(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137601
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】移動体のモジュール及びモジュールに対するバランス調整材の設定装置
(51)【国際特許分類】
B63B 22/18 20060101AFI20220914BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20220914BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20220914BHJP
B63G 8/14 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B63B22/18
B63C11/00 B
B63C11/48 D
B63G8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037151
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小西 信克
(57)【要約】
【課題】移動体のバランス調整を迅速に行うことを可能にする。
【解決手段】移動体10のモジュール11は、移動体10の一部を構成する他のモジュール11と連結可能な筐体12と、移動体10のバランス調整材14を少なくとも1つ、着脱可能に保持するバランス調整部13とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体のモジュールであって、
前記移動体の一部を構成する他のモジュールと連結可能な筐体と、
前記移動体のバランス調整材を少なくとも1つ、着脱可能に保持するバランス調整部と
を備えるモジュール。
【請求項2】
前記バランス調整部は、
前記バランス調整材としてのバラストを着脱可能に保持するバラスト保持部
を含む請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記バランス調整部は、
前記バランス調整材としてのフロートを着脱可能に保持するフロート保持部
を含む請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記バラスト保持部は、
前記バラストの導入口として前記筐体の外面に開口する前記バラストの収容部と、
前記バラストの前記導入口を開閉する蓋部と
を有する、
請求項2に記載のモジュール。
【請求項5】
前記フロート保持部は、
前記フロートの導入口として前記筐体の外面に開口する前記フロートの収容部と、
前記フロートの前記導入口を開閉する蓋部と
を有する、
請求項3に記載のモジュール。
【請求項6】
外部機器からの要求信号に応じて前記バランス調整部に関するバランス調整情報を出力する通信部
を更に備える請求項1~4のうちの何れか一項に記載のモジュール。
【請求項7】
請求項1~6のうちの何れか一項に記載のモジュールを複数備える移動体。
【請求項8】
互いの連結によって移動体を構成する複数のモジュールのそれぞれに取り付けられるバランス調整材の設定装置であって、
前記複数のモジュールの配列並びに各前記モジュールの重量及び重心位置に基づいて前記移動体の重量と重心位置を算出し、
前記移動体の前記重量及び前記重心位置に基づいて、動作環境における前記移動体のバランス状態を推定し、
前記バランス状態が所定の許容状態の範囲内に収まるように、各前記モジュールのバラスト保持部に取り付けられる前記バランス調整材としてのバラストの重量を、バラスト設定重量として算出する制御部と、
前記バラスト設定重量又は前記バラスト設定重量に対応する前記バラストの個数を各前記モジュールの前記バラスト保持部に対応付けて表示する表示部と
を備える設定装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記複数のモジュールの配列並びに各前記モジュールの浮量及び浮心位置に基づいて前記移動体の浮量と浮心位置を算出し、
前記バランス状態が所定の許容範囲内に収まるように、各前記モジュールのフロート保持部に取り付けられる前記バランス調整材としてのフロートの浮量を、フロート設定浮量として算出し、
前記制御部による前記バランス状態の推定は、前記移動体の前記重量及び前記重心位置に加えて、前記移動体の前記浮量及び前記浮心位置に基づいて行われ、
前記表示部は、
前記フロート設定浮量又は前記フロート設定浮量に対応する前記フロートの個数を各前記モジュールの前記フロート保持部に対応付けて表示する
