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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137605
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/06 20060101AFI20220914BHJP
   H05B 6/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H05B6/06 381
H05B6/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037158
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 義之
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA02
3K059AA08
3K059AC03
3K059AC09
3K059AC12
3K059AC54
3K059AD15
3K059CD07
3K059CD14
(57)【要約】
【課題】簡素な制御アルゴリズムを用いて共振周波数が変動した場合にも正常な制御を行う。
【解決手段】加熱調理器に内蔵される蒸気発生装置の加熱ユニットでは、コントローラにより高周波電流の周波数を変化させるように誘導加熱回路のIGBTの駆動周波数を制御する(S102,S103,S107)とともに駆動周波数ごとの高周波電流の情報を電圧センサと電流センサから取得して(S104)、高周波電流の電力テーブルを作成し(S109)、コントローラのメモリに記憶するようにした(S110)。そして、この記憶した電力テーブルに基づいて、目標の高周波電力を誘導加熱コイルが出力し得る駆動周波数を一義的に決定し、この決定された駆動周波数により誘導加熱回路を制御するようにした。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体を定まった位置関係で誘導加熱するコイルと、
前記コイルに高周波電力を供給する駆動部と、
前記駆動部が前記高周波電力を発生させる駆動周波数を制御する制御部と、
前記高周波電力の電力情報を検出する検出部と、を備えた誘導加熱装置であって、
前記制御部は、
前記高周波電力の周波数を変化させるように前記駆動周波数を制御するとともに前記駆動周波数ごとの前記高周波電力の電力情報を前記検出部から取得して前記高周波電力の周波数特性情報を記憶した後、前記周波数特性情報に基づいて、所望の高周波電力を前記コイルが出力し得る前記駆動周波数を決定し、この決定された駆動周波数により前記駆動部を制御することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱装置において、
前記周波数特性情報は、前記コイルを含む共振回路の共振周波数を中心とした所定周波数帯を除いたものであり、前記所定周波数帯よりも上側または下側の周波数帯域であることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘導加熱装置において、
前記制御部は、当該誘導加熱装置の電源電圧の変動情報に基づいて前記周波数特性情報を補正することを特徴とする誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱体を定まった位置関係で誘導加熱する誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加熱体を定まった位置関係で誘導加熱する誘導加熱装置は、例えば、下記の特許文献1に開示されている加熱調理器の蒸気発生装置に用いられる。蒸気発生装置を備えた加熱調理器(スチームコンベクションオーブン等)は、蒸気発生装置から供給される蒸気や、ヒータにより加熱させて調理庫内で循環する熱風によって調理庫内の食材を加熱調理する機能を有する。蒸気発生装置は、例えば、所定水位の水を貯えた蒸気発生容器と、蒸気発生容器内の水を加熱する加熱手段と、蒸気発生容器の下部に連通接続して蒸気発生容器内の水位を検知するための水位検知タンクや水位センサ等と、を備えており、この加熱手段として誘導加熱装置が用いられる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1に開示されている加熱手段(誘導加熱装置)は、蒸気発生容器内に収容された加熱体と、蒸気発生容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、を備え、誘導加熱コイルに高周波電流に供給することで電磁誘導により加熱体に渦電流が流れる現象を利用して加熱体を発熱させて蒸気発生容器内の水を蒸気にする。誘導加熱コイルには、例えば、特許文献2に開示されているような直列共振回路によって高周波電流が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-151369号公報
【特許文献2】特開2010-153136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に開示されているような誘導加熱コイル(インダクタ及び抵抗)と共振コンデンサ(キャパシタ)からなる直列共振回路では、共振周波数においてインピーダンスが急激に低下するため、共振周波数では、直列共振回路に流れる電流が最大になり、誘導加熱コイルに供給される電力は最大になる。共振周波数は非常に狭く、また直列共振回路に流れる電流の周波数特性は共振周波数を中心とした尖鋭な凸形状を有する。そのため、誘導加熱装置においては、例えば、直列共振回路に流れる電流を所定の目標値に近づけるフィードバック制御(例えばPID制御)系を構成したとしても、電流値の偏差に対する操作量が非線形であったり、共振周波数を境界に電流値の増減が反転したりすることから、制御アルゴリズムが複雑になり構成が容易ではないという問題があった。
【0006】
また、誘導加熱装置の直列共振回路を構成する誘導加熱コイルや共振コンデンサは、使用年月の経過に伴う経年変化等によりそれらを構成する電気材料等に物性変化が生じ得ることから、共振周波数に影響するリアクタンス値も変動し得る。つまり、直列共振回路の共振周波数は経年変化等により変動する可能性がある。そのため、前述のようなフィードバック制御系を構成することが可能であったとしても、共振周波数が経年変化等により変動した場合には正常な制御が行われないおそれがあった。本発明は、簡素な制御アルゴリズムを用いて共振周波数が変動した場合にも正常な制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、被加熱体を定まった位置関係で誘導加熱するコイルと、コイルに高周波電力を供給する駆動部と、駆動部が高周波電力を発生させる駆動周波数を制御する制御部と、高周波電力の電力情報を検出する検出部と、を備えた誘導加熱装置であって、制御部は、高周波電力の周波数を変化させるように駆動周波数を制御するとともに駆動周波数ごとの高周波電力の電力情報を検出部から取得して高周波電力の周波数特性情報を記憶した後、周波数特性情報に基づいて、所望の高周波電力をコイルが出力し得る駆動周波数を決定し、この決定された駆動周波数により駆動部を制御することを特徴とする誘導加熱装置を提供するものである。なお、高周波電力は、高周波電圧と高周波電流の積により得られることから、力率が略1の場合には「高周波電力」は高周波電圧または高周波電流に置き換えることが可能であり、また「電力情報」は電圧情報または電流情報に置き換えることが可能である(本明細書において以下同じ)。
