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特開2022-137659金属線材入り板ガラス、複層ガラス、金属線材入り板ガラスの端面処理方法、及び複層ガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137659
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】金属線材入り板ガラス、複層ガラス、金属線材入り板ガラスの端面処理方法、及び複層ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20220914BHJP
   E06B 3/667 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
E06B3/667
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037245
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016BA07
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC00
2E016FA01
4G061AA13
4G061BA01
4G061CB02
4G061CD02
4G061CD21
4G061DA09
(57)【要約】
【課題】板ガラスの端面に塗布されるシール材の量を少なくしても高い防錆効果を得る。
【解決手段】内部に金属線材を有する金属線材入り板ガラスであって、前記板ガラスの少なくとも一つの端面が、平坦部と、前記金属線材が露出する凹部とを有し、前記凹部が、シール材で充填されており、前記金属線材の端部は、前記端面より内側に位置することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に金属線材を有する金属線材入り板ガラスであって、
前記金属線材入り板ガラスの少なくとも一つの端面が、平坦部と、前記金属線材が露出する凹部とを有し、
前記凹部が、シール材で充填されており、
前記金属線材の端部は、前記端面より内側に位置することを特徴とする金属線材入り板ガラス。
【請求項2】
請求項1に記載の金属線材入り板ガラスであって、
前記端面の平坦部は、前記シール材から露出していることを特徴とする金属線材入り板ガラス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属線材入り板ガラスであって、
前記シール材が、シリコーン系、ウレタン系、又はポリサルファイド系の樹脂を含むことを特徴とする金属線材入り板ガラス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の金属線材入り板ガラスと、
金属線材を含まない1枚以上の板ガラスと、
前記板ガラスの各々の間の少なくとも1辺に配置されたスペーサーと、
前記スペーサーと2枚の前記板ガラスで形成された空間に充填された二次シール材とを有することを特徴とする複層ガラス。
【請求項5】
請求項4に記載の複層ガラスであって、
前記金属線材を含まない板ガラスを2枚以上有することを特徴とする複層ガラス。
【請求項6】
金属線材入り板ガラスの端面処理方法であって、
内部に金属線材を有する板ガラスを所望の位置で切断する切断工程と、
前記板ガラスの端面から露出した前記金属線材を除去し、前記板ガラスの端面の前記金属線材が露出する位置に凹部を形成する除去工程と、
前記凹部にシール材を充填する充填工程とを有することを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の金属線材入り板ガラスの端面処理方法であって、
前記充填工程は、前記端面にシール材を塗布する工程と、前記端面の平坦部のシール材を除去する工程とを含むことを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の金属線材入り板ガラスの端面処理方法であって、
前記充填工程では、前記シール材が硬化する前に、前記平坦部のシール材を除去することを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の金属線材入り板ガラスの端面処理方法であって、
前記シール材が、シリコーン系、ウレタン系、又はポリサルファイド系の樹脂を含むことを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法。
【請求項10】
複層ガラスの製造方法であって、
内部に金属線材を有する第1の板ガラスを所望の位置で切断する切断工程と、
前記第1の板ガラスの端面から露出した前記金属線材を除去し、前記第1の板ガラスの端面の前記金属線材が露出する位置に凹部を形成する除去工程と、
