IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-荷役車両及び判定プログラム 図1
  • 特開-荷役車両及び判定プログラム 図2
  • 特開-荷役車両及び判定プログラム 図3
  • 特開-荷役車両及び判定プログラム 図4
  • 特開-荷役車両及び判定プログラム 図5
  • 特開-荷役車両及び判定プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137662
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】荷役車両及び判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037250
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美徳
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333DB10
3F333FA12
3F333FA17
3F333FA34
3F333FA36
3F333FD20
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】荷役作業の作業効率を向上させる。
【解決手段】フォークリフト1は、走行可能な車体11と、車体11に昇降可能に設けられ、パレット30を保持するフォーク12と、車体前方の所定の床面領域Rの深度情報を取得可能な距離センサ24と、制御部27とを備える。制御部27は、距離センサ24により取得された床面領域Rの深度情報に基づいて、車体前方のパレット接地領域GAにパレット30を置けるか否かを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
前記車体に昇降可能に設けられ、パレットを保持するフォークと、
前記車体前方の所定の面領域の深度情報を取得可能な計測手段と、
前記計測手段により取得された前記面領域の深度情報に基づいて、前記車体前方のパレット接地領域に前記パレットを置けるか否かを判定する判定手段と、
を備える荷役車両。
【請求項2】
前記深度情報とは、前記面領域における前記計測手段からの距離情報である、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記面領域の深度情報に基づいて、前記パレット接地領域の傾斜度及び平面度を算出し、
前記パレット接地領域の傾斜度及び平面度に基づいて、当該パレット接地領域に前記パレットを置けるか否かを判定する、
請求項1又は請求項2に記載の荷役車両。
【請求項4】
前記パレット接地領域は、当該荷役車両の走行中に前記計測手段により連続的又は断続的に取得された複数の面領域の範囲に含まれ、
前記判定手段は、前記複数の面領域の深度情報を積分して前記パレット接地領域の深度情報を取得する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の荷役車両。
【請求項5】
前記判定手段は、前記複数の面領域の深度情報を積分して前記パレット接地領域の深度情報を取得するときに、その積分間隔及び総積分量を当該荷役車両の速度に応じて変化させる、
請求項4に記載の荷役車両。
【請求項6】
前記パレット接地領域に前記パレットを置けないと前記判定手段が判定した場合に、当該判定結果を運転者に報知する報知手段を備える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の荷役車両。
【請求項7】
前記パレット接地領域に前記パレットを置けないと前記判定手段が判定した場合に、前記フォークの降下動作を規制する規制手段を備える、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の荷役車両。
【請求項8】
走行可能な車体と、前記車体に昇降可能に設けられ、パレットを保持するフォークと、前記車体前方の所定の面領域の深度情報を取得可能な計測手段と、を備える荷役車両のコンピュータを、
前記計測手段により取得された前記面領域の深度情報に基づいて、前記車体前方のパレット接地領域に前記パレットを置けるか否かを判定する判定手段、
として機能させる判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両及び判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフト等の荷役車両による荷役作業では、前方の床面(地面)にパレット(荷)を置けるか否かを、運転者が目視により確認していた。特に、本来荷が置かれない場所にパレットを仮置きする場合などには、その場所を注意して確認しておく必要がある。
しかし、例えばフォークに大きい荷を積んでいる場合などには、運転者が視線を遮られてしまい、前方の床面や荷台面を視認しにくくなる。このような場合、その場所への進入前に運転者がその場所の状態を予め確認しておく必要などが生じるため、作業効率が低下してしまう。
