(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013762
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】消火装置を有する走行用バッテリー装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20220111BHJP
A62C 3/07 20060101ALI20220111BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20220111BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20220111BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
A62C3/07 Z
A62C3/00 E
H01M50/249
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102100
(22)【出願日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】10 2020 117 270.2
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン レーフス
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA37
5H040AS04
5H040AY10
5H040CC59
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消火装置を有する走行用バッテリー装置を提供する。
【解決手段】バッテリーモジュール及び/又はバッテリーセルを収容するための少なくとも1つのバッテリーハウジングを有する少なくとも1つの走行用バッテリーを含み、且つ消火状況で消火プロセスを自動的に実行するための少なくとも1つの消火装置(3)を含む走行用バッテリー装置(1)。消火剤(13)は、少なくとも1つの供給装置を介して、消火装置(3)を用いてバッテリーハウジングに導入され得る。これに関連して、消火装置(3)は、少なくとも1つの消火剤生成装置(5)を有し、この消火剤生成装置(5)は、少なくとも2つの空間的に分離した消火剤成分(23)を、制御された方式で組み合わせ、且つそれらを混合して消火剤(13)を形成するように設計され、且つ供給装置を介してバッテリーハウジングに導入され得る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に電気的に駆動される動力車のための走行用バッテリー装置(1)であって、バッテリーモジュール(21)及び/又はバッテリーセル(31)を収容するための少なくとも1つのバッテリーハウジング(2)を有する少なくとも1つの走行用バッテリー(11)を含み、且つ消火状況で消火プロセスを自動的に実行するための少なくとも1つの消火装置(3)を含み、少なくとも1つの消火剤(13)は、少なくとも1つの供給装置(4)を介して、前記消火装置(3)を用いて前記バッテリーハウジング(2)に導入され得る、走行用バッテリー装置(1)において、
前記消火装置(3)は、少なくとも1つの消火剤生成装置(5)を有し、前記消火剤生成装置(5)は、消火状況の場合、少なくとも2つの空間的に分離した消火剤成分(23)を、制御された方式で組み合わせるのに適しており、及び少なくとも2つの空間的に分離した消火剤成分(23)を、制御された方式で組み合わせ、且つそれらを混合して消火剤(13)を形成するように設計され、前記消火剤(13)は、消火することができ、且つ前記供給装置(4)を介して前記バッテリーハウジング(2)に導入され得ることを特徴とする走行用バッテリー装置(1)。
【請求項2】
消火泡(33)は、前記消火剤成分(23)から生成され得、前記消火剤生成装置(5)は、消火泡(33)を形成するために、前記消火剤成分(23)を組み合わせ且つ混合するのに適しており、及び組み合わせ且つ混合するように設計され、前記供給装置(4)は、泡ダクト(14)及び泡出口ユニット(24)であって、それらを介して前記消火泡(33)が前記バッテリーハウジング(2)に導入され得る、泡ダクト(14)及び泡出口ユニット(24)を含む、請求項1に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項3】
