータpxとして選択する。
【0050】
次に、異常診断装置10の、診断処理に関する各部位の機能を説明する。
【0051】
前準備処理と同様に、データ収集部13は、センサ11から、設備1の時系列波形データとなるセンサ値を受信する。
診断処理においては、データ収集部13は、実際に稼働して異常を診断中の設備1の時系列波形データを、診断時の時系列波形データとして取得する。
データ収集部13は、診断時の時系列波形データとして、学習用時系列波形データと、診断用時系列波形データを取得する。
データ収集部13は、設備1に異常が見られない際に、診断時の時系列波形データとして、学習用時系列波形データを取得する。学習用時系列波形データは、できるだけ多い分量を取得するのが望ましい。
データ収集部13は、学習用時系列波形データを制御端末12に送信する。
データ収集部13は、学習用時系列波形データを取得した後に、診断用時系列波形データを取得し、制御端末12へ送信する。データ収集部13は、設備1が稼働している間、診断用時系列波形データの取得と、制御端末12への送信を繰り返し実行し続ける。
【0052】
制御端末12は、データ収集部13から、学習用時系列波形データを受信する。
次に、制御端末12は、データ収集部13から繰り返し送信される診断用時系列波形データを随時受信して、異常判断値を計算し、当該異常判断値を基に、異常の有無を診断する。制御端末12は、図示されない表示部を備え、上記の異常判断値を表示部に随時出力し続けることにより、設備1の傾向を表示するように構成され得る。
【0053】
より具体的には、まず、特徴パラメータ計算部14は、データ収集部13から、診断時の時系列波形データ(学習用時系列波形データ、診断用時系列波形データ)を受信する。特徴パラメータ計算部14は、受信した診断時の時系列波形データを、正常時の時系列波形データ及び異常時の時系列波形データと同じ要領で、時間軸において、所定の分割数D、例えば8等の数に分割する。
特徴パラメータ計算部14は、診断時の時系列波形データの、分割されて複数となった各々に対し、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp1~p24の値を計算する。
【0054】
特徴パラメータ計算部14は、更に、分割されて複数となった、診断時の時系列波形データの各々に対し、第1特徴パラメータ群とは異なる、診断の指標となる第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算する。
本実施形態においては、診断の指標となる第2特徴パラメータ群として、次に説明する、第25特徴パラメータから第28特徴パラメータまでの、4種類の特徴パラメータを使用している。
【0055】
第25特徴パラメータである実効値p
25は、次式のように定義される。
【数27】
【0056】
第26特徴パラメータであるピーク値の平均値p
26は、次式のように定義される。
【数28】
【0057】
第27特徴パラメータである絶対値ピーク値の平均値p
27は、次式のように定義される。
【数29】
【0058】
第28特徴パラメータである絶対値ピーク値の実効値p
28は、次式のように定義される。
【数30】
【0059】
上記の、第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp25~p28は、有次元特徴パラメータであり、波形の大きさを表現するものである。第2特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp25~p28は、設備1の状態の把握に有用であるが、異常状態の早期発見には不向きである。
特徴パラメータ計算部14は、診断時の時系列波形データの、分割されて複数となった各々に対して計算された、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp1~p24の値と、第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp24~p28の値を、診断部16に送信する。
【0060】
診断部16は、診断時の時系列波形データに対して計算された、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp
1~p
24の値と、第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp
24~p
28の値を受信する。
診断部16は、まず、診断時の時系列波形データに対して計算された各特徴パラメータp
1~p
28の異常値を計算する。異常値は、各特徴パラメータp
1~p
28により表現される異常の程度を示す指標である。
学習用時系列波形データに対して得られた、各特徴パラメータp
x(1≦x≦28)の各々の、平均値をμ
0x、標準偏差をσ
0xとする。また、診断用時系列波形データに対して得られた、各特徴パラメータp
x(1≦x≦28)の各々の、平均値をμ