【0003】
このような問題に対し、例えば、荷を置く際に車体の傾斜を考慮して荷の水平度を保つことで荷崩れを防ぐ技術などは提案されているが(例えば、特許文献1参照)、荷を置く場所の健全性を評価して作業効率を向上させる技術は提案されてきていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5921183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、荷役作業の作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷役車両は、
走行可能な車体と、
前記車体に昇降可能に設けられ、パレットを保持するフォークと、
前記車体前方の所定の面領域の深度情報を取得可能な計測手段と、
前記計測手段により取得された前記面領域の深度情報に基づいて、前記車体前方のパレット接地領域に前記パレットを置けるか否かを判定する判定手段と、
を備える構成とした。
【0007】
本発明に係る判定プログラムは、
走行可能な車体と、前記車体に昇降可能に設けられ、パレットを保持するフォークと、前記車体前方の所定の面領域の深度情報を取得可能な計測手段と、を備える荷役車両のコンピュータを、
前記計測手段により取得された前記面領域の深度情報に基づいて、前記車体前方のパレット接地領域に前記パレットを置けるか否かを判定する判定手段、
として機能させるものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、荷役作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るフォークリフトの外観を示す側面図である。
図2】実施形態に係るフォークリフトの概略の制御構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る平置き可否判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施形態に係る平置き可否判定処理を説明するための図である。
図5】実施形態に係る平置き可否判定処理を説明するための図である。
図6】実施形態に係る距離センサの他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[フォークリフトの構成]
図1は、本実施形態に係るフォークリフト1の外観を示す側面図である。
本実施形態に係るフォークリフト1は、本発明に係る荷役車両の一例であり、車体11、フォーク12、昇降体(リフト)13、マスト14、車輪15を備える。マスト14は車体11の前方に設けられ、図示しない駆動源によって駆動されて車体11の前後に傾斜する。昇降体13は、図示しない駆動源によって駆動され、マスト14に沿って昇降する。昇降体13には、荷Lやパレット30などを保持する左右一対のフォーク12が取り付けられている。一対のフォーク12は、マスト14及び昇降体13の駆動により、車体11に対する傾斜及び昇降が可能となっている。
パレット30は、荷Lが載置される荷受台である。このパレット30は、短矩形板状に形成され、一対のフォーク12が挿入される2つの孔部(フォークポケット)32を有する。
【0012】
図2は、フォークリフト1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、フォークリフト1は、上記構成に加え、駆動部21、操作部22、表示部23、距離センサ24、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)25、記憶部26、制御部27を備える。
【0013】
駆動部21は、フォークリフト1の各種駆動源である走行モータ、操舵モータ及び荷役モータ(いずれも図示省略)を含む。走行モータは、車輪15のうちの駆動輪を駆動する。操舵モータは、車輪15のうちの操舵輪を回転(操舵動作)させる。荷役モータは、昇降体13の昇降とマスト14の傾倒との各動作を行わせる駆動源である。
【0014】
操作部22は、運転者が各種操作を行う操作手段である。操作部22は、例えばハンドルやペダル、レバー、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号を制御部27に出力する。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部27から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部23は、操作部22の一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。
【0015】
距離センサ24は、車体前方の所定の面領域(後述の床面領域R)の距離情報(深度情報)を取得可能なものであり、取得した情報を制御部27に出力する。距離センサ24は、本発明に係る計測手段の一例であり、本実施形態では、深度情報を含む三次元情報を取得可能なTOFセンサ(デプスセンサ)である。