前記第1の板ガラスと、金属線材を有しない1枚以上の第2の板ガラスとを、所定の間隔を保つようにスペーサーを挟んで積層する積層工程と、
前記凹部と、前記第1の板ガラス及び1枚以上の前記第2の板ガラスのうち隣接する2枚の板ガラスと前記スペーサーで形成された空間とにシール材を充填する充填工程とを有することを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の複層ガラスの製造方法であって、
前記充填工程は、
前記第1の板ガラスの端面と、前記2枚の板ガラスと前記スペーサーで形成された空間にシール材を塗布する工程と、
前記金属線材を有する板ガラスの端面の平坦部のシール材と、前記2枚の板ガラスの端面より突出するシール材を除去する工程とを含むことを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の複層ガラスの製造方法であって、
前記充填工程では、前記シール材が硬化する前に、前記平坦部のシール材を除去することを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項に記載の複層ガラスの製造方法であって、
前記シール材が、シリコーン系、ウレタン系、又はポリサルファイド系の樹脂を含むことを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材入り板ガラスに関し、特に、金属線材の防錆技術に関する。
【背景技術】
【0002】
網入り板ガラスは破損時のガラスの飛散を防止するために板ガラス内に金属線が埋め込まれており、ガラス端面に露出する金属線の防錆処理が必要である。また、通常のガラスより金属線の分だけ重量が増加する。
【0003】
この技術分野の背景技術として実開平2-94227号公報(特許文献1)及び特開2008-105888号公報(特許文献2)がある。特許文献1には、網入り板ガラスの周端面をU字型に研削して形成された窪み部にシール材を充填する鋼材防錆構造が開示されている。また、特許文献2には、端面の全体にシール材を有する板ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2-94227号公報
【特許文献2】特開2008-105888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法では、板ガラスの周端面をU字型に研削する工程が必要であり、技術的難易度が高いうえに、シール材を端面の全面に充填する必要があり、シール材の使用量が多くなる。特に、複数枚の板ガラスによって構成される複層ガラスでは、シール材の使用量がさらに多くなる。このため、コストが増加し、重量が増加し、板ガラスが取り付けられるサッシへの負荷が増加する。また、板ガラスの端面がシール材で覆われていると、サッシ装着時に板ガラスが不安定になるおそれがあることから、板ガラスの端面に余分なものが付着していないことが望ましい。
【0006】
本発明は、板ガラスの端面に塗布されるシール材の量を少なくしても高い防錆効果が得られる金属線材入り板ガラスを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、内部に金属線材を有する金属線材入り板ガラスであって、前記金属線材入り板ガラスの少なくとも一つの端面が、平坦部と、前記金属線材が露出する凹部とを有し、前記凹部が、シール材で充填されており、前記金属線材の端部は、前記端面より内側に位置することを特徴とする金属線材入り板ガラスである。
【0008】
また、本発明は、前記端面の平坦部が、前記シール材から露出していることを特徴とする金属線材入り板ガラスである。
【0009】
また、本発明は、前記シール材が、シリコーン系、ウレタン系、又はポリサルファイド系の樹脂を含むことを特徴とする金属線材入り板ガラスである。
【0010】
また、本発明は、金属線材を含まない1枚以上の板ガラスと、前記板ガラスの各々の間の少なくとも1辺に配置されたスペーサーと、前記スペーサーと2枚の前記板ガラスで形成された空間に充填された二次シール材とを有することを特徴とする複層ガラスである。
【0011】
また、本発明は、前記金属線材を含まない板ガラスを2枚以上有することを特徴とする複層ガラスである。
【0012】
また、本発明は、金属線材入り板ガラスの端面処理方法であって、内部に金属線材を有する板ガラスを所望の位置で切断する切断工程と、前記板ガラスの端面から露出した前記金属線材を除去し、前記板ガラスの端面の前記金属線材が露出する位置に凹部を形成する除去工程と、前記凹部にシール材を充填する充填工程とを有することを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法である。
【0013】