x、標準偏差をσ
xとする。更に、各特徴パラメータp
x(1≦x≦28)の各々に対して、設備1の設置状況や稼働状況に応じて設定される判定係数を、K
1x、K
2xとする。このとき、各特徴パラメータp
x(1≦x≦28)の異常値Y
x(1≦x≦28)は、次式(2)により表される。
【数31】
【0061】
診断部16は、次に、前準備処理において特徴パラメータ選択部15によって選択された、第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp
xが何であるのか、その種類を取得する。特徴パラメータ選択部15によって、複数の特徴パラメータp
xが、第1特徴パラメータ群の中から選択された場合には、その全ての種類を取得する。
診断部16は、第1特徴パラメータ群の中から選択された特徴パラメータp
xが複数である場合には、DS(Dempster and Shafer)確率法を用いて、次式(3)によって、第1異常判断値A
lを計算する。
【数32】
式(3)において、M(2≦M≦24)は、第1特徴パラメータ群の中から選択された特徴パラメータp
xの数、a
i、a
j(1≦i≦M、1≦j≦M)は、第1特徴パラメータ群の中から選択された特徴パラメータp
xの各々の異常値であるY
x(1≦x≦24)である。例えば、Mが2であり、第1特徴パラメータ群の中から選択された特徴パラメータp
xがp
2、p
4である場合には、a
1=Y
2、a
2=Y
4となる。
【0062】
診断部16は、第1特徴パラメータ群の中から選択された特徴パラメータp
xが1個である場合には、次式(4)として示すように、この選択された特徴パラメータp
xの異常値Y
xを、第1異常判断値A
lとして設定する。
【数33】
【0063】
診断部16は、次に、特徴パラメータ計算部14によって計算された第2特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp
25~p
28から、任意の特徴パラメータp
x(25≦x≦28)を一つだけ選択する。
診断部16は、次式(5)として示すように、この選択された特徴パラメータp
x(25≦x≦28)の異常値Y
xを、第2異常判断値A
dとして設定する。
【数34】
【0064】
診断部16は、次式(6)として示すように、第1異常判断値A
lと第2異常判断値A
dの平均を、異常判断値Aとして計算する。
【数35】
【0065】
診断部16は、上記のように計算された異常判断値Aを、異常判定閾値と比較することにより、設備1に異常が有るか無いかを診断する。上記のように計算される異常判断値Aは、正の値となり、大きくなるほど異常である可能性が高まる。例えば、異常判定閾値として、第1異常判定閾値と、第1異常判定閾値よりも値が大きな第2異常判定閾値の、2種類を設定し、異常判断値Aが第1異常判定閾値以上であり第2異常判定閾値より小さい場合には、設備1に特定異常の注意が必要であると警告し、第2異常判定閾値以上である場合には、設備1に特定異常の危険があると通報するように設定することが好ましい。この場合において、第1異常判定閾値は0.2、第2異常判定閾値は0.7等の値をとり得る。
【0066】
このように、診断部16は、診断時の時系列波形データから計算された、特徴パラメータ選択部15によって第1特徴パラメータ群の中から選択された特徴パラメータpx(1≦x≦24)と、第2特徴パラメータ群の中の任意の特徴パラメータpx(25≦x≦28)の双方の値を基に異常判断値Aを計算し、当該異常判断値Aを基に、設備1の異常の有無を診断する。
この異常判断値Aを、表示部等に、時系列的にグラフとして表示することで、設備1の傾向監視、状態把握が可能となる。
【0067】
次に、
図1、
図2、及び
図3、
図4を用いて、上記の設備1の異常診断方法を説明する。
図3は、設備1の異常診断方法の、前準備処理のフローチャートであり、
図4は、診断処理のフローチャートである。
前準備処理においては、処理が開始すると(ステップS1)、データ収集部13は、正常時の時系列波形データと、想定される異常に対応する、異常時の時系列波形データを生成する(ステップS3)。
データ収集部13は、正常時の時系列波形データと、異常時の時系列波形データを、特徴パラメータ計算部14へ送信する。
【0068】
特徴パラメータ計算部14は、データ収集部13から、正常時の時系列波形データと、異常時の時系列波形データを受信する。
特徴パラメータ計算部14は、受信した各時系列波形データを、時間軸において、所定の分割数Dに分割する。
特徴パラメータ計算部14は、分割されて複数となった、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算する(ステップS5)。
特徴パラメータ計算部14は、全ての(分割された)時系列波形データに対して計算した特徴パラメータp1~p24を、特徴パラメータ選択部15に送信する。
【0069】
