(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137625
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】頭部冷却用キャップ
(51)【国際特許分類】
A42B 1/008 20210101AFI20220914BHJP
A61F 7/10 20060101ALI20220914BHJP
A42B 1/019 20210101ALI20220914BHJP
A42B 1/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A42B1/008 Z
A61F7/10 300R
A42B1/019 L
A42B1/019 Z
A42B1/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037192
(22)【出願日】2021-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】517075849
【氏名又は名称】ジャパンコールドチェーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博一
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA03
4C099EA05
4C099NA09
4C099TA10
(57)【要約】
【課題】
本発明は、化学療法の副作用による脱毛を防止に有用な、頭皮を冷却するための頭部冷却用キャップを提供することを課題とする。また、外部装置を要さない、冷却中も移動が可能な頭部冷却用キャップを提供することを課題とする。
【解決手段】
蓄冷材と、アンダーキャップと、断熱部とを備える頭部冷却用キャップであって、
前記蓄冷材は、前記アンダーキャップと前記断熱部との間に設けられ、
前記アンダーキャップは、前記蓄冷材の冷熱を頭皮表面に伝え、
前記アンダーキャップは、炭素繊維を含む素材で形成される、
頭部冷却用キャップ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄冷材と、アンダーキャップと、断熱部とを備える頭部冷却用キャップであって、
前記蓄冷材は、前記アンダーキャップと前記断熱部との間に設けられ、
前記アンダーキャップは、前記蓄冷材の冷熱を頭皮表面に伝え、
前記アンダーキャップは、炭素繊維を含む素材で形成される、
頭部冷却用キャップ。
【請求項2】
前記アンダーキャップは、熱硬化性を有する素材で形成される、
請求項1に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項3】
前記アンダーキャップの熱伝導率が20W/m・K以上である、
頭部冷却用キャップ。
【請求項4】
前記アンダーキャップは、炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を含む素材で形成される、
請求項1~3の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項5】
前記蓄冷材は、以下の性質を示す、請求項1~4の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ:
300gの蓄冷材2つを、ポリエチレンとアルミニウムを積層してなる、厚さ1mmのミラーマットで、アルミニウム面を内側にして包み、内寸が縦34.5cm、横29.5cm、高さ10cmで、厚さ2.5cmの発泡スチロール製の箱に収納し、さらに、前記発泡スチロールを段ボール箱に収納した状態で、外気温30℃の室内に放置したときに、2つの蓄冷材の間の温度を10時間以上―17.5℃以下に保持することができる。
【請求項6】
前記アンダーキャップは、重量が400g以下である、
請求項1~5の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項7】
前記アンダーキャップは、非変形性である、
請求項1~6の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項8】
前記蓄冷材の重量は、600g以上1500g以下である、
請求項1~7の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項9】
前記蓄冷材は、外装が変形可能なフィルムである、
請求項1~8の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項10】
前記蓄冷材は、前記アンダーキャップの外面側の面積のうち60%以上に接触している、
請求項1~9の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項11】