請求項8に記載の設定装置。
【請求項10】
前記移動体と通信する通信部を更に備える
請求項8又は9に記載の設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は移動体の一部を構成するモジュール及びモジュールに取り付けられるバランス調整材の設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は水中航走体を開示している。この水中航走体は、分解可能な複数の円筒形の耐圧容器からなり、それぞれの耐圧容器の内部には、それぞれ異なる機器が収められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人航空機等の無人の移動体(UV)はその操作性の向上に伴い、用途も多様化している。これらの用途に応じた装置を全て移動体に搭載することは当然ながら現実的ではないため、異なる機能を持つ個々のモジュールを用意し、用途に応じてこれらのうちの何れかを適宜組み合わせることによって移動体を構成することが考えられる。
【0005】
しかしながら、モジュールの重量や浮量は、当該モジュールに搭載された装置に応じて異なっている。従って、移動体のバランス調整が必要となる。このバランス調整は、動作環境に合わせて行う必要がある。また、移動体の目的によっては、現場でのモジュール交換によって必要となるバランス調整もある。バランス調整は、動作環境への移動体の投入と回収を繰り返すため、多大な時間を費やすことが多い。
【0006】
本開示はこのような事情を鑑みて成されたものであり、移動体のバランス調整を迅速に行うことが可能な移動体のモジュール及びモジュールに対するバランス調整材の設定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る移動体のモジュールは、前記移動体の一部を構成する他のモジュールと連結可能な筐体と、前記移動体のバランス調整材を少なくとも1つ、着脱可能に保持するバランス調整部とを備える。
【0008】
前記バランス調整部は、前記バランス調整材としてのバラストを着脱可能に保持するバラスト保持部を含んでもよい。記バランス調整部は、前記バランス調整材としてのフロートを着脱可能に保持するフロート保持部を含んでもよい。
【0009】
前記バラスト保持部は、前記バラストの導入口として前記筐体の外面に開口する前記バラストの収容部と、前記バラストの前記導入口を開閉する蓋部とを有してもよい。前記フロート保持部は、前記フロートの導入口として前記筐体の前記外面に開口する前記フロートの収容部と、前記フロートの前記導入口を開閉する蓋部とを有してもよい。前記モジュールは、外部機器からの要求信号に応じて前記バランス調整部に関するバランス調整情報を出力する通信部を更に備えてもよい。
【0010】
本開示の一態様は、上記のモジュールを複数備える移動体である。
【0011】
本開示の一態様は、互いの連結によって移動体を構成する複数のモジュールのそれぞれに取り付けられるバランス調整材の設定装置であって、前記複数のモジュールの配列並びに各前記モジュールの重量及び重心位置に基づいて前記移動体の重量と重心位置を算出し、前記移動体の前記重量及び前記重心位置に基づいて、動作環境における前記移動体のバランス状態を推定し、前記バランス状態が所定の許容状態の範囲内に収まるように、各前記モジュールのバラスト保持部に取り付けられる前記バランス調整材としてのバラストの重量を、前記バラスト設定重量として算出する制御部と、前記バラスト設定重量又は前記バラスト設定重量に対応する前記バラストの個数を各前記モジュールの前記バラスト保持部に対応付けて表示する表示部とを備える。
【0012】
前記制御部は、前記複数のモジュールの配列並びに各前記モジュールの浮量及び浮心位置に基づいて前記移動体の浮量と浮心位置を算出し、前記バランス状態が所定の許容範囲内に収まるように、各前記モジュールのフロート保持部に取り付けられる前記バランス調整材としてのフロートの浮量を、前記フロート設定浮量として算出してもよい。前記制御部による前記バランス状態の推定は、前記移動体の前記重量及び前記重心位置に加えて、前記移動体の前記浮量及び前記浮心位置に基づいて行われてもよい。前記表示部は、前記フロート設定浮量又は前記フロート設定浮量に対応する前記フロートの個数を各前記モジュールの前記フロート保持部に対応付けて表示してもよい。
【0013】
前記設定装置は、前記移動体と通信する通信部を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、移動体のバランス調整を迅速に行うことが可能な移動体のモジュール及びモジュールに対するバランス調整材の設定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る移動体の一例を示す概念図である。