前記消火剤生成装置(5)は、互いに対して且つ外部から封止される少なくとも2つの消火剤成分スペース(25)を有する少なくとも1つの消火タンク(15)を含む、請求項1又は2に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項4】
前記消火剤生成装置(5)は、前記消火剤成分スペース(25)間に少なくとも1つの制御可能な流れ接続部(6)を含む、請求項3に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項5】
前記消火剤生成装置(5)は、前記消火剤成分スペース(25)に対して封止され、且つ前記消火剤成分(23)の選択的な混合のために、制御された方式で前記消火剤成分スペース(25)に接続され得る少なくとも1つの混合スペース(7)を含み、前記混合スペース(7)は、前記供給装置(4)を介して、消火能力がある前記消火剤(13)を放出するために、前記供給装置(4)への流れ接続部を有する、請求項3又は4に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項6】
前記消火剤成分スペース(25)は、少なくとも1つの制御可能な弁装置(16)により、前記混合スペース(7)に流体的にそれぞれ接続され得、前記消火剤成分スペース(25)間の前記流体的接続は、前記混合スペース(7)を介してのみ行われる、請求項5に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項7】
前記混合スペース(7)は、前記消火剤成分(23)を混合するために、選択的な渦を生成するための少なくとも1つのパイプ状混合区域(17)を含む、請求項5又は6に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの制御可能な弁装置(16)は、前記消火剤成分スペース(25)の各々について、前記混合区域(17)の2つの端部に配置される、請求項6又は7に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項9】
前記混合スペース(7)は、前記消火タンク(15)内に配置される、請求項5~8の何れか一項に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項10】
前記混合スペース(7)は、それぞれの場合において、前記消火剤成分スペース(25)の1つの中に部分的に延びる、請求項5~9の何れか一項に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項11】
前記消火剤成分スペース(25)に過剰な圧力がかけられ、前記過剰な圧力により、前記消火剤成分(23)は、前記混合スペース(7)に移され得、且つそこで混合され得、前記過剰な圧力により、消火能力がある前記消火剤(13)は、前記供給装置(4)を介して前記バッテリーハウジング(2)に導入され得る、請求項5~10の何れか一項に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項12】
前記消火剤生成装置(5)は、前記バッテリーハウジング(2)のハウジング壁(12)及び/又はハウジングフレーム(22)に取り付けられる、請求項1~11の何れか一項に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項13】
前記供給装置(4)は、少なくとも1つのハウジング壁(12)及び好ましくは前記バッテリーハウジング(2)のカバー(32)に統合され、前記供給装置(4)は、前記供給装置(4)内に配置される消火剤ダクト、特に泡ダクト(14)及び消火剤出口ユニット、特に泡出口ユニット(24)によって提供される、請求項1~12の何れか一項に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項14】
前記供給装置(4)により、消火能力がある前記消火剤(13)は、前記バッテリーハウジング(2)内の前記バッテリーモジュール(21)及び/又はバッテリーセル(31)間に選択的な方式で導入され得る、請求項1~13の何れか一項に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【請求項15】