【0008】
上記のように構成した誘導加熱装置においては、高周波電力の周波数を変化させるように駆動周波数を制御するとともに駆動周波数ごとの高周波電力の電力情報を検出部から取得して高周波電力の周波数特性情報を記憶するようにした。そして、この記憶した周波数特性情報に基づいて、所望の高周波電力をコイルが出力し得る駆動周波数を決定し、この決定された駆動周波数により駆動部を制御するようにしたので、制御アルゴリズムが簡素でも、共振周波数が変動した場合にも正常な制御を行うことができた。また、例えば、使用年月の経過に伴う経年変化等により、コイルを構成する電気材料等に物性変化が生じる場合があっても、そのような物性変化の後に新たな高周波電力の周波数特性情報を記憶することによって、コイルの物性が変化した場合にも正常な制御を行うことができた。さらに、コイル等に電気的な特性に個体差がある場合においても、誘導加熱装置ごとに駆動周波数ごとの高周波電力の電力情報を検出部から取得して高周波電力の周波数特性情報を記憶するようにしたので、このようなコイルの個体差やその他の電気的な特性に誤差等が生じてもそれらを吸収することができるようになった。
【0009】
上記のように構成した誘導加熱装置においては、周波数特性情報は、コイルを含む共振回路の共振周波数を中心とした所定周波数帯を除いたものであり、所定周波数帯よりも上側または下側の周波数帯域であるのが好ましい。このように構成したときには、周波数特性情報は、コイルを含む共振回路の共振周波数を中心とした所定周波数帯を除いたもの、即ち、周波数変化に対して高周波電力が急激に増加したり減少したりする尖鋭な凸形状部分が除外されるため、周波数変化に対して高周波電力が比較的に安定する周波数帯域の周波数特性情報を記憶することになる。また、駆動周波数の全域について、高周波電力の電力情報を検出部から取得して高周波電力の周波数特性情報を記憶する場合に比べて、このような周波数特性情報を得るための所要時間が略半分に減るため、高周波電力の周波数特性情報の記憶に要する時間を短くすることができるようになった。
【0010】
また、上記のように構成した誘導加熱装置においては、制御部は、当該誘導加熱装置の電源電圧の変動情報に基づいて周波数特性情報を補正するのが好ましい。本発明は「被加熱体を定まった位置関係で誘導加熱するコイル」を備える誘導加熱装置であることから、主な外乱要因として想定されるものは電源電圧の変動に限られる。したがって、このように構成したときには、当該誘導加熱装置の電源電圧が変動した場合、その変動情報に基づいて周波数特性情報を補正したうえで、補正後の周波数特性情報に基づいて所望の高周波電力をコイルが出力し得る駆動周波数を決定するので、主な外乱要因として想定される電源電圧の変動の影響を受けにくくすることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の誘導加熱装置の一実施形態である蒸気発生装置を内蔵した加熱調理器の正面図である。
図2図1のA-A線の断面図である。
図3】加熱調理器の側面図(a)と平面図(b)である。
図4】加熱調理器の縦方向断面図である。
図5】電気制御系のブロック図である。
図6】蒸気発生装置のブロック図である。
図7】蒸気発生装置による電力テーブル生成処理の流れを示したフローチャートである。
図8】蒸気発生装置による加熱制御処理の流れを示したフローチャートである。
図9】高周波電力の周波数変動に対する誘導加熱コイルの出力電力特性図(a)と、電源電圧の変動に対する誘導加熱コイルの出力電力特性図(b)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の誘導加熱装置を、加熱調理器に内蔵される蒸気発生装置に適用した一実施形態について、添付図面を参照して説明する。この実施形態の加熱調理器は、スチームコンベクションオーブンと呼ばれるものであり、蒸気を含んだ熱風を対流させて食材を加熱調理するものである。
【0013】
図1及び図2に示したように、加熱調理器10は、ハウジング11内の左側部を除いた部分に食材を加熱調理するための調理庫14と、調理庫14の前部を開閉可能にする扉12と、ハウジング11の左側部の空間に機械室15と、機械室15の前部を覆う操作パネル13と、を備えている。操作パネル13には、図示されていないが、例えば、加熱調理器10の電源投入時に押下される電源ボタン、ユーザが選択可能な各種の調理モードや現在の運転状態等が表示されたり画面に触れることで選択された情報等を入力できたりする液晶タッチパネルや、加熱調理の開始や終了を指示するときに押下されるスタートボタン等が設けられている。
【0014】
図2に示したように、この調理庫14内の左側部を加熱空間14aとして、調理庫14内を加熱するヒータ16と、調理庫14内の空気を循環(対流)させる送風ファン17とを設け、加熱空間14aを除く部分を食材を収容する収容空間14bとしている。送風ファン17はシロッコファン等の遠心ファンであり、中央部から吸引した空気を遠心方向外向きに空気を送るものである。送風ファン17を駆動させると、収容空間14bから図2の矢印に示したように空気が吸引され、遠心方向外向きに送り出された空気はヒータ16によって加熱されて熱風となり、調理庫14の周壁(前壁、後壁、上壁及び下壁)に沿って再び収容空間14bに送られる。
【0015】
調理庫14の収容空間14bの左右両側部にはホテルパンと呼ばれる食材を受けるトレイ(図示省略)を上下方向に多段状に支持するラックフレーム18が設けられている。図2に示したように、ラックフレーム18は、前後に立設した支持柱18a,18bと、上下方向に等間隔に配置された位置で支持柱18a,18bとの間に掛け渡された複数個の支持レール18cとを備えている。機械室15の後部には、調理庫14内に蒸気を供給するための蒸気発生装置20が設けられている。また、機械室15の前部の操作パネル13の裏側には、ヒータ16、送風ファン17や蒸気発生装置20等を制御するための制御装置50が設けられている。
【0016】
図3図5に示したように、蒸気発生装置20は、所定水位の水を貯えた蒸気発生容器21と、蒸気発生容器21の上部に連通接続して調理庫14内に蒸気を送り出す蒸気導出筒22と、蒸気発生容器21の下部に連通接続して蒸気発生容器21内の水位を検知するための水位検知タンク23と、水位検知タンク23内に設けられて内部の水位を検知することで蒸気発生容器21内の水位を検知する水位センサ26と、蒸気発生容器21内の水を加熱する加熱ユニット30とを備えており、制御装置50により制御されている。
【0017】