特徴パラメータ選択部15は、特徴パラメータ計算部14から、全ての(分割された)時系列波形データに対して計算された特徴パラメータp1~p24を受信する。
特徴パラメータ選択部15は、第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp1~p24の各々に対し、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータp1~p24の値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算する(ステップS7)。
特徴パラメータ選択部15は、各特徴パラメータpxに対して、計算された異常診断指標値を判定閾値と比較し、異常診断指標値が判定閾値よりも大きい場合に、当該特徴パラメータpxを、設備1の異常の有無を診断する際に使用する特徴パラメータpxとして選択(ステップS9)し、処理を終了する(ステップS11)。
【0070】
診断処理においては、処理が開始すると(ステップS21)、データ収集部13は、実際に稼働して異常を診断中の設備1の時系列波形データを、診断時の時系列波形データとして取得する(ステップS23)。
データ収集部13は、診断時の時系列波形データを制御端末12に送信する。
【0071】
特徴パラメータ計算部14は、データ収集部13から、診断時の時系列波形データを受信する。特徴パラメータ計算部14は、受信した診断時の時系列波形データを、時間軸において、所定の分割数Dに分割する。
特徴パラメータ計算部14は、診断時の時系列波形データの、分割されて複数となった各々に対し、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp1~p24の値を計算する(ステップS25)。
特徴パラメータ計算部14は、分割されて複数となった、診断時の時系列波形データの各々に対し、第1特徴パラメータ群とは異なる、診断の指標となる第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算する(ステップS27)。
診断部16は、第1異常判断値Alと第2異常判断値Adを計算し、これを基に、異常判断値Aを計算する(ステップS29)。
診断部16は、異常判断値Aを基に、設備1の異常の有無を診断し(ステップS31)、処理を終了する(ステップS33)。
【0072】
次に、上記の設備の異常診断装置及び異常診断方法の効果について説明する。
【0073】
本実施形態の設備の異常診断装置10は、設備1に設けられたセンサ11により取得された時系列波形データを基に、設備1の異常を診断する装置であって、正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータpx(1≦x≦24)の値を計算する、特徴パラメータ計算部14と、第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータpx(1≦x≦24)の各々に対し、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータの値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し、当該異常診断指標値を基に、設備1の異常の有無を診断する際に使用する特徴パラメータpx(1≦x≦24)を選択する、特徴パラメータ選択部15と、診断時の時系列波形データから計算された、特徴パラメータ選択部15によって選択された特徴パラメータpx(1≦x≦24)の値を基に、異常判断値Aを計算し、当該異常判断値Aを基に、異常の有無を診断する、診断部16と、を備えている。
また、本実施形態の設備の異常診断方法は、設備1に設けられたセンサ11により取得された時系列波形データを基に、設備1の異常を診断する方法であって、正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々に対し、診断の指標となる第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータpx(1≦x≦24)の値を計算し(ステップS5、S25)、第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータpx(1≦x≦24)の各々に対し、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータpx(1≦x≦24)の値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し(ステップS7)、当該異常診断指標値を基に、設備1の異常の有無を診断する際に使用する特徴パラメータpx(1≦x≦24)を選択し(ステップS9)、診断時の時系列波形データから計算された、選択された特徴パラメータpx(1≦x≦24)の値を基に、異常判断値Aを計算し(ステップS29)、当該異常判断値Aを基に、異常の有無を診断する(ステップS31)。