また、本発明は、前記充填工程が、前記端面にシール材を塗布する工程と、前記端面の平坦部のシール材を除去する工程とを含むことを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法である。
【0014】
また、本発明は、前記充填工程では、前記シール材が硬化する前に、前記平坦部のシール材を除去することを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法である。
【0015】
また、本発明は、前記シール材が、シリコーン系、ウレタン系、又はポリサルファイド系の樹脂を含むことを特徴とする金属線材入り板ガラスの端面処理方法である。
【0016】
また、本発明は、複層ガラスの製造方法であって、内部に金属線材を有する第1の板ガラスを所望の位置で切断する切断工程と、前記第1の板ガラスの端面から露出した前記金属線材を除去し、前記第1の板ガラスの端面の前記金属線材が露出する位置に凹部を形成する除去工程と、前記第1の板ガラスと、金属線材を有しない1枚以上の第2の板ガラスとを、所定の間隔を保つようにスペーサーを挟んで積層する積層工程と、前記凹部と、前記第1の板ガラス及び1枚以上の前記第2の板ガラスのうち隣接する2枚の板ガラスと前記スペーサーで形成された空間とにシール材を充填する充填工程とを有することを特徴とする複層ガラスの製造方法である。
【0017】
また、本発明は、前記充填工程は、前記第1の板ガラスの端面と、前記2枚の板ガラスと前記スペーサーで形成された空間にシール材を塗布する工程と、前記金属線材を有する板ガラスの端面の平坦部のシール材と、前記2枚の板ガラスの端面より突出するシール材を除去する工程とを含むことを特徴とする複層ガラスの製造方法である。
【0018】
また、本発明は、前記充填工程では、前記シール材が硬化する前に、前記平坦部のシール材を除去することを特徴とする複層ガラスの製造方法である。
【0019】
また、本発明は、前記シール材が、シリコーン系、ウレタン系、又はポリサルファイド系の樹脂を含むことを特徴とする複層ガラスの製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の代表的な実施形態によれば、シール材の使用量が少なくても高い防錆効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態の金属線材入り板ガラスの平面図である。
図2】本発明の実施形態の金属線材入り板ガラスの端面図である。
図3】本発明の実施形態の複層ガラスの断面図である。
図4】本発明の実施形態の三層複層ガラスの断面図である。
図5】本発明の実施形態の金属線材入り板ガラスの端面研削前の平面図である。
図6】本発明の実施形態の金属線材入り板ガラスの端面研削中の模式図である。
図7】本発明の実施形態の金属線材入り板ガラスの端面研削後の模式図である。
図8】本発明の実施形態の金属線材入り板ガラスのシール材塗布後の模式図である。
図9】本発明の実施形態の金属線材入り板ガラスのシール材除去中の模式図である。
図10】本発明の実施形態の複層ガラスの製造工程を示す図ある。
図11】本発明の実施形態の複層ガラスの製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施形態の金属線材入り板ガラス1の平面図であり、図2はその端面図である。
【0023】
本実施形態の金属線材入り板ガラス1は、内部に金属線材11が例えば網目状に埋め込まれた板ガラス10によって構成される。金属線材入り板ガラス1は、1枚の板ガラス10で構成される単板ガラスでも、板ガラス10を用いた複層ガラスでもよい。図1では、金属線材11は、板ガラス10の端面12に対して斜めの網目状に埋め込まれているが、板ガラス10の端面12に対して略平行の網目状に埋め込まれてもよいし、網目状ではなく略平行に並列に並んだ状態で埋め込まれてもよい。金属線材11の材質としては、炭素鋼、ステンレス鋼などが挙げられる。
【0024】
板ガラス10の端面12には、金属線材11の端部の位置に設けられる凹部14と、凹部14以外の部分で平面が形成される平坦部13が設けられる。凹部14は、平坦部13から凹んでシール材15を充填する空間を形成する。凹部14の形状は、例えば、球面であり、その大きさは、例えば、直径1~2mm、深さ1~2mmでもよい。凹部14の内部には金属線材11の端部が位置し、該端部を覆うようにシール材15が平坦部13の高さまで充填される。すなわち、金属線材11の端部は、平坦部13より内側にあり、シール材15で覆われている。また、シール材15は凹部14の内部に充填され、平坦部13には付着していない。シール材15は、シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系などの樹脂を使用できる。