蒸気発生容器21は上下が開口した筒形形状をしており、その上端の開口21aは蒸気の噴き出し口に、また蒸気発生容器21の下端の開口21bは排水口になっている。蒸気発生容器21の下部には排水筒部(図示省略)が接続されており、蒸気発生容器21内の水は排水筒部に設けた排水弁(図示省略)を開放することにより排水される。蒸気発生容器21の周面上部には貫通孔(図示省略)が形成されており、この貫通孔には後述する加熱体31の過熱状態等を検知するための温度センサ39が挿入されている。
【0018】
加熱ユニット30は、蒸気発生容器21内に加熱体31と、蒸気発生容器21の外周にて上下方向の中間部から下部に巻回された誘導加熱コイル34と、誘導加熱コイル34を含む誘導加熱回路35と、誘導加熱回路35に直流電力を供給する整流回路36と、誘導加熱回路35を制御するコントローラ37と、外部電源である交流電源90の入力電圧を検出するための電圧センサ38a,38b,38cと、交流電源90の入力電流を検出するための電流センサ38d,38e,38fを備えている(図4及び図6参照)。
【0019】
これらのうち、誘導加熱回路35、整流回路36、コントローラ37、電圧センサ38a~38c及び電流センサ38d~38fは、加熱体31や誘導加熱コイル34から離れて、制御装置50と同様に操作パネル13の裏側に設けられている。また、電圧センサ38a~38cや電流センサ35d~35fにより検出された交流電源90の電圧値や電流値はコントローラ37に出力される。
【0020】
加熱体31は、蒸気発生容器21の上部に支持された略円環形のホルダ32と、円環形状に配置されてホルダ32に上端部が固定された複数の加熱棒33とを備えている。この実施形態では、加熱棒33は径方向断面形状が円形であり17本で構成されている。ホルダ32はオーステナイト系ステンレス鋼製であり非磁性体であるのに対して、加熱棒33はフェライト系ステンレス鋼であり磁性体である。
【0021】
このように構成される加熱体31を収容する蒸気発生容器21の外周には、複数の加熱棒33の配置形状の円環と略同軸に誘導加熱コイル34が巻回されている。図6においては、加熱体31(加熱棒33)と誘導加熱コイル34の位置関係を明示する図面表現上の便宜のため誘導加熱コイル34の中に破線で表している。誘導加熱コイル34には、例えば、複数のエナメル被覆銅線をより合わせたリッツ線(撚線)や、単線のエナメル被覆銅線が用いられる。これにより、後述するように、誘導加熱コイル34に周波数の高い交流電流(高周波電流)が流れることに伴って繰り返し生じる磁力線が複数の加熱棒33を通過するため、これに起因した渦電流が加熱棒33内に流れることで当該加熱棒33が有する電気抵抗によるジュール熱が発生して加熱棒33自体が発熱する。
【0022】
この実施形態では、複数の加熱棒33は、誘導加熱コイル34と同じ高さ位置で誘導加熱コイル34に高周波電力を供給したときに発熱する発熱部33aと、この発熱部33aより上側位置で発熱しない非発熱部33bを有している。加熱棒33の上側の非発熱部33bがホルダ32に取り付けられている。複数の加熱棒33のうちの1つには、非発熱部33bに径方向に延びる挿通孔(図示省略)が形成されている。この挿通孔には、蒸気発生容器21の貫通孔(図示省略)に挿通された温度センサ39が嵌挿されている。これにより、加熱体31(加熱棒33)の温度を計測可能にしている。このようにこの実施形態では、複数の加熱棒33(被加熱体)と誘導加熱コイル34は、予め定められた位置関係(定まった位置関係)を維持している。
【0023】
整流回路36は、交流電圧を直流電圧に整流するシリコンダイオードからなるブリッジ回路であり、この実施形態では、三相交流200Vを供給する交流電源90の各相に対応して整流した後、誘導加熱回路35に直流200Vを出力し得るように構成されている。整流回路36から出力される直流電圧の正極側を高電位側といい、同直流電圧の負極側を低電位側という場合がある。なお、交流電源90は単相交流200Vの場合もあり、その場合には入力電圧を検出するセンサは電圧センサ38aと電流センサ38dだけになる。
【0024】
誘導加熱回路35は、当該誘導加熱回路35の高電位側にコレクタが接続されたIGBT35aと、このIGBT35aのエミッタにコレクタが接続されるとともにエミッタが同回路35の低電位側に接続されたIGBT35bと、これらの高電位側と低電位側の間に直列に接続された2つの同容量のコンデンサ35c,35dと、IGBT35a,35bの接続部とコンデンサ35c,35dの接続部との間に両端が接続される誘導加熱コイル34と、により構成されている。なお、IGBT35a,35bのコレクタとエミッタの間には還流ダイオード(図示省略)が逆並列に接続されている。
【0025】
このように構成される誘導加熱回路35は、コントローラ37によりIGBT35aとIGBT35bが交互にオンオフ(スイッチング)制御されることによって誘導加熱コイル34に交流電流が流れる。即ち、IGBT35aをオンに制御しIGBT35bをオフに制御した瞬間にはIGBT35a→誘導加熱コイル34→コンデンサ35dの経路で電流が流れ、またコンデンサ35cにも流れる。IGBT35bをオンに制御しIGBT35aをオフに制御した瞬間にはコンデンサ35c→誘導加熱コイル34→IGBT35bの経路で電流が流れ、またコンデンサ35dにも流れる。
【0026】
つまり、誘導加熱コイル34(インダクタ及び抵抗)とコンデンサ35c,35d(キャパシタ)とからなるRLC直列共振回路を形成する。そのため、図9(a)に示したように、誘導加熱コイル34が加熱体31の加熱棒33に対して出力する電力(出力電力)は、IGBT35a,35bを交互にオンオフする周波数が直列共振回路の共振周波数frに近づくほど大きく、共振周波数frから遠ざかるほど小さくなる。
【0027】
このように誘導加熱コイル34の出力電力は、誘導加熱コイル34に流れる高周波電流(高周波電力)の周波数に依存する。したがって、この実施形態では、後述するように、誘導加熱回路35の直列共振回路に適した周波数(例えば5kHz~35kHz)でIGBT35a,35bをスイッチング(駆動)するようにコントローラ37により制御している。
【0028】
コントローラ37は、制御装置50から入力される制御情報に基づいて誘導加熱回路35を制御するワンチップマイコン(図示省略)を備えている。ワンチップマイコンは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM、タイマ及び入出力インタフェース等(いずれも図示省略)を有するマイクロコンピュータであり、このROMには、前述したようにIGBT35a,35bをスイッチング制御するプログラムのほかに、後述する電力テーブル生成処理や加熱制御処理を行うプログラム等が格納されている。
【0029】
蒸気発生容器21に隣接する位置には水位検知タンク23が立設しており、水位検知タンク23の下部は蒸気発生容器21の下部に連通接続されている。水位検知タンク23は上面が開口して水を貯える容器として機能するタンク本体24と、水位検知タンク23の上壁部を構成してタンク本体24の上面開口を着脱可能に塞ぐ蓋体25とを備えている。水位検知タンク23の蓋体25の中央部には貫通孔25aが形成されており、水位検知タンク23には貫通孔25aを通すようにして水位センサ26が取り付けられている。
【0030】
