(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137642
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】多孔質体含有パイプ、および、多孔質体含有パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 7/08 20060101AFI20220914BHJP
C22C 1/08 20060101ALI20220914BHJP
B22F 3/11 20060101ALI20220914BHJP
F28F 1/10 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B22F7/08 E
C22C1/08 F
B22F3/11 C
F28F1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037224
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】幸 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 文雄
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018BA08
4K018BB02
4K018JA29
4K018KA22
4K018KA23
(57)【要約】
【課題】熱交換性能およびフィルター性能が十分に高く、かつ、内部を流通する流体の圧力損失を低く抑えることが可能な多孔質体含有パイプ、および、この多孔質体含有パイプの製造方法を提供する。
【解決手段】パイプ体11と、パイプ体11の内部に配設された多孔質焼結体20と、を備えており、複数の多孔質焼結体20がパイプ体11の延在方向に間隔を開けて配設され、多孔質焼結体20と、多孔質焼結体20が配設されていない空間部15とが、パイプ体11の延在方向に交互に配設されており、パイプ体11と多孔質焼結体20とが焼結結合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ体と、前記パイプ体の内部に配設された多孔質焼結体と、を備えており、
複数の前記多孔質焼結体が前記パイプ体の延在方向に間隔を開けて配設され、前記多孔質焼結体と、前記多孔質焼結体が配設されていない空間部とが、前記パイプ体の延在方向に交互に配設されており、
前記パイプ体と前記多孔質焼結体とが焼結結合されていることを特徴とする多孔質体含有パイプ。
【請求項2】
前記パイプ体と前記多孔質焼結体との結合部には、焼結助剤が存在することを特徴とする請求項1に記載の多孔質体含有パイプ。
【請求項3】
前記パイプ体および前記多孔質焼結体は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多孔質体含有パイプ。
【請求項4】
前記パイプ体と前記多孔質焼結体との結合部には、焼結助剤となるマグネシウム又は亜鉛が存在することを特徴とする請求項3に記載の多孔質体含有パイプ。
【請求項5】
前記多孔質焼結体は、アルミニウム繊維の焼結体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多孔質体含有パイプ。
【請求項6】
前記空間部の内周面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多孔質体含有パイプ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の多孔質体含有パイプを製造する多孔質体含有パイプの製造方法であって、
前記パイプ体の内部に、前記多孔質焼結体となる焼結原料および焼結助剤を充填するとともに、前記空間部となる領域に水溶性の塩と焼結助剤との混合物を充填する充填工程と、
焼結原料を焼結して前記多孔質焼結体を成形するとともに、前記多孔質焼結体と前記パイプ体とを焼結結合する焼結工程と、
前記焼結工程後に、前記パイプ体の内部に水を流通し、前記塩を前記パイプ体の外部に排出する洗浄工程と、
を備えていることを特徴とする多孔質体含有パイプの製造方法。
【請求項8】
前記混合物における焼結助剤の含有量が0.5mass%以上であることを特徴とする請求項7に記載の多孔質体含有パイプの製造方法。
【請求項9】
前記塩が塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の多孔質体含有パイプの製造方法。
【請求項10】
前記パイプ体および前記多孔質焼結体は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の多孔質体含有パイプの製造方法。
【請求項11】