【
図2】
図1の移動体に対応する無人航空機の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るモジュールの一例を示す図であり、(a)はY方向から見たモジュールの側面図、(b)はX方向から見たモジュールの断面図である。
【
図4】本実施形態に係る移動体の他の一例を示す概念図である。
【
図5】
図4の移動体に対応する無人水上航走体(無人水中航走体)の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るモジュールの他の一例を示す図であり、(a)はY方向から見たモジュールの側面図、(b)はX方向から見たモジュールの断面図である。
【
図7】本実施形態に係る設定装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る設定装置を用いたバランス調整材の設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の幾つかの実施形態について、添付図面に基づき説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。説明の便宜上、中心軸CAは水平に延伸しているものとし、その延伸方向をX方向(軸方向)と定義する。また、水平に延伸し且つX方向に直交する方向をY方向、鉛直方向をZ方向と定義する。さらに、X方向の一方側を「前」、X方向の他方側を「後」と定義する。
【0017】
本実施形態に係る移動体は、無人水中航走体(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)、無人水上航走体(ASV:Unmanned Surface Vehicle)、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)、無人地上車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)、等の無人機に適用できる。無人機は自律的に動作してもよく、オペレータの遠隔操作によって動作してもよい。下記の通り、移動体は複数のモジュールによって構成され、各モジュールには移動体の重力バランスや浮力バランスを調整するためのバランス調整材が装着される。本実施形態に係る設定装置は、各モジュールに装着される上述のバランス調整材の個数を算出する。
【0018】
まず、本実施形態に係る移動体及びモジュールについて説明する。
図1は本実施形態に係る移動体10の一例を示す概念図である。
図2は、
図1の移動体10に対応する無人航空機10Aの一例を示す図である。
図3は、本実施形態に係るモジュール11の一例を示す図であり、(a)はY方向から見たモジュール11の側面図、(b)はX方向から見たモジュール11の断面図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、移動体10は、互いに連結した複数のモジュール11によって構成される。複数のモジュール11は互いに連結し、移動体10として動作する。モジュール11はそれぞれ個別の機能を有し、移動体10として機能するために移動体10の目的に応じて適宜選択され、組み合わされる。また、複数のモジュール11のうちの1つはマスターモジュールとして各モジュール11の制御を行う制御装置を有し、移動体10としての動作を制御する。
【0020】
図3に示すように、モジュール11は、筐体12と、バランス調整部13とを備える。筐体12は、移動体10全体の外形の一部を構成すると共に、少なくともバランス調整部13とモジュール11の動作に必要な機器(図示せず)を収容する容器である。筐体12は、前端部12aから後端部12bに向けてX方向に延伸する中空の筒状の形状を有する。また、
図3に示すように、筐体12はZ方向に延びる中心軸CAを中心とする円形の断面を有する。ただし、筐体12の断面形状は円形に限られず、モジュール11の機能等に応じた形状を有する。
【0021】
筐体12は、移動体10の他の一部を構成する他のモジュール11と連結可能に構成されている。即ち、筐体12は、前端部12a及び後端部12bのうちの少なくとも一方に設けられる連結部(図示せず)を有する。連結部(図示せず)は、他のモジュール11と機械的に連結する。なお、筐体12の材料は、例えば十分な強度を有する金属または樹脂であり、移動体10の用途に応じて選択される。