前記消火装置(3)は、少なくとも1つの制御装置(8)を含み、前記制御装置(8)は、少なくとも1つのセンサ手段(18)により、前記走行用バッテリー(11)の動作状態を監視するのに適しており、及び監視するように設計され、且つ危険な動作状態が検出される場合、前記消火剤生成装置(5)により、前記消火剤成分(23)を組み合わせるのに適しており、及び組み合わせるように設計され、且つ結果として、自動的に実行される消火プロセスを同時に開始するのに適しており、及び開始するように設計され、前記消火プロセス中、前記消火剤成分(23)は、消火能力がある消火剤(13)を形成するために混合され、及び消火能力がある前記消火剤(13)は、火災に対処するために、前記供給装置(4)を介して前記バッテリーハウジング(2)内に流れる、請求項1~14の何れか一項に記載の走行用バッテリー装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に電気的に駆動される動力車のための走行用バッテリー装置であって、少なくとも1つの走行用バッテリーと、少なくとも1つのバッテリーハウジングと、消火状況で消火プロセスを自動的に実行するための少なくとも1つの消火装置とを有する走行用バッテリー装置に関する。少なくとも1つの消火剤は、少なくとも1つの供給装置を介して、消火装置を用いてバッテリーハウジングに導入され得る。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド車のための走行用バッテリーは、一般的に、特に大きいエネルギー密度を有する。事故又は動作不具合が発生した場合、バッテリーは、過熱し、燃え始めるか又は爆発することさえある。従って、走行用バッテリーに消火活動のための消火装置を装備することが有利である。例えば、そのような消火装置は、(特許文献1)から既知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2012 214 262 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対照的に、本発明の目的は、走行用バッテリーに関して改善された消火方法を利用可能にすることである。特に、解決策は、火災の場合に特に確実に機能することであり、同時に構造的に費用が高くない方法で実装できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する走行用バッテリー装置によって達成される。本発明の好ましい発展形態は、従属請求項の主題である。本発明の更なる利点及び特徴は、本明細書の一般的な記載及び例示的な実施形態の説明から明らかになる。
【0006】
本発明に従った走行用バッテリーは、少なくとも部分的に電気的に駆動される動力車、とりわけ電気自動車及び/又はハイブリッド車のために提供される。走行用バッテリーは、特に高電圧バッテリーである。走行用バッテリー装置は、バッテリーモジュール及び/又はバッテリーセルを収容するための少なくとも1つのバッテリーハウジングを有する少なくとも1つの走行用バッテリーを含む。特に、バッテリーモジュールのそれぞれが複数のバッテリーセルを含む。走行用バッテリーは、消火状況で消火プロセスを自動的に実行するための少なくとも1つの消火装置を含む。少なくとも1つの消火剤は、少なくとも1つの供給装置を介して、この消火装置を用いてバッテリーハウジングに導入され得る。これに関連して、消火装置は、少なくとも1つの消火手段生成装置を含む。消火手段生成装置は、消火状況の場合、少なくとも2つの空間的に分離した消火剤成分を、制御された方式で組み合わせるのに適しており、及び組み合わせるように設計され、且つ消火能力がある消火剤を形成するためにそれらを混合するのに適しており、及び混合するように設計される。次いで、消火剤は、供給装置を介してバッテリーハウジングに導入され得る。特に、消火剤は、消火剤成分が混合されるまで生成されない。
【0007】
本発明の範囲内において、消火状況とは、火災だけでなく、特に走行用バッテリーの過熱及び物質が望ましくない方式で漏れ得る走行用バッテリーの損傷などであると理解される。本発明によれば、バッテリーハウジングへの消火剤の導入とは、特に、バッテリーモジュール及び/又はバッテリーセルのための、バッテリーハウジングによって囲まれた少なくとも1つの収容スペースに消火剤が入ることを意味するものとして理解される。
【0008】
本発明による走行用バッテリー装置は、多数の利点を提供する。空間的に分離した消火剤成分を有する消火剤生成装置により、大きい利点がもたらされる。そのような方法で生成された消火剤は、走行用バッテリーに関する消火活動に特に適している。更に、この消火装置は、とりわけ設置スペースの観点で経済的であり、且つ構造的な観点で費用が高くない方法において、そのような消火剤生成装置を用いて実装することができる。同時に、本発明に従って消火剤を生成する消火装置は、バッテリー火災に対して特に信頼性の高い保護手段を実現可能にする。この保護手段は、比較的長い運用期間にわたってやはり信頼できるものである。