前記焼結助剤がマグネシウム又は亜鉛であることを特徴とする請求項10に記載の多孔質体含有パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ体と、このパイプ体の内部に配設された多孔質焼結体と、を備えた多孔質体含有パイプ、および、この多孔質体含有パイプの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属からなる多孔質焼結体は、高比表面積・高開気孔率を有することから、フィルターや電極集合体、消音部材、熱交換器用部材などに利用されている。
例えば、特許文献1においては、金属管に三次元に連続してつながりがある金属多孔質体を充填した地中熱交換パイプが開示されている。
また、特許文献2においては、金属多孔質体を、ディーゼルエンジンの排気ガス中の煤を除去するためのフィルター材、あるいは、焼却炉および火力発電所の燃焼ガス等の集塵機用フィルター等として使用することが開示されている。
【0003】
ここで、特許文献3には、アルミニウム繊維を焼結する際に焼結助剤としてMgを用いることにより、気孔率が高く十分な強度を有する多孔質アルミニウム焼結体を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-095529号公報
【特許文献2】特開2004-300526号公報
【特許文献3】特開2016-194117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1,2に示すように、パイプの内部に金属多孔質体を挿入した構造の熱交換器およびフィルターにおいては、パイプの内部を流通する流体の圧力損失を低くすることが求められている。
一般的に、圧力損失を低減させるためには、金属多孔質体の気孔率を大きくする必要がある。しかしながら、気孔率を大きくすると、気孔の開口径が大きくなり、熱交換性能およびフィルター性能が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、熱交換性能およびフィルター性能が十分に高く、かつ、内部を流通する流体の圧力損失を低く抑えることが可能な多孔質体含有パイプ、および、この多孔質体含有パイプの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の多孔質体含有パイプは、パイプ体と、前記パイプ体の内部に配設された多孔質焼結体と、を備えており、複数の前記多孔質焼結体が前記パイプ体の延在方向に間隔を開けて配設され、前記多孔質焼結体と、前記多孔質焼結体が配設されていない空間部とが前記パイプ体の延在方向に交互に配設されており、前記パイプ体と前記多孔質焼結体とが焼結結合されていることを特徴としている。
【0008】
この構成の多孔質体含有パイプによれば、複数の前記多孔質焼結体が、前記パイプ体の延在方向に間隔を開けて配設され、前記多孔質焼結体と、前記多孔質焼結体が配設されていない空間部とが、前記パイプ体の延在方向に交互に配設されているので、パイプ体の内部を流通する流体の圧力損失を低減することができる。
さらに、多孔質焼結体とパイプ体とが焼結結合されているので、多孔質焼結体を、間隔を開けて間欠的に配置した場合であっても、多孔質焼結体を所定の位置に強固に固定することが可能となる。
【0009】
ここで、本発明の多孔質体含有パイプにおいては、前記パイプ体と前記多孔質焼結体との結合部には、焼結助剤が存在することが好ましい。
この場合、パイプ体と多孔質焼結体とを焼結結合する際に、焼結助剤によって焼結が促進され、パイプ体と多孔質焼結体とが強固に結合されており、多孔質焼結体を所定の位置にさらに強固に固定することが可能となる。
【0010】
また、本発明の多孔質体含有パイプにおいては、前記パイプ体および前記多孔質焼結体は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていることが好ましい。
この場合、前記パイプ体および前記多孔質焼結体は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されているので、軽量であり、かつ、熱伝導性に優れており、熱交換器として特に適している。
【0011】
さらに、本発明の多孔質体含有パイプにおいては、前記パイプ体と前記多孔質焼結体との結合部には、焼結助剤となるマグネシウム又は亜鉛が存在することが好ましい。
前記パイプ体および前記多孔質焼結体は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている場合には、焼結助剤としてマグネシウム又は亜鉛を用いることにより、焼結が促進され、パイプ体と多孔質焼結体とが強固に結合されており、多孔質焼結体を所定の位置にさらに強固に固定することが可能となる。
【0012】
また、本発明の多孔質体含有パイプにおいては、前記多孔質焼結体は、アルミニウム繊維の焼結体であることが好ましい。
この場合、多孔質焼結体がアルミニウム繊維の焼結体とされているので、十分な気孔率を有しており、圧力損失をさらに低減することができる。
【0013】
さらに、本発明の多孔質体含有パイプにおいては、前記空間部の内周面に凹凸が形成されていることが好ましい。