【0022】
モジュール11は、動力供給、推進・操舵、又は管制・航法などの移動体10にとって基本的な機能を有する。即ち、モジュール11の機能が動力供給である場合、モジュール11は電池等の電力源を含む電源装置を備える。モジュール11の機能が推進・操舵である場合、モジュール11は駆動用モータ等の動力源、当該動力源に接続するプロペラ又は車輪、及び、ラダー又は車輪の調整機構(操舵機構)を備える。また、モジュール11の機能が管制・航法である場合、ジャイロや加速度計を有する慣性航法装置を備える。なお、上述の機能の幾つかは単体のモジュール11が担ってもよい。
【0023】
また、モジュール11は、移動体10の目的や動作環境に応じた機能を有してもよい。例えば、モジュール11は、目標物又は障害物等のセンシング、マニピュレーション、撮像、計測、又は貨物収容などの機能を有する。例えば、モジュール11の機能がセンシングである場合、音波センサや赤外線センサなどを備える探査機を備える。モジュール11の機能がマニピュレーションである場合、モジュール11は筐体12に設置された可動アーム等のマニピュレータ、及び、マニピュレータの稼働状態を確認するためのカメラなど撮像装置を備える。モジュール11の機能が撮像である場合、モジュール11はカメラなど撮像装置を備える。モジュール11の機能が計測である場合、モジュール11は温度センサ、圧力センサ、又は音響センサなどのセンサとその制御装置を備える。モジュール11の機能が貨物収容である場合、モジュール11は筐体12内に貨物の収容室を備える。なお、上述の機能の幾つかは単体のモジュール11が担ってもよい。
【0024】
バランス調整部13は、移動体10のバランス調整材14を少なくとも1つ、着脱可能に保持する。バランス調整材14は、例えば、移動体10全体の重力バランスを調整するバラスト(重し、錘)15である。この場合、バランス調整部13はバラスト15を着脱可能に保持するバラスト保持部16を含む。バラスト15は複数用意され、そのうちの幾つかが、移動体10の所望の重力バランスに応じてバラスト保持部16に装着される。なお、複数のバラスト15の重量は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0025】
図3に示すように、バランス調整部13としてのバラスト保持部16は、収容部17と、蓋部18とを有する。収容部17はバラスト15を収容する容器であり、筐体12の外面に開口するバラスト15の導入口19を有する。また、収容部17は、バラスト15を複数収容する容積を有してもよい。
【0026】
蓋部18は、バラスト15の導入口19を開閉する板部材である。蓋部18は、ヒンジ等の連結部材を介して、筐体12に取り付けられ、筐体12の外面(即ち移動体10の外面)を形成する。蓋部18は、バラスト15の不測の落下を防止すると共に、移動中の移動体10に生じる流体(即ち空気又は水)の抗力を低減する。
【0027】
モジュール11を移動体10の動作時の姿勢に配置したとき、バラスト保持部16は、X方向から見て重心20の下側に位置する。これにより、バラスト15を装着したときに生じるモジュール11の不要なロールを抑制できる。更に、バラスト保持部16は、Z方向に沿った重心20の下方の位置に位置することが望ましい。これにより、上述の不要なロールを更に抑制できる。
【0028】
バラスト保持部16は、移動体10に動作環境に関わりなく、モジュール11に設けられている。即ち、バラスト保持部16は、水中(水上)、陸上、空中の各環境で動作する移動体10のモジュール11に設けられる。
【0029】
図4は本実施形態に係る移動体10の他の一例を示す概念図である。
図5は、
図4の移動体10に対応する無人水中航走体(無人水上航走体)10Bの一例を示す図である。
図6は、本実施形態に係るモジュール11の他の一例を示す図であり、(a)はY方向から見たモジュール11の側面図、(b)はX方向から見たモジュール11の断面図である。
【0030】
バランス調整部13は、バラスト保持部16に加え、バランス調整材14としてのフロート(浮力材、浮き)25を着脱可能に保持するフロート保持部26を含んでもよい。フロート25は、移動体10全体の浮力バランスを調整する。フロート25は複数用意され、そのうちの幾つかが、移動体10の所望の浮力バランスに応じてフロート保持部26に装着される。なお、複数のフロート25の浮量は同一でもよく、異なっていてもよい。バランス調整部13としてのフロート保持部26は、
図5に示す無人水中航走体(無人水上航走体)10Bなどの水中又は水上で動作する移動体に設けられる。
【0031】