前記蓄冷材及び前記アンダーキャップと、前記断熱部とは、分解可能に構成されている、
請求項1~10の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項12】
前記蓄冷材と、前記アンダーキャップと、前記断熱部とは、分解可能に構成されている、
請求項1~11の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項13】
前記アンダーキャップの内側に、頭皮とアンダーキャップとの間に空間を設けるためのスペーサーを有する、
請求項1~12の何れか一項に記載の頭皮冷却用キャップ。
【請求項14】
化学療法中の脱毛防止を目的とする、
請求項1~13の何れか一項に記載の頭部冷却用キャップ。
【請求項15】
頭部表面を-15℃~5℃に80~120分維持する冷却工程を含む、化学療法の副作用による脱毛防止方法。
【請求項16】
前記冷却工程は、頭部表面を水でぬらさずに行う、請求項15に記載の脱毛防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん剤治療などの化学療法の副作用による脱毛を防止するための頭部冷却用キャップ、及び脱毛防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗がん剤治療などの化学療法は、正常な細胞にも毒性を示す。その中でも、毛母細胞は特にダメージを受けやすい細胞であり、化学療法の副作用で脱毛してしまうことが問題となっている。
この副作用に対し、頭部を冷却することによって血管を収縮させ、毛母への血流を抑制し、また、代謝活性を低下させることによって、抗がん剤の毛母へのダメージが抑制できることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、患者の頭部上に配置される熱交換キャップと、冷却液を循環させる外部装置とをチャネルシステムによって接続した、頭部冷却装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、高機能蓄冷材を冷熱源とする、化学療法中の脱毛防止を目的とする頭部冷却システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010-517717号公報
【特許文献2】特開2012-167418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような頭部冷却装置では、使用者がチャネルシステムによって冷却液を循環させる外部装置とつながれているため、移動が困難である。また、高額で一般に普及することは難しい。
【0007】
本発明は、化学療法の副作用による脱毛を防止に有用な、頭皮を冷却するための頭部冷却用キャップを提供することを課題とする。また、外部装置を要さない、冷却中も移動が可能な頭部冷却用キャップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、
蓄冷材と、アンダーキャップと、断熱部とを備える頭部冷却用キャップであって、
前記蓄冷材は、前記アンダーキャップと前記断熱部との間に設けられ、
前記アンダーキャップは、前記蓄冷材の冷熱を頭皮表面に伝え、
前記アンダーキャップは、炭素繊維を含む素材で形成される、
頭部冷却用キャップである。
上記構成の頭部冷却用キャップは、頭部を一定時間以上冷却することができる。
【0009】
また、本発明の好ましい形態では、アンダーキャップは、熱硬化性を有する素材で形成される。
アンダーキャップが熱硬化性を有する素材で形成されることにより、製造が容易になる。
【0010】
また、本発明の好ましい形態では、アンダーキャップの熱伝導率が20W/m・K以上である。
アンダーキャップの熱伝導率を上記範囲とすることにより、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
【0011】
また、本発明の好ましい形態では、アンダーキャップは、炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を含む素材で形成される。
アンダーキャップが炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を含む素材で形成されることにより、製造が容易になる。また、高い熱伝導性が得られ、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。また、密度が小さく、薄く加工することができるため、アンダーキャップを軽量化することができる。
【0012】
また、本発明の好ましい形態では、前記蓄冷材は、以下の性質を示す:
300gの蓄冷材2つを、ポリエチレンとアルミニウムを積層してなる、厚さ1mmのミラーマットで、アルミニウム面を内側にして包み、内寸が縦34.5cm、横29.5cm、高さ10cmで、厚さ2.5cmの発泡スチロール製の箱に収納し、さらに、前記発泡スチロールを段ボール箱に収納した状態で、外気温30℃の室内に放置したときに、2つの蓄冷材の間の温度を10時間以上―17.5℃以下に保持することができる。
上記構成の頭部冷却用キャップは、頭部を一定時間以上冷却することができる。
【0013】
また、本発明の好ましい形態では、アンダーキャップは、重量が400g以下である。
アンダーキャップの重量を上記範囲とすることにより、頭部冷却用キャップの使用者の負担を軽減することができる。
【0014】
また、本発明の好ましい形態では、アンダーキャップは、非変形性である。
これにより、凍結していない状態の蓄冷材を、アンダーキャップにフィットするように配置して凍結させることができ、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
【0015】
また、本発明の好ましい形態では、蓄冷材の重量は600g以上1500g以下である。
蓄冷材重量の600g以上とすることで、十分な冷却効果が得られる。また、蓄冷材の重量を1500g以下とすることで、頭部冷却用キャップの使用者の負担を軽減することができる。
【0016】
また、本発明の好ましい形態では、蓄冷材は、ポリエチレン等の樹脂製の外装が変形可能なフィルムである。
外装が変形可能なフィルムであることにより、凍結していない状態の蓄冷材を、アンダーキャップにフィットする形に変形させた状態で凍結させることができ、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
また、ポリエチレン等の樹脂製の非変形性の外装を有する蓄冷材を使用してもよい。
また、変形性の外層を有する蓄冷材と、非変形性の外層を有する蓄冷材を併用してもよい。
【0017】
また、本発明の好ましい形態では、蓄冷材は、前記アンダーキャップの外面側の面積のうち60%以上に接触している。
上記構成とすることにより、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
【0018】
また、本発明の好ましい形態では、蓄冷材及びアンダーキャップと、断熱部とは、分解可能に構成されている。
上記構成とすることにより、断熱部を取り外して蓄冷材を凍結させることができる。また、断熱材を取り外しての清掃が可能になり、頭部冷却用キャップを衛生的に保つことができる。
なお、断熱部を取り外して蓄冷材を凍結させる場合は、蓄冷材の外側に、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持する部材を一体として凍結させることが好ましい。例えば、アンダーキャップより大きい、プラスチック製のキャップ形状の部材を蓄冷材の外側にかぶせることによって、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持することができる。
断熱部を取り外さずに凍結させる場合、断熱部によって蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持してもよい。
【0019】
また、本発明の好ましい形態では、蓄冷材と、アンダーキャップと、断熱部とは、分解可能に構成されている。
上記構成とすることにより、各部品を取り外しての清掃が可能になり、頭部冷却用キャップを衛生的に保つことができる。
【0020】
また、本発明の好ましい形態では、アンダーキャップの内側に、頭皮とアンダーキャップとの間に空間を設けるためのスペーサーを有する。
上記構成とすることにより、アンダーキャップと頭皮が直接接触することを防ぎ、過度な冷却を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明の好ましい形態では、化学療法中の脱毛防止を目的とする。
【0022】
また、本発明は、頭部表面を-15℃~5℃に80分~120分維持する冷却工程を含む、化学療法中の脱毛防止方法に関する。
【0023】
また、本発明の好ましい形態では、冷却工程は、頭部表面を水でぬらさずに行う。
冷却工程を、頭部表面を水でぬらさずに行うことにより、使用者の不快感を軽減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の頭部冷却用キャップによれば、頭部を一定時間以上冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】頭部冷却用キャップを使用した際の頭皮温度を表すグラフを示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0027】
本発明の頭部冷却用キャップは、蓄冷材と、アンダーキャップと、断熱部とを備え、蓄冷材は、アンダーキャップと断熱部との間に設けられる(
図1)。
【0028】