【0025】
次に、本発明にかかる金属線材入り板ガラス1を使用した複層ガラスについて説明する。
【0026】
図3は本発明の実施形態の金属線材入り板ガラス1を用いた複層ガラスの断面図であり、図4は三層複層ガラスの断面図である。
【0027】
図3に示すように、複層ガラスは、所定の間隔で対抗する2枚の板ガラス1、30と、2枚のガラス板の少なくとも1辺、好ましくは4辺に設けられたスペーサー40と、スペーサー40とガラス板で区切られた箇所に充填された二次シール材52とを有している。
【0028】
複層ガラスは、相対向する2枚の板ガラス1、30の間の外周部内側にスペーサー40を挟んで、スペーサー40を板ガラス1、30に一次シール材51で固定後、スペーサー40と2枚の板ガラス1、30とで形成された空間を二次シール材52にて密封し、二次シールとしている。
【0029】
スペーサー40は板ガラス1、30の端面12より少し内側に位置しており、スペーサー40と板ガラス1、30とが形成した空間に二次シール材52を充填することによって、板ガラス1、30の間の中空部60に封入された、乾燥空気やアルゴンガス、クリプトンガスなどの気体が外部に移動しにくくしている。また、中空部60は真空になっていてもよい。スペーサー40は、2枚の板ガラス1、30を所定の間隔を保つ役割の他に、スペーサー40内に乾燥剤を封入して、中空部60に封入された気体を乾燥できるようにしてもよい。二次シール材50として、前述のシール材15と同じ材料を使用できる。また、複層ガラスを構成するガラス板のうち、少なくとも一つが内部に金属線材11が埋め込まれた板ガラス1であり、金属線材入り板ガラス1は通常は屋外側に設けられる。
【0030】
網入り板ガラスの端面12は、図1に示す金属線材入り板ガラス1と同様に、その端面12に凹部14が設けられ、凹部14内がシール材(二次シール材52)で充填されている。
【0031】
なお、複層ガラスは、2枚の板ガラスを用いる場合だけでなく、図4に示すように、3枚の板ガラス1、30、31を用い、板ガラス1、31の間及び板ガラス30、31の間にスペーサー40を含む3層複層ガラスも構成できる。
【0032】
本実施形態の金属線材入り板ガラス1を具体的な実施例を説明する。なお、以下に示す実施例の数値は一例である。金属線材入り板ガラス1は、厚さ6.8mmの板ガラス10に、金属線材11として径0.5mmの炭素鋼製金網が幅30mmの正方形(対角線の長さが約28mm)による菱目状に埋め込まれる。凹部14には、シール材15としてシリコーンシーラント、例えば東レ・ダウコーニング株式会社製SE936シーラントを充填する。
【0033】
なお、図1では、三つの端面12に露出した金属線材11を防錆する(もう一つの端面は不図示)板ガラス10を図示したが、少なくとも一つの端面で金属線材11が露出する構造の板ガラスであれば、本発明を適用しうる。
【0034】
次に、図5から図9を参照して、本実施形態の金属線材入り板ガラス1の製造手順を説明する。図5は端面研削前、図6は端面研削中、図7は端面研削後、図8はシール材塗布後、図9はシール材除去中の模式図である。
【0035】
図5に示すように、本実施形態の金属線材入り板ガラス1は、金属線材11を例えば菱目状に埋め込まれた板ガラス10で構成される。
【0036】
まず、金属線材11が埋め込まれた板ガラス10を所望の位置で所定の大きさに切断する。板ガラス10を所定の大きさに切断した状態では、金属線材11は、板ガラス10の端面12から突出している。この端面12から突出している金属線材11を端面12より内側に位置するように研削する。
【0037】
この研削は、図6に示すように、研削装置20を用いて四つの端面12の全域を研削する。研削装置20は、ペーパーディスクを取り付けたグラインダーを用いると好適である。板ガラス10の端面12に沿って研削装置20を移動する、又は、板ガラス10の端面12が研削装置20に接するように板ガラス10を移動することによって、板ガラス10の端面12を研削できる。この研削工程において、グラインダーによって金属線材11が削り取られると共に、グラインダーの回転によって金属線材11が引っ張られて一時的に延伸するが、研削工程後には戻るので、金属線材11の端部は板ガラス10の端面12より内側に位置する。
【0038】
また、図6図7に示すように、研削時にグラインダーで引っ張られた状態で金属線材11が研削されることによって、金属線材11の周囲の端面12のガラスが除去され、金属線材11の端部の位置に凹んだ凹部14が形成される。すなわち、研削後には、金属線材11の端部が凹部14内の空間に露出している。
【0039】
次に、図8に示すように、板ガラス10の端面12にシール材15を塗布する。シール材15は、板ガラス10の端面12の全面に厚さ0.5mm~0.7mmに塗布するとよい。
【0040】