この場合、前記パイプ体の空間部の内周面に凹凸が形成されているので、内部を流通する流体が乱流状態となり、熱交換性能およびフィルター性能をさらに向上させることが可能となる。
【0014】
本発明の多孔質体含有パイプの製造方法は、上述の多孔質体含有パイプを製造する多孔質体含有パイプの製造方法であって、前記パイプ体の内部に、前記多孔質焼結体となる焼結原料および焼結助剤を充填するとともに、前記空間部となる領域に水溶性の塩と焼結助剤との混合物を充填する充填工程と、焼結原料を焼結して前記多孔質焼結体を成形するとともに、前記多孔質焼結体と前記パイプ体とを焼結結合する焼結工程と、前記焼結工程後に、前記パイプ体の内部に水を流通し、前記塩を前記パイプ体の外部に排出する洗浄工程と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
この構成の多孔質体含有パイプの製造方法によれば、焼結原料および焼結助剤を充填するとともに、前記空間部となる領域に水溶性の塩と焼結助剤との混合物を充填し、これを焼結した後、前記パイプ体の内部に水を流通し、前記塩を前記パイプ体の外部に排出する構成とされているので、焼結工程において、前記パイプ体の延在方向の所定の位置で、多孔質焼結体を成形するとともに、この多孔質焼結体と前記パイプ体とを焼結結合することができる。
また、空間部となる領域に水溶性の塩を充填し、焼結工程後に洗浄することで塩を排出しているので、多孔質焼結体の間に空間部を確実に形成することができる。
そして、空間部となる領域に水溶性の塩と焼結助剤とを充填しているので、焼結工程において、焼結原料とともに充填した焼結助剤が、塩に吸着されることを抑制でき、焼結助剤を十分に作用させることで、焼結原料の焼結が促進され、高強度の多孔質焼結体を成形することができるとともに、多孔質焼結体と前記パイプ体とを強固に焼結結合することができる。
【0016】
ここで、本発明の多孔質体含有パイプの製造方法においては、前記混合物における焼結助剤の含有量が0.5mass%以上であることが好ましい。
この場合、前記混合物における焼結助剤の含有量が0.5mass%以上とされているので、焼結原料とともに充填した焼結助剤が、塩に吸着されることをさらに抑制でき、焼結助剤をさらに十分に作用させることができる。
【0017】
また、本発明の多孔質体含有パイプの製造方法においては、前記塩が塩化ナトリウムであることが好ましい。
この場合、塩が塩化ナトリウムで構成されているので、洗浄工程において、洗浄水によってパイプ体の外部へと容易に排出することができる。また、塩化ナトリウムは安価であるため、上述の多孔質体含有パイプを低コストで製造することができる。
【0018】
また、本発明の多孔質体含有パイプの製造方法においては、前記パイプ体および前記多孔質焼結体は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていることが好ましい。
この場合、前記パイプ体および前記多孔質焼結体が焼結性に優れたアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されているので、高強度の多孔質焼結体を成形することができるとともに、多孔質焼結体と前記パイプ体とを強固に焼結結合することができる。
【0019】
また、本発明の多孔質体含有パイプの製造方法においては、前記焼結助剤がマグネシウム又は亜鉛であることが好ましい。
この場合、前記パイプ体および前記多孔質焼結体は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、前記焼結助剤がマグネシウム又は亜鉛とされているので、焼結原料の焼結が促進され、高強度の多孔質焼結体を成形することができるとともに、多孔質焼結体と前記パイプ体とを強固に焼結結合することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱交換性能およびフィルター性能が十分に高く、かつ、内部を流通する流体の圧力損失を低く抑えることが可能な多孔質体含有パイプ、および、この多孔質体含有パイプの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態である多孔質体含有パイプの概略説明図である。
【
図2】本発明の実施形態である多孔質体含有パイプに備えられた多孔質焼結体の概略説明図である。
【
図3】本発明の実施形態である本実施形態である多孔質体含有パイプを切断した状態の観察写真である。
【
図4】本発明の実施形態である多孔質体含有パイプの製造方法を示すフロー図である。
【
図5】本発明の実施形態である多孔質体含有パイプの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態である多孔質体含有パイプ、および、多孔質体含有パイプの製造方法について、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である多孔質体含有パイプ10は、例えば、熱交換器およびフィルター部材として用いられるものである。
