(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137597
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ヒートポンプ給湯機
(51)【国際特許分類】
F25B 47/02 20060101AFI20220914BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20220914BHJP
F24H 15/375 20220101ALI20220914BHJP
【FI】
F25B47/02 510H
F24H1/18 Q
F24H4/02 H
F25B47/02 570D
F25B47/02 570M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037144
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 智寛
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】村松 駿
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA65
3L122AC35
3L122BA32
3L122BC17
3L122CA13
3L122DA23
3L122DA24
3L122EA63
(57)【要約】
【課題】 除霜した水の再凍結を防止しながら、短時間で安定した除霜運転を行うことができるヒートポンプ給湯機を提供する。
【解決手段】 貯湯ユニットとヒートポンプユニットを備えたヒートポンプ給湯機であって、前記ヒートポンプユニットは、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、該圧縮機が吐出した高温高圧の冷媒と前記貯湯ユニットから供給された低温の水の熱交換を行う水冷媒熱交換器と、該水冷媒熱交換器から流出した高圧の冷媒を減圧する減圧装置と、該減圧装置から流出した低圧の冷媒と外気を熱交換させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に外気を通風させる送風ファンと、前記圧縮機、前記減圧装置、前記送風ファンを制御する制御装置と、を備え、該制御装置は、前記空気熱交換器に付着した霜を取り除く除霜運転時に、前記圧縮機を運転し、前記減圧装置の開度を開方向に開くとともに、前記送風ファンを低速運転するヒートポンプ給湯機。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯ユニットとヒートポンプユニットを備えたヒートポンプ給湯機であって、
前記ヒートポンプユニットは、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
該圧縮機が吐出した高温高圧の冷媒と前記貯湯ユニットから供給された低温の水の熱交換を行う水冷媒熱交換器と、
該水冷媒熱交換器から流出した高圧の冷媒を減圧する減圧装置と、
該減圧装置から流出した低圧の冷媒と外気を熱交換させる空気熱交換器と、
該空気熱交換器に外気を通風させる送風ファンと、
前記圧縮機、前記減圧装置、前記送風ファンを制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、前記空気熱交換器に付着した霜を取り除く除霜運転時に、前記圧縮機を運転し、前記減圧装置の開度を開方向に開くとともに、前記送風ファンを低速運転することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ給湯機において、
前記制御装置は、除霜運転の開始時には、前記送風ファンを停止し、前記空気熱交換器から流出する冷媒温度が所定温度に達し、且つ、該冷媒温度の所定時間当たりの変化量が所定量を超えた後に、前記送風ファンの低速運転を開始することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項3】
請求項1に記載のヒートポンプ給湯機において、
前記制御装置は、除霜運転の開始時には、前記送風ファンを停止し、前記除霜運転の開始時から所定時間経過後に、前記送風ファンの低速運転を開始することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項4】
請求項1に記載のヒートポンプ給湯機において、
前記制御装置は、除霜運転の開始時には、前記送風ファンを停止し、前記空気熱交換器から流出する冷媒温度が所定温度に達した後に、前記送風ファンの低速運転を開始することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のヒートポンプ給湯機において、
前記制御装置は、前記送風ファンの低速運転時には、前記送風ファンを断続運転することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のヒートポンプ給湯機において、