【0009】
1つの特に好ましい有利な構成では、消火剤成分から消火泡を生成することができる。特に、消火泡は、消火剤成分が混合されるまで生成されない。消火剤生成装置は、消火泡を形成するために、消火剤成分を組み合わせ且つ混合するのに適しており、組み合わせ且つ混合するように設計されることが好ましい。供給装置は、泡ダクト及び泡出口ユニットであって、それらを介して消火泡がバッテリーハウジングに導入され得る、泡ダクト及び泡出口ユニットを含むことが好ましい。消火泡を生成することにより、本発明は、特に信頼性の高い消火活動手段を提供する。
【0010】
消火剤生成装置は、少なくとも1つの消火タンクを含むことが好ましい。消火タンクは、互いに対して且つ外部から封止される少なくとも2つの消火剤成分スペースを含むことが好ましい。特に、消火タンクは、提供される各消火剤成分について、少なくとも1つの消火剤成分スペースを含む。
【0011】
特に、消火剤生成装置は、それらの消火剤成分スペース間に少なくとも1つの制御可能な流れ接続部を含む。特に、消火剤成分スペースは、流れ接続部を介して直接的に且つ/又は間接的に供給装置に流体的に接続され得る。特に、流れ接続部は、互いに対して封止される少なくとも2つの消火剤成分スペース間の流れ接続部が、消火剤成分を組み合わせ、且つ特にそれらの成分を更に供給装置に移動させるために開放され得るような方式で制御され得る。
【0012】
1つの特に好ましい有利な発展形態では、消火剤生成装置は、消火剤成分の選択的な混合のための少なくとも1つの混合スペースを含む。混合スペースは、消火剤成分スペースに対して封止されることが好ましい。混合スペースは、(特に制御装置によって)制御された方式で消火剤成分スペースに接続され得ることが好ましい。混合スペースは、流れ接続部を用いて且つ/又は(例えば、少なくとも1つの弁装置を介して)流体的に供給装置に接続され得ることが好ましい。それにより、消火能力がある消火剤は、供給装置を介して放出され得る。特に、混合スペースは、消火能力がある消火剤を放出するための少なくとも1つのラインを有する。特に、このラインは、供給装置への流れ接続部を有する。
【0013】
特に、混合スペースは、別個のスペースを構成する。特に、混合スペースは、消火剤成分スペースから遮断され、以下で説明する弁装置を介してのみ消火剤成分スペースに流体的に接続され得ることが好ましい。特に、消火能力がある消火剤及び好ましくは消火泡が混合スペースで生成される。
【0014】
消火剤成分スペースは、少なくとも1つの制御可能な弁装置により、混合スペースに流体的にそれぞれ接続され得ることが有利であり且つ好ましい。特に、弁装置は、制御装置によって制御され得る。消火剤成分スペース間の流体的接続は、混合スペースを介して、特に好ましくは混合スペースのみを介して行われることも好ましい。従って、消火剤成分を組み合わせて消火プロセスを開始するために必要とされるのは、弁装置を開けることのみであることを確実に保証することができる。弁装置は、特に、消火剤成分間において、上述した制御可能な流れ接続部を提供する。
【0015】
混合スペースは、消火剤成分を混合するために、選択的な渦を生成するための少なくとも1つのパイプ状混合区域を含むことが好ましい。混合区域は、異なる種類の流体混合物を生成するようにも設計され得る。混合区域は、混合パイプとして具現化されるか、又は少なくとも1つのそのようなパイプを含むことが好ましい。これにより、信頼性が高く特に迅速な消火剤の生成がもたらされる。
【0016】
少なくとも1つの制御可能な弁装置は、設けられた(全ての)消火剤成分スペースについて、混合区域の両方の端部にそれぞれ配置される。2つの消火剤成分が混合区域の両方の端部から互いに向かって流れることが好ましい。消火能力がある消火剤を放出するための少なくとも1つのラインが混合区域に沿って配置される。
【0017】
1つの特に好ましい有利な構成では、混合スペースは、消火タンク内に配置される。特に、混合スペースは、消火タンクによって完全に囲まれる。特に、混合スペースは、消火タンク内に同心円状に又は同心的な方式で配置される。特に、消火タンクは、パイプの方式で具現化される。特に、制御可能な流れ接続部及び好ましくは制御可能な弁装置も消火タンク内に配置される。これにより、特にコンパクトであると同時に、外部の影響、例えば予期せぬ事態から特に十分に保護された消火剤生成装置の構成がもたらされる。