【0023】
図1に示すように、本実施形態である多孔質体含有パイプ10は、パイプ体11と、このパイプ体11の内部に配設された多孔質焼結体20と、を備えた構造とされている。
本実施形態では、
図1に示すように、複数の多孔質焼結体20が、パイプ体11の延在方向に間隔を開けて配設され、多孔質焼結体20と、多孔質焼結体20が配設されていない空間部15とが、パイプ体11の延在方向に交互に配設された構造とされている。すなわち、パイプ体11の延在方向に、複数の多孔質焼結体20が間欠的に配置されている。
【0024】
そして、本実施形態である多孔質体含有パイプ10においては、パイプ体11と多孔質焼結体20とが焼結結合されている。
ここで、本実施形態においては、パイプ体11と多孔質焼結体20との結合部には、焼結助剤が存在することが好ましい。なお、この焼結助剤は、多孔質焼結体20を焼結する際に用いられるものである。
本実施形態では、パイプ体11および多孔質焼結体20は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されており、焼結助剤としてマグネシウム又は亜鉛が用いられる。
【0025】
多孔質焼結体20は、
図2に示すように、複数のアルミニウム基材21が焼結されて一体化されたものである。本実施形態では、アルミニウム基材21としてアルミニウム繊維を用いている。このアルミニウム繊維は、直径Rが0.02mm以上1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上2500以下の範囲内とされていることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、多孔質焼結体20の気孔率Pが65%以上90%以下の範囲内に設定されたものであることが好ましい。
多孔質焼結体20の気孔率P(見掛気孔率)は、多孔質焼結体の質量m(g)、体積V(cm3)、アルミニウム基材21の真密度d(g/cm3)を測定し、以下の式により算出できる。なお、真密度d(g/cm3)は、精密天秤を用いて、水中法によって測定できる。
気孔率P(%)=(1-(m÷(V×d)))×100
【0027】
また、本実施形態においては、パイプ体11のうち多孔質焼結体20が配設されていない空間部15の内周面には、凹凸が形成されていることが好ましい。
図3は、本実施形態である多孔質体含有パイプ10を空間部15の部分で切断したものの観察写真である。この
図3に示すように、空間部15の内周面は、平滑面ではなく、凹凸が形成されていることが確認される。
【0028】
次に、本実施形態である多孔質体含有パイプ10の製造方法について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0029】
(充填工程S01)
まず、
図5に示すように、パイプ体11を準備し、このパイプ体11の一方の端開口部(
図5において下端開口部)にカーボン製のスペーサ40を配置する。そして、パイプ体11の他方の開口部(
図5において上端開口部)から、パイプ体11の内部に、多孔質焼結体20となる焼結原料31を焼結助剤とともに充填し、空間部15となる領域に水溶性の塩と焼結助剤との混合物35を充填する。
【0030】
本実施形態では、焼結原料31はアルミニウム繊維とされており、焼結原料31とともに充填される焼結助剤としてマグネシウムを用いている。
なお、焼結助剤となるマグネシウムの含有量は、焼結原料31および焼結助剤の合計量を100mass%として0.5mass%以上15mass%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、混合物35を構成する水溶性の塩として、塩化ナトリウムを用いており、混合物35を構成する焼結助剤はマグネシウムとなる。ここで、塩と焼結助剤は、均一に混合したものであってもよいし、塩と焼結助剤とを層状に積層したものであってもよい。
ここで、混合物35における焼結助剤(マグネシウム)の含有量は、混合物35を100mass%として5mass%以上とすることが好ましい。なお、上限に特に制限はないが20mass%以下とすることが好ましい。
また、混合物35における焼結助剤(マグネシウム)の含有量は、焼結原料31とともに充填されている焼結助剤と同等量以上とすることが好ましい。
【0032】
(焼結工程S02)
次に、焼結原料31および混合物35を充填した状態で焼結を行う。この焼結工程S02により、焼結原料31であるアルミニウム繊維同士が結合して多孔質焼結体20が成形されるとともに、この多孔質焼結体20とパイプ体11とが焼結結合することになる。
ここで、焼結温度は565℃以上655℃以下の範囲内、焼結温度での保持時間は0.5時間以上2時間以下の範囲内、雰囲気はアルゴン雰囲気とすることが好ましい。
【0033】