<蓄冷材について>
蓄冷材としては、300gの蓄冷材2つを、ポリエチレンとアルミニウムを積層してなる、厚さ1mmのミラーマットで、アルミニウム面を内側にして包み、内寸が縦34.5cm、横29.5cm、高さ10cmで、厚さ2.5cmの発泡スチロール製の箱に収納し、さらに、前記発泡スチロールを段ボール箱に収納した状態で、外気温30℃の室内に放置したときに、2つの蓄冷材の間の温度を10時間以上―17.5℃以下に保持することができる蓄冷材を用いることが好ましい。
上記構成の頭部冷却用キャップは、頭部を一定時間以上冷却することができる。
【0029】
また、本発明の好ましい形態では、蓄冷材は、外装が変形可能なフィルムである。
外装が変形可能なフィルムであることにより、アンダーキャップにフィットする形に変形させることができ、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
また、ポリエチレン等の樹脂製の非変形性の外装を有する蓄冷材を使用してもよい。
また、変形性の外層を有する蓄冷材と、非変形性の外層を有する蓄冷材を併用してもよい。
【0030】
また、蓄冷材は、アンダーキャップの外面側の面積のうち60%以上に接触していることが好ましい。蓄冷材は、アンダーキャップの外面側の面積のうち、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%以上に接している。
上記構成とすることにより、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
【0031】
蓄冷材の重量は、好ましくは600g以上、より好ましくは700g以上、さらに好ましくは800g以上である。蓄冷材重量の上記範囲とすることで、十分な冷却効果が得られる。
また、蓄冷材の重量は、好ましくは1500g以下、より好ましくは1300g以下、さらに好ましくは1100g以下である。蓄冷材の重量を上記範囲とすることで、頭部冷却用キャップが重くなりすぎず、使用者の負担を軽減することができる。
【0032】
蓄冷材として、例えば、Fujiyama18(ジャパンコールドチェーン株式会社製)、Fujiyama18 Pro(ジャパンコールドチェーン株式会社製)を用いることができる。
【0033】
<アンダーキャップについて>
アンダーキャップは、炭素繊維を含む素材で形成される。
アンダーキャップが炭素繊維を含む素材で形成されることにより、高い熱伝導性が得られ、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
アンダーキャップの炭素繊維の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。また、アンダーキャップの炭素繊維の含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0034】
また、アンダーキャップは、熱硬化性を有する素材で形成されることが好ましい。
アンダーキャップが熱硬化性を有する素材で形成されることにより、製造が容易になる。また、熱硬化性を利用して、頭部形状の型を用いた製造が可能になり、頭部にフィットする形状のアンダーキャップを製造することができる。
【0035】
また、アンダーキャップは、炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を含む素材で形成されることが好ましい。
アンダーキャップが炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を含む素材で形成されることにより、製造が容易になる。また、熱硬化性を利用して、頭部形状の型を用いた製造が可能になり、頭部にフィットする形状のアンダーキャップを製造することができる。また、高い熱伝導性が得られ、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。また、密度が小さく、薄く加工することができるため、アンダーキャップを軽量化することができる。
【0036】
アンダーキャップの熱伝導率は、好ましくは20W/m・K以上である。アンダーキャップの熱伝導率は、より好ましくは50W/m・K以上、100W/m・K以上、150W/m・K以上、200W/m・K以上、250W/m・K以上、300W/m・K以上、350W/m・K以上、400W/m・K以上、である。
アンダーキャップの熱伝導率を上記範囲とすることにより、頭皮表面に冷熱が伝わりやすくなる。
【0037】
また、アンダーキャップの重量は、好ましくは400g以下、より好ましくは200g以下、さらに好ましくは160g以下、最も好ましくは140g以下である。
アンダーキャップの重量を上記範囲とすることにより、頭部冷却用キャップの使用者の負担を軽減することができる。
【0038】
また、アンダーキャップは、非変形性であることが好ましい。