【0018】
特に、消火タンクは、パイプによってもたらされるか、又は少なくとも1つのそのようなパイプを含む。パイプは、特に両方の端部において閉じられ、2つの消火剤成分スペースを提供するために少なくとも1つの内部仕切り壁を有する。特に、混合スペースは、少なくとも部分的にこの壁内に配置される。特に、混合スペースは、消火タンクの内部仕切り壁を通して少なくとも特定の区域に延びる少なくとも1つの壁によって囲まれる。
【0019】
特に、混合スペースは、少なくとも部分的に消火剤成分スペースの1つの中に延びる。特に、混合スペースは、それぞれの場合に1つの消火剤成分スペース内にそれぞれの場合に半分だけ延びる。特に、消火剤成分スペースに延びる部分には、それぞれ少なくとも1つの弁装置が割り当てられる。それにより、消火剤成分は、弁装置を介して、それぞれの消火剤成分スペースから、前記弁装置の消火剤成分スペースに延びる混合スペースのその部分内に流れることができる。
【0020】
全ての構成において、消火剤成分スペースに過剰な圧力がかけられることが特に好ましい。消火状況が発生するまで、例えば圧力源を開くことにより、消火剤成分スペースに過剰な圧力を加えないようにすることも可能である。消火剤成分スペースにおける過剰な圧力により、消火剤成分は、前記スペースから混合スペースに移され、且つそこで混合され得ることが好ましい。過剰な圧力により、消火能力がある消火剤は、供給装置を介してバッテリーハウジングに導入れ得ることが好ましい。特に、消火剤成分は、過剰な圧力によって混合区域に沿って供給される。そのような構成は、特に有利である。なぜなら、例えば、故障の影響を受けやすいポンプ又は他の供給システムを省くことが可能であるからである。
【0021】
消火剤生成装置は、ハウジング壁及び/又はバッテリーハウジングのハウジングフレームに取り付けられることも特に有利である。そのようなハウジング壁として、カバーが提供されることが好ましい。特に、消火剤生成装置は、バッテリーハウジングの1つの側面上に取り付けられる。特に、消火剤生成装置の正面側及び/又は長手方向側の配置が提供される。しかしながら、消火剤生成装置をバッテリーハウジングの上側及び/又は下側に配置することも可能である。少なくとも消火タンク及び/又は混合スペースがそのような方法で配置されることが特に好ましい。
【0022】
1つの有利で好ましい発展形態では、供給装置は、少なくとも1つのハウジング壁及び特に好ましくはバッテリーハウジングのカバーに統合されることが好ましい。これに関連して、供給ラインは、特にハウジング壁に配置される消火剤ダクト、特に泡ダクト及び/又は消火剤出口ユニット、特に泡出口ユニットを含む。供給装置は、ハウジング壁に配置されるそのような消火剤ダクト及び消火剤出口ユニット並びに好ましくは泡ダクト及び泡出口ユニットによって提供されることが特に好ましい。底板、及び/又は側壁、及び/又は端部壁もハウジング壁として提供され得る。
【0023】
消火剤生成装置は、供給装置も統合されるそのハウジング壁上に配置されることが好ましい。特に、消火剤生成装置は、カバー上に配置される。供給装置は、このカバーに統合される。供給装置がカバーに統合されながら、消火剤生成装置が、カバーに隣接するハウジング壁に配置されることも可能であり且つ好ましい。
【0024】
特に、供給装置は、少なくとも1つのラインを介して、消火能力がある消火剤を供給され得る。特に、供給装置は、そのラインを介して消火剤生成装置及び好ましくは混合スペースに流体的に接続されるか又は接続され得る。
【0025】
特に、消火剤ダクトは、曲がりくねった方式で具現化される。例えば、ハウジング壁を通してループ状に延びる複数の消火剤ダクトが提供される。他のプロファイルも可能である。これに関連して、消火剤ダクトは、グループにおいて集合ダクトに接続される。消火剤出口ユニットは、特にドリル孔として具現化される。消火剤出口ユニットは、ノズルとして具現化されるか、又はそのようなノズルを含み得る。消火剤ダクト及び/又は消火剤出口ユニットをハウジング壁に形成することが可能である。特に、消火剤出口ユニットは、消火剤ダクトに沿って配置される。例えば、消火剤出口ユニットのそれぞれは、消火剤ダクトを取り囲む壁内の少なくとも1つの貫通孔を含む。
【0026】