図6に示すように、バランス調整部13としてのフロート保持部26は、収容部27と、蓋部28とを有する。収容部27はフロート25を収容する容器であり、筐体12の外面に開口するフロート25の導入口29を有する。また、収容部27は、フロート25を複数収容する容積を有してもよい。
【0032】
蓋部28は、フロート25の導入口29を開閉する板部材である。蓋部28は、ヒンジ等の連結部材を介して、筐体12に取り付けられ、筐体12の外面(即ち移動体10の外面)を形成する。蓋部28は、フロート25の不測の浮上を防止すると共に、移動中の移動体10に生じる流体(即ち空気又は水)の抗力を低減する。なお、フロート25の浮力が得られるよう、蓋部28は、収容部27内に水の流入を許容するように構成されている。例えば、蓋部28にはモジュール11の外部空間から収容部27に連通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0033】
モジュール11を移動体10の動作時の姿勢に配置したとき、フロート保持部26は、X方向から見て浮心21の上側に位置する。これにより、フロート25を装着したときに生じるモジュール11の不要なロールを抑制できる。更に、フロート保持部26は、Z方向に沿った浮心21の上方の位置に位置することが望ましい。これにより、上述の不要なロールを更に抑制できる。
【0034】
モジュール11は、移動体10を構成する他のモジュール11との間でネットワークを構築する通信部23を有していてもよい。通信部23は、当該ネットワークを介して各モジュール11の制御信号、データ信号などの各種の信号を伝達する。
【0035】
また、通信部23は、外部機器からの要求信号に応じてバランス調整情報を出力してもよい。バランス調整情報は、当該情報を出力するモジュール11において、移動体10のバランス調整に必要なバランス調整材14の個数を算出するために必要な情報である。バランス調整情報は、例えば、モジュール11の重量、重心位置、浮量、浮心位置、及び、重心又は浮心に対するバランス調整部13の相対位置、バランス調整材14の最大積載個数、現時点で取り付けているバランス調整材14の個数、並びに、連結している他のモジュール11の形式番号などの情報を含む。一方、外部機器は、移動体10の外部から上述のネットワークにアクセス可能な装置であり、例えば、本実施形態に係る後述の設定装置30(
図7参照)である。設定装置30が通信によってバランス調整情報を受け取ることで、設定装置30の操作者によるバランス調整情報の入力を省略でき、操作者の作業を軽減できる。
【0036】
バランス調整情報は、要求信号の受信の際にバランス調整部13によって保持されているバランス調整材14の個数を示す情報を含んでもよい。即ち、モジュール11にバラスト保持部16のみが設けられている場合、バランス調整情報はバラスト15の個数を示す情報を含んでもよい。また、モジュール11にバラスト保持部16とフロート保持部26が設けられている場合、バランス調整情報はバラスト15の個数とフロート25の個数を示す情報を含んでもよい。
【0037】
バランス調整情報は、モジュール11に割り当てられた固有の形式番号を含んでもよい。バランス調整情報に含まれた形式番号は、設定装置30に送信され、設定装置30に予め保存されていたリストと照合される。リスト内に該当の形式番号があった場合、設定装置30は、その形式番号に対応する重量等の上述の情報をリストから取得する。
【0038】
なお、バランス調整情報の出力先は、上述の要求信号を発した外部機器でもよく、移動体10を構成する他のモジュール11でもよい。前者の場合、バランス調整情報はネットワークを介して直接、外部機器に送信される。一方、後者の場合、バランス調整情報は、要求信号を発したマスターモジュールとして機能する他のモジュール11に設けられた通信部に送信される。その後、バランス調整情報は、外部機器の更なる要求信号に応じて、ネットワークを介して外部機器に送信される。
【0039】
本実施形態によれば、移動体10を構成する各モジュール11に、バランス調整材14を保持するバランス調整部13が設けられている。従って、移動体10全体におけるバランス調整材14の装着位置及び個数を細かく調整することが可能である。従って、例えば、バランス調整材14の装着位置及び個数を予め算出し、この算出結果に基づいてバランス調整材14を移動体10に装着することによって、バランス調整のための動作環境への移動体10の投入と回収の回数を削減することができる。即ち、移動体のバランス調整を迅速に行うことができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る設定装置について説明する。