水位センサ26は、水位検知タンク23内の水位を検知することで蒸気発生容器21内の水位を検知するものである。水位センサ26は、水位検知タンク23の上壁部25の一部を構成しつつ貫通孔25aを塞ぐように設けた筒形取付部26aと、筒形取付部26aから貫通孔25aを通って水位検知タンク23内に延びるステム26bと、ステム26bに上下動可能に支持したフロート26cとを備えている。ステム26bにはリードスイッチ等の近接スイッチ26dが設けられており、フロート26cの上部には磁石26eが設けられている。水位センサ26は水の浮力により上下動するフロート26cの位置をステム26bの近接スイッチ26dにより検出することで水位検知タンク23内の水位を検知している。
【0031】
なお、この実施形態では、水位センサ26は、2つの近接スイッチ26dを備え、この2つの近接スイッチ26dによって上限水位L1と下限水位L2との2つの水位を検知可能となっている。上限水位L1は蒸気発生容器21内の加熱棒33の発熱部33aと略同じ高さ位置の水位となっており、下限水位L2は蒸気発生容器21内の加熱棒33の発熱部33aの上部の一部が水から露出する高さ位置となっている。
【0032】
図3に示したように、水位検知タンク23の蓋体25には給水部25bが設けられており、給水部25bには水道等の給水源から導出した給水管27が接続されている。給水管27に介装した給水弁29(図5参照)を開放することにより、給水部25bから水位検知タンク23内に水が供給される。この実施形態では、給水部25bは水位検知タンク23の中心部より外側に少し離れた位置に設けられている(図3(b)参照)。
【0033】
水位検知タンク23のタンク本体24の底壁には、蒸気発生容器21と反対側となる側部に排水口24aが形成されており、タンク本体24の蒸気発生容器21と反対側となる側壁と対向する位置に隔壁部24bが形成されている。隔壁部24bはタンク本体24の側壁とともに排水口24aを囲んで水位検知タンク23内の過剰な水位の水を排出する筒形のオーバーフロー部24cを形成している。オーバーフロー部24cの下部には排水管28が接続されており、排水管28の先端には調理庫14内からの排水を受ける排水タンク(図示省略)に接続されている。水位検知タンク23内の過剰な水位の水は隔壁部24bの上縁を超えてオーバーフロー部24c内に流入し、排水管28を通って排水タンクに排出される。
【0034】
図3(b)及び図4に示したように、水位検知タンク23の蓋体25には下面の中央部に下方に延びる筒部25cが形成されている。筒部25cは給水部25bとオーバーフロー部24cとを外側に配置するように水位センサ26を囲んでいる。筒部25cの下端は水位検知タンク23の底壁と離間しており、筒部25cの内側と外側とは水位検知タンク23の下部で連通している。筒部25cの下端位置は水位センサ26により検知される下限水位L2よりも下側となっており、水位センサ26により下限水位L2を検知したときにも、水位検知タンク23は筒部25cの内側と外側が空気が通過しないようになっている。蓋体25には筒部25cより内側位置に連通孔25dが形成されており、連通孔25dは水位検知タンク23内の筒部25cの内側を水位検知タンク23の外側と連通させ、水位検知タンク23内の筒部25cの内側を大気開放状態としている。
【0035】
図2及び図5に示したように、制御装置50は、操作パネル13の裏側に設けられており、液晶タッチパネル13a、スタートボタン13b、ヒータ16、送風ファン17、蒸気発生装置20の加熱ユニット30のコントローラ37、水位センサ26、給水弁29及び温度センサ39に接続されている。制御装置50はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM、タイマ及び入出力インタフェース等(いずれも図示省略)を備えている。
【0036】
制御装置50は、例えば、調理庫14内の食材を加熱調理する調理プログラム等をROMに格納している。この加熱調理器10は、調理プログラム等により、ヒータ16及び送風ファン17を作動させて熱風により調理するホットエアーモードと、送風ファン17及び蒸気発生装置20を作動させて蒸気により調理するスチームモードと、ヒータ16、送風ファン17及び蒸気発生装置20を作動させて蒸気を含んだ熱風により調理するコンビモードと、の3つのモードで食材を加熱調理できるように構成されている。これらの3つのモードは、ユーザが操作パネル13の液晶タッチパネル13aを操作して選択される。
【0037】
例えば、ユーザの操作により液晶タッチパネル13aからコンビモードが選択された情報が入力されると、制御装置50は、調理庫14内に熱風が循環するようにヒータ16と送風ファン17を作動させるとともに、調理庫14内に蒸気が供給されるように蒸気発生装置20を作動させる。これにより、調理庫14内には蒸気と熱風が循環するため、調理庫14内の食材はこの蒸気を含んだ熱風によって加熱調理される。
【0038】
蒸気発生装置20を作動時には、制御装置50は、給水管27から供給される水が給水部25bから水位検知タンク23内に注入されるように給水弁29を開放制御する。これにより水位検知タンク23内に供給された水は蒸気発生容器21内に流入することから、水位検知タンク23内の水が上限水位L1まで供給されたことを水位センサ26の近接スイッチ26dが検出すると制御装置50はそれに基づいて給水弁29を閉止制御する。
【0039】
水位検知タンク23内の水位が上限水位L1に到達している場合には、蒸気発生容器21内の水も同様に上限水位L1になっているため、この状態で制御装置50は、加熱ユニット30の誘導加熱コイル34に高周波電力を供給するように蒸気発生装置20を制御する。具体的には、蒸気発生装置20の加熱ユニット30(コントローラ37)に対して、後述するように定められた所定の周波数でIGBT35a,35bが交互にオンオフするようにスイッチング制御を開始させる制御情報を送出する。これにより、誘導加熱コイル34に高周波電力が供給されることにより生じる電磁誘導によって、加熱棒33には渦電流が流れることから、渦電流が流れる加熱棒33は、当該加熱棒33が有する電気抵抗によりジュール熱が発生して加熱棒33自体が発熱する。
【0040】
このように蒸気発生装置20が制御されることにより、蒸気発生容器21内の水は加熱されて蒸気になることから、蒸気発生容器21内で発生した蒸気は、蒸気発生容器21の上端の開口21aから噴き出して、蒸気導出筒22によって調理庫14内に導かれる。このように水蒸気が発生すると、蒸気発生容器21内の水位は徐々に減少して、やがて加熱棒33の発熱部33aの上端部が水から露出する水位になる。制御装置50は、水位検知タンク23内の水が下限水位L2まで減少したことを水位センサ26の近接スイッチ26dが検出すると制御装置50はそれに基づいて給水弁29を開放制御する。そして、給水管27から供給される水が給水部25bから水位検知タンク23内に注入される。
【0041】
水位検知タンク23に注入された水は蒸気発生容器21内に流入して加熱棒33の発熱部33aと略同じ高さの水位となり、水位センサ26により上限水位L1を検出すると、制御装置50の制御によって給水弁29を閉止制御することで、給水管27から水位検知タンク23内への水の供給が停止される。このように、蒸気発生装置20では、蒸気発生容器21内の水位は水位検知タンク23内の水位センサ26の検知水位に基づいて上限水位L1と下限水位L2の範囲の水位となるように制御装置50により制御されている。