特に、消火能力がある消火剤、好ましくは消火泡は、供給装置により、バッテリーモジュール間、及び/又はバッテリーセル間、及び/又はバッテリーハウジング内の他の空洞に選択的に導入され得る。この目的のために、消火剤出口ユニット、好ましくは泡出口ユニットは、特に、バッテリーモジュール及び/又はバッテリーセル間の上、及び/又は下、及び/又は横方向に配置される。更なる消火剤ダクト及び/又は消火剤出口ユニットをバッテリーハウジング内に配置することも可能である。特に、更なる消火剤ダクト及び/又は消火剤出口ユニットは、供給装置への流れ接続部を有する。これにより、例えば特に重要な領域への特に選択的な分配が可能になる。
【0027】
全ての構成において、消火装置は、少なくとも1つの制御装置を含むことが特に好ましい。制御装置は、少なくとも1つのセンサ手段により、走行用バッテリーの動作状態を監視するのに特に適しており、及び監視するように設計され、且つ危険な動作状態が検出される場合、消火剤を生成するために、消火剤生成装置によって消火剤成分を組み合わせるのに適しており、及び組み合わせるように設計される。結果として、制御装置は、同時に、自動的に且つ特に自律的に実行される消火プロセスを開始するのに適しており、且つ開始するように設計されることが好ましい。その消火プロセス中、消火剤成分は、混合されて、消火能力がある消火剤を形成し、及び消火能力がある消火剤は、その後、火災に対処するために、供給ラインを介してバッテリーハウジング内に流れる。例えば、危険な動作状態が検出される場合、制御装置は、消火プロセスを開始するために弁装置のみを開く。そのような構成により、例えば事故による走行用バッテリーの損傷後など、危険な動作状態でも消火装置が信頼性高く機能できるようになる。特に、消火能力がある消火剤を生成すると、バッテリーハウジングへの消火剤の導入もトリガーされる。
【0028】
センサ手段は、例えば、少なくとも1つの温度センサ及び/又は少なくとも1つの圧力センサを含む。特に、走行用バッテリーの温度及び/又は圧力に関する少なくとも1つの特性変数を、センサ手段を用いて検出することができる。危険な動作状態は、特に、特定の温度及び/又は特定の圧力によって定義される。走行用バッテリーの動作状態を監視するための他の適切なセンサも可能である。
【0029】
本発明の更なる利点及び特徴は、添付の図面を参照しながら以下で説明される例示的な実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による走行用バッテリー装置の非常に概略的な図を斜視図で示す。
【
図2】走行用バッテリー装置の詳細の図を斜視図で示す。
【
図3】走行用バッテリー装置の詳細の図を断面正面図で示す。
【
図4】走行用バッテリー装置の詳細の図を断面側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、例えば、電気自動車又はハイブリッド車における高電圧バッテリーとして使用されるような、走行用バッテリー11を有する、本発明による走行用バッテリー装置1を示す。走行用バッテリー11は、バッテリーハウジング2を含む。バッテリーハウジング2は、複数のバッテリーモジュール21のための収容スペースを利用可能にする。バッテリーセル31(ここでは見えない)は、バッテリーモジュール21内に収容される。走行用バッテリー11は、本明細書で示される例では、乗用車のための床下バッテリーとして具現化される。
【0032】
バッテリーハウジング2は、ここでは、複数のハウジング壁12と、横方向に周囲に延びるハウジングフレーム22とを含む。収容スペースを封鎖するために、バッテリーハウジング2は、上部ハウジング壁12(ここでは図示せず)も含む。上部ハウジング壁12は、カバー32として具現化され、
図2に更に詳細に示される。
【0033】
走行用バッテリー装置1は、消火状況、例えば事故による損傷又は過熱が発生した場合、消火プロセスを自動的に実行するための消火装置3を具備する。消火装置3について、
図1及び2を参照しながら、より詳細に説明する。
【0034】
消火装置3を用いて火災に対処するために、消火剤13が使用される。消火剤13は、ここではより詳細に示されないが、消火泡33として具現化される。消火泡33は、カバー32に統合される供給装置4を介してバッテリーハウジング2に導入される。
【0035】
危険な動作状態を検出するために、消火装置3は、ここでは、制御装置8を備える。制御装置8は、センサ手段18を介して走行用バッテリー11の温度及び圧力を継続的に監視する。異常な若しくは危険な動作状態又は走行用バッテリー11の損傷若しくは破壊を伴う衝突状況が検出されると直ちに、制御装置8は、消火プロセスをトリガーする。
【0036】