図7は、本実施形態に係る設定装置30の構成の一例を示す図である。
【0041】
図7に示すように、設定装置30は所謂コンピュータとして構成されている。即ち、設定装置30は、制御部31と、通信部32と、入力部33と、表示部34とを有する。これらは、バス38を介して接続されている。
【0042】
制御部31は、演算部35と、記憶部36と、補助記憶装置37とを有する。演算部35は所謂CPUであり、補助記憶装置37に記憶されたプログラムに基づき、設定装置30全体を制御するための処理を実行する。記憶部36はROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)を含み、演算部35が行う処理に必要な各種の情報を一時的に記憶する。 補助記憶装置37は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Drive)であり、種々のデータや各種のプログラムを記憶する。上述のバランス調整情報は、この補助記憶装置37に記憶されていてもよい。
【0043】
通信部32は、移動体10のネットワークと有線または無線により接続し、
図7に示すように、移動体10との間で通信を行う。通信のプロトコルは周知のものが採用される。なお、バランス調整情報がモジュール11に保存されている場合、設定装置30は、通信部32による移動体10との通信を介して、当該情報を取得してもよい。
【0044】
入力部33はデータを受け付けるインタフェースであり、キーボードや各種の入出力ポート等である。バランス調整情報がモジュール11及び設定装置30の何れにも保存されていない場合、当該情報は入力部33を介して設定装置30に入力される。表示部34は例えば液晶モニタであり、入力部33からのデータ及び演算部35による演算結果などを表示する。
【0045】
上述の通り、単体の移動体10は複数のモジュール11によって構成される。設定装置30は、これらのモジュール11のそれぞれに装着されるバランス調整材14の総量又は総量に対応する個数を算出し、その結果を表示部34に表示する。バランス調整材14は、表示された結果に従って各モジュール11に装着、或いは、各モジュール11から脱着される。
【0046】
次に、設定装置30を用いたバランス調整材14の設定処理について説明する。
図8は、設定装置30を用いたバランス調整材14の設定処理を示すフローチャートである。
【0047】
説明の便宜上、上述の移動体10として海水中を走行する無人水中航走体(UUV)を想定する。従って、各モジュール11は、バラスト保持部16と、フロート保持部26とを有する。設定装置30は、各モジュールに装着されるバラスト15及びフロート25の個数を算出し、表示部34に表示する。なお、移動体10は、複数のモジュール11の連結によって既に組み立てられているものとする。また、海水密度等の移動体10の動作環境に関するパラメータは、予め設定装置30に入力(記憶)されているものとする。
【0048】
まず、設定装置30は各モジュール11のバランス調整情報を取得する(S10)。バランス調整情報は、設定装置30と移動体10との間の通信によって移動体10から取得されてもよく、入力部33を介して取得されてもよい。なお、通信部32と移動体10の間の通信によってバランス調整情報を取得する場合、操作者によるバランス調整情報の入力作業を省略できる。また、操作者による不測の誤入力も回避できる。
【0049】
バランス調整情報としてモジュール11の形式番号が用いられる場合、補助記憶装置37又は記憶部36には、モジュール11の重量等の具体的なパラメータと、当該モジュール11の形式番号とが関連付けられたリストが予め記憶される。設定装置30は、取得した形式番号を上述のリストと照合し、該当の形式番号に対応するモジュール11の重量等の情報を取得する。
【0050】
次に、設定装置30は、各モジュール11のバランス調整情報に基づいて、移動体10におけるモジュール11の配列を決定する(S20)。バランス調整情報には、連結している他のモジュール11の形式番号が含まれている。従って、各モジュール11の前後関係が特定でき、配列も特定できる。なお、この配列の情報は、バランス調整情報とは別の情報として、移動体10との通信によって取得されてもよい。この場合、配列の決定処理(S20)は省略される。
【0051】
次に、設定装置30は、複数のモジュール11の配列並びに各モジュール11の重量及び重心位置に基づいて、移動体10の重量と重心位置を算出し(S30)、複数のモジュール11の配列並びに各モジュール11の浮量及び浮心位置に基づいて、移動体10の浮量と浮心位置を算出する(S40)。