この焼結工程S02においては、混合物35に焼結助剤であるマグネシウムが混合されていることにより、加熱した際に、焼結原料31とともに充填した焼結助剤(マグネシウム)が混合物35の塩に吸着されることが抑制され、焼結助剤であるマグネシウムにより、焼結原料31であるアルミニウム繊維同士、および、多孔質焼結体20とパイプ体11の内面との焼結が促進されることになる。
また、空間部15となる領域に配置された焼結助剤がパイプ体11の内面と反応することで、空間部15の内周面に凹凸が形成されることになる。
【0034】
(洗浄工程S03)
次に、焼結工程S02の後に、カーボン製のスペーサ40を除去し、パイプ体11の内部に洗浄水を流通させることにより、混合物35を構成する水溶性の塩(本実施形態では塩化ナトリウム)を洗浄水に溶解し、パイプ体11の外部へと排出する。
【0035】
上述の工程により、パイプ体11の延在方向に複数の多孔質焼結体20が間欠的に配置され、本実施形態である多孔質体含有パイプ10が製造される。
【0036】
以上のような構成とされた本実施形態である多孔質体含有パイプ10によれば、複数の多孔質焼結体20が、パイプ体11の延在方向に間隔を開けて配設され、多孔質焼結体20と、多孔質焼結体20が配設されていない空間部15とが、パイプ体11の延在方向に交互に配設されているので、パイプ体11の内部を流通する流体の圧力損失を低減することができる。
そして、多孔質焼結体20とパイプ体11とが焼結結合されているので、多孔質焼結体20を間隔を開けて間欠的に配置した場合であっても、多孔質焼結体20を所定の位置で強固に固定することが可能となる。
【0037】
本実施形態において、パイプ体11と多孔質焼結体20との結合部に焼結助剤が存在する場合には、パイプ体11と多孔質焼結体20とを焼結結合する際に、焼結助剤によって焼結が促進され、パイプ体11と多孔質焼結体20とが強固に結合されており、多孔質焼結体20をさらに強固に固定することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態において、パイプ体11および多孔質焼結体20がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている場合には、軽量であり、かつ、熱伝導性に優れており、熱交換器として特に適している。また、アルミニウム又はアルミニウム合金は、比較的焼結性に優れていることから、高強度の多孔質焼結体20を成形できるとともに、パイプ体11と多孔質焼結体20とを強固に結合することができる。
【0039】
さらに、本実施形態において、パイプ体11および多孔質焼結体20がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されており、パイプ体11と多孔質焼結体20との結合部に、焼結助剤となるマグネシウム又は亜鉛が存在する場合には、焼結助剤となるマグネシウム又は亜鉛によって焼結が確実に促進され、パイプ体11と多孔質焼結体20とが強固に結合されており、多孔質焼結体20をさらに強固に固定することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態において、多孔質焼結体20がアルミニウム繊維の焼結体である場合には、多孔質焼結体20が十分な気孔率を有しており、圧力損失をさらに低減することができる。
【0041】
さらに、本実施形態において、空間部15の内周面に凹凸が形成されている場合には、この凹凸により、内部を流通する流体が乱流状態となり、熱交換性能およびフィルター性能をさらに向上させることが可能となる。
【0042】
本実施形態である多孔質体含有パイプの製造方法によれば、焼結原料31および焼結助剤を充填するとともに、空間部15となる領域に水溶性の塩と焼結助剤との混合物35を充填し、これを焼結した後、パイプ体11の内部に水を流通し、水溶性の塩をパイプ体11の外部に排出する構成とされているので、焼結工程S02において、パイプ体11の延在方向の所定の位置で、多孔質焼結体20を成形するとともに、この多孔質焼結体20とパイプ体11とを焼結結合することができる。
【0043】
また、空間部15となる領域に水溶性の塩を充填し、焼結工程後に洗浄水を流通することで塩を排出しているので、複数の多孔質焼結体20の間に空間部15を確実に形成することができる。
そして、空間部15となる領域に水溶性の塩と焼結助剤との混合物35を充填しているので、焼結工程S02において、焼結原料31とともに充填した焼結助剤が、空間部15に充填した塩に吸着されることを抑制でき、焼結原料31とともに充填した焼結助剤を十分に作用させることで、焼結原料31の焼結が促進され、高強度の多孔質焼結体20を成形することができるとともに、多孔質焼結体20とパイプ体11とを強固に焼結結合することができる。
【0044】
本実施形態において、混合物35における焼結助剤の含有量が0.5mass%以上である場合には、焼結原料31とともに充填した焼結助剤が、塩に吸着されることをさらに抑制でき、焼結助剤をさらに十分に作用させることができ、焼結原料31の焼結が促進され、高強度の多孔質焼結体20を成形することができるとともに、多孔質焼結体20とパイプ体11とを強固に焼結結合することができる。