【0042】
また、蒸気発生装置20を作動させているときに、蒸気発生容器21内の水位が上述した上限水位L1と下限水位L2との範囲で正常に制御されているときには、加熱棒33の発熱部33aは蒸気発生容器21内の水(湯)及び発生した蒸気と熱交換されるために過熱状態とならない。蒸気発生容器21内の水位が上限水位L1と下限水位L2との範囲で正常に制御されているときの温度センサ39により検出される温度は100℃~101℃の範囲となっている。つまり、この例では、温度センサ39による検出温度が100℃~101℃を維持し続けるように蒸気発生装置20の加熱ユニット30が制御装置50により制御されている。
【0043】
これに対し、蒸気発生容器21内の水位が正常に制御されずに下限水位L2より低くなると、加熱棒33の発熱部33aは蒸気発生容器21内の水(湯)及び蒸気と十分に熱交換されずに過熱状態となる。過熱状態となった発熱部33aの熱は上側の非発熱部33bに急激に伝わり、非発熱部33bは急激に温度上昇する。この場合には、温度センサ39により例えば104℃以上を検出すると、制御装置50は、誘導加熱コイル34への高周波電力の供給を停止するように加熱ユニット30を制御する。具体的には、蒸気発生装置20の加熱ユニット30(コントローラ37)に対して、IGBT35a,35bのスイッチング制御を停止させる制御情報を送出する。これにより、加熱棒33には渦電流が流れなくなり熱源がなくなるので、蒸気発生容器21内が空焚きの状態となるのを防ぐ。
【0044】
なお、ユーザの操作により液晶タッチパネル13aからスチームモードが選択された情報が入力された場合には、制御装置50は、調理庫14内に蒸気が供給されるように蒸気発生装置20を作動させるとともに、その蒸気が収容空間14b内を循環するように送風ファン17を作動させる。スチームモードにおける蒸気発生装置20や給水管27の制御も、上述したコンビモードの場合における蒸気発生装置20等の制御と概ね同様である。
【0045】
このように制御装置50により行われる蒸気発生装置20の制御は、温度センサ39による検出温度に基づくものであるが、加熱ユニット30のコントローラ37では、例えば、制御装置50から送られてくる制御情報において要求される温度(要求温度)に対して誘導加熱コイル34が出力すべき電力(出力電力)の対応関係を表した情報が予めROMに記憶されている。また、図9(a)に示したように誘導加熱コイル34が出力する電力(出力電力)は、前述したように高周波電力の周波数に依存する。
【0046】
このため、例えば、要求温度が100℃である場合には、コントローラ37では、温度センサ39により検出される加熱棒33の温度が100℃になるために必要となる出力電力を誘導加熱コイル34が出力し得る高周波電力の周波数を決定して誘導加熱回路35に出力する。これにより、IGBT35a,35bはその周波数でスイッチング(駆動)されることから、加熱棒33の温度が100℃になるために必要な高周波電力が誘導加熱コイル34に供給される。なお、このような対応関係を表した情報は、加熱調理器10ごと(個別)に生成する必要はなく、例えば、加熱ユニット30の製造時に一律にコントローラ37のROMに書き込んで記憶させる。
【0047】
ところで、この実施形態では、交流電源90の各相の電圧値や電流値は、電圧センサ38a~38cや電流センサ38d~38fにより検出されてコントローラ37に出力されることから、力率が略1である場合には、交流電源90の電圧値と電流値の積により誘導加熱コイル34に供給される電力が求められる。そのため、例えば、誘導加熱コイル34に供給される電力値に基づいて所望の高周波電力が得られるようにIGBT35a,35bのスイッチ周波数を制御するフィードバック制御(例えばPID制御)系を構成することも可能である。しかし、図9(a)に示したように、高周波電力の周波数に対する誘導加熱コイル34の出力電力は、周波数変化に対して非線形に変化する範囲が多く、また共振周波数fr未満は増加し共振周波数frを超えると減少するというように共振周波数frを中心(境界)に出力電力の増減が反転する。そのため、このようなフィードバック制御はその制御アルゴリズムが複雑になり構成が容易ではない。
【0048】
そこで、この実施形態では、所定のタイミングにおいて、図7に示した電力テーブル生成処理を加熱ユニット30のコントローラ37が実行することによって、誘導加熱コイル34が必要な電力を出力し得る高周波電力の周波数を決定することが可能な電力テーブルを生成することとした。所定のタイミングは、例えば、加熱調理器10の電源投入直後や電源投入後から所定時間ごと、または加熱調理器10がメンテナンスモードに移行した直後やメンテナンスモードから離脱した直後等である。また、メンテナンスモードにおける所定操作時でもよい。なお、以下、高周波電力の周波数のことを駆動周波数という場合がある。
【0049】
図7に示したように、電力テーブル生成処理S100では、まずステップ101により所定の初期化処理が行われた後、駆動周波数設定処理が行われる。初期化処理では、例えば、前述の共振周波数frが20kHzであり、22kHz~35kHz(図9(a)のf3~f4)の周波数範囲で駆動する場合には、駆動周波数の初期値として上限周波数f4の35kHzが設定される。そのため、ステップ102の駆動周波数設定処理では最初の駆動周波数として35kHzが設定されて、次のステップ103により駆動データとしてIGBT35a,35bをその駆動周波数で交互にオンオフ制御可能なデータが誘導加熱回路35に出力される。
【0050】
これにより、誘導加熱コイル34には35kHzの高周波電力が供給されることから、続くステップ104の電力情報取得処理によって、現在、交流電源90から入力されている電圧値や電流値を検出した電圧センサ38a~38cと電流センサ38d~38fから、電圧情報と電流情報を取得する。直列共振回路においては、共振周波数frに近づくほど誘導加熱コイル34に流れる電流や誘導加熱コイル34が出力する電力(出力電力)が増えることから交流電源90から供給される電力も増加する(力率は略1である)。そのため、ここでは電圧センサ38a~38cと電流センサ38d~38fにより得られた電圧情報と電流情報に基づく電圧値と電流値の積(電源電力)に基づいて誘導加熱コイル34の電力値(電力情報)を得る。例えば、このような電圧値と電流値の積により求められる電力値から、IGBT35a,35b等が消費する電力値を減算したものが誘導加熱コイル34の電力値(電力情報)として得られる。IGBT35a,35b等の消費電力が非常に小さい場合には電源電力を誘導加熱コイル34の電力とみなすことができる。この電力情報は次のステップ105の電力情報記憶処理によりコントローラ37のメモリに記憶される。電力情報の記憶は駆動周波数ごとに行われる。
【0051】