【0052】
次に、設定装置30は、移動体10の重量、重心位置、浮量及び浮心位置に基づいて、動作環境における移動体10のバランス状態を推定する(S50)。バランス状態は、動作環境に置かれたときの移動体10の姿勢(ピッチ及びロール等)及び発生するモーメント等によって表される。なお、このときの移動体10は、バランス調整材14が取り付けられていない状態又は前回の運転の際に取り付けたバランス調整材14が残っている状態に置かれているものとする。
【0053】
次に、制御部31は、S50の処理で得られた移動体10のバランス状態が、所定の許容状態の範囲内に収まっているかどうかを判断する(S60)。この所定の許容状態は、予め補助記憶装置37に記憶されている。バランス状態が所定の許容状態の範囲内に収まっている場合(S60でYES)、移動体10は動作環境において所望の姿勢をとり、発生するモーメントも許容範囲内に収まることになる。従って、バランス調整材14の新たな装着又は脱着は必要なく、表示部34はその判断結果を表示し、一連の処理は終了する。
【0054】
バランス状態が所定の許容状態の範囲外にある場合(S60でNO)、制御部31は、バランス状態が所定の許容状態の範囲内に収まるように、各モジュール11のバラスト保持部16に取り付けられるバラスト15の重量を「バラスト設定重量」として算出すると共に、各モジュール11のフロート保持部26に取り付けられるフロート25の浮量を「フロート設定浮量」として算出する(S70)。この算出には、例えば総当たり法が採用される。総当たり法では、各モジュール11のバランス調整部13(バラスト保持部16及びフロート保持部26)の位置と、バラスト15の重量の離散値、フロート25の浮量の離散値によるあらゆる組み合わせを想定し、その計算結果から、バランス状態が所定の許容状態の範囲内に収まる組み合わせを抽出する。
【0055】
S70の処理の後、表示部34は、バラスト設定重量又はバラスト設定重量に対応するバラスト15の個数を各モジュール11のバラスト保持部16に対応付けて表示する。また、表示部34は、フロート設定浮量又はフロート設定浮量に対応するフロート25の個数を各モジュール11のフロート保持部26に対応付けて表示する(S80)。
【0056】
以上の処理により、各モジュール11のバラスト保持部16には、表示部34に表示された重量又は個数のバラスト15が装着され、各モジュール11のフロート保持部26には、表示部34に表示された浮量又は個数のフロート25が装着される。
【0057】
なお、フロート25を必要としない無人航空機(UAV)等の移動体10について上述の設定処理を行う場合、空中の移動体については、浮量及び浮心位置を、揚力及び揚力中心にそれぞれ置き換えて処理を行えばよい。同様に、陸上の移動体については、浮量を省略し、浮心位置を車輪の支持位置に置き換えて処理を行えばよい。
【0058】
また、S70の処理では、バランス調整材14について所定の範囲内に収まる複数の組み合わせが得られる場合がある。その場合、設定装置30は、それぞれの組み合わせに対して推奨度を示す優先順位を表示部34に表示させてもよい。例えば、バランス調整部13毎にバランス調整材14の装着又は脱着の容易性を示す順位を割り当て、S70の処理で得られた各組み合わせについて、容易性を示す順位の合計に基づく優先順位を表示部34に表示する。作業者は、この優先順位の高い組み合わせを選択し、装着作業及び脱着作業を行う。これにより、作業の負担が軽減され、移動体のバランス調整が迅速化される。
【0059】
更に、S70の処理で得られた各組み合わせの優先順位を、それぞれの組み合わせによって発生するモーメントに基づいて設定し、設定された優先順位を表示部34に表示してもよい。このモーメントが小さい組み合わせを選択することにより、各モジュール11の変形等の劣化を緩和させることができる。
【0060】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0061】
10…移動体、10A…無人航空機、10B…無人水中航走体(無人水上航走体)、11…モジュール、12…筐体、12a…前端部、12b…後端部、13…バランス調整部、14…バランス調整材、15…バラスト(重し、錘)、16…バラスト保持部、17…収容部、18…蓋部、19…導入口、20…重心、21…浮心、23…通信部、25…フロート(浮力材、浮き)、26…フロート保持部、27…収容部、28…蓋部、29…導入口、30…設定装置、31…制御部、32…通信部、33…入力部、34…表示部、35…演算部、36…記憶部、37…補助記憶装置、38…バス、CA…中心軸