【0045】
本実施形態において、水溶性の塩が塩化ナトリウムである場合には、洗浄工程S03において、洗浄水に塩化ナトリウムを溶解させることで、塩化ナトリウムをパイプ体11の外部へと容易に排出することができる。また、塩化ナトリウムは安価であるため、本実施形態である多孔質体含有パイプ10を低コストで製造することができる。
【0046】
また、本実施形態において、パイプ体11および多孔質焼結体20がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている場合には、焼結性に優れており、高強度の多孔質焼結体20を成形することができるとともに、多孔質焼結体20とパイプ体11とを強固に焼結結合することができる。
【0047】
また、本実施形態において、パイプ体11および多孔質焼結体20がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、焼結助剤がマグネシウム又は亜鉛である場合には、焼結原料31の焼結が促進され、高強度の多孔質焼結体20を成形することができるとともに、多孔質焼結体20とパイプ体11とを強固に焼結結合することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、
図1に示す構造の多孔質体含有パイプを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、複数の多孔質焼結体がパイプ体の延在方向に間隔を開けて配設され、多孔質焼結体と、多孔質焼結体が配設されていない空間部とが、パイプ体の延在方向に交互に配設され、パイプ体と多孔質体とが焼結結合されていればよい。
例えば、パイプ体が曲管とされていてもよい。この場合でも、パイプ体の延在方向に間隔を開けて多孔質焼結体が配設されていればよい。
【実施例0049】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0050】
まず、A1070からなるパイプ体(内径18mm、外径20mm、長さ100mm)を準備した。
また、焼結原料として、直径Rが0.25mm以上0.35mm以下、長さLと直径Rとの比L/Rが15以上120以下のアルミニウム繊維(A1050製)を準備した。
焼結助剤として、マグネシウムを準備した。
水溶性の塩として、塩化ナトリウムを準備した。
【0051】
パイプ体の内部に、焼結原料(アルミニウム繊維)および焼結助剤(マグネシウム)を充填するとともに、水溶性の塩(塩化ナトリウム)と焼結助剤(マグネシウム)の混合物を充填した。
このとき、アルミニウム繊維とともに充填したマグネシウムの含有量は、焼結原料と焼結助剤の合計を100mass%として、1mass%とした。
また、混合物におけるマグネシウムの含有量、および、塩化ナトリウムとマグネシウムとの混合状態を、表1に記載した。
【0052】
次に、アルゴン雰囲気中で、640℃で1時間保持する条件で焼結を行った。その後、パイプ体の内部に洗浄水を流通させた。
このようにして、多孔質体含有パイプを製造した。
【0053】
得られた多孔質含有パイプについて、多孔質焼結体とパイプ体との焼結状態、パイプ体の内面状態について、以下のように評価した。
【0054】
(多孔質焼結体とパイプ体との焼結状態)
パイプ体の内部に配設したアルミニウム繊維をピンセットで引っ張り、アルミニウム繊維が取り除けるか否かを確認した。取り除かれたアルミニウム繊維の重量が、パイプ体の内部に投入したアルミニウム繊維の重量の50%以上である場合を「×」、取り除かれたアルミニウム繊維の重量が50%未満である場合を「〇」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0055】
(パイプ体の内面の凹凸)
アルミニウム繊維を配設していない空間部の部分でパイプ体を切断し、空間部のパイプ体の肉厚を、ノギスを用いて周方向に10箇所で測定し、その最大最小差を測定した。測定結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
水溶性の塩(塩化ナトリウム)のみを充填した比較例においては、多孔質焼結体とパイプ体とが十分に焼結結合されていなかった。また、多孔質焼結体自体も十分に焼結が進行していなかった。
【0058】
これに対して、水溶性の塩(塩化ナトリウム)と焼結助剤(マグネシウム)との混合物を充填した本発明例1-4においては、多孔質焼結体とパイプ体とが十分に焼結結合されており、多孔質焼結体自体も十分に焼結が進行していた。
【0059】
以上ことから、本発明例によれば、熱交換性能およびフィルター性能が十分に高く、かつ、内部を流通する流体の圧力損失を低く抑えることが可能な多孔質体含有パイプ、および、この多孔質体含有パイプの製造方法を提供可能であることが確認された。