このようなステップ104,105による電力情報の取得と記憶は、ノイズや電圧変動等による誤差を低減するため、複数回行われる。そのため、次のステップ106では所定時間を経過したか否かを判定する処理が行われ、所定時間を経過するまで、電流情報(電力情報)の取得(S104)と記憶(S105)が繰り返し行われる(S106;NO)。所定時間は例えば100ミリ秒である。交流電源90が商用電源である場合、その電源周波数が50Hzであるときには電源電圧の波形(以下「電源波形」という)の5周期時間に相当し、また電源周波数が60Hzであるときには電源波形の6周期時間に相当し、いずれも電源波形の1周期時間の整数倍であり、また電源周波数に同期して取得することが可能になるからである。
【0052】
なお、ステップ106により判定する所定時間を交流電源90の電源波形の1周期時間に設定してもよい。例えば、交流電源90の電源周波数が50Hzである場合には20ミリ秒、また電源周波数が60Hzである場合には16.6ミリ秒に所定時間を設定する。これにより、ステップ104,105による電流情報(電力情報)の取得と記憶に要する時間が、1/5(電源周波数が50Hzの場合)や1/6(電源周波数が60Hzの場合)にそれぞれ短縮されることから、本電力テーブル生成処理S100の処理速度を5~6倍に速くすることが可能になる。
【0053】
また、電圧センサ38a~38cからコントローラ37に出力される交流電源90の入力電圧情報に基づいて電源波形の1周期を検知することもできるので、例えば、ステップ106による所定時間の経過判定処理に代えて、電源波形の1周期判定処理を行ってもよい。この場合には、交流電源90の入力電圧情報に基づく入力電圧の増減から、電源波形の1周期分の電圧変化がまだないと判定したときにはステップ104に処理を戻し、電源波形の1周期分の電圧変化があったと判定したときには次のステップ107に処理を移行させる。この場合にも、ステップ104,105による処理時間が1/5(電源周波数が50Hzの場合)や1/6(電源周波数が60Hzの場合)に短縮されるので、本電力テーブル生成処理S100の処理速度を5~6倍に速くすることが可能になる。
【0054】
ステップ106により所定時間が経過したと判定された場合には(S106;YES)、次のステップ107により、予定しているすべての駆動周波数について電力情報の取得(S104)と記憶(S105)が終了しているか否かを判定する処理が行われる。例えば、35kHz、30kHz、28kHz、25kHz、23kHz、22kHzの各駆動周波数について電力情報の取得と記憶を予定している場合にはそれらすべての駆動周波数について前述した各処理(S102~S106)が完了するまでこれらの各処理が繰り返し行われる(S107;NO)。なお、ステップ102の駆動周波数設定処理では、30kHz→28kHz→ …(中略)… →22kHzのように駆動周波数が順次低くなるように設定される。
【0055】
図9(a)に示したように、共振周波数fr及びその近傍周波数(f2~f3)においては駆動周波数の変化に対して誘導加熱コイル34の出力電力の変化量が大きく、共振周波数frから遠ざかるに従って誘導加熱コイル34の出力電力の変化量が小さくなる。そのため、この実施形態では、共振周波数frの20kHzに近づくほど小さな周波数ステップ(1~2kHz)で変化し、また共振周波数frの20kHzから離れて上限周波数や下限周波数に近づくほど大きな周波数ステップ(3~5kHz)で変化するように駆動周波数を設定している。
【0056】
そして、ステップ107により全駆動周波数終了したと判定された場合には(S107;YES)、ステップ108により各駆動周波数における平均電力を算出する処理が行われる。この実施形態では、ステップ105において電力情報が駆動周波数ごとに複数記憶されているため、各駆動周波数についてそれぞれ加算平均(単純平均)を算出して各駆動周波数に1つの値を得る。例えば、電力情報の場合には、35kHzでは3.8kW、30kHzでは8.5kW、28kHzでは11kW、25kHzでは28kW、23kHzでは46kW、22kHzでは50kW等になる。
【0057】
続くステップ109では電力テーブル作成処理が行われる。この処理では、電力情報の取得や記憶が行われていない駆動周波数について電力情報を補間計算する処理も行われる。補間計算では例えば線形補間が行われる。これにより、駆動周波数と出力電力の対応関係を示す電力テーブルが作成される。先の電力情報の例では、共振周波数frである20kHz±1kHzの周波数帯と、駆動周波数34kHz~31kHz、29kHz、27kHz、26kHz、24kHzの情報がない。
【0058】
このため、共振周波数fr前後の周波数(21kHz~19kHz)を除いて補間すると、例えば、35kHz(=f4)では3.8kW(=PL)、34kHzでは4.7kW、33kHzでは5.7kW、32kHzでは6.6kW、31kHzでは7.5kW、30kHzでは8.5kW、29kHzでは10kW、28kHzでは11kW、27kHzでは16kW、26kHzでは23kW、25kHzでは28kW、24kHzでは37kW、23kHzでは46kW、22kHz(=f3)では50kW(=PH)となる電力テーブルが得られる。
【0059】
ステップ109により作成された電力テーブルは、ステップ110によりコントローラ37のメモリに記憶されて、一連の本電力テーブル生成処理S100を終了する。このように作成された電力テーブル(高周波電力の周波数特性情報)は、次に説明する加熱制御処理において使用される。
【0060】
なお、上述した例では、上周波数帯BUにおいて22kHz~35kHzの周波数範囲で駆動する場合において、駆動周波数の初期値として上限周波数f4の35kHzを設定して、駆動周波数を高い方から低い方に変化させて誘導加熱コイル34の電力情報の取得と記憶を行ったが、これとは逆に、駆動周波数の初期値として下限周波数f3の22kHzを設定して、駆動周波数を低い方から高い方に変化させて誘導加熱コイル34の電力情報の取得と記憶を行ってもよい。
【0061】
また、下側周波数帯BLにおいて5kHz~18kHzの周波数範囲で駆動してもよい。この場合、例えば、駆動周波数の初期値として上限周波数f2の18kHzを設定し(S101)、駆動周波数を高い方から低い方に変化させて誘導加熱コイル34の電力情報の取得と記憶を行うように、上述の電力テーブル生成処理S100のアルゴリズムを構成する。例えば、ステップ102の駆動周波数設定処理においては、最初の駆動周波数として18kHzが設定されることにより、18kHz、17kHz、15kHz、12kHz、10kHz、5kHzの各駆動周波数について電力情報が取得されて記憶される(S102~S106)。また、ステップ108の各平均電力算出処理により各駆動周波数における平均電力が、例えば、18kHzでは50kW、17kHzでは46kW、15kHzでは28kW、12kHzでは11kW、10kHzでは8.5kW、5kHzでは3.8kWのように算出される。さらに、ステップ109の電力テーブル作成処理により、電力情報の取得や記憶が行われていない駆動周波数、例えば、16kHz、14kHz、13kHz、11kHz、9kHz~6kHzについて補間計算が行われて、例えば、18kHz(=f2)では50kW(=PH)、17kHzでは46kW、16kHzでは37kW、15kHzでは28kW、14kHzでは23kW、13kHzでは16kW、12kHzでは11kW、11kHzでは10kW、10kHzでは8.5kW、9kHzでは7.5kW、8kHzでは6.6kW、7kHzでは5.7kW、6kHzでは4.7kW、5kHz(=f1)では3.8kW(=PL)となる電力テーブルが得られる。