前記制御装置は、前記空気熱交換器から流出する冷媒温度が除霜運転開始温度に達した後に除霜運転を開始し、前記冷媒温度が除霜運転終了温度に達した後に除霜運転を終了することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプユニットの空気熱交換器を除霜することができるヒートポンプ給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ給湯機は、お湯を沸き上げるヒートポンプユニットと、そのお湯を貯湯する貯湯ユニットで構成されている。ヒートポンプユニットは、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧装置、空気熱交換器、送風ファンで構成されており、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧装置、空気熱交換器が環状に接続されている。空気熱交換器は、沸き上げ運転時に蒸発器として動作するため、外気温度が低い場合(例えば、2℃)には、空気熱交換器の表面に着霜することがあり、加熱能力が低下してしまう。そこで、適宜、空気熱交換器の表面の霜を融かす除霜運転が必要となる。
【0003】
ヒートポンプ給湯機の従来の除霜方法として、空気熱交換器(蒸発器)に外気を通風させる送風ファンを停止させ、圧縮機を運転し吐出された高温の冷媒を利用して蒸発器の霜を除去する方法が一般的である(例えば、特許文献1)。また、除霜運転終了前後に冷媒熱で融けた空気熱交換器(蒸発器)の表面の水滴を除去するために送風ファンを運転させる方法もある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-121923号公報
【特許文献2】特開2009-063246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、除霜後に霜の融けた水滴が蒸発器に多量に付着しているため、そのまま沸き上げ運転を再開すると、この水滴が再凍結して空気熱交換器の風路を閉塞してしまい、正常な運転ができなくなる虞があった。
【0006】
また、特許文献2では、除霜運転終了前後に送風ファンを運転させた場合、外気温度が氷点下の時は、空気熱交換器表面の水滴を排除し終える前に空気熱交換器温度が氷点下まで低下してしまい、水滴が再凍結して空気熱交換器の風路を閉塞してしまい、正常な運転ができなくなる虞があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、除霜した水の再凍結を防止しながら、短時間で安定した除霜運転を行うことができるヒートポンプ給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のヒートポンプ給湯機は、貯湯ユニットとヒートポンプユニットを備え、前記ヒートポンプユニットは、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、該圧縮機が吐出した高温高圧の冷媒と前記貯湯ユニットから供給された低温の水の熱交換を行う水冷媒熱交換器と、該水冷媒熱交換器から流出した高圧の冷媒を減圧する減圧装置と、該減圧装置から流出した低圧の冷媒と外気を熱交換させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に外気を通風させる送風ファンと、前記圧縮機、前記減圧装置、前記送風ファンを制御する制御装置と、を備え、該制御装置は、前記空気熱交換器に付着した霜を取り除く除霜運転時に、前記圧縮機を運転し、前記減圧装置の開度を開方向に開くとともに、前記送風ファンを低速運転するものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヒートポンプ給湯機によれば、除霜した水の再凍結を防止しながら、短時間で安定した除霜運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のヒートポンプ給湯機の全体構成を示す概略図。
【
図2】比較例の除霜運転の作動例を示すタイムチャート。
【
図3】比較例の除霜運転の作動例を示すフローチャート。
【
図4】実施例1の除霜運転の作動例を示すタイムチャート。
【
図5】実施例1の除霜運転の作動例を示すフローチャート。
【
図6】実施例2の除霜運転の作動例を示すタイムチャート。
【
図7】実施例2の除霜運転の作動例を示すフローチャート。
【
図8】実施例3の除霜運転の作動例を示すタイムチャート。
【
図9】実施例3の除霜運転の作動例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のヒートポンプ給湯機100の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例0012】
図1は、実施例1のヒートポンプ給湯機100の概略図である。ここに示すように、ヒートポンプ給湯機100は、ヒートポンプユニット1と貯湯ユニット2で構成される。
【0013】
ヒートポンプユニット1は、冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮機11と、圧縮機11からの高温冷媒と貯湯ユニット2からの低温水を熱交換させる水冷媒熱交換器12と、水冷媒熱交換器12で熱交換された中温冷媒を減圧する減圧装置13と、減圧された低温冷媒と空気を熱交換させる空気熱交換器14と、空気熱交換器14に外気を通風させる送風ファン15で構成されており、圧縮機11と水冷媒熱交換器12と減圧装置13と空気熱交換器14を、冷媒配管で環状に接続している。また、ヒートポンプユニット1には、外気温度TAを検知する外気温度センサ16と、空気熱交換器14の出口冷媒温度TOを検知する冷媒温度センサ17も設けられている。なお、図示を省略しているが、ヒートポンプユニット1には、外気温度センサ16や冷媒温度センサ17の出力等に基づいて、圧縮機11や減圧装置13や送風ファン15などを制御する制御装置も設けられている。