本実施形態の距離センサ24は、車体11の前部であって幅方向の中央部に前方斜め下向きに設置され、車体前方の床面領域Rの計測を行う(図1及び図4(a)参照)。
【0016】
慣性計測装置25は、フォークリフト1の三次元の加速度及び角速度を計測し、その結果を制御部27に出力する。ただし、本実施形態の慣性計測装置25は、少なくとも鉛直方向(重力方向)を検出可能であればよい。
【0017】
記憶部26は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部27の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部26は、後述の平置き可否判定処理(図3参照)を実行するための平置き可否判定プログラム260を予め記憶している。
制御部27は、フォークリフト1各部の動作を制御する。具体的に、制御部27は、操作部22の操作内容に基づいて駆動部21を動作させたり、記憶部26に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。また、制御部27は、フォークリフト1の走行距離や速度、位置等の車両状態に関する情報(上述したもの以外)を、図示しないセンサ類により取得できる。
【0018】
[平置き可否判定処理]
続いて、荷役作業中のフォークリフト1が平置き可否判定処理を実行するときの動作について説明する。
図3は、平置き可否判定処理の流れを示すフローチャートであり、図4及び図5は、平置き可否判定処理を説明するための図である。
【0019】
平置き可否判定処理は、フォークリフト1が床面へのパレット30の平置き可否を判定して作業者(運転者)に報知する処理である。この平置き可否判定処理は、フォークリフト1の制御部27が記憶部26から平置き可否判定プログラム260を読み出して展開することで実行される。
【0020】
図3に示すように、平置き可否判定処理が実行されると、まず制御部27は、パレット接地領域GAを設定する(ステップS1)。
パレット接地領域GAは、フォーク12により保持したパレット30を、フォーク12を降下させて床面に置いたときの、その接地位置(フォークリフト1に対する相対位置)及び接地範囲である(図4(b)参照)。パレット接地領域GAは、本実施形態では平面上での位置及びその範囲であるが、三次元での位置及びその範囲であってもよい。なお、この場合の「平面」とは、後述するように、本実施形態では水平面であるが、フォークリフト1の接地面に平行な面であってもよい。
【0021】
このステップS1では、制御部27は、ユーザ操作に基づいてパレット30の形状情報を取得し、当該形状情報に基づいてパレット接地領域GAの位置及び範囲(大きさ)を求めて設定する。パレット接地領域GAは、実際にパレット30が接地する領域よりも一回り大きい領域として設定される。パレット30の形状情報の取得では、ユーザが、必要なパレット30の関係寸法(接地に関わる寸法)を入力してもよいし、パレット接地領域GAの位置及び範囲を直接入力してもよい。このうち、ユーザによるパレット30の関係寸法の入力は、使用するパレット種別の入力に代えてもよく、その場合には、パレット種別に対応する当該種別の関係寸法をパレット形状データベースから読み出せばよい。パレット形状データベースは、記憶部26(又はフォークリフト1が通信可能な端末等)に格納されていればよい。
なお、このステップでのパレット接地領域GAの設定は、平置き可否判定処理の実行前に予め行われていてもよい。
【0022】
次に、制御部27は、ユーザ操作によりフォークリフト1の走行を開始させると(ステップS2)、距離センサ24による車体前方の床面の計測を開始する(ステップS3)。ここでは、フォークリフト1が、フォーク12によりパレット30を保持した(フォーク12を孔部32に挿入して持ち上げた)状態で走行しているものとする。
このステップS3では、図4(a)に示すように、距離センサ24により、車体前方の床面領域Rの計測が行われる。距離センサ24の視野は遠くに離れるほど広がるため、当該距離センサ24が計測する床面領域Rは略台形状をなしている。
この計測は、フォークリフト1の走行中に行われるため、その走行方向に沿った複数の床面領域Rの計測データが連続的(又は断続的)に取得される。取得された計測データは記憶部26に記憶される。
【0023】
次に、制御部27は、ステップS3で取得した計測データから、三次元の点群データを生成する(ステップS4)。つまり、ここでは、ステップS3で計測された床面領域Rに含まれる三次元の点群データが深度情報として抽出される。
【0024】
次に、制御部27は、パレット接地領域GAの点群データを抽出する(ステップS5)。
このステップでは、図4(b)に示すように、制御部27は、平面視でパレット接地領域GAが含まれる複数(図4の例では4つ)の床面領域Rについて、その点群データを積算(積分)する。複数の床面領域Rは、フォークリフト1の走行に伴って連続的(又は断続的)に計測される領域であり、それぞれについてステップS3、S4の処理がなされることで各々の点群データが取得される。