後述する通り、本発明の頭部冷却用キャップは、アンダーキャップと蓄冷材を一体として冷凍して使用することができる。その際に、アンダーキャップが非変形性であることにより、頭部にフィットした形状で、蓄冷材を冷凍することができる。
【0039】
また、アンダーキャップは、使用者の頭皮全体を覆うように形成されることが好ましい。これにより、頭皮全体を冷却することができ、脱毛を防止することができる。
さらに、アンダーキャップは、使用者の眉も覆うように形成されることが好ましい。これにより、眉も冷やすことができ、眉の脱毛も防止することができる。
なお、前髪の生え際と眉毛の間、すなわち額は、脱毛を防止する必要性が低いため、額を冷却しない構造としてもよい。脱毛防止の必要性が低い箇所を冷却しない構造とすることにより、使用者の不快感を軽減することができる。
【0040】
<断熱材について>
断熱材として、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォームグラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、羊毛、炭化コルク、など、一般的なものを用いることができる。特に、ウレタンフォームを用いることが好ましい。
【0041】
<その他の構造について>
蓄冷材及びアンダーキャップと、断熱部とは、分解可能に構成されていることが好ましい。
上記構成とすることにより、断熱部のみを取り外して冷凍することができるため、冷凍庫内の省スペースになる。また、断熱材のみを、通気性の良い場所など、保管に適した場所に保管することもできる。また、断熱材を取り外しての清掃が可能になり、頭部冷却用キャップを衛生的に保つことができる。
なお、断熱部を取り外して蓄冷材を凍結させる場合、蓄冷材の外側に、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持する部材を一体として凍結させることが好ましい。例えば、アンダーキャップより大きい、プラスチック製のキャップ形状の部材を蓄冷材の外側にかぶせることによって、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持することができる。
断熱部を取り外さずに凍結させる場合、断熱部によって蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持してもよい。
【0042】
また、蓄冷材と、アンダーキャップと、断熱部とは、分解可能に構成されていることが好ましい。
上記構成とすることにより、各部品を取り外しての清掃が可能になり、頭部冷却用キャップを衛生的に保つことができる。
【0043】
また、アンダーキャップの内側に、頭皮とアンダーキャップとの間に空間を設けるためのスペーサーを有することが好ましい。スペーサーを有することにより、アンダーキャップと頭皮が直接接触することを防ぎ、過度な冷却を防ぐことができる。
本発明は、蓄冷材と、アンダーキャップと、断熱部とを備える頭部冷却用キャップであって、前記蓄冷材は、前記アンダーキャップと前記断熱部との間に設けられ、前記アンダーキャップは、前記蓄冷材の冷熱を頭皮表面に伝え、前記アンダーキャップは、炭素繊維を含む素材で形成され、前記アンダーキャップの内側に、頭皮とアンダーキャップとの間に空間を設けるためのスペーサーを有する、頭部冷却用キャップでもある。
スペーサーとしては、円柱状のものをアンダーキャップの頭部に対向する面に配置することができる。
スペーサーの厚さの下限は、好ましくは1mm、より好ましくは2mmである。また、スペーサーの厚さの上限は、好ましくは7mm、より好ましくは5mmである。スペーサーが薄すぎると、頭皮とアンダーキャップの間に十分に空間を設けることができない。一方、スペーサーが厚すぎると、頭皮とアンダーキャップの間に空間が空きすぎてしまい、十分な冷却効果が得られない。
また、スペーサーの直径の下限は、好ましくは10mm、より好ましくは15mmである。また、スペーサーの直径の上限は、好ましくは30mm、より好ましくは25mmである。
また、スペーサーの中心に穴が開いているものが好ましい。スペーサーの中心に穴が開いていることにより、冷却を妨げにくくなる。穴の直径は、好ましくはスペーサーの直径の30~70%、より好ましくは40~60%であり、例えば直径15mmのスペーサーに対して穴の直径が4.5~10.5mm、より好ましくは6~9mmとすることができる。
また、スペーサーの素材は特に限定されないが、柔軟性のあるものが好ましい。スペーサーの素材として、スポンジ状の材料、布を、特に好ましく用いることができる。
これらのスペーサーを、前頭部、頂頭部、後頭部、及び両側頭部に設けることが好ましい。それぞれの部分に設けるスペーサーの数は限定されないが、1~3個とすることが好ましい。例えば、前頭部に2個、頂頭部に2個、後頭部に2個、両側頭部に各1個、合計8個程度のスペーサーを用いることが好ましい。このような配置にすることによって、頭皮とアンダーキャップの間に均等に空間を設けることができる。