特徴パラメータのなかには、設備1の異常に反応するものもあれば、ノイズに過敏に反応するものもある。また、どのような特徴パラメータが異常やノイズに反応するのかは、設備1の種類や設置状況、周囲の環境等によっても変化し得る。このため、例えば何らかの判断値を計算してこれを基に設備1の異常の有無を診断するに際し、全ての特徴パラメータを使用して判断値を計算する場合や、数値の変動が特に大きな特徴パラメータを都度選択してこれにより判断値を計算する場合等においては、ノイズにより値が変動した特徴パラメータに起因して判断値が変動することがある。このような場合においては、設備1に異常が無い状態であっても、ノイズが生じた際に、設備1に異常が有ると誤診される可能性がある。
これに対し、上記のような構成によれば、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データを基に、診断に使用する特徴パラメータを事前に選択する。そのうえで、診断時には、この選択された特徴パラメータの値を基に、異常判断値Aを計算し、当該異常判断値Aを基に、異常の有無を診断する。
ここで、特徴パラメータは、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データを基にされるため、異常に適切に反応して値が変動するものが選択されやすくなり、ノイズに反応しやすいものは選択されにくい。このため、計算された異常判断値Aは、ノイズよりも、異常を反映したものとなる。
したがって、稼働中の設備1の異常の有無を診断するに際し、ノイズの影響を低減することができる。
【0074】
また、特徴パラメータ選択部15は、複数の特徴パラメータpx(1≦x≦24)を選択し、診断部16は、診断時の時系列波形データを基に、特徴パラメータ選択部15によって選択された複数の特徴パラメータpx(1≦x≦24)の各々の値を基に、異常判断値Aを計算する。
また、異常診断指標値は、DI値である。
また、特徴パラメータ計算部14は、診断時の時系列波形データに対し、第1特徴パラメータ群とは異なる第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータpx(25≦x≦28)の値を計算し、診断部16は、診断時の時系列波形データから計算された、特徴パラメータ選択部によって第1特徴パラメータ群の中から選択された特徴パラメータpx(1≦x≦24)と、第2特徴パラメータ群の中の任意の特徴パラメータpx(25≦x≦28)の双方の値を基に異常判断値Aを計算し、第1特徴パラメータ群の中の、特徴パラメータpx(1≦x≦24)の各々は、波形の形状を表現するものであり、第2特徴パラメータ群の中の、特徴パラメータpx(25≦x≦28)の各々は、波形の大きさを表現するものである。
また、設備1は回転機であり、センサ11は振動センサであり、時系列波形データは振動波形データである。
上記のような構成によれば、設備の異常診断装置10を好適に実現することができる。
【0075】
[実施形態の変形例]
次に、上記実施形態として示した設備の異常診断装置及び異常診断方法の変形例を説明する。本変形例における設備の異常診断装置は、上記実施形態の設備の異常診断装置10とは、特徴パラメータ計算部14が、データ収集部13により取得された時系列波形データに対して、フィルタ処理を適用する点が異なっている。
【0076】
上記実施形態においては、センサ11として振動センサであり、センサ11により計測される時系列波形データは振動に関する波形データであったが、センサ11によっては、振動の他に、音響、電流等に関する時系列波形データを取得するものもある。このような、時系列波形データの種類によっては、ある異常がどのような周波数帯で高く、あるいは低くなりやすいか、既知となっているものがある。例えば、振動波形データの場合において、アンバランスやミスアライメント等の、設備1の構造に問題が生じて発生する異常状態である構造系異常に関しては、例えば1kHz以下の低周波数帯に変動が表れやすい。また、軸受異常やその他の接触系の異常等の衝撃系異常に関しては、例えば10kHz以上の高周波数帯に変動が表れやすい。
このため、特徴パラメータ計算部14が、データ収集部13により取得された時系列波形データを、バンドパスフィルタ等により、複数の周波数帯域に分割する。この複数の周波数帯としては、例えば0~1kHzの低周波帯域、例えば1~10kHzの中周波帯域、例えば10kHz以上の高周波帯域の、例えば3つの周波数帯域が考えられる。
【0077】
前準備処理においては、特徴パラメータ計算部14は、正常時の振動波形データと、異常時の振動波形データを受信し、これらの各々を、複数の周波数帯域に分割する。特徴パラメータ計算部14は、周波数帯域に応じて分割された時系列波形データの各々に対して、分割数Dによる時間軸での分割、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp1~p24の値の計算等の、後続の処理を実行する。