また、制御部27は、求めたパレット接地領域GAの点群データを記憶部26に記憶させる。このとき、当該パレット接地領域GA以外の点群データを含む計測データは消去してもよい。これにより、記憶部26のメモリ使用量を抑制できる。
なお、複数の床面領域Rの点群データを積算するときの積分間隔P及び総積分量Sは、適切にパレット接地領域GAが含まれるように(例えば、パレット接地領域GAが含まれる最小限の床面領域Rとなるように)、フォークリフト1の走行速度(走行距離)に応じて適宜変更・調整されるのが好ましい。これにより、例えば、低速時に短い積分間隔Pで多量のデータを取得することによる無駄なメモリ使用などを抑制できる。
【0025】
次に、制御部27は、パレット接地領域GAの点群データに基づいて、当該パレット接地領域GAの傾斜角(傾斜度)及び平面度を算出する(ステップS6)。
このステップでは、まず制御部27は、ステップS5で抽出したパレット接地領域GAの点群データに平面をフィッティングすることで、パレット接地領域GAの代表平面TPを求める。そして、制御部27は、図5(a)に示すように、理想平面(本実施形態では水平面H)からの代表平面TPの傾斜角θを算出する。水平面Hの方向は、慣性計測装置25から重力方向を取得すればよい。また、制御部27は、図5(b)に示すように、代表平面TPからの計測データのばらつきの最大値(平均値などでもよい)として、代表平面TPの平面度を算出する。
【0026】
次に、制御部27は、パレット接地領域GAの傾斜角θ及び平面度のいずれもが所定の正常範囲内か否かを判定し(ステップS7)、いずれも正常範囲内であると判定した場合には(ステップS7;Yes)、後述のステップS9に処理を移行する。すなわち、このステップS7では、パレット接地領域GAにパレット30を置けるか否かが判定される。
傾斜角θ及び平面度の各正常範囲は、予め設定されて記憶部26に記憶されている。この正常範囲は、パレット30の接地面の形状や面積等に応じたものであってもよい。
なお、判定結果が正常範囲内であることを作業者(運転者)に報知してもよい。
【0027】
ステップS7において、パレット接地領域GAの傾斜角θ及び平面度の少なくとも一方が正常範囲内でないと判定した場合(ステップS7;No)、すなわちパレット接地領域GAにパレット30を置けないと判定した場合、制御部27は、その判定結果を運転者に報知する(ステップS8)。
この場合の報知態様は特に限定されず、表示部23に警告表示させてもよいし、図示しないスピーカに警告音声を出力させてもよい。またこのときに、図5に例示したパレット接地領域GAの傾斜角θや平面度を表示部23に表示させてもよいし、フォーク12を降下できないように動作を規制したりしてもよいし、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0028】
次に、制御部27は、平置き可否判定処理を終了させるか否かを判定し(ステップS9)、終了させないと判定した場合には(ステップS9;No)、上述のステップS3へ処理を移行して計測を続ける。
そして、例えば荷役作業の終了等により、平置き可否判定処理を終了させると判定した場合には(ステップS9;Yes)、制御部27は、平置き可否判定処理を終了させる。
【0029】
このように、本実施形態の平置き可否判定処理では、フォークリフト1の走行中に距離センサ24で床面を計測することにより、その時点でのパレット接地領域GAのパレット平置き可否が随時判定される。
なお、通過したパレット接地領域GAに関する判定結果等のデータは、記憶部26から消去してもよいし、判定結果を位置情報と対応付けて蓄積させ、再利用可能にしてもよい。
【0030】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、距離センサ24により取得された床面領域Rの深度情報に基づいて、車体前方のパレット接地領域GAにパレット30を置けるか否かが判定される。
これにより、パレットの配置場所を運転者が目視で確認していた従来と異なり、パレット接地領域GAへのパレット30の接地可否が自動で判定される。したがって、従来に比べ、荷役作業の作業効率を向上させることができる。ひいては、荷倒れや荷崩れを未然に防止でき、安全に荷役作業を実施できる。
【0031】
また本実施形態によれば、パレット接地領域GAは、フォークリフト1の走行中に距離センサ24により連続的又は断続的に取得された複数の床面領域Rの範囲に含まれる領域であり、これら複数の床面領域Rの深度情報を積分してパレット接地領域GAの深度情報が取得される。
これにより、視野角が比較的に狭く、パレット接地領域GAをその視野角内に一度に捉えられない距離センサ24であっても、好適に使用することができる。
【0032】