【0062】
なお、このような下側周波数帯BLにおいても、駆動周波数の初期値として下限周波数f1の5kHzを設定して、駆動周波数を低い方から高い方に変化させて誘導加熱コイル34の電力情報の取得と記憶を行ってもよい。
【0063】
この実施形態では、電力テーブル生成処理S100において、共振周波数frの20kHz±1kHzの周波数帯(図9(a)のf2~f3)については駆動周波数に設定することなく、誘導加熱コイル34の電力情報の取得や記憶を行わなかった。即ち、共振周波数frを中心とした所定周波数帯(図9(a)のf2~f3)は、周波数変化に対して高周波電力が急激に増加したり減少したりする尖鋭な凸形状部分であり、この周波数帯が除外されることによって、周波数変化に対して高周波電力が比較的に安定する周波数帯域の周波数特性情報を電力テーブルとして記憶することになる。
【0064】
なお、このような周波数帯(図9(a)のf2~f3)については、誘導加熱コイル34に非常に大きな電流が流れる可能性がありIGBT35a,35bの故障を招くおそれがあるが、例えば、IGBT35a,35bの仕様や電気的特性により、大電流が流れても当該IGBT35a,35bに故障するおそれがない場合には、共振周波数fr及びその近傍周波数を含む周波数帯についても駆動周波数に設定して、誘導加熱コイル34の電力情報の取得や記憶を行ってもよい。
【0065】
また、この実施形態では、上周波数帯BUの22kHz~35kHzの周波数範囲において誘導加熱回路35を駆動させて電力テーブルを作成した。これにより、下側の周波数帯域BLについては誘導加熱回路35を駆動させることなく誘導加熱コイル34の電力情報を得ることができた。したがって、駆動周波数の全域(例えば、周波数帯域BU,BL)について駆動周波数を設定して誘導加熱コイル34の電力情報の取得や記憶を行う場合に比べて、電力情報を得るための所要時間が略半分に短縮されることから、本電力テーブル生成処理S100の処理速度を約2倍に速くすることが可能になった。
【0066】
また、共振周波数frに近づくほど小さな周波数ステップ(1~2kHz)で変化し、共振周波数frから離れて上限周波数や下限周波数に近づくほど大きな周波数ステップ(3~5kHz)で変化するように駆動周波数を設定した。つまり、誘導加熱コイル34の出力電力特性のカーブが緩やかな範囲は駆動周波数を粗く設定し、また同カーブが急峻な範囲は駆動周波数を密に設定したが、駆動周波数の中心周波数(共振周波数fr)、上限周波数や下限周波数(出力電力特性のカーブ形状)に関係なく、例えば、1kHzごとに均等な周波数間隔で駆動周波数を設定してもよい。これにより、誘導加熱コイル34の電力情報として高精度な情報を取得したり記憶したりすることが可能になった。
【0067】
また、ステップ109の電力テーブル作成処理において、電力情報の取得や記憶が行われていない駆動周波数について補間計算を行いその計算結果である電力値(電力情報)を加えて電力テーブルを作成するようにした。しかし、電力テーブル作成処理ではそのような補間計算を行うことなく、例えば、後述する加熱制御処理S200の電力テーブル参照処理(S205)において、現在必要な出力電力情報に対応する電力情報が電力テーブルに存在しない場合に補間計算を行って、誘導加熱回路35のIGBT35a,35bに供給すべき高周波電力の周波数を求めてもよい。これにより、コントローラ37において電力テーブルを記憶するメモリ領域を小さくすることができる。
【0068】
次に、コントローラ37において行われる電力テーブルに基づく加熱制御処理について説明する。この加熱制御処理は、制御装置50から送出されてコントローラ37に入力される制御情報に基づいて開始される。即ち、誘導加熱回路35のIGBT35a,35bのスイッチング制御を開始する制御情報が制御装置50から送られてきた場合に当該加熱制御処理が起動される。
【0069】
図8に示したように、加熱制御処理S200では、まずステップ201により所定の初期化処理が行われる。この処理では、現在の出力電力情報を初期値(例えば0kW)に設定する。次のステップ202では設定電力情報取得処理が行われる。前述したようにコントローラ37のROMには、制御装置50から送られてくる制御情報において要求される温度(要求温度)に対して誘導加熱コイル34が出力すべき電力(出力電力)の対応関係を表した情報が予め記憶されている。そのため、この処理ではこのような対応関係を表した情報を参照することにより、最新の制御情報に含まれる要求温度の情報に基づいて、現在必要な出力電力情報を得る処理が行われる。
【0070】
続くステップ203では、スイッチング制御を停止するか否かを判定する処理が行われる。最新の制御情報として、スイッチング制御を停止させる制御情報が制御装置50から送られてきた場合には、駆動データの出力を終了した後(S209)、本加熱制御処理S200を終了する(S203;YES)。これに対して、新たな制御情報がまだ届いていない場合や届いた新たな制御情報がスイッチング制御を停止させる制御情報ではない場合には(S203;NO)、次の判定処理(S204)に移行する。
【0071】
ステップ204の判定処理では、出力電力の設定に変更があるか否かを判定する処理が行われる。即ち、現在設定されている出力電力情報とステップ202により取得された現在必要な出力電力情報とを比較して、現在設定されている出力電力情報を変更する必要があるか否かを判定する処理が行われる。例えば、現在設定されている出力電力情報が0kWであり、ステップ202で取得した現在必要な出力電力情報が46kWである場合には、出力電力の設定に変更があるため(S204;YES)、次のステップ205の電力テーブル参照処理を移行する。
【0072】
一方、現在設定されている出力電力情報とステップ202で取得した現在必要な出力電力情報とが同じ(例えば46kW)である場合には、出力電力の設定に変更はないため(S204;NO)、ステップ202に戻って設定電力情報取得処理が行われる。これにより、現在必要な出力電力情報を変更するような要求温度の情報を含む制御情報またはスイッチング制御を停止させる制御情報が制御装置50から新たに届くまで、ステップ202~204が繰り返し行われ、この間においては、誘導加熱回路35のIGBT35a,35bはコントローラ37により同じ周波数でスイッチング制御される。
【0073】
ステップ205の電力テーブル参照処理では、前述の電力テーブル生成処理により作成された電力テーブルを参照する処理が行われる。例えば、前述した電力テーブルの場合には、現在必要な出力電力情報が46kWであるときには、誘導加熱回路35のIGBT35a,35bに供給すべき高周波電力の周波数、つまり駆動周波数は23kHzであることがわかる。そのため、続くステップ206の駆動周波数設定処理により駆動周波数を17kHzまたは23kHzに設定するとともに、その次のステップ207により駆動周波数23kHzに対応した駆動データを誘導加熱回路35のIGBT35a及びIGBT35bに出力する処理を開始する。
【0074】