また、スペーサーの配置や数は、頭部形状によって適宜調整することができる。
また、スペーサーが大きすぎたり、スペーサーの数が多すぎたりすると、かえって冷却の妨げになってしまう。
【0044】
また、アンダーキャップの縁に、緩衝材を有することが好ましい。特に、襟足や耳に接する箇所に緩衝材を有することが好ましい。
緩衝材を有することにより、アンダーキャップの縁が当たることを防止することができ、使用者の不快感を軽減することができる。
緩衝材としては、布やスポンジなどを用いることができる。
【0045】
また、断熱材のさらに外側に、布製のカバーを設けてもよい。カバーとして、ナイトキャップなどを用いることができる。
【0046】
<製造方法について>
アンダーキャップの成形は、型を用いて行うことができる。型として、金属や石膏などの耐熱性を有する材料や、樹脂材料を用いることができる。
頭部冷却用キャップは、使用者の頭部にフィットする形状であることが好ましいため、使用者の頭部の形状の型を製造することが好ましい。型の製造は、通常の方法を用いて行うことができる。
特に、型として熱可塑性樹脂を用いれば、熱を加えて柔らかくした状態で頭部に当てることで型をとり、冷却によって硬化させることで型を製造することができる。熱可塑性樹脂の型を用いたアンダーキャップの製造方法は、オーダーメイドの頭部冷却用キャップを製造する際に、特に好ましく用いることができる。
なお、本発明の製造方法はオーダーメイドによる製造に限定されない。
【0047】
アンダーキャップの素材として、炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を好ましく用いることができる。例えば、シート状の炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を型にあてた後、焼成して硬化させることによって、アンダーキャップが得られる。型として耐熱性を有する材料を用いる場合には、型とアンダーキャップの素材とを一体として焼成し、アンダーキャップの素材が硬化した後に、型を取り外すことができる。型として耐熱性を有しない材料を用いる場合は、アンダーキャップの素材を型から外してから焼成することが好ましい。
また、アンダーキャップを硬化させた後に、不要な部分を削ることが好ましい。
【0048】
次に、凍結していない状態の蓄冷材を、アンダーキャップにフィットするように配置し、粘着材等で固定することで、蓄冷材とアンダーキャップを組み立てることができる。この際、アンダーキャップの使用者の頭部にフィットした形状を維持するため、非変形性のアンダーキャップを用いることが好ましい。
【0049】
また、蓄冷材は、アンダーキャップの外側に、接触面積が大きくなるように配置されることが好ましい。具体的には、アンダーキャップの外面側の面積のうち、60%以上に接していることが好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上に接していることが好ましい。また、アンダーキャップへの接触面積を大きくするため、外装が変形可能なフィルムである蓄冷材を用いることが好ましい。また、蓄冷材として、50~1000mLの扁平な、矩形状又は円状の蓄冷材を用いることが好ましい。扁平な蓄冷材を用いることにより、アンダーキャップへの接触面積を大きくしやすくなる。
【0050】
また、アンダーキャップと蓄冷材とを分解可能に構成することが好ましい。
【0051】
蓄冷材のさらに外側に、断熱材を取り付けることができる。
断熱材は、アンダーキャップ及び蓄冷材と分解可能に構成することが好ましい。
【0052】
また、アンダーキャップの内側に、スペーサーを設けることができる。
スペーサーは、製造時に設けることができる他、使用時に使用者の頭部形状に合わせて設けることもできる。
【0053】
<使用方法について>
まず、使用前に、アンダーキャップと蓄冷材とを一体として冷凍庫に保管し、蓄冷材を凍結させる。これにより、アンダーキャップにフィットした形状で蓄冷材を凍結させることできる。
この際、断熱材も一体として冷凍庫に保管してもよいし、断熱材を取り外して、断熱材以外の部分のみを冷凍庫に保管してもよい。
断熱部を取り外して蓄冷材を凍結させる場合、蓄冷材の外側に、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持する部材を一体として凍結させることが好ましい。例えば、アンダーキャップより大きい、プラスチック製のキャップ形状の部材を蓄冷材の外側にかぶせることによって、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持することができる。