消火装置3は、消火剤生成装置5を備える。消火剤生成装置5は、消火タンク15内において、見えない方式で配置された2つの消火剤成分23を組み合わせ、それらを混合し、従って消火泡33を生成する。その後、消火泡33は、
図2に示す供給装置4を介してバッテリーハウジング2に選択的に導入される。
【0037】
図2に示すように、供給装置4は、ここでは、バッテリーハウジング2のカバー32に統合される。この目的のために、泡ダクト14として具現化される、複数の曲がりくねった消火剤ダクトがカバーに配置されるか又は形成される。供給装置4は、ここでは、消火剤出口ユニット又は泡出口ユニット24を更に含む。これらは、消火泡33を使用するために設計される。これらを介して、消火泡33は、泡ダクト14を出てバッテリー11内に入る。泡出口ユニット24は、ここでは、泡ダクト14に沿って配置される。それにより、バッテリーモジュール21と、バッテリーハウジング2内の他の空洞との間のスペースに選択的に到達することができる。
【0038】
図1は、消火剤生成装置5がバッテリーハウジング2の端側に消火タンク15を備えて配置される設計を示す。例えば、この目的のために、消火タンク15は、端側のハウジング壁12及び/又はハウジングフレーム22に取り付けられる。
【0039】
図2は、消火装置3が消火タンク15と共にカバー32に取り付けられる設計を示す。そのような設計により、消火剤生成装置5及び供給装置4は、容易に扱うことができる共通の構成要素32に取り付けられ、且つ/又は前記構成要素に統合されるという利点がもたらされる。従って、後付け又は更に保守作業を特に簡単に行うことが可能になる。
【0040】
図3及び
図4は、より詳細に説明される走行用バッテリー装置1の消火剤生成装置5をより詳細に示す。消火剤生成装置5は、ここでは、パイプ状の消火タンク15を有する。消火タンク15は、互いに対して且つ外部から封止される2つの消火剤成分スペース25を有する。それぞれの場合において、消火泡33を生成するための消火剤成分23の1つが消火剤成分スペース25内に配置される。
【0041】
消火剤成分23は、制御装置8によって制御することができる流れ接続部6を介して混合スペース7内で組み合わされる。生成された消火泡33は、次いで、ライン(ここでは見えない)を介して混合スペース7から放出され、供給装置4に供給される。混合スペース7は、ここでは、混合パイプとして具現化され、パイプ状混合区域17を含む。
【0042】
制御可能な流れ接続部6は、ここでは、合計で4つの制御可能な弁装置16によって提供される。これに関連して、それぞれの場合において、混合区域17の両端に配置される2つの弁装置16が各消火剤成分スペース25について設けられる。制御装置8が弁装置16を開くと直ちに、消火剤成分23は、それぞれの消火剤成分スペース25から出て混合スペース7内に流れる。迅速且つ完全に混合するために、混合区域17において、流入する消火剤成分23の選択的な渦が生成される。
【0043】
センサ手段18が例えばバッテリー火災の直前の危険な温度を示した場合、制御装置8は、例えば、噴射機弁として具現化された弁装置16を開く。その後、圧力がかけられる消火剤成分スペース25からの消火剤成分23は、混合スペース7内に流れ、混合区域17に沿って一緒に混合される。それにより、消火泡33が生成される。消火泡33は、カバー32の供給装置4の分配システムを介して走行用バッテリー11全体に選択的に分配される。前記消火泡33は、例えば、個々のバッテリーモジュール21間を流れる。従って、ここでは、弁装置16を開いた後、消火プロセスが自動的且つ自律的に実行される。結果として、ここでは、最良の場合、バッテリー火災を完全に防止することができるか、又は可能な限り早い段階で抑制することができる。従って、衝突事故の場合、火災を防止又は抑制し、それにより、車両の乗員及び他の道路利用者又は他の救助隊員をより適切に保護することも可能である。更に、バッテリー火災を回避することにより、修理費用が低減される。
【符号の説明】
【0044】
1 走行用バッテリー装置
2 バッテリーハウジング
3 消火装置
4 供給装置
5 消火剤生成装置
6 流れ接続部
7 混合スペース
8 制御装置
11 走行用バッテリー
12 ハウジング壁
13 消火剤
14 泡ダクト
15 消火タンク
16 弁装置
17 混合区域
18 センサ手段
21 バッテリーモジュール
22 ハウジングフレーム
23 消火剤成分
24 泡出口ユニット
25 消火剤成分スペース
31 バッテリーセル
32 カバー
33 消火泡