なお、この実施形態では、このように設定された周波数で誘導加熱回路35のIGBT35a,35bを交互に繰り返しオンオフ制御する処理は別タスクにより行われる。そのため、ステップ206により新たな周波数が設定されたり、ステップ209により駆動データの出力を終了する処理が行われたりするまで、IGBT35a,35bは同じ周波数でオンオフ(スイッチング)制御され続ける。ステップ207により駆動データの出力が開始された後は、ステップ202に戻り再び設定電力情報取得処理が行われる。
【0075】
上記のように構成した加熱調理器10に内蔵される蒸気発生装置20の加熱ユニット30では、コントローラ37により高周波電力の周波数を変化させるように誘導加熱回路35のIGBT35a,35bの駆動周波数を制御する(S102,S103,S107)とともに駆動周波数ごとの高周波電力の情報を電圧センサ38a~38cと電流センサ38d~38fから取得して(S104)、高周波電力の電力テーブル(周波数特性情報)を作成(生成)し(S109)コントローラ37のメモリに記憶するようにした(S110)。そして、この記憶した電力テーブル(周波数特性情報)に基づいて、目標の高周波電力を誘導加熱コイル34が出力し得る駆動周波数を一義的に決定し(S205)、この決定された駆動周波数により誘導加熱回路35を制御するようにした(S206,S207)。
【0076】
つまり、フィードバック制御を行うことなく、誘導加熱コイル34が必要とする出力電力を得るのに適した高周波電力を直接的に選択することが可能になったので、制御アルゴリズムが簡素で、しかも共振周波数が変動した場合にも正常な制御を行うことができた。また、例えば、使用年月の経過に伴う経年変化等により、誘導加熱コイル34やコンデンサ35c,35dを構成する電気材料等に物性変化が生じる場合があっても、そのような物性変化の後に新たな電力テーブル(周波数特性情報)を作成(生成)してコントローラ37のメモリに記憶することによって、誘導加熱コイル34やコンデンサ35c,35dの物性が変化した場合にも正常な制御を行うことができた。さらに、誘導加熱コイル34やコンデンサ35c,35dの電気的な特性に個体差がある場合においても、加熱調理器10ごと(個別)に電力テーブル(周波数特性情報)が作成(生成)されるので、このような誘導加熱コイル34やコンデンサ35c,35dの個体差やその他の電気的な特性に誤差等が生じてもそれらを吸収することができるようになった。
【0077】
上記の加熱調理器10の蒸気発生装置20では、コントローラ37が電力テーブルを作成するように構成した(図7)。またコントローラ37が加熱ユニット30の誘導加熱回路35のIGBT35a,35bをスイッチング制御するように構成した(図8)。本発明はこれに限られるものでなく、制御装置50が、図7に示した電力テーブル生成処理を実行したり、図8に示した加熱制御処理を実行したりしてもよい。つまり、コントローラ37を介することなく、直接、制御装置50が加熱ユニット30の誘導加熱回路35に対してIGBT35a,35bのスイッチング制御を行うように構成してもよい。
【0078】
また、上記の加熱調理器10の蒸気発生装置20では、誘導加熱回路35が備える電圧センサ38a~38cと電流センサ38d~38fにより交流電源90により供給される交流電圧や交流電流を検出してコントローラ37がそれらの電圧情報と電流情報により誘導加熱コイル34の電力情報を算出して用いる構成にしたが、誘導加熱コイル34に流れる高周波電流を検出可能な電流センサを誘導加熱回路35が備える場合にはその電流情報を取得して誘導加熱コイル34の電力情報の代わりに用いて記憶してもよい(S104,S105)。また、誘導加熱コイル34の両端電圧等の電圧情報が誘導加熱コイル34に流れる電流の電流情報と同じように誘導加熱コイル34の電力情報に代えて用いることが可能であり、かつ、誘導加熱回路35や加熱ユニット30がそのような電圧センサを備える場合にはその電圧情報を取得して記憶してもよい(S104,S105)。
【0079】
なお、図6に示したように、蒸気発生装置20の加熱ユニット30は、交流電源90の入力電圧を検出する電圧センサ38a~38cを備え、複数の加熱棒33(被加熱体)と誘導加熱コイル34とが定まった位置関係を維持していることから、主な外乱要因として想定されるものは電源電圧の変動に限られ、例えば、これらの電圧センサ38a等により検出した交流電源90の電圧(電源電圧)に基づいてその変動による影響を抑制することが可能になる。具体的には、図9(b)に示した電源電圧の変動に対する誘導加熱コイル34の出力電力特性から理解できるように、例えば、電源電圧が公称200Vで、駆動周波数が14kHzまたは26kHzである場合においては、その電源電圧が±50V(公称電圧の±25%)変動したとしても、誘導加熱コイル34の出力電力は略線形に変化することが、本願発明者によるコンピュータシミュレーションの結果から判明している。そのため、このような電源電圧の変動に対する誘導加熱コイル34の出力電力の対応関係を表した情報を予め加熱ユニット30のコントローラ37のROMに記憶させる。このような対応関係を表した情報は、加熱調理器10ごと(個別)に生成する必要はなく、例えば、加熱ユニット30の製造時に一律にコントローラ37のROMに書き込んで記憶させる。
【0080】
例えば、図9(a)に示した高周波電力の周波数変動に対する誘導加熱コイル34の出力電力特性のカーブを、交流電源90の電圧変動分に対する誘導加熱コイル34の出力電力の変動だけ出力電力軸(縦軸)の方向に上下させ得るような電源電圧の変動に対する誘導加熱コイル34の出力電力の対応関係を表した情報をコントローラ37のROMに予め記憶させておく。これにより、電源電圧の変動により生じ得る誘導加熱コイル34の出力電力の変動分を補正した出力電力特性のカーブが得られることから、その補正後の特性カーブに基づいて、コントローラ37が目標の高周波電力を誘導加熱コイル34が出力し得る駆動周波数を一義的に決定し(図8のS205)、この決定された駆動周波数により誘導加熱回路35を制御するようにした(図8のS207)。したがって、例えば、エアコン等の起動瞬時における消費電力が非常に大きい電気機械器具が加熱調理器10が接続されている電源ラインに接続されている場合においては、そのような電気機械器具の起動タイミングに電源ラインの瞬低現象が生じても、そのような電源電圧の変動の影響を受けにくくすることができるようになった。
【符号の説明】
【0081】
10…加熱調理器、11…ハウジング、12…扉、13…操作パネル、14…調理庫、15…機械室、20…蒸気発生装置(誘導加熱装置)、21…蒸気発生容器、26…水位センサ、30…加熱ユニット、31…加熱体、33…加熱棒(被加熱体)、34…誘導加熱コイル(コイル)、35…誘導加熱回路(駆動部)、36…整流回路、37…コントローラ(制御部)、38a~38c…電圧センサ(検出部)、38d~38f…電流センサ(検出部)、39…温度センサ、50…制御装置、BL…下側周波数帯(所定周波数帯よりも下側の周波数帯域)、BU…上周波数帯(所定周波数帯よりも上側の周波数帯域)、fr…共振周波数(共振周波数)。
図1
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図9