その後、図9に示すように、シール材15の塗布後、硬化前に、板ガラス10の端面12に沿って樹脂製のヘラ25を移動して、シール材15を剥ぎ取る。ここで、シール材15の硬化前とは、端面から剥ぎ取ることができれば特に限定されないが、例えば、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで測定不能、すなわち0度以下の状態とすることができる。このシール材除去工程によって、シール材15が凹部14に充填されており、平坦部13には付着していない状態で硬化する。また、平坦部13に部分的にシール材15が残っても、その厚さは0.2mm以下である。よって、平坦部13より内側にある金属線材11の端部はシール材15で覆われる。同様に、凹部14の内部にシール材15が充填され、平坦部13にはシール材15が残存しない防錆構造が他の端面12にも形成される。
【0041】
硬化前の粘度が低い間にシール材15を削ぎ取ることによって、凹部14のシール材15は除去されず、凹部14はシール材15で充填された状態を維持でき、防錆に不要なシール材15のみを除去できる。シール材15はピンポイントでの塗布が困難であることからシール材15を端面12の全体に塗布する必要があったが、本実施形態のように端面12全体にシール材15を塗布した後に凹部14以外のシール材15を除去することによって、板ガラス10に付着するシール材15の量を削減できる。
【0042】
次に、前述したように金属線材入り板ガラス1の防錆性能について述べる。本願の発明者は、前述した実施例の金属線材入り板ガラス1と比較例の金属線材入り板ガラスについて塩水浸漬試験を行った。比較例の金属線材入り板ガラスは、シール材15によって端面12を保護しない以外は、実施例と同じである。
【0043】
次に、本実施形態の金属線材入り板ガラス1を使用した複層ガラスの製造手順を説明する。図10はスペーサー40と板ガラス1、30の接着後、図11は二次シール材52の塗布後の模式図である。
【0044】
まず、図9に示すように、金属線材入り板ガラス1と通常の板ガラス30とを一次シール材51を塗布したスペーサー40を挟んで積層し、板ガラス1、30とスペーサー40を固定する。前述したように、スペーサー40は板ガラス1、30の端面12より少し内側に位置している。このため、二次シール材52を充填する空間が、スペーサー40と板ガラス1、30とで形成される。
【0045】
その後、図10に示すように、複層ガラスの端面12に二次シール材52を塗布する。二次シール材52は、スペーサー40と板ガラス1、30で区切られた空間に充填され、金属線材入り板ガラス1の端面12の凹部14にも充填される。なお、金属線材入りでない通常の板ガラス30の端面12には二次シール材52を塗布してもしなくてもよく、板ガラス30の端面12の一部は二次シール材52で覆われていない場合が多いが、全面が覆われている場合もある。
【0046】
その後、図9に示すと同様に、二次シール材52の塗布後、硬化前に、板ガラス1、30の端面12に沿って樹脂製のヘラ25を移動して、二次シール材52を剥ぎ取る。このシール材除去工程によって、二次シール材52が、スペーサー40と板ガラス1、30で区切られた空間及び凹部14に充填されており、平坦部13には付着していない状態で硬化する。よって、平坦部13より内側にある金属線材11の端部は二次シール材52で覆われる。スペーサー40と板ガラス1、30で区切られた空間及び凹部14の内部に二次シール材52が充填され、平坦部13には二次シール材52が残存しない防錆構造が形成される。
【0047】
本実施例及び比較例の金属線材入り板ガラスのサンプルを、約1/3の高さまで5重量%濃度の塩水に24時間浸漬した後、屋外にて48時間乾燥を1サイクルとし、浸漬された部位の錆の発生状況を目視観察した。
【0048】
その結果、本実施例の金属線材入り板ガラスでは、40サイクル後でも金属線材11の端部に錆が発生することなく良好な結果が得られた。一方、シール材による防錆を施していない比較例の金属線材入り板ガラスでは、5サイクル後に全ての箇所の金属線材11の端部に錆が検出され、40サイクル後には板ガラス内の深部まで金属線材11の錆が進行し、錆によって板ガラスにクラックが発生した。
【0049】
以上、本発明を添付の図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこのような具体的構成に限定されるものではなく、添付した請求の範囲の趣旨内における様々な変更及び同等の構成を含むものである。
【符号の説明】
【0050】
1 金属線材入り板ガラス
10 板ガラス
11 金属線材
12 端面
13 平坦部
14 凹部
15 シール材
20 研削装置
25 ヘラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11