【0014】
ヒートポンプユニット1と貯湯ユニット2は、入水配管21と出湯配管22で接続されている。貯湯ユニット2の貯湯タンク23の下部の低温水は、入水配管21を通ってヒートポンプユニット1に供給され、水冷媒熱交換器12内でお湯に加熱される。水冷媒熱交換器12で加熱されたお湯は、出湯配管22を通って貯湯タンク23の上部に供給される。入水配管21には、水を循環させるための水循環装置24が備え付けられている。また、貯湯タンク23の下部には、貯湯タンク23に水道水等を供給する給水配管25が接続されており、貯湯タンク23の上部には、貯湯タンク23からキッチンや風呂等にお湯を供給する給湯配管26が接続されている。
【0015】
空気熱交換器14は、沸き上げ運転時に蒸発器として動作するため、外気温度が低い場合(例えば、2℃)には、空気熱交換器14の表面に着霜することがあり、加熱能力が低下してしまう。そこで、適宜、空気熱交換器14の表面の霜を融かす除霜運転が必要となる。
【0016】
<比較例の除霜運転>
ここで、本実施例の除霜運転を説明する前に、
図2と
図3を用いて、比較例の除霜運転について説明する。
図2は比較例の除霜運転の前後の作動例を示したタイムチャートであり、
図3はそれに対応するフローチャートである。
【0017】
制御装置は、沸き上げ運転中(
図3のステップS1)に、外気温度T
Aや出口冷媒温度T
Oが所定温度を下回ったことを検知した場合、除霜運転を開始する。ここでは、出口冷媒温度T
Oが所定温度T
S(例えば、外気温度が2℃の場合の所定温度T
Sは-8℃)を下回った場合に除霜運転を開始するものとする(
図2(c)、
図3のステップS2でYes)。
【0018】
除霜運転開始時のヒートポンプユニット1の動作は、圧縮機11を運転させ(
図2(a))、減圧装置13の開度を開方向に開くとともに(
図2(b))、水循環装置24を停止または低流量で運転する。これにより、水冷媒熱交換器12や減圧装置13での温度低下を抑制し、空気熱交換器14の端部まで中温冷媒を多量に送ることができるため、空気熱交換器14の表面に付着した霜が融け始める。その結果、空気熱交換器14の出口冷媒温度T
Oは急激に上昇する(
図2(c)期間A)。この時、空気熱交換器14にて中温冷媒と外気が熱交換すると、霜を融かす熱が奪われてしまうため、送風ファン15は停止させる(
図2(d)、
図3のステップS3)。
【0019】
この除霜運転を継続すると、空気熱交換器14に送られた中温冷媒によって、空気熱交換器14の表面に付着した霜は水に変化し始める。この時、霜が水に変化するために冷媒から大量の熱を奪うため、空気熱交換器14の出口冷媒温度T
Oは、横ばい状態となる(
図2(c)期間B)。この時、空気熱交換器14にて中温冷媒と外気が熱交換すると、霜を水に変化させるための熱が外気に奪われてしまうため、送風ファン15は停止させたままにする(
図2(d))。
【0020】
さらに除霜運転を継続すると、空気熱交換器14に付着していた霜は全て水となり、空気熱交換器14の出口冷媒温度T
Oは再び上昇し始める(
図2(c)期間C)。そして、空気熱交換器14の出口冷媒温度T
Oが所定温度T
E(例えば、外気温度が2℃の場合の所定温度T
Eは10℃)を超えたことを検知した時(
図3のステップS4でYes)、制御装置は除霜運転を終了させ、沸き上げ運転を再開する(
図3のステップS1)。
【0021】
図2(d)に示すように、比較例の除霜運転では、沸き上げ運転の再開時まで、送風ファン15を停止させていた。このため、期間Cにて空気熱交換器14に付着していた水の除去については、自重によって落下させるしかなく、余分な時間とエネルギーを消費してしまっていた。
【0022】
<本実施例の除霜運転>
次に、
図4と
図5を用いて、本実施例の除霜運転について説明する。
図4は本実施例の除霜運転の作動例を示したタイムチャートであり、
図5はそれに対応するフローチャートである。なお、
図2や
図3との共通点は重複説明を省略する。
【0023】
本実施例の除霜運転の期間Cでは、
図4(d)に示すように、送風ファン15を低回転数(例えば最高回転数の30%以下、もしくは15m
3/min以下)で運転させることで(
図5のステップS3c)、空気熱交換器14の出口冷媒温度T
Oを氷点下まで低下させることなく、空気熱交換器14に付着した水滴に順次新たな外気を吹き付けることができるため、空気熱交換器14に付着した水滴の再凍結を防止し、且つ、空気熱交換器14の温度が氷点下まで低下する前に空気熱交換器14の乾燥を促すことができる。これにより、期間Cを短縮することができ、安定した除霜運転を実現することができる。
【0024】
ここで、本実施例の除霜運転での期間Bから期間Cへの移行は、空気熱交換器14の出口冷媒温度T
Oが所定温度T
1(例えば、外気温度が2℃の場合の所定温度T
1は0℃)に達し(
図5のステップS3aでYes)、且つ、出口冷媒温度T
Oの所定時間当たりの変化量ΔT
Oが所定量Kを超えた(
図5のステップS3bでYes)ことによって判断する。また、期間Bから期間Cへの移行は、除霜運転開始時から所定時間経過したことによって判断してもよい。
【0025】
以上で説明した本実施例のヒートポンプ給湯機によれば、除霜した水の再凍結を防止できるため、短時間で安定した除霜運転を行うことができる。