また本実施形態によれば、複数の床面領域Rの深度情報を積分してパレット接地領域GAの深度情報を取得するときに、その積分間隔P及び総積分量Sがフォークリフト1の速度に応じて変化(調整)される。
これにより、記憶部26の無駄なメモリ使用を抑えつつ、好適にパレット接地領域GAの深度情報を取得できる。
【0033】
また本実施形態によれば、パレット接地領域GAにパレットを置けないと判定された場合に、当該判定結果が運転者に報知される。これにより、運転者に状況を速やかに報知できる。
また本実施形態によれば、パレット接地領域GAにパレットを置けないと判定された場合に、フォーク12の降下動作が規制される。これにより、パレット30が誤ってパレット接地領域GAに置かれてしまう事態をより確実に防ぐことができる。
【0034】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態(変形例含む)に限られない。
例えば、上記実施形態では、距離センサ24としてTOFセンサ(エリアセンサ)を用いることとした。しかし、距離センサ24は、車体前方の所定の面領域の距離情報(深度情報)を取得可能なものであればよく、例えば図6(a)に示すように、直線状の計測領域(線領域Ra)を有する線状センサ(例えば、二次元のLiDAR(LASER Imaging Detection and Ranging))であってもよい。
この場合、上記実施形態と異なり、距離センサ24の計測領域が線領域Raとなるが、図6(b)に示すように、走行中にこの線領域Raを連続的に積分することにより、パレット接地領域GAの深度情報を取得できる。
【0035】
また、上記実施形態の平置き可否判定処理では、ステップS6、S7において、パレット接地領域GA(の代表平面TP)の傾斜角及び平面度を求めてそれぞれを評価・判定することとした。しかし、この判定手法に代えて、傾斜角及び平面度を求めることなく、理想平面からのパレット接地領域GAの点群データの分散を評価してもよい。
また、上記実施形態では、傾斜角の判定基準である理想平面を水平面としたが、この理想平面はフォークリフト1(の接地面)に平行な面としてもよい。この場合、フォークリフト1の傾き(姿勢)は慣性計測装置25から求めればよい。これにより、例えばスロープなどの傾斜面にパレット30を置く場合にも対応できる。
【0036】
また、上記実施形態の平置き可否判定処理では、フォークリフト1の走行中にステップS3~S9の処理を繰り返すこととしたが、このうち可否判定とその報知を行うステップS7、S8は、特定の実行トリガーが検知された場合のみに行うこととしてもよい。この実行トリガーは、例えば、運転者の入力操作であってもよいし、フォークリフト1の停止やフォーク12の昇降動作及びチルト動作などであってもよい。
【0037】
また、距離センサ24は、その視野角内にパレット接地領域GAを捉えられる(つまり、パレット接地領域GAが1つの床面領域R内に含まれる)ものであってもよい。この場合、床面領域Rの点群データについての積分が不要となるのは勿論である。
また、上記実施形態では、積分対象の複数の床面領域Rの計測データが、フォークリフト1の直進中に取得される場合を例示した。しかし、フォークリフト1が直進以外(例えば、右折や左折、後進、旋回)の走行中の場合でも、例えば慣性計測装置25から複数の床面領域Rの相対位置を取得し、パレット接地領域GAが含まれるように積分すればよい。
【0038】
また、フォークリフト1がパレット30を置く場所(高さ)は、床面(地面)に限定されず、棚などの高い(又は低い)位置であってもよい。ただし、この場合には、この高い(又は低い)位置を計測できるように距離センサ24を高い位置に設ける(又は、昇降可能なように昇降体13に設ける)必要がある。
また、本発明に係る荷役車両は、フォークで荷を保持して走行できるものであればフォークリフトに限定されず、例えば無人で走行する無人搬送車(例えば、AGV:Automated Guided Vehicle。AGF(無人搬送フォークリフト)を含む)などであってもよい。
また、本発明に係る荷役車両は、パレットを介さずに荷をフォークで直接保持するものであってもよい。
【0039】
また、本発明に係るパレットには、荷が載置される荷受台であって、フォークに保持されるもの(例えば、すのこなど)を広く含む。なお、すのこの場合、パレット接地領域は、接地部分だけを含めばよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 フォークリフト(荷役車両)
11 車体
12 フォーク
23 表示部(報知手段)
24 距離センサ(計測手段)
25 慣性計測装置
26 記憶部
27 制御部(判定手段、報知手段、規制手段)
30 パレット
32 孔部
260 平置き可否判定プログラム(判定プログラム)
L 荷
R 床面領域(面領域)
Ra 線領域
P 積分間隔
S 総積分量
GA パレット接地領域
TP 代表平面
H 水平面
θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6