そして、特徴パラメータ選択部15は、第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp1~p24の各々に対する、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータp1~p24の値を基にした異常診断指標値の計算を、各周波数帯域に対して実行する。
そのうえで、特徴パラメータ選択部15は、各周波数帯域において、各特徴パラメータpxに対して、計算された異常診断指標値を判定閾値と比較し、異常診断指標値が判定閾値よりも大きい場合に、当該周波数帯域と、当該特徴パラメータpxを、設備1の異常の有無を診断する際に使用する周波数帯域、及び特徴パラメータpxとして選択する。
【0078】
診断処理においても、同様に、特徴パラメータ計算部14は、診断時の時系列波形データを受信し、複数の周波数帯域に分割する。特徴パラメータ計算部14は、周波数帯域に応じて分割された時系列波形データの各々に対して、分割数Dによる時間軸での分割、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp1~p24の値の計算、第2特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータp25~p28の値の計算等の、後続の処理を実行する。
診断部16は、特徴パラメータ選択部15において選択された周波数帯域と特徴パラメータpxに対して、第1異常判断値Alを計算する。診断部16はまた、第2異常判断値Adを計算し、これらを基に異常判断値Aを計算する。
【0079】
本変形例においては、特徴パラメータ計算部14は、正常時の時系列波形データ、異常時の時系列波形データ、及び診断時の時系列波形データの各々を、フィルタ処理により複数の周波数帯域に分割し、複数の周波数帯域の各々において、第1特徴パラメータ群の中の各特徴パラメータの値を計算し、特徴パラメータ選択部15は、複数の周波数帯域の各々において、第1特徴パラメータ群の中の特徴パラメータp1~p24の各々に対し、正常時の時系列波形データと異常時の時系列波形データから計算された当該特徴パラメータp1~p24の値を基に異常診断指標値をそれぞれ計算し、異常診断指標値を基に、設備1の異常の有無を診断する際に使用する周波数帯域を、特徴パラメータp1~p24とともに選択し、診断部16は、診断時の時系列波形データから計算された、特徴パラメータ選択部15によって選択された周波数帯域における特徴パラメータp1~p24の値を基に、異常判断値Aを計算する。
このような構成によれば、より高精度に設備1の異常の有無を診断することができる。
【0080】
本第1変形例が、既に説明した実施形態と同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0081】
なお、本発明の設備の異常診断装置及び異常診断方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
【0082】
例えば、上記実施形態においては、設備は回転機であり、センサは振動センサであり、時系列波形データは振動波形データであったが、これに限られないことは、言うまでもない。
すなわち、上記の異常診断装置及び異常診断方法は、回転機に限らず、様々な種類の設備に応用可能である。
上記実施形態においては、設備が回転機であったため、センサとして、稼働時の特徴を効果的に取得し得る振動センサが使用されていたが、対象となる設備に応じて、電流、電圧、温度等、センサの種類を変えても構わないのは、言うまでもない。上記の異常診断装置及び異常診断方法は、センサの種類に拠らず、設備の状態が計測、収集された時系列波形データを基に、異常を診断することができる。
また、使用されるセンサの数や種類も1つに限られず、複数の数及び種類のセンサにより、設備の状態を計測、収集してもよい。これらの複数のセンサから得られた時系列波形データから特徴パラメータを計算することで、様々な種類の設備診断を実現することが可能である。
【0083】
また、上記実施形態及び各変形例においては、前準備処理と診断処理は、同一の制御端末12内に設けられていたが、これに限られない。例えば、前準備処理用の制御端末と診断処理用の制御端末を個別に用意し、実行する処理に応じて使い分けても構わない。すなわち、例えば上記実施形態の場合においては、前準備処理用の制御端末にデータ収集部13、特徴パラメータ計算部14、及び特徴パラメータ選択部15を、診断処理用の制御端末にデータ収集部13、特徴パラメータ計算部14、及び診断部16を設けても構わない。
【0084】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態及び変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 設備
10 異常診断装置
11 センサ
13 データ収集部
14 特徴パラメータ計算部
15 特徴パラメータ選択部
16 診断部