断熱部を取り外さずに凍結させる場合、断熱部によって蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持してもよい。
冷却温度、及び冷却時間は、蓄冷材の性能により、適宜調整する。
【0054】
頭部冷却用キャップは、冷凍庫から取り出してすぐに使用することが好ましい。これにより、十分な頭部冷却効果が得られる。
【0055】
ここで、化学療法による脱毛を防止するためには、頭皮表面の温度を5℃以下にすることが好ましい。本発明の頭部冷却用キャップは、装着してから約10分以内に頭皮表面の温度を5℃以下にすることができる。抗がん剤は投与から約15分で効き始めるため、頭部冷却用キャップは、抗がん剤等の投与の直前から装着することが好ましい。
また、抗がん剤等の投与から80分間以上は頭皮表面の温度を5℃以下に保つ必要がある。よって、抗がん剤等の投与から80分間以上装着することが好ましい。より好ましくは、抗がん剤の投与から100分間以上、さらに好ましくは120分以上装着することが好ましい。
また、過度の冷却を避ける観点から、頭皮表面の温度は-15℃以上であることが好ましい。
【0056】
また、冷却工程は、髪をぬらさずに行うことが好ましい。髪をぬらして冷却工程を行うと、使用者の体感温度が下がり、不快感がある。本発明の頭部冷却用キャップは、頭部表面を水でぬらさずに冷却工程を行っても、十分に脱毛防止効果が得られる。
【0057】
使用後は、アンダーキャップの内側を拭くなどの清掃を行うことにより、頭部冷却用キャップを衛生的に保つことができる。断熱材を分解可能に構成すれば、断熱材を別途洗濯することができる。
【0058】
また、頭部冷却用キャップは、蓄冷材を凍結可能な冷凍庫に保管することが好ましい。
断熱材を分解可能に構成する場合は、断熱材を取り外して冷凍庫に保管し、断熱材は通気性の良い場所など、保管に適した場所に保管することもできる。
断熱部を取り外して蓄冷材を冷凍庫に保管する場合、蓄冷材の外側に、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持する部材を一体として凍結させることが好ましい。例えば、アンダーキャップより大きい、プラスチック製のキャップ形状の部材を蓄冷材の外側にかぶせることによって、蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持することができる。
断熱部を取り外さずに冷凍庫に保管する場合、断熱部によって蓄冷材の形状をアンダーキャップにフィットするように保持してもよい。
【実施例0059】
<製造方法について>
熱可塑性樹脂を用いて使用者の頭部の型取りを行った。次に、得られた型に、炭素繊維を含む熱硬化性樹脂をはりつけた。次に、型を外して炭素繊維を含む熱硬化性樹脂を焼成して硬化させた。最後に、不要な部分を削り、アンダーキャップを製造した。
【0060】
次に、凍結していない状態の蓄冷材を、アンダーキャップにフィットするように配置し、テープで固定し、蓄冷材とアンダーキャップを組み立てた。この時、多角形の300gの蓄冷材1個をアンダーキャップの頭頂部に当たる部分に配置し、その周りに台形の100gの蓄冷剤6個を配置した。蓄冷材が、アンダーキャップの外面側の面積のうち60%以上に接するようにした。
【0061】
蓄冷材として、Fujiyama18(ジャパンコールドチェーン株式会社製)を用いた。Fujiyama18は、100gの蓄冷材2つを、ポリエチレンとアルミニウムを積層してなる、厚さ1mmのミラーマットで、アルミニウム面を内側にして包み、内寸が縦34.5cm、横29.5cm、高さ10cmで、厚さ2.5cmの発泡スチロール製の箱に収納し、さらに、前記発泡スチロールを段ボール箱に収納した状態で、外気温30℃の室内に放置したときに、2つの蓄冷材の間の温度を10時間以上―17.5℃以下に保持することができる蓄冷材である。
また、Fujiyama18の外装は変形可能なフィルムである。
【0062】
次に、ウレタンフォームを含む断熱材を、蓄冷材の外側を覆うようにかぶせた。
【0063】
最後に、アンダーキャップの内側に、スペーサーをつけた。
スペーサーとして、厚さ約5mm、直径約15mmで、中央に直径約8mmの穴が開いたスポンジ状のものを用いた。前頭部に2個、頂頭部に2個、後頭部に2個、両側頭部に各1個、合計8個のスペーサーを設けた。
【0064】
<使用方法について>
まず、使用前に、頭部冷却用キャップを冷凍庫に24時間保管し、蓄冷材を凍結させた。冷凍庫として、-18℃~-25℃に温度を保つことができる一般的な冷凍庫を用いた。
【0065】
次に、頭部冷却用キャップを、冷凍庫から取り出してすぐに使用者の頭に装着した。装着時からの左前頭部、左後頭部、右前頭部、後頭部の4か所で温度モニターによって、温度を測定した。結果を
図2に示す。
装着時から5分以内で5℃を下回り、その後、装着から120分後まで5℃以下を維持していることが分かる。